説明

血液分離装置及びそれに関連する流体ラインを洗浄、消毒、洗い流し、及びプライミングするためのデバイス、システム及び方法

血液透析に使用するための健全な体外回路(14)の迅速再処理に基づく自動機器を与えるためのシステム及び方法。そのシステムは、静脈及び動脈血液ラインのみならずダイアライザ(10)へ係合するためのコネクタ(60,62)を有するマニホールド(56)を含む。このマニホールド(56)は、ダイアライザ(10)及びそれに関連する血液ラインを取り外すことなく透析装置(66)から再使用機器(72)へ移動させるように適合されている。このシステムは、次の処置の前に体外回路(14)の再処理を可能とし、ここでは検査を要する残留化学的殺菌剤が無く、体外回路(14)は事前に整えられて、気泡トラップのレベルが設定されて、全ての要求品質保証検査が実行されて、記録される。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野
本発明は、血液処置用医療デバイス(例えば血液透析器、血液濾過器、血漿濾過器)及びそれらに関連して血液又は他の流体(例えば生理食塩水又はヘパリン)を送る流体ラインを再使用するための洗浄、消毒若しくは無菌化、洗い流し、及びプライミングのためのデバイス、システム及び方法に関する。
【発明の背景】
【0002】
血液透析器を再使用することは当技術分野では標準的な慣行であり、1960年代中頃に最初に採用されている。現在、アメリカ合衆国においては、全ての透析処置の80%以上は、再使用された人工腎臓により実行されている。この実行のための基準は、1980年代中頃に医療器具開発協会(AAMI)によって確立され、その後、ダイアライザの再使用に関して指針書を公開している食品医薬品局により受け入れられた。
【0003】
ダイアライザ再使用は、資金提供の不足によって必要とされた。連邦資金提供は、それが1972年に制定されて以来、インフレーションにより再評価されたドルで計算して90%を越える減少があった。装置の製造材料に対する体液の反応の防止に関連したダイアライザ再使用に関する文書化された臨床的有益性も存在する。これらの反応のうちの一部(例えば急性アナフィラキシー)は、致命的となり得る。
【0004】
関連する血液チューブのセットの再使用も知られているが、現在の再使用の慣行に伴う固有の問題のために、さほど頻繁には実行されていない。血液チューブの再使用を臨床的環境で試みると、凝血塊濾過スクリーンは、血液へ晒された後には洗浄が非常に困難な静脈ラインの気泡トラップ中に存在することが殆どであるので、再使用されるのは一組の動脈の半分のみである。これらのスクリーンは広く存在しているにもかかわらず、それらの有用性を裏付ける証拠が完全に欠如しており、また、それらがその表面の下流側における凝血塊形成源としての要素であるので、そのスクリーンの実施を妨げる厳しい問題を形成することを示すデータが存在する。従って、現在は気泡トラップにフィルタ・スクリーンを含まない静脈血液管ラインが市販されており、この他、気泡トラップ又は凝血塊濾過スクリーンを含まないものも市販されている。
【0005】
再使用は、透析療法の提供者によって設計及び製造された装置を用いて手動で、又は市販の自動化された機器により達成される。技術は若干異なるが、AAMI及びHCFA(アメリカ合衆国保健省医療保険財政管理局、現在はCMS)の尽力を通じて、相当な標準化が起こった。連邦資金補償を受ける資格を得るためには幾つかの品質保証手続きを踏まねばならない。これらは以下を保証することを含む。即ち、殺菌剤の適切な濃度が用いられており、その滞留時間と期間が充分であり、殺菌剤は次の使用に先だって許容できる低レベルに洗い流され、ダイアライザが同じ患者でのみ使用され、小分子輸送率はその初期値の10%以内であり、且つデバイスは漏洩しないことである。
【0006】
使用される様々な殺菌剤は、ホルムアルデヒド、過酢酸/過酸化水素、熱、高温クエン酸、及びグルタルアルデヒドを含む。また、漂白剤及び過酸化水素は、有機材料を保持するダイアライザを浄化して、その美観を改善する酸化剤としてしばしば用いられる。これは重要なことである。というのは、再使用基準は、患者は如何なる理由(ダイアライザの外観も含む)でもダイアライザの再使用を拒否することができると規定するためである。
【0007】
資金補償が減らされ続けているので、透析療法の提供者への経済的圧力は世界中で悪化し続けている。これは、労働及び運営のコストにおける継続的なインフレーションによって拡大される。それ故に、それらのコストを低減してその効率を改善することは提供者側の継続的な探求課題である。自動機器を用いたとしても、各々の再使用に付随する比較的に大きな労力構成要素が依然として存在し、前述のように、殆どの場合にはダイアライザのみが再使用されて、血液チューブセット、針及びIVセットは処置ごとに廃棄される。
【0008】
