説明

血管穴閉鎖器具

【課題】血管壁の孔を迅速且つ効果的に閉鎖する器具を提供する。
【解決手段】血管壁の孔の閉鎖器具(10)は、長手方向軸線を有すると共に孔の内部開口に当てて血管内に位置決め可能である被覆部材(40)を有し、この被覆部材は、孔を通る流体の流出を阻止する寸法を有すると共に第1の開口部を有する。第1のリテーナ(20)が血管の外部に位置決め可能である。柔軟性連結部材(30)が被覆部材と第1のリテーナを作動的に連結し、被覆部材の第1の開口部は、連結部材の運動を制限するよう構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管用器具、特に血管壁に生じた開口又は穴を閉鎖する器具に関する。
【0002】
〔関連出願の説明〕
本願は、2009年9月11日に出願された米国特許仮出願第61/241,555号の優先権主張出願であると共に2009年1月23日に出願された米国特許出願第12/358,411号の一部継続出願であり、この一部継続出願は、2008年2月15日に出願された米国特許仮出願第61/066,072号の優先権主張出願である。これら出願の各々を参照により引用し、その記載内容全体を本明細書の一部とする。
【背景技術】
【0003】
或る特定の形式の血管手術の際、皮膚及びその下に位置する組織に設けた切開創を通ってカテーテルを挿入して患者の脚中の大腿動脈に接近する。次に、大腿動脈の壁に設けた接近開口を通ってカテーテルを挿入し、この動脈を通って手術手技、例えば血管形成術又はプラーク除去を実施するための所望の部位までカテーテルを案内する。手術手技が完了し、カテーテルを患者から抜去した後、接近穴を閉鎖しなければならない。これは、動脈からの多量の血液の流れによるだけでなく大腿動脈に達するよう穿通しなければならない組織の多くの層が存在するので極めて困難である。
【0004】
大腿動脈接近穴を閉鎖するために今日まで数種類の方式が用いられている。一方式では、手を使って穿通部位を手動で圧迫することは、血液が凝固するまで砂袋又は体重により補強される。この方式では、血管穴が閉じると共に患者が歩き回ることができるようになるのに最高6時間を要する場合がある。この効率の悪さにより、手術手技時間並びに手技の全体的費用が増大する。というのは、病院スタッフは、圧迫状態を物理的に維持しなければならず、しかも歩き回ることができないために患者の退院が遅れるからである。
【0005】
血管の穿通部位を閉鎖する別の方式では、クランプを手術台及び患者の脚に取り付ける。クランプは、圧力を血管開口に及ぼす。しかしながら、患者は、血液が凝固していることを確かめるために依然としてモニタされなければならず、病院スタッフの追加の時間が必要になると共に手技の費用が増大する。
【0006】
手動圧迫方式の上述の欠点を回避するために、縫合器具が開発された。かかる縫合器具の1つ(アボット(Abbott)社によって市販されている)は、針を血管壁開口に隣接して前進させ、縫合糸材料を開口に隣接して位置する壁を通って外方に引っ張る。次に、外科医は、縫合糸に結び目を作り、開口を閉鎖する。かかる手技に関連した問題の1つは、針を配備し、縫合糸を捕捉し、縫合糸を引き出し、結び目を作り、そして縫合糸を固定するのに外科医により必要とされるステップの数が多いことにある。さらに、外科医は、大腿動脈の深さ(皮膚に対する)のために縫合糸を容易には視覚化できず、本質的に、縫合糸結び目を手探りで作り又は予め作られた結び目を定位位置に手探りで滑らせる。加うるに、結び目を作る能力は、外科医によって様々であり、従って、穴の閉鎖の成功率及び精度は、外科医の腕前で左右される場合がある。この縫合器具の更に別の欠点は、血管開口が器具の挿入のために広げられ、かくして閉鎖システムの運搬に失敗した場合、閉鎖すべき大きな開口が作られる。また、針を石灰化した血管に通すのは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4,744,364号明細書
【特許文献2】米国特許第5,545,178号明細書
【特許文献3】米国特許第7,662,161号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
米国特許第4,744,364号明細書は、拡張可能な閉鎖部材を引っ張ってこれを血管壁に当てるためのフィラメントを備えた拡張可能な閉鎖部材を有する器具の形態をしている血管穿通部を密封する別の方式を開示している。閉鎖部材は、フィラメントを定位位置に保持するために皮膚上に置かれたストリップ状テープによって定位置に保持される。しかしながら、閉鎖器具は、穿通部を通る漏れを生じさせる場合のある動きを依然として生じる。加うるに、縫合糸が弛んだ状態になった場合、閉鎖部材は、保持されず、血管中で下流側に流れる場合がある。さらに、縫合糸は、皮膚を貫通しているので、潜在的な感染経路が作られる。米国特許第5,545,178号明細書に記載された閉鎖器具は、穿通路内に配置された再吸収可能なコラーゲンフォームプラグを有する。しかしながら、凝固するには、一般に、最高20分要し、血液は、プラグと組織路との間に漏れ込む場合があるので、コラーゲンプラグが路内で拡張するまで所与の期間にわたり手動圧力を穿通部に加えなければならない。
【0009】
したがって、血管壁に生じた開口(穿通部)を迅速且つ効果的に閉鎖する器具を提供すれば有利である。かかる器具は、有利には、手動圧力を開口に加える上での上述の時間及び費用が高く付くのを回避し、開口を閉鎖するのに必要なステップを単純化し、開口の広がりを回避し、そして閉鎖器具を血管内に効果的に保持する。
【0010】
