説明

血液浄化器及びその製造方法

【課題】
本発明の課題は、臨床において、少量の置換液量(具体的には20〜70mL/min、4時間の治療で5〜15L))で効率よくβ―マイクログロブリンを除去可能で、かつアルブミン損失量の少ない疎水性高分子及び親水性高分子から構成される中空糸膜からなる血液透析濾過療法に使用される血液浄化器を提供することにある。
【解決手段】
疎水性高分子、親水性高分子及び溶媒を含むポリマー溶液(製膜原液)並びに内部芯液を用い、下記F及びGの手段により、下記H及びIの特性を有する中空糸膜を紡糸することを特徴とする中空糸膜の製造方法。
F.前記ポリマー溶液口金部ドラフト比が0.9以上1.0以下
G.芯液ドラフト比が1.11以上1.20以下
H.膜厚が30μm以上50μm以下
I.中空糸膜内径が205μm以上215μm以下

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に血液透析濾過療法に使用される血液浄化器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
血液透析濾過療法は濾過と透析(拡散)の両方の効果を利用して、小分子量物質から低分子量蛋白質までの広い分子量範囲の尿毒症物質を除去するものである。この療法においては、血液透析濾過器に透析液を流しつつ、血液側から透析液側に向けて大量の濾過を行い、これにより生じる過剰な体液量の減少を電解質液(置換液)(サブラッドA、サブラッドB、HFソリタ)等の投与により補う方法を採っており、小分子量物質から低分子量蛋白質までの広い分子量範囲の尿毒症物質等の除去が可能であり、より人間の腎糸球体機能に近い機能となる治療法を提供している。血液透析濾過療法には、オフライン型(ボトル式)、オンライン型やプッシュアンドプル型等がある。オフライン型は置換液として輸液製剤を用いる古典的方式であり、専用の輸液製剤としてガラスボトルまたはソフトバッグに1〜2Lずつの輸液が充填されて準備されており、血液透析濾過器により生じる過剰な体液量の減少を電解質液(置換液)の投与により補う。一般に1回に5〜20Lの市販の専用置換液を置換液として使用する。オフライン型による治療は医療保険に収載されており、透析アミロイドーシスや透析困難症が適応となっている。
【0003】
一方、オンライン型やプッシュアンドプル型は、現在のところ健康保険適用外であるが、最近施行する透析施設が増えてきている治療法である。
【0004】
血液透析濾過療法は、関節痛、皮膚掻痒感、不眠、イライラ感、レストレスレッグス症候群などに対して有効であったと報告されており(非特許文献1)、アミロイドーシス悪化のリスクが低くなることもわかっている(非特許文献2)。
【0005】
しかし、血液透析濾過療法では、通常の血液透析療法と比較し、大量の血液濾過を伴うことから、アルブミンの損失量が多くなる。大量のアルブミンの損失は栄養障害や血圧低下等の合併症の原因となりうる。
【0006】
血液透析濾過療法は、従来の血液透析では改善されなかった合併症などの改善が得られることから最近行われるようになってきた治療法であるが、これまで血液透析濾過療法専用の血液浄化器は少なく、ほとんど従来の血液透析器が流用されており、血液透析濾過療法としての効果が得られなかったり、誤った臨床使用による低タンパク血症等の副作用が危惧されており、血液透析器を血液透析濾過療法に転用することへの疑問が指摘されている。例えば、透析アミロイドーシスの原因物質であるβ―マイクログロブリンを多く除去する目的で、孔径の大きい中空糸膜が組み込まれた血液透析器を選択することが多いが、その結果、有用物質であるアルブミンを多く損失することになる。言い換えれば、血液透析濾過療法では、孔径の大きい高性能の血液透析器が流用されているのであるが、これらは元来血液透析濾過療法用に設計されていないため、期待された濾過や置換ができなかったり、アルブミンが必要以上に漏出するなどの不都合が生じている。
【0007】
現在知られている血液透析濾過器として、疎水性高分子であるポリアクリロニトリル製の中空糸膜からなる旭メディカル社製の“ヘモダイアフィルターAFDシリーズ”があるが、アルブミンの損失量は少ないものの除去対象物質である尿素、クレアチニン及びβ―マイクログロブリンのクリアランスが低く、効果に問題がある(非特許文献3)。また、従来、流用されていたポリスルホンからなる血液透析器の中空糸膜の内径は、非特許文献4に見られるように、200μm以下が通常であるが、血液透析濾過療法に適した膜設計がなされているとはいえない。
【非特許文献1】九州HDF検討会会誌、2:99−101,1996
【非特許文献2】日本透析医学会統計調査委員会:わが国の慢性透析療法の現況、1999年12月31日
【非特許文献3】基礎と臨床、31(10)、3143−3152(1997)
【非特許文献4】血液透析スタッフのための新しいハイパフォーマンスダイアライザー、東京医学社、1998
