説明

血液活性組成物ならびにそれらの製造および使用のための方法

【課題】止血の促進および生物活性物質の送達のための組成物を提供すること。
【解決手段】乾燥した血液活性物質は、架橋された生物学的に適合可能なポリマーおよび架橋されてない生物学的に適合可能なポリマーの両方を含む。この架橋されたポリマーは、血液に曝される場合に、ヒドロゲルを形成するように選択される。架橋されてないポリマーは、血液に曝される場合に、比較的迅速に可溶化するように選択される。架橋されてないポリマーは、所望の形状(例えば、シート、ペレット、プラグなど)で物質を維持するためのバインダーとして機能する。通常、この架橋されたポリマーは、粒状形態または断片化形態で存在する。この物質は、止血および薬物送達に特に適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
(1.発明の分野)
本発明は、該して、生体適合性ポリマー組成物ならびにそれらの生成および使用のための方法に関する。より具体的には、本発明は、止血の促進および生物活性物質の送達のための組成物に関する。
【0002】
患者における出血を阻害し(止血)かつその患者に生物活性物質を送達する(薬物送達)能力は、両方とも非常に医学的に重要である。ここ何年もの間、多くのデバイス、組成物および生物学的薬剤は、両方の目的について開発されてきた。すべての医学的必要性を満たし得るデバイス、組成物またはアプローチはないので、止血および薬物送達の両方を達成するための代替かつ改善された様式を提供することが必要とされ続けている。
【0003】
特に、止血および薬物送達のいずれかまたは両方を実行するために適する、新規でかつ代替の組成物を患者に提供することが、望ましい。好ましくは、このような組成物は、患者の組織構造または皮膚に対する外科的創傷および/または外傷性創傷への局所送達のための簡便なマトリックスであるべきである。特に、このような組成物は、乾燥しているべきであり、長期間貯蔵し得るべきであり、配置を容易にするためにシートまたは他の容易な扱い可能な形態であるべきであり、使用する前に使用者に最小量の準備を要求するべきであり、製造が比較的容易であるべきであり、広範な種々の生物学的薬剤および他の活性因子などの送達に適合可能であるべきであるべきである。止血物質の場合において、さらなる出血または他の有害事象を生じないで、過剰な物質を除去し得ることは、特に有益である。これらの目的の少なくともいくらかは、本明細書中の以下に記載される本発明の実施形態によって達成される。
【背景技術】
【0004】
(2.背景技術の説明)
生分解性の注入可能な薬物送達ポリマーは、米国特許第5,384,333号およびJeongら(1997)「Nature」388:860−862によって記載される。制御された放出性薬物送達のための生分解性ヒドロゲルは、米国特許第4,925,677号に記載される。吸収可能なコラーゲンベースの薬物送達系は、米国特許第4,347,234号および同第4,291,013号に記載される。薬物送達のためのアミノ多糖ベースの生体適合性フィルムは、米国特許第5,300,494号および同第4,946,870号に記載される。タキソールの送達のための水溶性キャリアは、米国特許第5,648,506号に記載される。
【0005】
ポリマーは、局在化しかつ持続された放出をもたらすための治療剤のキャリアとして使用されてきた(Langerら、Rev.Macro.Chem.Phys.,C23(1),61,1983;Controlled Drug Delivery,Vol.IおよびII,Bruck,S.D.,(編),CRC Press,Boca Raton,Fla.,1983;Leongら、Adv.Drug.Delivery.Review,1:199,1987)。これらの治療剤送達系は、注入をシミュレートし、そして増強された治療効力および減少された全身性毒性の潜在性を提供する。
【0006】
制御された放出性薬物送達のために提示された他のクラスの合成ポリマーとしては、ポリエステル(Pittら、Controlled Release of Bioactive Materials,R.Baker,編、Academic Press,New York,1980);ポリアミド(Sidmanら、Journal of Membrane Science,7:227,1979);ポリウレタン(Maserら、Journal of Polymer Science,Polymer Symposium,66:259,1979);ポリオルトエステル(Hellerら、Polymer Engnieering Scient,21:727,1981);およびポリ無水物(Leongら、Biomaterials,7:364,1986)が挙げられる。米国特許第5,595,735号は、キャリアとしてポリエチレングリコールを用いるトロンビンペースト組成物を記載する。
【0007】
それらの物理的特性を変更するために機械的に崩壊されたコラーゲン含有組成物は、米国特許第5,428,024号;同第5,352,715号;および同第5,204,382号に記載される。これらの特許は、概して、繊維性コラーゲンおよび不溶性コラーゲンに関する。注入可能なコラーゲン組成物は、米国特許第4,803,075号に記載される。注入可能な骨/軟骨組成物は、米国特許第5,516,532号に記載される。水中に懸濁され得、そして特定の表面電荷密度を有する、5μm〜850μmの範囲の寸法の乾燥粒子を含む、コラーゲンベースの送達マトリックスは、WO96/39159に記載される。創傷の包帯剤を形成するためのエアロゾルスプレーとして有用な、1μm〜50μmの粒子寸法を有するコラーゲン調製物は、米国特許第5,196,185号に記載される。コラーゲン組成物を記載する他の特許としては、米国特許第5,672,336号および同第5,356,614号が挙げられる。
