説明

血管閉塞傷害の予防または治療方法

本発明は、哺乳類の対象における心虚血再還流傷害を予防または治療する方法を提供する。本方法は、有効量の芳香族カチオン性ペプチドを、それを必要とする対象に投与することを含み、このペプチドは、D−Arg−2 6−Dmt−Lys−Phe−NH2(SS−31)である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2009年12月31日出願の米国特許仮出願第61/291,699号、および2010年7月9日出願の米国特許仮出願第61/363,138号の優先権を主張し、それらの全内容は、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本技術は、概して、血管閉塞傷害を予防または治療するための組成物および方法に関する。特に、本技術の実施形態は、哺乳類の対象における急性心筋梗塞傷害を予防または治療するために、有効量の芳香族カチオン性ペプチドを投与することに関する。
【背景技術】
【0003】
以下の説明は、読者の理解を助けるために提供される。提供された情報または引用された参考文献のいずれも、本発明の先行技術であると容認するものではない。
【0004】
血管閉塞は、罹患した血管内の血流を増加させることによって、一般的に治療される。血管壁上のプラークまたは他の物質の蓄積によって引き起こされた、患者の狭窄または閉塞された血管を開通させるために、数年の間に多様な外科的および非外科的介入治療が開発されている。通常、かかる治療は、通常カテーテルを介する動脈管腔内への介入デバイスの経皮的導入を伴う。これらの血行再建術は、バルーン、血管内ナイフ(冠状動脈粥腫切除術)、および血管内ドリル等のデバイスを伴う。外科的アプローチは、有意な罹患率およびさらには死亡率を伴い、一方血管形成タイプのプロセスは、多くの場合において、狭窄の再発を合併する。
【0005】
虚血組織への血流回復により、さらなる合併症が生じる。この現象は、一般的に再かん流傷害と称され、虚血よりも組織により多くの損傷を与える場合がある。特に、典型的に血管によって虚血組織領域に運ばれる酸素および栄養素の欠乏は、循環の回復が、正常機能の回復ではなく、炎症および酸化的損傷をもたらすという状態を引き起こす。この新たな酸素供給が細胞内で形成され、細胞内タンパク質、DNA、および細胞膜に損傷を与える可能性がある。これは、ひいてはさらなる細胞損傷をもたらす、付加的なフリーラジカルの放出を引き起こす場合がある。
【発明の概要】
【0006】
本技術は、概して、治療的に有効量の芳香族カチオン性ペプチドを、それを必要とする対象へ投与することによる、哺乳類における血管閉塞傷害の治療または予防に関する。本技術はまた、治療的に有効量の芳香族カチオン性ペプチドを、それを必要とする対象へ投与することによる、哺乳類における心臓血管閉塞傷害の治療または予防に関する。
【0007】
一態様では、本開示は、(a)対象に、治療的有効量の芳香族カチオン性ペプチドまたはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、血管閉塞傷害を治療または予防する方法、および(b)対象に、血行再建術を実施することを提供する。いくつかの実施形態では、芳香族カチオン性ペプチドは、
少なくとも1個の正味の正電荷と、
最小で4個のアミノ酸と、
最大で約20個のアミノ酸と、
正味の正電荷の最低数(pm)とアミノ酸残基の総数(r)との間において、3pmは、r+1以下である最大数である関係、および芳香族基の最低数(a)と正味の正電荷の総数(pt)との間において、2aは、pt+1以下である最大数であり、aが1であるとき、ptも1であってよい関係と、を有するペプチドである。特定の実施形態では、哺乳類の対象は、ヒトである。
【0008】
一実施形態では、2pmは、r+1以下である最大数であり、aはptと同じであり得る。芳香族カチオン性ペプチドは、最小で2個、または最小で3個の正荷電を有する、水溶性ペプチドであり得る。
【0009】
一実施形態では、ペプチドは、1個または複数個の天然に存在しないアミノ酸、例えば、1個または複数個のD−アミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、C末端におけるアミノ酸のC末端カルボキシル基は、アミド化される。ある実施形態では、ペプチドは、最小で4個のアミノ酸を有する。ペプチドは、最大で約6個、最大で約9個、または最大で約12個のアミノ酸を有し得る。
【0010】
一実施形態では、ペプチドは、N末端において、チロシン、または2',6'−ジメチルチロシン(Dmt)残基を含む。例えば、ペプチドは、式Tyr−D−Arg−Phe−Lys−NH2または2',6'−Dmt−D−Arg−Phe−Lys−NH2を有し得る。別の実施形態では、ペプチドは、N末端において、フェニルアラニンまたは2',6'−ジメチルフェニルアラニン残基を含む。例えば、ペプチドは、式Phe−D−Arg−Phe−Lys−NH2、または2',6'−Dmp−D−Arg−Phe−Lys−NH2を有し得る。特定の実施形態では、芳香族カチオン性ペプチドは、式D−Arg−2'6'−Dmt−Lys−Phe−NH2(SS−31とも称される)を有する。
【0011】
一実施形態では、ペプチドは、式I:
【化1】

によって定義され、
【0012】
式中、R1およびR2は、それぞれ独立して、
(i)水素、
(ii)直鎖または分岐C1−C6アルキル、
【化2】


から選択され、
3およびR4は、それぞれ独立して、
(i)水素、
(ii)直鎖または分岐C1−C6アルキル、
(iii)C1−C6アルコキシ、
(iv)アミノ、
(v)C1−C4アルキルアミノ、
(vi)C1−C4ジアルキルアミノ、
(vii)ニトロ、
(viii)ヒドロキシル、
(ix)ハロゲン(「ハロゲン」は、クロロ、フルオロ、ブロモ、およびヨードを包含する)から選択され、R5、R6、R7、R8、およびR9は、それぞれ独立して、
(i)水素、
(ii)直鎖または分岐C1−C6アルキル、
(iii)C1−C6アルコキシ、
(iv)アミノ、
(v)C1−C4アルキルアミノ、
(vi)C1−C4ジアルキルアミノ、
(vii)ニトロ、
(viii)ヒドロキシル、
(ix)ハロゲン(「ハロゲン」は、クロロ、フルオロ、ブロモ、およびヨードを包含する)から選択され、nは、1〜5の整数である。
【0013】
特定の実施形態では、R1およびR2は、水素であり、R3およびR4は、メチルであり、R5、R6、R7、R8、およびR9はすべて、水素であり、nは、4である。
【0014】
一実施形態では、ペプチドは、式II:
【化3】

