説明

衛星捕捉装置

【課題】本発明は、通信衛星にアクセスする無線局において、設置点の緯度に基づいて所望の静止衛星を捕捉する衛星捕捉装置に関し、構成が大幅に変更されることなく、始動時における空中線系の主ローブの方位角の如何にかかわらず効率的に所望の静止衛星を捕捉できることを目的とする。
【解決手段】緯度に対して静止軌道上の静止衛星の位置を与える仰角に空中線系の主ローブの仰角を設定し、かつ前記主ローブの方位角を掃引することによって、前記静止衛星から到来すべき無線信号が受信された方位を求める方位探索手段と、前記方位探索手段によって求められ、かつ前記仰角の方向で前記静止軌道と交叉する二点の方位の内、前記静止衛星の方位を指す2値情報で指される方位を前記静止衛星の方位として識別する方位絞り込み手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信衛星にアクセスする無線局において、設置点の緯度に基づいて所望の静止衛星を捕捉する衛星捕捉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、衛星通信システムの地球局では、空中線系の主ローブの仰角および方位角は、以下の通りに設定されていた。
(1) 傾斜計を介して水平面に対する空中線系の姿勢の誤差が確認され、このような差が所望の精度で小さな値に圧縮される。
(2) GPS(Global Positioning
System)を用いて地球局が設置された地点の緯度θlat および経度θlon が求められる。
【0003】
(3) 方位磁石を用いて真北(真南)の方向が特定される。
(4) 上記緯度θlat および経度θlon の地点において、静止軌道上における所望の静止衛星の位置を示す方位角Θazおよび仰角Θeが求められる。
(5) 空中線系の仰角が上記仰角Θeに設定される。
【0004】
(6) 上記方位角θeまたは真北(真南)の方向を基準として、空中線系の方位角が上記方位角Θazに設定される。
(7) 静止衛星から到来した無線信号のレベルや信号空間上における誤差が所望の精度で小さな値となる値に方位角Θazが微調整されることにより、上記方位磁石の誤差の圧縮が図られる。
【0005】
また、このような方位角Θazは、複数の衛星から同じ周波数帯の無線信号が受信された場合には、電界強度が高い受信波が到来した静止衛星の方位角に優先的に設定される。
【0006】
なお、本発明に関連する先行技術としては、以下に列記する特許文献1ないし特許文献3がある。
(1) 「停止時における車両の方位角、ピッチ角及びロール角をそれぞれ独立的かつ自動的に検出する手段と;車両停止時において検出された前記方位角、ピッチ角及びロール角を停止時における車両の姿勢角として出力する手段と;車両停止位置情報に基づき取得された衛星の絶対方向(仰角及び方位角)を前記検出された姿勢角を用いて車両から見た衛星の相対方向(仰角及び方位角)へ座標変換する手段;車両に搭載されるアンテナの指向方向を前記座標変換した相対仰角及び相対方位角で定まる方向へ設定する手段と;前記設定した指向方向の周辺領域におけるその指向方向の制御を前記座標変換によって相対方向を求めて行う手段と;前記設定した指向方向において、または、前記指向方向の制御時において、受信電界強度値と基準値とを比較し受信電界強度値が基準値を超えるか否かによって衛星を捕捉したか否かを判断し、衛星を捕捉しない場合には、衛星に対する絶対仰角を所定の単位角度幅ごとに一定として方位方向に所定の範囲を走査する予め設定した走査パターンに基づいて前記アンテナの指向方向を走査せしめつつ衛星を捕捉する手段とを備える」ことにより、「車両停止時の姿勢角を自動的に検出し、それを用いて車両から見た衛星の相対方向を求めるようにしたので、正確にアンテナを衛星方向へ指向させることができる」する点に特徴がある衛星通信用の車載アンテナ…特許文献1
【0007】
(2) 「GPS21と方位測定手段25とを移動体11に搭載し、GPS21で移動体11の現在位置を、方位測定手段25で絶対方位をそれぞれ測定し、これと衛星15の位置情報とにより演算手段26で移動体11から衛星15を見た時の仰角と方位角とを演算し、これら仰角と方位角とに、アンテナ13の指向方向の仰角と、方位角とがそれぞれなるように設定手段27により駆動手段12を制御する」ことにより、「短時間で衛星を捕捉する」点に特徴がある衛星通信用移動体アンテナ制御装置…特許文献2
