説明

血管狭窄モデル

【課題】
狭窄部モデル内を通るガイドワイヤ等の医療用器具の先端に対する視認性を向上させることで、PCIの訓練の精度を向上させると共に、簡単に使用することのできる血管狭窄モデルを提供することを課題とする。
【解決手段】
血管病変モデル1は、狭窄部モデルと、狭窄部モデルを保持可能にする溝部2を有した透明な保持型と、を備え、保持型は第1の部位1Aと第2の部位1Bとに分離可能であり、溝部2は保持型の縦断面視において第1の部位1Aと第2の部位1Bとの境界線5に対して上方向または下方向のどちらか一方向に位置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管狭窄モデルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、心臓を栄養する冠動脈の一部が狭窄して発症する虚血性心疾患等を治療する方法として経皮的冠動脈インターベンション(以下、PCIと表記する)が行われており、このPCIによる治療方法を訓練するために種々なトレーナーな血管モデルが提案されてきた。
【0003】
例えば、特許文献1には、ガイドワイヤ等の長尺物が挿入可能な凹部形状の経路を表面に有する平板と、この平板を覆う透明板と、を備えるPTCA(経皮的冠動脈形成術、現在はPCIの名で呼ばれることが多い)トレーナーが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、透明材料から成るマネキン本体と、このマネキン本体に内蔵された仕切り部材によって支持されている血管モデルと、この血管モデルを動作させるための補助器具とを備える人体モデルが記載されている。
【0005】
また、引用文献3には、動脈経路と、この動脈経路から分岐する血管経路と、動脈経路と血管経路とを接続するコネクターを備え、このコネクターが二重管構造と、雄型接続部と雌型接続部とを有する血管シミュレーションモデルが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−343891
【特許文献2】特開2006−267565
【特許文献3】特開2008−237304
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のPTCAトレーナーにおいては、ガイドワイヤ等を操作する際に、透明板から平板に向う方向におけるガイドワイヤ等の先端の位置を確認することはできるものの、この方向から直交する方向(PTCAトレーナーの縦断面図方向)からガイドワイヤ等の先端の位置を確認することができず、ガイドワイヤ等の先端の視認性が十分ではなく、その結果、PCIの訓練の精度が低く、PCIの訓練を十分に行うことが出来なかった。
【0008】
また、特許文献2に記載の人体モデルにおいては、透明なマネキン本体と、その内部に配置されている血管モデルが3次元の形状を有しているので、ガイドワイヤ等が挿入されていないその他の血管モデルによって視界が遮られてしまい、ガイドワイヤ等の先端の視認性が十分ではなく、精度の良い訓練を行うことが出来なかった。また、人体モデルは人体と同じ大きさを有していることから、設置に時間がかかる問題も有していた。
【0009】
また、特許文献3に記載の血管シミュレーションモデルにおいても、特許文献2に記載の人体モデルと同じように、血管モデルが3次元の形状を有している為、ガイドワイヤ等が挿入されていないその他の血管モデルによって視界が遮られてしまい、ガイドワイヤ等の先端の視認性が十分ではなく、精度の良い訓練を行うことが出来なかった。また、コネクターの接続に時間がかかる問題も有していた。
【0010】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、狭窄部モデル内を通るガイドワイヤ等の医療用器具の先端に対する視認性を向上させることで、PCIの訓練の精度を向上させると共に、簡単に使用することのできる血管狭窄モデルを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
<1>本願請求項1に係る発明は、狭窄部モデルと、前記狭窄部モデルを保持可能にする少なくとも1本の溝部を有した透明な保持型と、を備え、前記保持型は、第1の部位と第2の部位とに分離可能であり、前記保持型の溝部は、前記保持型の縦断面視において、前記第1の部位と前記第2の部位との境界線に対して、上方向または下方向のどちらか一方向に位置している、血管狭窄モデルを特徴とする。
