説明

衛生洗浄装置及びトイレ装置

【課題】衛生洗浄装置が便器のボウルに被る部分を減らしつつ、温風を「おしり」などに効率的に届かせる衛生洗浄装置及びこれを備えたトイレ装置を提供する。
【解決手段】吐水ノズル615と温風吹出ダクト624とを内蔵し、腰掛便器800の上部に設置される本体部400を備え、前記本体部の前面は、後方に凹ませた湾曲凹面402を有し、前記湾曲凹面は、その中央付近が高く左右端部に向けて次第に低くなる形状を有し、前記湾曲凹面の前記中央付近に、前記吐水ノズル及び温風吹出ダクトの一端部が臨む少なくとも一つの開口部と、前記開口部を塞ぐ開閉可能な蓋体と、が設けられたことを特徴とする衛生洗浄装置100を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛生洗浄装置及びトイレ装置に関し、より具体的には、洋式腰掛便器に腰かけた使用者の「おしり」などを水で洗浄する衛生洗浄装置及びこれを備えたトイレ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
衛生洗浄装置は、洗浄水を噴射する洗浄ノズルをその内部に進退自在に収容し、腰掛便器の上面後部に設置して使用する形態のものが主流となっている。そして、このような衛生洗浄装置の清掃性の向上などを目的として、その小型化が検討されている。すなわち、衛生洗浄装置の前面を後退させれば、腰掛便器のボウルに被る部分を減らすことができ、ボウルに被った衛生洗浄装置の裏面の汚れ落としの手間などが省ける。このためには、例えば、衛生洗浄装置の前面を後退させて、便器のボウルの開口に沿った湾曲状に形成することも考えられる(特許文献1)。
【特許文献1】特開2003−339578号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、衛生洗浄装置の前面を後退させると新たな問題が生ずる。すなわち、使用者の「おしり」などを乾燥するための温風の吹出口がこれまでよりも後方に遠ざかってしまうために、従来のような偏平な開口形状の吹出口では温風が拡散してしまい、「おしり」などに温風が効率的に届かなくなる。
【0004】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、衛生洗浄装置が便器のボウルに被る部分を減らしつつ、温風を「おしり」などに効率的に届かせる衛生洗浄装置及びこれを備えたトイレ装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、
吐水ノズルと温風吹出ダクトとを内蔵し、腰掛便器の上部に設置される本体部を備え、
前記本体部の前面は、後方に凹ませた湾曲凹面を有し、
前記湾曲凹面は、その中央付近が高く左右端部に向けて次第に低くなる形状を有し、
前記湾曲凹面の前記中央付近に、前記吐水ノズル及び温風吹出ダクトの一端部が臨む少なくとも一つの開口部と、前記開口部を塞ぐ開閉可能な蓋体と、が設けられたことを特徴とする衛生洗浄装置が提供される。
【0006】
また、本発明の他の一態様によれば、
腰掛便器と、
前記腰掛便器の上部に設置される上記衛生洗浄装置と、
を備え、
前記湾曲凹面により、前記本体部に対して前記ボウルのほとんどを露出させたことを特徴とするトイレ装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、衛生洗浄装置が便器のボウルに被る部分を減らしつつ、温風を「おしり」などに効率的にあてることができる衛生洗浄装置及びこれを備えたトイレ装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施の形態にかかるトイレ装置の外観を表す模式斜視図である。
また、図2は、このトイレ装置の便座200と便蓋300を開いた状態を表す。
【0009】
本実施形態のトイレ装置は、洋式腰掛便器800と、その上に設けられた衛生洗浄装置100と、を備える。衛生洗浄装置100は、本体部400と、便座200と、便蓋300と、を有する。便座200と便蓋300は、本体部400に対してそれぞれ開閉自在に軸支されている。
【0010】
本体部400には、衛生洗浄を実現するための衛生洗浄機能部が内蔵されている。すなわち、着座センサ420により使用者が便座200に座ったことを検知し、使用者のスイッチ操作などに応じて本体部400から吐水ノズル(図示せず)を便器800のボウル内に進出させ、その先端付近に設けられた吐水口から水を噴射して、便座に座った使用者の「おしり」などを洗浄可能とされている。なお、本願明細書において「水」という場合には、冷水のみならず、加熱されたお湯も含むものとする。
