説明

行動状態推定装置、行動状態学習装置、行動状態推定方法、行動状態学習方法およびプログラム

【課題】自由度の高い行動中の筋肉の微細な振動成分を、非侵襲的で簡便に装着できるセンサから得られるデータを演算することで推定可能にし、様々な行動中の筋肉の負荷状態などを観測できるようにする。
【解決手段】被験者に装着された振動検知センサによって測定された信号から行動状態を推定する行動状態推定装置100Aは、振動検知センサによって測定された信号を周波数変換し、周波数変換して得られた周波数成分のうち所定の周波数バンドから統計量を求める周波数バンド統計量演算部130と、統計量に基づき被験者の行動状態を推定する行動状態成分演算部140と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、行動状態推定装置、行動状態学習装置、行動状態推定方法、行動状態学習方法およびプログラムに関するものである。より詳細には、被験者の筋肉負荷量や疲労といった、行動に付随する筋肉等の状態の推定を行うものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1、特許文献2および非特許文献1に開示されているとおり、筋肉の表面に発生する微細振動を振動検知センサなどの非侵襲的なセンサで検出し、検出した微細振動から、筋力負荷や筋肉疲労度と関連があると考えられている筋音図を算出する装置などがあった。
【0003】
非特許文献1に開示されている技術では、被験者の腕を測定装置上の固定金具で固定した状態におき、腕に加速度センサを装着した上で、固定された腕を動かそうと力む動作により被験者の腕に筋力負荷をかけている。筋力負荷をかけた結果、腕の表面上にあらわれる微細振動を加速度の変化として読み取り、これを筋音図としている。また、実際に被験者が発揮している筋力は、手首に固定したひずみゲージにより読み取る。被験者の腕は、筋力負荷により多少動く程度となる。当該技術では、筋音図は、さらに短時間フーリエ変換(STFT)により複数の周波数成分に分解される。そして、当該技術では、それら複数の周波数成分の振幅量に基づき平均周波数と振幅のRMS(Root Mean Square)値(振幅RMS)を計算し、それらを筋力負荷や筋疲労と関係あるファクターとしている。本文献に開示された手法では、被験者の身体がほとんど動かない状態において筋力負荷を持続的にかけるため、加速度センサから得られる加速度成分としては、鉛直方向に静的な成分である重力加速度を除くと、ほぼ筋力負荷によって発生する筋肉の振動成分のみとなる。そのため、当該技術は、平均周波数などといった筋肉の振動状態を少ないノイズで抽出できる理想的な方法である。
【0004】
特許文献1に開示されている技術では、被験者が鎖で固定されたハンドルを引っ張り上げるように力を入れることで、静止しながら筋力負荷をかけられる環境下で筋音図を測定している。筋肉表面にやや圧迫する形で装着する圧電素子を用い、圧電素子により得られる圧力変化を数値で表したものを筋音図として検知している。また、当該技術では、この筋音図に対してフーリエ変換やウェーブレット変換を用いた周波数変換などにより非特許文献1と同様に周波数変換を行い、平均周波数と振幅RMSを計算している。当該技術では、これらの平均周波数や振幅RMSを筋肉の負荷や疲労と関係のあるファクターとして用いている点についても非特許文献1に開示されている技術と同様である。特許文献1に開示された手法においても、被験者は固定されたハンドルを引っ張ろうと筋力負荷をかけている状態のため、身体は動かず静止の状態である。特許文献1に開示されている技術は、非特許文献1に開示されている技術のように固定金具で腕を固定するものではないが、簡便に被験者を筋力負荷の持続した静止状態におくことが可能である。したがって、特許文献1に開示されている技術を用いた場合においても、非特許文献1に開示された技術を用いた場合と同様に、ほぼ筋肉の振動成分のみが安定的に得られ、筋肉の振動成分から得られる平均周波数や振幅RMSなども、筋肉の振動状態を示す理想的な指標となる。
【0005】
特許文献2に開示されている技術では、被験者の下肢を拘束し、理想的な歩行動作を行うように駆動する歩行訓練装置において、大腿部にピエゾ素子・コンデンサマイク・加速度センサなどにより得られる振動成分を筋音図として抽出している。特許文献2に開示されている技術においても、非特許文献1および特許文献1に開示されている技術と同様に、平均周波数と振幅RMSを用いている。また、特許文献2に開示されている技術では、筋音図の周波数成分のうち、スペクトル量のピーク値を、健康な足と訓練対象の足について比較することにより、ピーク値の偏差を求め、ピーク値の偏差から適切な介助量を決定している。特許文献2に開示されている技術では、被験者が静止状態ではないものの、被験者の歩行動作時の大腿部の動きというある程度制約された動きを検出対象としている。そのため、被験者の動きに起因するノイズは限定的であり、健康側の足と訓練対象側の足について比較をして介助量を決定するのが特許文献2に開示されている技術の目的であるため、当該技術は、多少のノイズを許容できるシステムである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−141223号公報
【特許文献2】特開2004−167056号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】筋疲労を伴う持続収縮時の筋音図(Mechanomyogram)の時間−周波数解析 伊藤、他、信学論(D) Vol.J86−D−II No.1 pp.130−139 2003年1月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記した従来技術では、自由度の高い行動(例えば、身体を拘束しない自由な運動や体操、環境を限定しない非定型な行動など)をしている人の筋力負荷などを検出することができなかった。これらの従来技術に共通かつ重要な点として、筋音図を検知するために振動検知センサを装着する部位の動きが、非常に制約された小さな動きになっているということが挙げられる。非特許文献1、特許文献1に開示されている技術では、被験者はほぼ静止状態であり、特許文献2に開示されている技術では、大腿部の運動はかなり制約された歩行訓練の動きである。このように、理想的な行動状態下において筋音図を取得し、そこから平均周波数や振幅RMSなどを算出すると、身体の動きに伴うノイズ成分が小さい、もしくは固定的なため、筋肉の微細な振動成分を主要に反映する値となりやすい。しかしながら、身体を拘束しない自由な運動や環境を限定しない非定型な運動では、運動の動き自体のほか、被験者周囲の物体などとの干渉(接触など)による衝撃など、多様な振動成分が観測されてしまう。このような場合に、筋音図から平均周波数と振幅RMSを求めると、筋肉の微細振動以外の成分の影響が大きいため、平均周波数と振幅RMSは、筋肉への負荷や疲労状態を反映し難い値となる。
【0009】
また、加速度センサを用いた場合は、装着部位が動くと、たとえゆっくりした動きであっても、センサの向きが変化し、1Gの加速度が常に発生している重力の向きの変化により、観測される加速度が変化するケースが多く、波形として大きな変化となって平均周波数や振幅RMSに大きく影響を及ぼす。例えば、行動に起因する加速度は1〜2G程度であるが、重力加速度は1Gであるため、センサの方向が変化すると、センサに加わる重力加速度が−1G〜1Gの範囲で変化する。この加速度変化は様々な周波数成分を含んでいるが、これが行動に起因する加速度に重畳される。かなりゆっくりとした運動の場合は、例えば、バンドパスフィルタなどを用いることで筋肉の微細振動以外の成分を除去することもある程度可能と考えられる。しかし、実際の通常の運動には多様な周波数成分が含まれ、バンドパスフィルタを用いても一様な除去は難しい。また、加速度センサを腕などに装着して被験者が運動する場合、非常に立ち上がりが早く、振幅の大きい波形が観測される場合があり、このような場合は、フーリエ変換後の全周波数帯に非常に強度の高いスペクトルが表れてしまう。また、筋肉の微細振動に起因する周波数自体も、筋肉負荷や疲労度などによって遷移するため、バンドパスフィルタを用いて一律に筋肉の微細振動以外の成分を低減することは難しく、その結果、平均周波数や振幅RMSが微細振動成分を表さなくなる。