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、臨床において、効率よくβ―マイクログロブリンを除去可能で、かつアルブミン損失量の少ない疎水性高分子及び親水性高分子から構成される中空糸膜からなる血液透析濾過療法に使用される血液浄化器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
1.横断面が非対称膜構造であって、疎水性高分子及び親水性高分子から構成され、かつ下記A〜Eの条件を満たす中空糸膜束が組み込まれていることを特徴とする血液浄化器。
A.前記中空糸膜の膜厚が30μm以上50μm以下
B.前記中空糸膜の内径が205μm以上215μm以下
C.前記中空糸膜束の糸束充填率が50%以上60%以下
D.前記中空糸膜内側に血液を250mL/minの流量で流し、40mL/minの流量で前記中空糸膜内側から外側に濾過させながら、前記中空糸膜外側に透析液を500mL/minの流量で前記血液と向流方向に流したときのβ―マイクログロブリンのクリアランスが60mL/min以上
E.前記D.の条件において、透析液出口にて採取した透析液中におけるβ―マイクログロブリン濃度のアルブミン濃度に対する比が630mg/g以上
2.前記中空糸膜のアルブミンふるい係数が0.1%以上1.1%以下であることを特徴とする前記1に記載の血液浄化器。
3.前記親水性高分子が架橋されていることを特徴とする前記1または2に記載の血液浄化器。
4.前記中空糸膜外周にポリエステル製の仮撚り糸(スペーサーヤーン)が巻き付けられていることを特徴とする前記1〜3のいずれかに記載の血液浄化器。
5.血液透析濾過療法に使用されるものであることを特徴とする前記1〜4のいずれかに記載の血液浄化器。
6.疎水性高分子、親水性高分子及び溶媒を含むポリマー溶液(製膜原液)並びに内部芯液を用い、下記F及びGの手段により、下記H及びIの特性を有する中空糸膜を紡糸することを特徴とする中空糸膜の製造方法。
F.前記ポリマー溶液口金部ドラフト比が0.9以上1.0以下
G.芯液ドラフト比が1.11以上1.20以下
H.膜厚が30μm以上50μm以下
I.中空糸膜内径が205μm以上215μm以下
7.前記製膜原液における疎水性高分子に対する親水性高分子の重量比が0.3以上0.6以下であることを特徴とする前記6に記載の中空糸膜の製造方法。
8.前記溶媒がジメチルアセトアミドであることを特徴とする前記6または7に記載の中空糸膜の製造方法。
9.前記芯液がジメチルアセトアミド水溶液であって、ジメチルアセトアミドの濃度が40重量%以上65重量%以下であることを特徴とする前記6〜8のいずれかに記載の中空糸膜の製造方法。
10.前記製膜原液が分子量の異なる2種類以上の親水性高分子を含有することを特徴とする前記6〜9のいずれかに記載の中空糸膜の製造方法。
11.前記疎水性高分子がポリスルホンであり、前記親水性高分子がポリビニルピロリドンであることを特徴とする前記6〜10のいずれかに記載の中空糸膜の製造方法。
12.前記6〜11のいずれかに記載の中空糸膜の製造方法によって製造された中空糸膜を組み込むことを特徴とする血液浄化器の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、臨床において、β―マイクログロブリンを除去し、かつアルブミン損失量の少ない疎水性高分子及び親水性高分子から構成される中空糸膜からなる血液透析濾過療法に使用される血液浄化器を提供することができる。特に、少量の置換液量(20〜70mL/min、4時間の治療で5〜15L)程度を言う)で効率よく上記機能を達成できる血液浄化器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に係る血液浄化器は、中空糸膜の横断面が非対称膜構造である、疎水性高分子及び親水性高分子から構成される中空糸膜束が組み込まれた血液浄化器である。中空糸膜の横断面が非対称膜構造であれば、β―マイクログロブリンのクリアランスを高くすることが可能である。かかる中空糸膜の内側は緻密層を有することが好ましい。
【0012】
本発明においては、中空糸膜厚が30μm以上50μm以下、好ましくは36μm以上45μm以下であることが必要である。中空糸膜の膜厚とは中空糸膜の多孔質部分の厚みであり、場所によって厚みが異なる場合は90°きざみで4点とった平均値を用いる。膜厚は薄い方が物質透過性は良くなり、小型化することもできるが、膜厚を薄くなることによって中空糸膜の強度が弱くなり、膜厚ムラが大きくなることによって膜の分画特性が不均一になることがあるため、中空糸膜厚は30μm以上、好ましくは36μm以上がよい。プッシュアンドプル型の血液透析濾過療法の場合、後述する逆濾過の際に透析液側が陽圧になっても中空糸膜がつぶれないという条件も必要であり、中空糸膜には所定の強度が必要であるため、一定以上の膜厚を有することが求められる。また、膜厚が厚すぎると膜の透過性能が低下したり、糸束が太くなって、糸束充填率が高くなりすぎたり、ケースに挿入しづらくなるため、50μm以下、好ましくは45μm以下であることがよい。