【0008】
(3) 「受信周波数及び受信レベルに基づいて捕捉対象衛星からのビーコン信号を判別するビーコン受信判別装置7と、車載局10及び捕捉対象衛星1の位置情報に基づいて方位角及び仰角を算出するアンテナ制御装置6と、アンテナ2を駆動するアンテナ駆動装置5とを備え、アンテナ制御装置6により算出された方位角を中心とする第1の角度範囲内においてアンテナ2を駆動し、ビーコン受信判別装置7からの判別信号に基づいてビーコン信号にロックオンする」ことにより、「車載局アンテナを短時間かつ確実に自動で捕捉対象衛星に指向させることができる」点に特徴がある車載中継局の衛星捕捉システム…特許文献3
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第2926748号公報
【特許文献2】特開平8−125430号公報
【特許文献3】特開2003−309415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、上述した従来例では、方位磁石による方位角θeの計測、あるいは真北(真南)の方向の特定には、高い鉄塔、高圧線、大きな建造物等による地磁気の乱れに起因して大きな誤差を生じる可能性がある。
【0011】
また、渓谷、あるいは比較的高い山に近い低地では、GPS衛星から到来する受信波の数が好適な値となるとは限らないため、GPSを用いた地球局の緯度θlatおよび経度θlon の特定の精度は、必ずしも十分ではなかった。
【0012】
さらに、同じ周波数帯の受信波が受信された複数の静止衛星の内、電界強度が高い受信波が到来した方向にある静止衛星は、その受信波の電界強度が地形・気象現象等に応じた伝搬路の特性によって広範に変動し得るため、必ずしも所望の静止衛星とはならなかった。
【0013】
また、従来例では、同じ帯域内で受信される受信波の送信源に該当する静止衛星の数が多い場合には、これらの静止衛星の内、受信波の電界強度が最も高い静止衛星から順番に捕捉の対象とするために、所望の静止衛星を捕らえるまでに長時間を要する場合があった。
【0014】
本発明は、構成が大幅に変更されることなく、始動時における空中線系の主ローブの方位角の如何にかかわらず効率的に所望の静止衛星を捕捉できる衛星捕捉装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1に記載の発明では、方位探索手段は、緯度に対して静止軌道上の静止衛星の位置を与える仰角に空中線系の主ローブの仰角を設定し、かつ前記主ローブの方位角を掃引することによって、前記静止衛星から到来すべき無線信号が受信された方位を求める。方位絞り込み手段は、前記方位探索手段によって求められ、かつ前記仰角の方向で前記静止軌道と交叉する二点の方位の内、前記静止衛星の方位を指す2値情報で指される方位を前記静止衛星の方位として識別する。
【0016】
すなわち、空中線系の主ローブの方位角および仰角が如何なるものであっても、静止衛星の方位角は、既知の仰角に対して静止軌道上で交叉する2つの方位の内、既存の静止衛星の配置に基づいて選択された一方の方位として特定される。
【0017】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の衛星捕捉装置において、前記方位探索手段は、前記仰角の方向で前記静止軌道と交叉する二点の方位の内、前記静止衛星の方位と異なる方位から到来し、かつ前記無線信号の占有帯域と同じ帯域に分布する信号が抑圧される値に空中線の主ローブの幅を設定する。
【0018】
すなわち、上記静止軌道上における二点の内、所望の静止衛星の方位角は、その静止衛星以外の静止衛星から到来する無線信号が受信される可能性が低くなるため、より効率的に特定される。
【0019】
請求項3に記載の発明では、空中線制御手段は、緯度に対して静止軌道上の静止衛星の位置を与える仰角の方向に空中線系の主ローブの方向を設定し、かつ前記仰角の方向で前記静止軌道と交叉する二点の方位の内、前記静止衛星の方位と異なる方位から到来し、かつ前記静止衛星から到来する無線信号の占有帯域と同じ帯域に分布する信号が抑圧される値に空中線系の主ローブの幅を設定する。方位絞り込み手段は、前記主ローブの方位角を掃引することによって、前記静止衛星から前記無線信号が受信された方位を識別する。