【0010】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、従来では難しかった、自由度の高い行動中の筋肉の微細な振動成分を、非侵襲的で簡便に装着できるセンサから得られるデータを演算することで推定可能にし、様々な行動中の筋肉の負荷状態などを観測できるようにすることが可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記問題を解決するために、本発明のある観点によれば、被験者に装着された振動検知センサによって測定された信号から行動状態を推定する行動状態推定装置において、振動検知センサによって測定された信号を周波数変換し、周波数変換して得られた周波数成分のうち所定の周波数バンドから統計量を求める周波数バンド統計量演算部と、統計量に基づき被験者の行動状態を推定する行動状態成分演算部と、を備えることを特徴とする、行動状態推定装置が提供される。
【0012】
周波数バンド統計量演算部は、複数の周波数バンドのそれぞれから各統計量を求め、行動状態成分演算部は、各統計量に基づき被験者の行動状態として、被験者の筋肉にかかる負荷の状態を演算することとしてもよい。
【0013】
行動状態成分演算部は、複数の周波数バンドのうち、筋音成分を主成分とする周波数バンドから周波数バンド統計量演算部によって求められた統計量と、筋音成分を主成分とする周波数バンド以外の周波数バンドから周波数バンド統計量演算部によって求められた統計量との比に基づき、被験者の筋肉にかかる負荷の状態を演算することとしてもよい。
【0014】
周波数バンド統計量演算部は、複数の異なる時刻に振動検知センサによって測定された複数の信号のそれぞれを周波数変換し、周波数変換して得られた複数の周波数成分のうち、所定の周波数バンドから統計量を求めることとしてもよい。
【0015】
また、本発明の別の観点によれば、被験者に装着された振動検知センサによって測定された信号と被験者に装着された筋電位センサによって測定された信号とから行動状態を推定するために使用されるモデルを構築する行動状態学習装置において、振動検知センサによって測定された信号を周波数変換し、周波数変換して得られた周波数成分のうち所定の周波数バンドから統計量を求める周波数バンド統計量演算部と、筋電位センサによって測定された信号から行動状態成分量を推定する行動状態成分変換部と、周波数バンド統計量演算部によって求められた統計量に基づき入力ベクトルを生成し、行動状態成分変換部によって推定された行動状態成分量を教師信号として、入力ベクトルと教師信号とに基づいて学習を行う行動状態成分学習部と、行動状態成分学習部が学習して得た結果を行動状態モデルとして出力する行動状態モデル出力部と、を備えることを特徴とする、行動状態学習装置が提供される。
【0016】
周波数バンド統計量演算部は、複数の周波数バンドのそれぞれから各統計量を求め、行動状態成分学習部は、周波数バンド統計量演算部によって求められた各統計量に基づき入力ベクトルを生成することとしてもよい。
【0017】
また、本発明の別の観点によれば、被験者に装着された振動検知センサによって測定された信号から行動状態を推定する行動状態推定装置において、振動検知センサによって測定された信号を周波数変換し、周波数変換して得られた周波数成分のうち所定の周波数バンドから統計量を求める周波数バンド統計量演算部と、行動状態モデルを記憶する行動状態モデル記憶部と、行動状態モデル記憶部によって記憶されている行動状態モデルを取得するとともに周波数バンド統計量演算部によって求められた統計量に基づき入力ベクトルを生成し、行動状態モデルと入力ベクトルとに基づき被験者の行動状態を推定する行動状態成分推定部と、を備えることを特徴とする、行動状態推定装置が提供される。
【0018】
周波数バンド統計量演算部は、複数の周波数バンドのそれぞれから各統計量を求め、行動状態成分推定部は、各統計量に基づき入力ベクトルを生成し、行動状態モデルと入力ベクトルとに基づき、被験者の行動状態として、被験者の筋肉にかかる負荷の状態を演算することとしてもよい。
【0019】
また、本発明の別の観点によれば、被験者に装着された振動検知センサによって測定された信号から行動状態を推定する行動状態推定装置によって実行される行動状態推定方法において、振動検知センサによって測定された信号を周波数変換し、周波数変換して得られた周波数成分のうち所定の周波数バンドから統計量を求めるステップと、統計量に基づき被験者の行動状態を推定するステップと、を含むことを特徴とする、行動状態推定方法が提供される。
【0020】
また、本発明の別の観点によれば、被験者に装着された振動検知センサによって測定された信号と被験者に装着された筋電位センサによって測定された信号とから行動状態を推定するために使用されるモデルを構築する行動状態学習装置よって実行される行動状態学習方法において、振動検知センサによって測定された信号を周波数変換し、周波数変換して得られた周波数成分のうち所定の周波数バンドから統計量を求めるステップと、筋電位センサによって測定された信号から行動状態成分量を推定するステップと、統計量に基づき入力ベクトルを生成し、行動状態成分量を教師信号として、入力ベクトルと教師信号とに基づいて学習を行うステップと、学習して得た結果を行動状態モデルとして出力するステップと、を含むことを特徴とする、行動状態学習方法が提供される。
【0021】
また、本発明の別の観点によれば、被験者に装着された振動検知センサによって測定された信号から行動状態を推定する行動状態推定装置によって実行される行動状態推定方法において、振動検知センサによって測定された信号を周波数変換し、周波数変換して得られた周波数成分のうち所定の周波数バンドから統計量を求めるステップと、統計量に基づき入力ベクトルを生成し、行動状態モデルと入力ベクトルとに基づき被験者の行動状態を推定するステップと、を含むことを特徴とする、行動状態推定方法が提供される。
【0022】
また、本発明の別の観点によれば、コンピュータを、被験者に装着された振動検知センサによって測定された信号から行動状態を推定する行動状態推定装置であって、振動検知センサによって測定された信号を周波数変換し、周波数変換して得られた周波数成分のうち所定の周波数バンドから統計量を求める周波数バンド統計量演算部と、統計量に基づき被験者の行動状態を推定する行動状態成分演算部と、を備えることを特徴とする、行動状態推定装置として機能させるためのプログラムが提供される。
【0023】
また、本発明の別の観点によれば、コンピュータを、被験者に装着された振動検知センサによって測定された信号と被験者に装着された筋電位センサによって測定された信号とから行動状態を推定するために使用されるモデルを構築する行動状態学習装置であって、振動検知センサによって測定された信号を周波数変換し、周波数変換して得られた周波数成分のうち所定の周波数バンドから統計量を求める周波数バンド統計量演算部と、筋電位センサによって測定された信号から行動状態成分量を推定する行動状態成分変換部と、周波数バンド統計量演算部によって求められた統計量に基づき入力ベクトルを生成し、行動状態成分変換部によって推定された行動状態成分量を教師信号として、入力ベクトルと教師信号とに基づいて学習を行う行動状態成分学習部と、行動状態成分学習部が学習して得た結果を行動状態モデルとして出力する行動状態モデル出力部と、を備えることを特徴とする、行動状態学習装置として機能させるためのプログラムが提供される。
【0024】
また、本発明の別の観点によれば、プログラムを、被験者に装着された振動検知センサによって測定された信号から行動状態を推定する行動状態推定装置であって、振動検知センサによって測定された信号を周波数変換し、周波数変換して得られた周波数成分のうち所定の周波数バンドから統計量を求める周波数バンド統計量演算部と、行動状態モデルを記憶する行動状態モデル記憶部と、行動状態モデル記憶部によって記憶されている行動状態モデルを取得し、周波数バンド統計量演算部によって求められた統計量に基づき入力ベクトルを生成し、行動状態モデルと入力ベクトルとに基づき被験者の行動状態を推定する行動状態成分推定部と、を備えることを特徴とする、行動状態推定装置として機能させるためのプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように本発明によれば、自由度の高い行動中の筋肉の微細な振動成分を、非侵襲的で簡便に装着できるセンサから得られるデータを演算することで推定可能にし、様々な行動中の筋肉の負荷状態などを観測できるようにすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1実施形態に係る行動状態推定装置の使用例を示す図である。
【図2】同実施形態に係る行動状態推定装置の機能構成を示す図である。
【図3】同実施形態に係る行動状態推定装置のセンシング部においてサンプルされたストリームデータの例を示す図である。
