説明

衛生洗浄装置

【課題】使用者の局部に向けて水を吐出する衛生洗浄装置であって、節水効果と洗浄能力とをより高次元で両立することができる衛生洗浄装置を提供すること。
【解決手段】この衛生洗浄装置は、周期的に圧力が変動して脈動する水を吐水孔に向けて送り込むことで、吐水孔から脈動する水を吐出するように構成されると共に、ノズルから吐出される水の圧力が高い脈動のピークにおいて、ノズルから吐出される水に混入する空気の量が極小となるように調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体の局部を洗浄する衛生洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような衛生洗浄装置においては、洗浄水による連続的な洗浄が求められる通常のお尻洗浄やビデ洗浄における洗浄水水量を減少することができると共に、洗浄水吐水を間欠的なものとしたことに伴う不具合を低減することができる吐水方式が提案されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1に記載された衛生洗浄装置は、給水源より得られる吐水圧よりも高い圧力を間欠的に発生する圧力発生手段を備えたことを特徴とする。このように構成することで、高圧力での洗浄水吐水を間欠的に発生させ、通常の局部洗浄時において洗浄水水量を低減できるものとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−90151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の技術は、脈動吐水を発生させる基本的な構成を有するものであって、一定の節水効果を奏するものとして有用なものである。特に、吐水に気泡を混入させることで見かけ上の体積を大きくする技術は、より節水効果を高めるものとして有用なものである。
【0006】
しかしながら、節水性能をより追求しようとすると、従来の技術では対応力に限界があることが本発明者らの検討により明らかになった。従来の技術は、脈動吐水に気泡を混入させることで、節水効果を最大限に発生させるものであるため、更に節水効果を高めようとすれば気泡混入量をより高めることが必要になる。
【0007】
ところがこのように、更に節水効果を高めることを意図して気泡混入量を高めると、吐水密度が過度に減少し、人体に着水する際の荷重が減りすぎてしまうことから、局部の汚れを落とす洗浄能力が十分に確保できなくなる場合がある。
【0008】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、人体の局部を洗浄する衛生洗浄装置であって、節水効果と洗浄能力とをより高次元で両立することができる衛生洗浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明に係る衛生洗浄装置は、使用者の局部に向けて水を吐出する衛生洗浄装置であって、水を吐出する吐水孔が形成されたノズルと、前記吐水孔から使用者の局部に向けて水を吐出するための吐水手段と、前記吐水手段が吐出する水に混入する空気の量を調整するための空気調整手段と、を備える。前記吐水手段は、周期的に圧力が変動して脈動する水を前記吐水孔に向けて送り込むことで、前記吐水孔から脈動する水を吐出するように構成されている。前記空気調整手段は、前記ノズルから吐出される水の圧力が高い脈動のピークにおいて、前記ノズルから吐出される水に混入する空気の量が極小となるように調整する。
【0010】
本発明では、吐水手段を、周期的に圧力が変動して脈動する水を吐水孔に向けて送り込むことで、吐水孔から脈動する水を吐出するように構成しているので、吐出された後の水の進行速度が高い部分と低い部分とが交互に存在するように吐水することができる。従って、吐出された後の水は、速度差による追いつき現象によって水槐を形成する。本発明では、ノズルから吐出される水に空気を混入して気泡混入水を吐出しているので、吐出された後に形成される水槐も気泡混入水によって見かけ上の体積を大きくすることができる。
【0011】
更に本発明における空気調整手段は、ノズルから吐出される水の圧力が高い脈動のピークにおいて、ノズルから吐出される水に混入する空気の量が極小となるように調整するものである。このように脈動吐水のピークにおいて、その吐水に混入する空気の量が極小となるようにすることで、密度が高く速度の高い水槐が形成され、着水対象である局部に向うことになる。このように密度も速度も高い水槐が局部に着水することで、衝撃力の高い着水が可能なものとなり、局部に付着している汚れを着水の衝撃力によって確実に落とすことができる。
