説明

血液成分の測定方法、それに用いるバイオセンサおよび測定装置

【課題】血液の血球量および妨害物質量を高精度および高信頼性で測定し、その結果に基づいて血液成分量を正確に補正することが可能な、血液成分の測定方法を提供する。
【解決手段】血液成分測定用センサにおいて、第1の作用極13で血液成分の酸化還元反応時に流れた電流を、第2の作用極17で血球量を、第3の作用極12で妨害物質量を測定する。次に、得られた結果に基づいて対象とする血液成分量を補正する。それにより、より精度・正確度の高い血液成分量の測定を実現する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液成分の測定方法、それに用いるバイオセンサおよび測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
臨床検査や糖尿病患者の血糖値自己測定等において、血液成分測定用センサが従来から使用されている。血液成分測定用センサは、例えば、その表面に作用極および対極が形成された絶縁基板の上に、スペーサを介してカバーが配置されている構成である。前記作用極および対極の上には、酸化還元酵素およびメディエータ(電子伝達体)等を含む試薬が配置されており、この部分が分析部となる。この分析部には、血液を導入するための流路の一端が連通しており、前記流路の他端は外部に向かって開口しており、ここが血液供給口となる。このようなセンサを用いた血液成分の分析(例えば、血糖値)は、例えば、次のようにして行われる。すなわち、まず、前記センサを専用の測定装置(メータ)にセットする。そして、指先等をランセットで傷つけて出血させ、これに前記センサの血液供給口を接触させる。血液は、毛細管現象によりセンサの流路に吸い込まれ、これを通って分析部に導入され、ここで、前記試薬と接触する。そして、血液中の成分と、酸化還元酵素が反応して酸化還元反応が起こり、メディエータを介して電子が電極へと移動する。この際に流れる電流を検出し、前記測定装置で血液成分量に換算して表示する。
【0003】
しかしながら、上記のような電気化学式血糖センサのセンサ応答は、易酸化性化合物(例えば、アスコルビン酸や尿酸)をはじめとする妨害物質や、血球量/ヘマトクリット(Hct)の影響を受ける場合がある。そこで正しい測定値を得るためには、妨害物質量、血球量、あるいはその双方を定量し、その値に基づいて血液成分量(血糖値等)を補正する必要がある。例えば、2つの作用極と、1つの参照電極とによる血球量の測定により、血液成分量を補正するセンサがある(特許文献1参照)。この他に、メディエータを用いて血球量を測定する方法もある(特許文献2参照)。また、妨害物質検知電極を用いた、妨害物質の定量に関する方法もある(特許文献3参照)。しかしながら、従来の技術では、測定される血球量および妨害物質量の精度および信頼性に問題があり、十分な補正ができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2003−501627号公報
【特許文献2】特許第3369183号公報
【特許文献3】特許第3267933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、血球量および妨害物質量を高精度および高信頼性で測定することにより、血液成分量を正確に補正可能な血液成分の測定方法、それに用いるバイオセンサおよび測定装置の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明の測定方法は、メディエータの存在下、血液成分を酸化還元酵素で酸化還元し、その際に生じる酸化還元電流を作用極および対極を有する第1の電極系で検出し、前記電流値を前記血液成分量に換算する血液成分量測定工程と、前記血液成分量を血液中の血球量で補正する血球量補正工程と、前記血液成分量を血液中の妨害物質量で補正する妨害物質量補正工程とを有し、前記血球量補正工程は、作用極および対極を有する第2の電極系を準備し、前記第2の電極系のうち、作用極上にはメディエータを配置せず、対極上にはメディエータを配置し、前記第2の電極系に血液を導入し、この状態で前記第2の電極系に電圧を印加し、これにより前記第2の電極系に流れる酸化還元電流を検出し、この電流値を前記血球量に換算し、この値を基にして前記血液成分量を補正する工程であり、前記妨害物質補正工程は、作用極および対極を有する第3の電極系を準備し、前記第3の電極系に血液を導入し、この状態で前記第3の電極系に電圧を印加し、これにより前記第3の電極系に流れる酸化還元電流を検出し、この電流値を前記妨害物質量に換算し、この量を基にして前記血液成分量を補正する工程である血液成分の測定方法である。
【0007】
また、本発明のバイオセンサは、血液成分を酸化還元し、その反応による酸化還元電流を電極で検出することにより前記血液成分を測定するバイオセンサをであって、第1の分析部、第2の分析部および第3の分析部を有し、前記第1の分析部は、第1の電極系を有し、前記第2の分析部は、第2の電極系を有し、前記第3の分析部は、第3の電極系を有し、前記第1の電極系上には、少なくとも前記血液成分を基質とする酸化還元酵素とメディエータとが配置され、前記第1の分析部において、メディエータの存在下、前記血液成分を前記酸化還元酵素で酸化還元し、電圧を印加した際に生じる酸化還元電流を前記第1の電極系で検出して前記血液成分を測定し、前記第2の分析部において、前記第2の電極系は、作用極および対極を有し、前記第2の電極系のうち、作用極上にはメディエータが配置されておらず、対極上にはメディエータが配置されており、前記第2の電極系に血液を導入し、この状態で前記第2の電極系に電圧を印加し、これにより前記第2の電極系に流れる酸化還元電流を検出することにより前記血液中の血球量を測定し、前記第3の分析部において、前記第3の電極系は、作用極および対極を有し、前記第3の電極系に血液を導入し、この状態で前記第3の電極系に電圧を印加し、これにより前記第3の電極系に流れる電流を検出することにより前記血液中の妨害物質量を測定するバイオセンサである。
【0008】
そして、本発明の測定装置は、前記本発明のバイオセンサを用いて血液成分量を測定する測定装置であって、前記血液成分を酸化還元酵素で酸化還元し、その際に生じる酸化還元電流を前記第1の電極系で検出し、前記電流値を前記血液成分量に換算する血液成分量測定手段と、前記血液成分量を血液中の血球量で補正する血球量補正手段と、前記血液成分量を血液中の妨害物質量で補正する妨害物質量補正手段とを有し、前記血球量補正手段は、前記血球量の測定のための第2の電極系を用い、前記血液存在下、前記第2の電極系に電圧を印加して流れる電流を検出し、この電流値を血球量に換算し、この値を基にして前記血液成分量を補正する手段であり、前記妨害物質量補正手段は、前記妨害物質量の測定のための第3の電極系を用い、前記血液存在下、前記第3の電極系に印加して流れる電流を検出し、この電流値を前記妨害物質量に換算し、この量を基にして前記血液成分量を補正する手段である測定装置である。
【発明の効果】
【0009】
このように、血液成分の測定において、作用極を複数準備し、その中のある作用極を用いて血液成分量を測定し、他の作用極で血球量および妨害物質量を測定すれば、血球量および妨害物質量を高精度で測定することができ、この結果、これを用いた血液成分量の補正も高精度かつ高信頼性で行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明のセンサの一例を示す分解斜視図である。
【図2】図2は、図1のセンサの断面図である。
【図3】図3は、図1のセンサの平面図である。
【図4】図4は、本発明のセンサのその他の例を示す分解斜視図である。
【図5】図5は、図4のセンサの断面図である。
【図6】図6は、図4のセンサの平面図である。
【図7】図7は、本発明のセンサのさらにその他の例を示す平面図である。
【図8】図8は、本発明のセンサのさらにその他の例を示す分解斜視図である。
【図9】図9は、図8のセンサの断面図である。
【図10】図10は、図8のセンサの平面図である。
【図11】図11は、本発明のセンサのさらにその他の例を示す平面図である。
【図12】図12は、妨害物質量に対する応答電流の測定結果の例を示すグラフである。
【図13】図13は、血球量に対する応答電流の測定結果の一例を示すグラフである。(a)は、印加電圧(V)に対する応答電流値(μA)の経時的変化を表すグラフであり、(b)は、印加電圧(V)に対する感度差の経時変化のグラフである。
【図14】図14は、血球量に対する応答電流の測定結果のその他の例を示すグラフである。(a)は、印加電圧(V)に対する応答電流値(μA)の経時的変化を表すグラフであり、(b)は、印加電圧(V)に対する感度差の経時変化のグラフである。
【図15】図15は、血球量に対する応答電流の測定結果のさらにその他の例を示すグラフである。(a)は、印加電圧(V)に対する応答電流値(μA)の経時的変化を表すグラフであり、(b)は、印加電圧(V)に対する感度差の経時変化のグラフである。
