説明

血液浄化用モジュール

【課題】充填材の酸化チタン粒子の脱粒や発塵性が抑制され、取扱いが容易であり、しかも、血液等がモジュール内全体に満遍なくスムーズに流通することにより、各酸化チタン粒子の浄化能を効果的に発揮させることができる血液浄化用モジュールを提供する。
【解決手段】流入口と流出口を備えた本体ケース1内に、酸化チタン粒子2のカートリッジ3が装入された血液浄化用モジュールにおいて、カートリッジ2は、内部に流出口側が閉塞された複数の管路4を備え、管路4及び外周側面が多孔壁5,6で形成され、多孔壁5,6で囲まれた空間部に酸化チタン粒子2が充填されており、また、外周側面は、前記流入口と直通しておらず、かつ、前記流出口と直通しており、さらに、管路4の多孔壁における圧力損失は、均一であり、かつ、前記外周側面の多孔壁における圧力損失よりも大きくなるような構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液や血漿等の液体(以下、血液等という)に含まれるエンドトキシン等の有害物質の除去能を有する血液浄化用酸化チタン粒子を用いた血液浄化用モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、高度の肝機能障害を有する患者に対する治療の一つとして、該患者の血液や血漿を吸着剤に接触させ、物理化学的現象あるいは免疫反応を利用して、病因となるエンドトキシン、ビリルビン、胆汁酸、アンモニア等の有害物質を除去する血液浄化法による治療が行われている。
このような血液浄化法は、一般に、患者の血液等を体外に取り出して、前記吸着剤と接触させ、浄化された血液等を体内に戻す体外循環式により行われている。
【0003】
前記血液浄化法に用いられる吸着剤として、従来は、活性炭や陰イオン交換樹脂等が主に使用されていたが、吸着除去能や血液等に対する適合性において十分とは言えないものであり、近年、新たな吸着剤材料として、血液適合性に優れた酸化チタン粒子が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
上記のような粒子状の吸着剤を用いて体外循環式で血液浄化を行う際は、前記吸着剤粒子をカラム等の容器に充填又は装入した血液浄化用モジュールに、浄化しようとする血液等を流通させることにより前記粒子と血液等とを接触させ、前記モジュールから排出される血液等をポンプ等により循環させる。
従来は、前記容器から粒子が流出することを防止するため、容器内の流入口側及び流出口側に粒子よりも孔のサイズが小さいメッシュが設けられたモジュールが一般的に使用されていた(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
また、特許文献3には、複数種類の有害物質を効率的に除去するために、吸着能が異なる粒子を個別の容器に収容し、各容器を直列的に接続して、各容器内を血液等が流通するような状態で収納したモジュールも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−245973号公報
【特許文献2】WO2002/060512号公報
【特許文献3】特開2005−110832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献2に記載されているように、モジュールの流入口側と流出口側にメッシュを設けたのみの構造では、酸化チタン粒子の発塵性が懸念され、接触した血液等に酸化チタン微粉末等が混入し、浄化後の血液等が生体を害するおそれがある。
【0008】
また、上記特許文献3に記載されているように、吸着能がそれぞれ異なる酸化チタン粒子が収容された複数の容器を単に直列的に接続する構成では、各容器における圧力損失が異なり、血液等のスムーズな流通が妨げられたり、場合によっては目詰まりを生じたりするおそれがある。
【0009】
したがって、酸化チタン粒子を充填したモジュールにおいては、脱粒や発塵が少なく、モジュールから流出する浄化された血液等に酸化チタン微粉末等が混入することがなく、かつ、充填された酸化チタン粒子すべてが効果的に浄化能を発揮し得る構成であることが求められる。
【0010】