その上、各々の透析処置の前に、診療所構成員は、新しい血液チューブセットをダイアライザに組み付けて、この体外回路から空気を出して、適切な流体レベルを気泡トラップに設定して、透析装置を殺菌剤を回路から洗い流す(透析する)ように調整して、最後に、残留殺菌剤のレベルが許容限界を下回ることを保証するためにプライミング溶液の手動試験を実行することに依然として時間を費やさねばならない。更に、再使用処理に関与する新人を訓練するための費用があり、この種の被雇用者が入れ替わる率はかなり高いので、その費用は些少ではない。
【0009】
従って、臨床環境に透析処置を提供するための労力及び費用を低減できる方法及びそれに関連する装置を与えることが望ましい。
【0010】
Fentress et al.への米国特許番号第4,552,721号及び4,707,335号は、計装設備を使用することなく、血液処置デバイス及びそれに関連して接続された血液チューブ並びにその他の流体ラインを同時に再処理することを説明している。しかしながら、計装設備を欠くことは、小分子及び水輸送率並びに膜の完全性について品質保証検査を実行することができないことになる。また、高い流量及び圧力(これらは計装設備により適用することができる)が得られないことは、残留有機物を剪断力によって除去する機会を排除してしまう。
【0011】
従って、高い流量及び圧力を提供する目的で、再使用システムに計装設備を与えることが望ましい。
【0012】
Boagへの米国特許第4,695,385号は、ダイアライザ及びそれに関連する血液チューブセットを透析装置へ接続したままで、それらを同時に再処理することも可能なように設計された装置を説明している。しかしながら、これは再処理手順の間、透析装置を一時停止させるので、一日に同一の機器で複数の患者を処置することが要求される透析診療所でシステムを使用することを不可能にしてしまう。従って、このシステムは専ら家庭で使用するように強いられている。
【0013】
同様に、Twardowski et al.への米国特許第6,132,616号は、ダイアライザ及びそれに接続された血液チューブセット(体外回路)を処置と処置との間に透析装置(これは自動化された再使用設備を兼ねる)へとどめておき、体外回路のみならず、透析液及び水浄化流路を同時に熱湯で消毒するシステムを説明している。これもまた、このシステムの使用を専ら一人の患者だけが透析機器を用いる特別な臨床環境に制限する。
【0014】
従って、ダイアライザ及びそれに関連する血液チューブセットを透析装置から外して再処理するシステムを与えることが望ましい。
【0015】
院内血液透析は、通常は、一回あたり3〜5時間に亘って、一週間に三回実行される。これは、各々の血液透析装置が一週間当たりに合計6〜8人の患者について、3〜4人の患者の約2サイクルを処置できることを意味する。しかしながら、毎日の血液透析をなすことが介護の基本であることは明らかになっている。この方法では、代表的には、血液透析は一回あたり2〜3時間に亘って、一週間に6日実行される。毎日の血液透析は、一週間につき3回の処置の場合よりも、通常の腎機能によく似ている。このことは、患者の負の副作用が僅かであり、患者のための食事制限や投薬の一部も低減できるであろうことを意味する。
【0016】
上述したように、多くの人工腎臓は、洗浄消毒してから再使用される。しかしながら、血液チューブは通常は再使用されない。現在、民間保険業者支払いのみならず、メディケア(米国高齢者向け医療保険制度)は、一週間につき3回の治療に基づいている。従って、毎日の血液透析は、付加的な血液管回路と、患者の交替の間の体外回路の据え付け及び解体に要する時間及び労力との付加費用のため、院内では実行可能ではない。現在の補償制度において、診療所で標準的な介護を受けている患者に対する主な障害は、静脈及び動脈血液ラインを効果的且つ時間効率的に再使用する能力に欠けていることである。従って、再使用のために血液チューブを清浄して消毒するシステムを提供することは望ましいことであり、また、据え付け及び解体時間を含めて現在達成されている一回の交替時間とほぼ同じ時間枠で、二人の患者の交替を潜在的に実行できるようにすることは得策である。
【0017】
発明の概要
本発明は、血液離装置のような医療用デバイスを自動的に洗浄し、消毒して、プライミングするためのシステム及び方法を与える。
【0018】
そのシステムは、血液流路と透析流体流路とを有する血液分離装置を含む。このシステムは、患者から血液分離装置まで血液を搬送する血液入口ラインを更に含んでもよい。このシステムは、血液分離装置から患者へ血液を戻す血液出口ラインを更に含んでもよい。システムは、マニホールドを更に含んでもよい。このマニホールドは、血液分離装置へ接続してもよい。このマニホールドは、血液入口ラインの患者側端と血液出口ラインとを係合するための複数のコネクタを含んでもよい。このシステムは、再使用機器を更に含んでもよい。マニホールドを再使用機器へ接続して、血液入口及び出口ラインと血液分離装置とを洗浄し、消毒し、検査して、プライミングするようにしてもよい。