【図4】同実施形態に係る行動状態推定装置の周波数変換部においてストリームデータが周波数変換されて得られた周波数成分の例を示す図である。
【図5】同実施形態に係る行動状態推定装置のバンド抽出部において統計量を算出する際に使用する周波数バンドの例を示す図である。
【図6】同実施形態に係る行動状態推定装置によって実行される処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】同実施形態に係る行動状態推定装置の行動状態成分演算部によって使用される関数の一例を示す図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る行動状態学習装置の機能構成を示す図である。
【図9】同実施形態に係る行動状態推定装置の機能構成を示す図である。
【図10】同実施形態に係る行動状態成分変換部によって使用される関数の一例を示す図である。
【図11】同実施形態に係る行動状態学習装置によって実行される処理の流れを示すフローチャートである。
【図12】同実施形態に係る行動状態推定装置によって実行される処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0028】
<第1実施形態>
まず、本発明の第1実施形態について説明する。
本実施形態に係る行動状態推定装置は、筋音図を周波数変換し、周波数変換後の周波数空間上に複数の周波数バンドを定義し、周波数バンドから算出した統計量を用いる。行動状態推定装置は、さらに周波数バンド間の統計量の違いから、非線形な手法により筋力負荷や疲労を示す筋音成分の量を推定する。また、行動状態推定装置は、推定した筋音成分の量を、被験者の行動中の状態である行動状態を反映する行動状態推定量として出力する。行動状態推定装置が定義する周波数バンドは単数であってもよい。本実施形態では、行動状態の例として、被験者の行動中の筋力負荷の状態を使用することとする。
【0029】
なお、筋肉表面に貼り付けたセンサから得られる波形を筋音図と定義することもあるが、本実施形態では、そのうち筋肉の微細振動にかかる部分の成分を、筋音成分と呼ぶ。ここで定義する筋音成分とは、筋肉の伸張・収縮に伴い、筋繊維が径方向で変化する結果現れる微細な振動に起因する振動成分である。例えば、筋肉を限界近く力んだ際に知覚できるブルブルとした振動や、極度の緊張状態における震え、冷感時における身体の震えなどについても、そこに現れる微細振動成分については筋音成分と捉えることができる。
【0030】
これらのようなある程度知覚できる微細振動だけでなく、例えば弱い筋力負荷時にブルブルした振動を知覚できなくても、実際には筋肉が微細に振動している場合もあり、このようなものも筋音成分と捉えられる。運動生理学の分野などでは、これらの微細振動成分が異なるファクターから成るものと分類される可能性もあるが、このような直接的に意図して筋肉を動かして発生する振動(例えば、手を振るなど)よりもはるかに高い周期で、なおかつ目視では知覚し難い微細な振動から得られる振動成分を、本実施形態ではすべて筋音成分としている。さらに、この筋音成分は、行動中の筋力負荷や緊張状態などと関係があるため、推定により指標化した筋音成分を、行動状態成分とし、その値を行動状態成分量と表現する。
【0031】
[構成の説明]
図2に示すように、本実施形態に係る行動状態推定装置100Aは、人体の微細な振動をセンシングするセンシング部110がセンシングを行った結果得られたセンシングデータを受け取るセンサデータ入力部120と、センサデータ入力部120によって入力されたセンサデータから周波数バンド毎の統計量を抽出する周波数バンド統計量演算部130と、周波数バンド統計量演算部130から得られる統計量に基づき行動状態成分量を推定する行動状態成分演算部140と、行動状態成分演算部140が推定した行動状態成分量を出力する出力部150と、を備えるものである。
【0032】
図1に示すように、センシング部110は、単独のセンシングデバイス910として、人体に巻きつけて装着可能なバンドBと組み合わせて人体に装着することが可能であるが、他に、粘着性のあるノリなどで人体に貼付する方法や、衣類に装着する方法、手に持つ方法などをとることができる。また、直接人体に触れる必要はなく、振動が伝播する環境であれば、衣類などの上から装着しても良いし、振動を伝える媒体を介して装着しても良い。また、例えば、加速度センサを内蔵した携帯電話やPDAを使用した場合など、センシングデバイス910の中に、センシング部110、センサデータ入力部120、周波数バンド統計量演算部130、行動状態成分演算部140および出力部150を内蔵させることによって行動状態推定装置920を実現させることとしても良い。あるいは、図1および図2に示すように、センシングデバイス910がなるべく軽量となるよう、センシングデバイス910と行動状態推定装置920とを分離し、センシングデバイス910にセンシング部110を内蔵させ、行動状態推定装置920にセンサデータ入力部120、周波数バンド統計量演算部130、行動状態成分演算部140および出力部150を内蔵させ、センシング部110とセンサデータ入力部120との間のセンサデータ伝送をBluetooth(登録商標)などの無線伝送技術によって行っても良い。センサデータ入力部120、周波数バンド統計量演算部130、行動状態成分演算部140および出力部150のいずれかのブロックの間で内蔵先のデバイスを分離しても良い。
【0033】
センシング部110は、ある決められた間隔でセンサからセンサデータをサンプルデータとして取得する(以下、「サンプルする」とも言う。)。例えば、200Hzのサンプリングレートで加速度センサからセンサデータをサンプルすると、1秒間に200個のセンサデータをサンプルできる。時間の経過に伴い連続的に複数得られるセンサデータの時系列を、便宜上ストリームデータと呼ぶ。200Hzでサンプリングしたストリームデータの場合、理論上、ナイキスト周波数である100Hzまでの周波数成分を完全に含みうるデータとなる。加速度センサからサンプリングしたストリームデータの例を図3に示す。
【0034】
センサデータ入力部120は、センシング部110でサンプルしたストリームデータを取得し、周波数変換部131へストリームデータを出力する。センシング部110とセンサデータ入力部120との間は、有線で結線されていても無線で結線されていてもいずれでも良い。センサデータ入力部120では、以降の処理負荷を軽減するため、ストリームデータからの不要なデータの削減やストリームデータの整形を行っても良い。センサデータ入力部120は、例えば、ストリームデータに対してバンドパスフィルタを適用して不要な周波数成分や重力加速度成分を除去したり、多軸なセンサ(例えば、3軸加速度センサなど)から不要な軸のデータを破棄したり、軸の合成や回転操作などにより不要な軸の成分を抽出することができる。また、センサデータ入力部120は、ストリームデータをサブサンプリングして、200Hzサンプルのストリームデータから50Hzサンプルのストリームデータを複数サンプルの平均値などを用いて生成して出力し、周波数変換部131の変換にかかる処理量を低減しても良いし、ストリームデータを平滑化し、平滑化後のストリームデータと平滑化前のストリームデータから残差をストリームデータとして求め、この残差のストリームデータを出力することで、簡易的にある程度の高域成分のみ周波数変換部131に伝達することもできる。
【0035】
周波数変換部131は、センサデータ入力部120から得られるストリームデータに対して周波数変換を行う。周波数変換は、ストリームデータの所定の区間のデータを用いて、フーリエ変換などを用いて行う。周波数変換の方法としては、離散フーリエ変換(DFT:Discrete Fourier Transform)や連続ウェーブレット変換(CWT:Continuous Wavelet Transform)やガボール(Gabor)変換やMP変換(MP:Matching Pursuit)などを用いる方法があり、また、周波数の区間によって用いる周波数変換の方法を変更することもできる。ここでは、周波数変換の方法として離散フーリエ変換を使用した場合を例に説明する。
【0036】
周波数変換部131は、現在の時刻をtとし、200Hzでサンプリングしたストリームデータの1秒分の区間に対してDFTを行う。ストリームデータに含まれるサンプルの個数をNとすると、N=200となる。この200個のストリームデータ分の複素数列X=(X0,t,X1,t,…,XN−1,t)(但し、実数部にストリーム内のサンプル値が入り、虚数部は0)とし、DFT後の複素数列F=(f0,t,f1,t,…,fN−1,t)とすると、DFTは次の(式1)で表される。
【0037】
【数1】