【0008】
架橋され得かつシリンジを介して注入され得るポリマー性非腐食性ヒドロゲルは、WO96/06883に記載される。
【0009】
以下の係属中の出願(本願の譲受人に譲渡される)は、関連する主題を含む:USSN09/032、370号(1998年2月27日出願);USSN08/903,674号(1997年、7月31日出願);USSN60/050,437号(1997年6月18日出願);USSN08/704,852号(1996年8月27日出願);USSN08/673、710号(1996年6月19日出願);USSN60/011,898号(1996年2月20日出願);USSN60/006,321号(1996年11月7日出願);USSN60/006,322号(1996年11月7日出願);USSN60/006,324号(1996年11月7日出願);およびUSSN08/481,712号(1995年6月7日出願)。これらの出願の各々の全開示は、本明細書中で参考として援用される。WO98/08550(USSN08/903,674号から優先権を主張する)は、本発明の物質の成分として有用な架橋生物学的ポリマーを記載する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の要旨)
本発明に従って、血液活性物質は、乾燥した架橋された生物学的適合性ポリマー、および架橋されてない生物学的適合性ポリマーを含み、この架橋された生物学的適合性ポリマーは、血液に曝された場合にヒドロゲルを形成し、そして架橋されてない生物学的適合性ポリマーは、血液に曝された場合に可溶化する。架橋されたポリマーは、架橋されてないポリマーの乾燥したマトリクス中に分散され、そしてこの物質は、外科的部位、創傷、および出血しているか、そうでなければ血液が存在する組織中の他の標的領域に送達される。「血液活性(な)」とは、この組成物が、血液に曝された場合に血液とある方法で相互作用することを意味する。最小限で、この架橋されてない生物学的ポリマーは、血液の存在下で溶解性であり、そして架橋された生物学的適合性ポリマーを放出し、その結果、水和し得、血液から水分を吸収してゲルを形成する。従って、架橋されてない生物学的適合性ポリマーは、使用の前に所望の形態で架橋されたポリマーを維持するバインダーを形成する。通常、この組成物は、シート状の形態であり、代表的には、1mm〜25mm、好ましくは、2mm〜15mmの範囲の厚さを有する。あるいは、この物質は、粉末状、ペレット状、大きなブロック状、プラグ状、円筒状、チューブ状、スプリットチューブ状または組織部位を標的するために都合よく送達または配置され得る他の形態に形成され得る。さらに、「血液活性」物質は、所望の生物活性を提供し得る他の生物活性因子を含み得る。特定の目的のために、この血液活性物質は、血液凝固因子(例えば、トロンビン)のような止血因子を含み得、この血液凝固因子は、物質の止血活性を促進する。広範な種々の他の生物活性因子が送達され得、これらの試薬には、以下が挙げられる:他のタンパク質、炭水化物、核酸、無機生物学的および有機生物学的活性分子(例えば、酵素、酵素インヒビター、抗生物質、抗腫瘍剤、静菌剤、殺菌剤、抗ウイルス剤、麻酔剤、抗炎症剤、ホルモン、抗脈管形成剤、抗体、神経伝達物質など)。さらなる成分が、この特性または物質の有効期間を増強または改変するために、組成物(例えば、緩衝剤、抗酸化剤、保存剤、粘性調節剤、可溶性調節剤など)中に提供される。好ましくは、この物質は、無菌パッケージの中で滅菌され、かつ維持される。従来の滅菌方法としては、γ−照射、エチレンオキシドへの曝露、電子ビーム照射、無菌処理などが挙げられる。
例えば、本発明は以下の項目を提供する。
(項目1) 乾燥血液活性物質であって、以下:
血液に曝される場合にヒドロゲルを形成する、架橋された生物学的に適合可能なポリマー;および
血液に曝される場合に可溶化する、架橋されてない生物学的に適合可能なポリマー、
を含み、ここで、該架橋されたポリマーは、該架橋されてないポリマーの乾燥マトリックス中に分散される、乾燥血液活性物質。
(項目2) 乾燥血液活性物質であって、以下:
乾燥ゼラチンマトリックスを含有する架橋されてないポリマー;および
該乾燥した架橋されてないゼラチンマトリックス中に分散される、乾燥した架橋されたゼラチンポリマー粒子、
を含む、乾燥血液活性物質。
(項目3) 前記架橋されたポリマーは、少なくとも1日の生分解時間を有する、項目1または2に記載の物質。
(項目4) 前記架橋されてないポリマーは、血液に曝される場合、15分以下で可溶化する、項目1または2に記載の物質。
(項目5) 前記架橋されたポリマーは、該ポリマーが、血液における水和の際に、0.01mm〜5mmの範囲のサブユニット寸法でゲルを形成するように断片化される、項目1または2に記載の物質。
(項目6) 前記架橋されたポリマーは、400%〜5,000%の範囲で平衡スウェルを有する、項目5に記載の物質。
(項目7) 前記架橋されたポリマーは、前記物質の50重量%〜95重量%で存在し、そして前記架橋されてない物質は、該物質の50重量%〜1重量%で存在する、項目1または2に記載の物質。
(項目8) 前記物質の1重量%〜20重量%で存在する可塑剤をさらに含む、項目7に記載の物質。
(項目9) 前記可塑剤は、少なくとも前記架橋されてないポリマー中に存在する、項目8に記載の物質。
(項目10) 前記可塑剤は、ポリエチレングリコール、ソルビトールおよびグリセロールからなる群より選択される、項目9に記載の物質。
(項目11) 前記架橋されたポリマーは、ゼラチン、コラーゲン、アルブミン、ヘモグロビン、フィブリノゲン、フィブリン、フィブロネクチン、エラスチン、ケラチン、ラミニン、およびカゼインからなる群より選択されるタンパク質である、項目1に記載の物質。