本発明は、上記技術的課題を解決するためになされたものであり、充填材の酸化チタン粒子の脱粒や発塵性が抑制され、取扱いが容易であり、しかも、血液等がモジュール内全体に満遍なくスムーズに流通することにより、各酸化チタン粒子の浄化能を効果的に発揮させることができる血液浄化用モジュールを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様に係る血液浄化用モジュールは、流入口と流出口を備えた本体ケース内に、有害物質吸着用カートリッジが装入された血液浄化用モジュールであって、
前記有害物質吸着用カートリッジは、内部に流出口側が閉塞された複数の管路を備え、前記管路及び外周側面が多孔壁で形成され、該多孔壁で囲まれた空間部に酸化チタン粒子が充填されており、前記外周側面は、前記流入口と直通しておらず、かつ、前記流出口と直通しており、前記管路の多孔壁における圧力損失は、均一であり、かつ、前記外周側面の多孔壁における圧力損失よりも大きいことを特徴とする。
モジュールをこのような構成とすることにより、血液等をモジュール内全体に満遍なくスムーズに流通させることができ、モジュール内のすべての酸化チタン粒子の浄化能を均等に機能させることができるとともに、酸化チタン粒子同士の接触や振動による割れや発塵、脱粒等を抑制することができる。
【0012】
前記酸化チタン粒子は、粒径が0.7〜1.3mmであり、前記管路の多孔壁は、孔径が0.1〜0.2mm、厚さが0.5〜1mmであり、前記外周側面の多孔壁は、孔径が0.3〜0.69mm、厚さが1〜2mmであることが好ましい。
各多孔壁の孔径及び厚さを上記のような範囲とすることにより、各多孔壁において上記のような圧力損失を保持することができ、また、カートリッジの構造強度を確保することができ、血液等を安定的に流通させることができる。
【0013】
また、本発明の第2の態様に係る血液浄化用モジュールは、流入口と流出口を備えた本体ケース内に、筒形リング状の有害物質吸着用カートリッジ単体が非通気性管体により複数連結して装入された血液浄化用モジュールであって、前記カートリッジ単体は各々、内周多孔壁とその他多孔外壁で形成され、これらで囲まれた空間部に酸化チタン粒子が充填されており、前記その他多孔外壁における圧力損失は、均一であり、かつ、前記内周多孔壁の圧力損失よりも大きいことを特徴とする。
このようなカートリッジによれば、浄化しようとする血液等の量や状態に応じて、連結数を適宜調整することにより、使用する酸化チタン粒子の量を容易に変更することができ、また、酸化チタン粒子同士の接触や振動による割れや発塵、脱粒等も抑制することができ、取扱いが容易となる。
【0014】
前記酸化チタン粒子は、粒径が0.7〜1.3mmであり、前記その他多孔外壁は、孔径が0.1〜0.2mm、厚さが0.5〜1mmであり、前記内周多孔壁は、孔径が0.3〜0.69mm、厚さが1〜2mmであることが好ましい。
第1の態様に係るモジュールと同様に、前記内周多孔壁及びその他多孔外壁の孔径及び厚さを上記のような範囲とすることにより、各多孔壁において上記のような圧力損失を保持することができ、また、カートリッジの構造強度を確保することができ、血液等を安定的に流通させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る血液浄化用モジュールによれば、充填材の酸化チタン粒子の脱粒や発塵性が抑制され、また、取扱いが容易である。しかも、血液等をモジュール内全体に満遍なくスムーズに流通させることができ、モジュール内の各酸化チタン粒子による浄化能を効果的に発揮させることができる。
したがって、本発明に係る血液浄化用モジュールは、血液透析をはじめ、血漿交換、吸着療法等の体外循環による血液浄化治療に好適に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の態様に係る血液浄化用モジュールを模式的に示した図であり、(a)は鉛直方向断面図、(b)は(a)のA−A断面図である。
【図2】本発明の第2の態様に係る血液浄化用モジュールを模式的に示した鉛直方向断面図である。
【図3】本発明の第2の態様に係る血液浄化用モジュールのカートリッジを模式的に示した図であり、(a)は鉛直方向断面図、(b)は水平方向断面図である。
【図4】比較例1に係る血液浄化用モジュールを模式的に示した鉛直方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について、図面を参照して詳細に説明する。
