説明

衛生洗浄装置及びトイレ装置

【課題】衛生洗浄装置が便器のボウルに被る部分を減らしつつ、小水などが衛生洗浄装置と便器上面との隙間に侵入しにくい衛生洗浄装置及びこれを備えたトイレ装置を提供する。
【解決手段】衛生洗浄機能部を内蔵し、腰掛便器800の上部に設置される本体部400を備え、前記本体部400の前面は、前記腰掛便器800のボウル810の開口端に沿って凹ませた湾曲凹面402を有し、前記湾曲凹面402の略全体が前記ボウル810の開口端よりも前記ボウル810の側に突出することを特徴とする衛生洗浄装置100を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛生洗浄装置及びトイレ装置に関し、より具体的には、洋式腰掛便器に腰かけた使用者の「おしり」などを水で洗浄する衛生洗浄装置及びこれを備えたトイレ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
衛生洗浄装置は、洗浄水を噴射する洗浄ノズルをその内部に進退自在に収容し、腰掛便器の上面後部に設置して使用する形態のものが主流となっている。そして、このような衛生洗浄装置の清掃性の向上などを目的として、その小型化が検討されている。すなわち、衛生洗浄装置の前面を後退させれば、腰掛便器のボウルに被る部分を減らすことができ、ボウルに被った衛生洗浄装置の裏面の汚れ落としの手間などが省ける。このためには、例えば、衛生洗浄装置の前面を、便器のボウルの開口端と一致するように湾曲状に形成することも考えられる(特許文献1)。
【特許文献1】特開2003−339578号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、衛生洗浄装置の前面をボウルの開口端と一致させると、衛生洗浄装置と便器ボウルの開口端との間の隙間が前面に露出してしまう。その結果として、この隙間に小水などが侵入しやすくなる。特に男性の立位の小用の場合、この露出した隙間に小水が直接かかってしまい、小水が隙間に侵入してアンモニア臭の発生などの原因となる場合がある。
【0004】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、衛生洗浄装置が便器のボウルに被る部分を減らしつつ、小水などが衛生洗浄装置と便器ボウルの開口端との隙間に侵入しにくい衛生洗浄装置及びこれを備えたトイレ装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、
衛生洗浄機能部を内蔵し、腰掛便器の上部に設置される本体部を備え、
前記本体部の前面は、前記腰掛便器のボウルの開口端に沿って凹ませた湾曲凹面を有し、
前記湾曲凹面の略全体が前記ボウルの開口端よりも前記ボウルの側に突出することを特徴とする衛生洗浄装置が提供される。
【0006】
また、本発明の他の一態様によれば、
腰掛便器と、
前記腰掛便器の上部に設置される上記の衛生洗浄装置と、
を備え、
前記湾曲凹面により、前記本体部に対して前記腰掛便器のボウルをほぼ露出させたことを特徴とするトイレ装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、衛生洗浄装置が便器のボウルに被る部分を減らしてボウルのほとんどを露出させつつ、小水などが衛生洗浄装置と便器ボウルの開口端との隙間に侵入しにくい衛生洗浄装置及びこれを備えたトイレ装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施の形態にかかるトイレ装置の外観を表す模式斜視図である。
また、図2は、このトイレ装置の便座200と便蓋300を開いた状態を表す。
【0009】
本実施形態のトイレ装置は、洋式腰掛便器800と、その上に設けられた衛生洗浄装置100と、を備える。衛生洗浄装置100は、本体部400と、便座200と、便蓋300と、を有する。便座200と便蓋300は、本体部400に対して開閉自在にそれぞれ軸支されている。
【0010】
本体部400には、衛生洗浄を実現するための衛生洗浄機能部が内蔵されている。すなわち、着座センサ420により使用者が便座200に座ったことを検知し、使用者のスイッチ操作などに応じて本体部400から吐水ノズル(図示せず)を便器800のボウル内に進出させ、その先端付近に設けられた吐水口から水を噴射して、便座に座った使用者の「おしり」などを洗浄可能とされている。なお、本願明細書において「水」という場合には、冷水のみならず、加熱されたお湯も含むものとする。
【0011】