【0011】
また、本体部400には、「温風乾燥ユニット」の他、「脱臭ユニット」や「室内暖房ユニット」などの各種の機構が適宜設けられ、その側面には、排気口440及び排出口450が適宜設けられている。また、使用者の接近を検知して便蓋300を自動的に開き、使用者がいなくなると便蓋300を自動的に閉じる「オート開閉機能」を設けることもできる。またさらに、便器800に洗浄水を流す「自動水洗機能」を、衛生洗浄装置100に付加してもよい。これは、ロータンクやフラッシュバルブの排水機構を動作させる駆動機構を設け、この駆動機構を動作させる信号を本体部400から出力して、便器800に自動的に洗浄水を流す機能である。
【0012】
これらの機能は、本体部400に設けられた操作部(図示せず)を適宜操作することにより実行・設定でき、また、トイレの壁面などに設置されたリモコン(図示せず)を操作することにより実行させることも可能である。また、図1に表した具体例の場合、本体部400の上面に凹設部410が形成され、この凹設部410に一部が埋め込まれるように人体検知センサ500が設けられている。人体検知センサ500は、便蓋300が閉じた状態においては、その基部付近に設けられた透過窓310を介して使用者の存在を検知する。
【0013】
そして、本実施形態においては、図2に表したように、本体部400が、便器800のボウル810の開口に合わせて後退した形状を有する。すなわち、本体部400は、便器800の上部後方に設置され、その前面は、便器800のボウル810の開口の形状に沿ってボウル810の開口端よりもボウル810の側にわずかに突出するように凹状に湾曲した湾曲凹面402とされている。そして、湾曲凹面402の左右には、ボウル810の開口に沿って前方に向けて延出した延出部404が設けられている。また、湾曲凹面402及び延出部404の上方には、後方に向けて高くなる傾斜面408が設けられている。なおここで、「後方」とは、図1に表したように、通常はロータンクやフラッシュバルブなどが設置される側であり、通常の使用態様において使用者からみて遠い側を意味する。
【0014】
図3は、本体部400を前方から眺めた模式図である。
湾曲凹面402の高さ方向の幅は、中央付近で大きく、左右の延出部404に近づくにしたがって次第に小さくなる。つまり、ほぼ鉛直な面である湾曲凹面402は、その中央付近が高く、左右の延出部404に近づくにしたがって次第に低くなる形状を有する。より具体的には、湾曲凹面402の中央はおよそ45mm、左右端部はおよそ13mmの高さであり、約7:2の比率になっている。
このように、湾曲凹面402の中央付近を高くすることにより、男性の立位の小用に際して本体部400に小水がかかったとしても、湾曲凹面402の中央付近の背の高い部分で小水を受けてボウル810に落下させることができる。つまり、小水が本体部400の傾斜面408などにかかることを抑制でき、小水による汚れを可及的に減らすことができる。また一方、湾曲凹面402の左右端部の高さを低くしたことにより、その上を覆う便座200の座面を座りやすい低さまで下げることができる。
【0015】
一方、湾曲凹面402の中央付近の高い部分には、吐水ノズル及び温風乾燥ユニットの吹出ダクトの一端部が臨む位置に、2つの開口部を隣接させて設けている。湾曲凹面402の中央には、吐水ノズルを進出及び後退させる開口部及びその開口部を覆う閉止部材としてのノズルダンパー460が設けられ、その右側には、温風ダクトの吹出口が臨む開口部及びその開口部を覆う閉止部材として温風ダンパー470が設けられている。これらは、いずれも開閉自在に支持され、待機状態においては、いずれも閉じられた状態とされる。そして、便座200に座った使用者の「おしり」などを洗浄するために吐水ノズルが進出すると、吐水ノズルに押されるか若しくは電動でノズルダンパー460が開く。また、温風乾燥ユニット620から使用者の「おしり」などに向けて温風を吹き付ける際には、温風の風力で若しくは電動で温風ダンパー470が開く。
なお、この2つの開口部と、この開口部を覆うダンパー460、470に代えて、吐水ノズルの進退及び温風の吹出に共用する1つの開口部とダンパーを設けてもよく、また2つの開口部を1つのダンパーで覆うようにしてもよい。
【0016】
