説明

衛生洗浄装置

【課題】吐水ノズル用の開閉蓋と温風ダクトの吹出口に設けられた開閉板の開閉を制御した衛生洗浄装置を提供する。
【解決手段】第1の開口部及び第2の開口部を有する筐体と、前記筐体の中に設けられ、前記第1の開口部から進退可能とされた吐水ノズルと、前記筐体の中に設けられ、前記第2の開口部に吹出口が向けられた温風発生装置と、前記第1の開口部を開閉可能に覆う第1の開閉板と、前記第2の開口部を開閉可能に覆う第2の開閉板と、前記第1の開閉板と前記第2の開閉板とを同時に開いた状態とならないように開閉する一つの駆動手段と、前記温風発生装置及び前記駆動手段を制御する制御部と、を備えたことを特徴とする衛生洗浄装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛生洗浄装置に関し、具体的には洋式腰掛便座に腰掛けた使用者の「おしり」などを水で洗浄する衛生洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
衛生洗浄装置は、洗浄水を噴射する吐水ノズルをその内部に進退自在に収容し、腰掛便器の上部に設置して使用する形態のものが主流となっている。また、このような衛生洗浄装置に、温風を吹き出して使用者の「おしり」などを乾燥させる「温風乾燥機能」を設けると、さらに使い勝手がよくなり、トイレットペーパーの使用量を減らすことによる省資源化にも有効である。
【0003】
例えば、吐水ノズルが進退する開口部と、温風ダクトから温風を吹き出す開口部と、を隣接させ、これら開口部をそれぞれ開閉可能な蓋で覆う自動局部洗浄装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
一方、衛生洗浄装置の前面を後退させれば、腰掛便器のボウルに被る部分を減らして汚れの付着を抑制でき、ボウルに被った衛生洗浄装置の裏面の汚れ落としの手間などが省ける。このためには、例えば、衛生洗浄装置の前面を後退させ、便器のボウルの開口端に沿って湾曲状に形成することも考えられる。
しかし、衛生洗浄装置の前面をボウルの開口端に沿って湾曲させ、ここに吐水ノズル用の開閉蓋と温風乾燥用の開閉蓋を設けた場合、これらの開閉蓋が同時に開くと衝突して動作不良や故障が生ずるおそれがある。
【特許文献1】実開昭60−120082号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、吐水ノズル用の開閉蓋と温風ダクトの吹出口に設けられた開閉板の開閉を制御した衛生洗浄装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、第1の開口部及び第2の開口部を有する筐体と、前記筐体の中に設けられ、前記第1の開口部から進退可能とされた吐水ノズルと、前記筐体の中に設けられ、前記第2の開口部に吹出口が向けられた温風発生装置と、前記第1の開口部を開閉可能に覆う第1の開閉板と、前記第2の開口部を開閉可能に覆う第2の開閉板と、前記第1の開閉板と前記第2の開閉板とを同時に開いた状態とならないように開閉する一つの駆動手段と、前記温風発生装置及び前記駆動手段を制御する制御部と、を備えたことを特徴とする衛生洗浄装置が提供される。
【0007】
また、本発明の他の一態様によれば、第1の開口部及び第2の開口部を有する筐体と、前記筐体の中に設けられ、前記第1の開口部から進退可能とされた吐水ノズルと、前記筐体の中に設けられ、前記第2の開口部に吹出口が向けられた温風発生装置と、前記第1の開口部を開閉可能に覆う第1の開閉板と、前記第2の開口部を開閉可能に覆う第2の開閉板と、前記第1の開閉板および第2の開閉板を開閉する一つの駆動手段と、前記温風発生装置及び前記駆動手段を制御する制御部と、を備え、前記第1及び第2の開閉板の少なくともいずれか一方は、水平方向に対して略垂直な回転軸を中心として開くことを特徴とする衛生洗浄装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、吐水ノズル用の開閉蓋と温風ダクトの吹出口に設けられた開閉板の開閉を制御した衛生洗浄装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の実施の形態にかかる衛生洗浄装置の要部構成を例示するブロック図である。
また、図2は、本実施形態にかかる衛生洗浄装置の本体部の前部を眺めた斜視図である。
【0010】
本実施形態の衛生洗浄装置100は、人体検知センサ420、500と、ノズルユニット610と、温風乾燥ユニット(温風発生装置)620と、伝達機構472と、便蓋を開閉する便蓋開閉ユニット720と、便座を開閉する便座開閉ユニット780と、を有する。人体検知センサ420、500は、衛生洗浄装置100の近くにいる使用者を検知したり、便座に着座した使用者を検知する。ノズルユニット610は、ノズルモータ(駆動手段)619から伝達される駆動力により衛生洗浄装置の本体から進退自在な吐水ノズル615を有し、便座に座った使用者の「おしり」などに向けて水を噴射する。ノズルユニット610の前に形成された開口(第1の開口部)402Aを塞ぐノズルダンパ(第1の開閉板)460は、後に詳述するように、スプリングにより閉状態に付勢され、吐水ノズル615を収納した状態においては、図2(a)に表したように閉じた状態にある。そして、吐水ノズル615が矢印A(図1)の方向に伸出するとノズルダンパ460が裏面から押されて、図2(b)に表したように開く。
【0011】
一方、温風乾燥ユニット(温風発生装置)620は、同じく便座に座った使用者の「おしり」などに向けて温風を吹き出すことにより、乾燥させる。ノズルモータ619から吐水ノズル615および伝達機構472を介して伝達される駆動力は、温風乾燥ユニット620の温風吹出口の前に形成された開口(第2の開口部)402Bを塞ぐ温風ダンパ(第2の開閉板)470を開閉する。図2(c)は、温風ダンパ470が開いた状態を表す。なお、図2に表した具体例の場合、ノズルダンパ460と温風ダンパ470は、いずれも略水平な回転軸の回りに回転可能に支持されている。そして、これらダンパ460、470は、いずれも上方に向けて回転することにより開く。
【0012】
これら各要素の動作は、制御部640により制御される。また、制御部640には、リモコンなどの操作部900からの信号が入力され、使用者の指示に応じた動作を実行可能とされている。そして、本実施形態においては、制御部640が、ノズルダンパ460と温風ダンパ470の開閉のタイミングや順序を制御する。
【0013】
図3は、本実施形態の衛生洗浄装置に設けられた吐水ノズルの模式斜視図であり、図3(a)は、吐水ノズルが収納された状態を表し、図3(b)は、伸展した状態を表す。
吐水ノズル615は例えば3段式であり、ノズルヘッド611と、第1のシリンダ部612と、第2のシリンダ部613と、第3のシリンダ部614と、を有する。なお、本実施形態では、3段式すなわち3本の可動部を有する吐水ノズルを例に挙げたが、本発明はこれに限定されず、可動部が2本あるいは4本以上の多段式の吐水ノズル、および可動部がノズルヘッドのみの単段式の吐水ノズルも包含する。