によって定義され、式中、R1およびR2は、それぞれ独立して、
(i)水素、
(ii)直鎖または分岐C1−C6アルキル、
【化4】


から選択され、
3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、およびR12は、それぞれ独立して、
(i)水素、
(ii)直鎖または分岐C1−C6アルキル、
(iii)C1−C6アルキル、
(iv)アミノ、
(v)C1−C4アルキルアミノ、
(vi)C1−C4ジアルキルアミノ、
(vii)ニトロ、
(viii)ヒドロキシル、
(ix)ハロゲン(「ハロゲン」は、クロロ、フルオロ、ブロモ、およびヨードを包含する)から選択され、nは、1〜5の整数である。
【0015】
特定の実施形態では、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、およびR12はすべて、水素であり、nは、4である。別の実施形態では、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、およびR11はすべて、水素であり、R8およびR12は、メチルであり、R10は、ヒドロキシルであり、nは、4である。
【0016】
芳香族カチオン性ペプチドは、様々な方法で投与され得る。いくつかの実施形態では、ペプチドは、経口、局所、鼻腔内、腹腔内、静脈内、皮下、または経皮(例えば、イオントフォレシスによって)投与され得る。
【0017】
一実施形態では、対象は、虚血前にペプチドが投与される。一実施形態では、対象は、虚血組織の再かん流前にペプチドが投与される。一実施形態では、対象は、ほぼ虚血組織の再かん流の時間にペプチドが投与される。一実施形態では、対象は、虚血組織の再かん流後にペプチドが投与される。
【0018】
一実施形態では、対象は、血行再建術前にペプチドが投与される。別の実施形態では、対象は、血行再建術後にペプチドが投与される。別の実施形態では、対象は、血行再建術中および血行再建術後にペプチドが投与される。さらに別の実施形態では、対象は、血行再建術前、血行再建術中、および血行再建術後に連続してペプチドが投与される。
【0019】
一実施形態では、対象は、血行再建術、すなわち、虚血組織の再かん流の少なくとも5分前、少なくとも10分前、少なくとも30分前、少なくとも1時間前、少なくとも3時間前、少なくとも5時間前、少なくとも8時間前、少なくとも12時間前、または少なくとも24時間前から、ペプチドが投与される。一実施形態では、対象は、血行再建の約5〜30分前、約10〜60分前、約10〜90分前、または約10〜120分前から、ペプチドが投与される。一実施形態では、対象は、血行再建術の約5〜30分後まで、約10〜60分後まで、約10〜90分後まで、約10〜120分後まで、または約10〜180分後まで、ペプチドが投与される。
【0020】
一実施形態では、対象は、血行再建術、すなわち、虚血組織の再かん流後に、少なくとも30分、少なくとも1時間、少なくとも3時間、少なくとも5時間、少なくとも8時間、少なくとも12時間、または少なくとも24時間の間、ペプチドが投与される。一実施形態では、ペプチドの投与期間は、血行再建術、すなわち、虚血組織の再かん流の約30分後、約1時間後、約2時間後、約3時間後、約4時間後、約5時間後、約8時間後、約12時間後、または約24時間後である。
【0021】
一実施形態では、対象は、再かん流の約1〜30分前(すなわち、再かん流の約5分前、約10分前、約20分前、または約30分前)に開始し、再かん流後に約1時間〜24時間(すなわち、再かん流後に、約1時間、約2時間、約3時間、または約4時間)の間継続して、静脈内注入でペプチドが投与される。一実施形態では、対象は、組織の再かん流前に、静脈内ボーラス注入を受ける。一実施形態では、対象は、再かん流期間後に、慢性的に(すなわち、再かん流期間後に、約1〜7日間、約1〜14日間、約1〜30日間)ペプチドを受け続ける。この期間中、ペプチドは、任意の経路、例えば、皮下または静脈内で投与され得る。
【0022】
種々の実施形態では、対象は、心筋梗塞、脳卒中に罹患しているか、または血管形成を必要としている。一実施形態では、血行再建術は、バルーン血管形成、ステントの挿入、経皮的冠動脈形成(PCI)、経皮経管冠動脈形成、または方向性冠動脈粥腫切除から成る群から選択される。一実施形態では、血行再建術は、閉塞の除去である。一実施形態では、血行再建術は、1つまたは複数の血栓溶解剤の投与である。一実施形態では、1つまたは複数の血栓溶解剤は、組織プラスミノーゲン活性化因子、ウロキナーゼ、プロウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、プラスミノーゲンのアシル化型、プラスミンのアシル化型、およびアシル化されたストレプトキナーゼ−プラスミノーゲン複合体から成る群から選択される。
【0023】
一実施形態では、血管閉塞は、心臓血管閉塞である。別の実施形態では、血管閉塞は、頭蓋内血管閉塞である。さらに他の実施形態では、血管閉塞は、深部静脈血栓症、抹消血栓症、塞栓性血栓症、肝静脈血栓症、静脈洞血栓症、静脈血栓症、閉塞した動静脈短絡、および閉塞したカテーテルデバイスから成る群から選択される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施例に使用された動物の研究計画の例示である。
【図2A】擬似治療(結紮糸が適用されているが、締められていない)を受けているウサギの梗塞サイズを示すデータを表す。図2Aは、心臓切片の写真およびプラシーボ処置された擬似ウサギの梗塞サイズを強調するコンピューター生成画像である。
【図2B】擬似治療(結紮糸が適用されているが、締められていない)を受けているウサギの梗塞サイズを示すデータを表す。心臓切片の写真およびペプチドで処置された擬似ウサギの梗塞サイズを強調するコンピューター生成画像である。
【図3A】心臓虚血を誘発し、プラシーボで処置された、2匹の異なる対照ウサギの梗塞サイズを示すデータを表す。各図は、心臓切片の写真および梗塞サイズを強調するコンピューター生成画像を示す。
【図3B】心臓虚血を誘発し、プラシーボで処置された、2匹の異なる対照ウサギの梗塞サイズを示すデータを表す。各図は、心臓切片の写真および梗塞サイズを強調するコンピューター生成画像を示す。
【図4A】心臓虚血を誘発し、例示的芳香族カチオン性ペプチドで処置された、5匹の異なるウサギの梗塞サイズを示すデータを表す。各図は、心臓切片の写真および梗塞サイズを強調するコンピューター生成画像を示す。
【図4B】心臓虚血を誘発し、例示的芳香族カチオン性ペプチドで処置された、5匹の異なるウサギの梗塞サイズを示すデータを表す。各図は、心臓切片の写真および梗塞サイズを強調するコンピューター生成画像を示す。
【図4C】心臓虚血を誘発し、例示的芳香族カチオン性ペプチドで処置された、5匹の異なるウサギの梗塞サイズを示すデータを表す。各図は、心臓切片の写真および梗塞サイズを強調するコンピューター生成画像を示す。
【図4D】心臓虚血を誘発し、例示的芳香族カチオン性ペプチドで処置された、5匹の異なるウサギの梗塞サイズを示すデータを表す。各図は、心臓切片の写真および梗塞サイズを強調するコンピューター生成画像を示す。
【図4E】心臓虚血を誘発し、例示的芳香族カチオン性ペプチドで処置された、5匹の異なるウサギの梗塞サイズを示すデータを表す。各図は、心臓切片の写真および梗塞サイズを強調するコンピューター生成画像を示す。
【図5】ウサギの対照グループおよび試験グループの梗塞された領域と左室領域の比率を示すチャートである。
【図6】ウサギの対照グループおよび試験グループのそれぞれの梗塞された領域とリスク領域との比率を示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実質的な理解を提供するために、本発明のある態様、形態、実施形態、変化、および特性は、下記に様々な段階で詳述されることを理解するものとする。
【0026】
本明細書に使用されるある用語の定義を下記に提供する。別途定義しない限り、本明細書に使用されるすべての技術的および科学的用語は、一般的に、本発明が属する技当該術分野における当業者によって一般に理解されるものと同一の意味を有する。
【0027】
本明細書および添付の請求項に使用されるとき、単数形「a」、「an」、および「the」は、その内容が明確に指示しない限り、複数形への言及を含む。例えば、「細胞」への言及は、2個または複数個の細胞および同等物を含む。
【0028】
本明細書に使用するとき、対象への薬剤、薬物、またはペプチドの「投与」は、その意図された機能を果たすための化合物を、対象に導入または送達する任意の経路を含む。投与は、経口、鼻腔内、非経口(静脈内、筋肉内、腹腔内、または皮下)、または局所を含む、任意の好適な経路によって行うことができる。投与は、自己投与および他者による投与を含む。
【0029】
本明細書に使用するとき、「アミノ酸」という用語は、天然に存在するアミノ酸および合成アミノ酸、ならびに天然に存在するアミノ酸と同様の様式で機能するアミノ酸類似体およびアミノ酸擬似体を含む。天然に存在するアミノ酸は、遺伝子コードによってコードされるアミノ酸、ならびにその後に修飾されるアミノ酸、例えば、ヒドロキシプロリン、γ―カルボキシグルタミン酸、およびO−ホスホセリンである。アミノ酸類似体は、天然に存在するアミノ酸と同一の基本的化学構造、すなわち、水素に結合しているα−炭素、カルボキシル基、アミノ基、およびR基を有する化合物、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムを指す。かかる類似体は、修飾R基(例えば、ノルロイシン)または修飾ペプチド主鎖を有するが、天然に存在するアミノ酸と同一の基本的化学構造を保持する。アミノ酸擬似体は、アミノ酸の一般的化学構造とは異なる構造を有するが、天然に存在するアミノ酸と同一の様式で機能する化学化合物を指す。アミノ酸は、本明細書において、それらの一般に公知の3文字記号、またはIUPAC−IUB生化学命名委員会によって推奨される1文字記号のいずれかによって呼称することができる。
【0030】
本明細書に使用するとき、「有効量」という用語は、所望の治療および/または予防効果を達成するのに十分な量、例えば、心虚血再還流傷害、または心虚血再還流傷害に関連する1つまたは複数の症状の防止または減少をもたらす量を指す。治療または予防用途の文脈において、対象に投与される組成物の量は、疾患の種類または重度、ならびに総合的健康、年齢、性別、体重、および薬物への忍容性等の個人の特徴に依る。それは、疾患の程度、重度、および種類にも依る。当業者は、これらおよび他の要因に依って適切な用量を決定することができるであろう。組成物もまた、1つまたは複数の付加的な治療的化合物と組み合わせて投与することができる。本明細書に説明される方法では、芳香族カチオン性ペプチドは、血管閉塞の1つまたは複数の兆候または症状を有する対象に投与され得る。他の実施形態では、哺乳類は、胸部中央部の圧覚、膨満、圧迫として説明される胸痛、顎または歯、肩、腕、および/または背部への胸痛の放散、呼吸困難もしくは息切れ、吐き気もしくは嘔吐を伴う、もしくは伴わない心窩部不快感、および発汗(diaphoresis)もしくは発汗(sweating)等の心筋梗塞の1つまたは複数の兆候または症状を有する。例えば、「治療的有効量」の芳香族カチオン性ペプチドは、血管閉塞傷害および血行再建の生理学的影響が、最小でも改善されるレベルを意味する。
【0031】
本明細書に使用するとき、「虚血再かん流傷害」という用語は、まず、組織への血液供給の制限の後に、血液の再供給および付随のフリーラジカルの生成によって引き起こされる損傷を指す。虚血は、組織への血液供給の減少であり、再かん流、すなわち枯渇した組織への突然の酸素のかん流に続く。
【0032】
「単離された」または「精製された」ポリペプチドまたはペプチドは、実質的に、薬剤が由来する細胞または組織供給源由来の細胞材料もしくは他の夾雑ポリペプチドを含まないか、または化学的に合成されたときに、化学的前駆体または他の化学物質を含まない。例えば、単離された芳香族カチオン性ペプチドは、薬剤の診断または治療用途を干渉する材料を含まない。かかる干渉材料は、酵素、ホルモン、または他のタンパク質性および非タンパク質性溶質を含み得る。
【0033】
本明細書に使用するとき、「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」という用語は、本明細書において、互換的に使用され、ペプチド結合または修飾ペプチド結合、すなわち、ペプチド等価体によって相互に連結された、2個または複数個のアミノ酸を含むポリマーを意味する。ポリペプチドは、一般に、ペプチド、糖ペプチド、またはオリゴマーと称される短鎖、および一般的にタンパク質と称される長鎖の両方を指す。ポリペプチドは、20個の遺伝子コードされたアミノ酸以外のアミノ酸を含有し得る。ポリペプチドは、翻訳後プロセッシング等の天然プロセス、または当業者に周知の化学修飾技術によって修飾されたアミノ酸配列を含む。
【0034】
本明細書に使用するとき、「治療する」もしくは「治療」、または「軽減」という用語は、治療的治療および予防的または防止措置の両方を指し、その目的は、標的の病態または障害を防止または緩徐する(低減する)ことである。対象は、本明細書に説明される方法に従い、治療量の芳香族カチオン性ペプチドを受けた後、対象において、血管閉塞傷害の1つまたは複数の兆候および症状が、観察可能および/または測定可能に減少するか、またはそれらの欠如を示す場合に、対象は、首尾よく治療される。本明細書に説明される医学的状態の治療または予防の種々の形態は、「実質的」を意味することが意図され、すべてを含むが、すべて未満の治療または予防をも含み、何らかの生物学的または医学的に関連する結果が達成されることも理解されたい。
【0035】
本明細書に使用するとき、障害または状態を「予防」または「予防する」という用語は、未治療の対照被験体と比較して処置された被験体における障害または状態の発生を低減、もしくは発病を遅延させるか、または未治療の被験体と比較して、障害または状態の1つまたは複数の症状の重度を低減させる、化合物を指す。本明細書に使用するとき、虚血再かん流傷害の予防は、酸化的損傷の予防、またはミトコンドリア透過性転移の予防による、罹患した臓器への血流の欠乏およびその後の回復の悪影響の予防または改善を含む。予防は、対象が生涯において、その状態を一切進行しないことではなく、発生の可能性が低減されることのみを意味する。
予防または治療方法
【0036】
本技術は、血行再建術と併せた、ある芳香族カチオン性ペプチドの投与による、血管閉塞傷害の治療または予防に関する。心虚血再還流傷害の治療または予防の方法も提供する。再かん流時に心臓への傷害を予防するために、対象の心筋梗塞を治療する方法も提供する。
【0037】
別の実施形態では、対象には、虚血中および虚血後にペプチドが投与される。さらに別の実施形態では、対象には、虚血前、虚血中、および虚血後に連続してペプチドが投与される。別の実施形態では、対象には、再かん流中および再かん流後にペプチドが投与される。さらに別の実施形態では、対象には、再かん流前、再かん流中、および再かん流後に連続してペプチドが投与される。一実施形態では、対象には、再かん流の直前から、再かん流後の1〜3時間の間、連続的な静脈内注入でペプチドが投与される。その後、対象には、任意の投与経路によって、慢性的にペプチドが投与され得る。
【0038】
一実施形態では、対象には、血行再建術前にペプチドが投与される。別の実施形態では、対象は、血行再建術後にペプチドが投与される。別の実施形態では、対象には、血行再建術中および血行再建術後にペプチドが投与される。さらに別の実施形態では、対象には、血行再建術前、血行再建術中、および血行再建術後に連続してペプチドが投与される。別の実施形態では、対象には、AMIおよび/または血行再建術の後に定期的に(すなわち、慢性的に)ペプチドが投与される。一実施形態では、対象には、血行再建術に、少なくとも1週間、少なくとも1ヶ月、または少なくとも1年の間、投与される。
【0039】
心臓MRIを含む、種々の方法を使用して、芳香族カチオン性ペプチドの有効性を評価することができる。バイオマーカーは、トロポニン、クレアチンキナーゼ(CK)、乳酸脱水素酵素(LDH)、およびグリコーゲンホスホリラーゼアイソザイムBBを含む。トロポニンは、心筋損傷のための最も感度が高い特異的マーカーである。その最高血清濃度は、損傷の12時間後であり、最大7日間の間、遅延放出を有する。トロポニンIおよびTの市販キットが入手可能である。クレアチンキナーゼ(CK)は、骨格筋損傷が存在しないときに、特異的な心臓マーカーである。それは、損傷の10〜14時間後にピークに達し、2〜3日で正常に戻る。
【0040】
芳香族カチオン性ペプチドは、水溶性かつ高極性である。これらの特性にもかかわらず、ペプチドは、容易に細胞膜に透過することができる。芳香族カチオン性ペプチドは、典型的には、ペプチド結合によって共有結合的に連結された、最小で3個のアミノ酸、または最小で4個のアミノ酸を含む。芳香族カチオン性ペプチド中に存在するアミノ酸の最大数は、ペプチド結合によって共有結合的に連結された、約20個のアミノ酸である。好適には、アミノ酸の最大数は、約12個、より好ましくは、約9個、最も好ましくは、約6個である。
【0041】
芳香族カチオン性ペプチドのアミノ酸は、任意のアミノ酸であることができる。本明細書に使用するとき、「アミノ酸」という用語は、少なくとも1個のアミノ基および少なくとも1個のカルボキシル基を含有する、任意の有機分子を指すために使用される。典型的には、少なくとも1個のアミノ基は、カルボキシル基に対する位置にある。アミノ酸は、天然に存在し得る。天然に存在するアミノ酸には、例えば、通常、哺乳類のタンパク質に見られる20個の最も一般的な左旋性アミノ酸、すなわち、アラニン(Ala)、アルギニン(Arg)、アスパラギン(Asn)、アスパラギン酸(Asp)、システイン(Cys)、グルタミン(Gln)、グルタミン酸(Glu)、グリシン(Gly)、ヒスチジン(His)、イソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)、リジン(Lys)、メチオニン(Met)、フェニルアラニン(Phe)、プロリン(Pro)、セリン(Ser)、トレオニン(Thr)、トリプトファン(Trp)、チロシン(Tyr)、およびバリン(Val)が挙げられる。他の天然に存在するアミノ酸には、例えば、タンパク質合成と関連のない代謝過程において合成されるアミノ酸が挙げられる。例えば、アミノ酸オルニチンおよびシトルリンは、尿産生中に哺乳類の代謝で合成される。天然に存在するアミノ酸の別の例には、ヒドロキシプロリン(Hyp)が挙げられる。
【0042】
本ペプチドは、任意に、1個または複数個の天然に存在しないアミノ酸を含有する。最適には、ペプチドは、天然に存在するアミノ酸を有さない。天然に存在しないアミノ酸は、左旋性(L−)、右旋性(D−)、またはそれらの混合であり得る。天然に存在しないアミノ酸は、典型的には、有機体の通常の代謝工程において合成されず、タンパク質中の天然に存在しないアミノ酸である。加えて、天然に存在しないアミノ酸もまた、好適には、一般的なプロテアーゼによって認識されない。天然に存在しないアミノ酸は、ペプチド中の任意の位置に存在することができる。例えば、天然に存在しないアミノ酸は、N末端、C末端、またはN末端とC末端との間の任意の位置であることができる。
【0043】
非天然アミノ酸は、例えば、天然アミノ酸中に見られない、アルキル基、アリール基、またはアルキルアリール基を含み得る。非天然アルキルアミノ酸のいくつかの例には、α−アミノ酪酸、β−アミノ酪酸、γ−アミノ酪酸、δ−アミノ吉草酸、およびε−アミノカプロン酸が挙げられる。非天然アリールアミノ酸のいくつかの例には、オルト−、メタ−、およびパラ−アミノ安息香酸が挙げられる。非天然アルキルアリールアミノ酸のいくつかの例には、オルト−、メタ−、およびパラ−アミノフェニル酢酸、およびγ−フェニル−β−アミノ酪酸が挙げられる。天然に存在しないアミノ酸には、天然に存在するアミノ酸の誘導体が挙げられる。天然に存在するアミノ酸の誘導体には、例えば、天然に存在するアミノ酸への1個または複数個の化学基の追加を含み得る。
【0044】
例えば、1個または複数個の化学基は、フェニルアラニンもしくはチロシン残基の芳香族環の2'、3'、4'、5'、または6'位、またはトリプトファン残基のベンゾ環の4'、5'、6'または7'位のうちの1個または複数個に追加することができる。基は、芳香族基に追加することができる任意の化学基であることができる。かかる基のいくつかの例には、分岐または分岐C1−C4アルキル(メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、またはt−ブチル等)、C1−C4アルキルオキシ(すなわち、アルコキシ)、アミノ、C1−C4アルキルアミノ、およびC1−C4ジアルキルアミノ(例えば、メチルアミノ、ジメチルアミノ)、ニトロ、ヒドロキシル、ハロ(すなわち、フルオロ、クロロ、ブロモ、またはヨード)が挙げられる。天然に存在するアミノ酸の天然に存在しない誘導体のいくつかの具体的な例には、ノルバリン(Nva)およびノルロイシン(Nle)が挙げられる。
【0045】
ペプチド中のアミノ酸修飾の別の例は、ペプチドのアスパラギン酸のカルボキシル基またはグルタミン酸残基の誘導体である。誘導体化の一例は、アンモニアを用いる、または第1級もしくは第2級アミン、例えば、メチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、またはジエチルアミンを用いるアミド化である。誘導体化の別の例には、例えば、メチルまたはエチルアルコールを用いるエステル化が挙げられる。別のかかる修飾には、リジン、アルギニン、またはヒスチジン残基のアミノ基の誘導体が挙げられる。例えば、かかるアミノ基は、アシル化することができる。いくつかの好適なアシル基には、例えば、アセチルまたはプロピオニル基等の上述のC1−C4アルキル基のうちのいずれかを含む、ベンゾイル基またはアルカノイル基が挙げられる。
【0046】
天然に存在しないアミノ酸は、好適には、一般的なプロテアーゼに対して耐性、および/または感度が低い。プロテアーゼに対して耐性または感度が低い天然に存在しないアミノ酸の例には、上述の天然に存在するL−アミノ酸、ならびに天然に存在しないL−および/またはD−アミノ酸のうちのいずれかの右旋性(D−)形態が挙げられる。D−アミノ酸は、細胞の通常のリポソームタンパク質合成機構以外の手段によって合成される、あるペプチド抗生物質中に見られるが、通常、タンパク質中に生じない。本明細書に使用するとき、D−アミノ酸は、天然に存在しないアミノ酸であるとみなされる。
【0047】
プロテアーゼ感受性を最小限化するために、ペプチドは、アミノ酸が天然に存在するか、または天然に存在しないかどうかに関係なく、5個以下、4個以下、3個以下、または2個以下の一般的なプロテアーゼによって認識される連続L−アミノ酸を有し得る。最適には、ペプチドは、L−アミノ酸ではなく、D−アミノ酸のみを有する。ペプチドがアミノ酸のプロテアーゼ感受性配列を含有する場合、アミノ酸のうちの少なくとも1個は、好適には、天然に存在しないD−アミノ酸であり、それによって、プロテアーゼ耐性を付与する。プロテアーゼ感受性配列の例には、エンドペプチダーゼおよびトリプシン等の一般的なプロテアーゼによって容易に開裂される、2個または複数個の連続塩基アミノ酸が挙げられる。塩基アミノ酸の例には、アルギニン、リジン、およびヒスチジンが挙げられる。
【0048】
芳香族カチオン性ペプチドは、ペプチド中のアミノ酸残基の総数と比較して、生理学的pHの正味の正電荷の最小数を有さなければならない。生理学的pHで正味の正電荷の最小数は、以下、(pm)と称される。ペプチド中のアミノ酸残基の総数は、以下、(r)と称される。下記に説明される正味の正電荷の最小数はすべて、生理学的pHにおけるものである。本明細書に使用される「生理学的pH」という用語は、哺乳類の身体の組織および臓器の細胞における正常なpHを指す。例えば、ヒトの生理学的pHは、通常、約7.4であるが、哺乳類における正常な生理学的pHは、約7.0〜約7.8のいずれのpHであり得る。
【0049】
本明細書に使用する「正味の電荷」は、ペプチド中に存在するアミノ酸によって担持される正電荷および負電荷の数の均衡を指す。本明細書では、正味の電荷は、生理学的pHにおいて測定されることが理解される。生理学的pHにおいて正に荷電される、天然に存在するアミノ酸には、L−リジン、L−アルギニン、およびL−ヒスチジンが挙げられる。生理学的pHにおいて負に荷電される、天然に存在するアミノ酸には、L−アスパラギン酸およびL−グルタミン酸が挙げられる。
【0050】
典型的には、ペプチドは、正に荷電されたN末端アミノ基および負に荷電されたC末端カルボキシル基を有する。電荷は、生理学的pHにおいて相互に打ち消しあう。正味の電荷を計算する例として、ペプチドTry-Arg-Lys-Glu-His-Trp-D-Argは、1個の負に電荷されたアミノ酸(すなわち、Glu)および4個の正に荷電されたアミノ酸(すなわち、2個のArg残基、1個のLys、および1個のHis)を有する。従って、上記のペプチドは、3の正味の正電荷を有する。
【0051】
一実施形態では、芳香族カチオン性ペプチドは、生理学的pHで正味の正電荷の最小数(pm)とアミノ酸残基の総数(r)との間において、3pmが、r+1以下である最大数である関係を有する。この実施形態では、正味の正電荷の最小数(pm)とアミノ酸残基の総数(r)との間の関係は、以下のとおりである:
表1.アミノ酸数および正味の正電荷(3pm≦ p+1)
【表1】