(項目12) 前記架橋されたポリマーは、グリコサミングリカン、デンプン、セルロース、へミセルロース、キシラン、アガロース、アルギナート、およびキトサンからなる群より選択される炭水化物または炭水化物誘導体である、項目1に記載の物質。
(項目13) 前記架橋されたポリマーは、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリビニルポリマー、ポリラクチド−グリコリド、ポリカプロラクトン、ポリオキシエチレン、およびそのコポリマーからなる群より選択される、非生物性ヒドロゲル形成ポリマーまたはコポリマーである、項目1に記載の物質。
(項目14) 前記架橋されてない生物学的に適合可能なポリマーは、ゼラチン、コラーゲン、アルブミン、エラスチンおよびケラチンからなる群より選択されるタンパク質である、項目1に記載の物質。
(項目15) 前記架橋されてない生物学的に適合可能なポリマーは、グリコサミノグリカン、アルギナート、デンプン、セルロース、およびその誘導体からなる群より選択される炭水化物または炭水化物誘導体である、項目1に記載の物質。
(項目16) 活性因子をさらに含む、項目1または2に記載の物質。
(項目17) 前記活性因子は、少なくとも前記架橋されてないポリマー中に存在する、項目16に記載の物質。
(項目18) 前記活性因子は、少なくとも前記架橋されたポリマー中に存在する、項目16に記載の物質。
(項目19) 前記活性因子は、前記架橋されてないポリマーおよび前記架橋されたポリマーの両方に存在する、項目16に記載の物質。
(項目20) 前記活性因子は、抗生物質、抗腫瘍薬、静菌剤、殺菌剤、抗ウイルス剤、麻酔薬、抗炎症剤、ホルモン、抗脈管形成剤、抗体、酵素、酵素インヒビター、および神経伝達物質からなる群より選択される、項目16に記載の物質。
(項目21) 前記活性因子は、止血物質である、項目16に記載の物質。
(項目22) 前記止血物質は、凝固因子である、項目21に記載の物質。
(項目23) 前記凝固因子は、トロンビンである、項目22に記載の物質。
(項目24) 1mm〜25mmの範囲の厚さを有するシートの形態である、項目1または2に記載の物質。
(項目25) 前記シートは、無菌パックで包まれる、項目24に記載の物質。
(項目26) キットであって、以下:
無菌パック;
該無菌パックで包まれた、項目24に記載の物質の無菌シート;および
物質の該無菌シートを出血している組織を覆って配置することによって出血を阻害するための方法を記載する、使用説明書、
を含む、キット。
(項目27) 出血を阻害するための方法であって、該方法は、創傷部位に項目21の物質を適用する工程を包含する、方法。
(項目28) 患者に活性因子を送達するための方法であって、該方法は、項目16の物質を患者の血液に曝す工程を包含する、方法。
(項目29) 血液活性物質を作製するための方法であって、該方法は、以下の工程:
血液に曝される場合に可溶化する、架橋されてない生物学的に適合可能なポリマーを水性培地中に溶解させる工程;
血液に曝される場合にヒドロゲルを形成する、架橋された生物学的に適合可能なポリマーの粒子を該水性培地中に懸濁する工程;および
該水性培地を乾燥して、該架橋されてないポリマーの乾燥マトリックス中に該乾燥ポリマー粒子を含む固相を形成する工程;
を包含する、方法。
【0011】
本発明の組成物は、好ましくは、架橋された生物学的適合性ポリマーを含み、このポリマーは、比較的持続性であり、通常、少なくとも1日の分解時間を有し、好ましくは、2日〜60日の範囲の分解時間を有する。逆に、バインダーを形成する架橋されてない生物学的適合性ポリマーは、非常に短い寿命を有し、そして代表的に、生理学的温度(37℃)において、15分未満、好ましくは、30秒から10分間で血液または水性媒体に溶解する。好ましい架橋されたポリマーは、断片化され(すなわち、分解した乾燥粒子として物質内に存在する)、この粒子は、続く水和により、0.01mm〜5mm、好ましくは、0.05mm〜1mmの範囲のサイズを有する。この架橋されたポリマーは、膨張可能であり、そして200%〜5,000%、好ましくは、500%〜1000%の範囲で完全に水和される場合、平衡スウェルを有する。
【0012】
パーセンテージとして表現される平衡スウェルは、以下:
【0013】
【数1】

のような、架橋されたポリマーの平衡湿潤重量と乾燥重量との差とこの架橋されたポリマーの乾燥重量の比として定義される。この平衡湿潤重量は、ポリマーが湿潤因子と長時間接触した後に測定される。この後、このポリマーは、十分にさらなる湿潤因子をもはや吸収し得ない。例えば、平衡状態で乾燥重量の5倍の水分を吸収した架橋されたポリマーは、500%の水分平衡スウェルを有すると呼ばれる。水分を全く吸収しない架橋されたポリマー(すなわち、この平衡湿潤重量は、乾燥重量と同じである)は、0%の水分平衡スウェルと呼ばれる。
【0014】
この架橋されたポリマーは、物質の顕著な成分であり、通常、代表的に、物質の全重量の50重量%〜95重量%で存在し、好ましくは、物質の全重量の80重量%〜95重量%で存在する。対照的に、バインダーは、この物質のより少ない部分を常に形成し、代表的に、この物質の全重量の50重量%〜1重量%で存在し、通常、20重量%〜1重量%で存在する。通常、可塑剤はまた、物質中(通常、物質の非架橋相中)に提供され、そして代表的に、この物質の全重量の1重量%〜20重量%で存在し、通常、この物質の3重量%〜15重量%で存在する。必要に応じて、この可塑剤は、架橋されてないポリマーおよび架橋されたポリマーの両方中に存在し得る。好ましい架橋剤としては、ポリエチレングリコール、ソルビトール、およびグリセロールが挙げられる。
【0015】