共通譲受人の米国特許第7,662,161号明細書は、上述の利点を備えた効果的な血管穴閉鎖器具を開示している。種々の組織厚さに対応するよう調節でき、組織厚さとは関係なく器具の血管内コンポーネントと血管外コンポーネントの間に一定のクランプ/保持力を加える血管穴閉鎖器具を提供すれば更に有利である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、先行技術の欠点及び欠陥を解決する。本発明は、血管壁の孔を閉鎖する器具であって、孔が、血管壁の外部領域に生じた外部開口及び血管壁の内部領域に生じた内部開口を有する閉鎖器具を提供する。この閉鎖器具は、孔の内部開口に当てて血管の内側に位置決め可能な被覆部材を有し、被覆部材は、孔を通る流体の流出を阻止する寸法を備え、被覆部材は、第1の開口部を有する。第1のリテーナが血管の外側に位置決め可能である。柔軟性連結部材が被覆部材と第1のリテーナを作動的に連結し、連結部材は、第1のリテーナを被覆部材に向かって前進させる。被覆部材の第1の開口部は、連結部材の運動を制限するよう構成されている。
【0012】
好ましくは、連結部材は、第1の縫合糸から成り、第1のリテーナは、縫合糸に取り付けられ、第1の縫合糸を引くことにより、第1のリテーナは、被覆部材に向かって動く。
【0013】
この閉鎖器具は、第2のリテーナを更に有するのが良く、この第2のリテーナは、これに取り付けられた第2の縫合糸を引くことにより被覆部材に向かって動くことができる。被覆部材は、第2の縫合糸の運動を制限するよう構成された第2の開口部を有するのが良い。好ましい実施形態では、第1及び第2のリテーナは、球形である。
【0014】
好ましい実施形態では、第1及び第2のリテーナ並びに第1及び第2の縫合糸は、再吸収性材料で構成される。
【0015】
好ましい実施形態では、第1及び第2のリテーナは、配備位置において実質的に並置した関係をなして位置決めされ、運搬位置では、積み重ね関係をなして位置決めされる。
【0016】
一実施形態では、被覆部材の第1の開口部は、連結部材に摩擦係合する寸法を有する。別の実施形態では、開口部は、連結部材を保持するための複数の歯を有する。
【0017】
被覆部材は、好ましくは、運搬のための長手方向配向状態と配置のための横断方向位置との間で回動可能である。
【0018】
閉鎖器具は、第1の縫合糸の非制限運動を可能にする第3の開口部及び第2の縫合糸の非制限運動を可能にする第4の開口部を更に有するのが良い。
【0019】
別の観点では、本発明は、血管壁の孔を閉鎖する方法であって、孔が血管壁の外部領域に生じた外部開口及び血管壁の内部領域に生じた内部開口を有する閉鎖方法を提供する。この方法は、血管の内側に被覆部材を挿入してこれを孔の内部開口に当てるステップを有し、被覆部材は、孔を通る流体の流出を阻止する寸法を有し、被覆部材から連結部材が延びており、
第1のリテーナを血管の外部に挿入するステップを有し、
連結部材の運動に対する抵抗に打ち勝つのに十分な力を加えて第1のリテーナを被覆部材に向かって前進させるステップを有する。
【0020】
一実施形態では、第1のリテーナを前進させるステップは、被覆部材に設けられていて、縫合糸の外径と実質的に同一の直径を有する開口部を通って第1のリテーナに取り付けられている縫合糸を動かすステップから成る。この方法は、好ましくは、第2のリテーナを血管の外部に挿入するステップ及び第2のリテーナに連結されている第2の縫合糸を引くことにより第2のリテーナを被覆部材に向かって前進させるステップを有する。
【0021】
一実施形態では、第1のリテーナを前進させるステップは、縫合糸の外面に係合可能な複数の歯を備えた開口部を通って第1のリテーナに取り付けられている第1の縫合糸を動かすステップから成る。別の実施形態では、第1のリテーナを前進させるステップは、第1のリテーナに取り付けられている第1の縫合糸を被覆部材に設けられている隆起部相互間に動かすステップから成る。
【0022】
図面を参照して本発明の好ましい実施形態を以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の閉鎖器具の第1の実施形態の斜視図である。
【図2】運搬シース内に設けられた状態で示された図1の閉鎖器具の被覆(閉鎖部)部材の側面側斜視図である。
【図3】運搬シースから配備された図2の被覆部材を示す側面側斜視図である。
【図4】シースから配備された閉鎖器具の球形リテーナのうちの1つを示す側面図(血管壁が断面で示されている)である。
【図5】シースから配備された両方の球形リテーナを示す図である。
【図6】血管壁の外面に当てて並置関係をなして位置決め可能に球形リテーナを被覆部材に向かって動かすよう引かれた縫合糸を示す図である。
【図7】リテーナを配備位置で示す斜視図である。
【図8】本発明の閉鎖器具の変形実施形態の被覆部材及び縫合糸の斜視図であり、ループ状縫合糸を介して被覆部材に取り付けられた縫合糸を示す図である。
【図9】配備位置にあるリテーナの別の配向状態を示す斜視図である。
【図10】本発明の閉鎖器具の別の実施形態の斜視図である。
【図11】図10の閉鎖器具の挿入ステップを概略的に示す図(運搬シースは、分かりやすくするために示されていない)であり、リテーナチューブの遠位側に位置する被覆部材及びリテーナチューブ内に設けられたリテーナを示す図である。
【図12】図10の閉鎖器具の挿入ステップを概略的に示す図(運搬シースは、分かりやすくするために示されていない)であり、リテーナチューブから送り進められたリテーナを示す図である。
【図13A】図10の閉鎖器具の挿入ステップを概略的に示す図(運搬シースは、分かりやすくするために示されていない)であり、被覆部材に向かって送り進められている第1のリテーナを示す図である。
