説明

血液浄化用カラム

【課題】血液浄化用カラム内を流れる血液の流速を均一化する。
【解決手段】血液浄化用カラム10において、吸着粒子18は円筒形状のカラム本体12内に収容され、カラム本体の両端に配置される流入側および流出側フィルタ20,22により流出が阻止されている。フィルタ20,22は、このフィルタを血液が通過する際の抵抗が、中央部分で大きく、周縁部分で小さくなっている。カラム本体の軸線上に位置する流入口34から流れ込んだ血液は、流入側フィルタ20の中央部分でカラム本体内への流入が制限され、カラム本体内に流入できなかった血液は周縁部分へと誘導される。これによりカラム本体内の血液の流速分布が均一化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液を体外に取り出して浄化し、浄化後の血液を体内に戻す治療法を実施する際に使用される血液浄化用カラムに関する。
【背景技術】
【0002】
患者の血液を体外に一旦取り出し、取り出した血液中の病因物質を吸着、濾過等の処理により除去し、その後の血液を患者の体内に戻すアフェレシス療法と呼ばれる治療法が知られている。このアフェレシス療法は、薬物中毒、食中毒、家族性高コレステロール血症の治療や、潰瘍性大腸炎、クローン病、関節リウマチといった自己免疫疾患の治療等に利用され、これらの疾患の原因となると考えられている薬物、毒素、コレステロールなどの物質や、白血球や血小板などの炎症性細胞を患者の血液から除去するのに用いられている。
【0003】
このアフェレシス療法は、一次膜を用いて血液から血漿を分離させ、さらにこの血漿を二次膜に通過させる二重膜濾過血漿交換療法(DFPP:Double Filtration Plasmapheresis)や、患者の体液を直接処理する直接血液潅流療法(DHP:Direct Hemo Perfusion)が知られている。直接血液潅流療法は処理が簡便であることから、近年急速に普及しつつある。
【0004】
直接血液潅流療法では、内部に吸着材を収容したカラムに血液を通し、吸着材にて血液中の対象成分を吸着、除去する。カラムは中空筒状のカラム本体を有し、この内部に、微細な球体等のビーズ状の吸着材(吸着粒子)が収容されている。吸着材をカラム本体内にとどめておくために、カラム本体の血液が流入する端部及び流出する端部には、多数の微細な開口を有するフィルタが配置されている。フィルタの開口は、血液は通すが、吸着剤は通さない大きさとされている。
【0005】
下記特許文献1,2には、吸着剤をカラム内に保持するための網状のフィルタが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4150838号明細書
【特許文献2】特開平6−54905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
カラム内を流れる血液の流速が、流路断面内で不均一であると、吸着材との接触時間も不均一となり、対象成分の吸着効率が低下する。特に、治療時間の短縮、カラム内での血液凝固の防止等のために流速を増加した場合に、流速が不均一になりやすい。
【0008】
本発明は、カラム内の流路断面内で血液の流速を均一化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、カラム内に吸着粒子を保持するために設けられたフィルタの、血液が通過する際の抵抗を、当該フィルタの部分ごとに変えることにより、カラム内流路断面に広く血液が行き渡るようにする。具体的には、吸着粒子が収容されたカラム本体の流入側の端部に配置された流入側フィルタにおいて、流入側フィルタの、カラム本体内に血液を送り込む流入口に対向する部分の抵抗を大きくし、一方で、この流入口に対向する部分から離れた部分では抵抗を小さくし、かつ流入口に対向する部分から離れた部分に向けて抵抗が単調減少するようにする。これにより、流入口付近から、流入口から離れた部分に血液が誘導されるようにし、流入口付近の部分に血液の流れが集中しないようにする。前記の、血液がフィルタを通過する際の抵抗は、フィルタ上の単位面積当たりの抵抗を指す。以下、同様である。また、ここでは、前記の単調に減少するの「単調に」は、一定の場合も含む意味で用いる。つまり、単調に減少するとは「増加することがない」ことを意味する。同様に、単調に増加するも、一定の場合を含み、減少することがないを意味する。