【0019】
本発明の他の態様は、透析装置、血液分離装置、血液入口ライン、血液出口ライン及びマニホールドを与えることを含む方法を与える。この方法は、血液分離装置をマニホールドへ、血液入口及び出口ラインを血液分離装置へ、またマニホールドを透析装置へ接続することを更に含んでもよい。この方法は、血液入口及び出口ラインを患者へ接続して、この患者へ透析治療を行うことを更に含んでもよい。
【0020】
この方法は、患者から血液入口及び出口ラインを取り外して、透析装置からマニホールドを取り外すことを更に含んでもよい。この方法は、血液入口及び出口ラインの端部をマニホールドに結合し、マニホールドを再使用機器に結合し、血液入口及び出口ラインと血液分離装置とを再処理することを更に含んでもよい。
【0021】
本発明の他の態様では、臨床環境で血液透析を行なう方法を与える。この方法は、透析装置、再使用機器、第1の患者透析セット、及び第2の患者透析セットを与えることを含む。この方法は、第1の患者透析セットを透析装置に接続して、第1の患者へ透析治療を与えることを更に含んでもよい。この方法は、第1の患者透析セットを透析装置から取り外して、この第1の患者透析セットを再使用機器に接続して、この第1の患者透析セットを再処理することを更に含んでもよい。
【0022】
この方法は、第2の患者透析セットを透析装置に結合して、第2の患者へ透析治療を与えることを更に含んでもよい。この方法は、第1の患者透析セットを再使用機器から取り外して、第1の患者の透析を保存することを更に含んでもよい。この方法は、第2の患者透析セットを透析装置から取り外して、この第2の患者透析セットを再使用機器に接続して、この第2の患者透析セットを再処理することを更に含んでもよい。
【0023】
本発明の他の特徴及び効果は、添付の説明、図面、及び特許請求の範囲に基づいて明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は一般的な血液透析回路の概略図である。
【図2】図2は本発明によるマニホールドの斜視図である。
【図3】図3は血液透析に用いられる体外回路に接続された図2のマニホールドの正面平面図である。
【図4】図4は透析装置に接続された図3のマニホールド及びそれに関連する体外回路の正面平面図である。
【図5】図5は再使用機器に接続された図3のマニホールド及びそれに関連する体外回路の正面平面図である。
【図6】図6は臨床環境における透析及び再処理のための本発明による方法の概略図である。
【好ましい実施形態の説明】
【0025】
本発明の開示事項は当業者が本発明を実施できるように詳細且つ的確であるが、本明細書に開示された物理的な実施形態は、他の特定の構造で実施してもよい本発明を単に例示するのみである。好ましい実施形態が説明されているが、その詳細は、特許請求の範囲に規定された本発明から逸脱することなく変更することができる。
【0026】
本発明は健全な体外回路12(即ち、次の処置に先立って検査が必要な消毒剤が無い)の迅速な再処理に基づく自動機器のために与えられ、その体外回路12は再使用機器72により供給された電解質溶液で予めプライミングされており、気泡トラップ38(それが存在するならば)におけるレベルが設定されて、全ての要求品質保証検査が実行されて記録される。そのようにすることによって、各々の次の透析処置を準備するための残りの労力構成要因の多くが排除されて、血液チューブセット16,18の費用が激減する。また、再使用技術者のための訓練の程度が低減される。血液透析は、機械が人の血液から有害な廃棄物と、過剰な電解質及び流体とを濾過する処置である。図1は、簡略化された血液透析システムを示す。殆どの血液透析システムは人工腎臓(ダイアライザ10としても知られる)からなり、体外血液回路12及び透析回路14に接続されている。ダイアライザ10は、基本的にフィルタである。図示した実施形態において、ダイアライザ10は、一般に中空繊維半浸透性膜の束を包含するケースからなるが、当技術分野で用いられている任意の形式のフィルタを利用することができる。ダイアライザ10は、動脈(流入)血液ライン16及び静脈(流出)血液ライン18に接続してある。これら三つの構成要素は、一緒に体外血回路を形成する。ダイアライザ10は、透析入口24及び透析出口26のみならず、血液入口20及び血液出口22を有する。
【0027】
動脈ライン16は患者70からダイアライザ10へ血液を輸送する。動脈ライン16は患者端28及びデバイス端30を含む。患者端28は当技術分野で公知の任意の形式の接続手段を用いて患者70へ取り付けられている。デバイス端30は当技術分野で公知の任意の形式の接続手段を用いてフィルタ10の入口20へ取り付けられている。動脈ライン16は、一般にポンプ区画32と、圧力モニタ36へ至る少なくとも一つの側枝34とを含む。動脈ライン16は、圧力モニタ36に関連した少なくとも一つの空気トラップ38を含んでもよい。動脈ライン16は、生理食塩水供給源42へ至る側枝40及び/又は抗凝血剤供給源46へ至る側枝42を含んでもよい。動脈ライン16は、血液を抜き出す及び/又は薬品を注入するための少なくとも一つの注入部位48を含んでもよい。