【図13B】図10の閉鎖器具の挿入ステップを概略的に示す図(運搬シースは、分かりやすくするために示されていない)であり、被覆部材に向かって更に送り進められている第1のリテーナを示す図である。
【図13C】図10の閉鎖器具の挿入ステップを概略的に示す図(運搬シースは、分かりやすくするために示されていない)であり、被覆部材に向かって送り進められている第2のリテーナを示す図である。
【図14】本発明の閉鎖器具の更に別の変形実施形態の斜視図である。
【図15】図14の15−15線矢視断面図である。
【図16】図14の被覆部材の底面図である。
【図17】図14の被覆部材の一部分の平面図であり、分かりやすくするために縫合糸が省かれている状態を示す図である。
【図18】図17の18−18線矢視断面図である。
【図19】本発明の閉鎖器具の更に別の変形実施形態の斜視図である。
【図20】図19の球形リテーナ及び縫合糸の分解組立て図である。
【図21】図19の21−21線矢視断面図である。
【図22】本発明の変形実施形態の被覆部材の一領域の断面図である。
【図23】図22に示されている細部の領域の拡大図である。
【図24】被覆部材プラグが被覆部材から分離された状態で示された閉鎖器具の別の変形実施形態の斜視図である。
【図25】図24の組み立て状態の閉鎖部材の斜視図である。
【図26】変形実施形態の被覆部材の一領域の平面図である。
【図27】別の変形実施形態の被覆部材の一領域の底面図である。
【図28】本発明の閉鎖器具の変形実施形態の斜視図である。
【図29】図28の閉鎖器具の側面図である。
【図30】図28の閉鎖器具の底面図である。
【図31】図28の閉鎖器具の被覆部材の断面図である。
【図32】リテーナ及び縫合糸の取り付け方法を示す断面図である。
【図33】リテーナ及び縫合糸の別の取り付け方法を示す断面図である。
【図34】リテーナ及び縫合糸の更に別の取り付け方法を示す断面図である。
【図35】図34のリテーナ/縫合糸取り付け方法を利用した本発明の閉鎖器具の別の変形実施形態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、図面(幾つかの図に関し、同一の参照符号は、類似の又は同一のコンポーネントを示している)を詳細に参照すると、図1は、本発明の血管用穴(孔)閉鎖器具の第1の実施形態の斜視図である。この器具は、典型的には、血管形成術又は他のインターベンション手技を実施するために血管壁を通って血管管腔内に先に挿入されたカテーテルの抜去後に作られた血管壁の孔を閉鎖するようになっている。孔は、患者の皮膚及びその下に位置する組織を通り、血管の外壁を通り、血管の壁を通り、そして血管の内壁を通って延びて血管の内部管腔と連通している。本発明の閉鎖器具は、血液の流れを遮断する血管内コンポーネント及び血管内コンポーネントを保持する血管外コンポーネントを有している。
【0025】
具体的に説明すると、閉鎖器具は、血液の流れを遮断するよう血管の内壁に当てて血管内に位置決めされる被覆部材又はパッチ及び被覆部材をその遮断位置に保持するよう血管壁の外部に位置決めされた2つのリテーナを有する。(リテーナは、好ましくは、形態が球形であり、縫合糸に固定的に取り付けられており、その結果、縫合糸を引くと、取り付け状態のリテーナは、被覆部材に向かって前進して最終的にリテーナを血管壁の外面に当てて又は隣接して並置関係をなして位置決めするようになっている。)
【0026】
図1〜図7を参照すると、本発明の閉鎖器具の第1の実施形態が示されている。穴(孔)閉鎖器具10は、被覆(遮断)部材又はパッチ40並びに第1のリテーナ20及び第2のリテーナ22を有している。第1及び第2のリテーナ20,22は、好ましくは、球又はボールの形態をしている。被覆部材40は、血管の内壁に当って血管孔の内側で血管内に位置するような寸法形状になっており、リテーナ20,22は、血管孔の外側に隣接して又はこれと境を接して血管壁の外側に位置決めされるよう構成されている。
【0027】
好ましくは、図示のように形態が細長い被覆部材40は、血管用の運搬のための長手方向位置で運搬シース(デリバリシース)内に保持され、次に、血管孔を内側で被覆又はパッチング(あて物を当てるようにして塞ぐこと)するよう配向可能に血管管腔内において横断方向位置に(実質的に孔を通って延びる軸線に垂直に)回動する。この動きは、米国特許第7,662,161号明細書の図37A〜図37Dに示されており、この米国特許を参照により引用し、その記載内容全体を本明細書の一部とする(なお、以下、この特許文献を第´161号特許明細書という)。また、図2と図5の比較により、被覆部材の回動状態が示されている。
【0028】
球形リテーナは、好ましくは、リテーナ22(222)がリテーナ20(220)の上に位置した状態で(又はこの逆の関係が成り立つ)運搬チューブ内に積み重ね関係をなして(例えば図11参照)保持される。
【0029】
細長い被覆部材40は、血液の流出を阻止するよう血管壁の内部開口を被覆(パッチング)するよう機能する。図1及び図4を参照すると、被覆部材40は、好ましくは、幾分長円形の形をしており、細長い実質的に互いに平行な側壁42a,42b及び側壁42a,42bにつながる端壁44a,44bを備えている。被覆部材の他の形状も又想定される。端壁44a,44bは、実質的に真っ直ぐな壁部分又は湾曲した壁部分を有するのが良い。被覆部材は、好ましくは、第1及び第2の端領域45,47よりも中央領域の方に厚肉領域43を有している。他の寸法形状も又想定される。
【0030】