【0020】
すなわち、空中線系の主ローブの方位角および仰角が如何なるものであっても、所望の静止衛星の方位角は、その静止衛星から到来して無線信号が受信された時点における主ローブの方位角として、確度高く特定される。
【0021】
請求項4に記載の発明では、請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の衛星捕捉装置において、方位調整手段は、前記方位絞り込み手段によって識別された方位の近傍で前記空中線系の方位角を微調整し、前記無線信号のレベルが最大となる方位を特定する。
【0022】
すなわち、所望の静止衛星の捕捉に要する時間は、上記微調整に先行する主ローブの方位角の特定が効率的に行われるため、総合的に短縮される。
【0023】
請求項5に記載の発明では、請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の衛星捕捉装置において、方位調整手段は、前記方位絞り込み手段によって識別された方位の近傍で前記空中線系の方位角を微調整し、前記無線信号の伝送品質が最大となる方位を求める。
【0024】
すなわち、所望の静止衛星の捕捉に要する時間は、上記微調整に先行する主ローブの方位角の特定が効率的に行われるため、総合的に短縮される。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、方位磁針や方位センサが用いられることなく、所望の静止衛星の捕捉が確度高く効率的に実現される。
本発明によれば、所望の静止衛星の捕捉に要する処理量および時間が大幅に削減される。
【0026】
本発明によれば、空中線系の主ローブの幅が小さく設定可能であるほど、所望の静止衛星の捕捉の効率が高められる。
本発明が適用された衛星通信システムでは、静止衛星を介する通信路の確保が安価に、かつ速やかに達成される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態を示す図である。
【図2】本実施形態におけるシーケンサの動作フローチャートである。
【図3】本実施形態の動作原理を説明する図である。
【図4】静止衛星テーブルの構成を示す図である。
【図5】目的方位ポインタテーブルの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態を示す図である。
図において、車外装置10は、所定のケーブルを介して接続された車内装置20と共に車両等の移動体に搭載される。
車外装置10は、以下の要素から構成される。
【0029】
(1) 所望の静止衛星との間に無線伝送路を形成する平面アンテナ11
(2) 平面アンテナ11の給電点に接続され、上記無線伝送路を介して送受信される無線信号を中間周波帯またはベースバンドにおいて車内装置20に引き渡す送受信部12
【0030】
(3) これらの平面アンテナ11および送受信部12から構成される無線部10RFを物理的に可動させることにより、上記無線伝送路の方位角、仰角および偏波をそれぞれ可変するサーボ機構13AZ、13E、13P
(4) サーボ機構13AZによって可変される方位角を所定の範囲(例えば、0〜2πラジアン)に制限するリミットスイッチ14
(5) GPSを利用することにより平面アンテナ11(無線部10RF)が位置する地点Pの緯度latおよび経度lonを得る測位部(GPS)15
【0031】
(6) 平面アンテナ11の基部の水平面に対する傾斜角を得る傾斜計16
(7) 上記送受信部12、サーボ機構13AZ、13E、13P、リミットスイッチ14、測位部15および傾斜計16にそれぞれ接続された入出力ポートに併せて、車内装置20との連係に供される通信ポートを有するシーケンサ17
【0032】
また、車内装置20は、以下の要素から構成される。
(1) 送受信部12と相互に中間周波帯またはベースバンドで既述の無線信号を引き渡し、かつ既定のフレーム構成に基づくフレームの列をシンボル列として出力する信号処理部21
(2) 信号処理部21およびシーケンサ17と連係することにより、操作者に所定の情報を提供し、その操作者によって行われる操作にかかわる仲立ちをする表示装置部22
【0033】
図2は、本実施形態におけるシーケンサの動作フローチャートである。
図3は、本実施形態の動作原理を説明する図である。
