説明

血管の電気的刺激のためのシステム

血管の電気的刺激のためのシステムが、本明細書において開示される。本システムのある実施形態は、血管との電気接触を有する少なくとも1つの電極を含む。また、この実施形態は、電極に電気的に接続される刺激回路であって、血管に刺激を提供するように適合される回路を含む。さらに、この実施形態は、回路に接続される制御器であって、血管の収縮および血管の拡張を含む血管療法を選択的に及ぼすように、刺激回路の周波数パラメータおよび電圧パラメータを選択するように適合される制御器を含む。種々の実施形態によると、刺激回路および制御器は、埋め込み型医療機器(IMD)内に含まれる。本システムは、制御器に接続されるセンサを含み、制御器は、多様な実施形態では、センサから受信した信号に基づいて、療法を開始および調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権の主張)
本願は、米国特許出願第11/674,463号(2007年2月13日出願)の優先権の利益を主張する。この出願は、本明細書において参照により援用される。
【0002】
(技術分野)
本開示は、概して、医療機器に関し、より具体的には、血管の電気的刺激のためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
多くの病状は、血管に関する問題に関連し得る。血管収縮および血管拡張は、心拍出量を制御するために使用可能であり、多数の療法に有用である。血管収縮療法および/または血管拡張療法を提供するために改良されたシステムおよび方法が必要とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の問題およびここで明示的に論じられない他の問題は、本主題によって対処され、また、本明細書を熟読および研究することによって理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
電気血管拡張療法を適用するための方法が、本明細書において開示される。ある実施形態によると、本方法は、血管を拡張するために血管の平滑筋を電気的に刺激することであって、平滑筋の緊張を減少させるために、所定の周波数および所定の電圧ならびに所定のデューティサイクルで平滑筋を刺激することを含むことを含む。また、本方法は、種々の実施形態によると、生理的パラメータを検知することと、検知された生理的パラメータに基づいて、血管に対する電気的刺激を調整することとを含む。
【0006】
血管マッサージ療法を適用するための方法が、本明細書において開示される。ある実施形態によると、本方法は、血管拡張をもたらすために、第1の所定の周波数および第1の所定の電圧ならびに第1の所定のデューティサイクルで、第1の電気的刺激療法を血管に適用することを含む。また、本方法は、ある実施形態によると、血管収縮をもたらすために、第2の所定の周波数および第2の所定の電圧ならびに第2の所定のデューティサイクルで、第2の電気的刺激療法を血管に適用することを含む。さらに、本方法は、種々の実施形態によると、血管コンプライアンスを増加させるために、拡張および収縮のタイミングおよび持続時間を制御することを含む。
【0007】
血圧を調節するために血管療法を適用するための方法が、本明細書において開示される。一実施形態によると、本方法は、血管収縮をもたらすために、少なくとも16Hzの周波数および少なくとも10ボルトの電圧レベルで、血管に電気的刺激を印加することを含む。また、本方法は、血管を調節するために、収縮のタイミングおよび持続時間を制御することを含む。種々の実施形態によると、さらに、本方法は、少なくとも1つの生理的パラメータを検知することと、検知されたパラメータに基づいて、収縮のタイミングおよび持続時間を調節することとを含む。
【0008】
血管療法システムが、本明細書において開示される。一実施形態によると、本システムは、血管との電気接触を有する少なくとも1つの電極を含む。また、このシステムの実施形態は、電極に電気的に接続される刺激回路であって、血管に刺激を提供するように適合される回路を含む。さらに、このシステムの実施形態は、回路に接続される制御器であって、血管の収縮および血管の拡張を含む血管療法を選択的に及ぼすように、刺激回路の周波数パラメータおよび電圧パラメータを選択するように適合される制御器を含む。種々の実施形態によると、刺激回路および制御器は、埋め込み型医療機器(IMD)内に含まれる。