【0028】
静脈ライン18は、新たに透析された血液をダイアライザ10から輸送して、患者70へ戻す。この静脈ライン18は、患者端51及びデバイス端49を含む。患者端51は、当技術分野で公知の任意の形式の接続手段を用いて患者70へ取り付けられている。デバイス端49は、当技術分野で公知の任意の形式のコネクタを用いてフィルタ10の出口22に取り付けられている。静脈ライン18は、圧力モニタ36へ至る少なくとも一つの側枝34を含んでもよい。静脈ライン18は、圧力モニタ36に関連した空気トラップ38を更に含んでもよい。
【0029】
ダイアライザ10は、透析回路14にも接続してある。この透析回路14は当技術分野ではよく知られている。肝心なこととして、透析回路14は、透析源52と、透析をフィルタ10を通じて圧送するポンプ54とを含む。しかしながら、当技術分野で知られているように、透析処置を監視できるように透析装置66へ取り付けられた透析源52及びポンプ54は一般的に見られるものである。
【0030】
一般に本発明は、血液処置デバイスを洗浄し、殺菌若しくは無菌にし、洗い流し、プライミングするためのシステム及び方法からなる。本発明は好ましくはマニホールド56を含み、これにはダイアライザ10を取り付けて、体外回路の全ての構成要素を単一のユニットとして運搬できるようにしてもよい。このマニホールド56は、ダイアライザ10の透析ポート24,26及び体外回路12の全ての流体ライン16,18が、体外回路12を治療の終了時に透析装置器66から取り外すのに先立って、マニホールド56へ接続されるように寸法付けて構成することが好ましい。多くの流体ライン16,18は、全ての側枝34,40,44,50を含めて、相互に及び再利用機器72へ流体接続されており、体外回路12を再利用のために洗浄及び整備するようにされている。
【0031】
マニホールド56は、血液入口ライン16の患者端28及び血液出口ライン18の患者端51のためのコネクタ60を含む。このマニホールド56は血液入口16及び/又は出口18ラインへ接続された流体側枝の端部のためのコネクタ60を含んでもよい。例えば、マニホールドは生理用食塩水側枝40のためのコネクタ60、投薬側枝44のためのコネクタ60、及び圧力検知側枝34,50のためのコネクタ60を含んでもよい。マニホールド56は、ダイアライザ10に位置する透析入口24及び透析出口26に連通するコネクタ62も含むことが好ましい。
【0032】
マニホールドは、各血液ライン16、18及び側枝34,30,44,50、及びマニホールド56に結合する自動再利用機器72の間の流体連通経路を与える。マニホールド56は更に、透析入口24,透析出口26、及びマニホールド56が結合する自動再使用機器72の間の流体連通経路を与えるように設計してもよい。これは、透析入口24及び出口26コネクタをマニホールド56を通過して、自動再利用装置72へ直接に係合可能とすることにより、この流体経路を設けることが考えられる。
【0033】
マニホールド56は、ダイアライザ10の透析入口24及び出口26ポートがマニホールド56に接続されるとき、マニホールド56が再利用器具72へ接続されるまで、ダイアライザ10の透析回路から流体が出ることが防止される方式で設計することも考えられる。ダイアライザ10の透析入口24及び出口26ポートが、それらが透析装置66へ接続されるのと同じ方式(例えば、ハンセン(Hansen)コネクタで終端するホースを介して)で再利用器具72へ接続することも考えられ、ここではマニホールド56はその結合に全く関与していない。
【0034】
このマニホールド56で用いられるコネクタ60の形式は、体外回路12で使用いられる継手の形式に依存する。例えば、雄ルアー(luer)コネクタが動脈ライン16の患者端28で用いられるならば、マニホールド56におけるコネクタ60は雌ルアーコネクタにしなければならない。この方式では、マニホールドは、管系回路16,18に存在する接続器について適切な数の嵌め合いコネクタ60を単純に設けることにより、任意の入手可能な形式のチューブ回路16,18に結合するように設計して適合させることができる。
【0035】
マニホールド56は、チューブ16,18及び気泡トラップ38の様々な部分を論理的で簡潔な方式で整理する手段64を含んでもよい。管系及び気泡トラップは、任意の公知の手段を用いてマニホールドへ結合してもよい。
【0036】
