説明

衛生洗浄装置

【課題】被乾燥対象に温風を当たりやすくすることにより、乾燥性能の向上を図ること。
【解決手段】本体200の洗浄ノズル104の側方に設けた乾燥装置700は、ケーシング701の湾曲部707に断面が複数の略円形の風向変更柱704を備えた風向変更ユニット710と回動機構711を設置することにより、風路の湾曲部707で曲線流が形成された温風は、風向変更柱704に当たることで、わずかな抵抗により風向を変更することができるとともに、回動機構711により噴出方向を変更することが可能となり、お尻洗浄とビデ洗浄では異なる被乾燥位置に個別に対応することが可能となり、更に風向変更柱704の下流で温風に発生するカルマン渦により温風の温度ムラがなくなるため、乾燥性能を向上することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は乾燥装置を備えた衛生洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の衛生洗浄装置は、便器上に設置した衛生洗浄装置本体の中央に使用者の局部を洗浄する洗浄ノズルと、洗浄ノズルの側方に洗浄水で濡れた局部を温風で乾燥する乾燥装置を配置し、便座に着座した使用者の斜め後方より局部に向けて温風を噴出する構成であり、噴出する温風の噴出方向を制御方法としては、通風路の吹出口の近傍にフィンを配設し、フィンに沿って温風を流すことによって風向を制御している。また、フィンの角度を変更することにより温風の吹出し方向を変更している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図10は、特許文献1に記載された従来の衛生洗浄装置を示すものである。図10に示すように、衛生洗浄装置の本体1の中央部に2本の洗浄ノズル2が設置してあり、前記洗浄ノズル2の側方に乾燥装置3が設置してある。乾燥装置3はファンケーシング4と、シロッコファンからなるファンモータ5と、電熱ヒータ(図示せず)と、ファンケーシング4の吹出口近傍の通風路に配設した複数のフィン6と、フィン6の角度を変更する駆動モータ7から構成されており、駆動モータ7でフィン6の角度を変更することにより温風の吹出方向を変更するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−184088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の構成では、ファンケーシング4の通風路に複数のフィン6を設置した構成であるため、フィン6は通風路の大きな抵抗となるため、温風の風力が低下し、乾燥能力を低下させるものである。
【0006】
また、フィン6は吹出口に設置したものであり、吹出口から吹出す温風はフィン6の方向に倣って直線的に吹出するものとなり、被乾燥対象である肛門や局部の方向に直進することとなる。しかし、被乾燥対象である肛門や局部はお尻の凹部にあるため、斜め後方から噴出する温風はお尻の凸部に遮られ直接当たりにくく、十分な乾燥性能が得にくいものである。
【0007】
また、本先行技術文献の風向変更機能は、主に一箇所に温風が連続して当たることを避けるために風向きを周期的に変更するものであり、結果的に必要以上の広い範囲に温風を送風しており、エネルギー効率と乾燥効率の面から改良の余地があった。
【0008】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、通風路の抵抗を低減し温風の風力の低下を抑制し、しかも温風が噴出後に曲線的に通風することによりお尻の凹部に沿って通風されやすく被乾燥対象に直接当たりやすくするとともに、お尻洗浄またはビデ洗浄で濡れたそれぞれの被乾燥位置に集中的に温風を自動的に供給することにより乾燥性能と使い勝手を向上した快適な衛生洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記従来の課題を解決するために、本発明の衛生洗浄装置は、便器の上面後方に設置する本体と、本体の前面に倒立自在に枢支した便座と、本体の略中央に設け、前記便座に着座した使用者のお尻洗浄とビデ洗浄とを行う進退可能な洗浄ノズルと、本体の洗浄ノズルの側方に設けた乾燥装置と、洗浄ノズルと乾燥装置を操作する操作部と、操作部の操作信号により洗浄ノズルと乾燥装置とを制御する制御部とを含み、乾燥装置は、内部に風路を形成するケーシングとファンモータとヒータユニットと断面が略円形の風向変更柱を複数個備えた風向変更ユニットと、風向変更ユニットを所定角度に回動する回動機構とを備え、ケーシングは、本体内に吸気口を開口し、本体の前面下部に噴出口を開口し、吸気口側から、ファンモータと、ヒータユニットと、風向変更ユニットとを順次配設し、ケーシングは、少なくとも前記ヒータユニットの配設位置より噴出口側の風路に、本体の側方より中央に向かう湾曲部を形成し、風向変更ユニットは、湾曲部に設置し、制御部が前記回動機構を制御して風向変更ユニットの角度を変更することにより、噴出口から噴出する温風の噴出方向を変更することが可能としたものである。