【図16】図16は、血球量に対する応答電流の測定結果のさらにその他の例を示すグラフである。(a)は、印加電圧(V)に対する応答電流値(μA)の経時的変化を表すグラフであり、(b)は、印加電圧(V)に対する感度差の経時変化のグラフである。
【図17】図17は、血球量に対する応答電流の測定結果のさらにその他の例を示すグラフである。(a)は、印加電圧(V)に対する応答電流値(μA)の経時的変化を表すグラフであり、(b)は、印加電圧(V)に対する感度差の経時変化のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明において、前記血球量による補正は、予め作成した血球量と血液成分量との検量線および検量テーブルの少なくとも一方による補正であることが好ましい。また、本発明において、前記妨害物質量を基にした前記血液成分量の補正は、予め作成した妨害物質量と血液成分量との検量線および検量テーブルの少なくとも一方による補正であることが好ましい。
【0012】
本発明において、前記第3の電極系のうち、少なくとも対極上にメディエータが存在することが好ましい。
【0013】
本発明において、前記第1の電極系、前記第2の電極系および前記第3の電極系の作用極および対極の少なくとも一つを、他のいずれかの電極と共用してもよい。また、本発明の血液成分の測定方法において、ある工程では、作用極として用いた電極を、別の工程では、対極として用いてもよく、その逆でもよい。
【0014】
本発明において、血液成分量測定、血球量測定、および妨害物質量測定の順序は特に制限されないが、血球量の測定を最後に行うことが好ましい。血液成分量測定および妨害物質量測定については、どちらを先に実施してもよく、同時に実施してもよい。
【0015】
本発明において、前記妨害物質量の測定の前に、前記第3の電極系を前処理するための電圧を、前記第3の電極系に印加することが好ましい。この前処理を実施することで前記第3の電極系表面が清浄化され、より精度の高い妨害物質量、および血球量の測定が可能となる。
【0016】
本発明において、前記電極前処理のために、前記第3の電極系の作用極に印加する電圧は、前記第3の電極系の対極に対して、0.01〜1Vの範囲であることが好ましい。
【0017】
本発明において、前記妨害物質量の測定のために、前記第3の電極系の作用極に印加する電圧は、前記第3の電極系の対極に対して0.01〜1Vの範囲であることが好ましく、より好ましくは、0.01〜0.5Vの範囲である。
【0018】
本発明において、前記血球量の測定のために、前記第2の電極系の作用極に印加する電圧は、前記第2の電極系の対極に対して1V以上であることが好ましく、より好ましくは、1〜10Vの範囲、さらに好ましくは、1〜5Vの範囲である。
【0019】
本発明において、測定対象の血液成分は、例えば、グルコース、乳酸、尿酸、ビリルビンおよびコレステロール等である。また、前記酸化還元酵素は、測定対象の血液成分に応じ適宜選択される。前記酸化還元酵素としては、例えば、グルコースオキシダーゼ、ラクテートオキシダーゼ、コレステロールオキシダーゼ、ビリルビンオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、ラクテートデヒドロゲナーゼなどがある。前記酸化還元酵素の量は、例えば、センサ1個当り、若しくは1回の測定当り、例えば、0.01〜100Uであり、好ましくは、0.05〜10Uであり、より好ましくは、0.1〜5Uである。このなかでも、グルコースを測定対象にする場合の酸化還元酵素は、グルコースオキシダーゼおよびグルコースデヒドロゲナーゼが好ましい。
【0020】
本発明のバイオセンサにおいて、血液を導入するための流路を有しており、前記流路の一端から供給された血液の流れの最も上流側に前記第2の分析部または前記第3の分析部の作用極が配置され、下流側に他の電極が配置されていることが好ましい。
【0021】
本発明のバイオセンサにおいて、前記流路の最も下流側に前記第1の分析部が配置されていることが好ましい。
【0022】
本発明のバイオセンサにおいて、前記第3の電極系の作用極上に、メディエータが配置されなくともよく、この場合には、前記第2の電極系の作用極と、前記第3の電極系の作用極とが共用されてもよい。さらに、この場合においては、前記第2電極系の対極および前記第3の電極系の対極の少なくとも一方が、前記第1の電極系のいずれかの電極若しくはそれらの電極の組合せと共用されてもよい。
【0023】
本発明のバイオセンサにおいて、前記第2の電極系の対極と、前記第3の電極系の作用極とは、互いに共用されてもよい。
【0024】
本発明のバイオセンサにおいて、前記第3の電極系の作用極にメディエータが配置されてもよく、この場合には、前記第3の電極系の作用極と前記第2の電極系の対極とが共用されるとともに、前記第3の電極系の対極が、前記第1の電極系の対極と共用されてもよい。
【0025】
本発明のバイオセンサにおいて、さらに、液検知電極を有し、この液検知電極は、前記各分析部の少なくとも一つよりも後方に位置し、この液検知電極により、前記各分析部の少なくとも一つに血液が導入されたことを検知可能であることが好ましい。前記液検知電極により、血液量不足による測定エラーを防止することができ、より正確な血液成分量の測定が可能となる。前記第1の電極系、前記第2の電極系および前記第3の電極系の作用極および対極の少なくとも一つが前記液検知電極を兼ねてもよい。また、本発明の装置は、さらに、前記液検知電極により、バイオセンサの内部に血液が導入されたことを検知する検知手段を含むことが好ましい。
【0026】
本発明において、メディエータを用いても良い。用いられるメディエータは、特に制限されない。例えば、フェリシアン化物、p−ベンゾキノン、p−ベンゾキノン誘導体、フェナジンメトサルフェート、メチレンブルー、フェロセン、フェロセン誘導体等があげられる。この中で、フェリシアン化物が好ましく、より好ましくはフェリシアン化カリウムである。前記メディエータの配合量は、特に制限されず、1回の測定当り若しくはセンサ1個当り、例えば、0.1〜1000mMであり、好ましくは1〜500mMであり、より好ましくは、10〜200mMである。
【0027】
本発明において、不純物の付着防止および酸化防止等の目的で、各電極は、高分子材料により被覆されていてもよい。前記高分子材料としては、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリジン等のポリアミノ酸、ポリスチレンスルホン酸、ゼラチンおよびその誘導体、ポリアクリル酸およびその塩、ポリメタクリル酸およびその塩、スターチおよびその誘導体、無水マレイン酸重合体およびその塩、アガロースゲルおよびその誘導体などがあげられる。これらは、単独で使用してもよいし、2種類以上で併用してもよい。高分子材料による電極の被覆は、特に制限されず、例えば、高分子材料溶液を準備し、これを電極表面に塗布し、ついで乾燥させて前記塗膜中の溶媒を除去すればよい。
【0028】
次に、本発明の血液成分測定用センサ等の実施例について、図面に基づき説明する。
【実施例1】
【0029】
図1、図2および図3に、本発明の血液成分測定用センサの一例を示す。図1は、前記センサの分解斜視図であり、図2は断面図であり、図3は平面図であり、前記三図において、同一部分には同一符号を付している。
【0030】
図示のように、このセンサは、絶縁基板101の上に、第1の作用極13と第1の対極15とからなる第1の電極系、第2の作用極17と第2の対極11とからなる第2の電極系と、第3の作用極12と第3の対極16からなる第3の電極系、および液検知電極14が形成されている。前記第1の電極系上には、第1の試薬層23が、前記第2の対極11上には、第2の試薬層21が、前記第3の電極系上には、第3の試薬層22が配置されている。前記第1の試薬層23は、グルコースデヒドロゲナーゼ等の酸化還元酵素、フェリシアン化カリウム等のメディエータを含み、任意成分として、酵素安定化剤、結晶均質化剤等を含む。前記第2の試薬層21および前記第3の試薬層22は、フェリシアン化カリウム等のメディエータを含み、任意成分として、酵素安定化剤、結晶均質化剤等を含む。前記絶縁基板101の上には、一方の端部(図において右側端部)を残してスペーサ102を介しカバー103が配置されている。このセンサには、各電極(11〜17)に血液を導入するために、絶縁基板101、スペーサ102およびカバー103から成る流路24が形成されている。この流路24の先端は、センサの他方の端部(図において左側端部)まで延伸しており、外部に対し開口することで血液供給口となっている。前記7個の電極(11〜17)は各々リードと連結し、これらのリードは、前記一方の端部側(図において右側端部)に延びており、リードの先端はカバーに覆われずに露出している。前記カバー103において、流路24の右側端部に対応する部分には、空気孔25が形成されている。
【0031】