【0009】
この発明の概要は、本出願の教示のうちのいくつかに関する概要であり、本主題の排他的または包括的な処置であるように意図されない。本主題に関するさらなる詳細は、発明を実施するための形態および添付の請求項に記載される。他の側面は、以下の発明を実施するための形態を熟読および理解し、その一部を形成する図面を見ることによって、当業者に明白になり、その各々は、限定的な意味で解釈されるべきではない。本発明の範囲は、添付の請求項およびその法的な同等物によって定義される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、一実施形態に従う、電気血管拡張療法を適用するための方法に関するフロー図を示す。
【図2】図2、一実施形態に従う、血管マッサージ療法を適用するための方法に関するフロー図を示す。
【図3】図3は、一実施形態に従う、血圧を調節するために血管療法を適用するための方法に関するフロー図を示す。
【図4】図4は、一実施形態に従う、埋め込み型医療機器(IMD)を有するシステムに関するブロック図を示す。
【図5】図5は、一実施形態に従う、図4のシステムに示すものまたはIMDと通信する他の外部機器等のプログラマに関するブロック図を示す。
【図6】図6は、一実施形態に従う、血管療法システムに関するブロック図を示す。
【図7A】図7Aは、種々の実施形態に従う、適用される血管拡張療法および血管収縮療法に関するグラフ図を示す。
【図7B】図7Bは、種々の実施形態に従う、適用される血管拡張療法および血管収縮療法に関するグラフ図を示す。
【図8A】図8Aは、種々の実施形態に従う、適用される血管マッサージ療法に関するグラフ図を示す。
【図8B】図8Bは、種々の実施形態に従う、適用される血管マッサージ療法に関するグラフ図を示す。
【図9A】図9Aは、種々の実施形態に従う、適用される血圧調節療法に関するグラフ図を示す。
【図9B】図9Bは、種々の実施形態に従う、適用される血圧調節療法に関するグラフ図を示す。
【図10】図10は、種々の実施形態に従う、適用される電気的刺激療法に関するグラフ図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本主題の以下の詳細な説明は、本主題が実施され得る特定の側面および実施形態を例証として示す添付の図面における主題を参照する。これらの実施形態は、当業者が本主題を実施できるように十分詳細に説明される。本開示における「ある実施形態」、「一実施形態」、「種々の実施形態」に関する言及は、必ずしも同一の実施形態ではなく、このような言及は、複数の実施形態を想定している。以下の発明を実施するための形態は、例証的であり、限定的な意味に解釈されるべきではない。本主題の範囲は、添付の請求項と、このような請求項が権利を有する法的な同等物の全範囲とによって定義される。
【0012】
本主題の種々の実施形態は、血管の電気的刺激のためのシステムおよび方法に関する。プログラム可能な所定の周波数および電圧を有する電気波形を使用して、選択的に血管を拡張または収縮させて、多くの病状を治療する。種々の実施形態では、生理的パラメータが検知され、閉ループ療法システムにおいて刺激が調整される。血管を収縮させるために電気的刺激を血管に提供することは、血管収縮と呼ばれる。血管を拡張させるための電気的刺激は、血管拡張と呼ばれる。
【0013】
本主題は、血管拡張および血管収縮をもたらすための平滑筋の直接刺激に関する。筋緊張は、血管拡張の場合に減少し、血管収縮の場合に増加する。これは、血管径に影響を与える圧受容神経標的または圧受容器の刺激と対照的であり、この場合、刺激は、中枢神経系に影響を与える。
【0014】
平滑筋の刺激は、比較的高い電圧および周波数を必要とするが、血管拡張療法に影響を与えるために低い周波数(約1Hz)が使用されている。本手法は、血管収縮および血管拡張を制御する通常の生理的過程を回避するため、通常の制御機構(例えば、神経制御または生化学的/ホルモン制御)が適切に機能しない、収縮期不全および拡張期不全、または高血圧等の病的状態に適用可能である。この血管収縮療法または血管拡張療法の可能性のある適用として、不安定狭心症中の血管攣縮を予防または防止するための冠動脈の刺激;高血圧または拡張期心不全における心臓に対する後負荷を軽減させるための(特に運動中の収縮期血圧上昇を低下させるための)大動脈の刺激;末梢性動脈硬化の治療;脊髄保護等の虚血プレコンディショニング用途;腎臓かん流の制御;および血管動脈瘤の治療が含まれるが、これらに限定されない。