被覆部材40の長手方向軸線は、長さ方向寸法を定め、横断方向軸線は、これよりも短い幅方向寸法を定める。被覆部材40の幅方向寸法は、好ましくは、6フレンチ(F)器具の場合、約2.5mm〜約3.5mm、より好ましくは約3.3mmである。他の寸法も又想定される。この幅は、好ましくは、血管壁の内部開口を効果的に覆うよう血管壁の内部開口の寸法に少なくとも実質的に等しい。好ましい実施形態では、被覆部材40は、長さが約7.5mm〜約9mm(6フレンチシステムの場合)、好ましくは約8mmである。
【0031】
理解されるべきこととして、変形例として、被覆部材は、第´161号特許明細書の図1の実施形態に示されているような拡大幅領域を備えても良い。被覆部材は又、被覆部材を角度をなして引っ張っているときに孔の拡幅に対応するようオフセンタ状態になるよう非対称に形作られていても良い。被覆部材は又、第`161号特許明細書の図9B〜図9Eの場合と同様、広幅領域に隣接した細幅領域を備えたパドルの形に形作られていても良い。第´161号特許明細書に開示された形態を含む他の形態の被覆部材を本発明のリテーナに利用することができる。
【0032】
細長い被覆部材は、例えばポリカーボネート又はポリウレタンのような材料で構成されるのが良い。好ましくは、この被覆部材は、所与の期間の経過後に体内に再吸収される再吸収性材料、例えば、ラクチド/グリコリドコポリマーで構成される。再吸収性材料で構成される場合、被覆部材は、オプションとして、漸変再吸収性の領域を有するのが良い。再吸収性の漸変は、例えば、様々な再吸収性特性を備えた異種材料を利用することにより又は被覆部材の重量を変化させることにより(重量の増大により、再吸収時間が延びる)達成できる。
【0033】
球形リテーナ20,22は、好ましくは、再吸収性材料で構成される。好ましい実施形態では、各リテーナ20,22の直径は、約0.090インチ(2.286mm)〜約0.095インチ(2.413mm)であるが、他の寸法も又想定される。球として図示されているが、他の丸い形状も又想定される。リテーナは、変形例として、非吸収性ポリマー又は金属材料で作られても良い。
【0034】
リテーナ20,22が運搬器具から放出されると、これらリテーナは、被覆部材40から一段と間隔を置いて維持する。リテーナは、この場合、被覆部材40に向かって送りせしめられるよう構成されている。具体的に説明すると、各リテーナ20,22は、それぞれの柔軟性連結部材、例えば縫合糸30,32に固着されている。縫合糸30,32は、好ましくは、ポリマー材料で作られ、好ましくは再吸収性であり、例えばポリジオキサノム(polydioxanome)のような材料で構成されている。また、変形例として、金属材料を利用しても良いことが想定される。縫合糸、リテーナ及び被覆部材は、同種又は異種再吸収性材料で構成できると共に/或いは同一又は互いに異なる再吸収時間を示しても良い。
【0035】
図示のように、縫合糸30は、自由端部30a及び成形、接着、結び目の形成又は他の方法によってリテーナ20に固定された反対側の端部30bを有している。同様に、縫合糸32は、自由端部32a及び上述の方法のうちの任意のものでリテーナ22に固定された反対側の端部32bを有している。縫合糸は、図1の実施形態では、被覆部材を通ってループ状になった状態で示されている。他の取り付け方法も又想定される。例えば、図8の変形実施形態では、縫合糸150,152は、縫合糸のループ160によって被覆部材140に取り付けられている。ループ160は、被覆部材140から上方に(近位側に)延び、縫合糸150,152は、縫合糸ループ160を通ってループ状になっている。縫合糸160を種々の方法、例えばインサート成形によって又は被覆部材の下で縫合糸に結び目を作ることによって被覆部材140に取り付けることができる。図24に示されている別の変形実施形態では、縫合糸180,182は、プラグ190にインサート成形される。被覆部材192は、プラグ190を受け入れる凹部194を有している。製造中、プラグ190を凹部194内にくさび止めし、ぴったりとした摩擦嵌め状態を作る。プラグ190は、好ましくは、被覆部材192の遠位側の表面195と面一をなす。球形リテーナは、参照符号187,188によって示されており、好ましくは、リテーナ20,22と同一であり、被覆部材192の近位側の表面197の近くの前進位置で示されている。 リテーナ20,22を血管壁(及び被覆部材)に向かって前進させるため、各縫合糸の自由端部を近位側に(図4の矢印の方向に)引き、それにより、それぞれのリテーナを反対側の方向に動かして孔A及び血管壁Wの近くに至らせる。いったん組織に締め付けられると、十分に大きな保持力が維持され、即ち、近位側への引張り力が被覆部材40に加えられて被覆部材を僅かに近位側に引いてこれを血管壁に押し付ける。したがって、リテーナ20,22は、被覆部材40が血管壁から分離するのを(例えば、反対側の血管壁に向かう方向に動くのを)阻止するのに役立ち、かかる分離は、血液の流れを可能にするよう被覆部材40と血管開口との間に望ましくない隙間を生じさせる場合がある。リテーナ20,22が血管壁に向かって動く程度(及びかくしてリテーナの最終配備位置での血管壁からのこれらリテーナの距離)は、組織の厚さで決まることになろう。かくして、閉鎖器具は、互いに異なる組織の厚さに合わせて調節可能であり、組織の厚さとは無関係に、一定の保持力を及ぼすことができる。本明細書において開示する他の実施形態のリテーナは、同様な仕方で機能する。
【0036】
閉鎖器具を挿入する運搬器具は、皮膚の開口を通って延び、組織路を通って血管に至り、血管壁の外部開口を通って延び、血管壁の孔を通って延び、そして血管壁の内側で内部開口を通って血管管腔内に延びる。
【0037】