【0010】
これにより、ファンモータにより送風され、ヒータユニットで加熱された温風は、風路の湾曲部で曲線流が形成され、曲線流が断面略円形の風向変更柱に当たることにより、風向変更柱の下流にカルマン渦が発生することにより、逆方向の湾曲成分が発生するために、温風は風向変更柱の下流側は上流側より前方向に風向が変更されるとともに、温風自体に渦流成分が付加されることにより、噴出口より噴出した後も風向変更成分を維持することが可能となり、更にカルマン渦により温風温度の均熱化が可能となり、略円形の風向変更柱のわずかな抵抗により風向を変更することができるとともに、噴出後の温風はお尻の凹部に沿って流れやすくなり、更に温風温度の温度ムラがなくなるため、乾燥性能を向上することができる。また、前記風向変更ユニットの角度を変更することにより、温風の噴出方向を変更することが可能となるので、洗浄水が付着する位置(被乾燥位置)がお尻洗浄とビデ洗浄とで異なることに対応して、最適な噴出方向に温風を噴出することが可能となるため、乾燥性能を一層向上することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の衛生洗浄装置は、乾燥装置の乾燥性能と使い勝手を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態1における衛生洗浄装置を便器上に設置した状態の外観を示す斜視図
【図2】本発明の実施の形態1における衛生洗浄装置の本体のカバーをはずした状態の平面図
【図3】本発明の実施の形態1における乾燥装置の外観の斜視図
【図4】本発明の実施の形態1における乾燥装置を側方から見た断面図
【図5】本発明の実施の形態1における乾燥装置の内部を示す平面図
【図6】本発明の実施の形態1における風向変更柱付近の温風の流れを示す模式図
【図7】本発明の実施の形態1における衛生洗浄装置の温風の流れを示す模式図
【図8】本発明の実施の形態2における乾燥装置を側方から見た断面図
【図9】本発明の実施の形態2における乾燥装置の内部を示す平面図
【図10】従来の衛生洗浄装置の平面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
第1の発明は、便器の上面後方に設置する本体と、前記本体の前面に倒立自在に枢支した便座と、前記本体の略中央に設け、前記便座に着座した使用者のお尻洗浄とビデ洗浄とを行う進退可能な洗浄ノズルと、前記本体の前記洗浄ノズルの側方に設けた乾燥装置と、前記洗浄ノズルと前記乾燥装置を操作する操作部と、前記操作部の操作信号により前記洗浄ノズルと乾燥装置とを制御する制御部とを含み、前記乾燥装置は、内部に風路を形成す
るケーシングとファンモータとヒータユニットと断面が略円形の風向変更柱を複数個備えた風向変更ユニットと、前記風向変更ユニットを所定角度に回動する回動機構とを備え、前記ケーシングは、前記本体内に吸気口を開口し、前記本体の前面下部に噴出口を開口し、前記吸気口側から、前記ファンモータと、前記ヒータユニットと、前記風向変更ユニットとを順次配設し、前記ケーシングは、少なくとも前記ヒータユニットの配設位置より噴出口側の風路に、前記本体の側方より中央に向かう湾曲部を形成し、前記風向変更ユニットは、前記湾曲部に設置し、前記制御部が前記回動機構を制御して前記風向変更ユニットの角度を変更することにより、前記噴出口から噴出する温風の噴出方向を変更することが可能としたものである。
【0014】
これにより、ファンモータにより送風され、ヒータユニットで加熱された温風は、風路の湾曲部で曲線流が形成され、曲線流が断面略円形の風向変更柱に当たることにより、風向変更柱の下流にカルマン渦が発生することにより、逆方向の湾曲成分が発生するために、温風は風向変更柱の下流側は上流側より前方向に風向が変更されるとともに、温風自体に渦流成分が付加されることにより、噴出口より噴出した後も風向変更成分を維持することが可能となり、更にカルマン渦により温風温度の均熱化が可能となり、略円形の風向変更柱のわずかな抵抗により風向を変更することができるとともに、噴出後の温風はお尻の凹部に沿って流れやすくなり、更に温風温度の温度ムラがなくなるため、乾燥性能を向上することができる。また、前記風向変更ユニットの角度を変更することにより、温風の噴出方向を変更することが可能となるので、洗浄水が付着する位置(被乾燥位置)がお尻洗浄とビデ洗浄とで異なることに対応して、最適な噴出方向に温風を噴出することが可能となるため、乾燥性能を一層向上することができる。