【0015】
図1は、一実施形態に従って、電気血管拡張療法を適用するための方法に関するフロー図を示す。方法100は、102において、血管を拡張するために、血管の平滑筋を電気的に刺激することを含み、平滑筋の緊張を減少させるために、所定の周波数および所定の電圧で平滑筋を刺激することを含む。また、本方法は、104において、生理的パラメータを検知することと、106において、検知された生理的パラメータに基づいて、血管への電気的刺激を調整することとを含む。
【0016】
種々の実施形態によると、平滑筋は、所定のデューティサイクルで刺激される。デューティサイクルは、パルス刺激がオンおよびオフである相対的な時間の長さを言及し、例えば、連続刺激または10秒オンで10秒オフであるパターン等が挙げられる。種々の実施形態によると、血管を拡張するために電気的刺激を印加することは、約1Hzの周波数で刺激を印加することを含む。電気的刺激を印加することは、ある実施形態では、約70ボルトの電圧で刺激を印加することを含む。本開示の範囲から逸脱することなく、他の電圧および周波数を使用してもよい。
【0017】
多様な実施形態によると、電気的刺激は、外部機器を使用して、または埋め込み型医療機器(IMD)を使用して印加可能である。IMDの種類には、スタンドアロン型狭心症療法機器、スタンドアロン型高血圧療法機器、またはパルス発生器等の心臓機器が含まれる。種々の実施形態によると、パルス発生器は、ペースメーカ等の種々の心調律管理(CRM)機器、心臓除細動器、心臓再同期療法(CRT)機器、ならびにこれらの被験者に対する療法様式のうちの複数を提供する機器の組み合わせとして機能する機器を含む。パルス発生器は、種々の実施形態によると、無線通信を介して外部機器によってプログラム制御される。使用される無線通信の種類の例として、無線周波数(RF)リンクおよび誘導テレメトリー(inductive telemetry)が挙げられるが、これらに限定されない。パルス発生器は、多様な実施形態では、内部電池または外部電池によって、または内部電池および外部電池の組み合わせによって電力供給される。一実施形態では、パルス発生器は、使用前に外部電池によって充電されるように適合される。外部機器の例として、プログラマ(図5に示されるような)および遠隔患者監視システムが挙げられるが、これらに限定されない。電気的刺激機能は、例えば、局所かん流を増加させて創傷治癒を改善するように、非侵襲性用途のために外部システムに組み込まれてもよい。
【0018】
図2は、一実施形態に従って、血管マッサージ療法を適用するための方法に関するフロー図を示す。方法200は、202において、血管拡張をもたらすために、第1の所定の周波数および第1の所定の電圧で、第1の電気的刺激療法を血管に印加することを含む。また、本方法は、204において、血管収縮をもたらすために、第2の所定の周波数および第2の所定の電圧で、第2の電気的刺激療法を血管に印加することを含む。さらに、本方法は、206において、血管コンプライアンスを増加させるために、拡張および収縮のタイミングおよび持続時間を制御することを含む。種々の実施形態によると、平滑筋は、血管拡張のための第1の所定のデューティサイクルで刺激され、血管収縮のための第2の所定のデューティサイクルで刺激される。
【0019】
種々の実施形態によると、拡張および収縮のタイミングおよび持続時間を制御することは、血管コンプライアンスを増加させるために血管マッサージを調整することを含む。第1の電気的刺激療法を血管に適用することは、ある実施形態では、電気的刺激を下行大動脈に印加することを含むが、本開示の範囲から逸脱することなく、任意の動脈または血管にも適用可能である。また、本方法の種々の実施形態は、少なくとも1つの生理的パラメータを検知することおよび検知されたパラメータに基づいて、拡張および収縮のタイミングおよび持続時間を調整することを含む。閉ループシステムのための検知された生理的パラメータの例として、血圧および血管径が挙げられるが、これらに限定されない。種々の実施形態では、タイミングおよび持続時間は、プログラム制御される。