【0038】
DFTにより得られるN個の複素数列Fは、それぞれ固有の周波数を持つ成分であり、f0,tは直流成分、上記条件下では、fj,tは、jHzの周波数を持つ成分であり、ナイキスト周波数である100Hzを超える値については冗長である。
【0039】
ここで、2|fj,t|/Nは、各周波数成分の振幅を表し、周波数変換部131は、この2|fj,t|/Nを周波数成分として出力することもでき、|fj,tをパワースペクトルとして出力することもできる。また、周波数変換部131は、入力された200個のサンプル系列X=(X0,t,X1,t,…,XN−1,t)に(式2)で表されるハミング窓などによる重み係数を掛け合わせた後にDFTを行っても良い。
【0040】
【数2】

【0041】
ストリームデータは、センサデータ入力部120から逐次的に周波数変換部131へ入力され、周波数変換部131が、ストリームデータの入力の都度、上記DFTを行うと、時間の経過に伴い複数時刻のFが生成される。例えば、周波数変換部131が200Hzでサンプリングされるストリームデータに逐次的にDFTを行う場合、1秒間時刻が経過すると新たに200サンプル分が周波数変換部131に入力される。周波数変換部131が、例えば、時刻tから1サンプル毎に1秒間DFTを実施すると、1サンプル毎に200個の周波数成分(F,Ft+1,…,Ft+199)が生成される。これを、縦軸を周波数、横軸を時間としてまとめて描画すると、例えば、図4に示すように表現できる。ここで、白黒の濃度はパワースペクトルの強度を示し、白は弱い(値が小さい)、黒は強い(値が大きい)ことを示す。時間的な経過に伴い、この図4に示される周波数変換後のデータが取得できる。
【0042】
バンド抽出部132は、周波数変換部131により変換された周波数成分に対して、行動状態成分を推定するために所定の連続する周波数成分からなる周波数帯(周波数バンドという)を複数用い、周波数バンド毎の統計量を出力する。ここでは、5つの周波数バンドに分けた例を示すが、周波数バンドの数は特に5でなければならないわけではなく、本実施形態では限定されない。また、周波数バンド毎に、異なる周波数変換手法を用いても良い。例えば図5に示したような周波数バンドの場合、周波数バンド1は連続ウェーブレット変換、周波数バンド2はDFTといった方法を用いることができる。周波数バンド1は、低い周波数領域であるが、一般的にDFTは低い周波数領域での分解能を向上させることが難しいため、同一の入力サンプルを用いてより低周波領域での分解能を高められるウェーブレット変換を使うことで、精度をより高めることもできる。特に、後述するが、周波数バンド1は人の動きの影響を直接的に受ける周波数バンドであり、この分解能を高めることは、人の動きの影響を低減する効果が向上する。
【0043】
同様の理由で、周波数バンド毎に、周波数変換に用いる区間とサンプリング周期を変更しても良い。DFTで低い周波数領域における分解能をあげるためには、区間を長く取る必要があるが、サンプリング周期は低くても良い。一方で、高い周波数領域の演算では、長い区間は冗長で不要であるが、サンプリング周期は高くする必要がある。そのため、例えば低い周波数バンドでは、ストリームデータをサブサンプリングすることによりサンプリング周期を1/5程度に低くし、区間を10秒といった長い区間に対してDFTを行ない、高い周波数バンドでは、ストリームデータをサブサンプルせず、区間を1秒にしてDFTを行なうなどの方法を用いることができる。
【0044】
5つの周波数バンド1〜5について、図5に示す中心周波数cHz(但し、b=1,…,5)とバンド幅を決定するバンド幅ファクターrから、バンドの統計量Sを、例えば、(式3)の通り求める。
【0045】
【数3】

【0046】
ただし、fsj,tは、周波数毎の成分であり、例えば、振幅(パワーベクトル)と周波数jから、以下のように求められる。
【0047】
【数4】

【0048】
(式3)は、複数の周波数毎の成分fsj,tから、中心周波数c,分散rのガウス関数を用いて集計したものである。(式4)は、パワースペクトル(振幅の2乗成分を持つ)に周波数の2乗を掛け合わせたものである。一般に波のエネルギーは振幅の2乗や周波数の2乗に比例する。筋肉の振幅方向の波の成分のエネルギーが、そのまま筋力負荷量になるわけではないが、力みによる振動成分は実際の動きに起因する成分よりも高い周波数で振幅が細かく観測されるため、周波数と振幅の二つの要素を用いて周波数バンドの統計量Sを求めている。また、バンド抽出部132は、(式4’)のように、個々の周波数のパワースペクトルをlog演算し、周波数を掛け合わせることで、周波数全域である程度フラットな特性にし、その上で周波数バンドの統計量を求めても良い。
【0049】
【数5】

【0050】
また、バンド抽出部132は、周波数変換とは異なる観点で時間的変化を指標にしてもよい。例えば、バンド抽出部132は、複数時刻のfsj,tを用いて、sを以下のように求めることもできる。
【0051】
【数6】