図2の被覆部材40は、リテーナチューブ50の外部に位置すると共に傾動(回動)位置では、運搬シース60内に位置する。被覆部材40は、シース60から出て、シースの長手方向軸線と整列し又は好ましい実施形態では、これと実質的に整列した状態で傾動位置から血管内の横断方向位置(図3を参照)に動く。(血管壁は、図3に示されているが、血管の残部及び組織は、分かりやすくするために省かれていることに注目されたい。)リテーナ20,22は、チューブ50内に位置したままである。被覆部材40を側壁又は頂壁に接触するプッシャ(図示せず)によって突き出し可能であることに注目されたい。本明細書において開示する他の実施形態のリテーナ/被覆部材は、リテーナ20,22及び被覆部材40の仕方とほぼ同じ仕方で運搬可能である。
【0038】
図4に示されているように、被覆部材40は、近位側に引かれて血管Wの内側で内部開口に当接してこの開口を被覆(パッチング)し、縫合糸は、血管壁の開口Aを貫通して延びる。第1のリテーナ20は、リテーナを前進させるか、被覆部材と血管壁の係合によって反力を加えた後にシースを引っ込めるか、或いは、これら両方の相対運動によって図4では運搬シース60から突き出された状態で示されている。第2のリテーナ22は、依然としてチューブ50内に位置している。次に、第2のリテーナ22をリテーナ20とほぼ同じ仕方で配備し、この第2のリテーナは、図5では、シース60の外部に位置した状態で示されている。運搬位置では、リテーナ20,22は、好ましくは、運搬システムの横断方向寸法を最小限に抑えるために積み重ね関係をなしている(例えば図11に示されているように)。
【0039】
次に、血管壁を通る血液の流れを遮断するよう被覆部材40を血管壁に当てて定位置に保持するため、縫合糸30,32をこれらの自由端部30a,32aから図6の矢印Bの方向に近位側に引っ張り、それによりリテーナ20,22を血管壁W及び被覆部材40に向かって矢印Cの方向に遠位側に前進させる。図示のように、リテーナ20,22を血管壁と境を接した位置まで動かすのが良く、或いは、組織厚さに応じて、リテーナ20,22は、幾分かの組織がリテーナと血管壁との間に介在した状態で血管壁に隣接して定置しても良い。リテーナ20,22は、この位置では、近位側への力を細長い被覆部材40に加えて血管内への被覆部材の運動を制限する。リテーナは、この配備位置では、好ましくは、図7に示されているように実質的に並置関係をなしている。
【0040】
図7に示されているように、並置関係にある状態では、リテーナ20,22は、被覆部材40に対して横断方向の配向状態で横に並んで位置している。すなわち、これらリテーナは、被覆部材40の幅に沿って位置決めされる。しかしながら、リテーナは、配備位置では、図9に示されているように、長さ方向の配向状態にあっても良い(被覆部材の長手方向軸線に実質的に平行であっても良い)ことが想定され、図9では、図7に対応したコンポーネントは、プライム記号を備えている(例えば、リテーナ20′,22′、縫合糸30′,32′、被覆部材40′)。リテーナは又、長手方向軸線に対して角度をなした状態で他の並置関係をなしていても良い。変形例として、リテーナは、配備位置では、部分的に積み重ね状態であっても良い。
【0041】
図10は、参照符号200で示された閉鎖器具の変形実施形態を示している。閉鎖器具は、縫合糸を保持するよう縫合糸の端部のところに作られた結び目を除き、図1の閉鎖器具と実質的に同一である。具体的に説明すると、縫合糸232は、自由端部232a及び球形リテーナ222を保持する結び目236を備えた結び目付き端部232bを有している。同様に、縫合糸240は、自由端部240a及び球形リテーナ220を保持するための結び目246を備えた結び目付き端部240bを有している。縫合糸は、それぞれのリテーナ220,222を貫通して延びるボアと摩擦係合関係をなして保持されている。被覆部材290は、図1の被覆部材40と実質的に同一であり、縫合糸が図1の場合と同様ループ(図示せず)によって被覆部材に取り付けられている。縫合糸の自由端部240a,232aを引くと、それぞれの球形リテーナ220,222は、被覆部材240に向かって送り進められる。というのは、結び目246,236がそれぞれの球形リテーナ220,222の近位端部に当接するからである。かくして、結び目は、リテーナ220,222の取付けを助ける。
【0042】
図11〜図13Cは、本明細書において説明する閉鎖器具の配置を可能にするよう利用できる運搬システムを概略的に示すと共に、一例として図10の閉鎖器具を概略的に示している。
【0043】
運搬器具は、運搬シース(図示せず)内に位置決めされたリテーナチューブ350を有している。リテーナチューブ350は、閉鎖器具200のリテーナ220,222の通過を可能にするルーメン354と連通した遠位側開口部352を有している。また、プッシャチューブ360は運搬チューブ350内に配置されており、このプッシャチューブは、好ましくは、縫合糸240,232をそれぞれ受け入れるよう寸法決めされた2つの小径ルーメン(図示せず)を除き、好ましくは中実である。
【0044】
使用にあたり、閉鎖器具のリテーナを収納したリテーナチューブ350を運搬シース(図示せず)内に配置する。リテーナ220,222は、運搬シース内配置されると、ルーメン352内に収納され、被覆部材290は、リテーナチューブ350の外部に位置決めされると共に運搬シースの壁によって長手方向位置に保持される。プッシャチューブ360を前進させてこれを図1の矢印の方向で第2のリテーナ222に当ることにより被覆部材290を運搬シースから血管管腔内に前進させる。運搬位置では、第2のリテーナ222が被覆部材290に当接している第1のリテーナ220に当接するので、プッシャチューブ360の前進により、被覆部材290は、運搬シースから前進する。