【0013】
本発明において、中空糸膜内径は205μm以上215μm以下であることが必要である。血液透析濾過療法では、濾過の作用により、高い血液濃縮状態下に置かれるため、安定した血液の流れを確保するためにも中空糸膜内径が大きい方が有利である。血液透析濾過療法は、通常の血液透析に比べ、濾過流量を高くする治療法であるため、血液浄化器における血液の圧力損失は低い方がよく、さらには、中空糸膜内径が大きい方が大量生産の際、製品ごとのアルブミンふるい係数のばらつきが小さくなり、性能の安定した製品の生産が可能となるからである。しかし、中空糸膜内径を大きくしすぎると、ケースに挿入しにくくなるだけでなく、ケースに挿入できる糸本数が少なくなって、膜面積が小さくなるため、尿毒症物質等の除去効率が落ちたり、プライミングボリュームが多くなり、患者の負担となる。なお、プライミングボリュームを小さくすることで、血液浄化療法時に体外に取り出される血液量が少なくなり、透析器の閉塞が起きたときなどの血液損失量を抑えることができる。また、中空糸膜内径が215μmを超えると中空糸膜のつぶれや扁平が起こりやすくなったり、強度が弱くなり、製品の血液リークにつながることから、中空糸膜内径は215μm以下であることが必要である。
【0014】
一方、膜表面積を大きくするために、中空糸膜内径を小さくして糸本数を増やすことにより達成できるが、中空糸膜内径が小さすぎると透析時の血液の圧力損失が大きくなり、また、膜による目詰まりを起こしやすくなる。また、内部濾過量が多くなり、アルブミンが漏れやすくなる。ここで、「内部濾過」とは、中空糸膜の組み込まれた血液浄化器の場合、血液側と透析液側のそれぞれの中で圧力が均一でないことから生じる濾過であり、例えば、入口は圧力が高く、中を通る間に圧力損失が生じ、出口側では低くなるが、血液と透析液とは向流で流すため、血液の入口側付近(すなわち透析液の出口側付近)では、血液の圧力は高く、透析液の圧力は低いことから、血液から透析液へ濾過(正濾過)が起こり、一方、血液の出口側付近(透析液の入口側付近)では血液の圧力は低くなっており、透析液の圧力は高くなっているため、透析液から血液へ濾過(逆濾過)が起こる。
【0015】
なお、膜面積(ケース内の樹脂で覆われた部分を除いた膜の総表面積)はクリアランスを上げるという観点から、1.5m以上が好ましい。これより小さい膜面積の場合はβ―マイクログロブリンなどの低分子量蛋白質のクリアランスが低下する傾向が見られる。
【0016】
本発明において、糸束充填率は50%以上60%以下であることが必要であり、好ましくは53%以上57%以下である。糸束充填率があまり高いと中空糸膜が局所的に変形し、血液が流れにくい部分が発生するので好ましくない。また、糸束充填率が高いと、透析液を中空糸膜外側に流した場合に、チャネリングが起こり、透析液の流れが一部分に集中して、透析効率が下がり、β−マイクログロブリンのクリアランスが低下する。さらに、内部濾過量が多くなるため、正濾過により、アルブミンが漏れやすくなる。このため、中空糸膜の糸束充填率を60%以下とすることがよく、57%以下になるようにすることが好ましい。逆に、糸束充填率が低すぎると、膜面積が小さくなり、好ましくない。また、糸束充填率が低すぎると糸束をポッティング材でケース端部と接着させるときに糸束の偏り、乱れが大きくなるので好ましくない。この糸束充填率は血液浄化器ケースの筒部の平均内径から算出される断面積に対する、中空糸膜外径から算出される中空糸膜部分の断面積の総和の比である。中空糸膜間にスペーサーヤーン(透析液の整流等のために中空糸膜間に配される細い糸)などがある場合は、その部分も中空糸膜部分の断面積の総和に加算される。ただし、血液浄化器ケースの内径が、長さ方向の場所によって径が異なる場合は血液浄化器長さ方向における中心の場所の値を用いる。また、円形でない場合は同一断面積の真円として、その直径に換算した値を用いる。
【0017】
ここで、クリアランスとは、血液浄化器に流入した血液のうち、血液がどの程度きれいに(つまり、濃度がゼロに)なったかを表わす指標である。つまり、血液が血液浄化器を通過した際の物質の除去効率を示している。本発明においては、血液浄化器を血液透析濾過療法に使用することを主な目的としていることから、クリアランス、特にβ―マイクログロブリンのクリアランスは高いものである必要がある。具体的には、60mL/min以上であることが必要であり、より好ましくは70mL/min以上である。ここでいうクリアランスとは、血液透析濾過療法に使用することを考慮して、中空糸膜内側に血液を250mL/minで流し、40mL/minの流量で中空糸膜内側から外側に濾過させながら、中空糸膜外側に透析液を入口から500mL/minで血液と向流方向に流した状態で測定したときのクリアランスをいう。
【0018】