【0012】
<2>本願請求項2に係る発明は、請求項1に記載の血管狭窄モデルにおいて、前記溝部の横断面視における形状は、半円形状である、血管狭窄モデルを特徴とする。
【0013】
<3>本願請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載の血管狭窄モデルにおいて、前記溝部の入口付近は、出口方向から入口方向に向って、より大きく開口している、血管狭窄モデルを特徴とする。
【0014】
<4>本願請求項4に係る発明は、請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の血管狭窄モデルにおいて、前記保持型は、横断面視において、扇形形状を有している、血管狭窄モデルを特徴とする。
【0015】
<5>本願請求項5に係る発明は、請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の血管狭窄モデルにおいて、前記保持型は、横断面視において、半円形状を有している、血管狭窄モデルを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
<1>請求項1に記載の血管狭窄モデルは、狭窄部モデルを保持する透明な保持型の溝部が、保持型の縦断面視において、透明な保持型の第1の部位と透明な保持型の第2の部位との境界線に対して、上方向又は下方向のどちらか一方向に位置しているので、ガイドワイヤ等の医療機器を目視する際に境界線がガイドワイヤ等の医療機器と重なることがないので、血管狭窄モデル内を通るガイドワイヤ等の医療機器の先端の視認性が向上し、延いては、PCIの訓練の精度を向上させることができる。また、血管狭窄モデルが、狭窄部モデルと、この狭窄部モデルを内包する透明な保持型のみから構成され、極めて単純な構成であることから、血管狭窄モデルの設置に時間を要することなく、PCIの訓練を容易に行うことができる。
【0017】
<2>請求項2に記載の血管狭窄モデルは、保持型に設けられた溝部が、横断面視において、半円形状を有しているので、四角形断面の上半分(又は下半分)の頂点に位置する縁部が存在しない為、保持型外部からの狭窄部モデルの視認性をさらに向上させることができ、延いては、PCIの訓練の精度をさらに向上させることができる。
【0018】
<3>請求項3に記載の血管狭窄モデルは、溝部の入口付近が、溝部の出口方向から入口方向に向ってより大きく開口しているので、溝部に設けられている狭窄モデルが出口方向に押された状態になったとしても、溝部のより大きく開口した部分がストッパーとして機能するので、狭窄モデルを保持型内に安定して配置することができ、延いては、PCIの訓練の精度をさらに向上させることができる。
【0019】
<4>請求項4に記載の血管狭窄モデルは、保持型が、横断面視において、扇形形状を有しているので、扇形形状の曲線が形成されている側から狭窄モデルを視認した際の視認性をさらに向上させることができ、延いては、PCIの訓練の精度をさらに向上させることができる。
【0020】
<5>請求項5に記載の血管狭窄モデルは、保持型が、横断面視において、半円形状を有しているので、半円形状の曲線が保持型の上表面に形成されていることから、両側面方向から狭窄モデルを視認した際の視認性を大幅に向上させることができ、延いては、PCIの訓練の精度を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態を示す構成図であり、(a)は血管狭窄モデルの正面図であり、(b)は血管狭窄モデルの平面図であり、(c)は血管狭窄モデルの側面図であり、(d)及び(e)は第1実施形態の変形例を示す図であり、(d)は変形例の正面図、(e)は、溝部の変形例を説明する図である。
【図2】本発明の第2実施形態を示す構成図であり、(a)は血管狭窄モデルの正面図であり、(b)は血管狭窄モデルの平面図であり、(c)は血管狭窄モデルの右側面図である。
【図3】本発明の第3実施形態を示す構成図であり、(a)は血管狭窄モデルの正面図であり、(b)は血管狭窄モデルの平面図であり、(c)は血管狭窄モデルの右側面図である。
【図4】本発明の第4実施形態を示す構成図であり、(a)は血管狭窄モデルの正面図であり、(b)は血管狭窄モデルの平面図であり、(c)は血管狭窄モデルの右側面図である。
【図5】本発明のその他の実施形態を示す図であり、(a)は第5実施形態の平面図、(b)は第6実施形態の斜投影図である。
【0022】
以下、本発明の血管狭窄モデルを図面に示す好適実施形態に基づいて説明する。
【0023】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態の血管狭窄モデル1を示す構成図であり、図1(a)は、血管狭窄モデル1の正面図であり、図1(b)は血管狭窄モデル1の平面図であり、図1(c)は血管狭窄モデル1の側面図(右側面図)である。図1(d)及び図1(e)は第1実施形態の変形例である血管狭窄モデル11であり、第1実施形態の血管狭窄モデル1の説明を行った後に詳述する。
【0024】
なお、図1に図示された全ての図面は、理解を容易にするため、血管狭窄モデル1の長さ方向や幅方向の縮尺を変更し、全体を模式的に図示しているため、全体の寸法は実際とは異なる。
【0025】
図1(a)において、血管狭窄モデル1は、保持型の第1の部位(上型)1Aと、第1の部位に対して分離可能な保持型の第2の部位(下型)1Bから成る保持型と、第1の部位に設けられた溝部2と、この溝部2内に配置される狭窄モデルと、第1の部位と第2の部位とをねじ等で固定する為の固定孔9とを備えている。また、第1の部位と第2の部位とは固定される際に、その接合面同士が接合することによって形成される境界線5を有している。保持型の第1の部位1Aと第2の部位1Bとは、共に透明な樹脂材料から形成されており、保持型の外部から溝部2内に設けられた狭窄部モデルを視認することができる。
【0026】
溝部2は図1(c)の側面図(即ち、保持型の縦断面視)において、溝部2の全長に亘って境界線5よりも上方向に位置している。また、図1(b)及び(c)から明らかなように保持型の全長を貫くように溝部2が設けられており、さらに、溝部2は、保持型内を並行するように2本配置され、溝部2の横断面視の形状は、四角形を有している。
【0027】
また、図1(b)に図示されているように、保持型の第1の部位1Aと第2の部位1Bとを固定する固定孔9は、保持型内を並行する2本の溝部2の内側方向に配置されるように配置されている。
【0028】
このように血管狭窄モデル1の透明な保持型が、溝部2を有する第1の部位1Aと第2の部位1Bとから形成され、溝部2はその内部に狭窄モデルを有し、且つ、この溝部2は、保持型の縦断面視において、保持型の第1の部位1Aと第2の部位1Bとの接合面である境界線5よりも上方向に位置していることから、溝部2(狭窄部モデル)内にガイドワイヤ等の医療機器を挿入して、血管狭窄モデル1の上側からこの溝部2(狭窄モデル)を目視した際に境界線5と重なることがないので、血管狭窄モデル1内を通る医療機器の先端の視認性が向上する為、訓練を行う者が、医療機器の先端を見ながら医療機器を操作することがこれまで以上に可能となることから、PCIの訓練の精度を向上させることができる。また、血管狭窄モデル1が、狭窄部モデルと、この狭窄部モデルを内包する透明な保持型のみから構成されており、極めて単純な構成であることから、血管狭窄モデル1の設置に時間を要することなく、PCIの訓練を容易に行うことができる。
【0029】
次に、各構成要素を形成する材料について記載する。
保持型の第1の部位1Aと第2の部位1Bとは、透明な樹脂材料で形成されていればよく、特に限定されるものではないが、例えば、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリアミド、スチレン系樹脂、シリコン系樹脂等から選択することができる。また、第1の部位1Aと第2の部位1Bを構成する樹脂は、保持型の内部に狭窄部モデルを担持する為、比較的硬度の高い樹脂で形成することが好ましい。このような観点から、第1の部位1Aと第2の部位2Aとは、透明度と硬度の高いアクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリアミドを好適に用いることができる。
【0030】
また、保持型の第1の部位の溝部2内に設置されている狭窄部モデルを形成する材料としては、樹脂材料で形成されていれば良いが、弾性と機械的強度とを有するゲルを用いることが好ましい。ゲルとしては、オルガノゲルとヒドロゲルとがあるが、保持型が樹脂材料で形成されている点を考慮すると、溶媒として極性の高い水を内包することのできるヒドロゲルを用いることがより好ましい。また、ゲルの架橋は、物理的な架橋であっても、化学的な架橋であっても良い。
【0031】
このようなヒドロゲルの材料としては、特に限定されるものではないが、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリヒドロキシメタクリレート、アガロース等が挙げられる。なお、ヒドロゲルを構成する樹脂材料と保持型を構成する樹脂材料とが互いに同系の材料(例えば、ヒドロゲル:ポリアクリル酸、保持型:アクリル系樹脂)で構成することで、ゲルと保持型との間で凝着現象が発生することから、血管狭窄モデル1にガイドワイヤ等の医療機器を挿入する際に、狭窄モデルが保持型から離脱することを防止できるので、PCIの訓練を精度よく行うことができる。
また、同系の材料を用いることで、光の屈折率を同じにすることができる為、後述するような、3次元の経路を有する血管狭窄モデルを作製した場合でも、視認性を確保することができる。
【0032】
また、ゲルを作製する際には、ゲルを構成する樹脂成分と反応する架橋剤を用いて化学的な架橋を形成させたり、ゲルを構成する樹脂材料の濃度を高めることで物理的な架橋を増やしたりして、狭窄部モデルに任意の硬度を与えても良い。
【0033】
このような血管狭窄モデル1を作製する方法としては、例えば、アクリル樹脂の塊(直方体)を切断後、切断面の透明度を確保する為に研磨して、第1の部位1Aと第2の部位1Bとを用意するか、若しくは、二つのアクリル樹脂の直方体をそのまま第1の部位1Aと第2の部位1Bに使用して、第1の部位1Aと第2の部位1Bとを用意する。
【0034】
次に、研削機械又は切削機械を用いて第1の部位1Aに溝部2と固定孔9と作製し、第2の部位1Bに固定孔9を作製する。なお、固定孔9には、ねじによる固定を行う為に、ねじ山を設けても良い。
【0035】
次に、溝部2の大きさと同じゲルをキャスト法等によって形成して狭窄部モデルを作製し、溝部2に狭窄部モデルを嵌め込むか、若しくは、第1の部位1Aの溝部2にゲルの形成材料を流し込んで、溝部2に狭窄部モデルを作製しても良い。第1の部位1Aに樹脂材料を流し込む場合には、溝部2の端部から樹脂材料が流出しないように、溝部2の端部をシーリングしておく必要がある。また、第1の部位1Aにゲルの樹脂材料を流し込んだ場合には、第1の部位1Aと第2の部位1Bとを狭窄部モデルを形成する形成型として用いることもできる。
尚、狭窄部モデルを溝部2内に設ける際には、視認性を確保する為に、狭窄部モデルと溝部2との界面に空気層を形成させないことが重要である。
【0036】
そして、最後に、第1の部位1Aと第2の部位1Bとを固定孔9にねじを入れて、第1の部位1Aと第2の部位1Bとを固定して、血管狭窄モデル1を作製することができる。なお、この方法に限らず、この他の公知の手段を用いて、血管狭窄モデル1を作製しても良い。
【0037】
図1(d)には、第1実施形態の変形例である血管狭窄モデル11の平面図が図示されている。この図から明らかなように、血管狭窄モデル11の保持型の第1の部位11Aに設けられている溝部12は、横断面視において、半円形状を有している。なお、この血管狭窄モデル11の側面図は、図1(c)の図と同じであり、溝部12は、保持型の縦断面視において、境界線5よりも上方向に位置している。
【0038】
このように血管狭窄モデル11の溝12が、横断面視において、半円形状を有しているので、四角形断面の上半分の頂点に位置する縁部が存在しない為、保持型外部からの狭窄部モデルの視認性をさらに向上させることができ、延いては、PCIの訓練の精度をさらに向上させることができる。
【0039】
また、血管狭窄モデル11の溝部12の半円形状とは、溝部12の形状のみを指すものではなく、例えば、図1(e)に図示されているように、真円を二分した半円形状121でも良く、また、円の中心が境界線5よりも上方向に位置したトンネル形状のような半円形状122でも良い。
【0040】
なお、図1に図示されている第1の実施形態の血管狭窄モデル1の溝部2及び変形例の血管狭窄モデル11の溝部12は、保持型の縦断面視において、共に境界線5に対して、上方向に位置している。これは、狭窄部モデルの視認性やガイドワイヤ等の医療機器の視認性を向上させる観点から好ましいが、溝部2又は溝部12が、保持型の縦断面視の溝部2又は溝部12の全長に亘って、境界線5よりも下方向に位置していても良い。このように溝部2又は溝部12が境界線5よりも下方向に位置している場合には、血管狭窄モデル1の真横方向(即ち、図1(c)の方向)から溝部2(狭窄部モデル)を視認した際に、境界線5が溝部2(狭窄部モデル)と重なることが無い為、視認性は向上する。
【0041】
なお、図1(c)からも明らかであるように、溝部2が第1の部位(上型)1Aに設けられている場合には、溝部2はその位置において、境界線5よりも必ず上方向に位置することになる。また、逆に溝部2が第2の部位(下型)1Bに設けられている場合には、溝部2はその位置において、境界線5よりも必ず下方向に位置することになる。よって、1本の溝部2は、第1の部位(上型)1Aか第2の部位(下型)1Bのどちらか一方にのみ設ける必要がある。
尚、溝部2は、一個の血管狭窄モデル1で、複数回訓練が出来る観点から、2本以上設けることが好ましいが、1本のみ設けることもできる。
また、溝部2を2本設ける場合には、溝部2に配置される狭窄モデルの視認性の観点から、図1(c)に記載しているように、2本の溝部2を境界線5よりも上に位置するように配置することが好ましいが、一方の1本が境界線5よりも上側(即ち、第1の部位1Aに溝部2を設ける)に配置され、他方の1本が境界線5よりも下側(即ち、第2の部位1Bに溝部を設ける)に配置された状態とすることもできる。
【0042】
また、血管狭窄モデル1を使用してPCIの訓練を行う際には、血管狭窄モデル1を机上やジグに固定する為にクランプ等で血管狭窄モデル1と机上等とを固定する為の手段を血管狭窄モデル1に設けても良い。
【0043】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態の血管狭窄モデル21について、図2を用いて、第1実施形態とは異なる点を中心に説明する。また、第1実施形態と共通する部分については、図中では同じ符号を付すこととする。
なお、図2は、理解を容易にするため、血管狭窄モデル21の長さ方向と幅方向の縮尺を変更し、血管狭窄モデル21の全体を模式的に図示しているため、全体の寸法は実際とは異なる。
【0044】
図2(a)は血管狭窄モデル21の正面図であり、図2(b)は血管狭窄モデル21の平面図、及び図2(c)は血管狭窄モデル21の側面図(右側面図)である。図2(a)〜(c)に図示されているように、血管狭窄モデル21は、保持型の第1の部位21Aと第2の部位21Bとが曲線部211を有している点、第1の部位21Aに設けられた溝部22が、溝部22の入口側に相当する拡大開口部221と、溝経路部223と、拡大開口部221と溝経路部223との間に位置する形状遷移部222とから形成されている点、及び、溝部22の溝経路部223の途中に溝湾曲部224を有し、この溝湾曲部224によって溝経路部223が湾曲している点において、第1実施形態の血管狭窄モデル1及び血管狭窄モデル11と異なっている。
【0045】
溝部22の拡大開口部221は、溝部22の入口に相当しており、この拡大開口部221の基端に位置する形状遷移部222は、形状遷移部222の基端側(即ち、出口方向側)に位置する溝経路部223と拡大開口部221をつなぐように、出口方向から入口方向に向ってより大きく開口している。
【0046】
このように、第2実施形態の血管狭窄モデル21は、溝部22の入口付近に存在する形状遷移部222が、溝部22の出口方向から入口方向に向ってより大きく開口しているので、狭窄モデル内にガイドワイヤ等の医療機器を挿入した際に、溝部22に設けられている狭窄モデルが出口方向に押された状態になったとしても、形状遷移部222がストッパーとして機能するので、狭窄モデルを保持型内に安定して配置することができ、延いては、PCIの訓練の精度をさらに向上させることができる。
【0047】
また、溝部22の溝経路部223は溝湾曲部224を有していることから、溝部22が全長に亘って直線形状の時と比較して、溝湾曲部224が、形状遷移部222と同様にストッパーとして機能するので、狭窄モデルを保持型内にさらに安定して配置することができ、延いては、PCIの訓練の精度をさらに向上させることができる。
【0048】
なお、溝湾曲部224は、保持型の外部から狭窄部モデルを視認する為の視認性の観点から湾曲形状であることが好ましいが、折れ曲がった屈曲部とすることもできる。
【0049】
また、図2(a)に図示されているように、保持型の第1の部位21Aと第2の部位21Bとが、曲線部211を有しており、これにより、保持型の側面が、溝部22の溝経路部223に対して平行に位置している。これにより、保持型外部から狭窄部モデルを視認した際に、側面方向にからの保持型の厚みが同一となり、光の透過率を一定に保つことができるので、狭窄部モデルの視認性を確保することができ、延いては、PCIの訓練の精度をさらに向上させることができる。
【0050】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態の血管狭窄モデル31について、図3を用いて、第1の実施形態と第2実施形態とは異なる点を中心に説明する。また、第2実施形態と共通する部分については、図中では同じ符号を付すこととする。
なお、図3は、理解を容易にするため、血管狭窄モデル31の長さ方向と幅方向の縮尺を変更し、血管狭窄モデル31の全体を模式的に図示しているため、全体の寸法は実際とは異なる。
【0051】
図3(a)は血管狭窄モデル31の正面図であり、図3(b)は血管狭窄モデル31の平面図、及び図3(c)は血管狭窄モデル31の側面図(右側面図)である。図3(a)〜(c)に図示されているように、血管狭窄モデル31は、血管狭窄モデル31の保持型が、その横断面視において、曲線部311と直線部312とからなる扇型形状を有している点、及び、固定孔19が、保持型の第2の部位(下型)から第1の部位(上型)に向って設けられている点で、第2の実施形態の狭窄部モデル21と異なっている。
【0052】
なお、保持型の横断面視における扇形形状は、本実施形態において、保持型の第1の部位31Aと第2の部位31Bとが一体形成に形成された保持型の全体に亘って形成されているが、これに限定されることなく、第1の部位31Aのみが、扇形形状を有していても良い。
【0053】
このように、血管狭窄モデル31の保持型が、横断面視において、扇形形状を有しているので、保持型の扇形形状の曲線311が形成されている側から狭窄モデルを視認した際の視認性をさらに向上させることができ、延いては、PCIの訓練の精度をさらに向上させることができる。
【0054】
また、固定孔19が、第2の部位(下型)から第1の部位(上型)方向に向って設けられていることから、保持型を上方向から視認する際に、固定孔19が視界に入り難くなる為、狭窄部モデルの視認性をさらに向上させることができ、延いては、PCIの訓練の精度をさらに向上させることができる。
【0055】
なお、固定孔19を第2の部位(下型)から第1の部位(上型)方向に向って設ける場合には、溝部22に設けられている狭窄部モデルの視認性を向上させる観点から、溝部22は、保持型の縦断面において、境界線5に対して上側に配置することが好ましい。
【0056】
<第4実施形態>
次に、第4実施形態の血管狭窄モデル41について、図4を用いて、第3実施形態とは異なる点を中心に説明する。また、第3実施形態と共通する部分については、図中では同じ符号を付すこととする。
なお、図4は、理解を容易にするため、血管狭窄モデル41の長さ方向と幅方向の縮尺を変更し、血管狭窄モデル41の全体を模式的に図示しているため、全体の寸法は実際とは異なる。
【0057】
図4(a)は血管狭窄モデル41の正面図であり、図4(b)は血管狭窄モデル41の平面図、及び図4(c)は血管狭窄モデル41の側面図(右側面図)である。図4(a)〜(c)に図示されているように、血管狭窄モデル41は、血管狭窄モデル41の保持型が、その横断面視において、上側表面に位置する曲線部411と両側面に位置する直線部412とからなる半円形状を有している点で、第3の実施形態の狭窄部モデル31と異なっている。
【0058】
このように、血管狭窄モデル41の保持型が、横断面視において、半円形状を有しているので、半円形状の曲線411が保持型の第1の部位41Aの上表面に形成されていることから、両側面方向から狭窄モデルを視認した際の視認性を大幅に向上させることができ、延いては、PCIの訓練の精度を大幅に向上させることができる。
【0059】
なお、血管狭窄モデル41の保持型の横断面視における半円形状の曲線部411は、本実施形態では、第1の部位のみに設けられているが、これに限定されることなく、第2の部位に設けても良い。また、半円形状は、図1(e)に記載されている溝部12の半円形状と同じ形状としても良い。
【0060】
<第5実施形態>
次に、第5実施形態の血管狭窄モデル51について、図5(a)を用いて、第4実施形態とは異なる点を中心に説明する。また、第4実施形態と共通する部分については、図中では同じ符号を付すこととする。
なお、図5(a)は、理解を容易にするため、血管狭窄モデル51の長さ方向と幅方向の縮尺を変更し、血管狭窄モデル51の全体を模式的に図示しているため、全体の寸法は実際とは異なる。
【0061】
図5(a)は血管狭窄モデル51の平面図である。図5(a)に記載されているように、第5実施形態の血管狭窄モデル51は、第1の部位51Aの略四角形の頂点に当る部分が、曲線部511を有した曲面に形成されている点、及び、溝部22が、入口方向から出口方向に向って形状遷移部222と、溝経路部223と、を有しており、拡大開口部221を有していない点で第4実施形態の血管狭窄モデル41とは異なっている。
【0062】
このように、第5実施形態の血管狭窄モデル51は、平面図方向の断面視(即ち、保持型の第1の部位51Aから第2の部位51Bに向う方向の断面視)において、略四角形の頂点部分が曲線部511を有した曲面に形成されていることから、血管狭窄モデル51の略四角形の頂点方向から、狭窄部モデルを視認した際に、保持型の四角形の頂点に当る部分の縁部分が視界に入ることがないので、狭窄部モデルの視認性をさらに向上させることができ、延いては、PCIの訓練の精度をさらに向上させることができる。
【0063】
また、溝部22が、入口方向から出口方向に向って、形状遷移部222と、溝経路部223と、を有していることから、第2実施形態の血管狭窄モデル21の溝部22と同じように、ガイドワイヤ等の医療機器を狭窄モデル内に挿入した際に、溝部22に設けられている狭窄モデルが出口方向に押された状態になったとしても、形状遷移部222がストッパーとして機能するので、狭窄モデルを保持型内に安定して配置することができ、延いては、PCIの訓練の精度をさらに向上させることができる。
【0064】
<第6実施形態>
次に、第6実施形態の血管狭窄モデル61について、図5(b)を用いて、第5実施形態とは異なる点を中心に説明する。また、第5実施形態と共通する部分については、図中では同じ符号を付すこととする。
なお、図5(b)は、理解を容易にするため、血管狭窄モデル61の長さ方向と幅方向の縮尺を変更し、血管狭窄モデル61の全体を模式的に図示しているため、全体の寸法は実際とは異なる。
【0065】
図5(b)は血管狭窄モデル61の斜投影図である。図5(b)に図示されているように、第6実施形態の血管狭窄モデル61は、保持型の第1の部位61Aと第2の部位61Bとが3次元的に接合していることから、接合面である境界線15が高さ方向を有する3次元形状を有している点、境界線15が3次元形状を有しているころから、溝部32の溝経路部323は、血管病変モデル61の手前から、下底部331、上下部332、上底部333を通る3次元の形状を有している点で第5実施形態の血管狭窄モデル51とは異なっている。
【0066】
また、溝部32は、前述したように、血管病変モデル61の手前から、下底部331、上下部332、上底部333を通る3次元の形状を有している。ここで、境界線15との関係を述べれば、下底部331及び上底部332では、溝部32は境界線15よりも上方向(即ち、第2の部位(下型)61Bの底面から第1の部位(上型)61Aを見た方向)に位置している。なお、上下部332に対しても、溝部32は、境界線15よりも上方向に位置しているが、この際の上方向とは、境界線15に対して、斜投影図で記載した血管病変モデル61の手前方向である。溝部32が境界線15に対して上方向に位置しているので、保持型の外部から狭窄モデルを見た際の視認性を向上させることができ、延いては、PCIの訓練の精度を向上させることができる。
【0067】
このように接合面を示す境界線15が高さ方向(上下部332)を有することで、溝部32の溝経路部323が下底部331、上下部332、上底部333を通る3次元形状となる為、より複雑なPCIの訓練を行うことができ、延いては、PCIの訓練の精度を大幅に向上させることができる。さらに、この3次元形状の溝経路部323によって、第2実施形態の血管狭窄モデル21の溝部22の溝湾曲部224を設けた時と同じ効果を発揮することができる。即ち、狭窄モデル内にガイドワイヤ等の医療機器を挿入した際に、溝部32に設けられている狭窄モデルが出口方向に押された状態になったとしても、3次元形状の溝経路部323が、血管狭窄モデル21の溝部22の溝湾曲部224と同様にストッパーとして機能するので、狭窄モデルを保持型内にさらに安定して配置することができ、延いては、PCIの訓練の精度をさらに向上させることができる。
【0068】
また、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想内において、当業者による種々の変更が可能である。
【0069】
例えば、第1〜第6実施形態の血管狭窄モデルにおいて、第1の部位(上型)の縁部分を第2の部位(下型)と接触している面を除き、全て曲面に形成しても良い。これにより、保持型の上方向(第1の部位から第2の部位を見た方向)から狭窄部モデルを視認した際に、溝部の視界に第1の部位の縁部分が重なることがないので、狭窄部モデルの視認性をさらに向上させることができ、延いては、PCIの訓練の精度をさらに向上させることができる。
【0070】
また、第6実施形態の血管狭窄モデル61の溝部32の溝経路部323に、溝湾曲部を設けることもできる。これにより、3次元形状と溝湾曲部とを形成した溝経路部323が、ストッパーとして機能して、狭窄モデルを保持型内にさらに安定して配置することができ、且つ、溝経路部323がより複雑になり、複雑な狭窄モデルの訓練を行うことができることから、PCIの訓練の精度をさらに向上させることができる。
【符号の説明】
【0071】
1、11、21、31、41、51、61 血管病変モデル
1A、11A、21A、31A、41A、51A、61A 第1の部位(下型)
1B、11B、21B、31B、41B、51B、61B 第2の部位(下型)
2、12、22、32 溝部
221 拡大開口部
222、322 形状遷移部
223、323 溝経路部
5、15 境界線
9、19 固定孔
331 下底部
332 上下部
333 上底部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
狭窄部モデルと、
前記狭窄部モデルを保持可能にする少なくとも1本の溝部を有した透明な保持型と、を備え、
前記保持型は、第1の部位と第2の部位とに分離可能であり、
前記保持型の溝部は、前記保持型の縦断面視において、前記第1の部位と前記第2の部位との境界線に対して、上方向または下方向のどちらか一方向に位置している、血管狭窄モデル。
【請求項2】
請求項1に記載の血管狭窄モデルにおいて、前記溝部の横断面視における形状は、半円形状である、血管狭窄モデル。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の血管狭窄モデルにおいて、前記溝部の入口付近は、出口方向から入口方向に向って、より大きく開口している、血管狭窄モデル。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の血管狭窄モデルにおいて、前記保持型は、横断面視において、扇形形状を有している、血管狭窄モデル。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の血管狭窄モデルにおいて、前記保持型は、横断面視において、半円形状を有している、血管狭窄モデル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−25032(P2013−25032A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159096(P2011−159096)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(390030731)朝日インテック株式会社 (140)
【Fターム(参考)】