【0015】
第2の発明は、特に、第1の発明において、前記制御部は、前記お尻洗浄後の乾燥に対応する前記風向変更ユニットの第1の所定角度と、前記ビデ洗浄後の乾燥に対応する前記風向変更ユニットの第2の所定角度とを予め備え、使用者がお尻洗浄の後に乾燥の操作を行った場合は、前記制御部は前記回動機構を駆動して前記風向変更ユニットを前記第1の所定角度に制御し、使用者がビデ洗浄後に乾燥の操作を行った場合は、前記制御部は前記回動機構を駆動して前記風向変更ユニットを前記第2の所定角度に制御することにより、お尻洗浄とビデ洗浄により洗浄水により濡れる位置が異なることを認知して、温風の噴出し方向を自動的に変更することで乾燥効率と使い勝手を向上することができる。
【0016】
第3の発明は、特に第2の発明において、使用者がお尻洗浄またはビデ洗浄に引き続き、所定時間以内にもう一方の洗浄を開始し、両方の洗浄が終了した後、使用者が乾燥の操作を行った場合は、前記制御部は前記第1の所定角度と前記第2の所定角度を周期的に変化するように前記回動機構を駆動することにより、お尻洗浄とビデ洗浄で濡れた広い範囲を自動的に均等に乾燥することができるので、使い勝手を一層向上することができる。
【0017】
第4の発明は、特に第1〜3のいずれか1つの発明において、前記操作部は調整スイッチを備え、使用者が前記調整スイッチを操作することにより、前記風向変更ユニットの角度を任意に変更可能とすることにより、使用者の体形や好みにより、温風の噴出方向を任意の方向に微調整することができ、より乾燥効率と使い勝手を向上することができる。
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0019】
(実施の形態1)
図1は本実施の形態における衛生洗浄装置を便器上に設置した状態の外観の斜視図を示し、図2は衛生洗浄装置の本体のカバーをはずした状態の平面図を示し、図3は本発明の実施の形態1における乾燥装置の外観の斜視図を示すものである。
【0020】
<1>衛生洗浄装置の構成
図1に示すように、衛生洗浄装置100は、本体200、便蓋300、便座400により構成され、本体200、便蓋300、便座400は一体で構成され便器600の上面に設置される。
【0021】
本体200には、便蓋300および便座400が便座便蓋回動機構(図示せず)を介して開閉可能に取り付けられている。図1に示すように便蓋300を開放した状態においては、便蓋300は衛生洗浄装置100の最後部に位置するように起立する。また、便蓋300を閉成すると便座400の上面を隠蔽する。便座400は便座ヒータ(図示せず)を内蔵しており、便座の着座面が快適な温度になるように加熱する。
【0022】
なお、本実施の形態においては衛生洗浄装置100の本体200の設置側を後方、便座400の設置側を前方として各要素の配置を説明する。
【0023】
また図1に示すように、本体200の側部には突出部201が設けてあり、突出部201の上面には複数の操作スイッチ202を備えた操作部203が設けられている。また本体200の前面コーナー部には着座センサ204が設置してある。この着座センサ204は反射型の赤外線センサであり、センサから赤外線を放射し、人体で反射した赤外線を検出することにより、便座400に着座した使用者を検知する。
【0024】
図2は本体200のカバーを取り外した状態を示すものであり、本体200の内部には、本体200の中央部には洗浄ノズルユニット103が設置してあり、本体200の一方の側部には、洗浄水供給機構101と熱交換器102等が設置してある。また、本体200の他方の側部には乾燥装置700と脱臭装置800と制御部900等が設置してある。
【0025】
洗浄水供給機構101と熱交換器102は洗浄ノズルユニット103に接続されており、水道配管から供給される洗浄水を熱交換器102で加熱した温水を洗浄ノズルユニット103に供給し、洗浄ノズルユニット103から使用者の局部に向けて温水を噴出し、使用者の局部を洗浄するものである。
【0026】