【0052】
別の実施形態では、芳香族カチオン性ペプチドは、正味の正電荷の最小数(pm)とアミノ酸残基の総数(r)との間において、2pmが、r+1以下である最大数である関係を有する。この実施形態では、正味の正電荷の最小数(pm)とアミノ酸残基の総数(r)との間の関係は、以下のとおりである:
表2.アミノ酸数および正味の正電荷 (2pm≦ p+1)
【表2】

【0053】
一実施形態では、正味の正電荷の最小数(pm)およびアミノ酸残基の総数(r)は同じである。別の実施形態では、ペプチドは、3個または4個のアミノ酸残基、ならびに最小で1個の正味の正電荷、好適には、最小で2個の正味の正電荷、およびより好ましくは最小で3個の正味の正電荷を有する。
【0054】
芳香族カチオン性ペプチドは、正味の正電荷(pt)の総数と比較して、芳香族基の最小数を有することもまた、重要である。芳香族基の最小数は、以下、(a)と称する。芳香族基を有する天然に存在するアミノ酸には、アミノ酸ヒスチジン、トリプトファン、チロシン、およびフェニルアラニンが挙げられる。例えば、ヘキサペプチドLys−Gln−Tyr−D−Arg−Phe−Trpは、2個の正味の正電荷(リジンおよびアルギニン残基が寄与する)および3個の芳香族基(チロシン、フェニルアラニン、およびトリプトファン残基が寄与する)を有する。
【0055】
芳香族カチオン性ペプチドはまた、芳香族基の最小数(a)と生理学的pHで正味の正電荷の総数(pt)との間において、ptが1である場合、aも1であり得ることを除き、3aが、pt+1以下である最大数である関係を有さなければならない。この実施形態では、芳香族基の最小数(a)と正味の正電荷(pt)との間の関係は、以下のとおりである:
表3.芳香族基および正味の正電荷(3a ≦ pt+1 or pt=1)
【表3】

【0056】
別の実施形態では、芳香族カチオン性ペプチドは、芳香族基(a)の最小数と正味の正電荷(pt)との間において、2aは、pt+1以下である最大数である関係を有さなければならない。この実施形態では、芳香族アミノ酸残基(a)と正味の正電荷の総数(pt)との間の関係は、以下のとおりである:
表4.芳香族基および正味の正電荷 (2a ≦ pt+1 or pt=1)
【表4】