多様な実施形態では、刺激は、断続的に、周期的に、または所定のスケジュールに従って提供される。種々の実施形態によると、血管マッサージは、約1Hz、最大70ボルトで、数分間、血管拡張を適用することを含む。血管マッサージは、種々の実施形態によると、10ボルト以上および16Hz以上で血管収縮を適用することを含む。約70ボルトの電圧レベルは、最大量の血管収縮を提供する。このレベルで刺激する際、大動脈血圧は低下する。一実施形態では、血管収縮は、血管マッサージを提供するために、10秒以上の間適用されてから、10秒以上の間停止し(デューティサイクル)、次いで繰り返される。ある実施形態では、約0.5ミリ秒のパルス幅が使用される。血管収縮および血管拡張は、多様な実施形態によると、血管マッサージを提供するために、10秒から数分の時間で交互に適用される。
【0020】
血管マッサージ療法は、連続的に、または1日の特定の時間、例えば、ある実施形態では1日に1時間半の間提供可能である。療法の回数は、特定の間隔で、または心拍変動、活動モニタ、もしくは他のパラメータ等の測定可能なパラメータに対する生理的反応に基づいて、プログラム可能である。多様な実施形態によると、療法は、遠隔的に、例えば、SphygmacoreまたはOmronの増幅指標分析器(augmentation index analyzer)に連結されるプログラマ(図5のプログラマ等)を使用して漸増される。熱、マイクロ波、または超音波等の他の形態のエネルギーを使用して、類似の療法を提供してもよい。血管マッサージ療法は、上記の血管拡張療法に関して論じられた任意の機器において使用可能であり、また、ステントベースのペーシングシステムに組み込まれて、閉塞/梗塞関連の動脈にマッサージを提供することが可能である。
【0021】
患者が高齢であること、または疾患が進行していることによって、高血圧および拡張期心不全に関連する血管系の堅さが増加し得る。血管拡張および血管収縮を電気的刺激によって制御する能力は、血管コンプライアンスの増加に使用され得る血管マッサージを行う上で有用である。血管コンプライアンスは、印加圧力の単位変化当たりの血管の断面積の単位変化をいい、血管の弾性の測定指標である。血管コンプライアンスの増加は、高血圧、収縮期および拡張期心不全、ならびに血管疾患を含むいくつかの病的状態に影響する。加えて、血管の末梢抵抗(E)が低下することによって、インピーダンス整合およびポンプ効率が改善される。Eは、心室駆出中の容積変化に対する圧力変化の比率として定義され、通常、収縮終期圧を1回拍出量で割ることによって計算される。加えて、電気的刺激の印加は、大動脈の伸展性を局所的に増加させる。これは、大動脈において反射圧力波を低下させる効果を有することが可能であり、これは、さらなる構造損傷を防止する際に有益である。伸展性指標(DI)は、以下の数式を使用して計算可能である。
DI=(dA/A)/dPx1000
式中、Aは、拡張期管腔面積であり、dAは、最小管腔面積と最大管腔面積との差であり、dPは、パルス圧力である。また、大動脈DIの増加は、体循環により血液を前方に推進する際に有益である。加えて、心室および冠血管系間の連結が、大動脈DIの増加によって改善可能になる。図10は、種々の実施形態に従って適用された電気的刺激療法に関するグラフ図である。電気的刺激は、1Hzおよび16Hzならびに0.5ミリ秒および50ミリ秒のパルス幅において、10ボルトの刺激波形を使用する制御条件に対して、伸展性を増加させることが示されている。他の電気的刺激波形を使用して、本開示の範囲を逸脱することなく、伸展性を増加させることが可能である。
【0022】
図3は、一実施形態に従って、血圧を調節するために血管療法を適用するための方法に関するフロー図を示す。方法300は、302において、血管収縮をもたらすために、少なくとも16Hzの周波数および少なくとも10ボルトの電圧レベルで、血管に電気的刺激を印加することを含む。また、本方法の実施形態は、304において、血圧を調節するために、収縮のタイミングおよび持続時間を制御することを含む。血管収縮方法は、血圧調節に限定されず、不安定狭心症中の血管攣縮を予防または防止するための冠動脈の刺激;高血圧または拡張期心不全における心臓に対する後負荷を軽減させるための(特に運動中の収縮期血圧上昇を低下させるための)大動脈の刺激;末梢性動脈硬化の治療;脊髄保護等の虚血プレコンディショニング用途;腎臓かん流の制御;および血管動脈瘤を含むがこれらに限定されない他の療法にも使用可能である。種々の実施形態によると、方法は、少なくとも1つの生理的パラメータを検知し、検知されたパラメータに基づき収縮のタイミングと継続時間を調節することをさらに含む。