本発明において、前記絶縁基板の材質は、特に制限されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリオキシメチレン(POM)、モノマーキャストナイロン(MC)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、メタクリル樹脂(PMMA)、ABS樹脂(ABS)、ガラス等が使用でき、このなかで、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)およびポリイミド(PI)が好ましく、より好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)である。絶縁基板の大きさは、特に制限されず、例えば、全長5〜100mm、幅2〜50mm、厚み0.05〜2mmであり、好ましくは、全長7〜50mm、幅3〜20mm、厚み0.1〜1mmであり、より好ましくは、全長10〜30mm、幅3〜10mm、厚み0.1〜0.6mmである。前記絶縁基板の材質および大きさについては、後述の実施例2〜6においても同様である。
【0032】
絶縁基板上の電極およびリードは、例えば、金、白金、パラジウム等を材料として、スパッタリング法あるいは蒸着法により導電層を形成し、これをレーザーにより特定の電極パターンに加工することで形成できる。レーザーとしては、例えば、YAGレーザー、CO2レーザー、エキシマレーザー等が使用できる。これについても、後述の実施例2〜6において同様である。
【0033】
前記第1の試薬層23は、次のようにして形成する。例えば、グルコースデヒドロゲナーゼを0.1〜5U/センサ、フェリシアン化カリウムを10〜200mM、マルチトールを1〜50mM、タウリンを20〜200mM含む水溶液を円形のスリット部20に滴下し、乾燥させる。このスリット部20を設置することで、滴下された水溶液の拡がりを抑制することができ、第1の試薬層23をより正確な位置に配置することができる。これにより、第1の作用極13および第1の対極15上に第1の試薬層23が形成される。前記乾燥は、例えば、自然乾燥でも温風を用いた強制乾燥でもよいが、高温過ぎると酵素が失活するおそれがあるので、50℃前後の温風を用いることが好ましい。
【0034】
前記第2の試薬層21は、次のようにして形成する。例えば、フェリシアン化カリウムを10〜200mM、タウリンを20〜200mM含む水溶液を円形のスリット部18に滴下し、乾燥させる。このスリット部18を設置することで、滴下された水溶液の拡がりを抑制することができ、第2の試薬層21をより正確な位置に配置することができる。これにより、第2の対極11上に第2の試薬層21が形成される。
【0035】
前記第3の試薬層22は、次のようにして形成する。例えば、フェリシアン化カリウムを10〜200mM、タウリンを20〜200mM含む水溶液を円形のスリット部19に滴下し、乾燥させる。このスリット部19を設置することで、滴下された水溶液の拡がりを抑制することができ、第3の試薬層22をより正確な位置に配置することができる。これにより、第3の作用極12および第3の対極16上に第3の試薬層22が形成される。
【0036】
本発明において、スペーサの材質は、特に制限されず、例えば、絶縁基板と同様の材料が使用できる。また、スペーサの大きさは、特に制限されず、例えば、全長5〜100mm、幅2〜50mm、厚み0.01〜1mmであり、好ましくは、全長7〜50mm、幅3〜20mm、厚み0.05〜0.5mmであり、より好ましくは、全長10〜30mm、幅3〜10mm、厚み0.05〜0.25mmである。この例のスペーサには、血液導入のための流路となるI字形状の切欠部が形成されているが、その大きさは、例えば、全長0.5〜8mm、幅0.1〜5mm、好ましくは、全長1〜10mm、幅0.2〜3mm、より好ましくは、全長1〜5mm、幅0.5〜2mmである。この切欠部は、例えば、レーザーやドリル等で穿孔して形成してもよいし、スペーサの形成時に、切欠部が形成できるような金型を使用して形成してもよい。前記スペーサの材質および大きさ並びに切欠部については、後述の実施例2〜6においても同様である。
【0037】
本発明において、カバーの材質は、特に制限されない。例えば、絶縁基板と同様の材料が使用できる。カバーの血液を導入するための流路の天井部に相当する部分は、親水処理されることがさらに好ましい。親水処理としては、例えば界面活性剤を塗布する方法、プラズマ処理などによりカバー表面に水酸基、カルボニル基、カルボキシル基などの親水性官能基を導入する方法等がある。また、試薬層上にレシチン等の界面活性剤からなる層を形成してもよい。カバーの大きさは、特に制限されない。例えば、全長5〜100mm、幅3〜50mm、厚み0.01〜0.5mmであり、好ましくは、全長10〜50mm、幅3〜20mm、厚み0.05〜0.25mmであり、より好ましくは、全長15〜30mm、幅5〜10mm、厚み0.05〜0.1mmである。カバーには空気孔が形成されていることが好ましく、形状は、例えば、円形、楕円形、多角形等である。その大きさは、例えば、最大直径0.01〜10mm、好ましくは、最大直径0.05〜5mm、より好ましくは、最大直径0.1〜2mmである。この空気孔は、例えば、レーザーやドリル等で穿孔して形成してもよいし、カバーの形成時に、空気抜き部が形成できるような金型を使用して形成してもよい。前記カバーの材質および大きさ並びに空気孔については、後述の実施例2〜6においても同様である。
【0038】
さらに、このセンサは、絶縁基板、スペーサおよびカバーをこの順序で積層し、一体化することで製造できる。前記3つの部材は、接着剤あるいは熱融着等で貼り合わせることにより一体化される。前記接着剤としては、例えば、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤、ポリウレタン系接着剤、また熱硬化性接着剤(ホットメルト接着剤等)、UV硬化性接着剤等が使用できる。これについても、後述の実施例2〜6において同様である。
【0039】
このセンサを用いた血糖値測定は、例えば、次のようにして実施される。まず、専用のランセットで指先等を穿刺し、出血させる。一方、前記センサを専用の測定装置(メータ)にセットする。出血した血液に、測定装置にセットしたセンサの血液供給口を接触させ、毛細管現象により血液をセンサ内部に導入する。このセンサによる分析は、次のステップにより行われる。
【0040】
(ステップ1:検体(血液)の検知)
第1の対極15と液検知電極14の両電極間に電圧を印加することにより、血液の導入を検知する。血液検知に用いられる電極の組合せは、決してこれに限定されるものではない。血液の導入を確認後、以降のステップを開始する。ステップ1での印加電圧は、例えば、0.05〜1.0V、好ましくは、0.1〜0.8V、より好ましくは、0.2〜0.5Vである。
【0041】
(ステップ2:グルコースの測定)
血液中のグルコースと酸化還元酵素とを一定時間反応させた後、第1の作用極13を作用極、第1の対極15を対極として、第1の作用極13に電圧を印加する。酵素反応により第1の作用極13上に生じた還元状態のメディエータを酸化し、その酸化電流を検出する。前記グルコースと酸化還元酵素との反応時間は、例えば、0〜60秒、好ましくは、1〜30秒、より好ましくは、2〜10秒である。ステップ2での印加電圧は、例えば、0.05〜1V、好ましくは、0.1〜0.8V、より好ましくは、0.2〜0.5Vであり、印加時間は、例えば、0.01〜30秒、好ましくは、0.1〜10秒、より好ましくは、1〜5秒である。
【0042】
(ステップ3:妨害物質量の測定)
第3の作用極12を作用極、第3の対極16を対極として、第3の作用極12に電圧を印加することにより、妨害物質の電解酸化反応に基づく電流が検出される。この結果に基づいて妨害物質量を測定する。この妨害物質量は、グルコース測定時の補正に使用される。この補正では、予め作成された電流と妨害物質量との検量線から求めた妨害物質量を使用してもよいし、検出された電流をそのまま使用してもよい。ステップ3での印加電圧は、例えば、0.01〜1V、好ましくは、0.01〜0.5Vであり、印加時間は、例えば、0.001〜60秒、好ましくは、0.01〜10秒、より好ましくは、0.01〜5秒である。本実施例では、第3の電極系の作用極および対極の双方にメディエータが存在するので、前記妨害物質の電解酸化反応に基づく電流が大きくなり、この結果、妨害物質量の測定をより高精度で行うことができる。
【0043】
(ステップ4:血球量の測定)
第2の作用極17を作用極、第2の対極11を対極として、第2の作用極17に電圧を印加することにより、血球量に依存する電解電流を検出できる。この結果に基づき血球量を測定する。この血球量は、グルコース測定時の補正に使用される。この補正では、予め作成された電解電流と血球量との検量線から求めた血球量を使用してもよいし、検出された電解電流をそのまま使用してもよい。ステップ4での印加電圧は、例えば、1〜10V、好ましくは、1〜5V、より好ましくは、2〜3Vである。印加時間は、例えば、0.001〜60秒、好ましくは、0.01〜10秒、より好ましくは、0.01〜5秒である。
【0044】
(ステップ5:血液成分量の補正)
ステップ3で測定した妨害物質量、およびステップ4で測定した血球量により、ステップ2で得られたグルコース量を補正する。この補正は、予め作成した検量線(検量テーブルを含む)に基づき行うことが好ましい。補正されたグルコース量は、測定装置に表示若しくは記憶される。
【実施例2】