架橋されたポリマーは、ヒドロゲルを形成し得る、タンパク質、炭水化物、非生物学的ヒドロゲル形成ポリマーもしくはコポリマー、または他の生物学的適合性ポリマー、あるいはポリマーの組合せである。好ましいポリマーとしては、タンパク質(例えば、ゼラチン、コラーゲン、アルブミン、ヘモグロビン、フィブリノーゲン、フィブリン、フィブロネクチン、エラスチン、ケラチン、ラミニン、カゼインなど)が挙げられる。好ましい炭水化物および炭水化物誘導体ポリマーとしては、グリコサミノグリカン、デンプン、セルロース、ヘミセルロース、キシラン、寒天、アルギネート、キトサンなどが挙げられる。例示的な非生物学的ヒドロゲル形成ポリマーおよびコポリマーとしては、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリビニルポリマー、ポリラクチド−グルコリド、ポリカプロラクトン、ポリオキシエチレン、およびそれらのコポリマーが挙げられる。通常、この架橋されたポリマーの架橋の程度は、上記の範囲内の所望の膨張性を提供するように選択される。
【0016】
架橋されてない生物学的適合性ポリマーは、通常、タンパク質または炭水化物であり、そして架橋されたポリマーと同一のポリマーであり得る。例示的なタンパク質としては、ゼラチン、コラーゲン、エラスチン、アルブミン、ケラチンなどが挙げあれる。例示的な炭水化物としては、グリコサミノグリカン、アルギネート、デンプン、セルロース、それらの誘導体などが挙げられる。架橋されてないポリマーは、非生物学的水溶性ポリマー(ヒドロゲル形成ポリマーおよび上記のコポリマーのいずれか)であり得る。本発明に従って、特に好ましく、例示的な血液活性物質は、乾燥ゼラチンマトリックス中に分散される粒子として存在する、架橋されてないゼラチンポリマーおよび乾燥した架橋されたゼラチンポリマーの乾燥マトリックスを含む。このような組成物は、本明細書以下の実施例により詳細に記載される。
【0017】
活性因子を送達させる場合、この活性因子は、架橋されてないポリマーまたは架橋されたポリマーのいずれか、またはその両方中に存在し得る。架橋されてないポリマー中にのみ存在する場合、この活性因子は、この物質が血液と接触する際に最初に溶解する場合に実質的に即座に放出される。架橋されてないポリマー中に存在する場合、この物質は、かなりゆっくりと、代表的に架橋されたポリマーが分解する全時間にわたって放出される。必要に応じて、同一または異なる活性因子が生物活性因子の異なる制御された放出速度を提供するために、物質の異なる2つの相中に提供され得る。
【0018】
本発明の物質は、一般的に上記のように、シート状、粉末状、ペレット状、プラグ状、チューブ状、スプリットチューブ状、円筒状などとしてに形成され得る。このような物質の形態は、好ましくは、滅菌的に(例えば無菌処理)作製されるか、またはキットの一部として無菌パック中で滅菌かつ提供される。物質の固体形態を含む無菌パックに加えて、このキットはまた、通常、組織の標的部位(例えば、創傷または他の出血組織の部位)に滅菌された物質を配置することによって、出血を阻害するかまたは薬物を送達するための上記方法の使用説明書を含む。
本発明のさらなる局面として、血液活性物質はまた、水性媒体中で、上記のタイプの架橋されてない生物学的適合性ポリマーを溶解させることによって製造され得る。次いで、上記のような架橋された生物学的適合性ポリマー粒子を、この水性媒体に懸濁させる。次いで、この水性媒体を乾燥させ、架橋されてないポリマーの乾燥マトリックス中に乾燥ポリマー粒子を含む固相を形成する。凍結乾燥(フリーズドライ)が、好ましい乾燥技術であるが、空気乾燥、熱による乾燥、スプレー乾燥、成形、および他の方法が特定の環境下で使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、出血組織部位上に配置される本発明の1枚の血液活性物質の概略図である。
【図2】図2は、物質が配置された後の図1の出血組織部位および血液の吸収によって形成されたヒドロゲルの概略図である。
【図3】図3は、血液活性物質の種々の形態、使用のための指示書、およびパッケージングを含む、本発明に従うキットの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に従う組成物は、架橋された生物学的適合性ポリマーおよび架橋されてない生物学的適合性ポリマーの両方を含む、乾燥止血物質を含む。「生物学的適合性」とは、この物質が標準(♯ISO 10993−I(International Organization for Standardization,Geneva,Swizerland)の基準に合うことを意味する。一般に、生物学的適合性物質は、発熱性物資を含まず、そして下記のような方法に従って、ヒトの組織に適用される場合、有害な生物学的効果を及ぼさない。通常、本発明の組成物は、再吸収可能である。「再吸収可能」とは、この組成物が、1年未満の期間、通常、1日〜120日に期間にわたって、患者の体内の標的部位上またはその中に直接配置される場合、分解または溶解することを意味する。通常、本発明の物質の架橋されてないポリマー成分は、非常に迅速に、代表的に数分以下で分解または溶解する。残った架橋されたポリマーは、この配置部位においてヒドロゲルを形成する。ここで、このヒドロゲルは、長期間存在するが、上記のように再吸収可能である。
【0021】
本発明に従って、好ましい架橋されたポリマーは、1998年2月27日に出願された同時継続中の出願番号09/032,370に詳細に記載される。この出願の全開示は、本明細書中で先に参考として援用されている。この架橋された生物学的適合性ポリマーは、分子架橋され得る。「分子架橋」とは、この物質が、エレメント、グループ、または化合物のいずれかを含む架橋によって結合されるポリマー分子に(すなわち、個々の鎖)を含むことを意味する。ここで、ポリマー分子の骨格原子は、化学結合によって結合される。あるいは、架橋されたポリマーは、非共有的(例えば、イオン性または疎水性)相互作用によって形成され得る。架橋は、以下に詳細に記載されるように、種々の方法において提供され得る。