図1(a)及び(b)に、本発明の第1の態様に係る血液浄化用モジュールを示す。図1に示す血液浄化用モジュールは、流入口と流出口を備えた本体ケース1内に、有害物質吸着用カートリッジ3(以下、カートリッジと称する)が装入された構成からなる。カートリッジ3は、内部に流出口側が閉塞された複数の管路4を備え、前記管路4及び外周側面が多孔壁5,6で形成され、該多孔壁5,6で囲まれた空間部に酸化チタン粒子2が充填されている。また、前記外周側面は、前記流入口と直通せず、かつ、前記流出口と直通するように構成されている。
そして、管路4の多孔壁5における圧力損失は、均一であり、かつ、前記外周側面の多孔壁6における圧力損失よりも大きくなるように構成されている。
【0018】
モジュールをこのような構成とすることにより、モジュール内に流入した血液等は、複数の管路4に向かって流れ、該管路4の多孔壁5から酸化チタン粒子2に浸透していく。そして、酸化チタン粒子2によって浄化された血液等は、カートリッジ2の外周側面の多孔壁6から流出し、モジュールから流出する。すなわち、前記モジュールで血液浄化を行う際は、図1に示す矢印方向に血液等が流れる。
【0019】
前記カートリッジ3においては、充填材の酸化チタン粒子に血液等を接触させるために複数の流入経路を設けることにより、血液等をカートリッジ内全体に満遍なくスムーズに流通させることができ、カートリッジ内のすべての酸化チタン粒子を浄化のために均等に機能させることができる。
また、酸化チタン粒子が、カートリッジ内に空隙率15〜25%で充填されることにより、モジュールの使用やカートリッジの取扱いの際に、酸化チタン粒子同士が、接触や振動によって割れたり、砕けたりして、発塵、脱粒等を生じることを抑制することができる。
【0020】
前記管路4は、図1においては7本均等に設けられているが、管路4及びカートリッジの外周側面の多孔壁5,6における圧力損失が上記のような状態であり、血液等のスムーズな流通が確保される限り、本数は特に限定されない。ただし、管路4の合計容積が大きくなり、カートリッジ内への酸化チタン粒子の充填率が低くなって、浄化能が低下したり、カートリッジ内の酸化チタン粒子の移動自由度が大きくなって発塵性が増大したりしないように配慮する必要がある。
また、複数の管路4は、各管路に血液等が均一に流入するようにするため、水平断面において、均等に配置されることが好ましく、中央部及び同心円上の中心対称の位置に複数本設けられることがより好ましい。
【0021】
上記のように、管路4の多孔壁5は、酸化チタン粒子2に対する血液等の流入路となり、カートリッジ2の外周側面の多孔壁6は、酸化チタン粒子2からの血液等の流出路となる。
酸化チタン粒子2に対する流入側及び流出側の各多孔壁5,6について、多孔壁5における圧力損失は均一、かつ、多孔壁6における圧力損失よりも大きくなるように構成することにより、該モジュール内において血液等を満遍なくスムーズに流通させながら、効率的に浄化することができる。これにより、体外循環式血液浄化における患者負担の軽減を図ることできる。
【0022】
前記モジュールにおいて用いられる酸化チタン粒子は、充填性や製造容易性、取扱い容易性等の観点から、粒径が0.7〜1.3mmであることが好ましい。このとき、管路4の多孔壁5は、孔径が0.1〜0.2mm、厚さが0.5〜1mmであり、外周側面の多孔壁6は、孔径が0.3〜0.69mm、厚さが1〜2mmであることが好ましい。
各多孔壁5,6の孔径は、小さすぎると、血液等の流通が悪くなり、圧力損失が大きくなる。一方、大きすぎると、多孔壁5,6で囲まれた空間部の酸化チタン粒子2が流出するおそれがある。また、血液等を酸化チタン粒子に満遍なく接触させるために、上述したように多孔壁5よりも多孔壁6における圧力損失を大きくする必要があることから、多孔壁5の方が、多孔壁6よりも孔径が小さいことが好ましい。
【0023】
また、多孔壁5,6の厚さは、酸化チタン粒子の充填や血液等の流通に支障のない程度の構造強度を保持することができることが好ましいことから、上記のような範囲とする。また、カートリッジ3の外形を保持する観点から、外周側面の多孔壁6の方が、管路の多孔壁5よりも厚く形成することが好ましい。
【0024】