洗浄ノズルユニット103は、お尻を洗浄するお尻洗浄ノズル部と女性の局部を洗浄するビデノズル部を有する洗浄ノズル104と、洗浄ノズルを本体200内に収容した収納位置と本体200から突出して洗浄動作を行う洗浄位置との間を進退移動する駆動手段(図示せず)と、熱交換器102からの洗浄水を洗浄ノズルに切換えて供給する切換弁(図示せず)等が一体に組み込まれている。そのため、洗浄ノズルユニット103の先端部(前方)は幅が狭いが後方部幅が広くなっている。そして、洗浄ノズルユニット103は、使用者の局部洗浄を正確に行うために本体200内部の中央に配置されている。
【0027】
乾燥装置700は、洗浄ノズルユニット103に近接して設置されている。乾燥装置700の噴出口706は、洗浄ノズルユニット103と同様に使用者の局部を効果的に乾燥するため可能な限り本体200の中央に配置することが望ましく、洗浄ノズルユニット103の横幅に対応して、ケーシングの前方を中央に向けて湾曲させた形状を成している。
【0028】
乾燥装置700の後方には制御部900が、側方には脱臭装置800が設置されている。脱臭装置800は、便器600内の臭気を吸引するために、吸込口801を本体200の中央に向けて湾曲させて設けてある。
【0029】
制御部900は、衛生洗浄装置100の各機能の操作を行う操作スイッチ202および着座センサ204から送信される信号に基づいて、衛生洗浄装置100の各部の動作を制
御する。
【0030】
<2>乾燥装置の構成
図3は本実施の形態1における乾燥装置の外観を示す斜視図であり、図4は本実施の形態における乾燥装置の側方から見た断面図であり、図5は乾燥装置の内部構造を示す平面図であり、図6は風向変更柱付近の温風の流れを示す模式図であり、図7は本実施の形態における衛生洗浄装置の温風の流れを示す模式図である。
【0031】
図3、図4、図5に示すように、乾燥装置700は、内部に風路を形成するケーシング701と、ファンモータ702と、ヒータユニット703と、風向変更柱704と、乾燥シャッター708を主な構成部材として構成されている。
【0032】
ケーシング701は難燃性樹脂で成型した上ケース701aと下ケース701bを上下に結合して内部にトンネル状の空洞部を形成しており、後端は略正方形の吸気口705が開口しており、前端は略長方形の噴出口706が開口している。ケーシング701の吸気口705は衛生洗浄装置100の本体200内に配置し、噴出口706は本体200の前面下部に配置されている。
【0033】
図3、図4に示すように、乾燥装置700の噴出口706には開閉自在な乾燥シャッター708を備えており、乾燥装置700を使用しないときは、乾燥シャッター708は閉成して排便時の汚物や洗浄水が噴出口706に直接かからない構成となっており、乾燥装置700の使用時には風圧により開放される構成となっている。また、乾燥シャッター708は汚れが付着した時には洗浄ができるよう、着脱可能な構成となっている。
【0034】
図に示すように、ケーシング701の内部には、吸気口705側からファンモータ702と、ヒータユニット703と、風向変更柱704とが順次配置されている。ケーシング701で形成される風路はファンモータ702の設置位置より噴出口706側は断面積が順次減少するように形成されている。
【0035】
図4に示すように、立面的にはファンモータ702の設置位置より噴出口706側は、下方に向かって傾斜して噴出口706の直近で略水平となる風路を形成している。また、図5に示すように、平面的にはヒータユニット703の設置位置より噴出口706側は、本体200の側方より中央に向かって湾曲した湾曲部707を形成しており、風向変更柱704は湾曲部707に設置されている。
【0036】
ケーシング701の吸気口705に近接して軸流式のファンモータ702が配置してある。ファンモータ702は、上ケース701aと下ケース701bで水平に挟持されている。上ケース701aと下ケース701bは共にファンモータ702の設置位置より噴出口706側で下方に向かって折り曲がっており、特に上ケース701aの方が下ケース701bよりも大きく折り曲がっている。下ケース701bのファンモータ702の設置位置の底面は、噴出口706の上端よりも上側に位置する構成になっている。
【0037】
折り曲がった上ケース701aと下ケース701bの間にヒータユニット703が設置してある。ヒータユニット703はファンモータ702側の開口面積の方が噴出口706側より大きくなっている。
【0038】
