説明

血糖の上昇を抑制するための薬剤

【課題】生活習慣病の中核を占める糖尿病の進行を安全に抑制することのできる薬剤を提供する。
【解決手段】血糖の上昇を抑制するための薬剤として、牡蠣の少なくとも肉から熱水抽出などで取り出したエキスの含有物を用いるものとする。これにより、糖尿病に関連する疾患の進行を副作用を伴わずに抑制する上に大きな効果が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血糖の上昇を抑制するための薬剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、欧米先進国を中心として糖尿病などの生活習慣病が蔓延しつつあり、我が国も例外ではなく、食環境の欧米化に伴う生活習慣病の急増が顕在化している。その結果、肥満症や高血糖症の人口が急激に増加している。
【0003】
高血糖が持続すると、血管内蛋白との糖化反応等により、動脈硬化、腎障害、網膜症、その他の重篤な糖尿病合併症へとつながる。また、糖尿病によりインスリンに対する感受性が低下した状態では、高インスリン血症により、脂質代謝異常が起こり、高脂血症が誘発される。
【0004】
これらの症状を緩和するための薬剤として、抗高脂血症作用および血糖値降下作用を示す数多くの化合物が今日までに報告されている(特許文献1などを参照されたい)。
【特許文献1】特開平8−40906号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかるに、従来の糖尿病の治療効果が高い医療用医薬品の多くは化学的手法により合成されたものであり、その性質上、副作用が強い上に多剤服用による重複毒性の問題などが存在するため、長期間に亘る使用には適していない。
【0006】
本発明は、このような従来の問題点を解消すべく案出されたものであり、その主な目的は、生活習慣病の中核を占める糖尿病の進行を安全に抑制することのできる薬剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を果たすために、本発明においては、血糖の上昇を抑制するための薬剤として、牡蠣の少なくとも肉から熱水抽出などで取り出したエキスの含有物を用いるものとした。
【発明の効果】
【0008】
このような本発明のエキスによれば、血糖の上昇を抑制する作用が得られるので、糖尿病に関連する疾患の進行を副作用を伴わずに抑制する上に大きな効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に本発明について詳細に説明する。
【0010】
本発明が提供する血糖上昇を伴う疾患に対する抑制作用を示す薬剤は、牡蠣から抽出したエキスを含有するものである。この牡蠣のエキスは、ベッコウガキ、マガキ、イタボガキなどの牡蠣属(Ostea gigas Thunb.)を、貝殻もろともに、或いは肉のみを取り出し、それを生のまま、或いは乾燥させた後に粉砕したものを原料とし、熱水抽出などの公知の抽出法を利用して取り出したものである。
【0011】
この抽出液を濃縮処理することにより、液体製剤を得ることができる。さらにこの濃縮液を噴霧乾燥もしくは凍結乾燥することにより、粉末製剤を得ることができる。
【0012】
なお、牡蠣からのエキスの抽出方法及び精製方法については公知の方法を適用し得るので、ここではこれ以上の説明は省略する。
【0013】
本発明による薬剤を医薬品として用いる際には、予防や治療に有効な量の牡蠣のエキスが製薬学的に許容できる担体または希釈剤と共に製剤化されると良い。その他にも、結合剤、吸収促進剤、滑沢剤、乳化剤、界面活性剤、酸化防止剤、防腐剤、着色剤、香料、甘味料などを添加しても良い。
【0014】
このような医薬製剤において、有効成分である牡蠣エキスの担体成分に対する配合割合は、1.0〜80.0重量%の範囲であり、特に5.0〜50.0重量%の範囲が好ましい。
【0015】
医薬製剤の剤形としては、顆粒剤、細粒剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、噴霧剤、溶液剤、懸濁液剤、軟膏剤、ゲル剤、ペースト剤、クリーム剤などを挙げることができ、その投与経路としては、経口、静脈内、筋肉内、皮下、関節腔など、種々の投与経路を挙げることができる。また、有効成分の投与量および投与頻度は、病状、年齢、性別、投与経路などに応じて適宜に変更することができる。
【0016】
本発明による牡蠣のエキスは、薬剤に添加しても良い。この薬剤は、生体機能の調節など、生理面での働き(3次機能)を十分に発揮するように製造された食品を指し、例えば、「健康・栄養食品アドバイザリー・スタッフ・テキストブック」(平成15年7月30日、第一出版株式会社発行、第92、93頁)に記載されている通り、一般の食品はもとより、いわゆる健康食品とは一線を画する別のものとして定義されたものである。このような牡蠣エキスを含有する薬剤を適時摂取することにより、糖尿病の発症および進行を安全に抑制することができる。
【0017】
次に本発明による牡蠣エキスを含有した薬剤の血糖上昇抑制効果の検証結果について説明する。
【0018】
7週齢、雌性の自然発症高血糖(KKAy)マウスに対し、予備飼育期間(一週間)中は固形飼料を与えつつ血糖測定および状態観察を行い、空腹時の血糖の平均値がほぼ一定となるように10匹ずつ2群に群分けした。そして各群の一方(Control群)に対して溶剤の懸濁液を、他方(被験物質投与群)に対して被験物質としての牡蠣エキスの懸濁液を、それぞれ1日1回28日間連続的に強制経口投与し、投与期間中の血糖値の変動を、投与開始時、7日目、14日目、21日目に、測定日の午前10時に眼窩静脈叢から採血して空腹時血糖値を測定した。
【0019】
なお、被験物質の体重比投与量は、200mg/kg相当量とした。試験結果は平均値±標準偏差で表し、有意差検定はstudent's-tを用いた。
【0020】
その結果、図1に示す通り、溶剤の懸濁液のみを与えた、つまり被験物質を与えなかった陽性対照群の空腹時血糖値は、試験開始時が140.01mg/dlであったのに対し、21日後には、230.10mg/dlと糖尿病血糖値を呈し、しかも更に上昇傾向にあった。
【0021】
これに対し、被験物質を投与した群の空腹時血糖値は、投与後21日目に210.30mg/dlと陽性対照群に対して有為な(約−20mg/dl)血糖上昇抑制効果を示し、その後も顕著に血糖上昇が抑制された。
【0022】
以上により、牡蠣の主に肉から抽出したエキスを含有した懸濁液には、自然発症高血糖(KKAy)マウスに対する血糖上昇抑制効果のあることが実証された。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明による薬剤は、インスリン依存性糖尿病、およびインスリン非依存性糖尿病からなる群から選択される血糖上昇を伴う疾患などの予防、改善、或いは治療に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】血糖値上昇と経過日数との関係を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血糖上昇を抑制するための薬剤であって、
牡蠣の肉を貝殻と共に、生のまま、あるいは乾燥した後に粉砕したものを原料として用いて抽出して得たエキスを含有することを特徴とする血糖上昇を抑制するための薬剤。


【図1】
image rotate


【公開番号】特開2010−168399(P2010−168399A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−100544(P2010−100544)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【分割の表示】特願2005−154781(P2005−154781)の分割
【原出願日】平成17年5月27日(2005.5.27)
【出願人】(397006841)株式会社ソノコ (8)
【Fターム(参考)】