【0022】
「ヒドロゲル」とは、以下により詳細に規定されるように、生物学的ポリマーまたは非生物学的ポリマーが、水または水性緩衝液を吸収する、単一相の水性コロイドを含むことを意味する。好ましくは、このヒドロゲルは、水分を少し含む(つまり、水分を含まないことはない)。すなわち、水分は、使用の前に、単純なろ過によりヒドロゲルから除去され得ない。
【0023】
「パーセントスウェル」とは、乾燥重量を湿潤重量から引いた値を、この乾燥重量で割り、これに100を掛けた値を意味する。ここで、湿潤重量は、湿潤因子が、この物質の外から(例えは、濾過により)可能な限り完全に除去された後に測定され、そして乾燥重量を、湿潤試薬をエバポレートするのに十分な時間をかけて高温度に曝した後(例えば、120℃で2時間)に測定される。
【0024】
「平衡スウェル」は、ポリマー物質が、水分含有量が一定となるのに十分な時間(代表的に、18〜24時間)をかけて湿潤因子中に浸漬させた後の、平衡状態におけるパーセントスウェルとして規定される。
【0025】
「標的部位」は、ヒドロゲル物質が送達されるべき位置である。通常、この標的部位は、目的の組織位置であるが、ある場合において、例えば、この物質がインサイチュで膨張して、目的の位置を覆う場合、このヒドロゲルが、目的の位置の近くの位置に投与されるかまたは分配され得る。
【0026】
本発明の架橋されたポリマーは、生物学的ポリマーおよび非生物学的ポリマーから掲載され得る。適切な生物学的ポリマーとしては、タンパク質(例えば、ゼラチン、溶解性コラーゲン、アルブミン、ヘモグロビン、カセイン、フィブリノーゲン、フィブリン、フィブロネクチン、エラスチン、ケラチン、ラミニン、ならびに誘導体およびそれらの組合せ)が挙げられる。特に好ましくは、ゼラチンまたは溶解性非繊維状コラーゲン、より好ましくは、ゼラチンの使用であり、そして例示的ゼラチンの組成式は、以下に記載される。他の適切な生物学的ポリマーとしては、グリコサミドグリカン(例えば、ヒアルロン酸および硫酸コンドロイチン)のようなポリサッカリド、デンプン誘導体、キシラン、セルロース誘導体、ヘミセルロース誘導体、寒天、アルギナート、キトサン、ならびにそれらの誘導体および組合せが挙げら得る。適切な非生物学的ポリマーは、2つの機構のうちいずれかによって分解されるように選択される。すなわち、(1)ポリマー骨格の破壊または(2)水性溶解性となる側鎖の分解。例示的な非生物学的ヒドロゲル形成ポリマーとしては、合成物(例えば、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリビニル樹脂、ポリラクチド−グルコリド、ポリカプロラクトン、ポリオキシエチレン、ならびにそれらの誘導体および組合せ)が挙げられる。
【0027】
ポリマー分子は、本発明に従って、水性ヒドロゲルを形成するのに適切な任意の様式で架橋され得る。例えば、ポリマー分子は、2官能性または多官能性架橋因子を使用して架橋され得、この架橋因子は、2以上のポリマ分子鎖と共有結合する。例示的な2官能性架橋因子としては、アルデヒド、エポキシド、スクシンイミド、カルボジイミド、マレイミド、アジド、カーボネート、イソシアネート、ジビニルスルホン、アルコール、アミン、イミデート、無水物、ハライド、シラン、ジアゾ酢酸、アジリジンなどが挙げられる。あるいは、架橋は、ポリマー上の側鎖および部位を活性化する、酸化剤および他の因子(例えば、過ヨウ素酸塩)を使用することによって達成され得、その結果、このポリマーは、他の側鎖または部位と反応して、架橋結合を形成し得る。架橋のさらなる方法としては、ポリマーを照射(例えば、γ−照射)に曝し、側鎖ポリマーを活性化し、架橋反応を可能にする工程を包含する。デヒドロサーマル(dehydrothermal)架橋法がまた、適切である。ゼラチンのデヒドロサーマル架橋は、高温(代表的に、120℃)で、少なくとも8時間かけて、ゼラチンを保持することによって達成され得る。平衡状態におけるパーセントスウェルの減少で明らかにされるように、架橋の程度の増加は、保持温度を上昇させるか、保持時間を延長させるか、またはこの両方の組合せにより達成され得る。減圧下での処理により、架橋反応が加速し得る。ゼラチン分子を架橋するための好ましい方法は、以下に記載される。
【0028】
分子架橋ゼラチンを生成するための例示的な方法は、次の通りである。ゼラチンは、水性緩衝液中で得られそして配置されて、非架橋ヒドロゲル(代表的に、1重量%〜70重量%、通常、3重量%〜10重量%の固体含有量を有する)を形成する。このゼラチンは、代表的に、グルタルアルデヒド(例えば、0.01%〜0.05%w/w、水性緩衝液中、0℃〜15℃で一晩)、過ヨウ素酸ナトリウム(例えば、0.05M、0℃〜15℃で48時間保持)または1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(「EDC」)(例えば、0.5%から1.5%w/w、室温で一晩)のいずれかに曝すことにより、あるいは、約0.3〜3メガラドのγビーム照射または電子ビーム照射に曝すことによって、架橋される。あるいは、ゼラチン粒子は、アルコール、好ましくは、メチルアルコール、またはエチルアルコール中、1重量%〜70重量%、通常、3重量%〜10重量%の固体含量で懸濁され得、そして架橋剤(代表的に、グルタルアルデヒド(例えば、0.01%〜0.1%w/w、室温で一晩)に曝すことによって架橋し得る。アルデヒドの場合において、pHは、通常、約6〜11、好ましくは、7〜10で保持される。グルタルアルデヒドで架橋する場合、この架橋は、シッフ塩基を介して形成される。このシッフ塩基は、後の還元によって(例えば、ホウ素水素化ナトリウムでの処理によって)、安定化され得る。架橋後に得られた架橋顆粒は、水中で洗浄され、そして必要に応じてアルコール中でリンスされ、そして乾燥され得る。次いで得られた架橋ゼラチンは、本明細書以下により詳細に記載されるように使用され得る。あるいは、このゼラチンは、本明細書以下に詳細に記載されるような、架橋前または架橋後に機械的に分散され得る。