下ケース701bの湾曲部707には、直径約2mmの風向変更柱704が約6mmの等間隔で4本垂直方向に一体成型で立設されている。また、4本の風向変更柱704は、洗浄ノズル103に近い中央側がヒータユニット703寄りになるように、噴出口706に対して約30度の角度を成して風向変更柱704が一直線上に並ぶように配置されてい
る。
【0039】
ヒータユニット703は、加熱手段である約400Wのヒータ線(図示せず)と、110℃で動作する温度ヒューズ703aと、86℃で動作するサーモスタットで構成されており、外郭をカバーマイカ703cで覆われている。
【0040】
螺旋状に形成したヒータ線(図示せず)はカバーマイカ703cの内部の外周近傍に配置されており、ヒータ線(図示せず)の螺旋の中央部には、ファンモータ702に近い位置となる後方に温度ヒューズ703aを、前方にサーモスタット703bが配置してある。ヒータ線(図示せず)と温度ヒューズ703aとサーモスタット703bは電気的に直列に接続されている。
【0041】
温度ヒューズ703aとサーモスタット703bは内部の温度が異常に上昇するのを防止する温度過昇防止手段である。ファンモータ702が故障してロック状態となった場合等で異常上昇が発生した場合、第1のステップとして復帰型の温度過昇防止手段であるサーモスタット703bが先に作動してヒータへの通電を遮断するが、例えば、サーモスタット703bの故障等で作動しない場合には、第2ステップとして非復帰型の温度ヒューズ703aが溶断してヒータ線(図示せず)への通電を遮断することにより、発煙や発火が発生しないようになっている。
【0042】
以上のように構成された衛生洗浄装置について、以下その動作、作用を説明する。
【0043】
使用者がトイレ室に入室し、着座センサ204が便座400に着座した使用者を検知すると、操作スイッチ201により洗浄機能と乾燥機能の操作が可能となる。
【0044】
使用者が用便終了後に、操作スイッチ202により洗浄操作を行うことにより、洗浄ノズル104が本体200より進出し、洗浄水を噴出することにより使用者の局部を洗浄し、洗浄終了の操作により局部の洗浄は終了し、洗浄ノズル104は本体200内に収納される。
【0045】
次に、使用者が操作手段である操作スイッチ202により乾燥操作を行うと、制御部900は乾燥装置700のファンモータ702とヒータユニット703への通電を制御して乾燥動作を開始する。ファンモータ702が吸気口705より吸気した空気はヒータユニット703へ送風され、ヒータユニット703で加熱された温風は噴出口706より使用者の局部に向かって噴出し、洗浄で濡れた使用者の局部を乾燥する。
【0046】
図6、7は温風の流れと目標位置Aを示している。風路の湾曲部707で曲線流が形成され、曲線流が風向変更柱704に当たることにより、風向変更柱704の下流にカルマン渦が発生する。カルマン渦により温風には逆方向の湾曲成分が発生し、温風は風向変更柱704の下流側は上流側より湾曲度が軽減されるとともに、温風自体に渦流成分が付加される。渦流成分が付加されることにより、噴出口706より噴出した後も風向変更成分を維持することとなり、噴出後の温風は湾曲部707の湾曲とは逆方向のカーブを描くように目標位置に向かって流れる。
【0047】
温風が逆方向のカーブを描くように流れることにより、着座した使用者の後方の中央寄りから前方に向かって流れることとなり、温風が使用者の局部がある臀部の凹部に沿って流れやすく、乾燥性能の向上に寄与する。
【0048】
本実施の形態においては、噴出口706より噴出した温風の目標位置Aは、図7に示すように便座400の開口後端からの距離が約65mmから約25mmの範囲を設定してお
り、使用者が便座400に着座した場合の局部の位置に対応している。
【0049】
以上のように本実施の形態においては、4本の風向変更柱704を湾曲部707に一直線上に並ぶように設置したことにより、風向変更柱704のわずかな抵抗により風向を変更することができるとともに、湾曲成分を維持した噴出後の温風はお尻の凹部に沿って流れやすくなり、更に温風温度の温度ムラがなくなるため、乾燥性能を向上することができる。
【0050】
なお、本実施の形態においては、湾曲部707に4本の風向変更柱704を設置したが、設置本数は4本に限るものではなく、1本でも風向変更の効果を発揮することは可能であるので、風向変更柱704の数と太さは随時変更して実施することが可能である。
【0051】