ノズルヘッド611の先端には、ひとつあるいは複数の吐水口616が設けられ、便座(図示せず)に座った使用者の「おしり」などに向けて水を噴射可能とされている。なお、本願明細書において「水」という場合には、冷水のみならず、加温されたお湯も含むものとする。
【0014】
ノズルヘッド611は、第1のシリンダ部612に対して摺動自在に設けられ、少なくともその一部が第1のシリンダ部612の中に格納可能とされている。また、第1のシリンダ部612は、第2のシリンダ部613に対して摺動自在に設けられ、少なくともその一部が第2のシリンダ部613の中に格納可能とされている。同様に、第2のシリンダ部613は、第3のシリンダ部614に対して摺動自在に設けられ、少なくともその一部が第3のシリンダ部614の中に格納可能とされている。第3のシリンダ部614は、ノズル基部618に対して固定されている。なお、第3のシリンダ部614は、必ずしも完全な筒状体である必要はなく、第2のシリンダ部613を摺動自在に保持できればよい。これら各要素の摺動動作は、ノズルモータ619により実施される。
【0015】
また、本実施形態のノズルユニット610には、ノズル洗浄室617が設けられている。ノズル洗浄室617は、ノズル基部618に対して固定され、その内部に設けられた吐水口から水を噴射することにより、吐水ノズル615の外周表面を洗浄することができる。図3(a)に表したように、吐水ノズル615が収納された状態において、ノズルヘッド611の先端部は第1のシリンダ部612から突出し、ノズル洗浄室617の中にほぼ収容されている。また、図3(b)に表したように、吐水ノズル615は、ノズル洗浄室617を貫通して伸出・後退する。
【0016】
図4は、本実施形態の衛生洗浄装置に設けられた吐水ノズルの動作を表し、図4(a)は、吐水ノズルが伸出した状態を表す概念図であり、図4(b)は、吐水ノズルが収納された状態を表す概念図であり、図4(c)は、温風ダンパが開いた状態を表す概念図である。
【0017】
吐水ノズル615が伸出した状態では、ノズルダンパ460は、図4(a)に表したように、吐水ノズル615に後方側から前方側へ押されて、回動軸462を中心とした回動を行い、開いた状態となる。回動軸462には、例えばねじりコイルばね等の弾性体(第1の弾性体)481が挿入されている。ノズルダンパ460は、弾性体481の付勢力により、閉じた状態になるように付勢されている。
【0018】
一方、温風ダンパ470は閉じた状態となっている。温風ダンパ470には、連結軸474が設けられており、この連結軸474には、伝達機構472が連結されている。この伝達機構472の後方部は、第2のシリンダ部613が前後方向に移動するためのレール628の方向に延在している。また、レール628の側方には、第2のシリンダ部613を前方へ付勢する弾性体(第2の弾性体)622が設けられている。
【0019】
ノズルヘッド611の後面にはラック626が連結されており、ノズルモータ619の駆動力はラック626を介してノズルヘッド611に伝達される。そこで、吐水ノズル615を収納させる方向への駆動力がノズルモータ619から伝達されると、図4(b)に表したように、ノズルヘッド611の少なくとも一部は、第1のシリンダ部612に格納され、第1のシリンダ部612の少なくとも一部は、第2のシリンダ部613に格納される。このとき、第2のシリンダ部613の後方部は、伝達機構472の一部および弾性体622と当接するようになる。
【0020】
この動作とほぼ同時に、ノズルダンパ460は閉じた状態となる。これは、前述したように、ノズルダンパ460は弾性体481によって閉じた状態となるように付勢されており、吐水ノズル615が与えていた後方側からの押し出し力がなくなったためである。
【0021】
続いて、温風を吹き出して「おしり」などの乾燥を開始させる場合には、図4(c)に表したように、ノズルモータ619は、ラック626をさらに後方へ駆動させる。すなわち、ノズルヘッド611をさらに後方へ移動させる。このとき、ノズルヘッド611の後方部と第1のシリンダ部612、および第1のシリンダ部612の後方部と第2のシリンダ部613、とは当接しているため、ノズルヘッド611が後方へ移動すると、第1のシリンダ部612および第2のシリンダ部613も同時に後方へ移動する。伝達機構472の一部および弾性体622と当接している第2のシリンダ部613は、弾性体622から受ける付勢力に対抗しつつ、伝達機構472を矢印Bのように後方へ移動する。
【0022】
伝達機構472は、前述したように、温風ダンパ470に設けられた連結軸474に連結されているため、伝達機構472が矢印Bの方向に移動すると、連結軸474が設けられた側の温風ダンパ470の端部は、同じく矢印Bの方向に移動する。一方、温風ダンパ470は、適宜固定された支持軸476と当接している。したがって、連結軸474が設けられた側とは反対側の温風ダンパ470の端部は、矢印Cの方向に移動する。このようにして、温風ダンパ470が開き、温風が吹き出される。
【0023】
温風乾燥を終了させる場合には、ノズルモータ619は、ラック626を前方へ移動させる。すなわち、ノズルヘッド611を前方へ移動させる。このとき、弾性体622は第2のシリンダ部613を前方へ付勢しているため、同時に第2のシリンダ部613および第1のシリンダ部612も前方へ移動する。第2のシリンダ部613が前方へ移動すると、伝達機構472の後方部と、第2のシリンダ部613の後方部と、の間に空間が生ずるため、温風ダンパ470は自重により矢印Cとは反対方向へ移動することができる。このようにして、温風ダンパ470は閉じた状態となる。なお、温風ダンパ470は、ノズルダンパ460と同様に、ねじりコイルばね等の弾性体を適宜設け、自重ではなく、弾性体からの付勢力を受けて閉じるようにしてもよい。このようにして、本実施形態の衛生洗浄装置は、1つの駆動手段(ノズルモータ619)によって、ノズルダンパ460と、温風ダンパ470と、を同時に開いた状態とならないように開閉駆動させることができる。
【0024】
図5は、制御部が実施する制御モードの内容を例示するフローチャートである。
図5に表した具体例の場合には、まず使用者から吐水ノズル615を用いた「洗浄」の指令が出される(ステップS102)。「洗浄」の指令が出されると、制御部640は、吐水ノズル615を伸出させる(ステップS104)。このとき、吐水ノズル615はノズルダンパ460を後方側から前方へ押し出して開く(ステップS104)。この状態は、図4(a)に表した状態と同様である。続いて、吐水ノズル615を所定の位置まで伸出させた後、「おしり」などに向けて水を噴射して、おしり洗浄を開始させる(ステップS106)。
【0025】