使用中、マニホールド56はダイアライザ10へ接続される。マニホールド56は透析装置66に接続して、透析回路14をダイアライザ10へ取り付けるようにしてもよい。動脈回路16と静脈回路18との各々は、当技術分野で知られている任意の形式のコネクタ手段を用いて、マニホールド56へ接続されている。何れの側枝34,30,44,50も、当技術分野で知られている任意の形式のコネクタ手段を用いて、適切なデバイスへ取り付けてもよい。例えば、圧力監視側枝34,36が圧力センサ36へ取り付けられて、生理用食塩水側枝40は生理用食塩水源42へ取り付けられて、抗凝血剤側枝44は抗凝血剤源46へ取り付けられている。当技術分野で知られていているように、次いで体外血液回路12を患者70へ取り付けてもよい。かくして透析治療を開始できる。
【0037】
透析が終了した後は、静脈ライン18及び動脈ライン16は患者70からの接続を絶つ。次いで静脈ライン18の患者端51をマニホールド56上のコネクタ60へ取り付けて、動脈ライン16の患者端28をマニホールド56の上の第2のコネクタ60へ取り付ける。任意の付加的な血液ライン、静脈50及び動脈34圧力監視側枝、生理用食塩水注入側枝40、及びヘパリン注入側枝44もマニホールド56上の関連するコネクタ60へ取り付けられる。図5に示すように、ダイアライザ10を含むマニホールド56は、次いで透析装置66から取り外して、別個の再使用機器72に配置するようにしてもよい。マニホールド56は、再使用機器72に気密状に結合することが好ましい。マニホールド56が再使用機器72に置かれているとき、透析入口24及び出口26が再使用機器72に係合することが好ましい。次いで再使用機器72は、ダイアライザ10とそれに関連する動脈ライン16及び静脈ライン18とを処理する。
【0038】
一つの実施形態において、マニホールド56に一体化される流体経路は、体外回路の様々な接続が体外回路に一旦行われたならば、更なる流体流出が防止される方式で設計してもよい。このことを達成する一つの方法は、マニホールド56へ一体化される流体経路を、雌無針コネクタで再使用機器72へ結合する側で終端させることである。無針コネクタは当技術分野ではよく知られており(例えば米国特許第5,100,394号)、代表的には雄雌対応部分からなり、その雌対応部分は通常は注入部位であり、ここでは弾性隔壁(例えば、ラテックス又はシリコンラバー)が予め分割されてハウジング内に圧縮されており、(鋭い針に対する対語として)鈍端雄カニューレが隔壁を貫通して流体の注入又は採取を達成しつつ、隔壁は依然として雄カニューレの周りを完全に封止することを確実にする。マニホールド56における雌無用注入部位終端点は、再使用区具72における相手方鈍端雄カニューレに結合して、マニホールド56が再使用機器72へ押し進められたとき、マニホールド56の内部の流体経路は、体外回路の全ての流体経路にアクセス可能となり、また再使用機器72によりアクセスされる。再使用処理が終了して、体外回路/マニホールドアセンブリが、それを再使用機器72から引き離すことによって取り外されるとき、雌無針注入部位は直ちに閉止して、その中に包含される無菌の電解質溶液の漏出を防止する。同様な設計を再使用機器72への透析器透析ポート24,26の接続器に用いることができる。
【0039】
幾つかの入口16及び出口18血液ラインは、いかなる種類の気泡トラップ38又は側枝34,40,44,50も含まなくてもよいことを理解されたい。この場合、本明細書に説明された体外回路再使用の方法を達成するためには、マニホールド56を必要としないであろう。血液透析のための従来の血液管系セットは、無菌パッケージに包含された再循環コネクタと共に販売されるのが通例である。この再循環コネクタは、動脈16及び静脈18血液ラインの患者端28,51を臨床処置の開始に先だって一緒に結合させることを可能として、残留殺菌剤又はプライミング溶液を透析装置66の制御下で体外回路全体を通じて再循環させることにより、残留汚染物質を透析させる。その同一の再循環コネクタを臨床処置の終了時に採用して、動脈16及び静脈18血液ラインの患者端28,51を再び一緒に接続することにより、体外回路が透析装置66から取り外されて再使用機器72へ移送されるときに流体が流出しないようにすることができる。この場合の再使用機器72への接続は、透析器の透析入口24及び出口26ポートを再使用装置72へ接続するように単純であり、これらは透析装置66におけるものと同一(例えばHAnsen接続器において終端するホース)であり、二つの血液ライン16,18の患者端コネクタ(雄ルアー)が再循環コネクタから一旦接続解除されると、再使用機器72における相手方へ挿入できる。血液ライン16,18の再使用機器72への接続は、これらのラインに、流体を血液ライン16,18へ導くために普通に用いられる正圧下で再使用機器72の吹き飛ばしを防止する方式で係止することが好ましい。
【0040】
閉止した血液回路は、マニホールド又は再循環コネクタの何れかの使用により形成されることを理解されたい。更に、閉止血液回路は、当技術分野で知られている任意の手段により形成することも考えられる。例えば、閉止血液ループは、動脈16と静脈18との両方の血液ラインの患者端28,51の近傍のクランプを閉止することにより作成してもよい。