また、このときにアルブミンが極力除去されることなくβ―マイクログロブリンが選択的に除去されることが必要である。β―マイクログロブリンの選択的除去能を透析液出口から採取した透析液中のβ―マイクログロブリンのアルブミン濃度に対する比として表すと、630mg/g以上である必要がある。このような選択的除去能を中空糸膜の孔径、孔径分布及び緻密層の厚さなどの形状で規定することは困難であるが、本発明における中空糸膜の製造条件及び中空糸膜束のモジュール化条件で中空糸膜をモジュールに組み込むことにより、濾過をかけてもアルブミン損失が少なく、β―マイクログロブリンが除去でき、濾過をかけた状態でシャープな分画特性(β―マイクログロブリンの選択的除去能)を有する膜を設計できる。
【0019】
本発明における中空糸膜のアルブミンふるい係数は0.1%以上1.1%以下であることが望ましい。アルブミンふるい係数が0.1%未満では、孔が小さいため、アルブミンの損失量は少なくすることができるが、β―マイクログロブリンのクリアランスも低下する。また、アルブミンふるい係数が1.1%を超えると、通常用いる血液透析濾過の条件において、4時間の治療でアルブミン損失量が4gを超えることがあるが、臨床におけるアルブミン損失量は4g以下である必要があるため、好ましくない。
【0020】
本発明において血液浄化器に組み込まれる中空糸膜は、疎水性高分子、親水性高分子及び溶媒からなる製膜原液を用い、ポリマー溶液(製膜原液)口金部ドラフト比が0.9以上1.0以下であって、かつ芯液ドラフト比が1.11以上1.20以下で、膜厚が30μm以上50μm以下、中空糸膜内径が205μm以上215μm以下の中空糸膜となるように紡糸することにより得る。ここでいうポリマー溶液(製膜原液)口金部ドラフト比とは、凝固浴における中空糸膜の引き取り速度Aと環状オリフィスから吐出される高分子溶液の線速度Bとの比A/Bのことをいう。さらに、芯液ドラフト比とは、凝固浴における中空糸膜の引き取り速度Aと中空糸膜内表面を凝固させるため、環状オリフィスの内管から吐出される芯液の吐出線速度Cとの比A/Cのことをいう。ポリマー溶液(製膜原液)口金部ドラフト比及び芯液ドラフト比は、口金スリットの内径及び外径、ポリマー溶液及び芯液の吐出量並びに紡速を変えることによって制御できる。ドラフト比の最適化を行う際は、ポリマー溶液及び芯液の吐出量を最適化することが容易である。口金スリットの内径及び外径の最適化は、微調整が困難である。また、紡速を制御することによりポリマー溶液(製膜原液)口金部ドラフト比を1.0以下にするためには紡速を落とすことが必須であり、この場合生産性に影響を与える。ドラフト比を0.9未満とすると張力がかからなくなってゆるみが生じて、生産性に影響を与えるようになる可能性がある。また、ドラフト比が1.0を超えると、中空糸膜内表面の孔の形に影響を与え、性能をコントロールしにくくなったり、糸切れなどにつながることがある。芯液ドラフト比は、芯液の吐出量や芯液の吐出される口金の面積によって制御されるが、1.11より小さくなると中空糸膜内径を一定に維持するのが困難になることがある。一方、1.20以上になると糸切れにつながる可能性がある。
【0021】
疎水性高分子としては、特に限定されるものではないが、ポリスルホン系樹脂、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸メチル等が挙げられ、中でも、生体適合性が優れること、強度が高いという点で、ポリスルホン系樹脂が好ましく用いられる。製膜原液における疎水性高分子の濃度としては、製膜可能でかつ膜としての特性を有する濃度範囲であればよく、13〜20重量%が好ましい。高い透水性、大きな分画分子量を得るためにはポリマー濃度は下げるべきで、より好ましくは15〜18重量%である。13重量%未満では、製膜原液が十分な粘度を有しないことがあり、また、20重量%を越えると、膜に貫通孔が適当に形成されない場合がある。
【0022】
親水性高分子は、疎水性高分子と相溶性があり、かつ親水性を持つ高分子のことをいう。ポリビニルピロリドンが最も望ましいが、他に変性ポリビニルピロリドン、共重合ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリ酢酸ビニル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0023】
親水性高分子の添加量は、製膜原液中4〜12重量%であることが好ましく、中でも、ポリビニルピロリドンの場合は、製膜原液中、4〜10重量%、特に5.5〜9重量%が望ましい。
【0024】
上記における紡糸の際は、製膜原液における疎水性高分子に対する親水性高分子の重量比が0.3以上0.6以下であることが望ましい。0.3より小さくなると血液適合性を向上するために中空糸膜に存在する親水性高分子の含量が少なくなって、血液浄化器の血液適合性に影響を与えることがある。また、0.6を超えると製膜原液の粘度が高くなって、紡糸しにくいことがある。
【0025】