【0052】
他にも、バンド抽出部132は、バンド毎に近傍時刻(例えば、t−20〜tの区間など)の統計量Sの最大値や最小値を、統計量Sの代わりに出力しても良いし、変化の勾配を求めて出力するなど、別の統計量を用いても良い。
【0053】
また、バンド抽出部132は、一つのバンドで複数の種類の統計量を求めても良い。例えば、(式3)の出力をSb1、(式5)の出力をSb2と定義し、(式3)によって算出したSb1と(式5)によって算出したSb2の2種類を分けて出力するなど、統計量の数について限定しない。また、バンド抽出部132は、(式3)と(式5)では、周波数バンド毎にパラメータを変化させているが、周波数バンドによってまったく異なる方式で統計量を求めても良い。バンド抽出部132は、例えば、周波数バンド1の統計量としては(式3)を用いて算出して出力し、周波数バンド2の統計量としては(式5)を用いて算出して出力し、周波数バンド3の統計量としては、変化の勾配を出力するなどの方法をとっても良い。また、ここで求めた統計量を行動状態成分演算部140へ送る。
【0054】
行動状態成分演算部140は、複数の周波数バンドの統計量Sから、行動状態成分量を求める。一つのバンドに対する統計量は、1種類である必要はなく、複数種類あっても良いが、ここでは1種類の場合を例に挙げて記載する。図5に示したような周波数バンドの場合、周波数バンド1が低域周波数バンドであり、行動状態成分をあまり含まないが、人の動きの影響を直接的に受ける周波数バンドである。また、周波数バンド2〜4は、行動状態成分を良く含みうる周波数バンドである。また、周波数バンド5は、行動状態成分よりも高い周波数の周波数バンドである。筋肉の振動ではない人間の意図した動きに起因する加速度(例えば、体操などによる手足の動きそのものから得られる加速度)などは、周波数バンド1により多く含まれうる。言い換えると、周波数バンド1は、動きの激しさを表すパラメータということができる。
【0055】
例えば、筋肉に長期間大きな負荷を与える場合、その筋肉のある四肢などは、空間内を大きくは動かず、静止に近い動きである場合が多い。逆に四肢が自由に空間内を移動できる場合、その四肢の筋肉には相対的に見ると、あまり大きな負荷がかかっていない。このような観点から、動きの激しさを表す周波数バンド1は、行動状態成分を算出する上で抑制側のパラメータとして利用ができる。周波数バンド2以降は、意図した動きから発生させることが難しい人間の筋肉運動の限界をある程度超えている周波数(例えば、手を20Hzで振ることは難しい)であり、特に周波数バンド2〜4は、筋肉に負荷をかける際に発生する筋肉の微細振動である行動状態成分を良く含みうる。この行動状態成分は、筋肉の疲労状態や負荷状態で、中心周波数が微小にシフトすることがある。この変化によらず行動状態成分を検出するために、本実施形態では、周波数バンド2〜4の3つの周波数バンドを用いているが、1個の周波数バンドでこれらのシフトをカバーするようにしても良いし、範囲内でピークを追随するよう、複数の周波数バンドを定義し、ピークを探索するように最大値が得られる周波数バンドを用いるなど、選択的に用いても良い。
【0056】
また一方で、衝撃的な振動、素早い動きで加速度波形の急峻な立ち上がり成分がある場合、加速度センサの測定可能レンジ外の加速度(例えば、−3G以下や、3G以上など)が発生し、波形が方形波的にカットされることなどがあり、広い周波数帯域に高いパワーがのる場合がある。このような場合は、周波数バンド2〜4の他に周波数バンド5のような高い周波数バンドにも反映される。すなわち、周波数バンド2〜4の行動状態成分量のみが高く、周波数バンド1,5の行動状態成分量が低い場合は、周波数バンド2〜4だけで筋肉負荷の高い状態だと認識できるが、一方で、前記のような衝撃的な振動が発生した場合にも不必要に行動状態成分量が高まってしまう。行動状態成分演算部140は、周波数バンド5を、そのような場合の抑制パラメータとして用いることで、行動状態成分が不要に高まることを抑えることができる。上記のような性質から、複数の周波数バンドの統計量を用いて行動状態成分を推定する。
【0057】
行動状態成分量をMとすると、例えば、行動状態成分演算部140は、行動状態成分のよく含まれる周波数バンドの統計量と行動状態成分のあまり含まれない周波数バンドの統計量の比から、行動状態成分量Mを以下のような方法で計算できる。
【0058】
【数7】