また、本体部400には、「脱臭ユニット」や「温風乾燥ユニット」、「室内暖房ユニット」などの各種の機構が適宜設けられ、その側面には、脱臭ユニットからの排気口440及び室内暖房ユニットからの排出口450が適宜設けられている。また、使用者の接近を検知して便蓋300を自動的に開き、使用者がいなくなると便蓋300を自動的に閉じる「オート開閉機能」を設けることもできる。 またさらに、便器800に洗浄水を流す「自動水洗機能」を、衛生洗浄装置100に付加してもよい。これは、ロータンクやフラッシュバルブの排水機構を動作させる駆動機構を設け、この駆動機構を動作させる信号を本体部400から出力して、便器800に自動的に洗浄水を流す機能である。
【0012】
これらの機能は、本体部400に設けられた操作部(図示せず)を適宜操作することにより実行・設定でき、また、トイレの壁面などに設置されたリモコン(図示せず)を操作することにより実行させることも可能である。また、本体部400の上面に凹設部410が形成され、この凹設部410に一部が埋め込まれるように人体検知センサ500が設けられている。人体検知センサ500は、便蓋300が閉じた状態においては、その基部付近に設けられた透過窓310を介して使用者の存在を検知する。
【0013】
そして、本実施形態においては、図2に表したように、本体部400が、便器800のボウル810の開口端に合わせて後退した形状を有する。すなわち、本体部400は、便器800の上部後方に設置され、その前面が、便器800のボウル810の開口端の形状に沿ってボウル810の開口端よりもボウル810の側にわずかに突出するように凹状に湾曲した湾曲凹面402とされている。なおここで、「後方」とは、図1に表したように、通常はロータンクやフラッシュバルブなどが設置される側であり、通常の使用態様において使用者からみて遠い側を意味する。
【0014】
湾曲凹面402の左右には、ボウル810の開口端に沿って前方に向けて延出した延出部404が設けられている。湾曲凹面402は、その中央付近が高く、左右の延出部404に近づくにしたがって次第に低くなる形状を有する。
【0015】
湾曲凹面402の中央付近の高い部分には、吐水ノズルを進出及び後退させる開口部及びその開口部を覆う閉止部材としてのノズルダンパー460が設けられ、その右側には、温風吹出口及び温風吹出口を覆う閉止部材として温風ダンパー470が設けられている。これらは、いずれも開閉自在に支持され、待機状態においては、いずれも閉じられた状態とされる。そして、便座200に座った使用者の「おしり」などを洗浄するために吐水ノズルが進出すると、ノズルダンパー460が開く。また、温風乾燥ユニット620から使用者の「おしり」などに向けて温風を吹き付ける際には、温風ダンパー470が開く。
【0016】
そして、本実施形態によれば、湾曲凹面402をボウル810の開口端よりもボウル810の側にわずかに突出させることにより、本体部400がボウル810に被る部分を減らしてボウル810のほとんどを露出させつつ、小水などが本体部400とボウル810の開口端との隙間に侵入することを効果的に防止できる。
図3は、ボウル810と湾曲凹面402との関係を表す模式平面図である。
すなわち、湾曲凹面402のほぼ全体が、ボウル810の開口端よりもボウルの側にわずかに突出している。こうすると、本体部400とボウル810の開口端との隙間を隠すことができる。その結果として、本体部400とボウル810の開口端との隙間に小水などが直接かかることを防止し、小水などの侵入を効果的に抑制できる。この点については、後に詳述する。
【0017】
以下、本体部400の前面を湾曲凹面402とした効果について、まず説明する。
図4は、本実施形態のトイレ装置から便座200と便蓋300を外してトイレ装置を前方から眺めた斜視図である。
また、図5は、第1の比較例のトイレ装置を前方から眺めた斜視図である。なお、図4及び図5は、便器800の前にしゃがんだ状態で便器を清掃する使用者の目線からみたボウル810の眺めを表し、具体的には、便器800の前端からおよそ100ミリメータ離れ、床面から約1000ミリメータの高さから眺めたボウル810の外観を表す。
【0018】
また、図6は、本実施形態のトイレ装置の断面図であり、
図7は、第1比較例のトイレ装置の断面図である。図6及び図7は、便器800の前にしゃがんだ状態で便器を清掃する使用者の目線からみえる範囲を説明するための模式図である。
【0019】
