説明

血液検査採血器

【課題】血液の採血と同時に検査が行えるようにする。
【解決手段】採血針13を備えた採血ホルダ15内へ差込み可能で、その採血ホルダ15の内部へ向かって延長された前記採血針13の後端針部13aが挿入されるキャップ5とそのキャップ5と対向し仕切壁を兼ねた血液センサ7とで検査用採血室17を作る一方、少なくとも前記血液センサ7からのセンサ情報に基づき血液の物性値を調べる血液検査部9を備えた構造とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、血液凝固の経時変化を測定するのに適する血液検査採血器に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、例えば、血液検査部や血小板凝集能検査で用いられる血液サンプルは、一旦注射器や真空採血管で採血された後、保管され検査装置で検査が行なわれるようになっている。
【0003】
検査装置の概要は、例えば、供給部から送り込まれる血液サンプル等の溶液を収容する測定用セル内に撹拌部材と水晶発振子が設けられる一方、前記水晶発振子を発振させるための発振装置及び血液凝固の経時変化に対応して変化する前記水晶発振子の発振周波数を検出するための周波数カウンタと、周波数カウンタの動作を制御し所定の情報処理を行なうためのコンピュータとを備える構造となっている。
【特許文献1】特開2002−310872号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
検査部となる測定用セルは、供給部等の外部から血液サンプル等が供給される固定された設置タイプとなっているため、検査にあたって採血が不可欠となる。
【0005】
凝固等の検査採血にあたって現在では、真空採血管を用いて行われるのが一般的となっているが、この真空採血管は、腕等に刺すための採血針を備えた採血ホルダ内へ差込むことで差圧により採血針を介して採血管内部へ血液が送り込まれ採血される。この時、血液は採血と同時に凝固が始まるため真空採血管内に抗凝固剤が設けられている。
【0006】
このために、例えば検査にあたって余分な抗凝固剤等が入った状態での検査となる結果、生体中の状態を正しく反映した検査結果につながらず、正確な検査に欠ける面があった。
【0007】
そこで、本発明は直接採血が行なえると共に採血と同時に検査が行なえる血液検査採血器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明にあっては、採血針を備えた採血ホルダ内へ差込み可能で、その採血ホルダの内部へ向かって延長された前記採血針の後端針部が挿入されるキャップを備えた検査用採血室と、その検査用採血室内の血液と直接接触し合う血液センサと、少なくとも前記血液センサからのセンサ情報に基づき血液の物性値を調べる血液検査部とからなることを特徴とする。
【0009】
第2に、採血針を備えた採血ホルダ内へ差込み可能で、その採血ホルダの内部へ向かって延長された前記採血針の後端針部が挿入されるキャップを備えた検査用採血室と、その検査用採血室内の血液と直接接触し合う血液センサと、少なくとも前記血液センサからのセンサ情報を保存するデータ保存部とからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の第1の血液検査採血器によれば、キャップを先頭にして採血ホルダ内へ差込むことで、採血針の後端針部をキャップ内に挿入させることができる。この時、腕等に刺す採血針を備えた採血ホルダとの組合せによって、検査用採血室内へ直接血液の採血ができる。
【0011】
採血された検査用採血室の血液はその場で血液センサと接触し、そのセンサ情報は血液検査部に送られ、血液の物性値、例えば、血液凝固の状態がわかるようになる。この時の血液サンプルは採血から検査までタイムラグがなく、しかも、抗凝固剤等が入っていない生体内の血液成分のため正確な検査結果を得ることができる。
【0012】
また、本発明の第2の血液検査採血器によれば、キャップを先頭にして採血ホルダ内へ差込むことで、採血針の後端針部をキャップ内に挿入させることができる。この時、腕等に刺す採血針を備えた採血ホルダとの組合せによって、検査用採血室内へ直接血液の採血ができる。
【0013】
採血された検査用採血室の血液はその場で血液センサと接触し、そのセンサ情報はデータ保存部に保存される。この時の血液サンプルは採血から検査までタイムラグがなく、しかも、抗凝固剤等が入っていない生体内の血液成分のため正確なデータを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明にあっては、採血器の採血器本体を、検査装置本体にセットした時に、目視可能な検査結果表示部に検査結果が表示されるようにする。
【実施例】
【0015】
以下、図1乃至図7の図面を参照しながら本発明の実施形態について具体的に説明する。
【0016】
図1は本発明にかかる血液検査採血器と採血ホルダの概要説明図を示している。血液検査採血器1は、採血時に後述する採血ホルダと組合わせて使用するもので透明な材質で形成された採血器本体3にキャップ5と血液センサ7と血液検査部9が設けられ、図4に示すように検査装置本体11に対してセット可能となっている。
【0017】
キャップ5は、ゴム等の材質で作られていて図2に示すように採血針13を備えた採血ホルダ15の内部へ差込むことが可能となっていて、その内部への差込み完了時に、前記採血針13の後端針部13aが挿入可能となっている。なお、採血ホルダ15は市販されているものを使用しており、採血針13は単独で腕に刺しただけでは血液は流れず血液検査採血器1と組合わせた時、採血が可能となる。
血液センサ7は、前記キャップ5と対向し検査用採血室17を作る仕切壁を兼ねた形状に作られている。この場合、血液センサ7は、血液と直接接触し合うようになっていればよい。必ずしも仕切壁を兼ねた形状でなくてもよく、例えば、別途仕切壁を設け、その仕切壁に血液センサ7を設けるようにしたり、あるいは、採血室周壁に設けるようにしてもよい。
【0018】
検査用採血室17は、外周が透明な材質のため外から見えるようになっている。図2に示すようにキャップ5の領域を採血ホルダ15の内部へ差込むことで、検査用採血室17は採血針13の後端針部13aが内部に臨み、腕等に刺すための採血針13と連通し例えば、血管圧等により凝固検査等に必要な必要量(少なくてもよい)の採血が可能となっている。この場合、検査用採血室17は予め、減圧した減圧室とする手段としておくことが望ましい。これにより、例えば、図3に示すように、採血針13の後端針部13aがキャップ5の途中まで挿入された状態として、採血針13を腕に刺すのと同時に採血器本体3を押し込むことで図2の状態となる。この時、圧力差によって検査用採血室17内へすばやく血液が送り込まれ、必要量の迅速な採血が可能となる。
【0019】
血液センサ7は、採血器本体3に設けられたタッチスイッチ19によって電源部21からの信号電流が与えられることで発振する血液凝固センサとなっている。血液センサ7は、例えば、血液と接触した状態で発振することで血液の物性・組成変化に応じて振動子の発振周波数や共振抵抗が変化することから、その発振周波数や共振抵抗の変化を監視することで、例えば、血液凝固の経時変化をみることが可能となり、その経時変化をセンサ情報として血液検査部9へ出力するようになる。
【0020】
血液検査部9は発振周波数等を監視する周波数カウンタ等々の手段を有する外に、例えば、発振周波数と血液凝固に関するデータが入力されていて、前記血液センサ7から送られてくるセンサ情報に基づいて比較検討が行なわれる。その検討結果は出力端子25を介して検査装置本体11へ送られ検査結果表示部27に表示されることで目視による確認が可能となっている。
【0021】
出力端子25は採血器本体3の底部に設けられていて、図4に示すように検査装置本体11にセットした時にセット部29に設けられたオス・メスの関係にある接続端子31と電気的に接続可能となっている。
【0022】
検査装置本体11は、接続端子31からの信号によって前記検査結果表示部27に対してデジタル表示させる駆動回路の外に、データ保存機能、転送機能、データ出力機能を備えている。
【0023】
この場合、検査装置本体11は、図7に示すように一度に多数の採血器本体3をセットできるようにし、各スイッチ釦S−1〜S−5を操作することで、各採血器本体3の検査結果が検査結果表示部27に表示されるようにしてもよい。
【0024】
また、検査装置本体11内に、採血器本体3内に設けた血液検査部9の機能を持たせることで、図6に示すように採血器本体3を、血液センサ7とその血液センサ7からのセンサ情報を保持しておく、データ保存部33を設ける簡単な構造にできる。特に、採血器本体3は持ち運びするところから収容スペースにも制約があるため、前記実施形態とすることで設計自由度の面で大変好ましいものとなる。