また、本実施の形態においては、4本の風向変更柱704を噴出口706に対して約30度傾斜して設置したが、設置角度は30度に限定されるものではなく、便座400の形状の違い等により目標位置が異なる場合は、他の設置角度を採用することが可能である。また、ケーシング701の形状が異なる場合は、別の設置角度の検討が必須である。
【0052】
また、本実施の形態においては4本の風向変更柱704の太さは全て等しい直径2mmとしたがこれに限るものではなく、これらの中の少なくとも1本の直径を異なるものとしてもよい。特に湾曲部707の最も中央側に配置する風向変更柱704の直径を大きくすることにより、中央側の風向が大きく変更されるため、噴出後の温風を集中させることができるため、目標位置に精度よく温風を到達させることができる。
【0053】
また、本実施の形態においては、風向変更柱704は全てケーシング701の下ケース701bに一体で形成したが、これに限るものではなく、上ケース701bと一体に形成することも可能であり、またケーシング701とは別体で形成し、ケーシング701に設置してもよい。
【0054】
(実施の形態2)
図8は本発明の実施の形態2における乾燥装置の側面から見た断面図であり、図9は乾燥装置の内部構造を示す平面図である。
【0055】
本実施の形態が実施の形態1と異なるところは、4本の直径約2mmの風向変更柱704を約6mmの等間隔で平板状の基盤709に一体に設けた風向変更柱ユニット710を形成し、下ケース701bの下側にモータ(図示せず)と減速機構(図示せず)と回転角度検出手段(図示せず)を備えた回動機構711設置し、下ケース701bに設けた開口(図示せず)を介して風向変更ユニット710の回動軸(図示せず)を回動機構711に締結し、回動機構711により風向変更ユニット710回動することで風向変更柱704の角度を変更することが可能な構成としことである。これにより、制御部900で回動機構711を制御することにより温風の噴出方向を自在に変更することを可能とした。
【0056】
なお、実施の形態1と同一符号のものは同一構造を有し、説明は省略する。
【0057】
以上のように構成された本実施の形態における衛生洗浄装置について、以下その動作、作用を説明する。
【0058】
使用者が、洗浄ノズルユニット104のお尻洗浄ノズル部を使用するお尻洗浄を終了した後、操作スイッチ202により乾燥操作を行うと、制御部900は乾燥装置700のファンモータ702とヒータユニット703への通電を制御し乾燥動作を開始する。ファンモータ702が吸気口701より吸気した空気はヒータユニット703へ送風され、ヒー
タユニット703で加熱された温風は噴出口706より噴出され、洗浄で濡れた使用者の局部を乾燥する。
【0059】
このとき、制御部900は予め設定した制御条件により、風向変更ユニット710の風向変更柱704が噴出口706に対して約30度の角度を成すように回動機構711の回転角度検出手段の信号により角度を制御し、噴出口706より噴出した温風は、実施の形態1と同様に、図7に示すように便座400の開口後端からの距離が約65mmから約25mmの範囲目標位置に向けて温風を噴出する。
【0060】
一方、使用者が、洗浄ノズルユニット104のビデ洗浄ノズル部を使用するビデ洗浄を終了した後、操作スイッチ202により乾燥操作を行うと、制御部900は予め設定した制御条件により、風向変更ユニット710の風向変更柱704が噴出口706に対して約29度の角度を成すように回動機構711の回転角度検出手段の信号により角度を制御し、噴出口706より噴出した温風は、お尻洗浄の場合より約15mm前方となる便座400の孔後端からの距離が約80mmから約25mmの範囲目標位置に向けて温風を噴出する。
【0061】
また、使用者がお尻洗浄またはビデ洗浄を終了した後、所定時間以内(本実施の形態においては5秒間)に連続してもう一方の洗浄を開始し、お尻洗浄またはビデ洗浄を連続して行った後に、操作スイッチ201により乾燥操作を行うと、制御部900は回動機構711を29度から30度の範囲で周期的に回動させ、温風をお尻洗浄とビデ洗浄の両方の目標位置に向けて周期的に変動させながら噴出する。
【0062】
また、操作部203に設けた調整スイッチ(図示せず)を操作することにより、使用者が任意に風向変更ユニット710の角度を変更する調整機能を備えており、使用者の体形や好みにより、温風の噴出方向を任意の方向に微調整することができる。
【0063】
以上のように、本実施の形態2における衛生洗浄装置は、お尻洗浄とビデ洗浄により洗浄水により濡れる位置が異なることを認知して、温風の噴出し方向を自動的に変更することで乾燥効率と使い勝手を向上することができる。