この状態で、使用者から温風乾燥の指令が出されると(ステップS108)、制御部640は、まずおしり洗浄を停止させる(ステップS110)。続いて、吐水ノズル615を収納させる。これに伴い、ノズルダンパ460は閉じた状態となる(ステップS112)。制御部640は、吐水ノズル615の収納を継続し、吐水ノズル615を原点に復帰させる(ステップS114)。ここで、原点とは、図4(b)に表したように、吐水ノズル615が、伝達機構472および弾性体622に当接し、且つ弾性体622が収縮していない状態の吐水ノズル615の位置をいう。
【0026】
続いて、制御部640は、吐水ノズル615を原点よりさらに後方へ移動させ、図4を参照しつつ説明した動作により、温風ダンパ470を開く(ステップS116)。この状態は、図4(c)に表した状態と同様である。続いて、温風ダンパ470を開いた後に、温風を利用して「おしり」などの乾燥を開始させる(ステップS118)。但し、温風ダンパ470を完全に開いた後ではなく、開いている途中の段階で温風を吹き出して温風乾燥を開始させてもよい。
【0027】
このように、本実施形態の衛生洗浄装置は、ノズルモータ619からの駆動力が伝達機構472を介して温風ダンパ470に伝達されるため、吐水ノズル615による洗浄を実行している時に、「おしり」などの乾燥の指令が出された場合、直ちに温風ダンパ470を開いて温風乾燥を開始することはない。すなわち、ノズルダンパ460と、温風ダンパ470と、が同時に開いた状態にはならない。したがって、図2に表したように、ノズルダンパ460と温風ダンパ470が、いずれも本体部400の湾曲凹面402に隣接して設けられていても、ノズルダンパ460が開いた状態で温風ダンパ470も開くことはなく、これらが衝突し、互いにひっかかって動かなくなったり、傷つきや変型、破損などが生ずることもない。
【0028】
これに対して、本実施形態の衛生洗浄装置に設けられたような伝達機構472がなく、温風ダンパ470と、ノズルダンパ460と、を個別の駆動手段によって開閉を行う場合には、温風ダンパ470およびノズルダンパ460の動作を適正に制御しなければ、これらが衝突し、互いにひっかかって動かなくなったり、傷つきや変型、破損などが生ずるおそれがある。
【0029】
なお、ノズルダンパ460を閉じるステップ(ステップS112)と温風ダンパ470を開くステップ(ステップS116)のタイミングは、伝達機構472の後方部の形状と、吐水ノズル615の後方部の形状と、を適宜設定することによって変更することができる。例えば、図2(a)に表したようにノズルダンパ460が完全に閉じてから、温風ダンパ470を開き始めてもよいし、ノズルダンパ460が完全に閉じる前に温風ダンパ470を開き始めることも可能である。つまり、温風ダンパ470とノズルダンパ460とが衝突しない範囲の開き角度であればよい。
【0030】
図6は、制御部が実施する制御モードの他の内容を例示するフローチャートである。
図6に表した具体例は、例えば、使用者が「おしり」などの洗浄後に温風乾燥を開始し、その後、再び「おしり」などを洗浄する場合や、あるいはリモコンなどの操作に際して、間違えて温風乾燥を開始させた後に、「おしり」などの洗浄を開始させたい場合などに相当する。
このような場合には、まず使用者から温風乾燥の指令が出される(ステップS202)。温風乾燥の指令が出されると、制御部640は、吐水ノズル615を原点よりさらに後方へ移動させ、図4を参照しつつ説明した動作により、温風ダンパ470を開く(ステップS204)。この状態は、図4(c)に表した状態と同様である。ここで、原点とは、図5を参照しつつ説明した原点と同じである。続いて、温風ダンパ470を開いた後に、温風を利用して「おしり」などの乾燥を開始させる(ステップS206)。但し、温風ダンパ470を完全に開いた後ではなく、開いている途中の段階で温風を吹き出して温風乾燥を開始させてもよい。
【0031】
この状態で、使用者から吐水ノズルを用いた「洗浄」の指令が出されると(ステップS208)、制御部640は、まず温風乾燥を停止させる(ステップS210)。続いて、制御部640は、吐水ノズル615を前方へ移動させて、原点に復帰させる(ステップS212)。これに伴い、温風ダンパ470は、閉じた状態となる(ステップS212)。この状態は、図4(b)に表した状態と同様である。続いて、制御部640は、吐水ノズル615の前方移動を継続し、ノズルダンパ460を伸出させる(ステップS214)。このとき、吐水ノズル615はノズルダンパ460を後方側から前方へ押し出して開く(ステップS214)。この状態は、図4(a)に表した状態と同様である。続いて、吐水ノズル615を所定の位置まで伸出させた後、「おしり」などに向けて水を噴射して、おしり洗浄を開始させる(ステップS216)。
【0032】
本具体例においても同様に、ノズルモータ619からの駆動力が伝達機構472を介して温風ダンパ470に伝達されるため、温風乾燥を実行している時に、「おしり」などの洗浄の指令が出された場合、直ちにノズルダンパ460を開いておしり洗浄を開始することはない。すなわち、ノズルダンパ460と、温風ダンパ470と、が同時に開いた状態にはならない。したがって、図2に表したように、ノズルダンパ460と温風ダンパ470が、いずれも本体部400の湾曲凹面402に隣接して設けられていても、ノズルダンパ460が開いた状態で温風ダンパ470も開くことはなく、これらが衝突し、互いにひっかかって動かなくなったり、傷つきや変型、破損などが生ずることもない。
【0033】
また、温風ダンパ470を閉じるステップ(ステップS212)とノズルダンパ460を開くステップ(ステップS214)のタイミングは、伝達機構472の後方部の形状と、吐水ノズル615の後方部の形状と、を適宜設定することによって変更することができる。例えば、図2(a)に表したように温風ダンパ470が完全に閉じてから、ノズルダンパ460を開き始めてもよいし、温風ダンパ470が完全に閉じる前にノズルダンパ460を開き始めることも可能である。つまり、ノズルダンパ460と温風ダンパ470とが衝突しない範囲の開き角度であればよい。
【0034】
次に、本実施形態の変形例について図面を参照しつつ説明する。
図7は、本実施形態にかかる衛生洗浄装置の変形例の動作を表す概念図であり、図7(a)は、吐水ノズルが伸出した状態を表す概念図であり、図7(b)は、吐水ノズルが収納された状態を表す概念図であり、図7(c)は、温風ダンパが開いた状態を表す概念図である。
【0035】
本変形例の衛生洗浄装置においては、レール628の後方部に突起部629が設けられている。また、伝達機構472の後方部と、突起部629と、を連結する弾性体(第3の弾性体)624がさらに設けられている。図7(a)および(b)に表した状態では、弾性体624の付勢力は作用しておらず、温風ダンパ470が開こうとする力と、閉じようとする力と、は釣り合っている。その他の構造は、図4を参照しつつ説明した衛生洗浄装置と同様であるため、その詳細な説明は省略する。
【0036】
吐水ノズル615が伸出した状態では、ノズルダンパ460は、図7(a)に表したように、吐水ノズル615に後方側から押されて、回動軸462を中心とした回動を行い、開いた状態となる。この状態で、「おしり」などに向けて水を噴射することで、「おしり」などの洗浄を行うことができる。