【0010】
簡易には、流入口付近の部分とそれ以外の部分との二つの部分に分け、それぞれの部分に異なる抵抗を設定することができる。つまり、抵抗の値が2段階に設定される。3段階以上の段階的な設定も可能であり、また階段状の変化ではなく、次第に、つまり滑らかに変化するようにもできる。
【0011】
単位面積当たりの抵抗は、開口率によって設定することができる。ここで、開口率は、フィルタのある領域中に存在する開口の総面積の、当該領域の面積に対する割合と定義する。開口率が大きければ、その部分は血液が通過しやすく、抵抗は小さくなる。逆に、開口率が小さければ、血液は通過しにくく、抵抗が大きくなる。フィルタの部分ごとに開口率を変えることで、部分ごとの抵抗を変えることができる。
【0012】
単位面積当たりの抵抗は、個々の開口の寸法によって設定することができる。寸法は、開口の形状が円形であればその直径、細長い形状(スリット形状)であれば、その幅などのように、その開口の最も短い方向の寸法で代表することができる。ある領域に、開口の総面積は等しくなるようにして、大きな寸法の開口を設けた場合と、これと相似な形状の小さな寸法の開口を設けた場合を比較すれば、小さな寸法の開口を設けた場合の方が、抵抗は大きくなる。フィルタの部分ごとに開口の寸法を変えることで、部分ごとの抵抗を変えることができる。
【0013】
単位面積当たりの抵抗は、開口の密度によって設定することができる。ある領域に、同一形状(寸法も同じ)の開口を多く配置した場合と、少なく配置した場合では、少なく配置した場合の方が、抵抗は大きくなる。
【0014】
流出側フィルタも流出口に対向する部分において抵抗が大きく、流出口に対向する部分から離れた部分で小さくし、かつ流出口に対向する部分から離れた部分に向けて抵抗が単調に減少するようにできる。この抵抗の設定は、上記の流入側フィルタの設定方法から選択できる。
【0015】
流入側フィルタの前記開口はスリットとすることができる。個々のスリットは流入口の軸線を中心とする同心円に沿って延びる円弧形状とでき、個々のスリットの幅は、流入口に対向する部分で小さく、流入口に対向する部分から離れた部分で大きく、かつ流入口に対向する部分から離れた部分に向けて単調に増加するようにできる。
【0016】
流入側フィルタの前記開口はスリットとすることができる。個々のスリットは流入口の軸線を中心とする同心円に沿って延びる円弧形状ができ、スリットの半径方向配列ピッチは、流入口に対向する部分で大きく、流入口に対向する部分から離れた部分で小さく、かつ流入口に対向する部分から離れた部分に向けて単調に減少するようにできる。
【0017】
流入側フィルタの前記開口は連通穴とすることができる。単位面積当たりの連通穴の個数は、流入口に対向する部分で少なく、流入口から離れた部分で多く、かつ流入口に対向する部分から離れた部分に向けて単調に増加するようにできる。
【0018】
流入側フィルタの前記開口は連通穴とすることができる。個々の連通穴の開口面積は、流入口に対向する部分で小さく、流入口に対向する部分から離れた部分で大きく、かつ流入口に対向する部分から離れた部分に向けて単調に増加するようにできる。
【0019】
流出側フィルタは、流入側フィルタと同一の形状のものを用いることができる。
【0020】
前述の流入側フィルタ及び流出側フィルタは、それぞれ同一素材で一度に全体が成形された成形品とすることができる。
【発明の効果】
【0021】