【0023】
電気的刺激を適用することは、ある実施形態によると、約10秒の持続時間中に、少なくとも70ボルトの電圧レベル、約16Hzの周波数で刺激を印加することを含む。一実施形態では、電気的刺激は、全身血圧を調節するために下行大動脈に印加される。血圧が検知され、種々の実施形態では、電気的刺激は、検知された血圧が第1の閾値を上回って上昇する場合に印加され、検知された血圧が第2の閾値を下回って低下する場合に停止する。第1および第2の閾値は、一実施形態では、プログラム可能なパラメータである。血圧調節のためのシステムには、ある実施形態によると、スタンドアロン型システム(外部または内部)が含まれる。別の実施形態では、血圧調節のためのシステムは、血管を刺激するための電極および血圧を監視するためのセンサを有する既存のIMD(図4のような)に組み込まれる。
【0024】
本技術の潜在的な用途には、内部血圧センサに連結する場合の知的血圧調節、急性血圧クリーゼ中の断続的な血圧低下、一過性虚血生成等の血流調節、手術中の出血低減または出血防止、および血管動脈瘤のサイズを減少させるための療法が含まれるが、これらに限定されない。また、本血管療法は、安静時血圧を調節し、運動中に発生する血圧の主な急上昇を減少させることによって、拡張期心不全を治療するためにも有益であり得る。
【0025】
図4は、一実施形態に従う、埋め込み型医療機器(IMD)を有するシステムのブロック図を示す。本システムは、IMD401、IMD401に連結される電気リード420、および少なくとも1つの電極425を含む。IMDは、制御器回路405、メモリ回路410、テレメトリー回路415、および刺激回路435を含む。制御器回路405は、電気的刺激療法を供給するために、メモリ回路に格納される命令によって動作可能である。療法は、リード420および電極425を介して刺激回路435によって供給される。テレメトリー回路415によって、外部プログラマ430との通信が可能になる。プログラマ430は、IMD401が提供するプログラム化された療法を調整するために使用され、IMDは、例えば、無線テレメトリーを使用して、機器データ(電池容量およびリード抵抗)ならびに療法データ(検知データおよび刺激データ)をプログラマに報告する。また、図示するシステムは、少なくとも1つのセンサ445に接続されるセンサ回路440も含む。種々の実施形態によると、センサ445は、生理的パラメータを検知するように適合され、制御器405は、例えば、図1の方法を使用して、検知された生理的パラメータに基づいて、血管に対する電気的刺激を調整する。種々の実施形態によると、開示されるシステムおよび方法は、リードを含まない機器と使用される。例えば、ある実施形態では、1つ以上の衛星電極は、電気療法を供給するために無線制御される。加えて、リードは、センサおよび電極の両方、または検知および刺激可能である組み合わせ要素を含むように構成可能である。
【0026】
図5は、一実施形態に従う、図4のシステムに示すプログラマ430またはIMDと通信する他の外部機器等のプログラマ544のブロック図を示す。他の外部機器の例として、携帯情報端末(PDA)、遠隔患者監視システムにおけるノート型およびデスクトップ型パーソナルコンピュータ、またはこのようなシステムにおけるハンドヘルド型機器が挙げられるが、これらに限定されない。図示する機器544は、制御器回路545およびメモリ546を含む。制御器回路545は、ハードウェア、ソフトウェア、ならびにハードウェアおよびソフトウェアの組み合わせを使用して実装可能である。例えば、種々の実施形態によると、制御器回路545は、プロセッサを含み、機器へのデータ通信および/または命令のプログラミングを含む多数の機能を実行するために、メモリ546に内蔵される命令を実行する。図示する機器544は、機器との通信に使用するための送受信機547および関連回路をさらに含む。種々の実施形態は、無線通信能力を有する。例えば、送受信機547および関連回路に関する種々の実施形態は、機器との無線通信に使用するためにテレメトリーコイルを含む。図示する機器544は、ディスプレイ548、キーボードまたはマウス/ポインタ等の入力/出力(I/O)機器549、および通信ネットワーク等において他の機器との通信に使用するための通信インターフェース550をさらに含む。