【0037】
続いて、吐水ノズル615を収納させる方向への駆動力がノズルモータ619から伝達されると、図7(b)に表したように、ノズルヘッド611の少なくとも一部は、第1のシリンダ部612に格納され、第1のシリンダ部612の少なくとも一部は、第2のシリンダ部613に格納される。このとき、第2のシリンダ部613の後方部は、伝達機構472の一部および弾性体622と当接するようになる。
【0038】
続いて、温風を吹き出して「おしり」などの乾燥を開始させる場合には、図7(c)に表したように、ノズルモータ619は、ラック626をさらに後方へ駆動させる。すなわち、ノズルヘッド611をさらに後方へ移動させる。このとき、伝達機構472は、弾性体624から受ける付勢力に対向しつつ、矢印Bの方向へ移動する。そのため、伝達機構472は、図7(c)の状態においては、弾性体624から前方の方向への付勢力を受けていることになる。
【0039】
そこで、温風乾燥を終了させる場合には、吐水ノズル615は前方へ移動するため、伝達機構472も同時に弾性体624からの付勢力を受けて前方へ移動する。これにより、温風ダンパ470は閉じた状態となる。すなわち、図4に表した温風ダンパ470は自重によって閉じるのに対して、本変形例の温風ダンパ470は、伝達機構472が弾性体624からの付勢力を受けることによって閉じる。そのため、本変形例の構造によれば、より確実に温風ダンパ470を閉じることができる。なお、その他の動作および効果は、図4を参照しつつ説明した動作および効果と同様であるため、その詳細な説明は省略する。
【0040】
図8は、本実施形態にかかる衛生洗浄装置の他の変形例の動作を表す概念図であり、図8(a)は、吐水ノズルが伸出した状態を表す概念図であり、図8(b)は、吐水ノズルが収納された状態を表す概念図であり、図8(c)は、温風ダンパが開いた状態を表す概念図である。
また、図9は、本実施形態にかかる衛生洗浄装置のさらに他の変形例の動作を表す概念図であり、図9(a)は、吐水ノズルが伸出した状態を表す概念図であり、図9(b)は、吐水ノズルが収納された状態を表す概念図であり、図9(c)は、温風ダンパが開いた状態を表す概念図である。
【0041】
本変形例の衛生洗浄装置に設けられた伝達機構472の後方部は、ノズルヘッド611の後方部の方向に向かって延在している。これは、吐水ノズル615が収納された状態において、図4および7に表した衛生洗浄装置に設けられた伝達機構472は、第2のシリンダ部613の後方部と当接するのに対して、本変形例に設けられた伝達機構472は、図8(b)に表したように、ノズルヘッド611の後方部と当接する。
【0042】
なお、このとき、第2のシリンダ部613の後方部は、レール628の後方部と当接している。したがって、図8(c)に表したように、温風ダンパ470を開くために伝達機構472を後方へ移動させるときであっても、第2のシリンダ部613および第1のシリンダ部612は後方へ移動しない。そのため、温風ダンパ470を閉じるときに、図4および7に表した衛生洗浄装置のようには、第2のシリンダ部613および第1のシリンダ部612を前方へ戻す必要はないため、弾性体622は設けられていない。その他の構造については、図4に表した衛生洗浄装置と同様である。
【0043】
このような構造を有することによっても、1つの駆動手段によって、ノズルダンパ460と、温風ダンパ470と、を同時に開いた状態とならないように開閉駆動させることができる。また、ノズルヘッド611の動作に連動させて温風ダンパ470の開閉を行うため、ノズルダンパ460の開閉のタイミングと、温風ダンパ470の開閉のタイミングと、の調整をより取りやすくなる。これは、図4および7に表した衛生洗浄装置の場合には、ノズルヘッド611と、第1のシリンダ部612と、第2のシリンダ部613と、伝達機構472と、を介して、温風ダンパ470の開閉を行っていたのに対して、本変形例の衛生洗浄装置の場合には、ノズルヘッド611と、伝達機構472と、を介するだけで温風ダンパ470の開閉を行っているためである。
【0044】
なお、図9に表したように、レール628の後方部に突起部629を設け、伝達機構472の後方部と、突起部629と、を連結する弾性体624をさらに設けると、図7に表した衛生洗浄装置と同様に、より確実に温風ダンパ470を閉じることができる。その他の動作および効果は、図4を参照しつつ説明した動作および効果と同様である。
【0045】
図10は、本実施形態にかかる衛生洗浄装置のさらに他の変形例の動作を表す概念図であり、図10(a)は、吐水ノズルが伸出した状態を表す概念図であり、図10(b)は、吐水ノズルが収納された状態を表す概念図であり、図10(c)は、温風ダンパが開いた状態を表す概念図である。
また、図11は、本実施形態にかかる衛生洗浄装置のさらに他の変形例の動作を表す概念図であり、図11(a)は、吐水ノズルが伸出した状態を表す概念図であり、図11(b)は、吐水ノズルが収納された状態を表す概念図であり、図11(c)は、温風ダンパが開いた状態を表す概念図である。
【0046】
本変形例の衛生洗浄装置に設けられた吐水ノズル615は、ノズルヘッド611のみを有する単段式の吐水ノズルである。伝達機構472の後方部は、ノズルヘッド611の後方部の方向に向かって延在している。これは、図8および9に表した衛生洗浄装置に設けられた伝達機構と同様である。また、第2のシリンダ部613および第1のシリンダ部612は設けられていないため、弾性体622も設けられていない。その他の構造については、図4に表した衛生洗浄装置と同様である。
【0047】
このような構造を有することによっても、1つの駆動手段によって、ノズルダンパ460と、温風ダンパ470と、を同時に開いた状態とならないように開閉駆動させることができる。また、ノズルヘッド611のみの動作に連動させて温風ダンパ470の開閉を行うため、図8および9に表した衛生洗浄装置と同様に、ノズルダンパ460の開閉のタイミングと、温風ダンパ470の開閉のタイミングと、の調整をより取りやすくなる。
【0048】
なお、図11に表したように、レール628の後方部と、伝達機構472の後方部と、を連結する弾性体624をさらに設けると、図7および9に表した衛生洗浄装置と同様に、より確実に温風ダンパ470を閉じることができる。その他の動作および効果は、図4を参照しつつ説明した動作および効果と同様である。
【0049】
次に、ノズルダンパと温風ダンパの開閉方向の変形例について図面を参照しつつ説明する。
図12は、本実施形態におけるノズルダンパと温風ダンパの開閉方向の変形例を例示する斜視図であり、図12(a)は、温風ダンパのみが開いた状態を表しており、図12(b)はノズルダンパのみが開いた状態を表している。
【0050】
本変形例においては、ノズルダンパ460は略水平な回転軸を中心として開閉するが、温風ダンパ470は、これに対して略垂直な回転軸を中心として開閉する。また、温風ダンパ470の回転軸は、ノズルダンパ460からみて遠い側に設けられている。つまり、ノズルダンパ460は上方に開き、温風ダンパ470は向かって右側に開く。図4〜11を参照しつつ説明した構造および動作によって、ノズルダンパ460と温風ダンパ470とが同時に開いて衝突することはないが、このようにすれば、温風ダンパ470はノズルダンパ460から遠ざかる方向に開くので、両者が衝突することはさらになくなる。