流入側フィルタの、流入口に対向する部分において、血液が通過する際の抵抗を、流入口と対向する部分から離れた部分より大きくすることにより、流入口に対向する部分からカラム本体内に流れ込もうとする血液を制限し、その少なくとも一部を前記離れた部分に向ける。カラム内を流れる血液の流速の、流路断面内におけるバラツキを減少させることができる。このため、血液の吸着粒子との接触時間のバラツキも少なくなるので対象成分の吸着効率を往生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施形態の血液浄化用カラムの概略構成を示す分解斜視図である。
【図2】本実施形態の血液浄化用カラムの断面図である。
【図3】流入側フィルタおよび流出側フィルタの例を示す概略図である。
【図4】流入側フィルタおよび流出側フィルタの他の例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を、図面に従って説明する。図1は、本実施形態に係る血液浄化用カラム10の概略構成を示す分解斜視図、図2はその断面図である。血液浄化用カラムは、筒形状、好ましくは円筒形状のカラム本体12と、カラム本体の筒端面を覆うように装着される流入側キャップ14および流出側キャップ16を含む。これらのカラム本体12、流入側および流出側キャップ14,16により吸着粒子18を収容する容器が形成される。カラム本体12の円筒の端部分には、流入側フィルタ20が配置され、図2に良く示されるように、流入側フィルタ20はカラム本体12と流入側キャップ14に挟まれるようにして支持されている。同様に、カラム本体12の他方の端部分には、流出側フィルタ22がカラム本体12と流出側キャップ14に挟まれるようにして支持され、配置されている。流入側および流出側フィルタ20,22は、血液は通すが、吸着粒子18は通さない程度の大きさの多数の開口を有している。これにより、吸着粒子18はカラム本体12内の空間に収容され、血液の流れに乗って流れ出ないように保持されている。
【0024】
流入側キャップ14は、カラム本体12の端面を覆う底面24と、底面24から垂直に延び、カラム本体12の側面を受け入れ、その周囲を囲む側面26とを有する。側面26の内周には段が付けられ、これにより周方向に延びる肩部28が形成されている。この肩部28と、カラム本体12の端面の間に流入側フィルタ20が挟まれて固定される。流入側フィルタ20と底面24の間には、カラム本体12の軸直交断面とほぼ等しい断面を有する空間(以下、流入側キャップ内空間30と記す。)が形成されている。底面24には、患者から抜き出した血液を血液浄化用カラム10に送るチューブ(不図示)と接続される流入管32が設けられている。流入管32は、流入側キャップ内空間30に向いて開口しており、この開口を以下流入口34と記す。流入管32は、好適には、カラム本体12の筒形状の軸線と同軸に配置される。
【0025】
流出側キャップ16も、流入側キャップ14と同様の構成を有する。すなわち、流出側キャップ16は、底面36、側面38を有し、側面には肩部40が形成されている。この肩部40とカラム本体12の端面により流出側フィルタ22が挟持されている。流出側フィルタ22と底面36の間には流出側キャップ内空間42が形成されている。底面36には、カラム本体12内の吸着粒子により所定の成分が吸着された処理後の血液を患者に戻すチューブ(不図示)が接続される流出管44が設けられている。流出管44は、流出側キャップ内空間42に向いて開口(以下、流出口46と記す。)している。流出管44は、好適にはカラム本体12の筒形状の軸線と同軸に配置されている。
【0026】
カラム本体12、流入側および流出側キャップ14,16の材質は、例えばポリカーボネイト、ポリスルホン、ポリプロピレンなどとすることができる。カラム本体12と、これらのキャップ14,16とは、ねじ結合させることができ、また、超音波融着等の結合方法を採ることもできる。また、カラム本体12とこれらのキャップ14,16の間にOリングを配置し、隙間からの血液等の流体の漏出を防ぐようにしてもよい。これらのキャップ14,16の内面に、Oリングを押圧するための斜面を設け、ねじ結合する際にフィルタ20,22およびOリングに、これらが密着するような力を発生させることが望ましい。