【0027】
図6は、一実施形態に従う血管療法システムのブロック図を示す。システム600は、血管608との電気接触を有する少なくとも1つの電極606を含む。また、システムの実施形態は、電極に電気的に接続される刺激回路602も含み、その回路は、血管に刺激を提供するように適合される。システムの実施形態は、回路に接続される制御器604をさらに含み、制御器は、血管の収縮および血管の拡張を含む血管療法を選択的に及ぼすように、刺激回路の周波数パラメータおよび電圧パラメータを選択するように適合される。種々の実施形態によると、刺激回路および制御器は、埋め込み型医療機器(IMD)に含まれる。上述のように、IMDは、スタンドアロン型の専用血管刺激機器、または例えば、除細動、CRT、もしくはペーシング等の機能を含む組み合わせの機器を含んでもよい。電極は、刺激を提供するために血管に物理的接触する必要はないが、多様な実施形態によると、直接接触しない場合、療法に必要な電圧が増加する。一実施形態では、血管刺激は、経皮的に影響を与えられる。
【0028】
種々の実施形態によると、電極は、刺激回路に無線接続される。リードは、多様な実施形態では、電極および刺激回路間に接続される。使用するリードの例として、標準的なペーシングリードまたは血管内ステントペーシングリードが挙げられるが、これらに限定されない。センサは、制御器に接続され、制御器は、種々の実施形態では、センサから受信した信号に基づいて療法を開始または変更する。使用するセンサの種類には、血管径センサ(例えば、超音波結晶を使用する)、分時換気量センサ、加速度計、心拍数センサ、インピーダンスもしくは血液量センサ、血流センサ(例えば、超音波プローブを使用する)、または慢性圧センサ等の内部センサ、ならびに/あるいは増幅指標分析器もしくは血圧バンド等の外部センサが含まれるが、これらに限定されない。複数のセンサおよび複数の電極を、本開示の範囲を逸脱することなく使用することが可能である。種々の実施形態によると、制御器(制御器がIMDに存在する場合)は、無線テレメトリーを介して外部ソースから受信した信号に基づいて療法を開始または変更する。多様な実施形態では、無線周波数テレメトリー、誘導テレメトリー、または他の種類の無線通信は、1つ以上の外部ソースに対する信号の送受信に使用され得る。
【0029】
図6のシステムまたは図4の類似のIMDは、即効性の血管収縮効果、持続性の血管拡張効果、または周期的効果に利用可能である。多数のリードおよび電極は、単一もしくは多数の血管部位または上流または下流部位の順次ペーシングに使用可能である。加えて、リードを含まないペーシングは、種々の実施形態における本システムにおいて利用される。
【0030】
図7A〜図7Bは、種々の実施形態に従って適用される血管拡張療法および血管収縮療法に関するグラフ図を示す。図7Aは、例えば、図1の方法を使用して、血管にまたは血管近傍に産生される電気波形を使用して、結果として生じた血管拡張(ミリメートル単位の血管径)に関するグラフ図を示す。波形は、70ボルトの振幅を有し、また、0.5ミリ秒のパルス幅によって1Hzで連続的に印加される。図7Bは、血管にまたは血管近傍に産生される電気波形を使用して、結果として生じた血管収縮(ミリメートル単位)に関するグラフ図を示す。波形は、70ボルトの振幅を有し、0.5ミリ秒のパルス幅によって16Hzで連続的に印加される。これらの波形は、例であり、本開示の範囲を逸脱することなく、上述のような他の波形を使用することも可能である。
【0031】
図8A〜図8Bは、種々の実施形態に従って適用される血管マッサージ療法に関するグラフ図を示す。図8Aは、例えば、図2の方法を使用して、血管にまたは血管近傍に産生される電気波形を使用して、結果として生じた血管容積のグラフ図を示す。波形は、70ボルトの振幅を有し、また、血管をマッサージするために、0.5ミリ秒のパルス幅によって16Hzで、10秒のバーストで印加される。図8Bは、例えば、図2の方法を使用して、血管にまたは血管近傍に産生される電気波形を使用して、結果としてもたらされる血管収縮(ミリメートル単位)のグラフ図を示す。波形は、血管をマッサージするために、70ボルトの振幅を有し、0.5ミリ秒のパルス幅によって24Hzで、10秒のバースト(10秒オン、10秒オフ)で印加される。これらの波形は、例であり、本開示の範囲を逸脱することなく、上述のような他の波形を使用することも可能である。