前記多孔壁5,6の材質や形状等は、特に限定されるものではなく、血液浄化用に適合した樹脂、例えば、ポリプロピレンやポリエステル等によるメッシュや多孔膜等を用いることができる。
ただし、複数の管路4の多孔壁5からすべての酸化チタン粒子2に血液等が行き渡り、酸化チタン粒子の浄化能を効果的に発揮させるため、各管路4の多孔壁5は、圧力損失が均一になるように形成される。
【0025】
図2に、本発明の第2の態様に係る血液浄化用モジュールを示す。図2に示す血液浄化用モジュールは、流入口と流出口を備えた本体ケース11内に、有害物質吸着用筒形リング状のカートリッジ単体13が非通気性管体18により複数連結して装入された血液浄化用モジュールである。
図3(a)及び(b)に、前記カートリッジ13単体の構成を示す。このカートリッジ13は、リング状の内周多孔壁15とその他多孔外壁16で形成され、これらで囲まれた空間部に酸化チタン粒子2が充填されている。
そして、その他多孔外壁16における圧力損失は、均一であり、かつ、前記内周多孔壁15における圧力損失よりも大きくなるように構成されている。
【0026】
前記リング状の内周多孔壁15の上下は、緻密壁で形成された非通気性管体18によって連結され、該内周多孔壁15と連続した管状となり、モジュール中央に管路14が形成されるように構成される。
各カートリッジ13は、非通気性管体18により連結されるが、非通気性管体18及びその連結部の外側から、モジュール内に流入した未浄化の血液等が浸入しないようにする必要がある。連結方法は、特に限定されるものではないが、例えば、Oリングを介した接続やねじ込み式等の方法により行うことができる。
【0027】
第2の態様に係るモジュールにおいては、流入した血液等は、各カートリッジ13のその他多孔外壁16から酸化チタン粒子2に浸透していく。そして、酸化チタン粒子2によって浄化された血液等は、モジュール中央の管路14の内周多孔壁15から流出し、モジュールから流出する。すなわち、前記モジュールで血液浄化を行う際は、図2に示す矢印方向に血液等が流れる。
【0028】
図2においては、カートリッジ13が3連結したものを示しているが、このカートリッジ13は、一体型のカートリッジよりも酸化チタン粒子2が少量ずつ充填されているため、浄化しようとする血液等の量や状態に応じて、連結数を適宜調整することにより、使用する酸化チタン粒子の量を容易に変更することができる。なお、本体ケース1は、連結数に応じた高さに適用可能なものを用いる。
このようなカートリッジを装入したモジュールによれば、モジュール又はカートリッジの取扱いの際に、酸化チタン粒子同士が、接触や振動によって割れたり、砕けたりして、発塵や脱粒等が生じることを抑制することができる。
また、カートリッジ13は、外周面全体がカートリッジ内の酸化チタン粒子に血液等を接触させるための流入路となるため、血液等をカートリッジ内全体に満遍なくスムーズに流通させることができ、該カートリッジ内のすべての酸化チタン粒子を浄化のために均等に機能させることができる。
【0029】
なお、図2に示すモジュールにおいては、モジュール内への流入口とカートリッジ13との間に、孔径約5mmの複数の貫通孔が均等に配置された多孔板17が設けられている。
このような多孔板を設けることにより、流入口に最も近い位置にあるカートリッジ13の下面のその他多孔外壁16に、モジュール内に流入した血液等を均等に供給することができる。カートリッジ内のすべての酸化チタン粒子ができるだけ均等に機能するようにするためには、このような構成を備えていることが好ましい。
【0030】
第2の態様に係るモジュールにおいて用いられる酸化チタン粒子も、第1のモジュールと同様に、充填性や製造容易性、取扱い容易性等の観点から、粒径が0.7〜1.3mmであることが好ましい。このとき、その他多孔外壁16は、孔径が0.1〜0.2mm、厚さが0.5〜1mmであり、内周多孔壁15は、孔径が0.3〜0.69mm、厚さが1〜2mmであることが好ましい。
内周多孔壁15及びその他多孔外壁16の孔径は、小さすぎると、血液等の流通が悪くなり、圧力損失が大きくなる。一方、大きすぎると、内周多孔壁15及びその他多孔外壁16で囲まれた空間部の酸化チタン粒子2が流出するおそれがある。また、血液等を酸化チタン粒子に満遍なく接触させるために、上述したようにその他多孔外壁よりも内周多孔壁15における圧力損失を大きくする必要があることから、その他多孔外壁16の方が、内周多孔壁15よりも孔径が小さいことが好ましい。