【0027】
流入側フィルタ20および流出側フィルタ22の材質は、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等の高分子化合物、さらには金属を用いることもできる。また、これらのフィルタはメッシュ部と枠部とが一体成形、すなわち、同一素材で一度に全体が成形されることが好ましい。
【0028】
流入管32から血液浄化用カラム10内に流れ込んだ血液は、流入側キャップ内空間30から流入側フィルタ20を通過してカラム本体12内の吸着粒子18を収容している空間に流れる。血液は、カラム本体12内で吸着粒子18に接触しつつ、吸着粒子の隙間を流出側に向けて流れ、流出側フィルタ22を通過する。流出側フィルタ22を通過した血液は、流出側キャップ内空間42から流出口46を通って、流出管44より流出する。
【0029】
流入管32から血液浄化用カラム10内に流入する血液は、流入時の慣性により流入側フィルタ20の、流入口34に対向する部分に向けて流れ、一方で流入口に対応する部分から離れた部分に向かう流れは少なくなる傾向がある。このために、カラム本体12内の流路断面内の速度分布は、流入口34に対向する部分で速く、ここから離れた部分で遅くなる傾向がある。この傾向を解消するために、この血液浄化用カラム10では、血液が通過する際の流入側フィルタ20の抵抗を、流入側フィルタの流入口に対向する部分で大きく、ここから離れた部分で小さくしている。これにより、流入側キャップ内空間30に流れ込んだ血液は、流入口に対向する部分から離れた部分にも流れるようになり、カラム本体12内の不均一な速度分布が改善される。なお、ここで言う「抵抗」とは、血液が流入側フィルタ上の単位面積の領域を通過するときの抵抗のことを指す。後述する流出側フィルタに関する抵抗も同様である。
【0030】
カラム本体12内から流出側フィルタ22を通過して流出管44に向かう流れにおいても、流出口46に対向する部分が流れやすく、カラム本体12内の流出口46に対向する部分がここから離れた部分に比べて流速が速くなる傾向がある。これを解消するために、流出側フィルタ22においても、流入側フィルタ20と同様、流出口46に対向する部分において、血液が通過する際の抵抗を大きくし、ここから離れた部分で抵抗を小さくして、不均一な速度分布を改善している。
【0031】
図3には、流入側フィルタ20と流出側フィルタ22の一例が模式的に示されている。フィルタ20,22はカラム本体12の筒形状の軸直交断面と同一の形状であり、図示する例においては、カラム本体12が円筒形状の場合に対応し、円形となっている。また、流入口34および流出口46の位置が、カラム本体12の円筒の軸線と同軸に配置される場合に対応している。なお、図に示されているのは全体の1/4であり、他の部分は、図示される部分と同様の形状を有する。
【0032】
フィルタ20,22の外周には、フィルタの強度を保つための円形の外周リング部50が設けられ、この内側に直径に沿って延び両端が外周リング部50に結合している梁52が設けられている。さらに、フィルタ20,22には、カラム本体12の円筒の軸線が通る点、すなわちフィルタの中心を中心とする同心円の周方向に沿って延びる多数のスリット48が設けられている。一つの同心円上のスリット48は、半径方向に延びる梁52により途切れているが、全体としては円環状に形成されている。これらのスリット48の半径方向の配列ピッチp、つまり隣接するスリット48の幅方向の中心線の間隔は一定である。一方スリットの幅、つまり半径方向の寸法は、中心に近い側のスリット48-1で狭く(w1)、周縁部分のスリット48-3では広く(w3)なっている。中間付近のスリット48-2では、中間の幅w2となっている。配列ピッチpを一定として、スリット48の幅wを中心部分で狭く、周縁部分で広くすることで、中心部分の抵抗を大きくし、周縁部分の抵抗を小さくする。この抵抗の差により、流入側キャップ内空間30内において、流入口34から流れ込んだ血液の、中心から周縁部分に向かう流量を増加させる。これにより、カラム本体12内の血液の流れの速度分布の均一化を図り、血液が吸着粒子に接触する時間のばらつきを減少させる。
【0033】
図3において、スリット48の幅wは、図示可能なように拡大して示している。この血液浄化用カラム10において使用される吸着粒子18は、直径が約1mmの球体で、スリットの幅は吸着粒子が通過しない値となっている。スリットの幅は、中央部分で100μm(=w1)、周縁部分で750μm(=w3)であり、中央部分から周縁部分に向けて25μm刻みで段階的に大きくなっている。
【0034】
上記のように、この血液浄化用カラム10においては、スリットの配列ピッチを一定にし、スリットの幅を変化させることにより、開口率(フィルタのある領域のスリットの面積を、その領域全体の面積で除した値)を変えている。つまり、スリット幅が狭いところでは開口率が低くなり、広いところでは高くなる。血液は、開口率が低いところから高いところへ、すなわち中心部分から周縁部分へと誘導される。
【0035】
スリット幅の変化は、2段階、またはそれ以上とすることができ、また周縁部分に向けて次第に広くなるようにしてもよい。また、中心部分では、スリットがない状態として、血液が、カラム本体12内で、中心部分に戻るようにすることもできる。
【0036】
上記の例では、スリット幅を変えて開口率を変化させたが、配列ピッチを変えて開口率を変化させるようにしてもよい。例えば、スリット幅を一定として、配列ピッチを中心部分で大きく、周縁部分へ向けて小さくしてもよい。配列ピッチの変化は、2段階、またはそれ以上とすることができ、また周縁部分に向けて次第に小さくなるようにしてもよい。また、中心部分では、スリットがない状態として、血液が、カラム本体12内で、中心部分に戻るようにすることもできる。
【0037】
さらに、開口率を変えずに、スリット幅と配列ピッチを変えて、中心部分と周縁部分の抵抗を変えることもできる。例えば、スリット幅と配列ピッチをそれぞれ1/2にすれば、開口率は変わらない。しかし、スリット幅を1/2としたことで、フィルタと、フィルタを通過する血液の接触面積が増加し、抵抗が増加する。これを利用して、中心部分と周縁部分の抵抗を変えるようにしてもよい。
【0038】
流入側フィルタ20と流出側フィルタ22を同一のものとすれば、部品の共用化の面で好ましい。しかし、流入側フィルタ20と流出側フィルタ22を別形状のものとしてもよい。カラム本体12内での血流の速度分布は、血液が流れ込む流入側の影響が大きいと考えられるので、流入側フィルタ20のみ部分ごとの抵抗を変えたものを使用し、流出側フィルタ22には従来の抵抗が均一なものを使用する組み合わせでもよい。
【0039】
図4は、フィルタの他の例を示す図である。フィルタ54は、前述の流入側および流出側20,22に代替して使用することができる構造を有する。図3と同様に1/4が図示されている。フィルタ54は、フィルタの表裏を連通する多数の連通穴56が設けられている。連通穴56は、図示した例では、全て同一の大きさの円形である。しかし、形状は方形、六角形等の多角形、星形などでもよい。フィルタ54においては、連通穴56の密度(単位面積当たりの個数)を中心部分で小さくし、周縁部分で大きくしている。このフィルタ54を流入側フィルタに用いることで、開口率は、中心部分で小さく周縁部分で大きくなり、また抵抗は中心部分で大きく周縁部分で大きくなる。この結果、フィルタ54の流入口に対向した中心部分を通過しようとする血液の流量が制限され、血液が周縁部分に向けて流れ、カラム本体12内での血流分布の均一化が図られる。
【0040】
連通穴の密度の変化は、2段階、またはそれ以上とすることができ、また周縁部分に向けて次第に大きくなるようにしてもよい。また、中心部分では連通穴がない状態としてフィルタを通過した血液がカラム本体内で中心部分に戻るようにしてもよい。
【0041】
連通穴56の大きさにより開口率を変えることもできる。例えば、密度を一定として、中心部分の連通穴は開口面積を小さくし、周縁部分では大きくしてもよい。連通穴の大きさの変化は、2段階、またはそれ以上とすることができ、また周縁部分に向けて次第に大きくなるようにしてもよい。また、中心部分では連通穴がない状態としてフィルタを通過した血液がカラム本体内で中心部分に戻るようにしてもよい。
【0042】
また、開口率は均一にして、中心部分で個々の連通穴の開口面積を小さくし、周縁部分で大きくしても、中心部分の抵抗を高めることができる。
【0043】
フィルタを網目状のフィルタとすることもできる。網目の開口はほぼ方形であるので、これを連通穴とみれば、図4に示す円形穴のフィルタ54と同様に、部分ごとの抵抗を設定することができる。
【0044】
以上の説明において、カラム本体の形状は円筒形状を例に挙げたが、これに限らず、断面が方形や多角形の角筒形状、また断面が楕円、長円形状などでもよい。また、流入口、流出口が、カラム本体の円筒形状軸線上に配置される例に限らず、軸線からオフセットした位置に配置されてもよい。
【0045】
本発明の望ましい態様について以下に記す。
【0046】
本発明の一態様である血液浄化用カラムは、円筒形状であって、かつこの円筒の内側を吸着粒子を収容する収容空間とするカラム本体と、カラム本体の円筒の一端に配置され、カラム本体に流入する血液を通過させ、吸着粒子をカラム本体内に保持する流入側フィルタと、カラム本体の円筒の他端に配置され、カラム本体から流出する血液を通過させ、吸着粒子をカラム本体内に保持する流出側フィルタと、カラム本体の前記一端に装着され、カラム本体内に血液を送り込むための流入口がカラム本体の円筒の軸線上に設けられた流入側キャップと、カラム本体の前記他端に装着され、カラム本体内から血液を送り出すための流出口が設けられた流出側キャップと、を有し、流入側フィルタは、血液が通過する多数のスリットを有し、個々のスリットは、カラム本体の円筒軸線を中心とする同心円に沿って延びる円弧形状を有し、各スリットの幅は等しく、このスリットの半径方向配列ピッチは、前記収容空間の径方向の中心部分で大きく、周縁部分で小さく、かつ前記中心部分から前記周縁部分に向けて単調に減少する。
【0047】
本発明の一態様である血液浄化用カラムは、円筒形状であって、かつこの円筒の内側を吸着粒子を収容する収容空間とするカラム本体と、カラム本体の円筒の一端に配置され、カラム本体に流入する血液を通過させ、吸着粒子をカラム本体内に保持する流入側フィルタと、カラム本体の円筒の他端に配置され、カラム本体から流出する血液を通過させ、吸着粒子をカラム本体内に保持する流出側フィルタと、カラム本体の前記一端に装着され、カラム本体内に血液を送り込むための流入口がカラム本体の円筒の軸線上に設けられた流入側キャップと、カラム本体の前記他端に装着され、カラム本体内から血液を送り出すための流出口が設けられた流出側キャップと、を有し、流入側フィルタは、血液が通過する多数のスリットを有し、個々のスリットは、カラム本体の円筒軸線を中心とする同心円に沿って延びる円弧形状を有し、これらスリットの半径方向の配列ピッチは一定であり、各スリットの幅は、前記収容空間の径方向の中心部分で大きく、周縁部分で小さく、かつ前記中心部分から前記周縁部分に向けて単調に減少する。
【0048】
本発明の一態様である血液浄化用カラムは、円筒形状であって、かつこの円筒の内側を吸着粒子を収容する収容空間とするカラム本体と、カラム本体の円筒の一端に配置され、カラム本体に流入する血液を通過させ、吸着粒子をカラム本体内に保持する流入側フィルタと、カラム本体の円筒の他端に配置され、カラム本体から流出する血液を通過させ、吸着粒子をカラム本体内に保持する流出側フィルタと、カラム本体の前記一端に装着され、カラム本体内に血液を送り込むための流入口がカラム本体の円筒の軸線上に設けられた流入側キャップと、カラム本体の前記他端に装着され、カラム本体内から血液を送り出すための流出口が設けられた流出側キャップと、を有し、流入側フィルタは、血液が通過する多数の同一形状の連通穴を有し、単位面積当たりの連通穴の個数は、前記収容空間の径方向の中心部分で少なく、周縁部分で多く、かつ前記中心部分から前記周縁部分に向けて単調に増加する。