【0059】
ここで、関数gとしては、シグモイド関数や線形な関数など、多様に利用可能であるが、例えば、以下のようなものを利用できる。
【0060】
【数8】

【0061】
また、行動状態成分演算部140は、図7に示すように非線形な関数や、変換テーブルを持ち、これを用いて変換してもよい。関数gは、シグモイド関数や、(式7)に示した関数、図7に示した関数などのように、xの値がある程度以上高いところでフラット特性をとることができる。(式6)では、関数gに与える値にバンドの統計量から求めた値の比を用いている。これは、分子と分母の比がある程度の大きさの値で均衡しているような状態においては、その均衡状態近傍の微小な変化を大きく抽出し、そこから大きく外れる状態では、感度を落とす効果がある。
【0062】
例えば、静止した状態で筋肉を極端に力んだ状態では、統計量S,Sは0に近い非常に微小な値をとり、行動状態成分量Mを大きくする値となる。この場合に、非常に小さな値S,Sからなる分母は、微小な変化で比を大きく変化させる場合があるが、その大きな変化は雑音などの影響が大きく、行動状態の変化とはあまり関係がない。したがって、そのような値に対する感度を落とすような特性のある関数gを用いることで、雑音などの不要な影響を低減することが可能となる。また、統計量S,…,Sからなる多次元ベクトルのテーブルを持ち、そのテーブルを参照して行動状態成分量Mを求めても良い。上記は一例であり、例えば、ベイジアンネットワークのようなグラフ構造をもった条件付き確率モデルを構築し、周波数バンドの統計量を入力として行動状態成分量を推定しても良い。
【0063】
出力部150は、上記推定した行動状態成分量Mに基づき行動状態成分量を出力する。出力は、そのまま出力する方法、過去1秒間の行動状態成分量のうちの最大値を出す方法、移動平均を出す方法や、映像や振動・音などに変換して出力する方法などをとっても良い。また、ある一定以上の行動状態成分量Mが入力された場合のみ出力し、それ以外は出力しないなどの制御を行っても良い。また、5分など一定期間積算し、積算値が閾値を超えた場合に超えたことを示す情報を出力するなどの方法をとっても良い。
【0064】
なお、上記実施形態において説明した行動状態推定装置100Aの各部の機能は、実際には、図示しないCPU(Central Processing Unit)などの演算装置がこれらの機能を実現する処理手順を記述した制御プログラムを記憶したROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などの記憶媒体から制御プログラムを読出し、そのプログラムを解釈して実行することにより達成される。
【0065】
[動作の説明]
図6を参照して、本発明の第1実施形態に係る行動状態推定装置100Aによって実行される処理の流れについて説明する。行動状態推定装置100Aの周波数変換部131は、加速度センサによって測定された信号を周波数変換する(ステップS101)。バンド抽出部132は、周波数変換部131によって周波数変換されて得られた周波数成分のうち、複数の周波数バンドのそれぞれから各統計量を算出する(ステップS102)。行動状態成分演算部140は、バンド抽出部132によって算出された各統計量に基づき、被験者の筋肉にかかる負荷の状態を演算する(ステップS103)。出力部150は、行動状態成分演算部140によって演算されて得られた結果である演算結果を出力する(ステップS104)。
【0066】
なお、ここではバンド抽出部132が複数の周波数バンドのそれぞれから各統計量を算出することとするが、上記したように、バンド抽出部132は、単数の周波数バンドから統計量を算出することとしてもよい。その場合には、行動状態成分演算部140は、バンド抽出部132によって算出された単数の統計量に基づき、被験者の筋肉にかかる負荷の状態を演算する。
【0067】
[効果の説明]
以上説明したように、本発明の実施形態に係る行動状態推定装置100Aによれば、加速度センサから得られるデータの平均周波数や振幅RMSを行動状態成分量として算出するよりも、自由な運動環境下で筋力負荷状態をよく反映できる行動状態成分量の推定が可能になり、その結果、被験者の実際の様々な行動や運動中の筋力負荷量や疲労度を推定するなど、実環境での利用が可能になる。
【0068】
<第2実施形態>
続いて、本発明の第2実施形態について説明する。
[構成の説明]
本発明の第2実施形態では、学習側と認識側の2つがあり、学習側は、行動状態成分を推定するために必要な行動状態モデルを構築する際にのみ用いられる。認識側は、行動状態成分を推定する際に用いられ、学習側で求めた行動状態モデルに基づき、行動状態成分を推定出力する。
【0069】
学習側の構成:
第2実施形態に係る行動状態学習装置200は、センシング部110の機能に加えて筋肉の筋電位を計測する機能を有するセンシング部210と接続され、センサデータ入力部120の機能に加えて筋電位データを受け取るセンサデータ入力部220と、筋電位データから行動状態成分へ変換する行動状態成分変換部230と、行動状態成分変換部230の出力とバンド抽出部132から、バンド抽出部132と行動状態成分の関係を学習する行動状態成分学習部240と、学習結果のモデルを出力する行動状態モデル出力部250とを備える。これら以外の構成については、第1実施形態に係る行動状態推定装置100Aと同様である。
【0070】
認識側の構成:
第2実施形態に係る行動状態推定装置100Bは、行動状態モデルを記憶する行動状態モデル記憶部320と、行動状態モデルを用いて行動状態成分を推定する行動状態成分推定部310とを有する。これら以外の構成については、第1実施形態に係る行動状態推定装置100Aと同様である。
【0071】
学習側の構成:
第1実施形態との差分についてのみ説明する。センシング部210は、第1実施形態におけるセンシング部110と同様に、センサデータをサンプルし、学習用ストリームデータを出力する。これに加えて、筋電位を測定する手段を備える。筋電位は、体表面になるべく直接接するように電極を粘着性のあるノリなどで貼り付けて測定する。貼り付ける箇所は、センシング部110と同様のセンサを貼り付けた筋肉近くとしても良い。その場合には、該筋肉から誘発される電位を計測する。また、加速度データを使用した場合は、腕や腰に装着した加速度センサであっても、ランニングやスクワット、重量あげといった運動では下半身や腹筋の動きの影響を受けるため、例えば、腰に加速度センサ、腹筋に筋電位の電極を装着するなど、必ずしも同じ筋肉を対象としなくても良い。また、誘発電位は、数mV程度の微弱な電圧のため、アンプにて通常1000倍程度増幅した後にAD変換を行うことが多い。AD変換時のサンプリング周波数としては、通常100〜数kHz程度が用いられる。例えば、1kHzでサンプリングした筋電位のストリームデータを、教師用ストリームデータとしてセンサデータ入力部220へ送信する。
【0072】
センサデータ入力部220は、学習用ストリームデータを周波数変換部131へ、第1実施形態と同様に送る。また、教師用ストリームデータを行動状態成分変換部230に送る。学習用ストリームデータに対して第1実施形態に係る行動状態推定装置100Aが行う操作と同様に、教師用ストリームデータに対しても各種操作を行っても良く、例えば、10サンプル毎に和をとり平均化し、1kHzのサンプリングレートから100Hzのレートの教師用ストリームに変換しても良い。
【0073】
行動状態成分変換部230は、教師用ストリームデータに基づき、行動状態成分量を算出し出力する。筋電位センサから得られるデータは、加速度センサから得られるデータと異なり、衝撃や重力加速度の方向変化などによる変化を受けることはない。また、筋電位センサから得られるデータには、人体の急峻な動きによる加速度成分の急峻な変化のようなものが、動かすに必要な筋力負荷に相当する出力として含まれるなど、加速度センサから得られるデータとは大きく異なった特徴を持つ。そのため、平均周波数や振幅RMSなどは、筋電位に対しては比較的精度良く筋力負荷を反映する。
【0074】
行動状態成分変換部230は、一例として、現在の時刻をtとし、1kHzでサンプリングしたストリームデータの1秒分の区間に対してDFTを行う。ストリームデータに含まれるサンプルの個数をMとすると、M=1000となる。この1000個のストリームデータ分の複素数列Y=(y0,t,y1,t,…yM−1,t)(但し、実数部にストリームデータ内のサンプル値が入り、虚数部は0)とし、DFT後の複素数列P=(P0,t,P1,t,…,PM−1,t)とすると、DFTは、(式1)と同様に次の(式8)で表される。
【0075】
【数9】

【0076】
また、行動状態成分変換部230は、第1実施形態と同様に、入力の1000個のサンプル系列Y=(y0,t,y1,t,…yM−1,t)に、(式2)と同様に計算されるハミング窓などによる重み係数を掛け合わせた後にDFTを行っても良い。平均周波数MPFは、例えば、次の(式9)で求められる。
【0077】
【数10】

【0078】
平均周波数MPFは、筋力負荷に伴って変化する値であり、行動状態成分変換部230は、平均周波数MPFを行動状態成分へ変換する。行動状態成分変換部230は、Rを筋電位による行動状態成分量とし、例えば、次の(式10)を用いて平均周波数MPFから行動状態成分への変換を行う。
【0079】
【数11】

【0080】
関数hは、MPFをそのままRとして出力してもよいし、複数時間の平均を用いてもよいし、複数時間にわたる統計量から算出しても良い。また、関数hとして、図10に示すような特性を持つ関数を用いても良く、テーブルを参照して決定することとしても良い。この他、振幅RMSを用いて、Rを決定しても良い。
【0081】
行動状態成分学習部240は、バンド抽出部132からの統計量を入力ベクトル、行動状態成分変換部230から得られる行動状態成分量Rを教師信号として、認識学習器による学習を行う。認識学習器には、多クラス分類可能なSVM(Support Vector Machine)やGMM(Gaussian Mixture Model)、HMM(Hidden Markov Model)、ニューラルネットワーク、学習型ベイジアンネットワークなど、入力ベクトルと教師信号から内部状態を学習によって決定可能な技術を用いることができる。入力ベクトルVは、例えば、以下の成分を持つベクトルとして表現できる。
【0082】
【数12】