まず比較例について説明すると、図5及び図7に表した第1比較例においては、本体部400は便器800のボウル810の上に延出し、破線で表した領域400Pがボウル810の開口の後方部分を塞いでいる。しかし、このように本体部400がボウル810の上にはみだしていると、男性の立位の小用の際に小水が本体部400にかかりやすくなる。また、このように本体部400がボウル810の上にはみだしていると、ボウル810の有効開口面積が狭められるため、立位で小用をする男性に対して狭窄感を与える。また、このようにはみだした領域400Pの裏面側にも汚れが付着しやすく、その清掃性の点でも改善の余地がある。
【0020】
さらには、このように本体部400がボウル810の上にはみだしていると、ボウル810の後方上部に汚れが付着しても見えず、且つ、その部位の清掃がしにくくかった。すなわち、図5に表した比較例の場合、使用者が便器800の前にしゃがんだ状態においても、ボウル810の上端のリム部820は、本体部のはみ出し領域400Pの陰に隠れて見えない。このため、使用者が領域400Pの下のリム部820を掃除するためには、さらにかがんだ姿勢で覗き込むようにしなければならない。
【0021】
これに対して、本実施形態においては、図4及び図6に表したように、本体部400の前面を後退させて湾曲凹面402を形成することにより、男性の立位での小用の際にも小水がかかりにくくなり、使用者に対して視覚的な狭窄感を与えることもない。そして、このように本体部400を後退させることにより、汚れの付着も抑制でき、清掃性も格段に改善できる。すなわち、本実施形態によれば、図6に表したように、便器800の前にしゃがんだ使用者の視線からみて、ボウル810の後端のリム部820の上端付近まで見える。従って、使用者は、その姿勢のまま雑巾やブラシなどを用いてボウル810の後端まで清掃し、汚れが落ちてきれいになったことを確実且つ容易に確認できる。また、本実施形態においては、本体部400のボウル810の上への突出量が抑制されているので、その突出部の裏側に付着した汚れなどを清掃することも容易である。例えば、雑巾などで清掃する際にも、使用者が本体部400の裏側に雑巾をあてがった状態で、左右にサッと拭き取ることができる。
【0022】
そしてさらに、本実施形態においては、この湾曲凹面402をボウル810の開口端よりもボウルの側にわずかに突出させることにより、ボウル810の開口を殆ど塞ぐことなく、本体部400とボウル810の開口端の上面との隙間に小水などが侵入することを効果的に抑制できる。
【0023】
図8は、本実施形態のトイレ装置の断面図である。
また、図9は、第2の比較例のトイレ装置の断面図である。
【0024】
まず、比較例について説明すると、図9に表した第2比較例は、背景技術に関して前述したように、本体部400が便器の開口端に突出しない便座装置にかかる先行技術に対応する。つまり、本比較例においては、本体部400の前面は、ボウル810の側に突出しておらず、ボウル810の開口端と一致している。しかし、こうすると、本体部400とボウル810の開口端との隙間が完全に露出してしまうので、その隙間に小水900が直接かかって侵入しやすくなる。特に、男性の立位の小用の際には、この隙間に高い位置から小水900がかかることがあり、強い水勢の小水が隙間の奥まで侵入するおそれがある。もちろん、この隙間に、小水が入り込まないようにパッキンなどを設けることも考えられるが、この場合でもパッキンの部分までは小水が侵入してしまい、また、隙間に小水が直接かかると水勢によりパッキンを超えて小水が奥まで入り込んでしまうこともあり得る。
【0025】
これに対して、本実施形態のトイレ装置においては、図8に表したように、本体部400の前面が湾曲凹面402を持ちつつ、ボウル810の開口端よりもわずかに前方に突出させることにより、本体部400とボウル810の開口端との隙間は本体部400によって必ず隠される。その結果として、男性の立位の小用の際にも、本体部400とボウル810の開口端との隙間に小水900が直接かかることをほぼ完全に防止できる。特に、子供の立位の小用の際には、低い位置から小水がかかることとなるが、このような場合でも、本体部400とボウル810の開口端との隙間に小水がかかることを防止できる。その結果として、小水などがこの隙間に侵入することを可及的に防ぐことができ、臭気の発生などを抑制し清潔な状態を維持できる。
また、本体部400とボウル810の開口端との隙間に小水が入り込むと、その小水が本体部400の側方に回り込み、便器800の横側面から外に流れ出て床にこぼれる可能性があるが、本具体例の場合には本体部400とボウル810の開口端との隙間に直接小水がかからないため、その隙間を伝って小水などが便器外に流れ出ることもない。