【0045】
図4、図5および図6に、本発明の血液成分測定用センサのその他の例を示す。図4は、前記センサの分解斜視図であり、図5は断面図であり、図6は平面図であり、前記三図において、同一部分には同一符号を付している。この例のセンサは、実施例1のセンサの第2の電極系の対極を第1の電極系若しくは第3の電極系のいずれかの電極若しくはそれらの電極の組合せと共用したものである。このように、電極を共用することで、血液を導入するための流路をより短くすることが可能となり、検体である血液の必要量をより少なくすることができる。また、前記電極の共用により、試薬層の数も2つに減らすことができる。
【0046】
図示のように、このセンサは、絶縁基板301の上に、第1の作用極33と第1の対極35とからなる第1の電極系、第2の作用極37、第3の作用極32と第3の対極36とからなる第3の電極系、および液検知電極34が形成されている。前記第1の電極系上には、第1の試薬層43が、前記第3の電極系上には、第3の試薬層42が配置されている。前記第1の試薬層43は、グルコースデヒドロゲナーゼ等の酸化還元酵素、フェリシアン化カリウム等のメディエータを含み、任意成分として、酵素安定化剤、結晶均質化剤等を含む。前記第3の試薬層42は、フェリシアン化カリウム等のメディエータを含み、任意成分として、酵素安定化剤、結晶均質化剤等を含む。前記絶縁基板301の上には、一方の端部(図において右側端部)を残してスペーサ302を介しカバー303が配置されている。このセンサには、各電極(32〜37)に血液を導入するために、絶縁基板301、スペーサ302およびカバー303から成る流路44が形成されている。この流路44の先端は、センサの他方の端部(図において左側端部)まで延伸しており、外部に対し開口することで血液供給口となっている。前記6個の電極(32〜37)は各々リードと連結し、これらのリードは、前記一方の端部側(図において右側端部)に延びており、リードの先端はカバーに覆われずに露出している。前記カバー303において、流路44の右側端部に対応する部分には、空気孔45が形成されている。
【0047】
前記第1の試薬層43は、次のようにして形成する。例えば、グルコースデヒドロゲナーゼを0.1〜5U/センサ、フェリシアン化カリウムを10〜200mM、マルチトールを1〜50mM、タウリンを20〜200mM含む水溶液を円形のスリット部40に滴下し、乾燥させる。このスリット部40を設置することで、滴下された水溶液の拡がりを抑制することができ、第1の試薬層43をより正確な位置に配置することができる。これにより、第1の作用極33および第1の対極35上に第1の試薬層43が形成される。前記乾燥は、例えば、自然乾燥でも温風を用いた強制乾燥でもよいが、高温過ぎると酵素が失活するおそれがあるので、50℃前後の温風を用いることが好ましい。
【0048】
前記第3の試薬層42は、次のようにして形成する。例えば、フェリシアン化カリウムを10〜200mM、タウリンを20〜200mM含む水溶液を円形のスリット部39に滴下し、乾燥させる。このスリット部39を設置することで、滴下された水溶液の拡がりを抑制することができ、第3の試薬層42をより正確な位置に配置することができる。これにより、第3の作用極32および第3の対極36上に第3の試薬層42が形成される。
【0049】
このセンサを用いた血糖値測定は、例えば、次のようにして実施される。まず、専用のランセットで指先等を穿刺し、出血させる。一方、前記センサを専用の測定装置(メータ)にセットする。出血した血液に、測定装置にセットしたセンサの血液供給口を接触させ、毛細管現象により血液をセンサ内部に導入する。このセンサによる分析は、次のステップにより行われる。
【0050】
(ステップ1:検体(血液)の検知)
第1の対極35と液検知電極34の両電極間に電圧を印加することにより、血液の導入を検知する。血液検知に用いられる電極の組合せは、決してこれに限定されるものではない。血液の導入を確認後、以降のステップを開始する。ステップ1での印加電圧は、例えば、0.05〜1.0V、好ましくは、0.1〜0.8V、より好ましくは、0.2〜0.5Vである。
【0051】
(ステップ2:グルコースの測定)
血液中のグルコースと酸化還元酵素とを一定時間反応させた後、第1の作用極33を作用極、第1の対極35を対極として、第1の作用極33に電圧を印加する。酵素反応により第1の作用極33上に生じた還元状態のメディエータを酸化し、その酸化電流を検出する。前記グルコースと酸化還元酵素との反応時間は、例えば、0〜60秒、好ましくは、1〜30秒、より好ましくは、2〜10秒である。ステップ2での印加電圧は、例えば、0.05〜1V、好ましくは、0.1〜0.8V、より好ましくは、0.2〜0.5Vであり、印加時間は、例えば、0.01〜30秒、好ましくは、0.1〜10秒、より好ましくは、1〜5秒である。
【0052】
(ステップ3:妨害物質量の測定)
第3の作用極32を作用極、第3の対極36を対極として、第3の作用極32に電圧を印加することにより、妨害物質の電解酸化反応に基づく電流が検出される。この結果に基づいて妨害物質量を測定する。この妨害物質量は、グルコース測定時の補正に使用される。この補正では、予め作成された電流と妨害物質量との検量線から求めた妨害物質量を使用してもよいし、検出された電流をそのまま使用してもよい。ステップ3での印加電圧は、例えば、0.01〜1V、好ましくは、0.01〜0.5Vであり、印加時間は、例えば、0.001〜60秒、好ましくは、0.01〜10秒、より好ましくは、0.01〜5秒である。
【0053】
(ステップ4:血球量の測定)
第2の作用極37を作用極、第3の作用極32を対極として、第2の作用極37に電圧を印加することにより、血球量に依存する電解電流を検出できる。この結果に基づき血球量を測定する。この血球量は、グルコース測定時の補正に使用される。この補正では、予め作成された電解電流と血球量との検量線から求めた血球量を使用してもよいし、検出された電解電流をそのまま使用してもよい。ステップ4での印加電圧は、例えば、1〜10V、好ましくは、1〜5V、より好ましくは、2〜3Vであり、印加時間は、例えば、0.001〜60秒、好ましくは、0.01〜10秒、より好ましくは、0.01〜5秒である。このステップ4は、一連のステップの最後に実施されることが好ましい。なお、本実施例では第3の作用極32を対極としたが、本発明はこれには限定されない。第1の作用極33単独、第1の対極35単独、第3の対極36単独、第3の作用極32と第3の対極36の組合せ、第1の作用極33と第1の対極35との組合せとしてもよい。
【0054】
血球量の測定を最後に行う理由は、次の通りである。血球量の測定を血液成分量や妨害物質量の測定より先に実施すると、対極として用いる電極上には、最初は酸化状態のメディエータ(例えば、フェリシアン化カリウム)が配置されているが、血球量の測定によって、還元状態のメディエータ(例えば、フェロシアン化カリウム)が生成してしまう。その後に血液成分量や妨害物質量の測定を実施すると、生成された還元状態のメディエータがバックグランドノイズとなり測定値に誤差を与えてしまうためである。
【0055】
(ステップ5:血液成分量の補正)
ステップ3で測定した妨害物質量、およびステップ4で測定した血球量により、ステップ2で得られたグルコース量を補正する。この補正は、予め作成した検量線(検量テーブルを含む)に基づき行うことが好ましい。補正されたグルコース量は、測定装置に表示若しくは記憶される。
【実施例3】
【0056】
図7に、本発明の血液成分測定用センサのさらにその他の例を示す。図7は、前記センサ電極パターンの平面図であり、図6の電極パターンにおいて第3電極系の対極を第1電極系のいずれかの電極若しくはそれらの電極の組合せと共用したものである。それ以外のセンサ構成、使用部材、試薬層構成、センサ製造方法等は実施例2と同様である。
【0057】
このセンサを用いた血糖値測定は、例えば、次のようにして実施される。まず専用のランセットで指先等を穿刺し、出血させる。一方、前記センサを専用の測定装置(メータ)にセットする。出血した血液に、測定装置にセットしたセンサの血液供給口を接触させ、毛細管現象により血液をセンサ内部に導入する。このセンサによる分析は、次のステップにより行われる。
【0058】
(ステップ1:検体(血液)の検知)
第1の対極35と液検知電極34の両電極間に電圧を印加することにより、血液の導入を検知する。血液検知に用いられる電極の組合せは、決してこれに限定されるものではない。血液の導入を確認後、以降のステップを開始する。ステップ1での印加電圧は、例えば、0.05〜1.0V、好ましくは、0.1〜0.8V、より好ましくは、0.2〜0.5Vである。
【0059】
(ステップ2:グルコースの測定)
血液中のグルコースと酸化還元酵素とを一定時間反応させた後、第1の作用極33を作用極、第1の対極35を対極として、第1の作用極33に電圧を印加する。酵素反応により第1の作用極33上に生じた還元状態のメディエータを酸化し、その酸化電流を検出する。前記グルコースと酸化還元酵素との反応時間は、例えば、0〜60秒、好ましくは、1〜30秒、より好ましくは、2〜10秒である。ステップ2での印加電圧は、例えば、0.05〜1V、好ましくは、0.1〜0.8V、より好ましくは、0.2〜0.5Vであり、印加時間は、例えば、0.01〜30秒、好ましくは、0.1〜10秒、より好ましくは、1〜5秒である。
【0060】
(ステップ3:妨害物質量の測定)
第3の作用極32を作用極、第1の作用極33を対極として、第3の作用極32に電圧を印加することにより、妨害物質の電解酸化反応に基づく電流が検出される。この結果に基づいて妨害物質量を測定する。この妨害物質量は、グルコース測定時の補正に使用される。この補正では、予め作成された電流と妨害物質量との検量線から求めた妨害物質量を使用してもよいし、検出された電流をそのまま使用してもよい。ステップ3での印加電圧は、例えば、0.01〜1V、好ましくは、0.01〜0.5Vであり、印加時間は、例えば、0.001〜60秒、好ましくは、0.01〜10秒、より好ましくは、0.01〜5秒である。なお、本実施例では第1の作用極33を対極としたが、本発明はこれには限定されない。第1の対極35単独、第1の作用極33と第1の対極35との組合せとしてもよい。
【0061】
なお、第1の作用極33若しくは第1の作用極33と第1の対極35との組合せを対極とした場合には、このステップ3は、血液成分量の測定を実施した後に行うことが好ましい。妨害物質量の測定を血液成分量の測定の後に行う理由は、次の通りである。妨害物質量の測定を血液成分量の測定より先に実施すると、対極として用いる電極上には、最初は酸化状態のメディエータ(例えば、フェリシアン化カリウム)が配置されているが、妨害物質量の測定によって、還元状態のメディエータ(例えば、フェロシアン化カリウム)が生成してしまう。この還元状態のメディエータが血液成分量測定のための第1の作用極33上に拡散してしまうと、これが血液成分量の測定時にバックグランドノイズとなり測定値に誤差をあたえてしまうためである。
【0062】
但し、第1の対極35を単独で対極として用いた場合には、血液成分量の測定前に、このステップ3を実施してもよい。この理由は、第1の対極35上に生成する還元状態のメディエータ(例えば、フェロシアン化カリウム)が、第1の作用極33上に拡散するほどの量ではないため、バックグランドノイズとなりにくいからである。
【0063】
(ステップ4:血球量の測定)
第2の作用極37を作用極、第3の作用極32を対極として、第2の作用極37に電圧を印加することにより、血球量に依存する電解電流を検出できる。この結果に基づき血球量を測定する。この血球量は、グルコース測定時の補正に使用される。この補正では、予め作成された電解電流と血球量との検量線から求めた血球量を使用してもよいし、検出された電解電流をそのまま使用してもよい。ステップ4での印加電圧は、例えば、1〜10V、好ましくは、1〜5V、より好ましくは、2〜3Vであり、印加時間は、例えば、0.001〜60秒、好ましくは、0.01〜10秒、より好ましくは、0.01〜5秒である。このステップ4は、一連のステップの最後に実施されることが好ましい。なお、本実施例では第3の作用極32を対極としたが、本発明はこれには限定されない。第1の作用極33単独、第1の対極35単独、第1の作用極33と第1の対極35との組合せとしてもよい。
【0064】
血球量の測定を最後に行う理由は、実施例2で述べた理由と同様である。
(ステップ5:血液成分量の補正)
ステップ3で測定した妨害物質量、およびステップ4で測定した血球量により、ステップ2で得られたグルコース量を補正する。この補正は、予め作成した検量線(検量テーブルを含む)に基づき行うことが好ましい。補正されたグルコース量は、測定装置に表示若しくは記憶される。
【実施例4】
【0065】
図8、図9および図10に、本発明の血液成分測定用センサのさらにその他の例を示す。図8は、前記センサの分解斜視図であり、図9は断面図であり、図10は平面図であり、前記三図において、同一部分には同一符号を付している。この例のセンサは、実施例3のセンサの第3の作用極上に配置された第3の試薬層を取り除いたものである。図示のように、このセンサは、絶縁基板501の上に、第1の作用極53と第1の対極55とからなる第1の電極系、第2の作用極57、第3の作用極52、および液検知電極54が形成されている。前記第1の電極系上には、第1の試薬層63が配置されている。前記第1の試薬層63は、グルコースデヒドロゲナーゼ等の酸化還元酵素、フェリシアン化カリウム等のメディエータを含み、任意成分として、酵素安定化剤、結晶均質化剤等を含む。前記絶縁基板501の上には、一方の端部(図において右側端部)を残してスペーサ502を介しカバー503が配置されている。このセンサには、各電極(52〜55、57)に血液を導入するために、絶縁基板501、スペーサ502およびカバー503から成る流路64が形成されている。この流路64の先端は、センサの他方の端部(図において左側端部)まで延伸しており、外部に対し開口することで血液供給口となっている。前記5個の電極(52〜55、57)は各々リードと連結し、これらのリードは、前記一方の端部側(図において右側端部)に延びており、リードの先端はカバーに覆われずに露出している。前記カバー503において、流路64の右側端部に対応する部分には、空気孔65が形成されている。
【0066】
前記第1の試薬層63は、次のようにして形成する。例えば、グルコースデヒドロゲナーゼを0.1〜5U/センサ、フェリシアン化カリウムを10〜200mM、マルチトールを1〜50mM、タウリンを20〜200mM含む水溶液を円形のスリット部60に滴下し、乾燥させる。このスリット部60を設置することで、滴下された水溶液の拡がりを抑制することができ、第1の試薬層63をより正確な位置に配置することができる。これにより、第1の作用極53および第1の対極55上に第1の試薬層63が形成される。前記乾燥は、例えば、自然乾燥でも温風を用いた強制乾燥でもよいが、高温過ぎると酵素が失活するおそれがあるので、50℃前後の温風を用いることが好ましい。
【0067】
このセンサを用いた血糖値測定は、例えば、次のようにして実施される。まず、専用のランセットで指先等を穿刺し、出血させる。一方、前記センサを専用の測定装置(メータ)にセットする。出血した血液に、測定装置にセットしたセンサの血液供給口を接触させ、毛細管現象により血液をセンサ内部に導入する。このセンサによる分析は、次のステップにより行われる。
【0068】
(ステップ1:検体(血液)の検知)
第1の対極55と液検知電極54の両電極間に電圧を印加することにより、血液の導入を検知する。血液検知に用いられる電極の組合せは、決してこれに限定されるものではない。血液の導入を確認後、以降のステップを開始する。ステップ1での印加電圧は、例えば、0.05〜1.0V、好ましくは、0.1〜0.8V、より好ましくは、0.2〜0.5Vである。
【0069】
(ステップ2:グルコースの測定)
血液中のグルコースと酸化還元酵素とを一定時間反応させた後、第1の作用極53を作用極、第1の対極55を対極として、第1の作用極53に電圧を印加する。酵素反応により第1の作用極53上に生じた還元状態のメディエータを酸化し、その酸化電流を検出する。前記グルコースと酸化還元酵素との反応時間は、例えば、0〜60秒、好ましくは、1〜30秒、より好ましくは、2〜10秒である。ステップ2での印加電圧は、例えば、0.05〜1V、好ましくは、0.1〜0.8V、より好ましくは、0.2〜0.5Vであり、印加時間は、例えば、0.01〜30秒、好ましくは、0.1〜10秒、より好ましくは、1〜5秒である。
【0070】
(ステップ3:妨害物質量の測定)
第3の作用極52を作用極、第1の作用極53を対極として、第3の作用極52に電圧を印加することにより、妨害物質の電解酸化反応に基づく電流が検出される。この結果に基づいて妨害物質量を測定する。この妨害物質量は、グルコース測定時の補正に使用される。この補正では、予め作成された電流と妨害物質量との検量線から求めた妨害物質量を使用してもよいし、検出された電流をそのまま使用してもよい。ステップ3での印加電圧は、例えば、0.01〜1V、好ましくは、0.01〜0.5Vであり、印加時間は、例えば、0.001〜60秒、好ましくは、0.01〜10秒、より好ましくは、0.01〜5秒である。なお、本実施例では第1の作用極53を対極としたが、本発明はこれには限定されない。第1の対極55単独、第1の作用極53と第1の対極55との組合せとしてもよい。
【0071】
なお、第1の作用極53若しくは第1の作用極53と第1の対極55との組合せを対極とした場合には、このステップ3は、血液成分量の測定を実施した後に行うことが好ましい。妨害物質量の測定を血液成分量の測定の後に行う理由は、実施例3で述べた理由と同様である。
【0072】
(ステップ4:血球量の測定)
第2の作用極57を作用極、第1の作用極53を対極として、第2の作用極57に電圧を印加することにより、血球量に依存する電解電流を検出できる。この結果に基づき血球量を測定する。第1の作用極53を対極として用いた理由は、次の通りである。血液成分量測定後の第1の作用極53上には、酸化状態のメディエータ(例えば、フェリシアン化カリウム)が支配的に存在する。このため、これを血球量測定のための対極として用いた場合、対極での電解還元反応が律速過程になることを抑制することができるためである。この血球量は、グルコース測定時の補正に使用される。この補正では、予め作成された電解電流と血球量との検量線から求めた血球量を使用してもよいし、検出された電解電流をそのまま使用してもよい。ステップ4での印加電圧は、例えば、1〜10V、好ましくは、1〜5V、より好ましくは、2〜3Vであり、印加時間は、例えば、0.001〜60秒、好ましくは、0.01〜10秒、より好ましくは、0.01〜5秒である。このステップ4は、一連のステップの最後に実施されることが好ましい。なお、本実施例では第1の作用極53を対極としたが、本発明はこれには限定されない。第1の対極55単独、第1の作用極53と第1の対極55との組合せとしてもよい。
【0073】
血球量の測定を最後に行う理由は、実施例2で述べた理由と同様である。
(ステップ5:血液成分量の補正)
ステップ3で測定した妨害物質量、およびステップ4で測定した血球量により、ステップ2で得られたグルコース量を補正する。この補正は、予め作成した検量線(検量テーブルを含む)に基づき行うことが好ましい。補正されたグルコース量は、測定装置に表示若しくは記憶される。
【実施例5】
【0074】
図11に、本発明の血液成分測定用センサのさらにその他の例を示す。図11は、前記センサ電極パターンの平面図であり、図10の電極パターンにおいて第3の作用極を第2の作用極と共用したものである。それ以外のセンサ構成、使用部材、試薬層構成、センサ製造方法等は実施例4と同様である。
【0075】
このセンサを用いた血糖値測定は、例えば、次のようにして実施される。まず専用のランセットで指先等を穿刺し、出血させる。一方、前記センサを専用の測定装置(メータ)にセットする。出血した血液に、測定装置にセットしたセンサの血液供給口を接触させ、毛細管現象により血液をセンサ内部に導入する。このセンサによる分析は、次のステップにより行われる。
【0076】
(ステップ1:検体(血液)の検知)
第1の対極55と液検知電極54の両電極間に電圧を印加することにより、血液の導入を検知する。血液検知に用いられる電極の組合せは、決してこれに限定されるものではない。血液の導入を確認後、以降のステップを開始する。ステップ1での印加電圧は、例えば、0.05〜1.0V、好ましくは、0.1〜0.8V、より好ましくは、0.2〜0.5Vである。
【0077】
(ステップ2:グルコースの測定)
血液中のグルコースと酸化還元酵素とを一定時間反応させた後、第1の作用極53を作用極、第1の対極55を対極として、第1の作用極53に電圧を印加する。酵素反応により第1の作用極53上に生じた還元状態のメディエータを酸化し、その酸化電流を検出する。前記グルコースと酸化還元酵素との反応時間は、例えば、0〜60秒、好ましくは、1〜30秒、より好ましくは、2〜10秒である。ステップ2での印加電圧は、例えば、0.05〜1V、好ましくは、0.1〜0.8V、より好ましくは、0.2〜0.5Vであり、印加時間は、例えば、0.01〜30秒、好ましくは0.1〜10秒、より好ましくは1〜5秒である。
【0078】
(ステップ3:妨害物質量の測定)
第2の作用極57を作用極、第1の作用極53を対極として、第2の作用極57に電圧を印加することにより、妨害物質の電解酸化反応に基づく電流が検出される。この結果に基づいて妨害物質量を測定する。この妨害物質量は、グルコース測定時の補正に使用される。この補正では、予め作成された電流と妨害物質量との検量線から求めた妨害物質量を使用してもよいし、検出された電流をそのまま使用してもよい。ステップ3での印加電圧は、例えば、0.01〜1V、好ましくは、0.01〜0.5Vであり、印加時間は、例えば、0.001〜60秒、好ましくは、0.01〜10秒、より好ましくは、0.01〜5秒である。なお、本実施例では第1の作用極53を対極としたが、本発明はこれには限定されない。第1の対極55単独、第1の作用極53と第1の対極55との組合せとしてもよい。
【0079】
なお、第1の作用極53若しくは第1の作用極53と第1の対極55との組合せを対極とした場合には、このステップ2は、血液成分量の測定を実施した後に行うことが好ましい。妨害物質量の測定を血液成分量の測定の後に行う理由は、実施例3で述べた理由と同様である。
(ステップ4:血球量の測定)
第2の作用極57を作用極、第1の作用極53を対極として、第2の作用極57に電圧を印加することにより、血球量に依存する電解電流を検出できる。この結果に基づき血球量を測定する。第1の作用極53を対極として用いる理由は、実施例4と同様である。この血球量は、グルコース測定時の補正に使用される。この補正では、予め作成された電解電流と血球量との検量線から求めた血球量を使用してもよいし、検出された電解電流をそのまま使用してもよい。ステップ4での印加電圧は、例えば、1〜10V、好ましくは、1〜5V、より好ましくは、2〜3Vであり、印加時間は、例えば、0.001〜60秒、好ましくは、0.01〜10秒、より好ましくは、0.01〜5秒である。このステップ4は、一連のステップの最後に実施されることが好ましい。なお、本実施例では第1の作用極53を対極としたが、本発明はこれには限定されない。第1の対極55単独、第1の作用極53と第1の対極55との組合せとしてもよい。
【0080】
血球量の測定を最後に行う理由は、実施例2で述べた理由と同様である。
(ステップ5:血液成分量の補正)
ステップ3で測定した妨害物質量、およびステップ4で測定した血球量により、ステップ2で得られたグルコース量を補正する。この補正は、予め作成した検量線(検量テーブルを含む)に基づき行うことが好ましい。補正されたグルコース量は、測定装置に表示若しくは記憶される。
【実施例6】
【0081】
この例では、実施例5と同様に図11に示すセンサを用い、さらに電極前処理を行う。
【0082】
このセンサを用いた血糖値測定は、例えば、次のようにして実施される。まず専用のランセットで指先等を穿刺し、出血させる。一方、前記センサを専用の測定装置(メータ)にセットする。出血した血液に、測定装置にセットしたセンサの血液供給口を接触させ、毛細管現象により血液をセンサ内部に導入する。このセンサによる分析は、次のステップにより行われる。
【0083】
(ステップ1:検体(血液)の検知)
第1の対極55と液検知電極54の両電極間に電圧を印加することにより、血液の導入を検知する。血液検知に用いられる電極の組合せは、決してこれに限定されるものではない。血液の導入を確認後、以降のステップを開始する。ステップ1での印加電圧は、例えば、0.05〜1.0V、好ましくは、0.1〜0.8V、より好ましくは、0.2〜0.5Vである。
【0084】
(ステップ2:電極前処理)
第2の作用極57を作用極とし、第1の対極55を対極として、第2の作用極57に電圧を印加することで、第2の作用極57の表面を清浄化する。ステップ2での印加電圧は、0.01〜1Vの範囲であることが好ましく、より好ましくは、0.01〜0.5Vの範囲であり、印加時間は、例えば、0.001〜30秒、好ましくは、0.01〜10秒、より好ましくは、0.01〜5秒である。この前処理を実施することで、前記第2の作用極57の表面が清浄化され、より精度の高い妨害物質量の測定が可能となる。本ステップ2は、後述のステップ4(グルコースの測定)と同時、あるいはステップ4の後に実施してもよい
【0085】
工程簡略化や全体の測定時間短縮の観点からは、このステップ2は、妨害物質量や血球量測定前なら、最も効率のよいタイミングで実施可能である。
(ステップ3:妨害物質量の測定)
第2の作用極57を作用極、第1の対極55を対極として、第2の作用極57に電圧を印加することにより、妨害物質の電解酸化反応に基づく電流が検出される。この結果に基づいて妨害物質量を測定する。この妨害物質量は、グルコース測定時の補正に使用される。この補正では、予め作成された電流と妨害物質量との検量線から求めた妨害物質量を使用してもよいし、検出された電流をそのまま使用してもよい。ステップ3での印加電圧は、例えば、0.01〜1V、好ましくは、0.01〜0.5Vであり、印加時間は、例えば、0.001〜60秒、好ましくは、0.01〜10秒、より好ましくは、0.01〜5秒である。なお、本実施例では第1の対極55を対極としたが、本発明はこれには限定されない。第1の作用極53単独、第1の作用極53と第1の対極55との組合せとしてもよい。
【0086】
なお、第1の作用極53若しくは第1の作用極53と第1の対極55との組合せを対極とした場合には、このステップ3は、血液成分量の測定を実施した後に行うことが好ましい。妨害物質量の測定を血液成分量の測定の後に行う理由は、実施例3で述べた理由と同様である。ただし、本実施例6のように、第1の対極55を単独で対極として用いた場合には、血液成分量の測定前に、このステップ3を実施してもよい。この場合は、第1の対極55上に生成する還元状態のメディエータ(例えば、フェロシアン化カリウム)が、第1の作用極33上に拡散するほどの量ではないため、バックグランドノイズとなりにくいからである。
【0087】
(ステップ4:グルコースの測定)
血液中のグルコースと酸化還元酵素とを一定時間反応させた後、第1の作用極53を作用極、第1の対極55を対極として、第1の作用極53に電圧を印加する。酵素反応により第1の作用極53上に生じた還元状態のメディエータを酸化し、その酸化電流を検出する。前記グルコースと酸化還元酵素との反応時間は、例えば、0〜60秒、好ましくは、1〜30秒、より好ましくは、2〜10秒である。ステップ2での印加電圧は、例えば、0.05〜1V、好ましくは、0.1〜0.8V、より好ましくは、0.2〜0.5Vであり、印加時間は、例えば、0.01〜30秒、好ましくは、0.1〜10秒、より好ましくは、1〜5秒である。
【0088】
(ステップ5:血球量の測定)
第2の作用極57を作用極、第1の作用極53を対極として、第2の作用極57に電圧を印加することにより、血球量に依存する電解電流を検出できる。この結果に基づき血球量を測定する。この血球量は、グルコース測定時の補正に使用される。この補正では、予め作成された電解電流と血球量との検量線から求めた血球量を使用してもよいし、検出された電解電流をそのまま使用してもよい。ステップ4での印加電圧は、例えば、1〜10V、好ましくは、1〜5V、より好ましくは、2〜3Vであり、印加時間は、例えば、0.001〜60秒、好ましくは、0.01〜10秒、より好ましくは、0.01〜5秒である。このステップ4は、一連のステップの最後に実施されることが好ましい。なお、本実施例では第1の作用極53を対極としたが、本発明はこれには限定されない。第1の対極55単独、第1の作用極53と第1の対極55との組合せとしてもよい。
【0089】
血球量の測定を最後に行う理由は、実施例2で述べた理由と同様である。
(ステップ6:血液成分量の補正)
ステップ3で測定した妨害物質量、およびステップ5で測定した血球量により、ステップ4で得られたグルコース量を補正する。この補正は、予め作成した検量線(検量テーブルを含む)に基づき行うことが好ましい。補正されたグルコース量は、測定装置に表示若しくは記憶される。
【0090】
実施例1〜6では、血液成分測定の一例として血中グルコース濃度の測定について述べたが、本発明は、それに限定されるものではなく、前に述べたように、乳酸、コレステロールのような他の血液成分の測定にも有用である。
【0091】
また、実施例1〜6では、いくつかの電極パタ−ンを示したが、本発明は、それらに限定されることはない。用途・条件等に応じて適宜変更可能である。
【0092】
(参考例1)
図1、図2および図3に示す構造のセンサを作製した。第1の試薬層23は、グルコースデヒドロゲナーゼ(1〜5U)、フェリシアン化カリウム(60mM)、タウリン(80mM)を、CMC水溶液(0.1wt%)に溶解して調整した試薬液を円形スリット部20に滴下した後、乾燥させることにより作製した。また、第2の試薬層21および第3の試薬層22は、フェリシアン化カリウム(60mM)、タウリン(80mM)を、CMC水溶液(0.1wt%)に溶解して調製した試薬液を各円形スリット部18および19上に滴下した後、乾燥させることにより作製した。
【0093】
このセンサを用いて、妨害物質量に対する応答電流の測定を行った。易酸化性妨害物質の一例としてアスコルビン酸を用い、0、5、10、20mg/dLのアスコルビン酸を添加した血液試料を準備した。これら3つの血液試料を用いて、第3の電極系に流れる電流を測定した。第3の作用極12への印加電圧0.5V、印加時間3秒の条件下で測定を実施した。
【0094】
次に、同じセンサを用いて、血球量に対する応答電流の測定を行った。血球量を25%、45%および65%に調整した3種類の血液試料を準備した。これら3つの血液試料を用いて、第2の電極系に流れる電解電流を測定した。第3の作用極32を対極として、第2の作用極17への印加電圧2.5V、印加時間3秒の条件下で測定を実施した。
【0095】
(参考例2)
図4、図5および図6に示す構造のセンサを作製した。第1の試薬層43は、グルコースデヒドロゲナーゼ(1〜5U)、フェリシアン化カリウム(60mM)、タウリン(80mM)を、CMC水溶液(0.1wt%)に溶解して調整した試薬液を円形スリット部40に滴下した後、乾燥させることにより作製した。また、第3の試薬層42は、フェリシアン化カリウム(60mM)、タウリン(80mM)を、CMC水溶液(0.1wt%)に溶解して調製した試薬液を各円形スリット部39上に滴下した後、乾燥させることにより作製した。
【0096】
このセンサを用いて、妨害物質量に対する応答電流の測定を行った。易酸化性妨害物質の一例としてアスコルビン酸を用い、0、5、10、20mg/dLのアスコルビン酸を添加した血液試料を準備した。これら3つの血液試料を用いて、第3の電極系に流れる電流を測定した。第3の作用極32への印加電圧0.5V、印加時間3秒の条件下で測定を実施した。
【0097】
次に、同じセンサを用いて、血球量に対する応答電流の測定を行った。血球量を25%、45%および65%に調整した3種類の血液試料を準備した。これら3つの血液試料を用いて、第2の電極系に流れる電解電流を測定した。第2の作用極37への印加電圧2.5V、印加時間3秒の条件下で測定を実施した。
【0098】
(参考例3)
図7に示す構造のセンサを作製した。第1の試薬層43は、グルコースデヒドロゲナーゼ(1〜5U)、フェリシアン化カリウム(60mM)、タウリン(80mM)を、CMC水溶液(0.1wt%)に溶解して調整した試薬液を円形スリット部40に滴下した後、乾燥させることにより作製した。また、第3の試薬層42は、フェリシアン化カリウム(60mM)、タウリン(80mM)を、CMC水溶液(0.1wt%)に溶解して調製した試薬液を各円形スリット部39上に滴下した後、乾燥させることにより作製した。
【0099】
このセンサを用いて、妨害物質量に対する応答電流の測定を行った。易酸化性妨害物質の一例としてアスコルビン酸を用い、0、5、10、20mg/dLのアスコルビン酸を添加した血液試料を準備した。これら3つの血液試料を用いて、第3の電極系に流れる電流を測定した。第1の作用極33を対極として、第3の作用極32への印加電圧0.5V、印加時間3秒の条件下で測定を実施した。
【0100】
次に、同じセンサを用いて、血球量に対する応答電流の測定を行った。血球量を25%、45%および65%に調整した3種類の血液試料を準備した。これら3つの血液試料を用いて、第2の電極系に流れる電解電流を測定した。第3の作用極32を対極として、第2の作用極37への印加電圧2.5V、印加時間3秒の条件下で測定を実施した。
【0101】
(参考例4)
図8、図9および図10に示す構造のセンサを作製した。第1の試薬層63は、グルコースデヒドロゲナーゼ(1〜5U)、フェリシアン化カリウム(60mM)、タウリン(80mM)を、CMC水溶液(0.1wt%)に溶解して調製した試薬液を円形スリット部60上に滴下した後、乾燥させることにより作製した。
【0102】
このセンサを用いて、妨害物質量に対する応答電流の測定を行った。易酸化性妨害物質の一例としてアスコルビン酸を用い、0、5、10、20mg/dLのアスコルビン酸を添加した血液試料を準備した。これら3つの血液試料を用いて、第3の電極系に流れる電流を測定した。第1の作用極53を対極として、第3の作用極52への印加電圧0.5V、印加時間3秒の条件下で測定を実施した。
【0103】
次に、同じセンサを用いて、血球量に対する応答電流の測定を行った。血球量を25%、45%および65%に調整した3種類の血液試料を準備した。これら3つの血液試料を用いて、第2の電極系に流れる電解電流を測定した。第1の作用極53を対極として、第2の作用極57への印加電圧2.5V、印加時間3秒の条件下で測定を実施した。
【0104】
(参考例5)
図11に示す構造のセンサを作製した。第1の試薬層63は、グルコースデヒドロゲナーゼ(1〜5U)、フェリシアン化カリウム(60mM)、タウリン(80mM)を、CMC水溶液(0.1wt%)に溶解して調製した試薬液を各円形スリット部60上に滴下した後、乾燥させることにより作製した。
【0105】
このセンサを用いて、妨害物質量に対する応答電流の測定を行った。易酸化性妨害物質の一例としてアスコルビン酸を用い、0、5、10、20mg/dLのアスコルビン酸を添加した血液試料を準備した。これら3つの血液試料を用いて、第3の電極系に流れる電流を測定した。第1の作用極53を対極として、第3の作用極52への印加電圧0.5V、印加時間3秒の条件下で測定を実施した。
【0106】
次に、同じセンサを用いて、血球量に対する応答電流の測定を行った。血球量を25%、45%および65%に調整した3種類の血液試料を準備した。これら3つの血液試料を用いて、第2の電極系に流れる電解電流を測定した。第1の作用極53を対極として、第2の作用極57への印加電圧2.5V、印加時間3秒の条件下で測定を実施した。
【0107】
参考例1〜5の妨害物質量に対する応答電流の測定結果を図12のグラフに示す。図12からわかるように、妨害物質量を反映した応答電流を検出することができた。
【0108】
参考例1〜5の血球量に対する応答電流の測定結果を、図13〜17に示す。図13〜17において、(a)は、印加電圧(V)に対する応答電流値(μA)の経時的変化を表すグラフであり、(b)は、印加電圧(V)に対する感度差の経時変化のグラフである。図示のように、参考例1〜5のセンサによれば、その感度差が電圧印加時間に依存せず、血球量を反映した応答電流を明確に検出することができた。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明の血液成分の測定方法は、妨害物質量および血球量を高精度かつ高信頼性で測定し、これに基づいて血液成分量を補正するため、血液成分の測定を高精度かつ高信頼度で実施することができる。従って本発明は、グルコース等の血液成分の測定に有用である。
【符号の説明】
【0110】
11 第2の対極
12、32、52 第3の作用極
13、33、53 第1の作用極
14、34、54 液検知電極
15、35、55 第1の対極
16、36 第3の対極
17、37、57 第2の作用極
18、19、20、39、40、60 円形スリット部
21 第2の試薬層
22、42 第3の試薬層
23、43、63 第1の試薬層
24、44、64 流路
25、45、65 空気孔
101、301、501 絶縁基板
102、302、502 スペーサ
103、303、503 カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メディエータの存在下、血液成分を酸化還元酵素で酸化還元し、その際に生じる酸化還元電流を作用極および対極を有する第1の電極系で検出し、前記電流値を前記血液成分量に換算する血液成分量測定工程と、前記血液成分量を血液中の血球量で補正する血球量補正工程と、前記血液成分量を血液中の妨害物質量で補正する妨害物質量補正工程とを有し、前記血球量補正工程は、作用極および対極を有する第2の電極系を準備し、前記第2の電極系のうち、作用極上にはメディエータを配置せず、対極上にはメディエータを配置し、前記第2の電極系に血液を導入し、この状態で前記第2の電極系に電圧を印加し、これにより前記第2の電極系に流れる酸化還元電流を検出し、この電流値を前記血球量に換算し、この値を基にして前記血液成分量を補正する工程であり、前記妨害物質補正工程は、作用極および対極を有する第3の電極系を準備し、前記第3の電極系に血液を導入し、この状態で前記第3の電極系に電圧を印加し、これにより前記第3の電極系に流れる酸化還元電流を検出し、この電流値を前記妨害物質量に換算し、この量を基にして前記血液成分量を補正する工程である血液成分の測定方法。
【請求項2】
前記第3の電極系のうち、少なくとも対極上にメディエータが存在することを特徴とする請求項1記載の血液成分の測定方法。
【請求項3】
前記第1の電極系、前記第2の電極系および前記第3の電極系の作用極および対極の少なくとも一つを、他のいずれかの電極と共用する請求項1記載の血液成分の測定方法。
【請求項4】
前記血液成分量測定工程を実施した後に、前記血球量補正工程を行う請求項1記載の血液成分の測定方法。
【請求項5】
前記妨害物質補正工程を実施した後に、前記血球量補正工程を行う請求項1記載の血液成分の測定方法。
【請求項6】
前記妨害物質量の測定の前に、前記第3の電極系を前処理するための電圧を、前記第3の電極系に印加することを特徴とする請求項1記載の血液成分の測定方法。
【請求項7】
前記電極前処理のために、前記第3の電極系の作用極に印加する電圧が、前記第3の電極系の対極に対して、0.01〜1Vの範囲である請求項6記載の血液成分の測定方法。
【請求項8】
前記妨害物質量の測定のために、前記第3の電極系の作用極に印加する電圧が、前記第3の電極系の対極に対して、0.01〜1Vの範囲である請求項1記載の血液成分の測定方法。
【請求項9】
血液成分を酸化還元し、その反応による酸化還元電流を電極で検出することにより前記血液成分を測定するためのバイオセンサであって、第1の分析部、第2の分析部および第3の分析部を有し、前記第1の分析部は、第1の電極系を有し、前記第2の分析部は、第2の電極系を有し、前記第3の分析部は、第3の電極系を有し、前記第1の電極系上には、少なくとも前記血液成分を基質とする酸化還元酵素とメディエータとが配置され、前記第1の分析部において、メディエータの存在下、前記血液成分を前記酸化還元酵素で酸化還元し、電圧を印加した際に生じる酸化還元電流を前記第1の電極系で検出して前記血液成分を測定し、前記第2の分析部において、前記第2の電極系は、作用極および対極を有し、前記第2の電極系のうち、作用極上には、メディエータが配置されておらず、対極上にメディエータが配置されており、前記第2の電極系に前記血液を導入し、この状態で前記第2の電極系に電圧を印加し、これにより前記第2の電極系に流れる酸化還元電流を検出することにより前記血液中の血球量を測定し、前記第3の分析部において、前記第3の電極系は、作用極および対極を有し、前記第3の電極系に前記血液を導入し、この状態で前記第3の電極系に電圧を印加し、これにより前記第3の電極系に流れる酸化還元電流を検出することにより前記血液中の妨害物質量を測定するバイオセンサ。
【請求項10】
前記第3の電極系のうち、少なくとも対極上にメディエータが存在することを特徴とする請求項9記載のバイオセンサ。
【請求項11】
血液を導入するための流路を有しており、前記流路の一端から供給された血液の流れの最も上流側に前記第2の分析部または前記第3の分析部の作用極が配置され、下流側に他の電極が配置されている請求項9記載のバイオセンサ。
【請求項12】
前記流路の最も下流側に、前記第1の分析部が配置されている請求項11記載のバイオセンサ。
【請求項13】
前記第1の電極系、前記第2の電極系および前記第3の電極系の作用極および対極の少なくとも一つが、他のいずれかの電極と共用される請求項9記載のバイオセンサ。
【請求項14】
前記第3の電極系の作用極上に、メディエータが配置されず、前記第2の電極系の作用極と、前記第3の電極系の作用極とが共用される請求項13記載のバイオセンサ。
【請求項15】
前記第2の電極系の対極および前記第3の電極系の対極の少なくとも一方が、前記第1の電極系のいずれかの電極若しくはそれらの電極の組合せと共用される請求項14記載のバイオセンサ。
【請求項16】
前記第2の電極系の対極と、前記第3の電極系の作用極とが、互いに共用される請求項13記載のバイオセンサ。
【請求項17】
前記第3の電極系の作用極と前記第2の電極系の対極とが共用されるとともに、前記第3の電極系の対極が、前記第1の電極系の対極と共用される請求項13記載のバイオセンサ。
【請求項18】
さらに、液検知電極を有し、この液検知電極は、前記各分析部の少なくとも一つよりも後方に位置し、この液検知電極により、前記各分析部の少なくとも一つに血液が導入されたことを検知可能である請求項9記載のバイオセンサ。
【請求項19】
請求項9記載のバイオセンサを用いて血液成分量を測定する測定装置であって、前記血液成分を酸化還元酵素で酸化還元し、その際に生じる酸化還元電流を前記第1の電極系で検出し、前記電流値を前記血液成分量に換算する血液成分量測定手段と、前記血液成分量を血液中の血球量で補正する血球量補正手段と、前記血液成分量を血液中の妨害物質量で補正する妨害物質量補正手段とを有し、前記血球量補正手段は、前記血球量の測定のための第2の電極系を用い、前記血液存在下、前記第2の電極系に電圧を印加して流れる電流を検出し、この電流値を血球量に換算し、この値を基にして前記血液成分量を補正する手段であり、前記妨害物質量補正手段は、前記妨害物質量の測定のための第3の電極系を用い、前記血液存在下、前記第3の電極系に印加して流れる電流を検出し、この電流値を前記妨害物質量に換算し、この量を基にして前記血液成分量を補正する手段である測定装置。
【請求項20】
前記血液成分量測定を実施した後に、前記血球量の測定を行う請求項19記載の測定装置。
【請求項21】
前記妨害物質量の測定を実施した後に、前記血液中の血球量の測定を行う請求項19記載の測定装置。
【請求項22】
さらに、電極前処理のための電圧を前記第3の電極系の作用極に印加する電極前処理手段を含む請求項19記載の測定装置。
【請求項23】
前記電極前処理のための前記第3の電極系の作用極に対する印加電圧が、前記第3の電極系の対極に対して、0.01〜1Vの範囲である請求項22記載の測定装置。
【請求項24】
前記妨害物質量の測定のために、前記第3の電極系の作用極に印加する電圧が、前記第3の電極系の対極に対して、0.01〜1Vの範囲である請求項19記載の測定装置。
【請求項25】
さらに、前記液検知電極により、バイオセンサの内部に血液が導入されたことを検知する検知手段を含む請求項19記載の測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−158483(P2011−158483A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87872(P2011−87872)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【分割の表示】特願2010−256689(P2010−256689)の分割
【原出願日】平成17年4月18日(2005.4.18)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)