【0083】
また、複数の時刻の統計量を有する以下の成分を持つベクトルとして表現することもできる。
【0084】
【数13】

【0085】
他にも、これらの成分に対して主成分分析を適用し、寄与率に基づき次元数の削減を行った上で、入力ベクトルとしても良い。例えば、(式12)の成分に基づいて主成分分析を行った結果、第5主成分までで95%の寄与率となった場合は、入力ベクトルを第1成分〜第5成分の5次元としても良い。
【0086】
これらの入力ベクトルに対して、期待する出力値を教師信号Rで与えて学習を行い、その結果を行動状態モデルとして、行動状態モデル出力部250から出力する。認識学習器については、複数の認識学習器を組み合わせても良く、例えば、AdaBoostといった手法に代表されるブースティング(boosting)などの手法を用いても良い。この他、1クラスの分類しかできない認識学習器や多クラス分類可能な認識学習器を多段に構成して一つの認識学習方式を構成しても良い。
【0087】
行動状態モデル自身は、認識学習器の認識に係る内部状態のパラメータであり、認識器(本実施形態では、行動状態成分推定部310)でこのモデルを読み込むことで、教師信号Rを与えず、入力ベクトルVのみで、教師信号Rに対応する認識結果Mを出力する。RとMは必ずしも一致しない場合がある。例えば、Rに含まれる雑音成分などを許容するパラメータ(SVMの場合はスラック変数など)に起因するケースや、異なるRに対して同じ入力ベクトルVの与えられた学習の場合に、正しく認識しがたいといったケースがある。これらによる誤差の発現を抑えるため、認識器側で時刻の異なるMを10秒分集積し、多数決をとる方法や平均値を求める方法などを用いてもよい。
【0088】
認識側の構成:
第1実施形態との差分のみ説明する。行動状態モデルを記憶する行動状態モデル記憶部320は、学習側の行動状態モデル出力部250から得られる行動状態モデルを保持する。行動状態モデルは、学習側の行動状態成分学習部240において、学習によって決定された認識器の内部状態である。この行動状態モデルを、行動状態成分推定部310にある認識器に設定することで、行動状態成分の推定を行う。
【0089】
行動状態成分推定部310は、行動状態モデル記憶部320から行動状態モデルを取得し、認識器の状態として設定する。また、行動状態成分推定部310は、バンド抽出部132からの統計量を入力ベクトルとして構成する。行動状態成分推定部310は、この入力ベクトルを、学習側の行動状態成分学習部240の入力ベクトルVと同様で、(式11)(式12)に記載の学習に用いた入力ベクトルと同じ形式で生成する。行動状態成分推定部310は、この入力ベクトルに対して、行動状態モデルに基づき認識を行い、行動状態成分量Mを出力する。認識は、多クラス分類可能なSVMやGMM、HMM、ニューラルネットワーク、学習型ベイジアンネットワークなど、学習の際に用いた認識学習器に対応する認識器や認識器の構成方法で行う。認識器については、認識学習器に対応して、複数の認識器を組み合わせても良く、例えば、AdaBoostといった手法に代表されるブースティング(boosting)などの手法を用いても良い。この他、1クラスの分類しかできない認識器や多クラス分類可能な認識器を多段に構成して一つの認識方式を構成しても良い。また、学習側でも記載したが、認識誤差の発現を抑えるため、認識側では時刻の異なるMを10秒分集積し、多数決をとる方法や平均値を求める方法などを用いても良い。
【0090】
出力部150は、行動状態成分推定部310の出力する行動状態成分量Mに基づき行動状態成分量を出力する。動作としては、第1実施形態と同様である。
【0091】
[動作の説明]
図11を参照して、本発明の第2実施形態に係る行動状態学習装置200によって実行される処理の流れについて説明する。行動状態学習装置200の周波数変換部131は、加速度センサによって測定された信号を周波数変換する(ステップS201)。バンド抽出部132は、周波数変換部131によって周波数変換されて得られた周波数成分のうち、複数の周波数バンドのそれぞれから各統計量を算出する(ステップS202)。一方、行動状態成分変換部230は、筋電位センサによって測定された信号から行動状態成分量を推定する(ステップS203)。行動状態成分学習部240は、バンド抽出部132によって算出された各統計量に基づき、入力ベクトルを生成する(ステップS204)。次いで、行動状態成分学習部240は、行動状態成分変換部230によって推定された行動状態成分量を教師信号とし、教師信号と行動状態成分学習部240によって生成された入力ベクトルとに基づいて学習を行う(ステップS205)。行動状態モデル出力部250は、行動状態成分学習部240によって学習されて得られた結果を行動状態モデルとして出力する(ステップS206)。
【0092】
なお、ここではバンド抽出部132が複数の周波数バンドのそれぞれから各統計量を算出することとするが、上記したように、バンド抽出部132は、単数の周波数バンドから統計量を算出することとしてもよい。その場合には、行動状態成分学習部240は、バンド抽出部132によって算出された単数の統計量に基づき、入力ベクトルを生成する。
【0093】
図12を参照して、本発明の第2実施形態に係る行動状態推定装置100Bによって実行される処理の流れについて説明する。行動状態推定装置100Bの行動状態モデル記憶部320は、行動状態学習装置200からの行動状態モデルの入力を受け付けて当該行動状態モデルを記憶する(ステップS301)。周波数変換部131は、加速度センサによって測定された信号を周波数変換する(ステップS302)。バンド抽出部132は、周波数変換部131によって周波数変換されて得られた周波数成分のうち、複数の周波数バンドのそれぞれから各統計量を算出する(ステップS303)。行動状態成分推定部310は、行動状態モデル記憶部320から行動状態モデルを取得し(ステップS304)、バンド抽出部132によって算出された各統計量に基づき、入力ベクトルを生成する(ステップS305)。次いで、行動状態成分推定部310は、取得した行動状態モデルと生成した入力ベクトルとに基づいて被験者の筋肉にかかる負荷の状態を演算する(ステップS306)。出力部150は、行動状態成分推定部310によって演算されて得られた結果を演算結果として出力する(ステップS307)。
【0094】
なお、ここではバンド抽出部132が複数の周波数バンドのそれぞれから各統計量を算出することとするが、上記したように、バンド抽出部132は、単数の周波数バンドから統計量を算出することとしてもよい。その場合には、行動状態成分推定部310は、バンド抽出部132によって算出された単数の統計量に基づき、入力ベクトルを生成する。
【0095】
[効果の説明]
筋電計は、電極を皮膚に粘着剤で貼付しなければならず、また、発汗などにも弱く、普通に行動をしている環境ではセンシングが難しいが、本実施形態では、このような弱点を克服し、加速度センサの出力のみを用いて、普通に行動している環境における筋力負荷や緊張度合を示す指標としての行動状態成分量を、筋電計に近い精度で出力することができる。
【0096】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0097】
例えば、上記実施形態では、振動検知センサとして加速度センサを用いる場合を例に記載しているが、振動を検知できるセンサであれば何でも良く、例えば、角速度センサ、圧電素子などの圧力センサ、マイクロフォン、歪センサなどを用いることとしても良い。
【0098】
尚、本明細書において、フローチャートに記述されたステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的に又は個別的に実行される処理をも含む。また時系列的に処理されるステップでも、場合によっては適宜順序を変更することが可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0099】
100(100A、100B) 行動状態推定装置
110 センシング部
120 センサデータ入力部
130 周波数バンド統計量演算部
131 周波数変換部
132 バンド抽出部
140 行動状態成分演算部
150 出力部
200 行動状態学習装置
210 センシング部
220 センサデータ入力部
230 行動状態成分変換部
240 行動状態成分学習部
250 行動状態モデル出力部
310 行動状態成分推定部
320 行動状態モデル記憶部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者に装着された振動検知センサによって測定された信号から行動状態を推定する行動状態推定装置において、
前記振動検知センサによって測定された信号を周波数変換し、周波数変換して得られた周波数成分のうち所定の周波数バンドから統計量を求める周波数バンド統計量演算部と、
前記統計量に基づき前記被験者の行動状態を推定する行動状態成分演算部と、
を備えることを特徴とする、行動状態推定装置。
【請求項2】
前記周波数バンド統計量演算部は、
複数の前記周波数バンドのそれぞれから各統計量を求め、
前記行動状態成分演算部は、
前記各統計量に基づき前記被験者の行動状態として、前記被験者の筋肉にかかる負荷の状態を演算する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の行動状態推定装置。
【請求項3】
前記周波数バンド統計量演算部は、
前記複数の周波数バンドのそれぞれから前記周波数バンド毎に異なる周波数変換手法を用いて前記各統計量を求める、
ことを特徴とする、請求項2に記載の行動状態推定装置。
【請求項4】
前記行動状態成分演算部は、
前記複数の周波数バンドのうち、筋音成分を主成分とする周波数バンドから前記周波数バンド統計量演算部によって求められた統計量と、前記筋音成分を主成分とする周波数バンド以外の周波数バンドから前記周波数バンド統計量演算部によって求められた統計量との比に基づき、前記被験者の筋肉にかかる負荷の状態を演算する、
ことを特徴とする、請求項2に記載の行動状態推定装置。
【請求項5】
前記周波数バンド統計量演算部は、
複数の異なる時刻に前記振動検知センサによって測定された複数の信号のそれぞれを周波数変換し、周波数変換して得られた複数の周波数成分のうち、所定の周波数バンドから前記統計量を求める、
ことを特徴とする、請求項1に記載の行動状態推定装置。
【請求項6】
被験者に装着された振動検知センサによって測定された信号と被験者に装着された筋電位センサによって測定された信号とから行動状態を推定するために使用されるモデルを構築する行動状態学習装置において、
前記振動検知センサによって測定された信号を周波数変換し、周波数変換して得られた周波数成分のうち所定の周波数バンドから統計量を求める周波数バンド統計量演算部と、
前記筋電位センサによって測定された信号から行動状態成分量を推定する行動状態成分変換部と、
前記周波数バンド統計量演算部によって求められた前記統計量に基づき入力ベクトルを生成し、前記行動状態成分変換部によって推定された前記行動状態成分量を教師信号として、前記入力ベクトルと前記教師信号とに基づいて学習を行う行動状態成分学習部と、
前記行動状態成分学習部が学習して得た結果を行動状態モデルとして出力する行動状態モデル出力部と、
を備えることを特徴とする、行動状態学習装置。
【請求項7】
前記周波数バンド統計量演算部は、
複数の前記周波数バンドのそれぞれから各統計量を求め、
前記行動状態成分学習部は、
前記周波数バンド統計量演算部によって求められた前記各統計量に基づき前記入力ベクトルを生成する、
ことを特徴とする、請求項6に記載の行動状態推定装置。
【請求項8】
被験者に装着された振動検知センサによって測定された信号から行動状態を推定する行動状態推定装置において、
前記振動検知センサによって測定された信号を周波数変換し、周波数変換して得られた周波数成分のうち所定の周波数バンドから統計量を求める周波数バンド統計量演算部と、
行動状態モデルを記憶する行動状態モデル記憶部と、
前記行動状態モデル記憶部によって記憶されている前記行動状態モデルを取得するとともに前記周波数バンド統計量演算部によって求められた前記統計量に基づき入力ベクトルを生成し、前記行動状態モデルと前記入力ベクトルとに基づき前記被験者の行動状態を推定する行動状態成分推定部と、
を備えることを特徴とする、行動状態推定装置。
【請求項9】
前記周波数バンド統計量演算部は、
複数の前記周波数バンドのそれぞれから各統計量を求め、
前記行動状態成分推定部は、
前記各統計量に基づき前記入力ベクトルを生成し、前記行動状態モデルと前記入力ベクトルとに基づき、前記被験者の行動状態として、前記被験者の筋肉にかかる負荷の状態を演算する、
ことを特徴とする、請求項8に記載の行動状態推定装置。
【請求項10】
被験者に装着された振動検知センサによって測定された信号から行動状態を推定する行動状態推定装置によって実行される行動状態推定方法において、
前記振動検知センサによって測定された信号を周波数変換し、周波数変換して得られた周波数成分のうち所定の周波数バンドから統計量を求めるステップと、
前記統計量に基づき前記被験者の行動状態を推定するステップと、
を含むことを特徴とする、行動状態推定方法。
【請求項11】
被験者に装着された振動検知センサによって測定された信号と被験者に装着された筋電位センサによって測定された信号とから行動状態を推定するために使用されるモデルを構築する行動状態学習装置よって実行される行動状態学習方法において、
前記振動検知センサによって測定された信号を周波数変換し、周波数変換して得られた周波数成分のうち所定の周波数バンドから統計量を求めるステップと、
前記筋電位センサによって測定された信号から行動状態成分量を推定するステップと、
前記統計量に基づき入力ベクトルを生成し、前記行動状態成分量を教師信号として、前記入力ベクトルと前記教師信号とに基づいて学習を行うステップと、
学習して得た結果を行動状態モデルとして出力するステップと、
を含むことを特徴とする、行動状態学習方法。
【請求項12】
被験者に装着された振動検知センサによって測定された信号から行動状態を推定する行動状態推定装置によって実行される行動状態推定方法において、
前記振動検知センサによって測定された信号を周波数変換し、周波数変換して得られた周波数成分のうち所定の周波数バンドから統計量を求めるステップと、
前記統計量に基づき入力ベクトルを生成し、行動状態モデルと前記入力ベクトルとに基づき前記被験者の行動状態を推定するステップと、
を含むことを特徴とする、行動状態推定方法。
【請求項13】
コンピュータを、
被験者に装着された振動検知センサによって測定された信号から行動状態を推定する行動状態推定装置であって、
前記振動検知センサによって測定された信号を周波数変換し、周波数変換して得られた周波数成分のうち所定の周波数バンドから統計量を求める周波数バンド統計量演算部と、
前記統計量に基づき前記被験者の行動状態を推定する行動状態成分演算部と、
を備えることを特徴とする、行動状態推定装置として機能させるためのプログラム。
【請求項14】
コンピュータを、
被験者に装着された振動検知センサによって測定された信号と被験者に装着された筋電位センサによって測定された信号とから行動状態を推定するために使用されるモデルを構築する行動状態学習装置であって、
前記振動検知センサによって測定された信号を周波数変換し、周波数変換して得られた周波数成分のうち所定の周波数バンドから統計量を求める周波数バンド統計量演算部と、
前記筋電位センサによって測定された信号から行動状態成分量を推定する行動状態成分変換部と、
前記周波数バンド統計量演算部によって求められた前記統計量に基づき入力ベクトルを生成し、前記行動状態成分変換部によって推定された前記行動状態成分量を教師信号として、前記入力ベクトルと前記教師信号とに基づいて学習を行う行動状態成分学習部と、
前記行動状態成分学習部が学習して得た結果を行動状態モデルとして出力する行動状態モデル出力部と、
を備えることを特徴とする、行動状態学習装置として機能させるためのプログラム。
【請求項15】
プログラムを、
被験者に装着された振動検知センサによって測定された信号から行動状態を推定する行動状態推定装置であって、
前記振動検知センサによって測定された信号を周波数変換し、周波数変換して得られた周波数成分のうち所定の周波数バンドから統計量を求める周波数バンド統計量演算部と、
行動状態モデルを記憶する行動状態モデル記憶部と、
前記行動状態モデル記憶部によって記憶されている前記行動状態モデルを取得し、前記周波数バンド統計量演算部によって求められた前記統計量に基づき入力ベクトルを生成し、前記行動状態モデルと前記入力ベクトルとに基づき前記被験者の行動状態を推定する行動状態成分推定部と、
を備えることを特徴とする、行動状態推定装置として機能させるためのプログラム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−182824(P2011−182824A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−48182(P2010−48182)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成21年度総務省「ユビキタス・プラットフォーム技術の研究開発(ユビキタスサービスプラットフォーム技術の研究開発)」に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受けるもの)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】