親水性高分子として、ポリビニルピロリドンを用いる場合、本発明で使用するポリビニルピロリドンの重量平均分子量は20万以上120万以下のものと分子量が3万以上20万未満のものを併用することが望ましい。例えば、K50〜K90のK値範囲で合成されたポリビニルピロリドンとK30以下のK値範囲で合成されたポリビニルピロリドンを併用して用いることは好ましい形態である。一般に市販のポリスルホン系樹脂の分子量は低く、製膜原液の粘度はポリビニルピロリドンの分子量に依存する傾向があり、製膜原液粘度が低い場合、製膜時に糸切れ、糸揺れなどを起こし、製糸安定性に劣る場合がある。一方、ポリビニルピロリドンの分子量が大きすぎる場合、製膜原液の粘度は大幅に増加することになる。膜が形成される過程においては、例えば中空糸膜を製膜する場合では製膜原液と、中空を形成させるための内部凝固液である芯液を接触させて相分離を進行させることで性能が決定するが、分子量の大きすぎるポリビニルピロリドンを用いる場合は、相分離構造を十分に成長させることができず、高い透水性の膜を得ることが難しくなる。更には製膜原液の粘度が上がることで、口金から吐出された原液がメルトフラクチャーを起こすことも危惧される。一方、低分子量の親水性高分子単独の場合は適当な製膜条件による孔径のコントロールが難しく、製膜条件を変更した場合、工程が不安定となり膜の品位を悪化させるばかりでなく、透水性能を高くした場合、あるポイントで突然アルブミンのリークが起こり、血液浄化器として使用することは不可能となることがある。
【0026】
本発明において、ポリビニルピロリドンの重量平均分子量は、公知の方法を用いて測定することができる。例えば、ポリビニルピロリドンをジクロロメタンで溶解させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いてポリビニルピロリドンの重量平均分子量を測定する方法などが使用できる。この時の標品には光散乱法で測定されたポリビニルピロリドンを用いる。また、ポリビニルピロリドンの分子量の大きさは一般的にはK値(後述)という粘性に関連する値を以て示されることが多く、このK値から分子量を求めても良い。光散乱法及びK値の測定は広く知られているが、例えばV.Bu hler,U.klodwig,Acta Pharm.Tech.30 No.4,317-324(1984),H.Fikentscher,Cellulosechemie 13(1932)58-64 und 71-74、日本薬局方、BASF社資料等に記載されている。
【0027】
製膜原液に用いる溶媒としては、疎水性高分子を溶解するものであり、さらに親水性高分子をも溶解するものが用いられる。このことから、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−ピロリドン、ジメチルスルホキシドなどが候補として挙げられるが、特に、安価で使いやすさという点から、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドが好ましく用いられる。
【0028】
また、相分離を制御するために、溶媒と相溶性を持ち、親水性高分子の良溶媒となり、かつ、疎水性高分子の貧溶媒又は膨潤剤となるような特定の添加剤を添加しても良く、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ヘキサノール、1,4−ブタジオール等がある。生産コストを考えると水が最も望ましいが、疎水性高分子に対する凝固性を考え合わせた上で選択すればよい。
【0029】
また、芯液の組成は、内表面の構造形成に大きく関与し得る。通常、芯液としては、紡糸原液に使用された溶媒と前述の特定の添加剤との混合物が用いられる。芯液全体に対する溶媒の濃度は、ドラフト比によっても異なってくるが、あるアルブミンのふるい係数を目標に設定される。ドラフト比を小さくする場合は、アルブミンのふるい係数が高くなる傾向にあるため、芯液中の溶媒の濃度を低くし、内表面が凝固しやすい条件で中空糸膜を製造するようにする。アルブミンのふるい係数は、急速に内表面を凝固させるために、製膜原液中の特定の添加剤濃度を高めることによって、コントロールすることもできる。芯液中の溶媒の濃度は溶媒によっても異なるが、溶媒がジメチルアセトアミドの場合、40重量%以上65重量%以下が好ましい。さらに好ましくは43重量%以上55重量%以下である。
【0030】
このようにして紡糸された中空糸膜を、糸束充填率が50%以上60%以下となるようにケースに組み込むことにより、臨床において、少量の置換液量で効率よくβ―マイクログロブリンを除去し、かつアルブミン損失量の少ない中空糸膜からなる血液透析濾過療法に使用される血液浄化器を提供することができる。
【0031】
本発明において、中空糸膜は公知の手段によって筒状ケースに組み込まれ、モジュール化される。すなわち、通常は、ポリウレタン系のポッティング材を用いて、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリプロピレンなどの筒状ケースに糸束を挿入し、筒状ケースごと遠心回転を加えながらポッティング材を添加してケース端部に移動させる方法(遠心ポッティング法)を行なう。その後、モジュールの端面を切断し、端面の中空糸膜開口部を整え、ヘッダーやパッキンなどを装着する。