このように、湾曲凹面402の中央付近の高い部分にノズルダンパー460を設けることにより、例えば、径の大きい多段式の吐水ノズルを湾曲凹面402からボウル810の中に進出させることができる。すなわち、本体部400の前面を後退させて湾曲凹面402を形成したことにより、本体部400に内蔵する吐水ノズルの進出距離も長くしなければならない。このため、吐水ノズルは、ノズルヘッドとひとつのシリンダ部とがスライド可能とされた2段式、あるいはそれ以上の多段式の構造とする必要がある。
図4は、本実施形態の衛生洗浄装置100に設けることができるノズルユニットを例示する模式図である。
このノズルユニット610は3段式の構造を有する。すなわち、ノズル基部611の上に第3のシリンダ部612が固定され、その内側に第2のシリンダ部613が進退自在に支持され、第2のシリンダ部613の内側に第1のシリンダ部614が進退自在に支持され、第1のシリンダ部614の内側に噴射孔616を有するノズルヘッド615が進退自在に支持されている。また、第3のシリンダ部612の前方には、吐水ノズルの胴体を洗浄するノズル洗浄室617が設けられている。この吐水ノズルは、図4(a)に表したように後退した状態においては、本体部400の中に収容され、図4(b)に表したように進出した状態においては、ノズルダンパー460(図3参照)を開いてボウル810の中に進出する。
【0017】
このような吐水ノズルは、多段式の構造をとるために必然的にその径も大きくなる。このために、本体部400から進出させるためには、ノズルダンパー460も大きくしなければならない。これに対して、本実施形態によれば、湾曲凹面402の中央付近を高くし、この高い部分にノズルダンパー460を設けることにより、図4に例示したような径が太く長い進出距離を有する多段式の吐水ノズルをボウル810の中に進出させ、使用者の「おしり」などに向けて確実に吐水させることができる。
【0018】
またさらに、本実施形態によれば、湾曲凹面402の中央付近の高い部分に温風ダンパー470を設けることにより、使用者の「おしり」などを乾燥する温風の吹出口を好適な形状にできる。
図5は、温風の吹出口の形状を例示する模式図である。すなわち、同図(a)は本実施形態における吹出口を例示し、同図(b)は比較例の吹出口を例示する。
【0019】
所定の風量の温風を吹き出すためには、吹出口の開口面積は所定の大きさである必要がある。本体部400の前面の高さが低い場合には、図5(b)に表したように、縦方向の幅が低く横方向に偏平な吹出口を採用せざるを得ない。例えば、図5(b)に例示した比較例の吹出口の場合、その縦方向の幅Aは10ミリメータであるのに対して横幅Bは43ミリメータであり、横方向に偏平した開口を有する。
【0020】
しかし、図2及び図3に関して前述したように本体部400の前面を後退させて湾曲凹面402を形成したことにより、吹出口の位置は、使用者の「おしり」などから遠ざかることとなる。このような場合に図5(b)に表したような偏平な吹出口を用いると、温風が左右方向に拡散してしまい、使用者の「おしり」に十分な風量の温風を届かせることが困難となる。
【0021】
これに対して、本実施形態によれば、図5(a)に表したように、縦方向の幅と横幅とが接近した吹出口を設けることができる。これは、湾曲凹面402の中央付近を高くし、この高い部分にノズルダンパー460を設けたからである。例えば、図5(a)に例示した吹出口の場合、その開口の縦方向の幅Aを18ミリメータまで拡大できる。その結果、横方向の幅Bを27ミリメータまで縮小させ、開口寸法の縦横比を1に近づけることができる。このように開口寸法の縦横比を1に近づけることにより、集束した温風を吹き出すことができる。その結果として、使用者の「おしり」からみて後方に遠ざかった湾曲凹面402から使用者の「おしり」に集束した温風を届かせることができる。
【0022】
なお、図5(b)に表した比較例の吹出口の開口面積は約430平方ミリメータであるのに対して、図5(a)に表した吹出口の開口面積は約480ミリメータである。つまり、湾曲凹面402の中央付近の背の高い部分にノズルダンパー460を設けることにより、吹出口の縦方向の寸法を大きくでき、開口の縦横比を1に近づけつつ開口面積を拡大することも可能となる。
本実施形態において温風を集束させる効果については、後に具体例を参照しつつ詳述する。
【0023】
次に、本体部400の前面を後方に後退させて湾曲凹面402とした効果について説明する。
図6は、本実施形態のトイレ装置から便座200と便蓋300を外して前方から眺めた斜視図である。