以下、図1〜図3を参照して本発明の第一の実施形態の動作を説明する。
【0034】
シーケンサ17は、始動時に、傾斜系16を介して水平面に対する平面アンテナ11の基部の傾斜角を計測する。シーケンサ17は、その傾斜角が所定の精度で0度でない場合には、表示操作部22を介してその旨を操作者に通知し、可能である場合には、傾斜補償機構(図示されない。)を駆動することにより、上記基部の水平面に対する傾斜を補償する。
【0035】
また、シーケンサ17の主記憶には、図4に示され、かつ以下の通りに構成された静止衛星テーブル17Tが予め配置される。
(1) 既存の静止衛星のユニークな識別子ID1〜IDNに個別に対応するレコードの集合として構成される。
【0036】
(2) 個々のレコードには、以下の項目が個別に格納されたフィールドが含まれる。
2-1) 静止軌道上における該当する静止衛星(以下、「目的静止衛星」という。)の経度LATi
2-2) 目的静止衛星から到来する無線信号の占有帯域Bi
2-3) この無線信号の変復調に適用される変復調方式Mi
2-4) このような変復調方式Miに基づいて上記無線信号として伝送されるフレームのフレーム構成Fi
2-5) 目的静止衛星からダウンリンクを介して到来する無線信号の偏波POLi
【0037】
シーケンサ17は、操作者が表示操作部22を介して「目的静止衛星の識別子IDn」を指定すると、以下の処理を行う。
(1) 静止衛星テーブル17Tのレコードの内、上記識別子IDnに対応するレコード(以下、「目的レコード」という。)を特定し(図2ステップS1)、その目的レコードの各フィールドに格納されている経度LATi、占有帯域Bi、変復調方式Mi、フレーム構成Fi、偏波POLiを取得する(図2ステップS2)。
【0038】
(2) 送受信部12に、これらの占有帯域Bi、変復調方式Mi、フレーム構成Fiに基づく無線信号の送受信、変復調を指示する(図2ステップS3)。
(3) 測位部15によって得られた緯度latおよび経度lonに併せて、上記経度LATiを所定の座標系に適用することにより、平面アンテナ11(無線部10RF)が位置する地点Pから目的静止衛星の方向を示す方位角θazおよび仰角θeを算出する(図2ステップS4)。
【0039】
(4) 上記緯度latおよび経度lonに基づいて既述の偏波POLiを補正することにより、目的静止衛星から地点Pに到来する無線信号の偏波POLi′を特定する(図2ステップS5)。
(5) サーボ機構13Pを介して平面アンテナ11(無線部10RF)の姿勢を調整することにより、その平面アンテナ11の偏波を上記偏波POLi′に一致させる(図2ステップS6)。
【0040】
(6) サーボ機構13Eを介して無線部10RFの姿勢を調整することにより、水平面に対する平面アンテナ11の主ローブの仰角を上記仰角θeに設定する(図2ステップS7、図3(a))。
(7) サーボ機構13AZを介して0ラジアン〜2πラジアンに亘って無線部10RFの方位角θazを可変しつつ、上記送受信部12によって既述の占有帯域Biを介して無線信号が受信された時点における無線部10RFの方位角の全てθaz1、θaz2を特定する(図2ステップS8)。
【0041】
ところで、無線部10RFの仰角が上記仰角θeに保たれつつ、図3(b) に一点鎖線の矢印で示すようにその無線部10RFの方位角が可変される過程では、占有帯域がBiに制限された送受信部12によって無線信号が受信される方位の数は、目的静止衛星が正常に作動している場合には、以下に記述する通り「2」または「1」となる。
【0042】
仰角θeが一定に保たれつつ方位角θazが可変される過程では、その仰角θeの方向と静止軌道とが交叉する点は、図3(b) に示すように、一般に、目的静止衛星の位置Aと、その目的静止衛星以外の静止衛星(以下、「影像静止衛星」という。)が位置し得る位置Bとの2点のみとなる。
【0043】
また、影像静止衛星の送信波の占有帯域は、目的静止衛星によって送信される送信波の占有帯域Biに共通の帯域があるとは限らない。
したがって、無線部10RFの仰角θeが一定に保たれた状態でその無線部10RFの方位角が可変される過程では、受信部12が占有帯域Bi内の無線信号を受信し得る方位角は、上記θaz1、θaz2の双方または何れか一方となる。
【0044】