【0051】
図13は、本実施形態におけるノズルダンパと温風ダンパの開閉方向の他の変形例を例示する斜視図であり、図13(a)は、ノズルダンパのみが開いた状態を表しており、図13(b)は温風ダンパのみが開いた状態を表している。
【0052】
本変形例においては、ノズルダンパ460は水平方向に対して略垂直な回転軸を中心として開閉し、温風ダンパ470は、略水平な回転軸を中心として開閉する。また、ノズルダンパ460の回転軸は、温風ダンパ470からみて遠い側に設けられている。つまり、ノズルダンパ460は向かって左側に開き、温風ダンパ470は上方に開く。図4〜11を参照しつつ説明した構造および動作によって、ノズルダンパ460と温風ダンパ470とが同時に開いて衝突することはないが、このようにすれば、ノズルダンパ460は温風ダンパ470から遠ざかる方向に開くので、両者が衝突することはさらになくなる。
【0053】
図14は、本実施形態におけるノズルダンパと温風ダンパの開閉方向のさらに他の変形例を例示する斜視図であり、図14(a)は、ノズルダンパのみが開いた状態を表しており、図14(b)は温風ダンパのみが開いた状態を表している。
【0054】
本変形例においては、ノズルダンパ460も温風ダンパ470も水平方向に対して略垂直な回転軸を中心として開閉する。また、ノズルダンパ460の回転軸は、温風ダンパ470からみて遠い側に設けられ、温風ダンパ470の回転軸も、ノズルダンパ460からみて遠い側に設けられている。つまり、ノズルダンパ460は向かって左側に開き、温風ダンパ470は向かって右側に開く。図4〜11を参照しつつ説明した構造および動作によって、ノズルダンパ460と温風ダンパ470とが同時に開いて衝突することはないが、このようにすれば、ノズルダンパ460と温風ダンパ470は、いずれも互いに遠ざかる方向に開くので、両者が衝突することはさらになくなる。
【0055】
以上説明したように、本実施形態によれば、ノズルモータ619からの駆動力が伝達機構472を介して温風ダンパ470に伝達される。そのため、吐水ノズル615による洗浄を実行している時に、「おしり」などの乾燥の指令が出された場合、直ちに温風ダンパ470を開いて温風乾燥を開始することはできず、一方、温風乾燥を実行している時に、「おしり」などの洗浄の指令が出された場合、直ちにノズルダンパ460を開いておしり洗浄を開始することもない。すなわち、ノズルダンパ460と、温風ダンパ470と、は同時に開いた状態にはならない。したがって、ノズルダンパ460と、温風ダンパ470と、が同時に開いて衝突し、互いにひっかかって動かなくなったり、傷つきや変型、破損などが生ずることはない。
【0056】
次に、衛生洗浄装置の設置形態について具体例を参照しつつ説明する。
図15は、本発明の実施の形態にかかるトイレ装置の外観を表す模式斜視図である。
また、図16は、トイレ装置の便座と便蓋とを開いた状態を表す模式斜視図である。
また、図17は、衛生洗浄装置の本体部の中央部を正面から眺めた模式図である。
また、図18は、フレームをケースカバーに取り付ける組立工程を表す斜視図である。
【0057】
本具体例のトイレ装置は、洋式腰掛便器800と、その上に設けられた衛生洗浄装置100と、を備える。衛生洗浄装置100は、本体部400と、便座200と、便蓋300と、を有する。便座200と便蓋300は、本体部400に対して開閉自在にそれぞれ軸支されている。
【0058】
本体部400には、図1に関して前述したような各要素が設けられている。すなわち、人体検知センサ420により使用者が便座200に座ったことを検知し、使用者のスイッチ操作などに応じて本体部400から吐水ノズル(図示せず)を便器800のボウル内に伸出させ、その先端付近に設けられた吐水口から水を噴射して、便座に座った使用者の「おしり」などを洗浄可能とされている。また、本体部400には、便座200に座った状態の使用者の「おしり」などに向けて温風を吹き付けて乾燥させる温風乾燥ユニットが設けられている。
【0059】
またさらに、本体部400には、「脱臭ユニット」や「室内暖房ユニット」などの各種の機構が適宜設けられ、その側面には、脱臭ユニットからの排気口440及び室内暖房ユニットからの排出口450が適宜設けられている。また、使用者の接近を検知して便蓋300を自動的に開き、使用者がいなくなると便蓋300を自動的に閉じる「オート開閉機能」を設けることもできる。またさらに、便器800に洗浄水を流す「自動水洗機能」を、衛生洗浄装置100に付加してもよい。これは、ロータンクやフラッシュバルブの排水機構を動作させる駆動機構を設け、この駆動機構を動作させる信号を本体部400から出力して、便器800に自動的に洗浄水を流す機能である。
【0060】
これらの機能は、本体部400に設けられた操作部(図示せず)を適宜操作することにより実行・設定でき、また、トイレの壁面などに設置されたリモコンを操作することにより実行させることも可能である。
【0061】
また、ノズルダンパ460は、図18に表したように、回動軸462に弾性体481を取り付けた状態で、フレーム480に取り付けられる。弾性体481は、例えばねじりコイルばね等である。さらに、フレーム480は、ねじ483などを用いて筐体を構成するケースカバー430に固定される。なお、ノズルダンパ460は、弾性体481の付勢力により、閉じた状態になるように付勢されている。
【0062】
図19は、リモコンの具体例を表す模式図である。
本具体例のリモコン900は、「おしり」スイッチ902、「やわらか」スイッチ904、「ビデ」スイッチ906、「止」スイッチ908、「乾燥」スイッチ910などを有する。「おしり」スイッチ902、「やわらか」スイッチ904あるいは「ビデ」スイッチ906を操作すると、本体部400から吐水ノズルが伸出して使用者の「おしり」などに向けて水が噴射される。また、「乾燥」スイッチ910が操作されると、温風ダンパ470が開き、「おしり」に向けて温風が吹き出す。そして、「止」スイッチ908が操作されると、吐水ノズルによる洗浄や温風乾燥が停止する。
【0063】
従って、例えば、「おしり」スイッチ902が操作され、その後「乾燥」スイッチ910が操作されると、例えば、図5に関して前述した制御が実行される。また、「乾燥」スイッチ910が操作され、その後「おしり」スイッチ902が操作されると、例えば図6に関して前述した制御が実行される。
【0064】
一方、本具体例においては、図15及び図16に表したように、本体部400の上面に凹設部410が形成され、この凹設部410に一部が埋め込まれるように人体検知センサ500が設けられている。人体検知センサ500は、便蓋300が閉じた状態においては、その基部付近に設けられた透過窓310を介して使用者の存在を検知する。
【0065】