【0041】
自動化再使用機器72は、体外回路12を洗浄及び消毒する目的で自動化された方式で、マニホールド56の全ての流体経路を通じて様々な流体の通過を制御するようにしてもよい。体外回路12全体は器具72により漏洩を検査してもよい。この器具72は、ダイアライザ10の溶質輸送率を測定して、気泡トラップ38のレベルを設定し、次の処置のために無菌の電解質溶液を体外回路にプライミングしたままにし、全ての必須の良質な保証データを記録、保存、移送して、表示するようにしてもよい。これは、次の透析セッションの準備に要求される時間を削減して、再使用技術者のための訓練の程度を低減させる。
【0042】
体外回路は、処置に先立って何時でも再使用機器72とは非直結で手動でプライミングしてもよい。体外回路を非直結でプライミングするならば、電解質溶液の汚染を避けるために、処置の直前にそうすることが好ましい。
【0043】
本明細書に説明したシステム及び方法は、個別の自動化器具72により、透析装置66とは非直結で、損なわれていない体外回路12(静脈部分18を含む)の再処理が可能であることも理解されたい。このシステム及び方法は、体外回路12の静脈18及び動脈16ラインの再使用を可能とし、毎日の血液透析を臨床環境で可能にするのみならず、一週間に基本的に三回の処置の費用も低減させる。
【0044】
一週間につき三回の透析処置を受ける一人の患者のために、診療所は現在のとこと一年あたり静脈18及び動脈16ラインを156セット使用する必要がある。毎日の処置のためには、この数は、一年あたり静脈18及び動脈16ラインが312セットに達する。本明細書に説明したシステム及び方法を用いると、診療所は単独の体外回路12を各々の患者につき30回以上使用できるであろう。これは、毎日の処置のために各々の患者について一年あたり約10〜11の体外回路12を用い、また、一週間に三回の処置について一年あたり5〜6の体外回路12を用いるということになる。これは一人の患者について一年あたり150〜300セットの静脈18及び動脈16ラインの節約になる。
【0045】
更に、動脈18及び静脈18ラインの新たなセットを透析処置の前にダイアライザ10に取り付ける必要がないので、透析プロセスに付随する労力が低減される。これは更に、血液ライン16,18を各使用に先立って再取り付けする必要がないので、ユーザーの過失(例えば、無菌の流路の接触汚染)のおそれも少なくするであろう。
【0046】
本発明のシステム及び方法は特に臨床環境に有益であることを理解されたい。診療所は、一つの透析装置66及び一つの再使用機器72を有しているであろう。各々の患者にとって、診療所は、マニホールド56に連結した完全な体外回路12(ダイアライザ10を含む)からなる個々の透析セットを利用することができる。各々の透析セットは、単独の患者と共に用いるように専用に設計されていることが好ましい。例えば、診療所が三人の患者を治療するならば、診療所は患者Aについて患者透析セットAを、患者Bについて患者透析セットBを、患者Cについて患者透析セットCを有するようにする。
【0047】
患者Aは、上述の方法により、透析装置66に取り付けられた患者透析セットAを用いて透析を受ける。この患者Aの透析治療が終了した後、患者透析セットAを透析装置66から取り外して、再処理のために再使用機器72へ取り付ける。患者透析セットAを再処理している間、患者透析セットBを透析装置66へ取り付けて、患者Bが透析治療を受けられるようにしてもよい。患者Bの透析治療が終了した後、患者透析セットAを再使用機器72から取り外して、患者Aの次回の治療のために保管庫80へ配置する。次いで患者透析セットBを透析装置66から取り外して、再処理のために再使用機器72へ取り付ける。患者透析セットBを再処理している間、患者透析セットCを透析装置66へ取り付けて、患者Cが透析治療を受けられるようにしてもよい。患者Cの透析治療が終了した後、患者透析セットBを再使用機器72から取り外して、患者Bの次回の治療のために保管庫80へ配置する。次いで患者透析セットCを透析装置66から取り外して、再処理のために再使用機器72へ取り付ける。患者Cがその日の最後の患者であるならば、患者透析セットCは一晩中、再使用機器72に残してもよい。翌朝、患者透析セットCを再使用機器72から取り外して、患者Cの次回の治療のために保管庫80に配置してもよい。患者Cがその日の最後の患者ではないならば、この方法は更なる患者について上述したように続けられるであろう。
【0048】