【0064】
また、使用者の体形や好みに合わせて温風の噴出し方向を変更できるので、より乾燥効率を高めることができる。
【0065】
なお、本実施の形態においては、風向変更柱ユニット710に4本の風向変更柱704を設置したが、設置本数は4本に限るものではなく、1本でも風向変更の効果を発揮することは可能であるので、風向変更柱704の数と太さは随時変更して実施することが可能である。
【0066】
また、本実施の形態においては4本の風向変更柱704の太さは全て等しい直径2mmとしたがこれに限るものではなく、これらの中の少なくとも1本の直径を異なるものとしてもよい。特に湾曲部707の最も中央側に配置する風向変更柱704の直径を大きくすることにより、中央側の風向が大きく変更されるため、噴出後の温風を集中させることができるため、目標位置に精度よく温風を到達させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
以上のように、本発明にかかる衛生洗浄装置は、わずかな抵抗により風向の変更が可能となるので、他の送風機器の用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0068】
100 衛生洗浄装置
104 洗浄ノズル
200 本体
400 便座
600 便器
700 乾燥装置
701 ケーシング
702 ファンモータ
703 ヒータユニット
704 風向変更柱
705 吸気口
706 噴出口
707 湾曲部
710 風向変更ユニット
711 回動機構
900 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器の上面後方に設置する本体と、
前記本体の前面に倒立自在に枢支した便座と、
前記本体の略中央に設け、前記便座に着座した使用者のお尻洗浄とビデ洗浄とを行う進退可能な洗浄ノズルと、
前記本体の前記洗浄ノズルの側方に設けた乾燥装置と、
前記洗浄ノズルと前記乾燥装置を操作する操作部と、
前記操作部の操作信号により前記洗浄ノズルと乾燥装置とを制御する制御部とを含み、
前記乾燥装置は、内部に風路を形成するケーシングとファンモータとヒータユニットと断面が略円形の風向変更柱を複数個備えた風向変更ユニットと、前記風向変更ユニットを所定角度に回動する回動機構とを備え、
前記ケーシングは、前記本体内に吸気口を開口し、前記本体の前面下部に噴出口を開口し、
前記吸気口側から、前記ファンモータと、前記ヒータユニットと、前記風向変更ユニットとを順次配設し、
前記ケーシングは、少なくとも前記ヒータユニットの配設位置より噴出口側の風路に、前記本体の側方より中央に向かう湾曲部を形成し、
前記風向変更ユニットは、前記湾曲部に設置し、
前記制御部が前記回動機構を制御して前記風向変更ユニットの角度を変更することにより、前記噴出口から噴出する温風の噴出方向を変更することが可能な衛生洗浄装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記お尻洗浄後の乾燥に対応する前記風向変更ユニットの第1の所定角度と、前記ビデ洗浄後の乾燥に対応する前記風向変更ユニットの第2の所定角度とを予め備え、
使用者がお尻洗浄の後に乾燥の操作を行った場合は、前記制御部は前記回動機構を駆動して前記風向変更ユニットを前記第1の所定角度に制御し、
使用者がビデ洗浄後に乾燥の操作を行った場合は、前記制御部は前記回動機構を駆動して前記風向変更ユニットを前記第2の所定角度に制御することを特徴とする請求項1に記載の衛生洗浄装置。
【請求項3】
使用者がお尻洗浄またはビデ洗浄に引き続き、所定時間以内にもう一方の洗浄を開始し、両方の洗浄が終了した後、使用者が乾燥の操作を行った場合は、
前記制御部は前記第1の所定角度と前記第2の所定角度を周期的に変化するように前記回動機構を駆動する請求項2に記載の衛生洗浄装置。
【請求項4】
前記操作部は調整スイッチを備え、
使用者が前記調整スイッチを操作することにより、前記風向変更ユニットの角度を任意に変更可能な請求項1〜2のいずれか1項に記載の衛生洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−99254(P2011−99254A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−254668(P2009−254668)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】