シーケンサ17は、これらの方位角θaz1、θaz2の双方または一方を特定した(図2ステップS8)後、既存の静止衛星の全てに関するデータベース(図示されない。)を参照することにより、「点Pにおける上記方位角θaz1、θaz2の方向の内、目的静止衛星が位置する一方の方位角を示すポインタ」を求め、図5に示す目的方位ポインタテーブル11tに格納する(図2ステップS9)。
【0045】
なお、このようなポインタについては、以下では、上記方位角θaz1、θaz2で示される方位の内、目標静止衛星が位置する方位が点Pに対して西側にある場合には「1」に設定され、反対に東側にある場合に「0」に設定される2値情報であると仮定する。
【0046】
さらに、シーケンサ17は、無線信号が受信された時点における平面アンテナ11の主ローブの方位角の数Nazを計数し(図2ステップS10)、以下の手順に基づいて目的静止衛星の方位角θazを特定する。
【0047】
(1) 上記数Nazが「2」である場合には、θaz1とθaz2との内、目的ポインタテーブル11tに登録されている二値情報の値(=1/0)に対応する一方(点Pの西側/東側)を指す方位角(θaz1またはθaz2)を目的静止衛星の方位角θazとする(図2ステップS11)。
【0048】
(2) 上記数Nazが「1」である場合には、該当する1つの方位角(θaz1またはθaz2)を目的静止衛星の方位角θazとする(図2ステップS12)。
(3) 上記数Nazが「0」または「3」以上である場合には、目的静止衛星の方位角θazを特定できないため、既述の処理を再試行する(図2ステップS13)。
【0049】
すなわち、平面アンテナ11(無線部10RF)の主ローブの仰角や方位角の初期値が如何なるものであっても、目的静止衛星の方位角は、既述の位置Pにおいて既知である目的静止衛星の仰角に対して静止軌道に交叉する2つ方位の内、既知でしる現用の静止衛星の配置に基づいて選択された一方の方位として特定される。
したがって、本実施形態によれば、方位磁針や方位センサーが用いられないにもかかわらず、目的静止衛星が確度高く、かつ効率的に捕捉される。
【0050】
なお、本実施形態では、平面アンテナ11の基部の水平面に対する傾斜角は、目的静止衛星の方位角θazを求めるために行われる処理の開始時に補償されている。
【0051】
しかし、このような傾斜角の補償は、サーボ機構13AZ、13E、13Pを介する平面アンテナ11(無線部10RF)の方位角、仰角および偏波の設定や可変の際に逐次行われてもよい。
【0052】
また、本実施形態では、目的ポインタテーブル11tには、平面アンテナ11(無線部10RF)の位置Pにおける目的静止衛星の方向の特定に供される二値情報のみが格納されている。
【0053】
しかし、このような目的ポインタテーブル11tは、例えば、以下の何れの形態で構成されてもよい。
(1) 以下の項目の双方または何れか一方に対応したレコードの集合として構成される。
1-1) 平面アンテナ11(無線部10RF)が位置し得る地点P1〜Pnの全て
1-2) 目的静止衛星として指定され得る全ての静止衛星
【0054】
(2) 図5に点線および破線で示すように、上記レコード毎に、既述の地点P1〜Pnと目的静止衛星との双方または何れか一方に対して定まる仰角が登録(格納)されたフィールドが含まれる。
【0055】
さらに、本実施形態では、平面アンテナ11の主ローブの幅が一定に保たれている。
しかし、本発明はこのような構成に限定されず、例えば、以下の通りに構成されてもよい。
【0056】
(1) 平面アンテナ11に代えて、主ローブの幅を可変できるビームフォーミング機能を有する平面アンテナ11aが備えられる。
(2) シーケンサ17は、送受信部12に占有帯域Bi、変復調方式Mi、フレーム構成Fiに基づく無線信号の送受信、変復調方式を指示する(図2ステップS3)処理に併せて、図1に点線で示すように、平面アンテナ11aに所定の指示を与えることによって、その平面アンテナ11aの主ローブの幅を通常の値より小さな値に設定する(図2ステップS20)。
【0057】
(3) このように主ローブの幅が狭められることにより、影像静止衛星から到来する無線信号のレベルが抑圧されるために、既述の方位角の数Nazが「2」となる可能性が少なくなり、目的静止衛星の捕捉に要する処理の処理量が平均的に小さな値に抑えられる。
【0058】
また、このような構成における平面アンテナ11の主ローブの幅は、目的静止衛星を介して行われる通常の通信に適用される値より単に小さな値に設定されるだけではなく、以下の通りに設定されてもよい。
【0059】
(1) 想定される影像静止衛星が上記主ローブによる照射域の範囲外となる値
(2) 影像静止衛星となり得る全ての静止衛星が上記主ローブによる照射域の範囲外となる値
(3) 影像静止衛星から到来し得る無線信号のレベルが送受信部12の受信感度以下に抑えられる値
【0060】
また、本実施形態では、目的静止衛星の仰角および方位角を粗く特定する処理が行われている。
【0061】
しかし、本発明は、このような処理に限定されず、例えば、既述の仰角θeおよび方位角θazが求められた後、サーボ機構13E、13AZを介してこれらの仰角θeと方位角θazとの双方または何れか一方が微調整されることによって、フレーム同期の確立が図られ、かつ信号空間上における信号点の誤差やビット誤り率等の伝送品質が最大化されることより、衛星捕捉の精度が高められてもよい。
【0062】
また、本発明は、通信衛星にアクセスする地球局に限らず、例えば、地球以外の惑星等に形成され、その惑星上から見た静止軌道上に位置する通信衛星を捕捉する無線局にも、同様に適用可能である。
さらに、本発明は、上述した実施形態に限定されず、本発明の範囲において多様な実施形態の構成が可能であり、構成要素の全てまたは一部に如何なる改良が施されてもよい。
【符号の説明】
【0063】
10 車外装置
10RF 無線部
11,11a 平面アンテナ
12 送受信部
13AZ,13E,13P サーボ機構
14 リミットスイッチ
15 測位部(GPS)
16 傾斜計
17 シーケンサ
17t 目的方位ポインタテーブル
17T 静止衛星テーブル
20 車内装置
21 信号処理部
22 表示操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
緯度に対して静止軌道上の静止衛星の位置を与える仰角に空中線系の主ローブの仰角を設定し、かつ前記主ローブの方位角を掃引することによって、前記静止衛星から到来すべき無線信号が受信された方位を求める方位探索手段と、
前記方位探索手段によって求められ、かつ前記仰角の方向で前記静止軌道と交叉する二点の方位の内、前記静止衛星の方位を指す2値情報で指される方位を前記静止衛星の方位として識別する方位絞り込み手段と
を備えたことを特徴とする衛星捕捉装置。
【請求項2】
請求項1に記載の衛星捕捉装置において、
前記方位探索手段は、
前記仰角の方向で前記静止軌道と交叉する二点の方位の内、前記静止衛星の方位と異なる方位から到来し、かつ前記無線信号の占有帯域と同じ帯域に分布する信号が抑圧される値に空中線の主ローブの幅を設定する
ことを特徴とする衛星捕捉装置。
【請求項3】
緯度に対して静止軌道上の静止衛星の位置を与える仰角の方向に空中線系の主ローブの方向を設定し、かつ前記仰角の方向で前記静止軌道と交叉する二点の方位の内、前記静止衛星の方位と異なる方位から到来し、かつ前記静止衛星から到来する無線信号の占有帯域と同じ帯域に分布する信号が抑圧される値に空中線系の主ローブの幅を設定する空中線制御手段と、
前記主ローブの方位角を掃引することによって、前記静止衛星から前記無線信号が受信された方位を識別する方位絞り込み手段と
を備えたことを特徴とする衛星捕捉装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の衛星捕捉装置において、
前記方位絞り込み手段によって識別された方位の近傍で前記空中線系の方位角を微調整し、前記無線信号のレベルが最大となる方位を特定する方位調整手段を備えた
ことを特徴とする衛星捕捉装置
【請求項5】
請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の衛星捕捉装置において、
前記方位絞り込み手段によって識別された方位の近傍で前記空中線系の方位角を微調整し、前記無線信号の伝送品質が最大となる方位を求める方位調整手段を備えた
ことを特徴とする衛星捕捉装置

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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