【0049】
本発明の一態様である血液浄化用カラムは、円筒形状であって、かつこの円筒の内側を吸着粒子を収容する収容空間とするカラム本体と、カラム本体の円筒の一端に配置され、カラム本体に流入する血液を通過させ、吸着粒子をカラム本体内に保持する流入側フィルタと、カラム本体の円筒の他端に配置され、カラム本体から流出する血液を通過させ、吸着粒子をカラム本体内に保持する流出側フィルタと、カラム本体の前記一端に装着され、カラム本体内に血液を送り込むための流入口がカラム本体の円筒の軸線上に設けられた流入側キャップと、カラム本体の前記他端に装着され、カラム本体内から血液を送り出すための流出口が設けられた流出側キャップと、を有し、流入側フィルタは、血液が通過する多数の連通穴を有し、これらの連通穴の単位面積当たりの個数は均一であり、個々の連通穴の開口面積が、前記収容空間の径方向の中心部分で小さく、周縁部分で大きく、かつ前記中心部分から前記周縁部分に向けて単調に増加する。
【0050】
流入口がカラム本体の円筒の軸線上に設けられた流入側キャップと同時に用いられる流出側キャップにおいて、その流出口をカラム本体の円筒の軸線上に設けることができる。そして、流出側フィルタは流入側フィルタと同一の形状とすることができる。
【0051】
図3に示すような、全体として円形であり、同心円の周方向に延びるスリットを有するフィルタを流入側フィルタおよび流出側フィルタに採用した実施例について、通過する液体の流れの観察を行った。フィルタの外径は、φ60mmであり、スリットの幅は、中央部分で100μm、周縁部分で750μmであり、中央部分から周縁部分に向けて25μm刻みで段階的に大きくした。また、流入側キャップ14、流出側キャップ16にそれぞれ設けられた流入口34、流出口46の直径は、φ4mmである。カラム本体12の内径はφ54mm、長さは150mmであり、収容される吸着粒子は、直径が約1mmの球体である。
【0052】
上記実施例の比較例として、縦横に配置された線条部材により形成された格子状のフィルタを流入側および流出側フィルタに用いた装置を挙げる。線条部材の線径は71μm、線条部材の間隔は292μmであり、フィルタ全体に均一な網目が形成されている。網目を構成する線条部材の材質はPET(ポリエチレンテレフタレート)、外周のリング部分はポリプロピレン製である。フィルタの外径、流入口および流出口の直径、カラム本体の内径は、上記の実施例と同様である。
【0053】
上記の実施例および比較例のカラムに着色液を流量100mL/minで流し、カラム出口の内の流れを観察した。実施例のカラムでは着色液が均一に流れ、一方比較例のカラムにおいては、カラム周縁部の流れが若干遅くなり、中央部の流れが速い結果となった。
【符号の説明】
【0054】
10 血液浄化用カラム、12 カラム本体、14 流入側キャップ、16 流出側キャップ、18 吸着粒子、20 流入側フィルタ、22 流出側フィルタ、34 流入口、46 流出口、48 スリット、54 フィルタ、56 連通穴。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液浄化用カラムであって、
内部に吸着粒子を収容する収容空間を有するカラム本体と、
カラム本体の血液流入側端部に配置され、吸着粒子を収容空間内に保持する流入側フィルタと、
カラム本体の血液流出側端部に配置され、吸着粒子を収容空間内に保持する流出側フィルタと、
カラム本体の流入側端に装着され、収容空間に血液を送り込むための流入口が設けられた流入側キャップと、
カラム本体の流出側端に装着され、収容空間から血液を送り出すための流出口が設けられた流出側キャップと、
を有し、