本具体例においては、図16に表したように、本体部400が、便器800のボウル810の開口端に合わせて後退した形状を有する。すなわち、本体部400は、便器800の上部後方に設置され、その前面が、便器800のボウル810の開口端の形状に沿ってボウル810の開口端よりもボウル810の側にわずかに突出するように凹状に湾曲した湾曲凹面402とされている。なおここで、「後方」とは、図15に表したように、通常はロータンクやフラッシュバルブなどが設置される側であり、通常の使用態様において使用者からみて遠い側を意味する。
【0066】
湾曲凹面402の左右には、ボウル810の開口端に沿って前方に向けて延出した延出部404が設けられている。湾曲凹面402は、その中央付近が高く、左右の延出部404に近づくにしたがって次第に低くなる形状を有する。湾曲凹面402の中央付近の高い部分には、吐水ノズルを伸出及び後退させる開口(第1の開口部)402A及びその開口402Aを覆う閉止部材としてのノズルダンパ(第1の開閉板)460が設けられ、その右側の開口(第2の開口部)402Bには温風ダンパ(第2の開閉板)470が設けられている。
【0067】
以下、このような衛生洗浄装置において実行される制御の実施例について説明する。
図20は、制御部が実行する制御の実施例を表すタイミングチャートである。
本実施例においては、図5及び図6に関して前述した制御を実行する。
【0068】
まず、使用者が便座200に着座したことを人体検知センサ420(図15〜図17参照)が検知すると、まず、温風ダンパが一旦開かれ、再び閉じられる(A)。これは、温風ダンパ470を確実に閉状態にするための初期化動作であり、同時に、温風ダンパ470の固着を防止する効果も得られる。すなわち、吐水ノズルによる洗浄時や男性の立位での小用の際などに、温風ダンパ470は水分がかかることがある。その水分が温風ダンパ470の周囲の隙間に侵入し蒸発すると、カルキ成分などが残留して温風ダンパ470が固着し動きにくくなることがあり得る。これに対して、例えば図20に表したように、使用者の着座に対応して温風ダンパ470を開閉すれば、固着を確実に防止できる。
【0069】
また、後に実行される温風乾燥の際の波形と比較すると分かるように、この温風ダンパ470の初期化動作(A)においては、温風ダンパ470は完全には開かれず、その開き角度は相対的に小さく設定されている。初期化と固着防止のためには、開き角度は小さくてよく、開き角度を小さくすることにより迅速に実行し、かつ使用者に気づかれずに実行することも可能となる。
【0070】
しかる後に、使用者が「おしり」洗浄スイッチを操作(B)して吐水ノズルによる洗浄が開始され(C)、使用者により水勢が変更(D)され、「乾燥」スイッチが操作される(E)。すると、図5に関して前述したように、吐水ノズルが後退(F)してノズルダンパ460が閉じられ、これに続いて温風ダンパ470が開かれ(G)、温風モータ及び温風ヒータが動作して温風が吹き出される(H)。つまり、吐水ノズルによる洗浄中に、「乾燥」スイッチが操作された場合にも、温風ダンパ470を直ちに開くことはできず、吐水ノズルを後退させてノズルダンパ460を閉じた後に温風ダンパ470を開く。こうすることで、温風ダンパ470とノズルダンパ460との衝突が防止される。
【0071】
その後、使用者が再び「おしり」スイッチを操作(I)すると、これに応じて温風ファンと温風ヒータが停止し(J)、図6に関して前述したように温風ダンパ470が閉じる(K)。その後、吐水ノズルが伸出して洗浄が再開される(L)。この際にも、温風ダンパ470とノズルダンパ460との衝突が防止される。
【0072】
なお、例えば、使用者が「おしり」洗浄スイッチを操作した後に、「止」スイッチを操作し、しかる後に、「乾燥」スイッチを操作した場合には、これら指示の順序に沿って制御を実行すればよい。ただしこの場合でも、「止」スイッチが押された直後に「乾燥」スイッチが押された場合には、ノズルダンパ460が完全に閉じていないこともあり得る。本具体例によれば、直ちに温風ダンパ470の開動作を開始させることはないため、所定のタイミングだけ待機させることができる。
【0073】
次に、本実施形態のトイレ装置の内部構造について具体例を参照しつつ説明する。
図21は、本体部の内部を前方から眺めた斜視図である。
本体部400は、筐体を構成するケースカバー430とケースプレート770とを有する。ケースカバー430の上面には、人体検知センサ500や表示部670が適宜設けられている。表示部670は、例えばトイレ装置に対する電源の投入状態などを適宜表示する役割を有する。また、ケースカバー430の前部の上部には、便座200を自動開閉させるための便座開閉ユニット780が突出して設けられている。一方、ケースカバー430の内部をみると、その前方には、ノズルユニット610、温風乾燥ユニット620、脱臭ユニット630、が併設されている。
【0074】
ノズルユニット610は、図2などに関して前述したように、進退自在の吐水ノズルを有し、便座200に座った使用者の「おしり」などに水を噴射して洗浄する役割を有する。脱臭ユニット630は、便器800のボウル810内の空気を吸引し、脱臭して排気口440から排出する役割を有する。
【0075】
また、ケースカバー430の内部の前部上方には制御部640が設けられ、その後部には、バルブユニット650と熱交換ユニット660が設けられている。バルブユニット650から熱交換ユニット660に供給された水が加熱され、ノズルユニット610に併設されたポンプユニットで水に脈動を付与し、吐水ノズルにこの脈動水を供給する。
【0076】
また、ケースカバー430の側面には、補助操作ユニット(図示せず)が適宜設けられている。補助操作ユニットは、ノズルユニット610による「おしり」の洗浄などを操作するスイッチが設けられ、例えば、リモコン(図19)による操作が不可能な状態においても衛生洗浄機能の動作を制御可能としたものである。
【0077】
一方、ケースカバー430の内部の後部には、便蓋開閉ユニット720と便器洗浄バルブユニット730とが併設されている。便蓋開閉ユニット720は、便蓋300を開閉する役割を有する。便器洗浄バルブユニット730は、便器800に流す洗浄水の供給を制御する役割を有する。すなわち、本具体例のトイレ装置は、いわゆる「水道直結給水式」の構造を有し、ロータンクなどを設けずに、水道から供給される水を便器洗浄バルブユニット730を介して便器800に供給して洗浄を実施する。ただし、本発明はこれには限定されず、ロータンク式のトイレに取付可能な衛生洗浄装置も包含する。
【0078】
一方、ケースカバー430の内部の最後部には、室内暖房ユニット740が設けられている。室内暖房ユニット740は、温風を排出口450(図15参照)から排出することによりトイレ装置が設置されたトイレ空間を暖房する役割を有する。
このような各種の機構を備えた本体部400の制御部640は、図1〜図20に関して前述した制御を実施し、または、ノズルダンパ460と温風ダンパ470は図4および図7〜図14に関して前述した開閉機構を有する。