【0045】
次に、プッシャチューブ360を一段と遠位側に動かしてリテーナ220,222を図12に示されているようにリテーナチューブ350から前進させる。次に、縫合糸240をその近位端部から矢印の方向に引くことにより第1のリテーナ220を図13A及び図13Bに示されているように被覆部材に向かって前進させる。第1のリテーナ220の配置後、第2の縫合糸232を図13Cの矢印の方向に近位側に引っ張って第2のリテーナ222を被覆部材290に向かって前進させる。次に、縫合糸を切断し、後にはリテーナ220,222及び被覆部材290が定位置に残るようにする。理解されるべきこととして、図11〜図13Cの略図は、分かりやすくするために周囲の組織及び血管部分を省いている。被覆部材290を血管管腔内に位置決めし、球形リテーナ220,222を血管管腔の外部に位置決めする。
【0046】
図14〜図18は、リテーナを被覆部材に連結する連結部材、例えば縫合糸の運動を制限する構成を有する閉鎖器具の変形実施形態を示している。
【0047】
具体的に説明すると、図14の閉鎖器具400は、被覆部材490が第1の対をなす穴494a,494b及び第2の対をなす穴496a,496bを有する点を除き、図10の器具200とほぼ同じである。第1の対をなす穴494a,494bは、縫合糸440を受け入れ、第2の対をなす穴496a,496bは、縫合糸430を受け入れる。穴494a,496aは、穴494b,496bよりも小さな直径を有する。大径の穴494bは、これを通る縫合糸440の自由で且つ制限されない運動を可能にし、従って、球形リテーナ420の利用を容易にするために縫合糸440を受け入れるよう寸法決めされている。同様に、大径の穴496bは、これを通る縫合糸430の自由で且つ制限されない運動を可能にし、従って、球形リテーナ422の利用(運動)を容易にするために縫合糸430を受け入れるよう寸法決めされている。小径の穴496aは、張力が縫合糸430に加えられるよう縫合糸430に摩擦係合するよう寸法決めされている。この穴は、自由端部430aを引っ張ることによって十分な力が加えられた場合穴496aを通って縫合糸430を引くことができるが、かかる所定の力が加えられない場合、縫合糸が開口部496aの壁内に摩擦の作用で嵌り込んだままであって動かないように寸法決めされている。このように、ユーザが自由端部430aを引っ張るのを止めた場合、縫合糸及びかくして球形保持ボール422は、定位置に位置したままであろう。縫合糸440は、同様に作用し、小径の開口部494aは、縫合糸440に摩擦係合し、その運動に抵抗して球形リテーナ420を保持するよう寸法決めされている。図15〜図18は、縫合糸をそれぞれの開口部を通ってどのようにループ状にするかを示している。
【0048】
変形実施形態では、小径の穴内への縫合糸の保持具合を促進するために複数の内歯を設けるのが良い。これは、例えば、図22及び図23に示されており、この場合、穴496a′は、小径の穴の内壁に形成された複数の歯497を有している。縫合糸430′と歯497の係合により、縫合糸430及び球形リテーナが保持される。注目されるべきこととして、歯497を内方に傾斜するよう形成しても良く、その結果、縫合糸430を一方向にのみ、即ち、近位側にのみ動かすことができ、その結果、リテーナを被覆部材に向かって前進させるようになっている。他方の縫合糸及びリテーナを保持するために同様な歯を他方の小径の穴に設けるのが良い。
【0049】
図26の実施形態では、被覆部材520の開口部522は、三角形くさび形の領域523を有している。この領域523は、サイズが減少した開口部を有し、この開口部は、これを貫通して延びる縫合糸530の外径よりも小さな直径まで細くなっている。臨床医は、縫合糸を定位置に保持するために掴み力を縫合糸530に加えることが望ましい場合、縫合糸530を細い(縮径の)領域523内に動かすのが良い。開口部524は、これを通る自由で制限されない運動を可能にするよう縫合糸530の外径よりも大径に寸法決めされている。対をなす開口部のうちの一方だけが図26に示されている被覆部材520の部分に示されており、第2の縫合糸のための第2の同様な対をなす開口部を提供するのが良いことは言うまでもない。他の全ての点において、閉鎖器具は図10の閉鎖器具200又は本明細書において開示する他の器具と同一であるのが良い。
【0050】
図27の実施形態では、縫合糸の保持具合は、被覆部材570の裏面に内方に差し向けられた状態で設けられた隆起部又はバンプ560a,560b,560c,560dにより高められる。すなわち、大径の開口部570及び小径の開口部572を貫通して延びる縫合糸(図示せず)は、対向した隆起部相互間の距離が縫合糸の直径よりも僅かに小さいので隆起部560a,560bによって把持される。十分に大きな張力(例えば臨床医による引っ張り力)は、縫合糸の隆起部560の摩擦力に打ち勝つ。同様に、大径の開口部574及び小径の開口部576を貫通して延びる縫合糸(図示せず)は、隆起部560c,560dによって摩擦の作用で拘束される。縫合糸は、リテーナを被覆部材550に連結し、これら縫合糸は、リテーナを他の実施形態を参照して上述した仕方で被覆部材に向かって前進させるために引っ張られるよう構成されている。隆起部560は、図14の実施形態の場合のように小径摩擦係合の補足手段として又は変形例として被覆部材の2つの対をなす大径の開口部を備えた唯一の保持特徴部として利用できる。
【0051】