【0032】
図9A〜図9Bは、種々の実施形態に従って適用される血圧調節療法のグラフ図を示す。図9Aは、例えば、図3の方法を使用して、下行大動脈にまたは下行大動脈近傍に産生される電気波形を使用して、結果として生じた拡張期血圧に関するグラフ図を示す。波形は、70ボルトの振幅を有し、0.5ミリ秒のパルス幅によって16Hzで連続的に印加される。図9Bは、例えば、図3の方法を使用して、血管にまたは血管近傍に産生される電気波形を使用して、ピーク収縮期血圧に関するグラフ図を示す。波形は、70ボルトの振幅を有し、0.5ミリ秒のパルス幅によって24Hzで、10秒のバーストで印加される。
【0033】
具体的な実施形態について本明細書に図示および説明されたが、同一の目的を達成するように考慮される任意の構成が、示された具体的な実施形態と置換され得ることを当業者により理解されたい。本出願は、本主題の適応または変形を対象とするように意図される。上記の説明は、例示的であるように意図され、制限的であるように意図されないことを理解されたい。上記の実施形態および他の実施形態の組み合わせは、上記の説明を検討することによって当業者に明白になるであろう。本主題の範囲は、添付の請求項と、このような請求項が権利を有する同等物の全範囲とを参照して判断されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管との電気接触を有する少なくとも1つの電極と、
該電極に電気的に接続される刺激回路であって、該血管に刺激を提供するように適合される回路と、
該回路に接続される制御器であって、該血管の収縮および該血管の拡張を含む血管療法に選択的に及ぼすように、該刺激回路の周波数パラメータおよび電圧パラメータを選択するように適合される制御器と
を備える、システム。
【請求項2】
前記刺激回路および制御器は、埋め込み型医療機器(IMD)内に含まれる、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記制御器に接続されるセンサをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記IMDは、前記センサから受信した信号に基づいて、療法を開始または変更する、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記IMDは、無線テレメトリーを介して外部ソースから受信した信号に基づいて、療法を開始または変更する、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記制御器は、血管拡張をもたらすために、第1の所定の周波数および第1の所定の電圧ならびに第1の所定のデューティサイクルで、第1の電気的刺激療法を血管に適用し、血管収縮をもたらすために、第2の所定の周波数および第2の所定の電圧ならびに第2の所定のデューティサイクルで、第2の電気的刺激療法を血管に適用し、および血管マッサージを提供するために、拡張および収縮のタイミングおよび持続時間を制御するように適合される、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記制御器は、血管コンプライアンスを増加させるために、前記血管マッサージを調整するように適合される、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記制御器は、前記第1の電気的刺激療法を下行大動脈に適用する、請求項6または7に記載のシステム。
【請求項9】
少なくとも1つの生理的パラメータを検知するためのセンサをさらに備え、
前記拡張および収縮のタイミングおよび持続時間は、該検知されたパラメータに基づいて調整される、請求項6から8のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項10】
前記センサは、血圧を検知するように適合される、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記センサは、血管径を検知するように適合される、請求項9に記載のシステム。
【請求項12】