【0032】
次に、中空糸膜内部に残存する微量の溶媒や、乾燥防止のためにグリセリン等の保湿剤を付与した場合は、水洗する。この時、後の工程にて膜中の親水性高分子を架橋させるため、膜全体を充分な湿潤状態に保持するのが好ましく、モジュール内に脱気した水を充填した状態にしておくか、300%前後の含水率となるように濡らした状態で窒素等の不活性ガスを充填しておくのがよい。このようにモジュールを充分な湿潤状態に保持した後に、親水性高分子を含む中空糸膜に放射線照射、好ましくはγ線照射又は加熱を行なえば、親水性高分子が架橋され、中空糸膜から溶出しなくなり、好ましい。
【0033】
本発明における血液浄化器は、透析液を数千から1万数千本の中空糸膜束の外周部より流入させ、外周部から流出させる構造を有するため、束の中心部へ透析液が十分に灌流しない偏流(チャネリング)現象や中空糸膜同士の接触による透析液側の透析有効膜面積の減少などの影響によって、透析膜性能を十分に発揮できないことがある。この対策として、中空糸膜を交差させたり、中空糸膜をウェーブ化させたり、中空糸膜の間にスペーサーヤーン(細い糸)及び中空糸膜にフィンを付けるなど種々の工夫を行い透析効率の向上を図ることができ、いずれの方法を用いてもよいが、中空糸膜外周にポリエステル等のスペーサーヤーンを巻き付ける方法は、透析液を血液浄化器全体に均一に乱流を発生させながら灌流させることができるため、β―マイクログロブリンのクリアランスを高めることができ、また、中空糸膜束の強度も高くなって、製品のリークを防止するという観点から望ましい。
【0034】
本発明において、血液浄化器は、医療用途に用いられるために滅菌される。滅菌方法としては、放射線滅菌、蒸気滅菌、エチレンオキサイドガス滅菌が挙げられる。近年では、エチレンオキサイドガス滅菌は、残留毒性の問題からあまり用いられておらず、現在は放射線滅菌処理か蒸気滅菌が主流となっているが、蒸気滅菌は基材の制限を受け、例えば、ポリメチルメタクリレートや塩化ビニルなどは用いることができないため、放射線滅菌することが好ましい。放射線の例としては、α線、β線、γ線、中性子線、X線、紫外線、電子線などの種々の電離放射線が知られているが、実用性の観点からγ線が好ましい。放射線滅菌の際は、脱気した水溶液で充填密閉し放射線滅菌をするか、300%前後の含水率となるように濡らした状態で窒素等の不活性ガスを充填することにより血液浄化器内に残存する菌の滅菌を行うのが好ましい。放射線照射線量としては、基材の材質や形状にも依存するが、5kGy以上、多くの基材は15kGy以上の放射線を照射することで、滅菌することができる。一方で、放射線照射線量が高くなると、基材の変性が起こるので、100kGy以下が好ましい。また、脱気した水または300%前後の含水率となるように濡らした状態で窒素等の不活性ガスを充填させた状態で放射線照射することにより、親水性高分子を架橋することができ、血液浄化器使用時の親水性高分子の溶出を少なくすることができる。特にγ線による架橋反応は、他の方法に比較して、架橋が均一に施されるため、好ましい。特に血液透析濾過療法では、濾過をかけるため、親水性高分子を溶出しないようにしておくことが望ましい。
【0035】
本発明のように、特に血液透析濾過療法に好適に用いられる血液浄化器の場合は、実際に濾過をかけた状態で血液及び透析液を流して性能を評価することで、より臨床に近い性能を発揮できる膜を設計することができる。濾過をかけるため、アルブミンの漏出には十分注意する必要があったが、本発明により、濾過をかけた状態で、アルブミン損失が少なく、β―マイクログロブリンを選択的に除去できる、シャープな分画特性を有する膜を設計可能である。
【実施例】
【0036】
1.β―マイクログロブリンの測定
血液及び透析液中のβ―マイクログロブリンの濃度は、ラテックス凝集免疫法にて測定した(参考文献として医療と検査機器・試薬26(2)127−134、2003がある)。血液は遠心分離して得た血漿を測定用の検体とした。
2.アルブミンの測定
血液、濾液及び透析液中のアルブミン濃度は、アルブミン・グロブリン比測定用キット(A/G B−テストワコー、Code274−24301、和光純薬製)を用いたBCG法で測定した。血液を遠心分離して得た血漿を測定用の検体とした。透析液はアルブミン濃度が希薄であったために、AmikonUltra-4,10,000MWCO(ミリポア製)を用いて10倍に遠心濃縮した後、測定に供した。
3.β―マイクログロブリンのクリアランスの測定
クエン酸を添加し、凝固を抑制した牛血液2Lをヘマトクリット値30%、タンパク濃度6.6g/dLとなるように調製し、β―マイクログロブリンを0.95mg/Lとなるように添加し、37℃に保った状態で、各実施例、比較例における血液浄化器に、流量を250mL/minとして当該血液を血液側(中空糸膜内側)に流しながら、流量40mL/minで血液側から透析液側(中空糸膜外側)に濾過させ、濾液及びダイアライザー出口側血液を元の牛血液に戻す循環系を設置した。1時間の循環の後、透析液側に、透析液(人工腎臓用透析液キンダリー(登録商標)液(AF−2号、扶桑薬品工業製))を流量500mL/minとして流し、その5分後の血液側における入口側と出口側のそれぞれの血液を採取し、下式によりβ―マイクログロブリンのクリアランスを算出した。