【0029】
約200%〜約5000%、好ましくは、500%〜1000%の範囲の平衡パーセントスウェルを有する、分子架橋ゼラチン組成物を生成するための例示的な方法は、以下の通りである。ゼラチンは、溶液(代表的に、グルタルアルデヒド、好ましくは、0.01%〜0.1%w/wの濃度)中に架橋剤を含有する水性緩衝液(代表的に、6〜11のpH、好ましくは、7と10との間のpH)中で得られそして配置されて、ヒドロゲル(代表的に、1重量%〜70重量%、通常、3重量%〜10重量%の固体含有量を有する)を形成する。このヒドロゲルは、架橋が起こるように、十分混合され、そして0℃〜15℃で一晩保持される。次いで、脱イオン化水で3回リンスし、必要に応じて、アルコール(好ましくは、メチルアルコール、エチルアルコール、またはイソプロピルアルコール)で2回リンスされ、そして、室温で乾燥させた。必要に応じて、このヒドロゲルは、ホウ素水素化ナトリウムで処理し、架橋をさらに安定化し得る。
【0030】
架橋されていない生物学的に適合可能なポリマーは、架橋された成分について上記のポリマーと同じ多くのポリマーから形成され得る。しかし、架橋されていない形態のポリマーを用いることにより、ポリマーは、血液または他の水性媒体の存在下では一般的に持続性が低く、従って本発明の架橋された物質を共に保持するためのバインダーとして適切である。特に適切なタンパク質の架橋されていないポリマーとしては、ゼラチン、コラーゲン、エラスチン、アルブミン、ケラチンなどが挙げられる。他の適切な架橋されていない炭水化物および炭水化物誘導体ポリマーとしては、グリコサミノグリカン、アルギナート、デンプン、セルロース、その誘導体などが挙げられる。本発明の組成物を調製する際に、代表的には、最初に適切な媒体、代表的に水性媒体(適切な緩衝液を有する)中に懸濁し、二次バインダー、可塑剤、防腐剤、抗酸化剤、生物活性剤などが添加される。一旦、架橋されていないポリマーが適切な濃度(代表的には0.2重量%〜10重量%、好ましくは0.25重量%〜2重量%の範囲)で懸濁されると、架橋されたポリマーが、代表的には乾燥粒子形態で添加される。架橋されたポリマーの分散が架橋されていないポリマーの溶液中で十分に混合された後、この懸濁液は任意の従来技術により乾燥され得る。好ましくは、この媒体は、媒体中の固体の濃度に依存して薄層(代表的には、1mm〜25mm)に広げられ、そして凍結乾燥されて、乾燥したスポンジ状の物質を生成し、次いでこの物質は、滅菌され、本明細書中以下に記載される方法において使用され得る。あるいは、架橋されていないポリマーの溶液(この溶液はまた、他の活性因子または生物活性因子を含み得る)は、滅菌濾過され得、そして滅菌環境下で他の手段で滅菌された架橋されたポリマーと合わせられ、そして無菌条件下でさらに加工が行われる。他の適切な乾燥技術としては、空気乾燥、加熱乾燥、スプレー乾燥、モールディングなどが挙げられる。シート状物質の使用は好ましいが、これらの物質は、特定の使用のために、他のジオメトリー(例えば、ペレット、栓、円筒形、半円筒形、管など)にさらに形成され得る。栓の使用は、脈管路をシールする場合(例えば、大腿動脈もしくは静脈または他の動脈もしくは静脈に対する経皮穿孔)において好ましくあり得る。
【0031】
本発明の組成物は、他の物質および成分(例えば、患者に送達される生物活性成分(単数または複数))、粘性改変剤(例えば、炭水化物およびアルコール)、および他の目的(例えば、吸収の速度を制御するため)を意図される他の物質とさらに合わせられ得る。例示的な生物活性成分としては、タンパク質、炭水化物、多糖類、核酸、ならびに無機生物学的活性分子および有機生物学的活性分子(例えば、酵素、酵素インヒビター、抗体、抗腫瘍性薬剤、静菌剤、殺菌剤、抗ウイルス剤、止血剤、局所麻酔剤、抗炎症剤、ホルモン、抗脈管形成剤、抗体、神経伝達物質、精神活性薬、再生器官に影響する薬物、およびアンチセンスオリゴヌクレオチドのようなオリゴヌクレオチド)が挙げられるが、これらに限定されない。このような生物活性成分は、代表的には、比較的低い濃度(代表的には、組成物の10重量%より低く、通常5重量%より低く、しばしば1重量%より低い)で存在する。このような活性因子の2つ以上は、単一の組成物中で合わせられかつ/または組成物の2つ以上が、異なる活性成分を送達するために使用され得、ここでこの成分が送達部位において相互作用し得る。
【0032】
例示的な止血因子としては、トロンビン、フィブリノゲンおよび凝血因子が挙げられる。トロンビンのような止血因子は、組成物の1g(乾燥重量)につき50〜10,000単位のトロンビンの範囲、好ましくは、トロンビン1gにつき約100〜5000単位のトロンビンの範囲の濃度で加えられ得る。
【0033】
必要に応じて、本発明の物質は、展性、可撓性、および溶解速度を増加させるために可塑剤を含み得る。可塑剤は、アルコール(例えば、ポリエチレングリコール、ソルビトール、またはグリセロール、好ましくは約200〜1000Dの範囲、好ましくは約400Dの分子量を有するポリエチレングリコール)であり得る。可塑剤は、組成物の約1固形重量%〜20固形重量%、通常3固形重量%〜15固形重量%で組成物中に存在する。通常、可塑剤は、少なくとも物質の架橋されていないポリマー相中に存在するが、架橋されたポリマー相にも存在し得る。簡便には、可塑剤は、架橋されたポリマーの添加の前に形成される架橋されていないポリマーの溶液に添加され得る。
【0034】
本発明の組成物は、出血の阻止(止血を引き起こす)、および/または擦過されるか、もしくは損傷した組織表面、例えば、肝臓、脾臓、心臓、腎臓、腸、血管、脈管器官などを含む任意の器官の表面への薬物の送達に特に適切である。乾燥された物質のシートまたは他の形態は、活発に出血している、擦過されたかまたは損傷した領域を完全に覆うように適用される。適切な止血因子としては、トロンビン、フィブリノゲン、および他の(例えば、米国特許第5,411,885号;同第4,627,879号;同第4,265,233号;同第4,298,598号;同第4,362,567号;同第4,377,572号;および同第4,442,655号(これらの開示は、本明細書中に参考として援用される)に記載されるような)凝固因子が挙げられる。簡単には、止血因子の触媒成分(例えば、トロンビン)はまた、本発明の組成物に添加され得る。
【0035】
ここで図1および2を参照して、本発明に従う血液活性物質のシート10の出血部位Bおよび組織Tを覆う配置が例示される。シート10は、適用の前に寸法が調整され得、次いでその乾燥形態で組織上に配置される。このシートは組織表面における任意の凸凹に適合し、そして直ぐにその部位に存在する血液から水を吸収し始める。数分間のうちに、この物質の架橋されていないポリマー成分は、溶解し始め、そして架橋された粒子を放出し、その結果この物質は、さらにより密接にその部位のジオメトリーに適合する。次いで、架橋された粒子は、図2に一般的に示されるように、水を吸収して膨張し始める。止血因子(例えば、トロンビン)は、架橋されていないポリマー成分から実質的に直ぐに放出され得、そして時間が経ってから架橋された成分により放出される。出血の実質的に完全な阻止が達成され得る。必要に応じて、ほかの生物活性因子が同じ物質のシートを使用してこの部位に送達され得る。
【0036】
ここで図3を参照して、本発明に従うキットは、シート10または本発明の乾燥されたポリマー物質の他の形態(例えば、ペレット12、栓14、など)を含む。これらの物質は、滅菌的に形成されるか、好ましくはγ−照射、エチレンオキシド、電子ビーム照射などを使用する終結(terminal)滅菌により滅菌される。まだ滅菌形態にある間、これらの物質は滅菌パッケージ20(例えば、袋、管、トレイ、箱など)中に包装される。この物質を血液の存在下で、例えば、創傷部位または手術部位において組織を覆って配置する方法を記載する使用説明書もまた、キットの一部として提供される。
【0037】
以下の実施例は、例示として提供され、限定として提供されない。
【実施例】
【0038】
(実施例)
(実施例1.非架橋ゼラチン粉末の生成のための材料および方法)
ウシ真皮(Spears Co.PA)を水酸化ナトリウム(Spectrum Chemical Co.,CA)水溶液(0.1M〜1.5M、好ましくは0.4M〜1.2M)中で1〜18時間(好ましくは1〜4時間)、2℃〜30℃(好ましくは22℃〜30℃)の温度で攪拌した。次いで、この真皮スラリーを無機酸(例えば、塩酸、リン酸または硫酸(Spectrum Chemical Co.,CA)を使用して中和し、次いでこの中和された液相を不溶性の真皮からふるいを通して濾過することにより分離した。次いでこの真皮を、非発熱性水およびアルコール(例えば、イソプロピルアルコール(Spectrum Chemical Co.,CA))で洗浄した。3〜12回洗浄した後、この真皮を非発熱性水中に懸濁し、次いで真皮/水スラリーを50〜90℃(好ましくは60℃〜80℃)に加熱して、真皮を熱的にゼラチン化した。ゼラチン化サイクルの間、真皮/水スラリーのpHを調節し、そしてpH3〜pH11(好ましくはpH6〜pH9)に制御した。また、このスラリー中の不溶性真皮を、攪拌および/または均質化により崩壊させ得る。崩壊は、熱的ゼラチン化サイクルの前、間、または後に起こり得る。熱的ゼラチン化は、1〜6時間実行した。ゼラチン化の後、このスラリーを清澄化した。このゼラチン化スラリーを、15℃〜40℃(好ましくは20℃〜35℃)で乾燥することにより、脱水した。次いで乾燥ゼラチン(ここで乾燥は、20%重量%未満の水分含有量を示す)を、粉砕することにより崩壊させた。
【0039】
(実施例2:シート形態の架橋バイオポリマーおよび非架橋バイオポリマーの凍結乾燥複合材混合物の製造のための材料および方法)
非架橋ゼラチン粉末を、ウシ真皮(Spears Co.,PA)から実施例1のように生成した。このゼラチンの一部を使用して、このゼラチン粉末を2.0固体重量%〜4.0固体重量%で、7と10との間のpHで0.0025重量%〜0.075重量%のグルタルアルデヒドを含有する水溶液中に、18〜24時間、5℃〜15℃で懸濁させることにより、約0,02mm〜1.5mmの直径の架橋ゼラチン粒子を作製した。この固体を、沈降分離または濾過により懸濁緩衝液から分離し、水でリンスし、そして0.00833重量%〜0.0667重量%のホウ水素化ナトリウムの溶液に、7と12との間のpH(好ましくは7〜9)で再懸濁させた。1〜6時間後、得られた架橋されたゼラチン粒子を、濾過または沈降分離により水相から分離し、水でリンスし、そして周囲温度で乾燥した。
【0040】
脱イオン水またはアスコルベートを含有する緩衝液中に、(重量で)0.1%〜2.0%の架橋されていないゼラチン粉末、0.1%〜2.0%の平均分子量400Dのポリエチレングリコール(Spectrum Chemical Co.,Gardena,CA)、ならびに5,000単位〜10,000単位のウシトロンビン(Gentrac, Inc.,Middleton,WI)を含む30mL溶液を生成した。1.0g〜4.0gの架橋されたゼラチン粒子をこの溶液に添加し、そして懸濁した。約25〜30gの生じた懸濁液を、金属皿(約7.5cmの直径)に注ぎ、次いでこれをアルコール−ドライアイス浴に5〜10分間置いた。次に、この皿およびその内容物を、約1時間−40℃に保持し、次いで凍結乾燥瓶に入れて、Labconcoフリーズドライユニットに移し、ここで凍結乾燥を18時間進行させた。凍結乾燥の終わりに、この皿は、可撓性で、多孔性の、わずかに砕けやすい、複合材物質の固形ディスク(2mm〜8mmの厚さ)を含んでいた。この複合材物質は、架橋されていないゼラチンと他の添加物とのマトリックス内に保持された架橋されたゼラチン粒子からなる。複合材物質は、密閉プラスチックバッグに室温で、使用するまで、または出荷のためにγ照射されるChex−All袋(Propper,Long Island City, NY)に移されるまで、貯蔵される。
【0041】
(実施例3:止血因子としての凍結乾燥複合材物質の使用)
ヘパリンを、飼育グレード(farm grade)のHampshire/Yorkshire交配ブタ(Pork Power Farms, Turlock, CA)に静脈内投与して、この動物の活性化凝固時間(ACT)をベースライン値の約3〜5倍まで長くした。凍結乾燥された複合材物質の止血有効性を試験するために、浅い円形のディボート(divot)(直径約1cm)をこのブタの脾臓上に外科的に形成した。生じた損傷は、大量に出血した。一片の凍結乾燥された複合材物質(実施例2のように調製された、約2.0cm×3.0cmのサイズ)を、損傷に適用して2分間圧迫した。圧迫を取り除いた後、出血は観察されなかった。3分後、いくらかの再出血が完全に物質と接触していない領域で起こった。さらなる物質を適用して1分間圧迫した。圧迫を取り除いた後、出血は観察されなかった。この損傷は、凝固した血液と適用された複合材物質との混合物でシールされたようであった。
【0042】
(実施例4:止血因子としての凍結乾燥された複合材物質の使用)
凍結乾燥された複合材物質の止血有効性を試験するために、浅いディボート(約1cm×1cm)を、飼育グレードのHampshire/Yorkshire交配ブタ(Pork Power Farms, Turlock,CA)の肝臓上に外科的に形成した。生じた損傷は大量に出血した。2cm×3cmの一片の凍結乾燥された複合材物質(実施例2のように調製された)を、損傷に適用して1分間圧迫した。圧迫を取り除いた後、出血は観察されなかった。この損傷は、凝固した血液と適用された複合材物質との混合物でシールされたようであった。
【0043】
(実施例5:止血因子としての凍結乾燥された複合材物質の使用)
ヘパリンを、飼育グレードのHampshire/Yorkshire交配ブタ(Pork Power Farms, Turlock, CA)に静脈内投与して、この動物の活性化凝固時間(ACT)をベースライン値の約3〜5倍まで長くした。凍結乾燥された複合材物質の止血有効性を試験するために、浅いディボート(約1cm×1cm)を、肝臓上に外科的に作製した。生じた損傷は大量に出血した。2cm×3cmの一片の凍結乾燥された複合材物質(実施例2のように調製された)を、損傷に適用して1分間圧迫した。圧迫を取り除いた後、この損傷からの出血は観察されなかった。この損傷は、凝固した血液と適用された複合材物質との混合物でシールされたようであった。
【0044】
(実施例6:凍結乾燥された複合材物質の照射)
凍結乾燥された複合材物質のシートを、実施例2のように生成し、Chex−All袋(Propper,Long Island City, NY)内に密封し、そして25〜40kGy(2.5〜4.0MRad)(典型的な滅菌線量)で周囲温度でγ−照射に供した(Stergenics,Hayward,CA)。
【0045】
(実施例7:照射された物質の止血因子としての使用)
ヘパリンを、飼育グレードのブタに静脈内投与して、動物の活性化凝固時間(ACT)をベースライン値の約3〜5倍まで長くした。実施例6で生成された物質の止血有効性を試験するために、浅い溝(約2cm×0.5cm)を、ブタの肝臓上に外科的に作製した。生じた損傷は、大量に出血した。実施例6で生成された3cm×0.5cmの一片の物質を、損傷に適用し、2分間圧迫した。圧迫を取り除いた後、出血は観察されなかった。損傷は、凝固した血液と適用された複合材物質の混合物でシールされたようであった。適用の20分後、過剰の物質を、ピンセットでこの部位から取り除いた。これはシールを妨害せず、そしてその後の出血は観察されなかった。
【0046】
(実施例8:照射された物質の止血因子としての使用)
ヘパリンを、飼育グレードのブタに静脈内投与して、動物の活性化凝固時間(ACT)をベースライン値の約3〜5倍まで長くした。孔(直径1.0cm)を、実施例6で生成された物質の止血有効性を試験するために、肝臓を完全に通して外科的に作製した。生じた損傷は、大量に出血した。実施例6で生成された物質の帯状片(約0.5cm×3.0cmのサイズ)をガーゼとして畳んで損傷に配置し、約2分間圧迫しながら適所に保持した。圧迫を取り除いた後、出血は観察されなかった。生理食塩水で洗浄した後、さらなる出血は観察されなかった。損傷は、凝固した血液と適用された複合材物質の混合物でシールされたようであった。
【0047】
上記のものは、本発明の好ましい実施形態の完全な説明であるが、種々の代替物、改変物、および等価物が使用され得る。従って、上記の記載は、添付の特許請求の範囲により規定される本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−148922(P2010−148922A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−68924(P2010−68924)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【分割の表示】特願2001−502866(P2001−502866)の分割
【原出願日】平成12年6月9日(2000.6.9)
【出願人】(500352498)フュージョン メディカル テクノロジーズ, インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】