流入側フィルタは、血液が通過する多数の開口を有し、このフィルタを血液が通過する際の単位面積当たりの抵抗がフィルタの部分ごとに定められ、当該単位面積当たりの抵抗は、流入口に対向する部分で大きく、流入口に対向する部分から離れた部分で小さく、かつ流入口に対向する部分から離れた部分に向けて単調に減少する、
血液浄化用カラム。
【請求項2】
請求項1に記載の血液浄化用カラムであって、前記流入側フィルタの単位面積当たりの抵抗が、血液流入口に対向する部分から離れるに従って、少なくとも3段階で、または次第に小さくなる、血液浄化用カラム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の血液浄化用カラムであって、流入側フィルタは、前記流入側フィルタの部分ごとの単位面積当たりの抵抗の違いが、開口率により定められている、血液浄化用カラム。
【請求項4】
請求項1または2に記載の血液浄化用カラムであって、流入側フィルタは、前記流入側フィルタの部分ごとの単位面積当たりの抵抗の違いが、単位面積当たりの開口の個数により定められている、血液浄化用カラム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の血液浄化用カラムであって、
流出側フィルタは、このフィルタを血液が通過する際の単位面積当たりの抵抗がフィルタの部分ごとに定められ、当該単位面積当たりの抵抗は、流出口に対向する部分で大きく、流出口に対向する部分から離れた部分で小さく、かつ流出口に対向する部分から離れた部分に向けて単調に減少する、
血液浄化用カラム。
【請求項6】
請求項1または2に記載の血液浄化用カラムであって、
流入側フィルタの前記開口はスリットであり、個々のスリットは流入口の軸線を中心とする同心円に沿って延びる円弧形状であり、
個々のスリットの幅は、流入口に対向する部分で小さく、流入口に対向する部分から離れた部分で大きく、かつ流入口に対向する部分から離れた部分に向けて単調に増加する、
血液浄化用カラム。
【請求項7】
請求項1または2に記載の血液浄化用カラムであって、
流入側フィルタの前記開口はスリットであり、個々のスリットは流入口の軸線を中心とする同心円に沿って延びる円弧形状であり、
スリットの半径方向配列ピッチは、流入口に対向する部分で大きく、流入口に対向する部分から離れた部分で小さく、かつ流入口に対向する部分から離れた部分に向けて単調に減少する、
血液浄化用カラム。
【請求項8】
請求項1または2に記載の血液浄化用カラムであって、
流入側フィルタの前記開口は連通穴であり、
単位面積当たりの連通穴の個数は、流入口に対向する部分で少なく、流入口から離れた部分で多く、かつ流入口に対向する部分から離れた部分に向けて単調に増加する、
血液浄化用カラム。
【請求項9】
請求項1または2に記載の血液浄化用カラムであって、
流入側フィルタの前記開口は連通穴であり、
個々の連通穴の開口面積は、流入口に対向する部分で小さく、流入口に対向する部分から離れた部分で大きく、かつ流入口に対向する部分から離れた部分に向けて単調に増加する、
血液浄化用カラム。
【請求項10】
請求項6から9のいずれか1項に記載の血液浄化用カラムであって、流出側フィルタは流入側フィルタと同一の形状である、血液浄化用カラム。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の血液浄化用カラムであって、流入側フィルタ及び流出側フィルタは、それぞれ全体が同一素材で一度に成形された成形品である、血液浄化用カラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−156022(P2011−156022A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−18064(P2010−18064)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000226242)日機装株式会社 (383)
【Fターム(参考)】