【0079】
次に、本実施形態において、本体部の前面を後方に後退させて湾曲凹面とした効果について図面を参照しつつ説明する。
図22は、 本実施形態のトイレ装置から便座と便蓋とを外して前方から眺めた斜視図である。
また、図23は、比較例のトイレ装置を前方から眺めた斜視図である。
なお、図22及び図23は、便器800の前にしゃがんだ状態で便器を清掃する使用者の目線からみたボウル810の眺めを表し、具体的には、便器800の前端からおよそ100ミリメータ離れ、床面から約1000ミリメータの高さから眺めたボウル810の外観を表す。
【0080】
また、図24は、本実施形態のトイレ装置の断面図である。
また、図25は、比較例のトイレ装置の断面図である。
なお、図24及び図25は、便器800の前にしゃがんだ状態で便器を清掃する使用者の目線からみえる範囲を説明するための模式図である。
【0081】
まず比較例について説明すると、図23及び図25に表した比較例においては、本体部400は便器800のボウル810の上に延出し、破線で表した領域400Pがボウル810の開口の後方部分を塞いでいる。しかし、このように本体部400がボウル810の上にはみだしていると、男性の立位の小用の際に小水が本体部400にかかりやすくなる。また、このように本体部400がボウル810の上にはみだしていると、ボウル810の有効開口面積が狭められるため、立位で小用をする男性に対して狭窄感を与える。また、このようにはみだした領域400Pの裏面側にも汚れが付着しやすく、その清掃性の点でも改善の余地がある。
【0082】
さらには、このように本体部400がボウル810の上にはみだしていると、ボウル810の後方上部に汚れが付着しても見えず、且つ、その部位の清掃が困難であった。すなわち、図23に表した比較例の場合、使用者が便器800の前にしゃがんだ状態においても、ボウル810の上端のリム部820は、本体部のはみ出し領域400Pの陰に隠れて見えない。このため、使用者が領域400Pの下のリム部820を掃除するためには、さらにかがんだ姿勢で覗き込むようにしなければならない。
【0083】
これに対して、本実施形態においては、図22及び図24に表したように、本体部400の前面を後退させて湾曲凹面402を形成することにより、男性の立位での小用の際にも小水がかかりにくくなり、使用者に対して視覚的な狭窄感を与えることもない。また、図17に関して前述したように、湾曲凹面402の中央付近を高くすることにより、男性の立位の小用に際して本体部400に小水がかかったとしても、湾曲凹面402の中央付近の背の高い部分で小水を受けてボウル810に落下させることができる。つまり、小水が本体部400の傾斜面などにかかることを抑制でき、小水による汚れを可及的に減らすことができる。
【0084】
そして、このように本体部400を後退させることにより、本体部400の裏面への汚れの付着も抑制でき、清掃性も格段に改善できる。すなわち、本実施形態によれば、図24に表したように、便器800の前にしゃがんだ使用者の視線からみて、ボウル810の後端のリム部820の上端付近まで見える。従って、使用者は、その姿勢のまま雑巾やブラシなどを用いてボウル810の後端まで清掃し、汚れが落ちてきれいになったことを確実且つ容易に確認できる。また、本実施形態においては、本体部400のボウル810の上への突出量が抑制されているので、その突出部の裏側に付着した汚れなどを清掃することも容易である。例えば、雑巾などで清掃する際にも、使用者が本体部400の裏側に雑巾をあてがった状態で、左右にサッと拭き取ることができる。
【0085】
図26は、本実施形態における湾曲凹面とボウルとの関係を説明するための模式平面図である。
図26に表したように、本体部の湾曲凹面402は、ボウル810の開口形状にほぼ沿った形態を保ちつつ、湾曲凹面402のほぼ全体がボウル810の開口端よりもボウル810の側にわずかに突出している。湾曲凹面402の左右前端でのボウル810への突出量をa、bとし、中央付近でのボウル810への突出量をcとすると、a及びbは相対的に小さく、cは相対的に大きくすることができる。
【0086】
このようにすれば、ボウル810の開口形状と略連続させてボウル810のほとんどを露出させつつ、本体部400とボウル810の開口端との隙間への小水などの侵入を効果的に防止できる。これは、男性の立位の小用の際には、小水は主に中央付近に向けられるからであり、さらに本体部400とボウル810の開口端との隙間が湾曲凹面402で覆われるため、その隙間に小水が直接かからないからである。また、このようにすると、排水及び脱臭のためのスペース(突出部)を確保することも容易となる。
【0087】
具体的には、例えば、a及びbは概ね数ミリメータ乃至10ミリメータ程度で、cは概ね10ミリメータ乃至10数ミリメータ程度とすることができる。このように湾曲凹面402をわずかに突出させれば、小水の侵入を可及的に抑制できる。またさらに、本体部400からボウル810への排水を確保し、さらに脱臭機能のための脱臭吸気口を確保することもできる。
【0088】
また、本体部400のボウル810への突出部の突出量をこのように制限することにより、例えば使用者の手指の先端から第1関節までの範囲で、雑巾を本体部400の裏側にまんべんなくあてがうことも可能となる。つまり、使用者は、手指の第1関節を軽く曲げた状態のまま、手指の先端に雑巾をあてがって、本体部400の湾曲凹面402に沿って左右に雑巾をサッと滑らすことにより、本体部400の裏側と、これに隣接するリム部820の上端部を確実に清掃することが可能となる。湾曲凹面402はボウル810と略連続した曲面を構成しているので、雑巾がひっかかることもなく、スムーズ且つ確実に清掃できる。
【0089】
そして、本実施形態によれば、このように本体部400の前面を後退させて湾曲凹面402を形成し、その中央付近にノズルダンパ460と電動開閉式の温風ダンパ470を設け、これらダンパ460、470の開閉をノズルモータ619および伝達機構472によって行うことにより、ダンパ460、470が衝突して傷がついたり故障することなく、衛生洗浄装置を円滑に動作させることができる。
【0090】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、衛生洗浄装置及びトイレ装置などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置などや衛生洗浄装置の設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、例えば、伝達機構472は、図4および図7〜11に表したような略クランク形状をしたものではなく、ワイヤなどの屈曲自在なものであってもよい。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の実施の形態にかかる衛生洗浄装置の要部構成を例示するブロック図である。
【図2】本実施形態にかかる衛生洗浄装置の本体部の前部を眺めた斜視図である。