また、図7は、比較例のトイレ装置を前方から眺めた斜視図である。なお、図6及び図7は、便器800の前にしゃがんだ状態で便器を清掃する使用者の目線からみたボウル810の眺めを表し、具体的には、便器800の前端からおよそ100ミリメータ離れ、床面から約1000ミリメータの高さから眺めたボウル810の外観を表す。
【0024】
また、図8は、本実施形態のトイレ装置の断面図であり、
図9は、第1比較例のトイレ装置の断面図である。図8及び図9は、便器800の前にしゃがんだ状態で便器を清掃する使用者の目線からみえる範囲を説明するための模式図である。
【0025】
まず比較例について説明すると、図7及び図9に表した第1比較例においては、本体部400は便器800のボウル810の上に延出し、破線で表した領域400Pがボウル810の開口の後方部分を塞いでいる。しかし、このように本体部400がボウル810の上にはみだしていると、男性の立位の小用の際に小水が本体部400にかかりやすくなる。また、このように本体部400がボウル810の上にはみだしていると、ボウル810の有効開口面積が狭められるため、立位で小用をする男性に対して狭窄感を与える。また、このようにはみだした領域400Pの裏面側にも汚れが付着しやすく、その清掃性の点でも改善の余地がある。
【0026】
さらには、このように本体部400がボウル810の上にはみだしていると、ボウル810の後方上部に汚れが付着しても見えず、且つ、その部位の清掃がしにくくかった。すなわち、図7に表した比較例の場合、使用者が便器800の前にしゃがんだ状態においても、ボウル810の上端のリム部820は、本体部のはみ出し領域400Pの陰に隠れて見えない。このため、使用者が領域400Pの下のリム部820を掃除するためには、さらにかがんだ姿勢で覗き込むようにしなければならない。
これに対して、本実施形態においては、図6及び図8に表したように、本体部400の前面を後退させて湾曲凹面402を形成することにより、男性の立位での小用の際にも小水がかかりにくくなり、使用者に対して視覚的な狭窄感を与えることもない。また、図3に関して前述したように、湾曲凹面402の中央付近を高くすることにより、男性の立位の小用に際して本体部400に小水がかかったとしても、湾曲凹面402の中央付近の背の高い部分で小水を受けてボウル810に落下させることができる。つまり、小水が本体部400の傾斜面408などにかかることを抑制でき、小水による汚れを可及的に減らすことができる。
【0027】
そして、このように本体部400を後退させることにより、本体部400の裏面への汚れの付着も抑制でき、清掃性も格段に改善できる。すなわち、本実施形態によれば、図8に表したように、便器800の前にしゃがんだ使用者の視線からみて、ボウル810の後端のリム部820の上端付近まで見える。従って、使用者は、その姿勢のまま雑巾やブラシなどを用いてボウル810の後端まで清掃し、汚れが落ちてきれいになったことを確実且つ容易に確認できる。また、本実施形態においては、本体部400のボウル810の上への突出量が抑制されているので、その突出部の裏側に付着した汚れなどを清掃することも容易である。例えば、雑巾などで清掃する際にも、使用者が本体部400の裏側に雑巾をあてがった状態で、左右にサッと拭き取ることができる。
【0028】
図10は、本実施形態における湾曲凹面402とボウル810との関係を説明するための模式平面図である。
同図に表したように、本体部の湾曲凹面402は、ボウル810の開口形状にほぼ沿った形態を保ちつつ、湾曲凹面402のほぼ全体がボウル810の開口端よりもボウル810の側にわずかに突出している。湾曲凹面402の左右前端でのボウル810への突出量をa、bとし、中央付近でのボウル810への突出量をcとすると、a及びbは相対的に小さく、cは相対的に大きくすることができる。このようにすれば、ボウル810の開口形状と略連続させてボウル810のほとんどを露出させつつ、本体部400とボウル810の開口端との隙間への小水などの侵入を効果的に防止できる。これは、男性の立位の小用の際には、小水は主に中央付近に向けられるからであり、さらに本体部400とボウル810の開口端との隙間が湾曲凹面402で覆われるため、その隙間に小水が直接かからないからである。また、このようにすると、排水及び脱臭のためのスペース(突出部)を確保することも容易となる。
【0029】