【0031】
本発明においてカートリッジ内に充填される酸化チタン粒子2は、血液浄化能を有する公知の粒子を用いることができる。浄化効率の観点からは、比表面積の大きい多孔質のものが好ましく、また、粒子同士の接触等による発塵の抑制の観点からは、球状粒子であることが好ましい。
なお、前記カートリッジは、酸化チタン粒子による発塵をより低減させるために、酸化チタン粒子を充填した後、純水圧送洗浄し、乾燥した後、血液浄化用モジュールに装入し、さらに、γ線で滅菌処理してから使用することが好ましい。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を実施例に基づきさらに具体的に説明するが、本発明は下記の実施例により制限されるものではない。
[実施例1]
<酸化チタン粒子の製造>
酸化チタン原料として塩素法により作製した比表面積約70m2/gの酸化チタン粒子80g、アルギン酸ナトリウム1wt%水溶液320g、分散剤としてアロンA−30SL(東亜合成株式会社製)2.4gを混合してポットに入れ、樹脂ボールを用いて、ポットミルにてスラリーを調製した。
次いで、このスラリーを内径0.8mmのフッ素樹脂製チューブを装着したペリスタポンプを用いて、塩化カルシウム1重量%水溶液に滴下し、3時間以上放置して十分にゲル化させ、球状の酸化チタンゲルを作製した。
そして、この球状酸化チタンゲルを純水で洗浄し、70℃で6時間以上乾燥させた後、大気中、200℃/hrで昇温し、1000℃で2時間熱処理して、酸化チタン多孔質粒子を得た。
さらに、この酸化チタン多孔質粒子を、水素雰囲気下、200℃/hrで昇温し、1000℃で2時間保持して熱処理し、粒径1〜1.2mmの血液浄化用酸化チタン粒子を作製した。
【0033】
<モジュールの作製>
上記において作製した血液浄化用酸化チタン粒子を、図1に示すような構造のカートリッジ内に充填し、純水圧送洗浄し、100℃で乾燥させた。これを、血液浄化用モジュールに装入し、γ線で滅菌処理した。
なお、前記カートリッジ及びモジュールのサイズは、図1において、カートリッジの高さh1=100mm、カートリッジの直径d1=40mm、管路径b1=7mm、モジュールの直径D1=50mm、モジュールの流入口からカートリッジ下面までの距離X1=15mm、カートリッジ上面からモジュールの流出口までの距離Y1=15mmとした。
【0034】
<モジュールの圧力損失測定>
前記モジュールを、循環ポンプを備えた回路に設置し、血液試料(粘度4.5cpの血液疑似流体)を流入口から、100ml/minで流入させた。このときのカートリッジの多孔壁の流入側(管路)、流出側(外周側面)の圧力を測定し、モジュールの圧力損失を算出した。
これらの結果を表1に示す。
【0035】
[実施例2]
実施例1と同様の血液浄化用酸化チタン粒子を、図3に示すような構造のカートリッジ内に充填し、これを3個連結させて、図2に示すような血液浄化用モジュールを構成した。3個のカートリッジに充填した酸化チタン粒子の合計量は、実施例1と使用した量と同体積とした。
なお、前記カートリッジ及びモジュールのサイズは、図2及び図3において、カートリッジの酸化チタン充填部の高さh2=20mm、カートリッジの直径d2=40mm、管路径b2=15mm、各カートリッジの間隔C2=5mm、モジュールの直径D2=50mm、3連結カートリッジの高さH2=100mm、モジュールの流入口からカートリッジの酸化チタン充填部までの距離X2=15mm、カートリッジの酸化チタン充填部からモジュールの流出口までの距離Y2=15mmとした。
このモジュールについて、実施例1と同様にして、カートリッジの多孔壁の流入側(外周面)、流出側(管路)の圧力を測定し、モジュールの圧力損失を算出した。
これらの結果を表1に示す。
【0036】
[比較例1]
<ブロック状血液浄化材の作製>
酸化チタン原料として塩素法により作製した比表面積約72m2/gの酸化チタン粒子を350g、ゲル化主剤として10%ポリエチレイミン水溶液を1400g、分散剤としてアロンA−30SLを10gポットに入れ、樹脂ボールを用いて、ポットミルにて12時間以上かけて、粉砕混合し、スラリーを調製した。