血管を拡張させるために該血管の平滑筋を電気的に刺激する手段であって、該平滑筋の緊張を減少させるために、所定の周波数および所定の電圧ならびに所定のデューティサイクルで該平滑筋を刺激する手段を含む手段と、
生理的パラメータを検知する手段と、
該検知された生理的パラメータに基づいて、該血管に対する該電気的刺激を調整する手段と
を備える、システム。
【請求項13】
前記平滑筋を電気的に刺激する手段は、約1Hzの周波数で刺激を印加する手段を含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記平滑筋を電気的に刺激する手段は、約70ボルトの電圧で刺激を印加する手段を含む、請求項12または請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記所定のデューティサイクルは、連続デューティサイクルを含む、請求項12から14のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項16】
前記平滑筋を電気的に刺激する手段は、埋め込み型機器を使用して刺激を印加する手段を含む、請求項12から15のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項17】
前記埋め込み型機器を使用して刺激を印加する手段は、スタンドアロン型狭心症療法機器を含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記埋め込み型機器を使用して刺激を印加する手段は、スタンドアロン型高血圧療法機器を含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項19】
前記埋め込み型機器を使用して刺激を印加する手段は、心臓機器を含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項20】
血管収縮をもたらすために、少なくとも16Hzの周波数かつ少なくとも10ボルトの電圧レベルで、血管に電気的刺激を印加する手段と、
療法を調節するために、収縮のタイミングおよび持続時間を制御する手段と
を備える、システム。
【請求項21】
前記療法を調節するために、収縮のタイミングおよび持続時間を制御する手段は、血圧を調節するために、収縮のタイミングおよび持続時間を制御する手段を含む、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記電気的刺激を印加する手段は、少なくとも70ボルトの電圧レベルで刺激を印加する手段を含む、請求項20または21に記載のシステム。
【請求項23】
少なくとも1つの生理的パラメータを検知する手段をさらに備え、
前記収縮のタイミングおよび持続時間は、該検知されたパラメータに基づいて調整される、請求項20から22のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項24】
前記生理的パラメータを検知する手段は、血圧を検知する手段を含む、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記電気的刺激を印加する手段は、検知された血圧が第1の閾値を上回って上昇する場合に、刺激を印加するように適合され、検知された血圧が第2の閾値を下回って低下する場合に、刺激を停止するように適合される、請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
前記第1の閾値および第2の閾値は、プログラム可能なパラメータである、請求項25に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【公表番号】特表2010−517676(P2010−517676A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−549086(P2009−549086)
【出願日】平成20年2月4日(2008.2.4)
【国際出願番号】PCT/US2008/001467
【国際公開番号】WO2008/100390
【国際公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(505003528)カーディアック ペースメイカーズ, インコーポレイテッド (466)
【Fターム(参考)】