具体的には、例えば、a及びbは概ね数ミリメータ乃至10ミリメータ程度で、cは概ね10ミリメータ乃至10数ミリメータ程度とすることができる。このように湾曲凹面402をわずかに突出させれば、小水の侵入を可及的に抑制できる。またさらに、本体部400からボウル810への排水を確保し、さらに脱臭機能のための脱臭吸気口を確保することもできる。
【0030】
また、本体部400のボウル810への突出部の突出量をこのように制限することにより、例えば使用者の手指の先端から第1関節までの範囲で、雑巾を本体部400の裏側にまんべんなくあてがうことも可能となる。つまり、使用者は、手指の第1関節を軽く曲げた状態のまま、手指の先端に雑巾をあてがって、本体部400の湾曲凹面402に沿って左右に雑巾をサッと滑らすことにより、本体部400の裏側と、これに隣接するリム部820の上端部を確実に清掃することが可能となる。湾曲凹面402はボウル810と略連続した曲面を構成しているので、雑巾がひっかかることもなく、スムーズ且つ確実に清掃できる。
【0031】
次に、本実施形態の衛生洗浄装置の内部構造の一例について説明する。
図11は、本体部400の内部を前方から眺めた斜視図である。
本体部400は、筐体を構成するケースカバー430とケースプレート770とを有する。ケースカバー430の上面には、人体検知センサ500や表示部670が適宜設けられている。表示部670は、例えばトイレ装置に対する電源の投入状態などを適宜表示する役割を有する。また、ケースカバー430の前部の上部には、便座200を自動開閉させるための電動開閉ユニット780が突出して設けられている。
【0032】
一方、ケースカバー430の内部をみると、その前方には、ノズルユニット610、温風乾燥ユニット620、脱臭ユニット630、が併設されている。ノズルユニット610は、図4に関して前述したように、進退自在の吐水ノズルを有し、便座200に座った使用者の「おしり」などに水を噴射して洗浄する役割を有する。温風乾燥ユニット620は、図5に関して前述したような吹出口を有し、便座200に座った使用者の「おしり」などに温風をあてて乾燥させる役割を有する。脱臭ユニット630は、便器800のボウル810内の空気を吸引し、脱臭して排気口440から排出する役割を有する。
【0033】
また、ケースカバー430の内部の前部上方にはAC(交流)コントローラ640が設けられ、その後部には、ポンプユニット650と熱交換ユニット660が設けられている。熱交換ユニット660に供給された水が加熱され、ポンプユニット650で水に脈動を付与し、ノズルユニット610にこの脈動水を供給する。
【0034】
また、ケースカバー430の側面には、補助操作ユニット(図示せず)が適宜設けられている。補助操作ユニットは、ノズルユニット610による「おしり」の洗浄などを操作するスイッチが設けられ、例えば、リモコン(図示せず)による操作が不可能な状態においても衛生洗浄機能の動作を制御可能としたものである。
【0035】
一方、ケースカバー430の内部の後部には、電動開閉ユニット720と便器洗浄バルブユニット730とが併設されている。電動開閉ユニット720は、便蓋300を開閉する役割を有する。便器洗浄バルブユニット730は、便器800に流す洗浄水の供給を制御する役割を有する。すなわち、本具体例のトイレ装置は、いわゆる「水道直結給水式」の構造を有し、ロータンクなどを設けずに、水道から供給される水を便器洗浄バルブユニット730を介して便器800に供給して洗浄を実施する。ただし、本発明はこれには限定されず、ロータンク式のトイレに取付可能な衛生洗浄装置も包含する。
【0036】
一方、ケースカバー430の内部の最後部には、室内暖房ユニット740が設けられている。室内暖房ユニット740は、温風を排出口450(図1参照)から排出することによりトイレ装置が設置されたトイレ空間を暖房する役割を有する。
【0037】
そして、このような各種の機構を備えた本体部400の内部において、排水が生ずることがある。例えば、ノズルユニット610はその先端にノズル洗浄室を備え、吐水ノズルの使用の前後などにノズル洗浄室において水を噴射することにより吐水ノズルを洗浄する。この洗浄水は、ケースプレート770の前端中央部に設けられたトイ状の排水部771からボウル810に排出される。
【0038】
また、熱交換ユニット660に水を供給するバルブユニットには、バキュームブレーカーや安全弁(図示せず)が設けられている。バキュームブレーカーは、例えば、衛生洗浄装置100を給水管から取り外す際などに、衛生洗浄装置100の内部の配管などに残留した水を排水するためのバルブである。また、安全弁は、排水系統の水圧が万が一所定値よりも上昇した場合に、水を放出させるバルブである。