次いで、このスラリーに、硬化剤としてエポキシ樹脂を50g添加して十分に混合した後、型に鋳込み、大気中、200℃/hrで昇温し、1000℃で2時間熱処理して、酸化チタン焼結体を得た。
そして、この酸化チタン焼結体を、直径40mm、高さ100mmの円柱状ブロックに加工し、純水で洗浄した後、100℃で2時間乾燥させた。
さらに、このブロック状の酸化チタン焼結体を、水素雰囲気下、200℃/hrで昇温し、1000℃で2時間保持して熱処理し、ブロック状の血液浄化材を作製した。
【0037】
<モジュールの作製>
上記において作製したブロック状の血液浄化材を純水で超音波洗浄し、100℃で乾燥し、図4に示すような外周面がポリエステル製メッシュで形成された円筒状のカートリッジ23内に装入した。これを、血液浄化用モジュールに装入し、γ線で滅菌処理した。
なお、前記カートリッジ及びモジュールのサイズは、カートリッジの高さ100mm、カートリッジの直径40mm、モジュールの直径50mm、モジュールの流入口からカートリッジ下面までの距離15mm、カートリッジ上面からモジュールの流出口までの距離15mmとした。
【0038】
<モジュールの圧力損失測定>
このモジュールについて、実施例1と同様にして、圧力損失を算出した。
これらの結果を表1に示す。
なお、流入側多孔壁と流出側多孔壁の圧力損失は、モジュールに組込む前に、同様の実験系を用いて多孔壁のみについて測定したものである。
【0039】
【表1】

【0040】
表1示した結果から分かるように、実施例1,2のモジュールは、流出側における圧力損失はほとんどなく、流入側における圧力損失が支配的となることが確認された。
また、血液流量が100ml/minの場合、実施例1,2のモジュールの圧力は、モジュール全体における圧力損失が比較例1よりも明らかに低く、血液がカートリッジ内全体に満遍なく行き渡っており、流通はスムーズであった。
なお、比較例1は、圧力損失が高すぎて、流出側まで通液することができなかったため、モジュールの圧力損失は測定不可であった。
【符号の説明】
【0041】
1,11 本体ケース
2 酸化チタン粒子
3,13 カートリッジ
4,14 管路
5,6 多孔壁
15 内周多孔壁
16 その他多孔外壁
17 多孔板
18 非通気性管体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入口と流出口を備えた本体ケース内に、有害物質吸着用カートリッジが装入された血液浄化用モジュールであって、
前記有害物質吸着用カートリッジは、内部に流出口側が閉塞された複数の管路を備え、前記管路及び外周側面が多孔壁で形成され、該多孔壁で囲まれた空間部に酸化チタン粒子が充填されており、
前記外周側面は、前記流入口と直通しておらず、かつ、前記流出口と直通しており、
前記管路の多孔壁における圧力損失は、均一であり、かつ、前記外周側面の多孔壁における圧力損失よりも大きいことを特徴とする血液浄化用モジュール。
【請求項2】
前記酸化チタン粒子は、粒径が0.7〜1.3mmであり、
前記管路の多孔壁は、孔径が0.1〜0.2mm、厚さが0.5〜1mmであり、
前記外周側面の多孔壁は、孔径が0.3〜0.69mm、厚さが1〜2mmであることを特徴とする請求項1記載の血液浄化用モジュール。
【請求項3】
流入口と流出口を備えた本体ケース内に、筒形リング状の有害物質吸着用カートリッジ単体が非通気性管体により複数連結して装入された血液浄化用モジュールであって、
前記カートリッジ単体は各々、内周多孔壁とその他多孔外壁で形成され、これらで囲まれた空間部に酸化チタン粒子が充填されており、
前記その他多孔外壁における圧力損失は、均一であり、かつ、前記内周多孔壁の圧力損失よりも大きいことを特徴とする血液浄化用モジュール。
【請求項4】
前記酸化チタン粒子は、粒径が0.7〜1.3mmであり、
前記その他多孔外壁は、孔径が0.1〜0.2mm、厚さが0.5〜1mmであり、
前記内周多孔壁は、孔径が0.3〜0.69mm、厚さが1〜2mmであることを特徴とする請求項1記載の血液浄化用モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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