【図3】本実施形態の衛生洗浄装置に設けられた吐水ノズルの模式斜視図である。
【図4】本実施形態の衛生洗浄装置に設けられた吐水ノズルの動作の概念を表す概念図である。
【図5】制御部が実施する制御モードの内容を例示するフローチャートである。
【図6】制御部が実施する制御モードの他の内容を例示するフローチャートである。
【図7】本実施形態にかかる衛生洗浄装置の変形例の動作を表す概念図である。
【図8】本実施形態にかかる衛生洗浄装置の他の変形例の動作を表す概念図である。
【図9】本実施形態にかかる衛生洗浄装置のさらに他の変形例の動作を表す概念図である。
【図10】本実施形態にかかる衛生洗浄装置のさらに他の変形例の動作を表す概念図である。
【図11】本実施形態にかかる衛生洗浄装置のさらに他の変形例の動作を表す概念図である。
【図12】本実施形態におけるノズルダンパと温風ダンパの開閉方向の変形例を例示する斜視図である。
【図13】本実施形態におけるノズルダンパと温風ダンパの開閉方向の他の変形例を例示する斜視図である。
【図14】本実施形態におけるノズルダンパと温風ダンパの開閉方向のさらに他の変形例を例示する斜視図である。
【図15】本発明の実施の形態にかかるトイレ装置の外観を表す模式斜視図である。
【図16】トイレ装置の便座と便蓋とを開いた状態を表す模式斜視図である。
【図17】衛生洗浄装置の本体部の中央部を正面から眺めた模式図である。
【図18】フレームをケースカバーに取り付ける組立工程を表す斜視図である。
【図19】リモコンの具体例を表す模式図である。
【図20】制御部が実行する制御の実施例を表すタイミングチャートである。
【図21】本体部の内部を前方から眺めた斜視図である。
【図22】本実施形態のトイレ装置から便座と便蓋とを外して前方から眺めた斜視図である。
【図23】比較例のトイレ装置を前方から眺めた斜視図である。
【図24】本実施形態のトイレ装置の断面図である。
【図25】比較例のトイレ装置の断面図である。
【図26】本実施形態における湾曲凹面とボウルとの関係を説明するための模式平面図である。
【符号の説明】
【0092】
100 衛生洗浄装置、 200 便座、 300 便蓋、 310 透過窓、 400 本体部、 400P 領域、 402 湾曲凹面、 402A 第1の開口部、 402B 第2の開口部、 404 延出部、 410 凹設部、 420 人体検知センサ、 430 ケースカバー、 440 排気口、 450 排出口、 460 ノズルダンパ、 462 回動軸、 470 温風ダンパ、 472 伝達機構、 474 連結軸、 476 支持軸、 480 フレーム、 481 弾性体、 483 ねじ、 500 人体検知センサ、 610 ノズルユニット、 611 ノズルヘッド、 612 第1のシリンダ部、 613 第2のシリンダ部、 614 第3のシリンダ部、 615 吐水ノズル、 616 吐水口、 617 ノズル洗浄室、 618 ノズル基部、 619 ノズルモータ、 620 温風乾燥ユニット、 622、624 弾性体、 626 ラック、 628 レール、 629 突起部、 630 脱臭ユニット、 640 制御部、 650 バルブユニット、 660 熱交換ユニット、 670 表示部、 720 便蓋開閉ユニット、 730 便器洗浄バルブユニット、 740 室内暖房ユニット、 770 ケースプレート、 780 便座開閉ユニット、 800 便器(洋式腰掛便器)、 810 ボウル、 820 リム部、 900 操作部(リモコン)、 902 「おしり」スイッチ、 904 「やわらか」スイッチ、 906 「ビデ」スイッチ、 908 「止」スイッチ、 910 「乾燥」スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の開口部及び第2の開口部を有する筐体と、
前記筐体の中に設けられ、前記第1の開口部から進退可能とされた吐水ノズルと、
前記筐体の中に設けられ、前記第2の開口部に吹出口が向けられた温風発生装置と、
前記第1の開口部を開閉可能に覆う第1の開閉板と、
前記第2の開口部を開閉可能に覆う第2の開閉板と、
前記第1の開閉板と前記第2の開閉板とを同時に開いた状態とならないように開閉する一つの駆動手段と、
前記温風発生装置及び前記駆動手段を制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする衛生洗浄装置。
【請求項2】
第1の開口部及び第2の開口部を有する筐体と、
前記筐体の中に設けられ、前記第1の開口部から進退可能とされた吐水ノズルと、
前記筐体の中に設けられ、前記第2の開口部に吹出口が向けられた温風発生装置と、
前記第1の開口部を開閉可能に覆う第1の開閉板と、
前記第2の開口部を開閉可能に覆う第2の開閉板と、
前記第1の開閉板および第2の開閉板を開閉する一つの駆動手段と、
前記温風発生装置及び前記駆動手段を制御する制御部と、
を備え、
前記第1及び第2の開閉板の少なくともいずれか一方は、水平方向に対して略垂直な回転軸を中心として開くことを特徴とする衛生洗浄装置。
【請求項3】
前記第1及び第2の開閉板の少なくともいずれか一方は、いずれか他方から遠ざかる方向に開くことを特徴とする請求項2記載の衛生洗浄装置。
【請求項4】
前記駆動手段は、前記吐水ノズルを伸出させる駆動部を含み、
前記第1の開閉板は、第1の弾性体により閉止方向に付勢され、
前記駆動部が前記吐水ノズルを伸出させると、前記吐水ノズルが前記第1の開閉板を押して開くことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の衛生洗浄装置。
【請求項5】
前記吐水ノズルが前記筐体の内部に収納された状態において前記駆動手段の駆動力を前記第2の開閉板に伝達する伝達機構をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の衛生洗浄装置。
【請求項6】
前記吐水ノズルは、
吐水口が設けられたノズルヘッドと、
前記ノズルヘッドの少なくとも一部を格納可能な少なくとも1以上のシリンダ部と、
を有し、
前記ノズルヘッドが前記筐体の内部に収納された状態において前記駆動手段の駆動力を前記第2の開閉板へ伝達する伝達機構をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の衛生洗浄装置。
【請求項7】
前記吐水ノズルの伸出方向に前記シリンダ部を付勢する第2の弾性体をさらに備えたことを特徴とする請求項6記載の衛生洗浄装置。
【請求項8】
前記筐体の前面は、後方に湾曲した湾曲凹面を有し、前記第1及び第2の開口部は、前記湾曲凹面に設けられたことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の衛生洗浄装置。
【請求項9】
前記第2の開閉板を閉じる方向に付勢する第3の弾性体をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の衛生洗浄装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate