説明

衛生洗浄装置

【課題】流路内に生存する細菌をより確実に殺菌しきれいな水を供給することができる衛生洗浄装置を提供することを目的とする。
【解決手段】吐水口を有し、前記吐水口から水を噴射して使用者の局部を洗浄するノズルと、前記水を供給する給水手段と、前記給水手段から供給された水を前記吐水口へ導く流路と、前記流路の途中に設けられ、殺菌水を生成可能な殺菌水生成手段と、前記使用者の利用を検知する人体検知手段と、前記給水手段および前記殺菌水生成手段の動作を制御し、前記人体検知手段が前記使用者の利用を検知した後に前記殺菌水生成手段よりも下流側の前記流路を前記殺菌水で満たす制御を実行する制御部と、を備えたことを特徴とする衛生洗浄装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般的に、衛生洗浄装置に関し、具体的には洋式腰掛便器に腰掛けた使用者の「おしり」などを水で洗浄する衛生洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
局部洗浄用の洗浄ノズルは、その洗浄ノズルや温水タンクなどの所定の機能部品を取り付けるケーシングから少なくとも一部を外部に露出(進出)した状態で局部に洗浄水を噴射する。そのため、洗浄ノズルには汚水や汚物が付着するおそれがある。これに対して、局部洗浄を行う前や行った後において、洗浄ノズルに付着した汚水や汚物を洗い流し除去する衛生洗浄装置がある。これにより、洗浄ノズルは清潔に保たれている。
【0003】
しかしながら、洗浄ノズルに付着した汚水や汚物を洗い流した場合でも、トイレ室のような湿潤な環境においては、時間の経過とともに菌が洗浄ノズルに繁殖する場合がある。より具体的には、便器のボウル面などに発生する例えばピンクスライムなどと呼ばれるメチロバクテリウムや、黒かびなどの細菌が洗浄ノズルに付着し、その洗浄ノズルに菌が繁殖するおそれがある。そして、菌が繁殖することにより、例えばバイオフィルムなどと呼ばれるバクテリアおよびその分泌物の集まり(ぬめり、黒色汚れ)が形成されると、前述したような通常のノズル洗浄では、そのバイオフィルムを除去することが困難となる。
【0004】
これに対して、次亜塩素酸や銀イオンを含む殺菌水により洗浄ノズルを殺菌する殺菌工程を一連の動作の中で実行する装置がある。例えば、旅行等で長期間使用しない場合には細菌の繁殖が激しく、小径の排水管部分などを詰まらせる原因となる場合があるため、銀イオン電解装置の下流側水路全体に銀イオン電解水を通水して満たす銀イオン電解槽装置付人体洗浄装置がある(特許文献1)。特許文献1に記載された銀イオン電解槽装置付人体洗浄装置は、長時間不使用状態が続くことによって銀イオン電解水による細菌の繁殖の抑制力が弱まることを防止するために、定期通水時間ごとに銀イオン電解水の入れ替えを行っている。
【0005】
また、局部洗浄水は上水または中水であり、ノズル洗浄水は局部洗浄水よりも強い消毒性または殺菌性を示し、ノズル洗浄手段は、上水または中水の性状を変化させてノズル洗浄水を生成するノズル洗浄水生成部を備えた局部洗浄装置がある(特許文献2)。特許文献2に記載された局部洗浄装置によれば、ノズル装置のクリーニングの際に薬液を利用するので、従来の洗浄水のみを浴びせるクリーニングに比べると、汚れを効果的にぬぐい取ることができるだけでなく、殺菌及び除菌効果も十分に期待できる。
【0006】
また、次亜塩素酸を含む水を生成する電気分解装置および電気分解方法が提案されている(特許文献3)。特許文献3に記載された電気分解装置および電気分解方法によれば、電気分解槽へ流入した塩素イオンを含む流水を加熱した後に電気分解することにより、遊離塩素の発生効率を向上させることができる。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された銀イオン電解槽装置付人体洗浄装置において、長時間不使用状態が続くことによって銀イオン電解水による細菌の繁殖の抑制力が弱まる程度は、一般的に残存している菌の量などにより変わる。そのため、特許文献1に記載されたように、人体検知手段が使用者を検知することによって銀イオン電解水を排水し、その後、銀イオン電解装置への給電を停止させた状態で加熱された水を人体洗浄用の吐水口から吐水すると、殺菌力が低下して菌が繁殖している場合がある。そのため、温水洗浄水に菌が混在している場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−279745号公報
【特許文献2】特許第3487447号公報
【特許文献3】国際公開第95/32922号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、流路内に生存する細菌をより確実に殺菌しきれいな水を供給することができる衛生洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明は、吐水口を有し、前記吐水口から水を噴射して使用者の局部を洗浄するノズルと、前記水を供給する給水手段と、前記給水手段から供給された水を前記吐水口へ導く流路と、前記流路の途中に設けられ、殺菌水を生成可能な殺菌水生成手段と、前記使用者の利用を検知する人体検知手段と、前記給水手段および前記殺菌水生成手段の動作を制御し、前記人体検知手段が前記使用者の利用を検知した後に前記殺菌水生成手段よりも下流側の前記流路を前記殺菌水で満たす制御を実行する制御部と、を備えたことを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0011】
この衛生洗浄装置によれば、制御部は、人体検知手段が使用者の利用を検知した後に殺菌水生成手段よりも下流側の流路を殺菌水で満たす制御を実行する。そのため、殺菌水生成手段よりも下流側の流路は、殺菌水により満たされ殺菌される。つまり、使用者が衛生洗浄装置を利用する可能性があると、制御部は、殺菌水生成手段よりも下流側の流路に殺菌水をより早く供給することができる。そのため、衛生洗浄装置の利用可能性を検知した後のより早い段階で、流路の内部に生存する細菌を殺菌することができる。
【0012】
また、本発明の衛生洗浄装置は、殺菌水を流路の内部に満たして所定時間保持することができる。そのため、流路の内部に生存する細菌をより確実に殺菌し、ノズルの吐水口からきれいな水を噴射することができる。さらに、男性の使用者が立位姿勢のままで排尿行為を行った場合でも、殺菌水生成手段よりも下流側の流路は殺菌水により満たされているため、小水が吐水口から流路内に入ることを防止することができる。
【0013】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記人体検知手段は、トイレ室への使用者の入室を検知可能な入室検知センサであることを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0014】
この衛生洗浄装置によれば、人体検知手段は、トイレ室への使用者の入室を検知可能な入室検知センサであるため、制御部は、入室検知センサがトイレ室に入室した直後の使用者を検知した後、殺菌水生成手段よりも下流側の流路に殺菌水を供給することができる。そのため、殺菌水を殺菌水生成手段よりも下流側の流路の内部により長い時間保持することができる。
【0015】
また、使用者が便座に着座した後に制御部が温水準備を行う場合でも、使用者が便座に着座する前では、温水準備はまだ開始されていない。そのため、使用者が便座に着座する前では、殺菌水生成手段よりも下流側の流路は、より低温の殺菌水により満たされる。より低温の環境における細菌の繁殖力は、より高温の環境における細菌の繁殖力よりも弱い。そのため、使用者が便座に着座する前において、流路の内部に生存する細菌をより効率的に殺菌することができる。
【0016】
また、第3の発明は、第1の発明において、便蓋をさらに備え、前記人体検知手段は、前記便蓋の開動作を検知可能な便蓋開閉検知手段であることを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0017】
この衛生洗浄装置によれば、便蓋の開動作を検知可能な便蓋開閉検知手段が設けられ、便蓋開閉検知手段が使用者の利用を検知することができる。そのため、トイレ室への使用者の入室を検知可能な入室検知センサなどが設けられていなくとも、制御部は、便蓋開閉検知手段が便蓋の開動作を検知した後に殺菌水生成手段よりも下流側の流路を殺菌水で満たす制御を実行できる。そのため、殺菌水生成手段よりも下流側の流路は、殺菌水により満たされ殺菌される。
【0018】
また、第4の発明は、第1の発明において、前記水を加熱可能な加熱手段をさらに備え、前記制御部は、前記人体検知手段が前記使用者の利用を検知すると、前記加熱手段を動作させることを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0019】
この衛生洗浄装置によれば、制御部は、人体検知手段が前記使用者の利用を検知すると、加熱手段を動作させる。つまり、制御部は、殺菌水生成手段よりも下流側の流路を殺菌水で満たす制御と、温水準備の動作の制御と、を連動して実行することができる。このように、温水準備を予め行うことにより、使用者は、便座に着座した後でもすぐに「おしり洗浄」を行うことができる。
【0020】
また、第5の発明は、第1または第2の発明において、前記制御部は、局部洗浄信号を受信すると、前記流路を満たした前記殺菌水を排出する制御を実行することを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0021】
この衛生洗浄装置によれば、制御部は、局部洗浄信号を受信すると、流路を満たした殺菌水を排出する制御を実行する。これにより、流路に満たされていた殺菌水は、新たに供給される上水により置換され排水される。そのため、殺菌水が使用者の局部に噴射されることはなく、上水が使用者の局部に噴射される。
【0022】
また、第6の発明は、第1〜第5のいずれか1つの発明において、前記制御部は、前記使用者の利用を検知しなくなると、前記流路を満たした前記殺菌水を排出する制御を実行することを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0023】
この衛生洗浄装置によれば、制御部は、使用者の利用を検知しなくなると、流路を満たした殺菌水を排出する制御を実行する。そのため、人体検知手段が使用者の利用を検知した後に「おしり洗浄」が実行されない場合でも、制御部は、流路の内部に殺菌水を所定時間保持した後に、流路の内部の殺菌水を抜き、流路の内部を空にすることができる。そのため、殺菌水の殺菌力が経時変化により低下した場合でも、その殺菌水が細菌の栄養源となることを抑制することができる。
【0024】
また、第7の発明は、第1〜第5の発明において、前記制御部は、前記使用者の利用を検知してから所定時間が経過すると、前記流路を満たした前記殺菌水を排出する制御を実行することを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0025】
この衛生洗浄装置によれば、制御部は、使用者の利用を検知してから所定時間が経過すると、流路を満たした殺菌水を排出する制御を実行する。そのため、人体検知手段が使用者の利用を検知した後に「おしり洗浄」が実行されない場合でも、制御部は、流路の内部に殺菌水を所定時間保持した後に、流路の内部の殺菌水を抜き、流路の内部を空にすることができる。そのため、殺菌水の殺菌力が経時変化により低下した場合でも、その殺菌水が細菌の栄養源となることを抑制することができる。
【0026】
また、第8の発明は、第1〜第5のいずれか1つの発明において、前記制御部は、便器洗浄信号を受信すると、前記流路を満たした前記殺菌水を排出する制御を実行することを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0027】
この衛生洗浄装置によれば、制御部は、便器洗浄信号を受信すると、流路を満たした殺菌水を排出する制御を実行する。そのため、人体検知手段が使用者の利用を検知した後に「おしり洗浄」が実行されない場合でも、制御部は、流路の内部に殺菌水を所定時間保持した後に、流路の内部の殺菌水を抜き、流路の内部を空にすることができる。そのため、殺菌水の殺菌力が経時変化により低下した場合でも、その殺菌水が細菌の栄養源となることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の態様によれば、流路内に生存する細菌をより確実に殺菌しきれいな水を供給することができる衛生洗浄装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態にかかる衛生洗浄装置を備えたトイレ装置を表す斜視模式図である。
【図2】本実施形態にかかる衛生洗浄装置の要部構成を表すブロック図である。
【図3】本実施形態にかかる衛生洗浄装置の水路系の要部構成の具体例を例示するブロック図である。
【図4】本実施形態の電解槽ユニットの具体例を例示する断面模式図である。
【図5】本実施形態のノズルユニットの具体例を例示する斜視模式図である。
【図6】本実施形態にかかる衛生洗浄装置の動作の概略を表す概念模式図である。
【図7】本実施形態にかかる衛生洗浄装置の動作と流路の状態との概略を表す概念模式図である。
【図8】本実施形態にかかる衛生洗浄装置の動作の具体例を例示するタイミングチャートである。
【図9】本実施形態にかかる衛生洗浄装置の動作の変形例を表す概念模式図である。
【図10】本実施形態の回転減速装置を表す分解模式図である。
【図11】本実施形態の回転減速装置を表す断面模式図である。
【図12】本実施形態の回転減速装置を表す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の実施の形態にかかる衛生洗浄装置を備えたトイレ装置を表す斜視模式図である。
また、図2は、本実施形態にかかる衛生洗浄装置の要部構成を表すブロック図である。 なお、図2は、水路系と電気系の要部構成を併せて表している。
【0031】
図1に表したトイレ装置は、洋式腰掛便器(以下説明の便宜上、単に「便器」と称する)800と、その上に設けられた衛生洗浄装置100と、を備える。衛生洗浄装置100は、ケーシング400と、便座200と、便蓋300と、を有する。便座200と便蓋300とは、ケーシング400に対して開閉自在にそれぞれ軸支されている。
【0032】
ケーシング400の内部には、便座200に座った使用者の「おしり」などの洗浄を実現する局部洗浄機能部などが内蔵されている。また、例えばケーシング400には、使用者が便座200に座ったことを検知する着座検知センサ(人体検知手段)404が設けられている。着座検知センサ404が便座200に座った使用者を検知している場合において、使用者が例えばリモコンなどの操作部500を操作すると、洗浄ノズル(以下説明の便宜上、単に「ノズル」と称する)473を便器800のボウル801内に進出させることができる。なお、図1に表した衛生洗浄装置100では、ノズル473がボウル801内に進出した状態を表している。
【0033】
ノズル473の先端部には、ひとつあるいは複数の吐水口474が設けられている。そして、ノズル473は、その先端部に設けられた吐水口474から水を噴射して、便座200に座った使用者の「おしり」などを洗浄することができる。なお、本願明細書において「水」という場合には、冷水のみならず、加熱されたお湯も含むものとする。
【0034】
より具体的に説明すると、本実施形態にかかる衛生洗浄装置100は、図2に表したように、水道や貯水タンクなどの給水源10から供給された水をノズル473の吐水口474に導く流路20を有する。流路20の上流側には、電磁弁431が設けられている。電磁弁431は、開閉可能な電磁バルブであり、ケーシング400の内部に設けられた制御部405からの指令に基づいて水の供給を制御する。なお、流路20は、電磁弁431から下流側の2次側とする。
【0035】
電磁弁431の下流には、温水ヒータ441が設けられている。温水ヒータ441は、供給された水を加熱し、所定の温水にする。温水ヒータ441の上流側には入水サーミスタ433(図3参照)が設けられ、温水ヒータ441の下流側には温水サーミスタ443(図3参照)が設けられている。なお、温水温度については、例えば、使用者が操作部500を操作することにより設定することができる。
温水ヒータ441の下流には、殺菌水を生成可能な電解槽ユニット(殺菌水生成手段)450が設けられている。この電解槽ユニット450については、後に詳述する。
【0036】
電解槽ユニット450の下流には、水勢(流量)の調整を行う流量切替弁471と、ノズル473やノズル洗浄室478への給水の開閉や切替を行う流路切替弁472と、が設けられている。なお、流量切替弁471および流路切替弁472は、図3に関して後述する具体例のように、1つのユニットとして設けられていてもよい。続いて、流量切替弁471および流路切替弁472の下流には、ノズル473が設けられている。
【0037】
ノズル473は、ノズルモータ476からの駆動力を受け、便器800のボウル801内に進出したり後退することができる。つまり、ノズルモータ476は、制御部405からの指令に基づいてノズル473を進退させることができる。
そして、制御部405は、電源回路401から電力を供給され、トイレ室への使用者の入室を検知する入室検知センサ(人体検知手段)402や、便座200の前方にいる使用者を検知する人体検知センサ(人体検知手段)403や、便座200への使用者の着座を検知する着座検知センサ404や、操作部500などからの信号に基づいて、電磁弁431や、温水ヒータ441や、電解槽ユニット450や、流量切替弁471や流路切替弁472や、ノズルモータ476の動作を制御することができる。
【0038】
着座検知センサ404は、使用者が便座200に着座する直前において便座200の上方に存在する人体や、便座200に着座した使用者を検知することができる。すなわち、着座検知センサ404は、便座200に着座した使用者だけではなく、便座200の上方に存在する使用者を検知することができる。このような着座検知センサ404としては、例えば、赤外線投受光式の測距センサなどを用いることができる。
【0039】
また、人体検知センサ403は、便器800の前方にいる使用者、すなわち便座200から前方へ離間した位置に存在する使用者を検知することができる。つまり、人体検知センサ403は、トイレ室に入室して便座200に近づいてきた使用者を検知することができる。このような人体検知センサ403としては、例えば、赤外線投受光式の測距センサなどを用いることができる。
【0040】
また、入室検知センサ402は、トイレ室のドアを開けて入室した直後の使用者や、トイレ室に入室しようとしてドアの前に存在する使用者を検知することができる。つまり、入室検知センサ402は、トイレ室に入室した使用者だけではなく、トイレ室に入室する前の使用者、すなわちトイレ室の外側のドアの前に存在する使用者を検知することができる。このような入室検知センサ402としては、焦電センサや、ドップラーセンサなどのマイクロ波センサなどを用いることができる。マイクロ波のドップラー効果を利用したセンサや、マイクロ波を送信し反射したマイクロ波の振幅(強度)に基づいて被検知体を検出するセンサなどを用いた場合、トイレ室のドア越しに使用者の存在を検知することが可能となる。つまり、トイレ室に入室する前の使用者を検知することができる。
【0041】
図1に表したトイレ装置では、ケーシング400の上面に凹設部409が形成され、この凹設部409に一部が埋め込まれるように入室検知センサ402が設けられている。入室検知センサ402は、便蓋300が閉じた状態では、その基部付近に設けられた透過窓310を介して使用者の入室を検知する。そして、例えば、入室検知センサ402が使用者を検知すると、制御部405は、入室検知センサ402の検知結果に基づいて便蓋300を自動的に開くことができる。また、着座検知センサ404および人体検知センサ403は、ケーシング400の前方の中央部に設けられている。但し、着座検知センサ404、人体検知センサ403、および入室検知センサ402の設置形態は、これだけに限定されるわけではなく、適宜変更することができる。
【0042】
また、ケーシング400の内部には、便座200および便蓋300が閉じるときの閉止速度を緩める回転減速装置(便蓋開閉検知手段)600が設けられている。回転減速装置600は、便座200および便蓋300の一方向(閉止方向)への回転に対して抵抗を付与したり、便座200および便蓋300の回転角度を検知したり、便座200および便蓋300の回転の有無を検知することができる。この回転減速装置600については、後に詳述する。
【0043】
また、ケーシング400には、便座200に座った使用者の「おしり」などに向けて温風を吹き付けて乾燥させる「温風乾燥機能」や「脱臭ユニット」や「室内暖房ユニット」などの各種の機構が適宜設けられていてもよい。この際、ケーシング400の側面には、脱臭ユニットからの排気口407及び室内暖房ユニットからの排出口408が適宜設けられる。ただし、本発明においては、衛生洗浄機能部やその他の付加機能部は必ずしも設けなくてもよい。
【0044】
図3は、本実施形態にかかる衛生洗浄装置の水路系の要部構成の具体例を例示するブロック図である。
また、図4は、本実施形態の電解槽ユニットの具体例を例示する断面模式図である。
また、図5は、本実施形態のノズルユニットの具体例を例示する斜視模式図である。
【0045】
図3に表したように、給水源10から供給された水は、まず、分岐金具410に導かれる。分岐金具410に導かれた水は、連結ホース420および図示しない便器洗浄用のバルブユニットに分配される。但し、本実施形態にかかる衛生洗浄装置100を備えたトイレ装置は、いわゆる「水道直圧式」に限定されるわけではなく、いわゆる「ロータンク式」であってもよい。そのため、トイレ装置が「ロータンク式」である場合には、分岐金具410に導かれた水は、便器洗浄用のバルブユニットの代わりに、図示しないロータンクに導かれる。
【0046】
続いて、連結ホース420に供給された水は、バルブユニット(給水手段)430に導かれる。バルブユニット430は、電磁弁431と、調圧弁432と、入水サーミスタ433と、安全弁434と、水抜栓435と、を有する。調圧弁432は、給水圧が高い場合に、所定の圧力範囲に調整する役割を有する。入水サーミスタ433は、熱交換器ユニット440の内部に供給される水の温度を検知し、その水温の情報を制御部405へ出力する。安全弁434は、流路20の圧力が上昇した時に開いて、水を便器800のボウル801に排出する。安全弁434を設けることにより、例えば調圧弁432の故障などによりその2次側(下流側)の流路20の圧力が上昇した場合でも、衛生洗浄装置100の内部に漏水が生ずることを防止できる。また、水抜栓435は、流路20内の水が凍結するおそれがあるときなどに使用され、流路20内の水を排出できる。なお、電磁弁431は、前述した如くである。
【0047】
続いて、バルブユニット430に供給された水は、熱交換器ユニット440に導かれる。熱交換器ユニット(加熱手段)440は、温水ヒータ441と、バキュームブレーカ442と、温水サーミスタ443と、を有する。バキュームブレーカ442は、例えばバルブユニット430に負圧が発生した場合などにおいて、ノズル473から汚水が逆流することを防止する。あるいは、バキュームブレーカ442は、流路20の水抜きの際に外部から空気を取り込んで、熱交換器ユニット440とノズルユニット470との間の流路20の水抜きを促進させる。そして、バキュームブレーカ442からの水は、便器800のボウル801に排出される。
【0048】
温水サーミスタ443は、温水ヒータ441により加熱された水の温度を検知し、その水温の情報を制御部405へ出力する。温水ヒータ441としては、例えば、シーズヒータやセラミックヒータなどが挙げられる。なお、熱交換器ユニット440に供給される水を所定の温度まで加熱するための温水ヒータ441への通電制御は、入水サーミスタ433にて検知される熱交換器ユニット440への入水の温度と、温水サーミスタ443にて検知される加熱された温水の温度と、の情報を制御部405が取り込むことによって、フィードフォワード制御とフィードバック制御の組合せにて行われる。
【0049】
続いて、熱交換器ユニット440に供給され、所定温度に加熱された水は、電解槽ユニット450に導かれる。電解槽ユニット450は、図1および図2に関して前述したように、殺菌水を生成することができる。ここで、本実施形態の電解槽ユニット450について、図面を参照しつつ説明する。
【0050】
電解槽ユニット450は、図4に表したように、その内部に陽極板451および陰極板452を有し、制御部405からの通電の制御によって、内部を流れる水道水を電気分解できる。ここで、水道水は、塩素イオンを含んでいる。この塩素イオンは、水源(例えば、地下水や、ダムの水や、河川などの水)に食塩(NaCl)や塩化カルシウム(CaCl)として含まれている。そのため、その塩素イオンを電気分解することにより次亜塩素酸が生成される。その結果、電解槽ユニット450において電気分解された水は、次亜塩素酸を含む液に変化する。
【0051】
次亜塩素酸は、殺菌成分として機能し、その次亜塩素酸を含む溶液すなわち殺菌水は、アンモニアなどによる汚れを効率的に除去あるいは分解したり、殺菌することができる。ここで、本願明細書において「殺菌水」とは、次亜塩素酸などの殺菌成分を水道水(単に「水」ともいう)よりも多く含む溶液をいうものとする。
【0052】
このように、熱交換器ユニット440から供給された水道水は、電解槽ユニット450において電気分解されて次亜塩素酸を含む溶液となり、ノズルユニット470に導かれる。ノズルユニット470は、図3に表したように、流量切替弁471と、流路切替弁472と、ノズル473と、を有する。そして、流路切替弁472は、電解槽ユニット450から供給された殺菌水をノズル473の吐水口474あるいはノズル洗浄室478(図2および図5参照)に導くことができる。ここで、ノズルユニット470について、図面を参照しつつ説明する。
【0053】
本実施形態のノズルユニット470は、図5に表したように、基台としての取付台475と、取付台475に支持されたノズル473と、ノズル473を移動させるノズルモータ476と、を有する。ノズル473は、図5に表した矢印Aのように、ベルトなどの伝動部材477を介してノズルモータ476から伝達される駆動力により、取付台475に対して摺動自在に設けられている。すなわち、ノズル473は、ノズル473自身の軸方向(進退方向)に直進移動することができる。そして、ノズル473は、ケーシング400および取付台475から進退自在に移動できる。
【0054】
また、本実施形態のノズルユニット470には、ノズル洗浄室478が設けられている。ノズル洗浄室478は、取付台475に対して固定され、その内部に設けられた吐水部479から殺菌水あるいは水を噴射することにより、ノズル473の外周表面(胴体)を殺菌あるいは洗浄することができる。すなわち、制御部405が電解槽ユニット450の陽極板451および陰極板452に通電することにより殺菌水を生成する場合には、ノズル473の胴体は、吐水部479から噴射される殺菌水により殺菌される。一方で、制御部405が電解槽ユニット450の陽極板451および陰極板452に通電しない場合には、ノズル473の胴体は、吐水部479から噴射される水により物理的に洗浄される。
【0055】
より具体的には、ノズル473がケーシング400に収納された状態において、ノズル473の吐水口474の部分はノズル洗浄室478の中にほぼ収容されている。そのため、ノズル洗浄室478は、その内部に設けられた吐水部479から殺菌水あるいは水を噴射することにより、収納された状態のノズル473の吐水口474の部分を殺菌あるいは洗浄することができる。また、ノズル洗浄室478は、ノズル473の進退時において吐水部479から水あるいは殺菌水を噴射することにより、吐水口474の部分だけではなく他の部分の外周表面を殺菌あるいは洗浄することができる。
【0056】
また、本実施形態のノズル473は、ノズル473がケーシング400に収納された状態において、ノズル473自身が有する吐水口474から殺菌水あるいは水を吐水することにより吐水口474の部分を殺菌あるいは洗浄することができる。さらに、ノズル473がケーシング400に収納された状態では、ノズル473の吐水口474の部分はノズル洗浄室478の中にほぼ収容されているため、ノズル473の吐水口474から吐水された殺菌水あるいは水は、ノズル洗浄室478の内壁により反射して吐水口474の部分にかかる。そのため、ノズル473の吐水口474の部分は、ノズル洗浄室478の内壁で反射した殺菌水あるいは水によっても殺菌あるいは洗浄される。
【0057】
このように、ノズル473の外周表面や吐水口474の部分は、電解槽ユニット450において生成された殺菌水により殺菌されるが、例えばカビなどの中には、数秒間の殺菌の工程では殺菌されずに一部が流路20の内部に生存する場合がある。また、殺菌の工程を実行した後に、使用者が衛生洗浄装置100をしばらく使用しないと、それらのカビは繁殖する場合がある。
【0058】
これに対して、本実施形態にかかる衛生洗浄装置100は、人体検知手段が人体を検知した後に電解槽ユニット450において生成した殺菌水を流路20に供給し、その殺菌水を流路20の内部に満たして所定時間保持することができる。その際には、流路切替弁472を閉じることにより、流路20の内部に殺菌水をより保持しやすい。特に、ノズル473の吐水口474に至る流路が汚染されやすい流路なので、本実施形態においては、効果的である。また、殺菌水を流路20の内部に満たして保持する際には、殺菌水を流路20の内部に投入する前に流路20の内部に残っている水をすべて置換させた後に行うことが望ましい。また、本実施形態にかかる衛生洗浄装置100は、殺菌水を流路20の内部に満たして所定時間保持した後に、その殺菌水を流路20の外部に排水することができる。
【0059】
これによれば、衛生洗浄装置100は、殺菌水を流路20の内部に満たして所定時間保持するため、流路20の内部に生存する細菌をより確実に殺菌し、吐水口474からきれいな水を噴射することができる。これは、流路20が殺菌力のより弱い抗菌性の金属により形成されている場合において有効な手段の1つである。また、衛生洗浄装置100は、殺菌水を流路20の内部に満たして所定時間保持した後に、その殺菌水を流路20の外部に排水するため、殺菌水の殺菌力が経時変化により低下した場合でも、その殺菌水が細菌の栄養源となることを抑制することができる。以下、これらの動作について、図面を参照しつつ説明する。
【0060】
図6は、本実施形態にかかる衛生洗浄装置の動作の概略を表す概念模式図である。
本実施形態にかかる衛生洗浄装置100は、人体検知手段が人体を検知した後に電解槽ユニット450への通電を開始し、電解槽ユニット450よりも下流側の流路20に殺菌水を供給する(タイミングt11)。これにより、電解槽ユニット450よりも下流側の流路20は、殺菌水により満たされ殺菌される。
【0061】
ここで、人体検知手段は、入室検知センサ402や人体検知センサ403などである。但し、人体検知手段は、これだけに限定されるわけではなく、トイレ室の照明スイッチの「オン」を検知する手段や、トイレ室のドアの開動作を検知する手段や、便蓋の開動作を検知する手段などであってもよい。例えば、便蓋300を開閉駆動する図示しない便蓋開閉装置(便蓋開閉検知手段)がケーシング400の内部に設けられている場合には、制御部405は、入室検知センサ402の検知結果に基づいて便蓋300を自動的に開くことができる。この場合には、衛生洗浄装置100は、便蓋開閉装置による便蓋300の開動作に基づいて電解槽ユニット450への通電を開始することができる。
【0062】
あるいは、人体検知手段は、回転減速装置600であってもよい。回転減速装置600は、便座200および便蓋300の回転角度を検知できるため、便蓋300の開動作を検知することができる。そのため、衛生洗浄装置100は、回転減速装置600による便蓋300の開動作に基づいて電解槽ユニット450への通電を開始することができる。この回転減速装置600については、後に詳述する。
【0063】
このように、本願明細書において「人体検知手段」という範囲には、入室検知センサ402などのように「人体検知」を行うものだけではなく、トイレ室の照明スイッチの「オン」を検知する手段などのように衛生洗浄装置100の利用可能性を検知する「利用検知」を行うものが包含される。
【0064】
これによれば、使用者が衛生洗浄装置100を利用する可能性があると、衛生洗浄装置100は、電解槽ユニット450よりも下流側の流路20に殺菌水をより早く供給することができる。つまり、例えば、入室検知センサ402がトイレ室に入室した直後の使用者を検知した後であって、着座検知センサ404が便座200に着座した使用者を検知する前において、衛生洗浄装置100は、電解槽ユニット450よりも下流側の流路20に殺菌水を供給することができる。そのため、衛生洗浄装置100の利用可能性を検知した後のより早い段階で、流路20の内部に生存する細菌を殺菌することができる。
【0065】
続いて、着座検知センサ404が便座200に着座した使用者を検知すると、衛生洗浄装置100は、電解槽ユニット450への通電を停止し、電解槽ユニット450よりも下流側の流路20に上水を供給する(タイミングt12)。これにより、電解槽ユニット450よりも下流側の流路20内の殺菌水は、便器800のボウル801に排出される。
【0066】
このとき、衛生洗浄装置100は、温水ヒータ441を動作させる。つまり、衛生洗浄装置100は、温水ヒータ441を動作させ、吐水口474から水を排出させる温水準備を開始する(タイミングt12)。温水準備の動作は、流路20内の水を吐水口474から排出し、熱交換器ユニット440よりも下流側の流路20内の水を熱交換器ユニット440において加熱された水に入れ替える動作である。これにより、熱交換器ユニット440よりも下流側の流路20を温めることができる。そのため、便座200に座った使用者の「おしり」などの洗浄するときに、冷水が使用者の「おしり」などに噴射されることを防止することができる。
【0067】
続いて、温水準備の動作が終了すると、衛生洗浄装置100は、電解槽ユニット450への通電を再び開始し、電解槽ユニット450よりも下流側の流路20に殺菌水を供給する(タイミングt13)。これにより、電解槽ユニット450よりも下流側の流路20は、殺菌水により再び満たされる。
【0068】
続いて、使用者が操作部500に設けられた図示しない「おしり洗浄スイッチ」を押すと、衛生洗浄装置100は、電解槽ユニット450への通電を停止し、電解槽ユニット450よりも下流側の流路20に上水を供給する(タイミングt14)。これにより、電解槽ユニット450よりも下流側の流路20内の殺菌水は、便器800のボウル801に排出される(タイミングt14)。
【0069】
そして、衛生洗浄装置100は、「おしり洗浄」用の吐水口474から水を噴射し、便座200に着座した使用者の「おしり」を洗浄する。このとき、流路20内の殺菌水は、タイミングt14における動作により排出されているため、殺菌水が使用者の局部に噴射されることはない。また、前述したように、人体検知手段が人体を検知した後、および温水準備が終了した後に電解槽ユニット450よりも下流側の流路20の内部は、殺菌水により殺菌されている。そのため、きれいな水が吐水口474から噴射される。
【0070】
本実施形態によれば、衛生洗浄装置100は、人体検知手段が人体を検知した後に電解槽ユニット450への通電を開始し、電解槽ユニット450よりも下流側の流路20に殺菌水を供給する。人体検知手段が入室検知センサ402である場合には、入室検知センサ402がトイレ室に入室した直後の使用者を検知した後、衛生洗浄装置100は、電解槽ユニット450よりも下流側の流路20に殺菌水を供給することができる。そのため、殺菌水を電解槽ユニット450よりも下流側の流路20の内部により長い時間保持することができる。
【0071】
また、着座検知センサ404が便座200に着座した使用者を検知する前(タイミングt12よりも前)では、温水準備はまだ開始されていない。そのため、着座検知センサ404が便座200に着座した使用者を検知する前では、電解槽ユニット450よりも下流側の流路20は、より低温の殺菌水により満たされる。より低温の環境における細菌の繁殖力は、より高温の環境における細菌の繁殖力よりも弱い。そのため、着座検知センサ404が便座200に着座した使用者を検知する前において、流路20の内部に生存する細菌をより効率的に殺菌することができる。
【0072】
図7は、本実施形態にかかる衛生洗浄装置の動作と流路の状態との概略を表す概念模式図である。
なお、図7に表した流路の状態は、電解槽ユニット450よりも下流側の流路20の内部の状態を表している。
また、ここでは、ノズル473が複数の吐水口474を有する場合を例に挙げて説明する。
【0073】
まず、制御部405は、人体検知手段が人体を検知すると、電解槽ユニット450への通電を開始し、電解槽ユニット450において殺菌水を生成させる(タイミングt21)。また、制御部405は、電磁弁431を開き、電解槽ユニット450よりも下流側の流路20に殺菌水を供給する(タイミングt21)。これにより、電解槽ユニット450よりも下流側の流路20は、殺菌水により満たされ殺菌される。また、制御部405は、流量切替弁471および流路切替弁472を制御することにより、複数の全ての吐水口474から殺菌水を吐水している。そのため、電解槽ユニット450よりも下流側の流路20の内部および吐水口474の部分は、殺菌水により殺菌される。
【0074】
続いて、着座検知センサ404が便座200に着座した使用者を検知すると、制御部405は、電解槽ユニット450への通電を停止し、電解槽ユニット450よりも下流側の流路20に上水を供給する(タイミングt22)。これにより、電解槽ユニット450よりも下流側の流路20内の殺菌水は、便器800のボウル801に排出される。このとき、衛生洗浄装置100は、温水ヒータ441を動作させる。つまり、衛生洗浄装置100は、温水ヒータ441を動作させ、吐水口474から水を排出させる温水準備を開始する(タイミングt22)。なお、温水準備の実行時間は、例えば約10〜15秒程度である。
【0075】
続いて、制御部405は、温水準備の動作を終了すると、電解槽ユニット450への通電を開始し、電解槽ユニット450において殺菌水を生成させる(タイミングt23)。そして、制御部405は、流量切替弁471および流路切替弁472を制御することにより、複数の全ての吐水口474から殺菌水を吐水する。このとき、殺菌水が吐水口474から吐水されているため、電解槽ユニット450よりも下流側の流路20の内部および吐水口474の部分は、殺菌水により殺菌される。なお、ここでの殺菌水は、温水準備で加温された流路が冷めないように加温された殺菌水としている。
【0076】
続いて、制御部405は、電解槽ユニット450への通電を停止し、電磁弁431を閉じる(タイミングt24)。制御部405は、電磁弁431を閉じたまま、操作部500に設けられた図示しない「おしり洗浄スイッチ」が使用者により押されるまで待機する(タイミングt24〜t25)。このとき、制御部405は、電磁弁431を閉じ、流路切替弁472を閉じているため、電解槽ユニット450において生成された殺菌水を電解槽ユニット450よりも下流側の流路20の内部に所定時間保持することができる。これにより、使用者が「おしり洗浄」を実行する前において、電解槽ユニット450よりも下流側の流路20の内部を殺菌することができる。
【0077】
なお、ここにいう所定時間とは、電解槽ユニット450よりも下流側の流路20の内部に殺菌水が保持されている時間、すなわち、制御部405が電磁弁431を閉じ、流路切替弁472を閉じてから「おしり洗浄スイッチ」が使用者により押されるまでの時間をいう。そのため、ここにいう所定時間は、例えば使用者の用便行為の時間などにより変化する。
【0078】
続いて、使用者が操作部500に設けられた図示しない「おしり洗浄スイッチ」を押すと(タイミングt25)、制御部405は、局部洗浄を実行する信号を受信する。そして、制御部405は、まず上水により「前洗浄」を実行する(タイミングt25〜t26)。より具体的には、制御部405は、流量切替弁471および流路切替弁472を制御することにより、複数の全ての吐水口474から上水を吐水し、それらの吐水口474を洗浄する。このときには、制御部405は、電解槽ユニット450には通電せず殺菌水を生成させない。そのため、複数の吐水口474の部分は、吐水口474自身が吐水した上水(ノズル洗浄室478の内壁で反射した上水を含む)により物理的に洗浄される。
【0079】
言い換えれば、流路20の内部に保持されていた殺菌水は、新たに供給される上水により吐水口474から排水される。つまり、流路20の内部に保持されていた殺菌水は、新たに供給される上水により置換され、排水される。なお、上水による前洗浄の実行時間は、例えば約2〜4秒程度である。
【0080】
続いて、制御部405は、流量切替弁471および流路切替弁472を制御することによりノズル洗浄室478に設けられた吐水部479から上水を噴射しつつ、ノズル473をボウル801内に進出させる。そのため、ノズル473の胴体は、吐水部479から噴射された上水により洗浄される(タイミングt26〜t27)。このときにも、制御部405は、電解槽ユニット450には通電せず殺菌水を生成させない。そのため、ノズル473の胴体は、吐水部479から噴射された上水により物理的に洗浄される。
【0081】
このときにも、吐水部479に接続された流路20の内部に保持されていた殺菌水は、新たに供給される上水により置換され、排水される。なお、上水による胴体洗浄の実行時間は、例えば約3秒程度である。
【0082】
続いて、制御部405は、流量切替弁471および流路切替弁472を制御することにより「おしり洗浄」用の吐水口474から上水を噴射し、便座200に着座した使用者の「おしり」を洗浄する(タイミングt27〜t28)。このとき、制御部405は、電解槽ユニット450には通電せず殺菌水を生成させない。また、流路20の内部に保持されていた殺菌水は、タイミングt25〜t27において、新たに供給される上水により置換され、排水されている。そのため、殺菌水が使用者の局部に噴射されることはない。
【0083】
また、「おしり洗浄」を実行する前の温水準備および待機のときに、電解槽ユニット450よりも下流側の流路20の内部は、殺菌水により殺菌されている(タイミングt21〜t22、t23〜t25)。そのため、きれいな水が吐水口474から噴射される。
【0084】
続いて、使用者が操作部500により図示しない「止スイッチ」を押すと(タイミングt28)、制御部405は、流量切替弁471および流路切替弁472を制御することによりノズル洗浄室478に設けられた吐水部479から殺菌水を噴射しつつ、ノズル473をケーシング400内に収納する(タイミングt28〜t29)。つまり、制御部405は、電解槽ユニット450への通電を開始し殺菌水を生成させ、吐水部479から噴射された殺菌水によりノズル473の「胴体洗浄」を行う(タイミングt28〜t29)。これにより、電解槽ユニット450よりも下流側の流路20の内部およびノズル473の外周表面は、殺菌水により殺菌される。なお、殺菌水による胴体洗浄の実行時間は、例えば約3秒程度である。
【0085】
続いて、ノズル473がケーシング400に収納された状態において、制御部405は、流量切替弁471および流路切替弁472を制御することにより、複数の全ての吐水口474から殺菌水を吐水し、それらの吐水口474の「後洗浄」を実行する(タイミングt29〜t30)。つまり、制御部405は、電解槽ユニット450に通電して殺菌水を生成し、吐水口474から噴射された殺菌水により吐水口474の部分の後洗浄を行う(タイミングt29〜t30)。これにより、流路20の内部および吐水口474の部分は、殺菌水により殺菌される。なお、殺菌水による前洗浄の実行時間は、例えば約3秒程度である。
【0086】
続いて、制御部405は、電磁弁431を閉じ、その後、流路切替弁472閉じて、電解槽ユニット450において生成した殺菌水を流路20の内部に所定時間保持する(タイミングt30〜t31)。これにより、使用者が「おしり洗浄」を実行した後において、流路20の内部を殺菌することができる。そして、ここにいう所定時間とは、例えば約60分程度である。このように、本実施形態にかかる衛生洗浄装置100は、流路20の内部に殺菌水をより長い時間保持するため、流路20の内部に生存する細菌をより確実に殺菌することができる。
【0087】
続いて、所定時間が経過すると、制御部405は、「水抜き」を行う(タイミングt31〜t32)。つまり、制御部405は、流路20の内部の殺菌水を抜き、流路20の内部を空にする。この「水抜き」の実行時間は、例えば約30秒程度である。このように、本実施形態にかかる衛生洗浄装置100は、流路20の内部に殺菌水を所定時間保持した後に、流路20の内部の殺菌水を抜き、流路20の内部を空にするため、殺菌水の殺菌力が経時変化により低下した場合でも、その殺菌水が細菌の栄養源となることを抑制することができる。
【0088】
また、本実施形態の制御部405は、ノズル473を洗浄する洗浄工程を実行した後に連続して、流路20の内部に殺菌水を所定時間保持する。ここで、本願明細書において、ノズルの「洗浄工程」とは、殺菌水による前洗浄、殺菌水による胴体洗浄、および殺菌水による後洗浄の少なくともいずれかをいう。これにより、ノズル473の洗浄工程を実行した後に、じっくりと流路20の内部を殺菌することができる。そのため、流路20の内部に生存する細菌をより確実に殺菌することができる。
【0089】
図8は、本実施形態にかかる衛生洗浄装置の動作の具体例を例示するタイミングチャートである。
まず、人体検知手段が人体を検知すると(タイミングt101)、制御部405は、流量切替弁471および流路切替弁472を「原点」から「SC(セルフクリーニング)2」に切り替え、「おしり洗浄」および「ビデ洗浄」のための全ての吐水口474からの吐水を可能とする。このときの流量(水量)は、例えば約450cc/分である。
【0090】
続いて、流量切替弁471および流路切替弁472の切り替えが完了すると(タイミングt102)、制御部405は、電磁弁431を開き、温水ヒータ441を「殺菌制御モード」に設定する。これにより、流路20内の冷水が排水され、温水準備が行われる。このように、着座検知センサ404が便座200に着座した使用者を検知する前に温水準備が行われることにより、使用者は、便座200に着座した後でもすぐに「おしり洗浄」を行うことができる。
【0091】
続いて、制御部405は、電解槽ユニット450への通電を開始し、電解槽ユニット450において殺菌水を生成させる(タイミングt103)。このとき、電磁弁431は開いているため、電解槽ユニット450よりも下流側の流路20は、殺菌水により満たされ殺菌される。また、制御部405は、流量切替弁471および流路切替弁472を「SC2」に切り替えているため、吐水口474の部分は、殺菌水により殺菌される。
【0092】
このときの流量(水量)は、例えば約280cc/分である。つまり、このときの流量は、温水準備のときの流量(例えば約450cc/分)や、水による前洗浄および胴体洗浄および後洗浄のときの流量(例えば約450cc/分)よりも少ない。言い換えれば、制御部405は、局部洗浄を実行するときの流量とは独立した設定流量で殺菌水を生成できる。なお、本具体例では、温水準備のときの流量や、水による前洗浄および胴体洗浄および後洗浄のときの流量は、最大流量に設定されている。このように、制御部405は、電解槽ユニット450に供給する水の流量を最大流量よりも少なくすることにより、電解槽ユニット450において生成される殺菌水の次亜塩素酸の濃度をより高めることができる。
【0093】
また、このとき、制御部405は、温水ヒータ441を「凍結防止制御モード」から「殺菌制御モード」に設定変更している(タイミングt102)。このときの温水ヒータ441の温度、すなわち「殺菌制御モード」における温水ヒータ441の設定温度は、局部洗浄を行うときの温水ヒータ441の設定温度、すなわち「前洗浄モード、本洗浄モード、後洗浄モード」における温水ヒータ441の設定温度の最高温度以上である。言い換えれば、制御部405は、局部洗浄を実行するときの温度とは独立した設定温度で殺菌水を生成できる。
【0094】
このように、制御部405は、温水ヒータ441を「殺菌制御モード」に設定し、局部洗浄を実行するときに温水ヒータ441から供給される水の最高温度以上に設定することにより、電解槽ユニット450において生成される殺菌水の次亜塩素酸の濃度をより高めることができる。また、制御部405は、局部洗浄を実行するときの最高温度以上に設定することにより、殺菌水の次亜塩素酸の濃度をより高めることができるため、殺菌水の殺菌力の低下を抑制し、流路20の内部に保持した殺菌水の殺菌効果をより長く維持することができる。そのため、その殺菌水が細菌の栄養源となることを抑制することができる。
【0095】
続いて、制御部405は、温水ヒータ441を「殺菌制御モード」から「保温制御モード」に設定変更する(タイミングt104)。続いて、制御部405は、電磁弁431を閉じ、流量切替弁471および流路切替弁472を「SC2」から「原点」に切り替え、電解槽ユニット450への通電を停止する(タイミングt105)。続いて、制御部405は、温水ヒータ441を「保温制御モード」から「凍結防止制御モード」に設定変更する(タイミングt106)。なお、制御部405が温水ヒータ441を設定変更した後に電磁弁431を閉じるのは、いわゆる「後沸き防止」のためである。つまり、温水ヒータ441は、「殺菌制御モード」から「保温制御モード」へ設定変更された後でも余熱を発生するためである。
【0096】
続いて、制御部405は、着座検知センサ404が便座200に着座した使用者を検知するまで、流路20の内部に殺菌水を保持しつつ待機する(タイミングt106〜t107)。そして、着座検知センサ404が便座200に着座した使用者を検知すると(タイミングt107)、制御部405は、流量切替弁471および流路切替弁472を「原点」から「SC」に切り替え、「おしり洗浄」および「ビデ洗浄」のための全ての吐水口474からの吐水を可能とする。このときの流量(水量)は、例えば約450cc/分である。
【0097】
続いて、流量切替弁471および流路切替弁472の切り替えが完了すると(タイミングt108)、制御部405は、電磁弁431を開き、温水ヒータ441を「捨水モード」に設定する。これにより、流路20内の冷水が排水され、温水準備が再び行われる。続いて、制御部405は、流量切替弁471および流路切替弁472を「SC」から「SC2」に切り替えて温水準備を完了すると、電解槽ユニット450への通電を開始し殺菌水を生成する(タイミングt109)。また、制御部405は、温水ヒータ441を「殺菌制御モード」に設定する(タイミングt109)。このときの流量(水量)は、例えば約280cc/分である。
【0098】
続いて、制御部405は、温水ヒータ441を「殺菌制御モード」から「保温制御モード」に設定変更する(タイミングt110)。続いて、制御部405は、電磁弁431を閉じ、流量切替弁471および流路切替弁472を「SC2」から「原点」に切り替え、電解槽ユニット450への通電を停止する(タイミングt111)。なお、制御部405が温水ヒータ441を設定変更した後に電磁弁431を閉じるのは、前述したように、いわゆる「後沸き防止」のためである。
【0099】
続いて、制御部405は、操作部500に設けられた図示しない「おしり洗浄スイッチ」が使用者により押されるまで、流路20の内部に殺菌水を保持しつつ待機し、吐水口474から吐水する水の温度を保温する(タイミングt112〜t113)。このとき、制御部405は、電磁弁431を閉じ、流路切替弁472を閉じているため、電解槽ユニット450において生成した殺菌水を流路20の内部に所定時間保持することができる。これにより、使用者が「おしり洗浄」を実行する前において、流路20の内部を殺菌することができる。
【0100】
続いて、使用者が操作部500に設けられた図示しない「おしり洗浄スイッチ」を押すと(タイミングt113)、制御部405は、局部洗浄を実行する信号を受信する。そして、制御部405は、流量切替弁471および流路切替弁472を「原点」から「SC」に切り替え、電磁弁431を開き、温水ヒータ441を「前洗浄モード、本洗浄モード、後洗浄モード」に設定する。このとき、制御部405は、電解槽ユニット450には通電せず殺菌水を生成させない。そのため、吐水口474の部分は、吐水口474自身が吐水した水により洗浄される。
【0101】
言い換えれば、流路20の内部に保持されていた殺菌水は、新たに供給される水により吐水口474から排水される。つまり、流路20の内部に保持されていた殺菌水は、新たに供給される水により置換され、排水される。
【0102】
続いて、制御部405は、流量切替弁471および流路切替弁472を「SC」から「バイパス2」に切り替え、ノズル洗浄室478に設けられた吐水部479から水を噴射可能とする(タイミングt115)。続いて、制御部405は、ケーシング400に収納されていたノズル473を「おしり洗浄」の位置まで進出させる(タイミングt116〜t117)。このとき、制御部405は、電磁弁431を開いており、電解槽ユニット450には通電せず殺菌水を生成していない。そのため、ノズル473の胴体は、吐水部479から噴射された水により洗浄される。そして、吐水部479に接続された流路20の内部に保持されていた殺菌水は、新たに供給される水により置換され、排水される。
【0103】
続いて、制御部405は、流量切替弁471および流路切替弁472を「バイパス2」から「おしり水勢5」に切り替え(タイミングt117〜t118)、本洗浄(おしり洗浄)を実行する(タイミングt118〜t119)。なお、例えば、使用者が「おしり洗浄」における水勢を「水勢5」から「水勢3」に操作部500により設定変更した場合には、制御部405は、流量切替弁471および流路切替弁472を「おしり水勢5」から「おしり水勢3」に切り替える(タイミングt119〜t120)。そして、制御部405は、「水勢3」において本洗浄を継続する(タイミングt120〜t121)。
【0104】
この本洗浄では、制御部405は、電解槽ユニット450には通電せず殺菌水を生成しない。また、流路20の内部に保持されていた殺菌水は、タイミングt113〜t117において、新たに供給される水により置換され、排水されている。そのため、殺菌水が使用者の局部に噴射されることはない。
【0105】
続いて、使用者が操作部500により図示しない「止スイッチ」を押すと、制御部405は、流量切替弁471および流路切替弁472を「おしり水勢3」から「バイパス2」に切り替え、ノズル洗浄室478に設けられた吐水部479から水を噴射可能とする(タイミングt121)。続いて、制御部405は、「おしり洗浄」の位置に進出していたノズル473をケーシング400に収納する(タイミングt122〜t123)。このとき、制御部405は、電磁弁431を開いており、電解槽ユニット450には通電せず殺菌水を生成していない。そのため、ノズル473の胴体は、吐水部479から噴射された水により洗浄される。
【0106】
続いて、ノズル473がケーシング400に収納された状態において、制御部405は、流量切替弁471および流路切替弁472を「バイパス2」から「SC」に切り替え、「おしり洗浄」および「ビデ洗浄」のための全ての吐水口474から吐水することにより後洗浄を行う(タイミングt123〜t124)。このときにも、制御部405は、電磁弁431を開いており、電解槽ユニット450には通電していないため、ノズル473の吐水口474の部分は、吐水口474自身が吐水した水により洗浄される。
【0107】
続いて、制御部405は、電磁弁431を閉じ、流量切替弁471および流路切替弁472を「SC」から「原点」に切り替える(タイミングt125)。続いて、使用者が「おしり乾燥」を適宜行い便座200から離座した後、所定時間(ここでは、例えば約5秒間程度)が経過すると、制御部405は、流量切替弁471および流路切替弁472を「原点」から「SC2」に切り替え、「おしり洗浄」および「ビデ洗浄」のための全ての吐水口474からの吐水を可能とする(タイミングt126)。また、制御部405は、電磁弁431を開き、温水ヒータ441を「前洗浄モード、本洗浄モード、後洗浄モード」に設定する(タイミングt126)。さらに、制御部405は、電解槽ユニット450への通電を開始し、殺菌水の生成を開始する(タイミングt127)。
【0108】
そのため、電解槽ユニット450において生成された殺菌水によるノズル473の後洗浄が行われる。つまり、電解槽ユニット450において生成された殺菌水が吐水口474から吐水されるため、流路20の内部および吐水口474の部分は、殺菌水により殺菌される。これにより、使用者が「おしり洗浄」を実行した後において、流路20の内部を殺菌することができる。
【0109】
このときの流量(水量)は、例えば約280cc/分である。これによれば、前述したように、制御部405は、電解槽ユニット450に供給する水の流量をより少なくすることにより、電解槽ユニット450において生成される殺菌水の次亜塩素酸の濃度をより高めることができる。
【0110】
続いて、制御部405は、電解槽ユニット450への通電を停止し、温水ヒータ441を「凍結防止制御モード」に設定する(タイミングt128)。その後、制御部405は、電磁弁431を閉じ、流路切替弁472を閉じて、電解槽ユニット450において生成した殺菌水を流路20の内部に所定時間保持する(タイミングt129〜t132)。これにより、使用者が「おしり洗浄」を実行した後において、流路20の内部を殺菌することができる。
【0111】
この殺菌水保持工程の実行時間は、例えば約60分程度である。このように、本実施形態にかかる衛生洗浄装置100は、流路20の内部に殺菌水をより長い時間保持するため、流路20の内部に生存する細菌をより確実に殺菌することができる。なお、制御部405は、殺菌水を流路20の内部に保持している間に(タイミングt129〜t132)、電解槽ユニット450に通電し殺菌水を供給してもよい(タイミングt130〜t131)。これによれば、殺菌水の殺菌力が経時変化により低下した場合でも、制御部405は、電解槽ユニット450を制御し、新たな殺菌水を供給することにより殺菌力の低下を抑制することができる。
【0112】
続いて、所定時間(例えば約60分程度)が経過すると、制御部405は、流量切替弁471および流路切替弁472を「原点」から「SC2」に切り替え、ノズル473を「水抜き」の位置まで移動させる(タイミングt132)。これにより、流路20の内部の「水抜き」が実行される(タイミングt132〜t133)。つまり、制御部405は、流路20の内部の殺菌水を抜き、流路20の内部を空にする。このように、本実施形態にかかる衛生洗浄装置100は、流路20の内部に殺菌水を所定時間保持した後に、流路20の内部の殺菌水を抜き、流路20の内部を空にするため、殺菌水の殺菌力が経時変化により低下した場合でも、その殺菌水が細菌の栄養源となることを抑制することができる。
【0113】
制御部405は、流路20の内部の水抜きを実行した後に待機状態となる(タイミングt133〜t134)。その後、制御部405は、流量切替弁471および流路切替弁472を「原点」から「SC2」に切り替え、「おしり洗浄」および「ビデ洗浄」のための全ての吐水口474からの吐水を可能とする(タイミングt134)。また、制御部405は、電磁弁431を開き、温水ヒータ441を「殺菌制御モード」に設定する(タイミングt134)。さらに、制御部405は、電解槽ユニット450への通電を開始し、殺菌水の生成を開始する(タイミングt134)。つまり、ここでは、タイミングt126〜t129に関して前述したように、流路20の内部および吐水口474の部分は、殺菌水により殺菌される(タイミングt133〜t134)。
【0114】
続いて、制御部405は、タイミングt129〜t132に関して前述した動作と同様に、電磁弁431を閉じ、流路切替弁472を閉じて、電解槽ユニット450において生成した殺菌水を流路20の内部に所定時間保持する(タイミングt135〜t136)。これによれば、使用者が「おしり洗浄」を実行した後において、流路20の内部を定期的に殺菌することができる。そして、制御部405は、タイミングt132〜t133に関して前述した動作と同様に、流路20の内部の殺菌水を抜き、流路20の内部を空にする(タイミングt136〜t137)。これにより、流路20の内部に生存する細菌をより確実に殺菌し、その流路20の内部において細菌が繁殖することをより確実に抑制することができる。
【0115】
ここで、流路20の内部の定期的な殺菌および排水(タイミングt134〜t137)を実行するトリガについて、制御部405は、例えばタイマーにより適宜設定された時刻になると、定期的な殺菌および排水を実行することができる。タイマーの時刻は、衛生洗浄装置100の製造時や出荷時に予め設定されていてもよいし、使用者により好みに応じて設定されてもよい。あるいは、制御部405は、衛生洗浄装置100が使用されていない夜間の時間帯を狙って、定期的な殺菌および排水を実行することができる。
【0116】
あるいは、制御部405は、使用者による衛生洗浄装置100の使用頻度を記憶し、その使用頻度が少ない時間帯を学習してもよい。これによれば、制御部405は、その使用者の使用頻度が少ない時間帯において、定期的な殺菌および排水を実行することができる。
【0117】
図9は、本実施形態にかかる衛生洗浄装置の動作の変形例を表す概念模式図である。
図6〜図8に関して前述した動作は、人体検知手段が人体を検知した後に「おしり洗浄」が実行される場合である。これに対して、人体検知手段が人体を検知した後に「おしり洗浄」が実行されない場合がある。これは、例えば、男性の使用者が立位姿勢のままで排尿行為を行った場合などである。
【0118】
この場合でも、制御部405は、流路20の内部の「水抜き」を実行することができる。つまり、人体検知手段が人体を検知した後に「おしり洗浄」が実行されない場合でも、制御部405は、流路20の内部の殺菌水を抜き、流路20の内部を空にすることができる。
【0119】
例えば、図9(a)に表したように、人体検知手段が人体を検知しなくなってから所定時間が経過した後に、制御部405は、流路20の内部の殺菌水を抜き、流路20の内部を空にすることができる。あるいは、図9(b)に表したように、人体検知手段が人体を検知してから所定時間が経過した後に、制御部405は、流路20の内部の殺菌水を強制的に抜き、流路20の内部を空にすることができる。あるいは、図9(c)に表したように、人体検知手段が人体を検知した後であって、所定時間が経過しても着座検知センサ404が便座200に着座した使用者を検知しない場合には、制御部405は、便器洗浄の動作と同時に流路20の内部の殺菌水を抜き、流路20の内部を空にすることができる。
【0120】
これらによれば、人体検知手段が人体を検知した後に「おしり洗浄」が実行されない場合でも、制御部405は、流路20の内部に殺菌水を所定時間保持した後に、流路20の内部の殺菌水を抜き、流路20の内部を空にすることができる。そのため、殺菌水の殺菌力が経時変化により低下した場合でも、その殺菌水が細菌の栄養源となることを抑制することができる。
【0121】
次に、人体検知手段が回転減速装置600である場合の具体例について、図面を参照しつつ説明する。
図10は、本実施形態の回転減速装置を表す分解模式図である。
また、図11および図12は、本実施形態の回転減速装置を表す断面模式図である。
なお、図11は、図10に表した切断面A−Aにおける断面模式図である。
また、図12は、図11に表した切断面B−Bにおける断面模式図である。
【0122】
回転減速装置600は、図10に表したように、ケーシング400内に固定される筒状の取付台610と、その取付台610の筒内に保持されるダンパー部620及び開閉検知部630と、を有する。
ダンパー部620および開閉検知部630は、それぞれ別のケース(ケーシング)を有する独立部材となっており、それぞれ取付台610に着脱自在な状態に一体化されている。
【0123】
ダンパー部620は、図11に表したように、両端に開口部621a、621bを有する円筒状のケーシング621と、ケーシング621の内部に摺接する回転軸622と、ケーシング621と回転軸622との間に封入された粘性オイル623と、開口部621a、621bを覆う蓋624、625と、を有する。粘性オイル623は、回転軸622の一方向(便座が閉じる方向)への回転に対して抵抗を付与する回転抵抗手段として機能する(図12参照)。
【0124】
回転軸622は、ケーシング621の内部に回転可能に嵌め込まれている。一方の蓋624の中央には、回転軸622の一端に形成したピン差込み孔622cが覗く開口部624aが設けられている。そして、この開口部624aからピン差込み孔622cに対して、便座200の基部に回転不能に取付けられる保持軸640が回転不能に差し込まれる。また、回転軸622の他端は、他方の蓋625に設けられた開口部625aから突出しており、開閉検知部630の内部の増速ギヤ列633に係合する。
なお、回転軸622は、ピン差込み孔622cから増速ギヤ列633への係合部分までを一本の軸で構成してもよいが、本実施形態では、第一回転軸622aと第二回転軸622bの2部材に分断させている。もちろん分断されても第一回転軸622aと第二回転軸622bは、端部同士が互いに回転不能に係合しているので、第一回転軸622aの回転はそのまま第二回転軸622bの回転に伝達されている。
【0125】
開閉検知部630は便座200又は便蓋300の開閉状態を検知するものであり、図11に表したように、ケース631と、ケース631の内部に収納された入力軸632と、入力軸632の回転を増速させて伝達する増速ギヤ列633と、入力軸632に固定された磁石634aと、増速ギヤ列633の最終段のギヤ(第3ギヤ633c)に固定された磁石635aと、各磁石634a、635aの磁力を検知するホールIC634b、635bを有するホールIC基板636と、を有する。磁石634aは、入力軸632の周方向にN極とS極が2極分化した円弧形状である。磁石635aは、回転軸622に対する増速比を最大とした第3ギヤ633cの周方向にN極とS極を複数有する円板形状である。
なお、ホールIC基板636には、制御部405と信号の授受を行うリード線637が接続されている。
【0126】
ケース631の側面には開口部631aが形成されており、前述した回転軸622(第二回転軸622b)の他端がこの開口部631aからケース631内に差し込まれて入力軸632に係合する。すなわち、回転軸622の回転は、直接に入力軸632に伝達される。
【0127】
増速ギヤ列633は、第1ギヤ633a、第2ギヤ633b及び第3ギヤ633cを有し、第1ギヤ633aは入力軸632の回転を増速して第2ギヤ633bに伝達し、第2ギヤ633bは第1ギヤ633aの回転を増速して第3ギヤ633cに伝達している。
【0128】
入力軸632の回転角度を検知する角度検出手段は、入力軸632に固定した磁石634aとホールIC634bとを有する。入力軸632の回転角度は、回転軸622の回転角度と一致するので、この角度検出手段は、便座200の回転角度、すなわち便座200の位置を検知することができる。
【0129】
また、第3ギヤ633cの回転の有無を検知する回転検出手段は、第3ギヤ633cに固定した磁石635aとホールIC635bとを有する。第3ギヤ633cは第2ギヤ633b、第1ギヤ633a、入力軸632を介して回転軸622の回転を受けているから、第3ギヤの回転の有無は回転軸622の回転の有無と一致する。すなわち、この回転検出手段は、便座200の回転の有無を検知することができる。さらに、回転軸622の回転を直接検出するのではなく、増速ギヤ列633で増速した回転を検出するので、便座200が緩い速度で閉じている状態であっても、その回転の有無を検出することが容易である。しかも、第3ギヤ633cは、増速ギヤ列633の中でも回転軸622に対する増速比が最大になっているので、第1ギヤ633aや第2ギヤ633bに磁石を配置するよりも、精度よく回転の有無を検出できる。
【0130】
角度検出手段及び回転検出手段による検出の結果は、リード線637により回転減速装置600の外に取り出されて、制御部405に出力される。また、リード線637を介して制御部405から角度検出手段及び回転検出手段に電力が供給され、ホールIC634b、635bによる磁石634a、635aの位置検知を可能にしている。
【0131】
このように、本実施形態の回転減速装置600は、便座200の回転角度および回転の有無を検知することができる。そのため、制御部405は、回転減速装置600が便蓋300の開動作を検知した後に電解槽ユニット450への通電を開始し、電解槽ユニット450よりも下流側の流路20に殺菌水を供給することができる。これにより、電解槽ユニット450よりも下流側の流路20は、殺菌水により満たされ殺菌される。
【0132】
また、便蓋300の開動作にて温水準備を行う場合、便蓋300の開動作と同時または直後に便座200の開動作を検知した場合には、温水準備は行わないか、あるいは便座200の開動作にて温水準備を停止し、無駄な温水ヒータの動作を行わないようにすることが望ましい。
【0133】
以上説明したように、本実施形態によれば、制御部405は、人体検知手段が人体を検知した後に電解槽ユニット450への通電を開始し、電解槽ユニット450よりも下流側の流路20に殺菌水を供給する。これにより、電解槽ユニット450よりも下流側の流路20は、殺菌水により満たされ殺菌される。つまり、使用者が衛生洗浄装置100を利用する可能性があると、制御部405は、電解槽ユニット450よりも下流側の流路20に殺菌水をより早く供給することができる。そのため、衛生洗浄装置100の利用可能性を検知した後のより早い段階で、流路20の内部に生存する細菌を殺菌することができる。
【0134】
また、本実施形態にかかる衛生洗浄装置100は、殺菌水を流路20の内部に満たして所定時間保持することができる。そのため、流路20の内部に生存する細菌をより確実に殺菌し、吐水口474からきれいな水を噴射することができる。さらに、男性の使用者が立位姿勢のままで排尿行為を行った場合でも、電解槽ユニット450よりも下流側の流路20は殺菌水により満たされているため、小水が吐水口474から流路20内に入ることを防止することができる。
【0135】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、衛生洗浄装置100などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置などやノズル473やノズル洗浄室478の設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、電解槽ユニット450において生成される殺菌水は、銀イオンや銅イオンなどの金属イオンを含む溶液であってもよい。あるいは、電解槽ユニット450において生成される殺菌水は、電解塩素やオゾンなどを含む溶液であってもよい。あるいは、電解槽ユニット450において生成される殺菌水は、酸性水やアルカリ水であってもよい。あるいは、殺菌水生成手段は、電解槽に限定されるわけではない。すなわち、殺菌水は、殺菌剤および殺菌液を水に溶解させることによって生成される殺菌水であってもよい。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0136】
10 給水源、 20 流路、 100 衛生洗浄装置、 200 便座、 300 便蓋、 310 透過窓、 400 ケーシング、 401 電源回路、 402 入室検知センサ、 403 人体検知センサ、 404 着座検知センサ、 405 制御部、 407 排気口、 408 排出口、 409 凹設部、 410 分岐金具、 420 連結ホース、 430 バルブユニット、 431 電磁弁、 432 調圧弁、 433 入水サーミスタ、 434 安全弁、 435 水抜栓、 440 熱交換器ユニット、 441 温水ヒータ、 442 バキュームブレーカ、 443 温水サーミスタ、 450 電解槽ユニット、 451 陽極板、 452 陰極板、 470 ノズルユニット、 471 流量切替弁、 472 流路切替弁、 473 ノズル、 474 吐水口、 475 取付台、 476 ノズルモータ、 477 伝動部材、 478 ノズル洗浄室、 479 吐水部、 500 操作部、 600 回転減速装置、 610 取付台、 620 ダンパー部、 621 ケーシング、 621a、621b 開口部、 622 回転軸、 622a 第一回転軸、 622b 第二回転軸、 622c ピン差込み孔、 623 粘性オイル、 624 蓋、 624a 開口部、 625 蓋、 625a 開口部、 630 開閉検知部、 631 ケース、 631a 開口部、 632 入力軸、 633 増速ギヤ列、 633a 第1ギヤ、 633b 第2ギヤ、 633c 第3ギヤ、 634a 磁石、 634b ホールIC、 635a 磁石、 635b ホールIC、 636 基板、 637 リード線、 640 保持軸、 800 便器、 801 ボウル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐水口を有し、前記吐水口から水を噴射して使用者の局部を洗浄するノズルと、
前記水を供給する給水手段と、
前記給水手段から供給された水を前記吐水口へ導く流路と、
前記流路の途中に設けられ、殺菌水を生成可能な殺菌水生成手段と、
前記使用者の利用を検知する人体検知手段と、
前記給水手段および前記殺菌水生成手段の動作を制御し、前記人体検知手段が前記使用者の利用を検知した後に前記殺菌水生成手段よりも下流側の前記流路を前記殺菌水で満たす制御を実行する制御部と、
を備えたことを特徴とする衛生洗浄装置。
【請求項2】
前記人体検知手段は、トイレ室への使用者の入室を検知可能な入室検知センサであることを特徴とする請求項1記載の衛生洗浄装置。
【請求項3】
便蓋をさらに備え、
前記人体検知手段は、前記便蓋の開動作を検知可能な便蓋開閉検知手段であることを特徴とする請求項1記載の衛生洗浄装置。
【請求項4】
前記水を加熱可能な加熱手段をさらに備え、
前記制御部は、前記人体検知手段が前記使用者の利用を検知すると、前記加熱手段を動作させることを特徴とする請求項1記載の衛生洗浄装置。
【請求項5】
前記制御部は、局部洗浄信号を受信すると、前記流路を満たした前記殺菌水を排出する制御を実行することを特徴とする請求項1または2に記載の衛生洗浄装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記使用者の利用を検知しなくなると、前記流路を満たした前記殺菌水を排出する制御を実行することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の衛生洗浄装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記使用者の利用を検知してから所定時間が経過すると、前記流路を満たした前記殺菌水を排出する制御を実行することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の衛生洗浄装置。
【請求項8】
前記制御部は、便器洗浄信号を受信すると、前記流路を満たした前記殺菌水を排出する制御を実行することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の衛生洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図4】
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