【0026】
図10は、本実施形態における本体部400の突出部の突出量を説明するための模式平面図である。
同図に表したように、本体部の湾曲凹面402は、ボウル810の開口形状にほぼ沿った形態を保ちつつ、湾曲凹面402のほぼ全体がボウル810の開口端よりもボウル810に側にわずかに突出している。湾曲凹面402の左右前端でのボウル810への突出量をa、bとし、中央付近でのボウル810への突出量をcとすると、a及びbは相対的に小さく、cは相対的に大きくすることができる。このようにすれば、ボウル810の開口形状と略連続させつつ、本体部400とボウル810の開口端との隙間への小水などの侵入を効果的に防止できる。これは、男性の立位の小用の際には、小水は主に中央付近に向けられるからである。また、このようにすると、排水及び脱臭のためのスペース(突出部)を確保することも容易となる。
【0027】
具体的には、例えば、a及びbは概ね数ミリメータ乃至10ミリメータ程度で、cは概ね10ミリメータ乃至10数ミリメータ程度とすることができる。このように湾曲凹面402をわずかに突出させれば、本体部400とボウル810の開口端との隙間への小水の侵入を可及的に抑制できる。またさらに、本体部400からボウル810への排水を確保し、さらに脱臭機能のための脱臭吸気口を確保することもできる。
【0028】
また、本体部400のボウル810への突出部の突出量をこのように制限することにより、例えば使用者の手指の先端から第1関節までの範囲で、雑巾を本体部400の裏側にまんべんなくあてがうことも可能となる。つまり、使用者は、手指の第1関節を軽く曲げた状態のまま、手指の先端に雑巾をあてがって、本体部400の湾曲凹面402に沿って左右に雑巾をサッと滑らすことにより、本体部400の裏側と、これに隣接するリム部820の上端部を確実に清掃することが可能となる。湾曲凹面402はボウル810と略連続した曲面を構成しているので、雑巾がひっかかることもなく、スムーズ且つ確実に清掃できる。
【0029】
そして、本発明においては、このような衛生洗浄装置の本体部400の前縁に、小水の侵入を防止する構造をさらに付加することもできる。
図11は、本体部400の前縁付近を表す部分拡大断面図である。
また、図12は、湾曲凹面402を前方から眺めた模式図である。
また、図13は、湾曲凹面402の中央部を下方から眺めた模式図である。
【0030】
すなわち、本具体例においては、本体部400の前縁下方に小水の侵入を防止する壁790が、湾曲凹面402と同様に前面を凹ませた形状として設けられている。壁790は、本体部400を便器800に取り付けた状態において、ボウル810の中に向けて垂下するように設けられている。このような壁790を設けることにより、本体部400とボウル810の開口端との隙間をほぼ完全に隠すことができ、小水がかかることをほぼ完全に防止できる。またさらに、本体部400にかかった小水が湾曲凹面402の表面を下方に流れた場合も、この小水はそのまま壁790の表面を流下し、壁790の先端からボウル810に落下する。つまり、本体部400にかかった小水が本体部400の裏面に回り込んで、便器800との隙間に侵入することを防止できる。この点で、壁790は、小水の間接的な侵入も防止できるといえる。
【0031】
なお、図11においては、ノズルユニット610が表されている。また、ケースプレート770にはゴムなどからなるパッキン776が適宜設けられ、水などの侵入を防止することができる。なお、本具体例においては、壁790はケースプレート770に設けたが、本発明はこれには限定されず、ケースカバー430の一部を延在させて壁790を形成してもよい。またこの場合、壁790は湾曲凹面402と一体的に形成してもよい。
【0032】
以下、小水の侵入を防止する構造の他の具体例について説明する。
図14は、第2の具体例にかかる本体部400の前縁付近を表す一部拡大断面図である。 また、図15は、湾曲凹面402を正面から眺めた模式図である。
また、図16は、湾曲凹面402の中央部を下方から眺めた模式図である。
【0033】
本具体例においては、ケースプレート770の前縁に、下方に突出する傾斜部792が、湾曲凹面402と同様に前面を凹ませた形状として設けられている。このような傾斜部792を設けることによっても、本体部400とボウル810の開口端との隙間をより確実に隠すことができ、小水がかかることをより確実に防止できる。また本具体例においても、本体部400にかかった小水が湾曲凹面402の表面を下方に流れた場合に、この小水はそのまま傾斜部792の前面792Aを流下し、傾斜部792の先端からボウル810に落下する。つまり、本体部400にかかった小水が本体部400の裏面に回り込んで、便器800との隙間に侵入することを防止できる。
【0034】
なお、小水が本体部400の裏面に回り込まないようにするために、傾斜部792はある程度の高さが必要である。しかし傾斜部792が高すぎると、男性や子供の立位での小用の際に見えてしまい、小用の的にされてしまう可能性がある。この傾斜部の前面792Aには後述するトイ状の排水部771が開設されているため、この傾斜部792が的にされるのを避けたい。そこで、傾斜部の前面792Aを、水平方向に対して47度後方側に傾斜させることで、傾斜部792を立位の人の目線では視認不可能にしている。つまり、図15の正面図では排水部771は見えているが、立位の大人及び子供からは排水部771は見えないように配置されている。
またさらに、本具体例の場合、ボウル310に突出した本体部400の裏面を、雑巾などで掃除しやすいという利点もある。
【0035】
図17は、第3の具体例にかかる本体部400の前縁付近を表す一部拡大断面図である。
【0036】
また、図18は、その先端付近をさらに拡大して表した断面図である。
本具体例においても、ケースプレート770の前縁に、下方に突出する傾斜部792が、湾曲凹面402と同様に前面を凹ませた形状として設けられている。そしてさらに、本具体例においては、傾斜部792の後面792Bに水切り溝794が設けられている。このような水切り溝794を設けることによって、傾斜部792の後面792Bを水が這い上がることを効果的に防止できる。すなわち、傾斜部792の前面792Aを流下した水の殆どは、傾斜部792の先端からボウル810に落下するが、その流量が小さい場合などには、表面張力により傾斜部792の先端から後面792Bを這い上がることもある。このようにして後面792Bを這い上がった水は、本体部400と便器800との隙間に侵入することもあり得る。これに対して、本具体例によれば、傾斜部792の後面792Bに水切り溝794を設けることにより、傾斜部792を這い上がろうとする水が水切り溝794で堰き止められて、水の這い上がりを効果的に防止できる。本具体例における水切り溝794は、水の流量が特に小さい場合などに、傾斜部792の後面792Bへの這い上がりや回り込みを効果的に防止できる。
【0037】
また、本具体例においては、水切り溝794の前面794A(図18参照)が略鉛直面となるように水切り溝794を形成するとよい。つまり、水切り溝794の中に取り込まれた水は、略鉛直な前面794Aを介してボウル810に落下しやすくなる。
【0038】
図19は、湾曲凹面402を正面から眺めた模式図である。
また、図20は、傾斜部792を裏面側から眺めた模式図である。
また、図21は、湾曲凹面402を下方から眺めた模式図である。
【0039】
すなわち、水切り溝794は、傾斜部792の後面792Bを湾曲凹面402に沿って延在し、その両端は、前方に屈曲して湾曲凹面402に開口している。このようにすると、水切り溝794の中に取り込まれた水をさらに効率的にボウル810に落下させることができる。
【0040】
図22は、第4の具体例にかかる本体部400の前縁付近を表す一部拡大断面図である。
【0041】
本具体例においても、ケースプレート770の前縁に、下方に突出する傾斜部792が、湾曲凹面402と同様に前面を凹ませた形状として設けられている。そしてさらに、本具体例においては、傾斜部792の先端に、壁796が設けられている。壁796は、本体部400を便器800に取り付けた状態において、ボウル810の中に向けて垂下するように設けられている。このような壁790を設けることにより、やはり本体部400とボウル810の開口端との隙間をほぼ完全に隠すことができ、小水がかかることをほぼ完全に防止できる。またさらに、本体部400にかかった小水が湾曲凹面402の表面を下方に流れた場合も、この小水はそのまま壁796の表面を流下し、壁790の先端からボウル810に落下する。つまり、本体部400にかかった小水が本体部400の裏面に回り込んで、便器800との隙間に侵入することを防止できる。
【0042】
次に、本実施形態のトイレ装置の内部構造の一例について説明する。
図23は、本体部400の内部を前方から眺めた斜視図である。
本体部400は、筐体を構成するケースカバー430とケースプレート770とを有する。ケースカバー430の上面には、人体検知センサ500や表示部670が適宜設けられている。表示部670は、例えばトイレ装置に対する電源の投入状態などを適宜表示する役割を有する。また、ケースカバー430の前部の上部には、便座200を自動開閉させるための電動開閉ユニット780が突出して設けられている。
【0043】
一方、ケースカバー430の内部をみると、その前方には、ノズルユニット610、温風乾燥ユニット620、脱臭ユニット630、が併設されている。ノズルユニット610は、進退自在の吐水ノズルを有し、便座200に座った使用者の「おしり」などに水を噴射して洗浄する役割を有する。温風乾燥ユニット620は、便座200に座った使用者の「おしり」などに温風をあてて乾燥させる役割を有する。脱臭ユニット630は、便器800のボウル810内の空気を吸引し、脱臭して排気口440から排出する役割を有する。
【0044】
また、ケースカバー430の内部の前部上方にはAC(交流)コントローラ640が設けられ、その後部には、ポンプユニット650と熱交換ユニット660が設けられている。熱交換ユニット660に供給された水が加熱され、ポンプユニット650で水に脈動を付与し、ノズルユニット610にこの脈動水を供給する。
【0045】
また、ケースカバー430の側面には、補助操作ユニット(図示せず)が適宜設けられている。補助操作ユニットは、ノズルユニット610による「おしり」の洗浄などを操作するスイッチが設けられ、例えば、リモコン(図示せず)による操作が不可能な状態においても衛生洗浄機能の動作を制御可能としたものである。
【0046】
一方、ケースカバー430の内部の後部には、電動開閉ユニット720と便器洗浄バルブユニット730とが併設されている。電動開閉ユニット720は、便蓋300を開閉する役割を有する。便器洗浄バルブユニット730は、便器800に流す洗浄水の供給を制御する役割を有する。すなわち、本具体例のトイレ装置は、いわゆる「水道直結給水式」の構造を有し、ロータンクなどを設けずに、水道から供給される水を便器洗浄バルブユニット730を介して便器800に供給して洗浄を実施する。ただし、本発明はこれには限定されず、ロータンク式のトイレに取付可能な衛生洗浄装置も包含する。
【0047】
一方、ケースカバー430の内部の最後部には、室内暖房ユニット740が設けられている。室内暖房ユニット740は、温風を排出口450(図1参照)から排出することによりトイレ装置が設置されたトイレ空間を暖房する役割を有する。
【0048】
そして、このような各種の機構を備えた本体部400の内部において、排水が生ずることがある。例えば、ノズルユニット610はその先端にノズル洗浄室を備え、吐水ノズルの使用の前後などにノズル洗浄室において水を噴射することにより吐水ノズルを洗浄する。この洗浄水は、ケースプレート770の前端中央部に壁790または傾斜部792を一部切り欠いて設けられたトイ状の排水部771からボウル810に排出される。この際に、図11〜図22に関して前述したような壁790、傾斜部792、水切り溝794、壁796などを設けることにより、排水部771から排出された水の這い上がりや回り込みを防止することができる。つまり、排水部771から排出された水が本体部400と便器800との隙間に侵入することも防止できる。
【0049】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、本発明の衛生洗浄装置及びトイレ装置に含まれる、脱臭装置、温風乾燥装置、着座センサ、筺体、リモコン、腰掛便器などの各要素については、当業者が適宜設計変更することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができるものも本発明の要旨を含む限り、本発明の範囲に包含される。その他、衛生洗浄装置や便器を構成する各要素について変更を加えたものであっても、本発明の要旨を備える限りにおいて、本発明の範囲に包含される。
【0050】
また、本発明のトイレ装置は、「ロータンク式」のものでもよく、または、水道からの水を便器に直接給水し洗浄する「水道直結給水式」のものでもよい。
また、図1乃至図23に関して前述した特徴部分は、技術的な可能な範囲においていかようにも組合せることができ、これら組合せにより得られた衛生洗浄装置及びトイレ装置についても、本発明の要旨を含む限りにおいて本発明の範囲に包含される。
【0051】
その他、本発明の実施の形態として上述した衛生洗浄装置及びトイレ装置を基にして、当業者が適宜設計変更して実施しうるすべての衛生洗浄装置及びトイレ装置も同様に本発明の範囲に属する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施の形態にかかるトイレ装置の外観を表す模式斜視図である。
【図2】トイレ装置の便座200と便蓋300を開いた状態を表す。
【図3】ボウル810と湾曲凹面402との関係を表す模式平面図である。
【図4】本実施形態のトイレ装置から便座200と便蓋300を外してトイレ装置を前方から眺めた斜視図である。
【図5】第1の比較例のトイレ装置を前方から眺めた斜視図である。
【図6】本実施形態のトイレ装置の断面図である。
【図7】第1比較例のトイレ装置の断面図である。
【図8】本実施形態のトイレ装置の断面図である。
【図9】第2の比較例のトイレ装置の断面図である。
【図10】本実施形態における本体部400の突出部の突出量を説明するための模式平面図である。
【図11】本体部400の前縁付近を表す一部拡大断面図である。
【図12】湾曲凹面402を前方から眺めた模式図である。
【図13】衛生洗浄装置の裏面を表す模式図である。
【図14】第2の具体例にかかる本体部400の前縁付近を表す一部拡大断面図である。
【図15】湾曲凹面402を正面から眺めた模式図である。
【図16】衛生洗浄装置の裏面を表す模式図である。
【図17】第3の具体例にかかる本体部400の前縁付近を表す一部拡大断面図である。
【図18】第3具体例の本体部の先端付近をさらに拡大して表した断面図である。
【図19】湾曲凹面402を正面から眺めた模式図である。
【図20】傾斜部792を裏面側から眺めた模式図である。
【図21】湾曲凹面402を下方から眺めた模式図である。
【図22】第4の具体例にかかる本体部400の前縁付近を表す一部拡大断面図である。
【図23】本体部400の内部を前方から眺めた斜視図である。
【符号の説明】
【0053】
100 衛生洗浄装置、200 便座、300 便蓋、310 ボウル、400 本体部、402 湾曲凹面、404 延出部、420 着座センサ、430 ケースカバー、440 排気口、450 排出口、460 ノズルダンパー、470 温風ダンパー、500 人体検知センサ、610 ノズルユニット、620 温風乾燥ユニット、630 脱臭ユニット、640 コントローラ、650 ポンプユニット、660 熱交換ユニット、670 表示部、720 電動開閉ユニット、730 便器洗浄バルブユニット、740 室内暖房ユニット、770 ケースプレート、771 排水部、780 電動開閉ユニット、790 壁、792 傾斜部、792A 前面、792B 後面、794 溝、794A 前面、796 壁、800 便器、810 ボウル、820 リム部、900 小水



【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛生洗浄機能部を内蔵し、腰掛便器の上部に設置される本体部を備え、
前記本体部の前面は、前記腰掛便器のボウルの開口端に沿って凹ませた湾曲凹面を有し、
前記湾曲凹面の略全体が前記ボウルの開口端よりも前記ボウルの側に突出することを特徴とする衛生洗浄装置。
【請求項2】
前記本体部は、前記ボウルの側に突出した部分の下面に、下方に垂下する壁を有することを特徴とする請求項1記載の衛生洗浄装置。
【請求項3】
前記本体部は、前記ボウルの側に突出した部分の下面に、下方に突出する傾斜部を有することを特徴とする請求項1記載の衛生洗浄装置。
【請求項4】
前記傾斜部の斜面に水切り溝が設けられたことを特徴とする請求項3記載の衛生洗浄装置。
【請求項5】
前記傾斜部の先端に、下方に垂下する壁が設けられたことを特徴とする請求項3記載の衛生洗浄装置。
【請求項6】
腰掛便器と、
前記腰掛便器の上部に設置される請求項1〜5のいずれか1つに記載の衛生洗浄装置と、
を備え、
前記湾曲凹面により、前記本体部に対して前記腰掛便器のボウルをほぼ露出させたことを特徴とするトイレ装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2007−284926(P2007−284926A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−111284(P2006−111284)
【出願日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【特許番号】特許第3894457号(P3894457)
【特許公報発行日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】