【0057】
別の実施形態では、芳香族基(a)および正味の正電荷の総数(pt)は、同じである。
【0058】
カルボキシル基、特に、C末端アミノ酸の末端カルボキシル基は、好適には、例えば、アンモニアでアミド化され、C末端アミドを形成する。あるいは、C末端アミノ酸の末端カルボキシル基は、任意の第1級または第2級アミンでアミド化され得る。第1級または第2級アミンは、例えば、アルキル、特に、分岐もしくは非分岐C1−C4アルキル、またはアリールアミンであり得る。故に、ペプチドのC末端におけるアミノ酸は、アミド、N−メチルアミド、N−エチルアミド、N,N−ジメチルアミド、N,N−ジエチルアミド、N−メチル−N−エチルアミド、N−フェニルアミド、またはN−フェニル−N−エチルアミド基に変換され得る。芳香族カチオン性ペプチドのC末端に存在しないアスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、およびグルタミン酸残基の遊離カルボキシル基もまた、それらがペプチド内に存在する場合にアミド化され得る。これらの内部位置でのアミド化は、アンモニアまたは上述の第1級もしくは第2級アミンのうちのいずれかでなされ得る。
【0059】
一実施形態では、芳香族カチオン性ペプチドは、2個の正味の正電荷および少なくとも1個の芳香族アミノ酸を有するトリペプチドである。特定の実施形態では、芳香族カチオン性ペプチドは、2個の正味の正電荷および2個の芳香族アミノ酸を有するトリペプチドである。
【0060】
芳香族カチオン性ペプチドには、以下のペプチドの例が挙げられるが、これらに限定されない。
【化5】

【0061】
一実施形態では、本ペプチドは、μ−オピオイド受容体アゴニスト活性(すなわち、それらは、μ−オピオイド受容体を活性化する)を有する。μ−オピオイド活性は、クローニングされたμ−オピオイド受容体に対して放射性リガンド結合またはモルモット回腸を使用するバイオアッセイによって、評価することができる(Schiller et ah,Eur JMed Chem,35:895−901,2000、Zhao et al,J Pharmacol Exp Ther,307:947−954,2003)。μ−オピオイド受容体の活性化は、典型的には、鎮痛効果を誘発する。ある例では、μ−オピオイド受容体アゴニスト活性を有する芳香族カチオン性ペプチドが好ましい。例えば、急性疾患状態または病態におけるような短期治療中に、μ−オピオイド受容体を活性化する芳香族カチオン性ペプチドを使用することが有益であり得る。かかる急性疾患および病態は、しばしば、中程度または重度の疼痛に関連する。これらの例では、芳香族カチオン性ペプチドの鎮痛効果は、ヒト患者または他の哺乳類の治療レジメンにおいて有益であり得る。μ−オピオイド受容体を活性化しない芳香族カチオン性ペプチドはまた、臨床要件に従って、鎮痛薬を伴い、または伴わずに使用され得る。
【0062】
あるいは、他の例では、μ−オピオイド受容体アゴニスト活性を有さない芳香族カチオン性ペプチドが好ましい。例えば、慢性疾患状態または病態におけるような長期治療中、μ−オピオイド受容体を活性化する芳香族カチオン性ペプチドの使用は、禁忌であり得る。これらの例では、芳香族カチオン性ペプチドの潜在的な有害または中毒作用により、ヒト患者または他の哺乳類の治療レジメンにおけるμ−オピオイド受容体を活性化する芳香族カチオン性ペプチドの使用が妨げられ得る。潜在的な有害作用は、鎮静、便秘、および呼吸抑制を含み得る。かかる例では、μ−オピオイド受容体を活性化しない芳香族カチオン性ペプチドは、適切な治療であり得る。
【0063】
μ−オピオイド受容体アゴニスト活性を有するペプチドは、典型的には、N末端(すなわち、最初のアミノ酸位置)においてチロシン残基またはチロシン誘導体を有するペプチドである。チロシンの好適な誘導体には、2'−メチルチロシン(Mmt)、2',6'−ジメチルチロシン(2',6'−Dmt)、3',5'−ジメチルチロシン(3'5'Dmt)、N,2',6'−とトリメチルチロシン(Tmt)、および2'−ヒドロキシ−6'−メチルチルチロシン(Hmt)が挙げられる。
【0064】
一実施形態では、μ−オピオイド受容体アゴニスト活性を有するペプチドは、式Tyr−D−Arg−Phe−Lys−NH2を有する。このペプチドは、アミノ酸チロシン、アルギニン、およびリジンが寄与する3個の正味の正電荷を有し、アミノ酸フェニルアラニンおよびチロシンが寄与する2個の芳香族基を有する。チロシンは、式2',6'−Dmt−D−Arg−Phe−Lys−NH2を有する化合物を精製するための2',6'−ジメチルチロシン等のチロシンの修飾された誘導体であることができる。このペプチドは、640の分子量を有し、生理学的pHにおいて正味3個の正電荷を担持する。ペプチドは、いくらかの哺乳類の細胞種の形質膜を容易に透過する(Zhaoet et al.,J. Pharmacol Exp Then,304:425−432,2003)。
【0065】
μ−オピオイド受容体アゴニスト活性を有さないペプチドは、一般的に、N末端(すなわち、アミノ酸位置1)においてチロシン残基またはチロシンの誘導体を有さない。N末端におけるアミノ酸は、チロシン以外の任意の天然に存在する、または天然に存在しないアミノ酸であることができる。一実施形態では、N末端におけるアミノ酸は、フェニルアラニンまたはその誘導体である。フェニルアラニンの例示的な誘導体には、2'−メチルフェニルアラニン(Mmp)、2',6'−ジメチルフェニルアラニン(2',6'−Dmp)、N,2',6'−トリメチルフェニルアラニン(Tmp)、および2'−ヒドロキシ−6−メチルフェニルアラニン(Hmp)が挙げられる。
【0066】
μ−オピオイド受容体アゴニスト活性を有さない芳香族カチオン性ペプチドの一例は、式Phe−D−Arg−Phe−Lys−NH2を有する。あるいは、N末端フェニルアラニンは、2',6'−ジメチル[フェニル[アラニン(2'6'−Dmp)等のフェニルアラニンの誘導体であることができる。一実施形態では、アミノ酸1位において、2',6'−ジメチルフェニルアラニンを有するペプチドは、式2',6'−Dmp−D−Arg−Phe−Lys−NH2を有する。一実施形態では、アミノ酸配列は、N末端にDmtが存在しないように再配列される。μ−オピオイド受容体アゴニスト活性を有さない、かかる芳香族カチオン性ペプチドの一例は、式D−Arg−2'6'−Dmt−Lys−Phe−NH2を有する。
【0067】
上述のペプチドおよびそれらの誘導体はさらに、機能的類似体を含むことができる。ペプチドは、類似体が記載されたペプチドと同一の機能を有する場合に、機能的類似体とみなされる。類似体は、例えば、ペプチドの置換変異体であり得、1個または複数個のアミノ酸は、別のアミノ酸によって置換される。ペプチドの好適な置換変異体には、保存的アミノ酸置換が挙げられる。アミノ酸は、それらの物理学化学的特徴に従って分類され得る:
(a)非極性アミノ酸:Ala(A) Ser(S) Thr(T) Pro(P)Gly(G)Cys(C);
(b)酸性アミノ酸:Asn(N) Asp(D) Glu(E) Gln(Q);
(c)塩基性アミノ酸:His(H) Arg(R) Lys(K);
(d)疎水性アミノ酸:Met(M) Leu(L) Ile(i) Val(v);および
(e)芳香族性アミノ酸:Phe(F) Tyr(Y) Trp(W) His(H)。
【0068】
ペプチドにおけるアミノ酸の同一のグループ内の別のアミノ酸による置換は、保存的置換と称され、本来のペプチドの物理化学的特徴を保存し得る。対照的に、ペプチドにおけるアミノ酸の異なるグループ内の別のアミノ酸による置換は、一般的に、本来のペプチドの特徴を変更する可能性が高い。
【0069】
いくつかの実施形態では、芳香族カチオン性ペプチド中の1個または複数個の天然に存在するアミノ酸は、アミノ酸類似体で置換される。ペプチドの例には、表5に示す芳香族カチオン性ペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0070】
表5.μ−オピオイド活性を有するペプチド類似体
【表5】







Dab=ジアミノ酪酸
Dap=ジアミノプロピオン酸
Dmt=ジメチルチロシン
Mmt=2'−メチルチロシン
Tmt=N,2',6'−トリメチルチロシン
Hmt=2'−ヒドロキシ,6'−メチルチロシン
dnsDap=β−ダンシル−L−α,β−ジアミノプロピオン酸
atnDap=β−アントラニロイル−L−α,β−ジアミノプロピオン酸
Bio=ビオチン
【0071】
μ−オピオイド受容体を活性化しない類似体の例には、表6に示す芳香族カチオン性ペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。
表6.μ−オピオイド活性を有さないペプチド類似体
【表6】

Cha=シクロヘキシルアラニン
【0072】
表5および6に示すペプチドのアミノ酸は、L−またはD−配置のいずれかであり得る。
ペプチドは、当該技術分野において周知の方法のうちのいずれかによって合成され得る。タンパク質を化学的に合成するのに好適な方法には、例えば、Stuart and Young in Solid Phase Peptide Synthesis,Second Edition, Pierce−Chemical Company(1984)、およびMethods Enzymol,289,Academic Press、Inc,New York(1997)に説明される方法が挙げられる。
【0073】
芳香族カチオン性ペプチドの予防および治療的使用
概論 本明細書に説明される芳香族カチオン性ペプチドは、疾患を予防または治療するのに有用である。具体的には、本開示は、血管閉塞傷害または虚血再かん流傷害の危険性のある(または受けやすい)対象を治療する予防的および治療的方法の両方を提供する。故に、本方法は、有効量の芳香族カチオン性ペプチドを、それを必要とする対象に投与することによって、対象における血管閉塞傷害または虚血再かん流傷害の予防および/または治療のために提供される。
【0074】
種々の実施形態では、適切なインビトロまたはインビボアッセイを実施して、特定の芳香族カチオン性ペプチドに基づく治療薬の効果、およびその投与が治療に適応されるかどうかを決定する。種々の実施形態では、インビトロアッセイは、代表的な動物モデルで実施して、所与の芳香族カチオン性ペプチドに基づく治療薬が、虚血再かん流傷害を予防または治療する上で所望効果を及ぼすかどうかを決定することができる。治療に使用するための化合物は、ヒト対象において試験する前に、ラット、マウス、ニワトリ、ブタ、ウシ、サル、ウサギ、および同等物を含むが、これらに限定されない好適な動物モデル系において試験することができる。同様に、インビボ試験のために、ヒト対象に投与する前に、当該技術分野において既知の動物モデル系のうちのいずれをも使用することができる。
【0075】
予防方法。一態様では、本発明は、病態の開始または進行を予防する芳香族カチオン性ペプチドを対象に投与することによって、対象における血管閉塞傷害を予防するための方法を提供する。血管閉塞傷害の危険性のある対象は、例えば、本明細書に説明される診断または予防アッセイのいずれか、またはそれらの組み合わせによって、特定することができる。予防用途では、芳香族カチオン性ペプチドの薬学的組成物または医薬品は、疾患または病態になりやすい、またはさもなければその危険性がある対象に、疾患の生化学的、組織学的、および/または行動症状、その合併症ならびに疾患の発達中に認められる中間的な病理学的表現型を含む、疾患の危険性を排除もしくは減少する、感受性を低減する、または発症を遅延するのに十分な量で投与される。
予防的な芳香族カチオン性の投与は、疾患または障害が予防されるか、あるいはその進行が遅延されるように、異常を特徴とする症状の出現前に行うことができる。適切な化合物は、上述のスクリーニングアッセイに基づき決定することができる。
【0076】
治療方法。本技術の別の態様は、治療目的のために対象における血管閉塞傷害または虚血再かん流傷害を治療する方法を含む。治療用途では、組成物または医薬品は、その疾患が疑わしいか、またはすでに罹患している対象に、その合併症、および疾患の発達中における中間的病理表現型を含む疾患の症状を治療するか、または少なくとも部分的に停止するのに十分な量で投与される。従って、本発明は、虚血再かん流傷害に罹患した個人を治療する方法を提供する。
投与形態および有効用量
【0077】
細胞、臓器、または組織とペプチドを接触させるための、当業者に公知の任意の方法を採用し得る。好適な方法には、インビトロ、エクスビボ、またはインビボでの方法が挙げられる。インビボ方法には、典型的には、哺乳類、好適には、ヒトへの上述のもの等の芳香族カチオン性ペプチドの投与が挙げられる。治療のためにインビボで使用されるとき、芳香族カチオン性ペプチドは、有効量(すなわち、所望の治療効果を有する量)で対象に投与される。用量および投与レジメンは、対象における障害の程度、使用する特定の芳香族カチオン性ペプチドの特徴、例えば、その治療係数、対象、および対象の既往歴に依る。
【0078】
有効量は、医師および臨床医に知られた方法によって、前臨床試験および臨床試験中に決定され得る。本方法に有用なペプチドの有効量は、薬学的化合物を投与するための多くの周知の方法のうちのいずれかによって、それを必要とする哺乳類に投与され得る。ペプチドは、全身的または局所的に投与され得る。
【0079】
ペプチドは、薬学的に許容される塩として調剤され得る。「薬学的に許容される塩」という用語は、哺乳類等の患者への投与に許容される塩基または酸から調製された塩(例えば、所与の投薬レジメンのための許容される哺乳類の安全性を有する塩)を意味する。しかしながら、塩は、患者への投与のために意図されていない中間体化合物の塩等の薬学的に許容される塩である必要がないことを理解されたい。薬学的に許容される塩は、薬学的に許容される無機または有機塩基、および薬学的に許容される無機または有機酸に由来することができる。加えて、ペプチドが、アミン、ピリジン、またはイミダゾール等の塩基部分、およびカルボキシル酸またはテトラゾール等の酸部分の両方を含有するとき、両性イオンが形成され得、本明細書に使用される「塩」という用語に含まれる。薬学的に許容される無機塩基に由来する塩には、アンモニウム、カルシウム、銅、第2鉄、第1鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン、亜マンガン、カリウム、ナトリウム、および亜鉛塩、ならびに同等物が挙げられる。薬学的に許容される有機塩基に由来する塩には、置換されたアミン、環状アミン、天然に存在するアミン、および同等物(アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N′−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペラジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン(piperazine)、ピペラジン(piperadine)、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミン、および同等物を含む、第1級、第2級、および第3級アミンが挙げられる。薬学的に許容される無機酸に由来する塩には、ホウ素、炭素、ハロゲン化水素(臭化水素、塩化水素、フッ化水素、またはヨウ化水素)、硝酸、リン酸、スルファミン酸、および硫酸の塩が挙げられる。薬学的に許容される有機酸に由来する塩には、脂肪族ヒドロキシル酸(例えば、クエン酸、グルコン酸、グリコール酸、酪酸、ラクトビオン酸、リンゴ酸、および酒石酸)、脂肪族モノカルボン酸(例えば、酢酸、酪酸、ギ酸、プロピオン酸、およびトリフルオロ酢酸)、アミノ酸(例えば、アスパラギン酸およびグルタミン酸)、芳香族カルボン酸(例えば、安息香酸、p−クロロ安息香酸、ジフェニル酢酸、ゲンチシン酸、馬尿酸、およびトリフェニル酢酸)、芳香族ヒドロキシル酸(例えば、o−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、1−ヒドロキシナフタレン−2−カルボン酸、および3−ヒドロキシナフタレン−2−カルボン酸)、アスコルビン酸、ジカルボン酸(例えば、フマル酸、マレイン酸、シュウ酸、およびコハク酸)、グルクロン酸、マンデル酸、粘液酸、ニコチン酸、オロチン酸、パモン酸、パントテン酸、スルホン酸(例えば、ベンゼンスルホン酸、カンファースルホン酸、エジシル酸、エタンスルホン酸、イセチオン酸、メタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸、ナフタレン−2,6−ジスルホン酸、およびp−トルエンスルホン酸)、キナホ酸、および同等物の塩が挙げられる。
【0080】
本明細書に説明される芳香族カチオン性ペプチドは、本明細書に説明される障害の治療または予防のために、対象に、単一または組み合わせで投与するための薬学的組成物に組み込むことができる。かかる組成物には、典型的には、活性剤および薬学的に許容される担体が挙げられる。本明細書に使用するとき、「薬学的に許容される担体」という用語は、薬学的投与に適合する塩水、溶媒、分散媒体、被覆剤、抗細菌および抗真菌剤、等張性および吸収遅延剤、ならびに同等物を含む。補助的な活性化合物もまた、組成物に組み込むことができる。
【0081】
薬学的組成物は、典型的には、その目的とする投与経路に適合するように処方される。投与経路の例には、非経口(例えば、静脈内、皮内、腹腔内、または皮下)、経口、吸入、経皮(局所)、眼球内、イオン導入、および経粘膜投与が挙げられる。非経口、皮内、または皮下適用に使用される溶液または懸濁液は、以下の成分を含むことができる:注射用水、食塩溶液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の合成溶媒等の滅菌希釈剤、ベンジルアルコールまたはメチルパラベン等の抗細菌剤、アスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウム等の抗酸化剤、エチレンジアミン四酢酸等のキレート剤、酢酸塩、クエン酸塩、またはリン酸等の緩衝剤、および塩化ナトリウムまたはデキストロース等の張性の調節のための薬剤。pHは、塩酸もしくは水酸化ナトリウム等の酸または塩基で調整することができる。非経口製剤は、アンプル、ディスポーサブルシリンジ、またはガラスもしくはプラスチック製の多用途バイアルに封入することができる。患者または治療を行う医師の簡便のために、投薬製剤は、治療経過(例えば、7日間の治療)のためのすべての必要な装置(例えば、薬物のバイアル、希釈剤のバイアル、シリンジ、および針)を含有するキットに提供することができる。
【0082】
注入用途に好適な薬学的組成物には、滅菌水溶液(水溶性である場合)、または分散体、および滅菌注入用溶液、ならびに滅菌注入用溶液または分散体の用時調製のための滅菌粉末を挙げることができる。静脈内投与では、好適な担体には、生理学的食塩水、静菌水、Cremophor EL(商標)(BASF、Parsippany、N.J.)、またはリン酸緩衝食塩水(PBS)が挙げられる。すべての場合において、非経口投与のための組成物は、滅菌でなければならず、容易に注入可能な程度にまで流動性でなければならない。それは、製造および保管条件下で安定でなければならず、細菌および真菌等の微生物の混入作用から保護されなければならない。
【0083】
芳香族カチオン性ペプチド組成物は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール等)、ならびにその好適な混合物を含有する、溶媒または分散媒体であることができる担体を含むことができる。適切な流動性が、例えば、レシチン等の被覆剤の使用によって、分散の場合では、必要な粒度の維持によって、および界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用の予防は、種々の抗細菌および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チオメラソール、および同等物によって達成することができる。グルタチオンおよび他の抗酸化剤は、酸化を予防するために含むことができる。多くの場合において、組成物中に、等張剤、例えば、糖、マンニトール、ソルビトール等のポリアルコール、または塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注入可能な組成物の長期吸収は、組成物中に、吸収を遅延する薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムまたはゼラチンを含ませることによって行うことができる。
【0084】
滅菌注入可能な溶液は、必要量の活性化合物を、必要に応じて、上記に列挙した成分のうちの1つまたはそれらの組み合わせとともに、適切な溶媒に組み込み、その後、ろ過滅菌によって調製することができる。一般的に、分散体は、活性化合物を、基剤の分散媒体および上記に列挙した、必要な他の成分を含有する滅菌ビヒクルに組み入れることによって調製される。滅菌注入可能な溶液の調製のための滅菌粉末の場合では、典型的な調製方法には、その予め滅菌ろ過された溶液から活性成分および任意のさらなる所望の成分の粉末を産出することができる、減圧乾燥および凍結乾燥が挙げられる。
【0085】
経口用組成物には、一般的に、不活性希釈剤または食用担体が挙げられる。経口的治療投与の目的のために、活性化合物は、賦形剤とともに組み込むことができ、錠剤、トローチ、またはカプセル、例えば、ゼラチンカプセルの形態で使用することができる。経口用組成物はまた、洗口剤としての用途のための流体担体を使用して調製することもできる。薬学的に適合可能な結合剤、および/またはアジュバント材料は、組成物の一部として含むことができる。錠剤、丸剤、カプセル、トローチ、および同等物は、以下の成分、または類似の性質の化合物のうちのいずれかを含有することができる:結晶セルロース、ガムトラガント、もしくはゼラチン等の結合剤;澱粉もしくはラクトース等の賦形剤;アルギン酸、プリモゲル、もしくはコーンスターチ等の崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムもしくはステローツ等の潤滑剤;コロイド状二酸化ケイ素等の流動促進剤;スクロースもしくはサッカリン等の甘味剤;またはペパーミント、サリチル酸メチル、またはオレンジ香味料等の香味剤。
【0086】
吸引による投与のために、化合物は、好適な噴射剤、例えば、二酸化炭素等の気体を含有する加圧容器もしくはディスペンサー、または噴霧器からのエアゾルスプレーの形態で送達することができる。かかる方法には、米国特許6,468,798号に記載の方法が挙げられる。
【0087】
本明細書に説明される治療用化合物の全身投与もまた、経粘膜的または経皮的手段によって行うこともできる。経粘膜的または経皮的手段では、透過すべき障壁に適切な浸透剤が、製剤に使用される。かかる浸透剤は、当該技術分野において一般的に既知であり、例えば、経粘膜投与では、界面活性剤、胆汁塩、およびフシジン酸誘導体を含む。経粘膜投与は、点鼻スプレーの使用を介して達成することができる。経皮投与では、活性化合物は、当該技術分野において一般的に既知の軟膏、膏薬、ゲル、またはクリームに処方される。一実施形態では、経皮投与は、イオントフォレシスによって実施し得る。
【0088】
治療用タンパク質またはペプチドは、担体系に処方することができる。担体は、コロイド系であることができる。コロイド系は、リポソーム、リン脂質二重層ビヒクルであることができる。一実施形態では、治療用ペプチドは、ペプチドの完全性を維持しながら、リポソーム中に封入される。当業者によって理解されているように、リポソームを調製するための種々の方法が存在する(Lichtenberg et al,Methods Biochem.Anal.,33:337−462(1988)、Anselem et al.,Liposome Technology,CRC Press(1993)を参照)。リポソーム製剤は、クリアランスを遅延し、細胞内取り込みを増加することができる(Reddy,Ann.Pharmacother.,34(7−8):915−923(2000)を参照)。活性剤もまた、可溶性、不溶性、浸透性、不浸透性、生分解性、または胃保持性ポリマーもしくはリポソームを含むが、これらに限定されない、薬学的に許容される成分から調製された粒子に含むこともできる。かかる粒子には、ナノ粒子、生分解性ナノ粒子、微粒子、生分解性微粒子、ナノスフェア、生分解性ナノスフェア、マイクロスフェア、生分解性マイクロスフェア、カプセル、乳剤、リポソーム、ミセル、およびウイルスベクター系が挙げられるが、これらに限定されない。
【0089】
担体はまた、ポリマー、例えば、生分解性、生体適合性のポリマーマトリックスであることができる。一実施形態では、治療用ペプチドは、タンパク質の完全性を維持しながら、ポリマーマトリックス中に包埋することができる。ポリマーは、ペプチド、タンパク質もしくは多糖類等、天然であり得るか、またはポリα−ヒドロキシ酸等、合成され得る。例には、例えば、コラーゲン、フィブロネクチン、エラスチン、酢酸セルロース、セルロースニトレート、多糖、フィブリン、ゼラチン、およびそれらの組み合わせから作製される担体が挙げられる。一実施形態では、ポリマーは、ポリ乳酸(PLA)、またはコポリ乳酸/グリコール酸(PGLA)である。ポリマー性マトリックスは、種々の形態およびサイズで調製され、単離することができる。ポリマー製剤は、治療効果の期間の延長をもたらすことができる(Reddy,Ann.Pharmacother.,34(7−8):915−923(2000)を参照)。ヒト成長ホルモン(hGH)のためのポリマー製剤は、臨床試験において使用されている(Kozarich and Rich,Chemical Biology,2:548−552(1998)を参照)。
【0090】
ポリマーマイクロスフェア持続放出製剤の例は、PCT公報の国際公開第99/15154号(Tracy et al)、米国特許第5,674,534号および同第5,716,644号(両方とも、Zale et al)、PCT公報の国際公開第96/40073号(Zale et al)、およびPCT公報の国際公開第00/38651号(Shah et al)に説明されている。米国特許5,674,534号および同第5,716,644号、ならびにPCT公報の国際公開第96/40073号は、塩による凝集に対して安定化されるエリスロポエチンの粒子を含有するポリマーマトリックスを説明する。
【0091】
いくつかの実施形態では、治療用化合物は、インプラントおよびマイクロカプセル化送達システムを含む、制御型放出製剤等の身体からの迅速な排泄に対して治療用化合物を保護する担体で調製される。エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸等の生分解性、生体適合性ポリマーを使用することができる。かかる製剤は、既知の技術を使用して調製することができる。材料はまた、Alza Corporation and Nova Pharmaceuticals,Inc.から商業的に入手することもできる。リポソーム懸濁液(細胞特異的抗原に対する単クローン抗体を有する特定の細胞を標的としたリポソームを含む)もまた、薬学的に許容される担体として使用することもできる。これらは、例えば、米国特許第4,522,811号に説明されるように、当業者に既知の方法に従い調製することができる。
【0092】
治療用化合物もまた、細胞内送達を増強するために処方することができる。例えば、リポソーム送達システムは、当該技術分野において既知であり、例えば、Chorm and Cullis,「Recent Advances in Liposome Drug Delivery Systems,」 Current Opinion in Biotechnology 6:698−708(1995)、Weiner,「Liposomes for Protein Delivery:Selecting Manufacture and Development Processes,」Immunomethods,4(3):201−9(1994)、およびGregoriadis,「Engineering Liposomes for Drug Delivery:Progress and Problems,」Trends Biotechnol,13(12):527−37(1995)を参照のこと。Mizguchi et al.,Cancer Lett.,100:63−69(1996)は、インビボおよびインビトロの両方で、タンパク質を細胞に送達するための膜融合リポソームの使用について説明している。
【0093】
治療用薬剤の用量、毒性、および治療効果は、例えば、LD50(集団の50%に対する致死量)およびED50(集団の50%において治療的有効量)を決定するための細胞培養または実験動物における標準的薬学的手順によって決定することができる。毒性効果と治療効果との間の用量比は、治療指数であり、LD50/ED50比として表すことができる。高い治療指数を呈する化合物が好ましい。毒性の副作用を呈する化合物を使用し得るが、非感染細胞に対する潜在的な損傷を最小限化することによって、副作用を減少するために、かかる化合物の標的に罹患した組織の部分に送達システムを設計するように注意すべきである。
【0094】
細胞培養アッセイおよび動物研究から得られたデータは、ヒトにおける使用のための用量の範囲を処方するのに使用することができる。かかる化合物の用量は、好ましくは、毒性をほとんどまたは全く伴わないED50を含む広域な環境濃度内にある。用量は、採用される剤形および利用される投与経路に依って、この範囲内で変動し得る。この方法で使用される任意の化合物では、治療的有効用量は、はじめに、細胞培養アッセイから見積もることができる。用量は、細胞培養中で決定されるようなIC50(すなわち、症状の最大阻害の半分を達成する試験化合物の濃度)を含む、循環血漿濃度範囲を達成するために、動物モデルにおいて処方することができる。かかる情報を使用して、ヒトにおいてより正確な有用な用量を決定することができる。血漿中のレベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーによって測定し得る。
【0095】
典型的には、治療または予防効果を達成するのに十分な芳香族カチオン性ペプチドの有効量は、1日あたり1キログラムの体重あたり約0.000001mg〜1日あたり1キログラムの体重あたり約10,000mgの範囲である。好ましくは、用量は、1日あたり1キログラムの体重あたり約0.0001mg〜1日あたり1キログラムの体重あたり約100mgの範囲である。例えば、用量は、毎日、1日おき、または2日おきに1mg/kg体重もしくは10mg/kg体重、あるいは毎週、1週間おき、または2週間おきに、1〜10mg/kg体重の範囲内であることができる。一実施形態では、ペプチドの単回用量は、1kg体重あたり0.1〜10,000マイクログラムの範囲である。一実施形態では、担体中の芳香族カチオン性ペプチド濃度は、送達される1ミリリットルあたり、0.2〜2000マイクログラムの範囲である。例示的な治療レジームは、1日あたり1回、または1週間あたり1回の投与を必要とする。治療用途では、時には、疾患の進行が減少または終結するまで、好ましくは、対象が疾患の症状の部分的または完全な改善を示すまで、比較的短い間隔での比較的高い用量が必要とされる。その後、患者には、予防レジームを投与することができる。
【0096】
例示的実施形態では、対象は、静脈内注入によって、約0.001〜約1mg/kg/時、すなわち、約0.005、約0.01、約0.025、約0.05、約0.10、約0.25、または約0.5mg/kg/時のペプチドが投与される。静脈内注入は、組織の再かん流前または再かん流後に開始し得る。いくつかの実施形態では、対象は、組織の再かん流前に静脈内ボーラス注入を受け得る。
【0097】
いくつかの実施形態では、芳香族カチオン性ペプチドの治療有効量は、標的組織における10-12〜10-6モル、例えば、約10-7モル濃度のペプチドの濃度として定義し得る。この濃度は、0.01〜100mg/kgまたは体表面積による等価な用量で送達され得る。投薬スケジュールは、最も好ましくは、連続投与(例えば、非経口的注入または経皮適用)をも含む、毎日または毎週の単回投与によって、標的組織における治療濃度を維持するために最適化される。
【0098】
いくつかの実施形態では、芳香族カチオン性ペプチドの用量は、「低」、「中」、または「高」用量レベルで提供される。一実施形態では、低用量は、約0.001〜約0.5mg/kg/時、好適には、約0.01〜約0.1mg/kg/時で提供される。一実施形態では、中用量は、約0.1〜約1.0mg/kg/時、好適には、約0.1〜約0.5mg/kg/時で提供される。一実施形態では、高用量は、約0.5〜約10mg/kg/時、好適には、約0.5〜約2mg/kg/時で提供される。
【0099】
当業者であれば、対象の疾患もしくは障害の重度、以前の治療、総合的健康状態および/または年齢、ならびに存在する他の疾患を含むが、これらに限定されない、ある要因が対象を有効に治療するために必要な用量およびタイミングに影響を及ぼし得ることを理解するであろう。その上、治療的有効量の本明細書に記載される治療用組成物による対象の治療は、単回の治療または一連の治療を含むことができる。
【0100】
本方法に従って治療される哺乳類は、例えば、ヒツジ、ブタ、ウシ、およびウマ等の家畜動物、イヌおよびネコ等のペット動物、ラット、マウス、およびウサギ等の実験用動物を含む、任意の哺乳類であることができる。
【実施例】
【0101】
本発明は、以下の実施例によってさらに例示されるが、決して限定するものと解釈すべきではない。

実施例1 ウサギモデルにおいて、血管閉塞傷害への保護における芳香族カチオン性ペプチドの効果
【0102】
ウサギモデルにおいて、血管閉塞傷害に対して保護する上での芳香族カチオン性ペプチドの効果について調査した。D−Arg−2'6'−Dmt−Lys−Phe−NH2ペプチドの心筋保護効果を本実施例において示す。
【0103】
実験方法
ニュージーランドホワイトウサギを本研究に使用した。ウサギは、オスで、生後10週間以内である。動物飼育室内の環境制御を、16.1℃〜22.2℃(61°〜72°F)の温度、および30%〜70%の間の相対湿度に維持するように設定した。室温および湿度を、1時間毎に記録し、毎日監視した。1時間毎に、約10〜15回、飼育室内で換気した。光周期は、投薬およびデータ収集に適合するように、必要に応じて、例外を設けて、12時間明/1時間暗(蛍光照明を介して)であった。日常的な観察を行った。Harlan Teklad社純製飼料(2030C)、ウサギ用飼料を、施設に到着してから1日あたり約180グラムで提供した。加えて、ウサギに、新鮮な果物および野菜を1週間に3回与えた。
【0104】
試験物として、D−Arg−2'6'−Dmt−Lys−Phe−NH2ペプチド(滅菌凍結乾燥粉末)を使用した。投与溶液を、わずか1mg/mlで処方し、一定速度(例えば、50μL/kg/分)で連続注入(静脈内)を介して送達した。対照として、通常の生理食塩水(0.9%NaCl)を使用した。
【0105】
AMIおよびPTCAの臨床設定において、予期される投与経路を模倣するために、全身麻酔下で、試験/ビヒクル物を静脈内に与えた。
Kd Scientific社の注入ポンプ(Holliston,MA 01746)を使用して、一定容量(例えば、50μL/kg/分)で、静脈内注入を末梢血管を介して投与した。
【0106】
研究は、規定のプラシーボおよび擬似制御設計に従った。要するに、10〜20匹の健康な適合したオスのウサギを、3つの試験アームのうちの1つに割り当てた(グループあたり約2〜10匹の動物)。アームA(n=10、CTRL/PLAC)は、ビヒクル(ビヒクル;VEH、静脈内)で処置された動物を含み、アームB(n=10、治療済)は、ペプチドで処置された動物を含み、アームC(n=2、擬似)は、ビヒクル(ビヒクル;VEH、静脈内)またはペプチドで処置された、擬似手術時の対照を含む。
表7.研究計画
【表7】