【0037】
なお、β―マイクログロブリンは血球以外の血漿成分にのみ含まれるため、下式(1)にて「血漿流量」を算出し、「血漿流量」を下式(2)における血液側入口流量及び出口流量に代入して算出した。
【0038】
血漿流量=血液流量×(1−ヘマトクリット値/100) (1)
クリアランス=(QBin×CBin―QBout×CBout)/CBin (2)
QBin:血液側入口流量(mL/min)
QBout:血液側出口流量(mL/min)
CBin:血液側入口の血漿中のβ―マイクログロブリン濃度(μg/L)
CBout:血液側出口の血漿中のβ―マイクログロブリン濃度(μg/L)
4.透析液中のβ―マイクログロブリンとアルブミン濃度の比
3.と同じ牛血液の循環系を設置した。3.と同様に1時間の循環の後、透析液を500mL/minで流し、5分後の透析液を採取し、β―マイクログロブリン及びアルブミンの濃度を測定した。その際、β―マイクログロブリンは原液のままで測定し、アルブミンは10倍に濃縮して測定した。
5.アルブミンふるい係数
クエン酸を添加し、凝固を抑制した牛血液をヘマトクリット30%、タンパク濃度6.6g/dlに調製し、37℃に保った状態で、各実施例、比較例における血液浄化器に流量250mL/minで送液しながら、流量40mL/minで濾過し、濾液及びダイアライザー出口側血液を牛血液に戻す循環系を設置した。1時間循環させた後、入口側と出口側の血液及び濾液を採取した。
【0039】
アルブミンふるい係数(%)={(2×CF)/(CBin+CBout)}×100
CF:濾液中のアルブミン濃度(g/dL)
CBin:血液側入口の血漿中の血液中アルブミン濃度(g/dL)
CBout:血液側出口側の血漿中の血液中アルブミン濃度(g/dL)
[実施例1]
ポリスルホン (P−3500:ソルベイ 社製)18重量%とポリビニルピロリドン(K−30:分子量4万:BASF社製)6重量%、ポリビニルピロリドン(K−90:分子量120万:BASF社製)3重量%をジメチルアセトアミド72重量%及び水1重量%に加えて、80℃に保温しながら15時間撹拌溶解して製膜原液を作製した。
【0040】
環状スリット部分の外径0.35mmφ、内径0.25mmφ、注入孔径0.15mmφの2重管環状スリット口金の管状部分から該製膜原液を、注入孔から芯液として49重量%ジメチルアセトアミド水溶液を同時に注入して吐出させ、長さが300mmの乾式部分を走行させ、20℃の凝固浴(ジメチルアセトアミド:水の重量比=20:80)に導き、凝固浴ローラー巻き取り速度55m/分で紡糸を行い、中空糸膜内径が210μm、膜厚が40μmとなるように調整した。この時のポリマー溶液(製膜原液)口金部ドラフト比は0.97、芯液ドラフト比は1.18であった。凝固、水洗を行なった後、中空糸膜に70重量%のグリセリン水溶液を抱液させた。表面に付着した過剰のグリセリンを取り除いた後、中空糸膜2本のまわりに50デニール5フィラメント(約88μm)のポリエステル仮撚り加工糸(スペーサーヤーン)を、中空糸膜10mmに対し、0.5回の巻数で中空糸膜方向に螺旋巻回して単位中空糸膜とし、該単位中空糸膜を36単位集合し、そのまわりに上記ポリエステル加工糸を上記とほぼ同じピッチで螺旋巻回すことによって計2層のスペーサーヤーンを入れて、中空糸膜束を作製した。
【0041】
さらに、内径43.7cmのケースに中空糸膜束を組み込んで膜面積2.0 mのモジュールを作製し、両端に仮のキャップをし、遠心機でモジュールを回転させながらポッティング材を入れ、中空糸膜両端部にポッティング材を入れて充填させた。ポッティング材が固化した後、中空糸膜の両端が開口するように両端部を切断し、中空糸膜モジュールを得た。該モジュールを35℃の温水で水洗した後、脱気した水を充填した状態で25kGyの線量でγ線照射した。得られた血液透析器について、β―マイクログロブリンのクリアランス、透析液中のβ―マイクログロブリンとアルブミン濃度の比及びアルブミンふるい係数を求めた結果を表に示した。
[比較例1]
実施例1と同じ条件にて製膜原液を作製した。
【0042】
芯液中の溶媒の濃度が55重量%のジメチルアセトアミド水溶液であること以外は同一の条件にて上記製膜原液と芯液を注入、吐出し、中空糸膜内径が200μm、膜厚が40μmとなるように調整した以外は同一の条件にて凝固浴に導き、凝固させ、凝固浴ローラーで巻き取ることで製膜を行った。この時のドラフト比は表1に示す通りであった。次に、実施例1と同一の条件にて凝固、水洗を行なった後、グリセリン水溶液で抱液させ、ポリエステル仮撚り加工糸(スペーサーヤーン)を用いて2層のスペーサーヤーンを入れ、中空糸膜束を作製した。
【0043】
さらに、ケースに中空糸膜束を組み込んで膜面積2.1 mのモジュールを作製し、実施例1と同一の条件にてモジュールとした。得られた血液透析器についての各項目の測定結果は表1に示す通りである。
[比較例2]
芯液中の溶媒の濃度を51重量%ジメチルアセトアミド水溶液とした以外は比較例1と同様に実施した。得られた血液透析器についての各項目の測定結果は表1に示す通りである。
[実施例2]
実施例1で作製した血液透析濾過器を22名の患者に1名各2回、計44回使用した。ボトル式後希釈法を用いて血液流量200〜300mL/min、透析液流量500mL/min、置換液量30〜50mL/minとして実施した結果、β―マイクログロブリンのクリアランスの平均値(44回の平均値であり、小数点第二位を四捨五入)は91.0±4.4mL/min(測定時の濾過液流量は55mL/min)、アルブミン損失量の平均値(44回の平均値であり、小数点第三位を四捨五入)は0.77±0.37gと少なかった。
[比較例3]
東レ社製血液透析器“TS−1.6UL”を6名の患者に使用した。オンライン型の後希釈法により、総置換液量16Lで実施した。透析開始1時間目のβ―マイクログロブリンのクリアランスは平均で87mL/minであったが、アルブミン損失量は5.6gであり、安全上の問題という程度ではないものの、長期間続ける場合には注意を要するものであった。
【0044】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
横断面が非対称膜構造であって、疎水性高分子及び親水性高分子から構成され、かつ下記A〜Eの条件を満たす中空糸膜束が組み込まれていることを特徴とする血液浄化器。
A.前記中空糸膜の膜厚が30μm以上50μm以下
B.前記中空糸膜の内径が205μm以上215μm以下
C.前記中空糸膜束の糸束充填率が50%以上60%以下
D.前記中空糸膜内側に血液を250mL/minの流量で流し、40mL/minの流量で前記中空糸膜内側から外側に濾過させながら、前記中空糸膜外側に透析液を500mL/minの流量で前記血液と向流方向に流したときのβ―マイクログロブリンのクリアランスが60mL/min以上
E.前記D.の条件において、透析液出口にて採取した透析液中におけるβ―マイクログロブリン濃度のアルブミン濃度に対する比が630mg/g以上
【請求項2】
前記中空糸膜のアルブミンふるい係数が0.1%以上1.1%以下であることを特徴とする請求項1に記載の血液浄化器。
【請求項3】
前記親水性高分子が架橋されていることを特徴とする請求項1または2に記載の血液浄化器。
【請求項4】
前記中空糸膜外周にポリエステル製の仮撚り糸(スペーサーヤーン)が巻き付けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の血液浄化器。
【請求項5】
血液透析濾過療法に使用されるものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の血液浄化器。
【請求項6】
疎水性高分子、親水性高分子及び溶媒を含むポリマー溶液(製膜原液)並びに内部芯液を用い、下記F及びGの手段により、下記H及びIの特性を有する中空糸膜を紡糸することを特徴とする中空糸膜の製造方法。
F.前記ポリマー溶液口金部ドラフト比が0.9以上1.0以下
G.芯液ドラフト比が1.11以上1.20以下
H.膜厚が30μm以上50μm以下
I.中空糸膜内径が205μm以上215μm以下
【請求項7】
前記製膜原液における疎水性高分子に対する親水性高分子の重量比が0.3以上0.6以下であることを特徴とする請求項6に記載の中空糸膜の製造方法。
【請求項8】
前記溶媒がジメチルアセトアミドであることを特徴とする請求項6または7に記載の中空糸膜の製造方法。
【請求項9】
前記芯液がジメチルアセトアミド水溶液であって、ジメチルアセトアミドの濃度が40重量%以上65重量%以下であることを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の中空糸膜の製造方法。
【請求項10】
前記製膜原液が分子量の異なる2種類以上の親水性高分子を含有することを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載の中空糸膜の製造方法。
【請求項11】
前記疎水性高分子がポリスルホンであり、前記親水性高分子がポリビニルピロリドンであることを特徴とする請求項6〜10のいずれかに記載の中空糸膜の製造方法。
【請求項12】
請求項6〜11のいずれかに記載の中空糸膜の製造方法によって製造された中空糸膜を組み込むことを特徴とする血液浄化器の製造方法。

【公開番号】特開2009−78121(P2009−78121A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−85868(P2008−85868)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】