本発明の目的から逸脱することなく、診療所は相当に多人数の患者を治療できることを理解されたい。治療する患者の人数に関係なく、各々の患者の透析セットは、使用の後、透析装置66から取り外して、患者の次回の治療に先だって再使用機器72において最処理するようにしてもよい。この方式では、診療所は異なる患者の透析セットを再処理しながら、同時に一人の患者を治療できるので、診療所が毎日治療できる患者数が増大する。更に、体外回路12はダイアライザ10を通じて常にマニホールド56へ取り付けられたままであり、静脈18及び動脈回路16は各々の使用の後にダイアライザ10から接続解除されないので、各患者の治療ごとにダイアライザ10に対して体外回路12を組み立て及び分解するための労力が低減することにより、診療所の効率は増大するであろう。
【0049】
マニホールド56に用いられるコネクタ60の形式は、本発明から逸脱することなく変更可能であることを理解されたい。更に、コネクタ60,62の構成及び数は、使用される動脈16及び静脈18ライン並びに分析器10の形式に依っており、且つマニホールド56を現在若しくは将来利用可能な任意の形式の動脈16及び静脈18ライン並びにダイアライザ10と共に使用できるように適合させる目的で変更できることも理解されたい。例えば、入口(動脈)16及び出口(静脈)18の血液ラインは、エアトラップ38又は側枝34,40,44,50を含まないものが当技術分野で知られている。この場合、血液ライン16,18からマニホールド56への接続のみが患者端コネクタ28,51になり、一旦接続されたならば、体外回路に包含される残留流体は、その後はしたたり出ることがない。この場合でさえも、既に説明したように、マニホールド56は、血液ライン16,18及びダイアライザ10を、潜在的感染のおそれのある患者血液が血液流路から流出する危険を伴わずに、透析装置66から再使用機器72へ単独のユニットとして都合良くしかも迅速に移送するための構成体としての役割を果たす。これはまた、再使用機器72への便利で迅速な取り付け方法も与える。
【0050】
同じ機器72及びその関連部品は、処置に先立つ無菌電解質溶液による体外回路12の自動化したプライミングに作用するように用いることも考えられる。これは、再使用プロセスを更に単純化して、必要な労力の量を低減する。
【0051】
上述の説明は本発明の目的の例示のみを意図してなされたものである。更に、幾多の変更例及び変形例が当業者には容易に想到し得るので、本発明を図示及び説明された正確な構造及び操作に限定することを望むものではない。好ましい実施形態について説明したが、その詳細については、特許請求の範囲により規定された発明から逸脱することなく変更し得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療デバイスを自動的に洗浄し、消毒し、検査し、プライミングをするためのシステムであって、
血液流路と更なる流体流路とを有し、その血液流路は血液入口及び血液出口を有する血液分離デバイスと、
デバイス端と患者端とを有し、そのデバイス端は前記血液分離デバイスの血液出口に係合するように寸法付け及び構成される血液出口ラインと、
デバイス端と患者端とを有し、そのデバイス端は前記血液分離デバイスの血液入口に係合するように寸法付け及び構成される血液入口ラインと、
前記血液分離デバイスと係合するように寸法付け及び構成されると共に、複数のコネクタを有し、これらのコネクタは前記血液入口ラインと前記血液出口ラインとの前記患者端に係合するように寸法付け及び構成されるマニホールドと、
前記マニホールドに結合するように寸法付け及び構成されて、前記血液出口及び入口ラインと前記血液分離デバイスとを洗浄するように適合されている再使用機器とを備えるシステム。
【請求項2】
請求項1のシステムにおいて、
前記血液入口ラインは少なくとも一つの側枝を更に含み、この側枝は自由端を含むと共に、
前記マニホールドは少なくとも一つのコネクタを含み、このコネクタは前記少なくとも一つの血液入口ラインの側枝の前記自由端に係合するように寸法付け及び構成されているシステム。
【請求項3】
請求項2のシステムにおいて、
前記血液出口ラインは少なくとも一つの側枝を更に含み、この側枝は自由端を含むと共に、
前記マニホールドは少なくとも一つのコネクタを含み、このコネクタは前記少なくとも一つの血液出口ラインの側枝の前記自由端に係合するように寸法付け及び構成されているシステム。
【請求項4】
請求項3のシステムにおいて、前記マニホールドは、前記血液入口ラインと、前記血液出口ラインと、前記少なくとも一つの血液入口ラインの側枝と、前記少なくとも一つの血液出口ラインの側枝と、前記マニホールドが結合する前記再使用機器との各々の間に流体連通路を与えるように寸法付け及び構成されているシステム。
【請求項5】
請求項1のシステムにおいて、前記再使用機器は更に、前記血液入口ライン、前記血液出口ライン、及び前記血液分離デバイスを消毒するように適合されているシステム。
【請求項6】
請求項1のシステムにおいて、前記再使用機器は更に、前記血液入口ライン、前記血液出口ライン、及び前記血液分離デバイスをプライミングするように適合されているシステム。