【0107】
すべての場合において、30分の虚血侵襲(冠動脈閉塞)の発症約10分後に、治療を開始し、再かん流の後に最大3時間の間継続した。すべての場合において、心臓血管機能を、虚血前および虚血中の両方、ならびに再かん流後に最大180分(3時間)の間で監視した。実験を再かん流の3時間後(研究の最後)に終了し、この時点の付可逆的心筋傷害(組織形態計測による閉塞面積)を評価し、それは、研究の主要エンドポイントであった。研究計画を表7および図1に要約する。
【0108】
麻酔/外科準備。一般的な麻酔を、ケタミン(約35〜50mg/kg)/キシラジン(約5〜10mg/kg)の混合物を用いて筋肉内(IM)で行った。麻酔薬投与のために、静脈カテーテルを末梢血管(例えば、耳)内に定置した。自律神経機能を保護するために、プロポフォール(約8〜30mg/kg/時)およびケタミン(約1.2〜2.4mg/kg/時)の連続注入で麻酔を維持した。カフ付き気管チューブを、気管切開(腹側正中切開)を介して定置し、それを使用して、PaCO2値をおおまかに生理学的範囲内に維持するために、従量式動物用ベンチレータ(約12.5ml/kgの1回換気量で約40呼吸/分)を介して、95%のO2/5%のCO2混合物を用いて、肺を機械的に通気した。
【0109】
麻酔の外科的平面が到達されると、2つの標準的ECG誘導(例えば、誘導II、aVF、V2)を形成する経胸腔的または針電極のいずれかを定置した。頸部切開は、単離された頸動脈を露出し、周辺組織なく切開され、デュアルセンサの高忠実度マイクロマノメーター付きカテーテルを用いてカニューレを挿入し、大動脈(ルート、近位トランスドゥーサー)および左室(遠位トランスドゥーサー)圧力を同時に判定するために、このカテーテルの先端を、大動脈弁にわたって逆行的に左室(LV)に前進させた。頸動脈切開はまた、頸静脈も露出し、中空の注入カテーテル(血液サンプリングのための)でカニューレ挿入した。最後に、ビヒクル/試験物の投与のために、付加的な静脈カテーテルを末梢血管(例えば、耳)内に定置した。
【0110】
その後、動物を右横臥位で定置し、正中部開胸術および心膜切開術を介して心臓を露出させた。左冠動脈回旋枝(LCX)および左冠動脈前下行枝(LAD)露出するために、心臓を心膜クレイドル上に吊垂した。絹糸結紮を、近位LADの周囲に(先細針を使用して)、および、必要に応じて、各動物の冠動脈解剖に依って、LCX辺縁冠動脈のうちの1つまたは複数の枝の周囲に緩く定置した。これらのスネアの締め付け(ポリエチレンチューブの小片を介する)は、左室心筋の一時的虚血の一部分のレンダリングを可能にした。
【0111】
計装が完了したら、少なくとも30分間、血行動態の安定および適切な麻酔深度を確認/保証した。その後、血行動態/呼吸の安定性を促進するために、動物を、アトラクリウム(約0.1〜0.2mg/kg/時の静脈内)で麻痺させた。アトラクリウム投与の後に、自律神経系の活動亢進の兆候および/またはBIS値の変化を使用して、麻酔深度を評価、および/または静脈麻酔薬を増量した。
【0112】
実験プロトコル/心臓血管のデータ収集。外科的準備の直後に、動物をヘパリン化し(100単位のヘパリン/kg/時、静脈内ボーラス)、血行動態安定化の後に(約30分)、心筋酵素/バイオマーカー、ならびに試験物濃度の評価のために、静脈血を含む、ベースラインデータを収集した。
【0113】
血行動態安定化およびベースライン測定の後に、動物は、LAD/LCX冠動脈スネアを締め付けることによって、30分間の急性虚血侵襲を受けた。心筋虚血を、LAD/LCXの遠位分散における色(すなわち、チアノーゼ)の変化によって、かつ心電図の変化の開始によって確認した。虚血の約10分後、動物は、ビヒクル(生理食塩水)またはペプチドのいずれかの連続注入を受け、虚血は、治療の開始後、さらに20分間(すなわち、合計30分)継続した。その後(すなわち、虚血の30分後、その最後の20分間は、治療と重なる)、冠動脈スネアを開放し、以前の虚血心筋を、最大3時間の間、再かん流した。ビヒクルまたはペプチドでの治療を、再かん流期間にわたって継続した。擬似手術を受けた動物において、血管スネアを、虚血/再かん流の開始時に操作したが、締め付けまたは緩めていなかったことに留意されたい。
【0114】
心臓血管データ収集は、11回の規定時点で行った:計装/安定化(すなわち、ベースライン)後、虚血の10時間および30分後、ならびに、再かん流の5分後、15分後、30分後、60分後、120分後、および180分後。実験をとおして、アナログ信号を、デジタル的にサンプリング(1000Hz)し、データ獲得システム(IOX;EMKA Technologies)で連続的に記録し、以下のパラメータを、上述の時点で判定した:(1)双極性経胸壁心ECG(例えば、Lead II、aVF):リズム(不整脈の定量化/分類)、RR、PQ、QRS、QT、QTc、短期QT不安定性、およびQT:TQ(回復)、(2)大動脈内のソリッドステートマノメーター(Millar):動脈/大動脈圧(AoP)、および(3)LV内のソリッドステートマノメーター(Millar):左室圧(ESP、EDP)および派生指数(dP/dtmax、dp/dtmin、Vmax、およびtau)。加えて、ペプチド治療の有無でのI/R侵襲からもたらされる、不可逆的心筋傷害(すなわち、梗塞)の度合いを判定/定量化するために、心臓バイオマーカー、ならびに梗塞領域を評価した。
【0115】
血液サンプル。薬物動態(PK)分析、ならびに6回のデータ収集時点(ベースライン、虚血の30分、ならびに再かん流の30分後、60分後、120分後、および180分後)でのバイオマーカー分析を介する心筋傷害の評価の両方ために、静脈(<3mL)の全血サンプルを収集した。加えて、血中ガスの判定のために、3つの動脈(約0.5mL)全血サンプルを、ベースライン、虚血の60分後、ならびに再かん流の60分後および180分後に収集し、動脈サンプルを血中ガスシリンジ中に収集し、I−Stat分析器/カートリッジ(CG4+)を介する血中ガスの測定のために使用した。
【0116】
血液病理/組織形態計測。プロトコルの完了時に、I/R侵襲からもたらされる不可逆的心筋傷害(すなわち、梗塞)を評価した。要するに、冠動脈スネアを、再度締め付け、エバンスブルー染料(1mL/kg、Sigma、St.Louis,MO)を静脈内に注入して、虚血中の心筋の危険領域(AR)を描出した。約5分後、心臓を停止し(左心房への塩化カリウムの注入によって)、新たに摘出した。LVを、その長軸に対して垂直(頂点から基部)に、3mmの厚さの切片に区分した。その後、切片を、20分間、2%のトリフェフェニル−テトラゾリウム−クロライド(TTC)中で、37℃で培養し、10%の非緩衝ホルマリン溶液(NBF)中で固化した。
【0117】
固化後、梗塞および危険領域を、デジタル的に描出/測定した。そのような目的のために、各切片の厚さを、デジタルマイクロメーターで測定し、その後、撮影/スキャンした。すべての写真を、画像分析プログラム(Image J、National Institutes of Health)内にインポートし、コンピューター補助によるプラノメトリーを実施して、梗塞の全体のサイズ(I)および危険(AR)を判定した。各切片では、AR(すなわち、ブルーに染色されていない)を、LV領域の割合で表し、梗塞サイズ(I、染色されていない組織)を、AR(I/AR)の割合で表した。すべての場合において、治療割付け/研究計画について盲検下に置かれた人材によって、定量的組織形態計測を実施した。
【0118】
動物観察。データを、EMKA(分析のためのECG自動ソフトウエアを使用するIOXシステム)(EMKA Technologies)上で取得した。すべての生理学的パラメータの測定を、(デジタル)オシログラフトレーシングから手動または自動で行った。各標的とした時点からのデータのうちの60個からの平均値を使用したが(可能な場合)、上述のように、(必要に応じて)より細かい/詳細な時間データ分析(修正を介する)を可能にするために、信号/トレーシングを、実験にわたって連続的に記録した。マイクロソフトのエクセルを使用してさらなる計算を実施した。データを標準誤差での平均として表す。
【0119】
結果
30分間の虚血および3時間の再かん流に露出された心臓の梗塞領域を図2〜6に示す。図2Aおよび2Bは、擬似手術(結紮糸が適用されたが、締め付けられていない)、プラシーボ、またはペプチドでのウサギの梗塞サイズを示すデータを表す。LVを、その長軸に対して垂直(頂点から基部)に、3mmの厚さの切片に区分した。図2Aは、心臓切片の写真、およびプラシーボで処置された擬似ウサギの梗塞サイズを強調するコンピューター生成画像である。図2Bは、心臓切片の写真およびペプチドで処置された擬似ウサギの梗塞サイズを強調するコンピューター生成画像である。
【0120】
図3Aおよび3Bは、心臓虚血を誘発し、プラシーボで処置された2匹の異なる対照ウサギの梗塞サイズを示すデータを表す。各図は、心臓切片の写真、および梗塞サイズを強調するコンピューター生成画像を示す。
【0121】
図4A、4B、4C、4D、および4Eは、心臓虚血を誘発し、ペプチドで処置された5匹の異なるウサギの梗塞サイズを示すデータを表す。ペプチドの投与は、対照と比較して、梗塞サイズの減少をもたらした。表8は、本研究に使用された動物のうちのそれぞれでの、危険領域と左室領域、梗塞された領域と左室領域、および梗塞領域と危険領域の比率を示すデータを表す。図5〜6は、ペプチドで処置された対象および対照における、危険領域と左室領域、危険領域と左室領域、および梗塞領域と危険領域の比率を示す、さらなるデータを表す。
表8.研究動物の組織病理学的結果
【表8】

【0122】
これらの結果は、急性心筋虚血および再かん流の標準化されたウサギモデルにおいて、ペプチドは、虚血期間の10分から30分の静脈内連続注入に続き、再かん流後の180分間の間、静脈内連続注入として投与されたとき、対照グループと比較して、心筋梗塞のサイズを減少することができた。治療に対して限定的反応が存在したウサギでは、心筋梗塞領域のサイズは、対照動物において見られた梗塞サイズに対して減少した。再かん流の3時間後以内の間、すなわち、30分間の治療は、同等の心筋救済(データ図示せず)を提供した。これらの結果は、ペプチドによる治療が、急性心虚血再還流傷害の症状の発生を予防することを示唆する。従って、芳香族カチオン性ペプチドは、哺乳類の対象において、血管閉塞傷害を予防し、治療するための方法に有用である。
【0123】
実施例2.ヒトにおいて、血管閉塞傷害への保護におけるペプチドの効果
この実施例は、血行再建時に、D−Arg−2'6'−Dmt−Lys−Phe−NH2の投与が、急性心筋梗塞中に、梗塞のサイズを制限するかどうかを判定する。
【0124】
研究グループ。胸痛の開始を呈し、血行再建術(例えば、PCIまたは血栓溶解)で治療するように臨床決定がなされた、18歳以上の男性および女性は、登録資格がある。患者は、STEMIまたは非STEMIであり得る。STEMI患者は、心筋への血液供給の切断を示唆し、また、患者のECGが典型的なST上昇型心臓発作パターンを示す場合の症状を呈する。従って、症状、臨床検査、およびECG変化に基づき診断がなされる。非ST上昇型心臓発作の場合では、胸痛の症状は、STEMIの症状と同一である場合があるが、重要な差異は、患者のECGが、心臓発作に関連する典型的なST上昇変化を示さないことである。患者は、しばしば、狭心症の既往歴を有するが、疑われる発作時のECGは、全く異常を示し得ない。診断は、既往歴および症状に対して疑われ、血中の心筋酵素と呼ばれる物質の濃度の上昇を示す血液試験によって確定される。
【0125】
血管造影および血行再建。左室および冠動脈血管造影を、標準技術を使用して血行再建の直前に実施する。
血行再建を、直接ステント留置を使用するPCIによって実施する。代替的血行再建術には、バルーン血管形成、経皮経管冠動脈形成、および方向性冠動脈粥腫切除が挙げられるが、これらに限定されない。
【0126】
実験プロトコル。ステントが埋め込まれる前に冠動脈血管造影を実施するし、登録基準を満たす患者は、対照グループまたはペプチドグループのいずれかに無作為に割り当てられる。コンピューター生成ランダム配列を使用して無作為化を実施する。直接ステント留置の10分前以内に、ペプチドグループの患者は、D−Arg−2',6'−Dmt−Lys−Phe−NH2の静脈内ボーラス注射を受ける。ペプチドは、通常の生理食塩水中で溶解し、肘正中静脈内に位置付けされるカテーテルを介して注入される。患者は、以下の治療アーム(例えば、0、0.001、0.005、0.01、0.025、0.05、0.10、0.25、0.5、および1.0mg/kg/時)のうちのいずれかに均等に無作為化される。ペプチドは、再かん流の約10分前〜PCIの約3時間後に静脈内注入で投与される。再かん流期間後、対象には、任意の投与手段、例えば、皮下または静脈内注入によって、慢性的に、ペプチドが投与される。
【0127】
梗塞サイズ。主要エンドポイントは、心臓バイオマーカーの測定によって評価された梗塞のサイズである。血液サンプルを、入院時、およびその後3日間にわたって繰り返し取得した。冠動脈バイオマーカーを各患者において測定する。例えば、クレアチンキナーゼおよびトロポニンI放出(Beckmanキット)の濃度曲線下面積(AUC)(任意単位で表す)は、コンピューター化された面積測定によって、各患者において測定され得る。主要二次エンドポイントは、心臓磁気共鳴画像(MRI)上で見られる遅延増強の領域によって測定され、梗塞後の5日目に評価された梗塞のサイズである。遅延強調分析では、1キログラムあたり0.2mmolのガドリニウム−テトラアザシクロドデカン四酢酸(DOTA)を、1秒あたり4mlの速度で注入し、15mlの生理食塩水で洗い流した。遅延増強を、3次元反転回復グラディエントエコー配列を使用して、ガドリニウム−DOTAの注入10分後に評価する。画像を、全左室を覆う短軸切片において分析する。
【0128】
心筋梗塞は、同一の切片内の遠隔の梗塞されていない心筋の参照領域内を上回る2SD以上である、心筋梗塞後信号の強度によって定量的に確定される、心筋内の遅延増強によって特定される。すべての切片では、梗塞領域の絶対質量は、以下の式に従い計算される:梗塞質量(組織のグラム)=Σ(増強された領域[平方センチメートル×平方センチメートル])×切片の厚さ(センチメートル)×心筋特定濃度(立方センチメートルあたり1.05g)。
【0129】
確立された危険因子に対するバイオマーカー。N末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド(NT−proBNP)およびグルコースのレベル、ならびに推算糸球体濾過量(eGFR)を測定する。これらのバイオマーカーはすべて、約2年半の追跡期間中央値を介して、すべての全死因原因を有意に予測する。これらの3つのバイオマーカーに基づき危険スコアを計算することで、追跡期間中に危険が高い患者を特定することができる。ペプチドが、ペプチドを受けないPCIを受ける患者と比較して、PCIを受ける患者において、これらのバイオマーカーの危険スコアを低下することが予測される。血液サンプルは、CK−MBおよびトロポニンIを判定するために服用され得る。CK−MBおよびトロポニンI放出の濃度曲線下面積(AUC(任意単位で表す)は、コンピューター化された面積測定によって、各患者において測定され得る。
【0130】
他のエンドポイント。ペプチドの全血濃度は、PCIの直前、ならびにPCIの1時間後、2時間後、4時間後、8時間後、および12時間後である。クレアチニンおよびカリウムの血圧および血漿濃度を、入院時、ならびにPCIの24時間後、48時間後、および72時間後に測定する。ビリルビン、γ−グルタミルトランスフェラーゼ、およびアルカリホスファターゼの血漿濃度、ならびに白血球数を、入院時およびPCIの24時間後に測定する。
【0131】
再かん流後の最初の48時間以内に生じる、死亡、心不全、急性心筋梗塞、脳卒中、反復性虚血、反復血行再建に対する必要性、腎不全または肝不全、血管合併症、および出血を含む、主な有害事象の累積発生率を記録する。心不全および心室細動を含む、梗塞関連の有害事象を評価する。加えて、急性心筋梗塞の3ヶ月後に、心臓事象を記録し、左室機能全体を、心エコー検査(Vivid7システム、GE Vingmed)によって評価する。
【0132】
再かん流時のペプチドの投与は、プラシーボで見られる梗塞よりも、ある程度小さい梗塞に関連することが予測される。
【0133】
実施例3.ヒトにおいて、血管閉塞傷害への保護におけるペプチドの効果
本実施例は、血行再建時のD−Arg−2'6'−Dmt−Lys−Phe−NH2の投与が、急性心筋梗塞中に、梗塞のサイズを制限するかどうかを判定する。
【0134】
研究グループ。AMIの臨床症状および脈管再生を示す、18歳以上の男性および女性は、登録資格がある。登録資格を満たす患者は、対照グループまたはペプチドグループに無作為に割り当てられる。直接ステント留置の10分前以内に、ペプチドグループの患者は、D−Arg−2′,6′−DMT−Lys−Phe−NH2の静脈内ボーラス注射を受ける。ペプチドは、通常の生理食塩水中で溶解し、肘正中静脈内に位置付けされるカテーテルを介して注入される。患者は、以下の治療アーム(例えば、0、0.001、0.005、0.01、0.025、0.05、0.10、0.25、0.5、および1.0mg/kg/時)のうちのいずれかに均等に無作為化される。ペプチドは、再かん流の約10分前〜血行再建の約3時間後に静脈内注入で投与される。再かん流期間後、対象には、任意の投与手段、例えば、皮下または静脈内注入によって、慢性的に、ペプチドが投与される。
【0135】
エンドポイントおよびバイオマーカー。エンドポイントおよびバイオマーカーを、実施例2に説明するとおりに測定する。再かん流時のペプチドの投与は、プラシーボで見られる梗塞よりも、ある程度小さい梗塞に関連することが予測される。
【0136】
参照文献
Leshnower BG,Kanemoto S,Matsubara M,Sakamoto H,Hinmon R,Gorman JH 3rd,Gorman RC.Cyclosporine preserves mitochondrial morphology after myocardial ischemia/reperfusion independent of calcineurin inhibition.Ann Thorac Surg.,2008 Oct,86(4):1286-92.
Zhao L,Roche BM,Wessale JL,Kijtaworarat A,Lolly JL,Shemanski D,Hamlin RL,Chronic xanthine oxidase inhibition following myocardial infarction in rabbits:effects of early versus delayed treatment.Life Sci.2008 Feb 27;82(9-10):495-502.Epub 2008 Jan 24.PubMed PMID:18215719.
Hamlin RL,Kijtawornrat A.Use of the rabbit with a failing heart to test for torsadogenicity.Pharmacol Ther,2008 8 Aug,119(2):179-85.Epub 2008 Apr 20.
【0137】
均等物
本発明は、本発明の個々の態様の単なる例示を目的とする本出願に記載される特定の実施形態に限定されるものではない。本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本発明の多くの改変および変更を行うことができることは、当業者には明らかであろう。
本発明の範囲内の機能的に均等な方法および装置についても、本発明において列挙した方法および装置に加えて、上記の説明から当業者には明らかであろう。かかる改変および変更は、添付の請求項の範囲内に含まれることが意図される。本発明は、かかる請求項が権利を与えられる均等物のすべての範囲とともに、添付の請求項の用語によってのみ制限されるものである。本発明は、特定の方法、試薬、化合物、組成物、または生理学的系に限定されず、当然ながら、変動する場合があることを理解されたい。本発明において使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、制限することを意図しないことも理解されたい。
【0138】
加えて、本開示の特性または態様が、マーカッシュグループに説明されているが、本開示もまた、それによって、マーカッシュグループの任意の個々の成員またはサブグループの用語において説明されることを、当業者は理解するであろう。
【0139】
当業者に理解されるとおり、任意の、およびすべての目的のために、特に、書面による説明の提供に関して、本明細書に開示されるすべての範囲もまた、任意の、およびすべての考えられる部分的範囲、およびその部分的範囲の組み合わせを包含する。任意の列挙した範囲は、少なくとも平等に半分、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1等に分けられた同一の範囲を十分に説明し、実現可能にすると、容易に理解することができる。非制限的な例として、本明細書に説明される各範囲は、容易に、下部3分の1、中部3分の1、および上部3分の1等に分けることができる。当業者に理解されるとおり、「最大」、「少なくとも」、「〜以上」、「〜以下」、および同等物等のすべての言語は、記載した数字を含み、実質的に、上述の部分的範囲に分けることができる範囲を指す。最後に、当業者に理解されるとおり、範囲は、それぞれの個々の成員を含む。従って、例えば、1〜3個の細胞を有する基は、1個、2個、または3個の細胞を有する基を指す。同様に、1〜5個の細胞を有する基は、1個、2個、3個、4個、または5個等の細胞を有する基を指す。
【0140】
本明細書に参照または引用された、すべての図および表を含む、すべての特許、特許出願、仮出願、および公報は、それらが本明細書の明確な教示と矛盾しない範囲で、参照することによって、その全体が組み込まれる。
【0141】
他の実施形態を以下の請求項内に説明する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類の対象において血管閉塞傷害を治療するための方法であって、
(a)前記対象に、治療的有効量のD−Arg−2'6'−Dmt−Lys−Phe−NH2ペプチド、またはその薬学的に許容される塩を投与することと、
(b)前記対象に、血行再建術を実施することと、
を含む、方法。
【請求項2】
対象に血行再建術前にペプチドが投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
対象に血行再建術後にペプチドが投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
対象に血行再建術中および血行再建術後にペプチドが投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
対象に血行再建術前、血行再建術中、および血行再建術後に連続してペプチドが投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
対象に血行再建術後に少なくとも3時間の間ペプチドが投与される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
対象に血行再建術の約1時間前からペプチドが投与される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
対象に血行再建術の約30分前からペプチドが投与される、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
対象が心筋梗塞に罹患している、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
対象がST上昇型心筋梗塞または非ST上昇型心筋梗塞に罹患している、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
対象が血管形成を必要としている、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
血行再建術がバルーン血管形成、ステントの挿入、経皮経管冠動脈形成、または方向性冠動脈粥腫切除から成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
血行再建術が前記閉塞の除去である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
血行再建術が1つまたは複数の血栓溶解剤の投与である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
1つまたは複数の血栓溶解剤が、組織プラスミノーゲン活性化因子、ウロキナーゼ、プロウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、プラスミノーゲンのアシル化型、プラスミンのアシル化型、およびアシル化ストレプトキナーゼ−プラスミノーゲン複合体から成る群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
血管閉塞が心臓血管閉塞である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
血管閉塞が頭蓋内血管閉塞である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
血管閉塞が腎血管閉塞である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
血管閉塞が」、深部静脈血栓症、抹消血栓症、塞栓性血栓症、肝静脈血栓症、静脈洞血栓症、静脈血栓症、閉塞した動静脈短絡、および閉塞したカテーテルデバイスから成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
CK−MB、トロポニン、N末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド(NT−proBNP)、グルコース、および推算糸球体濾過量(eGFR)のうちの1つまたは複数のレベルが、血行再建術を受けたがペプチドが投与されていない比較対象に対して、前記ペプチドが投与された対象において減少する、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
血行再建術後の入院中の再梗塞、鬱血性心不全、反復血行再建術、腎不全、または死亡の発生率が、血行再建術を受けたがペプチドが投与されていない比較対象に対して、前記ペプチドが投与された対象において減少する、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
血行再建術後6ヶ月以内の主要な有害心血管事象、死亡、心臓死、または鬱血性心不全の発生の発生率が、血行再建術を受けたがペプチドが投与されていない比較対象に対して、前記ペプチドが投与された対象において減少する、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図5】
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【図6】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【公表番号】特表2013−516425(P2013−516425A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−547305(P2012−547305)
【出願日】平成22年12月30日(2010.12.30)
【国際出願番号】PCT/US2010/062538
【国際公開番号】WO2011/082324
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(512044909)ステルス ペプチドズ インターナショナル インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】