図19〜図21は、全体が参照符号600で示された閉鎖器具の変形実施形態を示しており、この閉鎖器具は、横断方向に延びると共に球形リテーナ620,622を互いに接合する縫合糸610を有している。リテーナ620,622を保持するために結び目610a,610bが縫合糸610の各端部に作られている。連結縫合糸630がループ状近位端部632を有し、縫合糸610は、このループ状近位端部を貫通して延びている。このループ632は、縫合糸610を固定するよう引き締められる。ループ状縫合糸630の両端部631,632は、被覆部材640に設けられた第1の開口部641を貫通して延びる。端部632は、縫合糸630を被覆部材640に連結するよう(その直径が開口部641よりも大きいので)結び目633で終端している。他方の端部637は、被覆部材640を貫通してループ状になっており、縫合糸部分635に設けられた開口部642を通って出ている。開口部642,641は、図14の実施形態の大径及び小径の開口部と同様に機能する大径及び小径の開口部であるのが良い。すなわち、これら開口部は、図14の実施形態の場合と同様、自由な運動及び緊密な摩擦係合を可能にするよう構成されるのが良い。
【0052】
縫合糸端部630aを引くことにより、リテーナ620,622は、縫合糸630と横断方向縫合糸610の係合に起因して、一緒になって被覆部材640に向かって前進する。
【0053】
図28〜図31は、全体が参照符号700で示された閉鎖器具の変形実施形態を示している。器具700は、縫合糸とリテーナの取り付け方及び被覆部材の縫合糸用開口部を除き、器具400とほぼ同じである。具体的に説明すると、閉鎖器具700は、第1の縫合糸730及び第2の縫合糸740を有している。好ましくは形態が球形であるリテーナ722が縫合糸730に連結され、好ましくは球形であるリテーナ720が縫合糸740に連結されている。
【0054】
被覆部材790は、第1の対をなす穴794a,794b及び第2の対をなす穴796a,796bを有している。第1の対をなす穴794a,794bは、縫合糸740を受け入れ、第2の対をなす穴796a,796bは、縫合糸730を受け入れる。穴794a,796aは、穴794b,796bよりも小さな直径を有する。大径の穴794bは、これを通る縫合糸740の自由で且つ制限されない運動を可能にし、従って、球形リテーナ720の利用を容易にするために縫合糸740を受け入れるよう寸法決めされている。同様に、大径の穴796bは、これを通る縫合糸730の自由で且つ制限されない運動を可能にし、従って、球形リテーナ722の利用(運動)を容易にするために縫合糸730を受け入れるよう寸法決めされている。
【0055】
小径の穴796aは、張力が縫合糸730に加えられるよう縫合糸730に摩擦係合するよう寸法決めされている。この穴は、自由端部730aを引っ張ることによって十分な力が加えられた場合穴796aを通って縫合糸730を引くことができるが、かかる所定の力が加えられない場合、縫合糸が開口部796aの壁内に摩擦の作用で嵌り込んだままであって動かないように寸法決めされている。図31の断面図に示されているように、穴796aは、縮径領域798に移行する内方に傾斜した壁797及び大径部に移行して戻る外方に傾斜した壁799を有している。傾斜壁797,799は、張力を加えたときの縫合糸730の運動を容易にし、縮径領域798は、縫合糸を摩擦の作用で固定する。穴794aは、穴796aとほぼ同じ形態を有し、かくして、同様な傾斜壁を有している。このように、ユーザが自由端部730aを引っ張るのを止めると、縫合糸730及びかくして球形保持ボール722は、定位置に位置したままであろう。縫合糸740は、同様に作用し、小径の開口部794aは、縫合糸740に摩擦係合し、その運動に抵抗して球形リテーナ720を保持するよう寸法決めされている。
【0056】
図32は、球形リテーナへの縫合糸の一取り付け方法を示している。球形リテーナ720を貫通して貫通穴721が延びている。穴721は、第1の直径をもつ第1の部分721a及び第2のこれよりも大きな直径をもつ第2の部分721bを有している。クリンプ又はビード743が縫合糸740に取り付けられており、それにより部分721aの直径よりも大きな直径が形成されている。かくして、貫通穴721の壁は、球形リテーナ720の運動を止める肩723を形成する。好ましくは、縫合糸の端部741は、球形リテーナ720と実質的に面一をなしている。クリンプ又はビードは、第2の部分721bに摩擦係合するよう相当大きな横断方向寸法のものである。その結果、この摩擦係合により、リテーナ720は、被覆部材790から遠ざかる方向に滑らないようになり、他方、肩723は、リテーナ720が被覆部材790に向かう方向に滑るのを阻止する。リテーナ722及び縫合糸730は、好ましくは、リテーナ722及び縫合糸740と同一の構造及び係合/保持具合を有する。
【0057】
図33の変形実施形態では、縫合糸740′の端部のところには結び目747が作られている。肩723′は、開口部721の部分721a′の直径が結び目747の横断方向寸法よりも小さいので、被覆部材790′から遠ざかるリテーナ720′の運動の停止部となっている。結び目747は、リテーナ720′が被覆部材790から遠ざかる方向に滑るのを阻止するために第2の部分721b′に摩擦係合するのに十分な横断方向寸法のものである。
【0058】
図34及び図35の実施形態では、ループ835を形成する縫合糸834は、一端部のところに結び目837を有している。この縫合糸結び目837は、リテーナを820に形成された穴821の部分821bに摩擦係合する。縮径穴部分721aは、結び目837の運動を止める肩823を形成している。図示のように、縫合糸834のループ状端部835は、縫合糸830を受け入れる。その結果、張力を縫合糸830の端部830aに加えることにより、ループ837が被覆部材890から遠ざかって上方に(図35の向きで見て)引っ張られて球形リテーナ部材822を被覆部材890に向かって前進させる。縫合糸834と同一の第2の縫合糸854が、縫合糸830と同一の仕方で縫合し840を受け入れるループを有している。縫合糸854,840は、これらが球形リテーナ部材820を固定したり移動させたりするよう機能する点を除き、縫合糸834,830とそれぞれ同一である。その結果、縫合糸840の端部840aを近位側に引くと、縫合糸854は、リテーナ820を被覆部材890に向かって引き、この縫合糸854は、縫合糸834と同一の仕方でリテーナ820に設けられている開口部内に嵌った状態で取り付けられている。
【0059】
上述の説明は、多くの細部を含むが、かかる細部は、本発明の範囲を限定するものと解されてはならず、本発明の好ましい実施形態の例示として解されるに過ぎない。当業者であれば、本明細書に添付された特許請求の範囲により特定される開示内容の要旨の範囲及び精神に含まれる他の多くの考えられる変形例を想到するであろう。
【符号の説明】
【0060】
10 穴(孔)閉鎖器具
20,22 リテーナ
30,32 縫合糸
40 被覆(遮断)部材又はパッチ
42a,42b 側壁
43 厚肉領域
44a,44b 端壁
45 端領域
50 リテーナチューブ
60 運搬シース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管壁の孔を閉鎖する器具であって、前記孔が前記血管壁の外部領域に生じた外部開口及び前記血管壁の内部領域に生じた内部開口を有し、前記閉鎖器具は、
前記孔の前記内部開口に当てて前記血管の内側に位置決め可能な被覆部材を有し、前記被覆部材は、前記孔を通る流体の流出を阻止する寸法を備え、前記被覆部材は、第1の開口部を有し、
前記血管の外側に位置決め可能な第1のリテーナを有し、
前記被覆部材と前記第1のリテーナを作動的に連結する柔軟性連結部材を有し、前記連結部材は、前記第1のリテーナを前記被覆部材に向かって前進させ、前記被覆部材の前記第1の開口部は、前記連結部材の運動を制限するよう構成されている、閉鎖器具。
【請求項2】
前記連結部材は、第1の縫合糸から成り、前記第1のリテーナは、前記縫合糸に取り付けられる、請求項1記載の閉鎖器具。
【請求項3】
前記第1の縫合糸を引くことにより、前記第1のリテーナは、前記被覆部材に向かって動く、請求項2記載の閉鎖器具。
【請求項4】
前記第1のリテーナは、形態が球形である、請求項3記載の閉鎖器具。
【請求項5】
前記被覆部材に向かって動くことができる第2のリテーナを更に有する、請求項1記載の閉鎖器具。
【請求項6】
第2の柔軟性連結部材を更に有し、前記第2のリテーナは、前記第2の縫合糸に取り付けられ、前記第2の連結部材を引くと、前記第2のリテーナは、前記被覆部材に向かって前進し、前記被覆部材は、前記連結部材の運動を制限するよう構成された第2の開口部を有する、請求項5記載の閉鎖器具。
【請求項7】
第2のリテーナは、形態が球形である、請求項6記載の閉鎖器具。
【請求項8】
前記被覆部材は、ポリマー材料で構成されている、請求項1記載の閉鎖器具。
【請求項9】
前記被覆部材及び前記第1のリテーナは、再吸収性材料で構成されている、請求項1記載の閉鎖器具。
【請求項10】
第2の縫合糸及び前記第2の縫合糸に取り付け可能な第2のリテーナを更に有し、前記第2の縫合糸は、前記第2のリテーナを前記被覆部材に向かって前進させる、請求項2記載の閉鎖器具。
【請求項11】
前記第1及び前記第2のリテーナは、配備位置において実質的に並置した関係をなして位置決めされ、運搬位置では、積み重ね関係をなして位置決めされる、請求項10記載の閉鎖器具。
【請求項12】
前記第1及び前記第2のリテーナは、前記配備位置において前記被覆部材に対して横断方向配向状態にある、請求項10記載の閉鎖器具。
【請求項13】
前記第1及び前記第2のリテーナ並びに前記第1及び前記第2の縫合糸は、再吸収性材料で構成されている、請求項10記載の閉鎖器具。
【請求項14】
前記被覆部材の前記第1の開口部は、前記連結部材に摩擦係合する寸法を有する、請求項1記載の閉鎖器具。
【請求項15】
前記被覆部材は、運搬のための長手方向配向状態と配置のための横断方向位置との間で回動可能である、請求項1記載の閉鎖器具。
【請求項16】
前記被覆部材に設けられていて、前記第1の縫合糸の非制限運動を可能にする第3の開口部及び前記被覆部材に設けられていて、前記第2の縫合糸の非制限運動を可能にする第4の開口部を更に有する、請求項10記載の閉鎖器具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13A】
image rotate

【図13B】
image rotate

【図13C】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate

【図33】
image rotate

【図34】
image rotate

【図35】
image rotate


【公開番号】特開2011−56263(P2011−56263A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−203129(P2010−203129)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(505301837)レックス メディカル リミテッド パートナーシップ (22)
【Fターム(参考)】