【0025】
また、図5に示すように採血器本体3を本体部3bと測定セル部3aとを分割できるように接続端子35−1,35−2で電気的な接続を可能とすることで、測定セル部3aの使い捨てが可能となり、検査採血室17を常に新しい状態で使用することができる。
【0026】
このように構成された血液検査採血器1によれば、採血器本体3のキャップ5側を先頭にして採血ホルダ15内へ差込むことで採血針13の後端針部13bをキャップ5を介して検査用採血室17内へ臨ませることができる。
【0027】
したがって採血するには、例えば、採血ホルダ15の採血針13を予め先に腕に刺しておき、採血器本体3を採血ホルダ15内へ差込むことで検査用採血室17内へ直接血液が送り込まれ採血ができる。
【0028】
採血された検査用採血室17内の血液はその場で血液センサ7と接触し、そのセンサ情報は血液検査部9に送られ、血液凝固の状態がわかるようになる。
【0029】
この時の血液サンプルは、採血から検査に入るまでタイムラグがなく、しかも、抗凝固剤が入っていない生体内の血液成分のため正確な検査結果が得られる。
【0030】
一方、検査結果は、検査装置本体11のセット部29にセットすることで検査結果表示部27にデジタル表示され目視によって知ることができる。
【0031】
したがって、近年開業医、専門医の診察室、病棟および外来患者向け診療所など「患者の近いところ」で行なわれる検査、ポイント・オブ・ケア検査(POC)の開発が国際的に臨まれているが、そのPOC検査に対応することができる。
【0032】
なお、本実施形態では血液センサ7を、血液凝固センサとして説明したが凝固以外を調べるセンサとする一方、血液検査部9のプログラムを変更することであらゆる血液のPOC検査が可能となる。
【0033】
また、採血器本体3から検査装置本体11へ信号は有線に基づく手段となっているが、採血器本体3側に発振器、検査装置本体11側に受信機を設けて無線に基づく手段によって検査結果を表示部27に表示させる手段としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明にかかる血液検査採血器と採血ホルダの概要説明図。
【図2】採血器本体のキャップ側を採血ホルダ内へ差込んだ差込み完了時の概要説明図。
【図3】採血器本体のキャップ側を採血ホルダの途中まで差込んだ状態の概要説明図。
【図4】採血器本体を検査装置本体のセット部へセットした状態の概要説明図。
【図5】採血器本体を測定用セル部と本体部とに分割できるようにした概要説明図。
【図6】検査採血室の外にデータ保存部を備えた採血器本体の概要説明図。
【図7】検査装置本体に一度に多数の採血器本体がセットできるようにした概要説明図。
【符号の説明】
【0035】
3 採血器本体
5 キャップ
7 血液センサ
9 血液検査部
11 検査装置本体
13 採血針
13a 後端針部
15 採血ホルダ
17 検査用採血室
19 タッチスイッチ
21 電源部
27 検査結果表示部
29 セット部
33 データ保存部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
採血針を備えた採血ホルダ内へ差込み可能で、その採血ホルダの内部へ向かって延長された前記採血針の後端針部が挿入されるキャップを備えた検査用採血室と、その検査用採血室内の血液と直接接触し合う血液センサと、少なくとも前記血液センサからのセンサ情報に基づき血液の物性値を調べる血液検査部とからなることを特徴とする血液検査採血器。
【請求項2】
採血針を備えた採血ホルダ内へ差込み可能で、その採血ホルダの内部へ向かって延長された前記採血針の後端針部が挿入されるキャップを備えた検査用採血室と、その検査用採血室内の血液と直接接触し合う血液センサと、少なくとも前記血液センサからのセンサ情報を保存するデータ保存部とからなることを特徴とする血液検査採血器。
【請求項3】
前記採血器の採血器本体を、検査装置本体にセットした時に、目視可能な検査結果表示部に検査結果が表示されることを特徴とする請求項1又は2に記載の血液検査採血器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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