【0039】
衛生洗浄装置100の横幅が大きく、便器800よりも横方向に突出している場合には、バキュームブレーカーや安全弁から放出される水を、この突出部から外部に排水させることも可能である。しかし、図1及び図6に例示したように、衛生洗浄装置100の横幅を便器800の横幅と同程度にまでコンパクトにすると、バキュームブレーカーや安全弁からの排水を衛生洗浄装置100の横から取り出すことが困難となる。
【0040】
これに対して、本具体例においては、バキュームブレーカーや安全弁から放出される水をボウル810に排水できる。
図12は、本体部400の上側ケースと内部の機構を取り除きケースプレート(取付基板)770を露出させた状態を表す模式図である。
ボウル810の開口端よりもボウル810の側に突出した部分に、排水孔773を設け、排水チューブでバキュームブレーカーや安全弁に接続することにより、バキュームブレーカーや安全弁からの排水をボウル810に排出できる。また、ボウル810の開口端よりもボウル810の側に突出したケースプレート770の中央端部に、トイ状の排水部771を設けることにより、吐水ノズルのノズル洗浄室617(図4参照)からの排水もボウル810に排出することができる。さらに、ボウル810の開口端よりもボウル810の側に突出した部分に、脱臭のための吸気孔774も設けることができる。
【0041】
このように、本体部400をボウル810の開口端よりもボウル810の側にわずかに突出させることにより、バキュームブレーカーや安全弁や吐水ノズルからの排水をボウル810に排出できる。さらに、脱臭用の吸気孔774も設けて、脱臭に必要とされる風量を得るための開口面積を確保することができる。
【0042】
またさらに、本実施形態によれば、湾曲凹面402の中央付近を高くし、湾曲凹面の左右端部よりも中央に近接した位置の下面に排水孔773を設けることにより、バキュームブレーカーや安全弁からの排水チューブも接続しやすくなる。
図13は、バキュームブレーカーや安全弁からの排水チューブの接続部の断面構造を例示する模式図である。 図13(a)に表したように、湾曲凹面402の高さが低い部分の下に排水孔773を設けた場合には、破線で表したように、ケースカバー430に当たって排水チューブ662が潰れてしまい、うまく排水されないおそれがある。これに対して、図13(b)に表したように、湾曲凹面402の高さが高い部分の下に排水孔773を設けると、破線で表したように、ケースカバー430と排水チューブ662との間に余裕が生ずるので、排水チューブ662が潰れることなく、確実に排水させることが可能となる。
【0043】
次に、本実施形態において設ける温風乾燥ユニットについて、具体例を参照しつつさらに詳細に説明する。
図14は、ケースプレートの上に取り付けられた温風乾燥ユニット620の平面図である。
すなわち、温風乾燥ユニット620は、モータを内蔵した排気ファン622と、ヒータ及び温度センサを内蔵したダクト624と、を有する。排気ファン622から送出された風がダクト624において暖められ、吹出口626から放出される。そして、本実施形態においては、図5に関して前述したように、吹出口626は、吐水ノズルに隣接し、湾曲凹面402の中央付近の背の高い部分に設けられている。
【0044】
図15は、 吹出口626から放出される温風の方向を表す模式図である。
本実施形態においては、湾曲凹面402の中央付近に設けられた温風ダンパー470(図3参照)の背後に設けられた吹出口626から、図15(a)〜(c)に表したように、便座200に座った使用者の「おしり」の方向に集束した温風Hを吹き出すことができる。吹出口626が左右(水平)方向に偏平ではなく、開口寸法の縦横比が1に近いので、放出される温風Hが左右(水平)方向に拡がらず、集束した温風Hを遠くまで届けることができる。また、吹出口626の縦寸法を大きくすることにより、温風Hを上方に向けることができる。その結果として、便座200に座った使用者の「おしり」に、十分な風量の温風Hを届けることができる。
【0045】
図16乃至図18は、本発明者が実施した実験の結果を表す模式図である。
すなわち、図16(a)は本実施形態、(b)は比較例の衛生洗浄装置の温風乾燥ユニットから放出される温風の分布を横から眺めた模式図である。
また、図17(a)は本実施形態、(b)は比較例の衛生洗浄装置の温風乾燥ユニットから放出される温風の分布を上方から眺めた模式図である。
また、図18(a)は本実施形態、(b)は比較例の衛生洗浄装置の温風乾燥ユニットから放出される温風Hの分布を正面(前方)から眺めた模式図である。
【0046】
ここで、本実施形態の温風乾燥ユニットは、図5(a)に表した吹出口を有し、比較例の温風乾燥ユニットは図5(b)に表した吹出口を有する。また、各図において、便座に座った使用者の「おしり」の中心位置を符号Cにより表した。
【0047】
図16から、本実施形態においては、比較例よりも温風Hの中心位置が高いことが分かる。これは、図5に関して前述したように、湾曲凹面402の中央付近の背の高い部分に吹出口626を設けることにより、開口の縦方向の寸法を大きくできたからである。
本具体例(図6参照)においては、比較例(図7参照)よりも吹出口626の位置が後方に遠ざかっているので、図16(b)に表したように、比較例の吹出口を本具体例の温風ダンパー470の位置に設けたとすると、使用者の「おしり」の位置において、温風Hの中心が下がってしまう。これに対して、本具体例の場合、使用者の「おしり」の位置において、比較例と比べて温風Hの中心を15ミリメータほど高くすることができる。このように温風Hの中心を高くすることにより、使用者の「おしり」に確実に温風Hをあてることができる。
【0048】
また、図17(b)に表したように、比較例においては温風Hが左右(水平)方向に拡がっているのに対して、図17(a)に表したように、本具体例においては温風Hが左右方向にも拡がらず、集束したままの温風Hを使用者の「おしり」の位置まで届けることができる。
【0049】
その結果として、図18(b)に表した比較例よりも図18(a)に表した本具体例においては、集束させ温度の低下を抑制した温風Hを遠くの使用者の「おしり」に確実に届けることができる。つまり、本実施形態によれば、図5に関して前述したように、湾曲凹面402の中央付近を高くし、この高い部分に温風ダンパー470を設けることにより、温風の吹出口626の縦方向の寸法を拡大し縦横比を1に近づけて、集束した温風Hを遠くまで届けることができる。
【0050】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、本発明の衛生洗浄装置及びトイレ装置に含まれる、脱臭装置、温風乾燥装置、着座センサ、筺体、リモコン、腰掛便器などの各要素については、当業者が適宜設計変更することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができるものも本発明の要旨を含む限り、本発明の範囲に包含される。その他、衛生洗浄装置や便器を構成する各要素について変更を加えたものであっても、本発明の要旨を備える限りにおいて、本発明の範囲に包含される。
【0051】
また、本発明のトイレ装置は、「ロータンク式」のものでもよく、または、水道からの水を便器に直接給水し洗浄する「水道直結給水式」のものでもよい。
また、図1乃至図18に関して前述した特徴部分は、技術的な可能な範囲においていかようにも組合せることができ、これら組合せにより得られた衛生洗浄装置及びトイレ装置についても、本発明の要旨を含む限りにおいて本発明の範囲に包含される。
【0052】
その他、本発明の実施の形態として上述した衛生洗浄装置及びトイレ装置を基にして、当業者が適宜設計変更して実施しうるすべての衛生洗浄装置及びトイレ装置も同様に本発明の範囲に属する。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施の形態にかかるトイレ装置の外観を表す模式斜視図である。
【図2】トイレ装置の便座200と便蓋300を開いた状態を表す。
【図3】本体部400を前方から眺めた模式図である。
【図4】本実施形態の衛生洗浄装置100に設けることができるノズルユニットを例示する模式図である。
【図5】温風の吹出口の形状を例示する模式図である。
【図6】本実施形態のトイレ装置から便座200と便蓋300を外して前方から眺めた斜視図である。
【図7】比較例のトイレ装置を前方から眺めた斜視図である。
【図8】本実施形態のトイレ装置の断面図である。
【図9】比較例のトイレ装置の断面図である。
【図10】本実施形態における湾曲凹面402とボウル810との関係を説明するための模式平面図である。
【図11】本体部400の内部を前方から眺めた斜視図である。
【図12】本体部400の上側ケースと内部の機構を取り除きケースプレート(取付基板)770を露出させた状態を表す模式図である。
【図13】バキュームブレーカーや安全弁からの排水チューブの接続部の断面構造を例示する模式図である。
【図14】ケースプレートの上に取り付けられた温風乾燥ユニット620の平面図である。
【図15】吹出口626から放出される温風の方向を表す模式図である。
【図16】本発明者が実施した実験の結果を表す模式図である。
【図17】本発明者が実施した実験の結果を表す模式図である。
【図18】本発明者が実施した実験の結果を表す模式図である。
【符号の説明】
【0054】
100 衛生洗浄装置、200 便座、300 便蓋、310 透過窓、400 本体部、402 湾曲凹面、404 延出部、408 傾斜面、410 凹設部、420 着座センサ、430 ケースカバー、440 排気口、450 排出口、460 ノズルダンパー、470 温風ダンパー、500 人体検知センサ、610 ノズルユニット、611 ノズル基部、612〜614 シリンダ部、615 ノズルヘッド、617 ノズル洗浄室、620 温風乾燥ユニット、622 排気ファン、624 ダクト、626 吹出口、630 脱臭ユニット、640 コントローラ、650 ポンプユニット、660 熱交換ユニット、662 排水チューブ、670 表示部、720 電動開閉ユニット、730 便器洗浄バルブユニット、740 室内暖房ユニット、770 ケースプレート、771 排水部、773 排水孔、774 吸気孔、780 電動開閉ユニット、800 便器、810 ボウル、820 リム部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐水ノズルと温風吹出ダクトとを内蔵し、腰掛便器の上部に設置される本体部を備え、
前記本体部の前面は、後方に凹ませた湾曲凹面を有し、
前記湾曲凹面は、その中央付近が高く左右端部に向けて次第に低くなる形状を有し、
前記湾曲凹面の前記中央付近に、前記吐水ノズル及び温風吹出ダクトの一端部が臨む少なくとも一つの開口部と、前記開口部を塞ぐ開閉可能な蓋体と、が設けられたことを特徴とする衛生洗浄装置。
【請求項2】
前記開口部は、前記吐水ノズルが臨む第1の開口部と、前記第1の開口部に隣接して設けられ前記温風吹出ダクトの前記一端部が臨む第2の開口部と、を含むことを特徴とする請求項1記載の衛生洗浄装置。
【請求項3】
前記本体部は、前記湾曲凹面の上に設けられ後方に向けて高くなる傾斜面を有することを特徴とする請求項1または2に記載の衛生洗浄装置。
【請求項4】
前記本体部は、前記湾曲凹面の前記左右端部よりも前記中央に近接した位置の下面に設けられた排水部を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の衛生洗浄装置。
【請求項5】
前記吐水ノズルは、噴射孔を有するノズルヘッドと少なくとも1つのシリンダ部とがスライド可能とされた多段式のノズルであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の衛生洗浄装置。
【請求項6】
前記本体部は、脱臭機構をさらに有し、
前記湾曲凹面に近接した前記本体部の下面に、前記脱臭機構の吸気孔が設けられたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の衛生洗浄装置。
【請求項7】
腰掛便器と、
前記腰掛便器の上部に設置される請求項1〜6のいずれか1つに記載の衛生洗浄装置と、
を備え、
前記湾曲曲面により、前記本体部に対して前記ボウルのほとんどを露出させたことを特徴とするトイレ装置。
【請求項8】
前記湾曲凹面は、前記腰掛便器のボウルの開口端よりも前記ボウルの側に突出していることを特徴とする請求項7記載のトイレ装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2007−284927(P2007−284927A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−111285(P2006−111285)
【出願日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【特許番号】特許第3894458号(P3894458)
【特許公報発行日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】