【請求項7】
請求項1のシステムにおいて、前記再使用機器は更に、前記血液入口ライン、前記血液出口ライン、及び前記血液分離デバイスを漏洩について検査するように適合されているシステム。
【請求項8】
請求項1のシステムにおいて、前記マニホールドは、前記血液分離デバイスの前記更なる流体経路と、前記マニホールドが結合する前記再使用機器との間に流体連通路を与えるように寸法付け及び構成されているシステム。
【請求項9】
透析装置及び再使用機器を与え、
血液入口ポート及び血液出口ポートを有する血液分離デバイスを与え、
前記血液分離デバイスの血液入力ポートに係合するように適合されたデバイス端と、患者端とを有する血液入口ラインを与え、
前記血液分離デバイスの血液入力ポートに係合するように適合されたデバイス端と、患者端とを有する血液出口ラインを与え、
前記血液分離デバイスに係合するように寸法付け及び構成されると共に、複数のコネクタを有し、これらのコネクタは前記血液入口ラインと前記血液出口ラインとの前記患者端に係合するように寸法付け及び構成されるマニホールドを与え、
前記血液分離デバイスを前記マニホールドへ接続し、
前記血液入口ラインを前記血液分離デバイスの前記血液入口へ接続し、
前記血液出口ラインを前記血液分離デバイスの前記血液出口へ接続し、
前記マニホールドを前記透析装置へ接続し、
前記血液入口ラインと前記血液出口ラインとの前記患者端を患者へ接続すると共に、
患者へ透析処置を与えることからなる方法。
【請求項10】
請求項9の方法において、
前記血液入口ラインと前記血液出口ラインとの前記患者端を患者から取り外し、
前記血液入口ラインと前記血液出口ラインとの前記患者端を前記マニホールドの前記コネクタに接続して、
このマニホールドを前記透析装置から取り外すことを更に含む方法。
【請求項11】
請求項10の方法において、
前記マニホールドを前記再使用機器へ接続して、
前記血液入口ライン、前記血液出口ライン、及び前記血液分離装置を洗浄することを更に含む方法。
【請求項12】
請求項11の方法において、前記血液入口入ライン、前記血液出口ライン、及び前記血液分離装置を消毒することを更に含む方法。
【請求項13】
請求項11の方法において、前記血液入口入ライン、前記血液出口ライン、及び前記血液分離装置をプライミングすることを更に含む方法。
【請求項14】
請求項11の方法において、前記血液入口ライン、前記血液出口ライン、及び前記血液分離デバイスを漏洩について検査することを更に含む方法。
【請求項15】
透析装置を与える段階と、
再使用機器を与える段階と、
各々の患者透析セットが、少なくとも、血液分離デバイス、血液入口ライン、及び血液出口ラインを含む二つの患者透析セットを与える段階と、
第1の患者透析セットを前記透析装置へ接続する段階と、
第1の患者へ透析処置を与える段階と、
前記透析セットを、この透析セット内に閉止血液回路を与えるように構成する段階と、
前記透析装置から第1の患者透析セットを取り外す段階と、
第1の患者透析セットを前記再使用機器へ接続する段階と、
第1の患者透析セットを再使用のために再処理する段階とを含む方法。
【請求項16】
請求項15の方法において、
第2の患者透析セットを前記透析装置へ接続する段階と、
第2の患者へ透析処置を与える段階とを更に含む方法。
【請求項17】
請求項16の方法において、
第1の患者透析セットを前記再使用機器から取り外す段階と、
この第1の患者透析セットを保管する段階と、
第2の患者透析セットを前記透析装置から取り外す段階と、
この第2の患者透析セットを前記再使用機器へ接続する段階とを更に含む方法。
【請求項18】
請求項15の方法において、
前記構成する段階が前記血液入口ラインの患者端を前記血液出口ラインの患者端へ接続する段階を更に含む方法。
【請求項19】
請求項15の方法において、
前記透析セットがマニホールドを更に含むと共に、
前記構成する段階が前記血液入口ラインの患者端及び前記血液出口ラインの患者端を前記マニホールドへ接続する段階を更に含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−532228(P2010−532228A)
【公表日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−515165(P2010−515165)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【国際出願番号】PCT/US2008/068491
【国際公開番号】WO2009/006261
【国際公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(510004701)エイチエイチディー、エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】