【0012】
このように本発明では、見かけ上の体積を大きくした気泡混入水による水槐と、密度も速度も高い水槐とを混在させて局部に着水させることができるので、使用水量を抑制しつつ、広い面積への着水と洗浄力の高い着水とを両立させることができる。
【0013】
また本発明に係る衛生洗浄装置では、前記ノズルからは、空気の混入量が多い第一水槐と、空気の混入量が少ない第二水槐とが交互に形成されるように吐出されるものであって、前記第一水槐の速度よりも前記第二水槐の速度が高く、先に進行する前記第一水槐を、後に進行する前記第二水槐が突き抜けて使用者の局部に到達することも好ましい。
【0014】
この好ましい態様では、空気の混入量が多い第一水槐を、空気の混入量が少ない第二水槐が突き抜けるので、第一水槐の進行方向に直交する断面積を拡大することができる。従って、第一水槐の着水領域を広げることができ、節水化と広い領域の洗浄とを両立させることができる。
【0015】
また本発明に係る衛生洗浄装置では、前記空気調整手段は、前記吐水孔近傍において一時的に水を滞留させ、その滞留させた水にエジェクタ効果によって空気を混入させるものであって、前記ノズルから吐出される水の圧力が所定圧力を超えて極大化するように調整することでエジェクタ効果を一時的に低減させ、このエジェクタ効果の一時的な低減によって前記ノズルから吐出される水への空気の混入量を極小化させることも好ましい。
【0016】
この好ましい態様では、エジェクタ効果によって気泡混入水を生成するので、空気ポンプといった手段を用いることなく、見かけ上の体積が大きい水槐を形成して局部に着水させることができる。更に、ノズルから吐出される水の圧力が所定圧力を超えて極大化するように調整することでエジェクタ効果を一時的に低減させ、このエジェクタ効果の一時的な低減によってノズルから吐出される水への空気の混入量を極小化させるので、エジェクタ効果の調整によって空気の混入量が少ない第二水槐を形成することができる。このように、エジェクタ効果を利用して気泡混入水を生成すると共に、そのエジェクタ効果を吐水圧力の調整という簡易な手法で調整することで空気の混入量を減じることができるので、簡易な手段で確実に節水化と広い領域の洗浄とを両立させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、人体の局部を洗浄する衛生洗浄装置であって、節水効果と洗浄能力とをより高次元で両立することができる衛生洗浄装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態である衛生洗浄装置を含む温水洗浄便座を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態である衛生洗浄装置の機能的な構成を示すブロック構成図である。
【図3】図2に示すノズルの外観を示す斜視図である。
【図4】図2に示すビデ洗浄旋回室の平面視断面図である。
【図5】図2に示すビデ洗浄旋回室の側面視断面図である。
【図6】図5に示すビデ洗浄旋回室に第一給水路から洗浄水を供給した様子を示す側面視断面図である。
【図7】図6に示す場合において、吐水圧と空気混入量との関係を示す図である。
【図8】図6に示す場合において、吐水孔から吐出された水の状態を模式的に示す図である。
【図9】吐水圧を抑制した場合の、吐水孔から吐出された水の状態を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0020】
本発明の実施形態である衛生洗浄装置を含む温水洗浄便座について図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態である衛生洗浄装置を含む温水洗浄便座を示す概略斜視図である。図1に示されるように、温水洗浄便座WA(衛生洗浄装置)は、大便器CBに戴置されて使用されるものである。温水洗浄便座WAは、本体WAaと、便座WAbと、便蓋WAcと、操作部10とを備えている。操作部10には操作パネルが設けられていて、操作パネルの操作に応じた操作信号が本体WAaに送信される。
【0021】
例えば、操作パネルの「大洗浄」「小洗浄」といった表示がされた部分を操作すると、「大洗浄」「小洗浄」に対応する洗浄動作がなされるように指示する操作信号が本体WAaに送信される。本体WAaは、このような操作信号が送信されると、大便器CBのボウル面CBaを洗浄するために洗浄水をボウル面CBaに流す動作を実行する。
【0022】
また、例えば、操作パネルの「おしり洗浄」「ビデ洗浄」といった表示がされた部分を操作すると、「おしり洗浄」「ビデ洗浄」に対応する洗浄水の吐出がなされるように指示する操作信号が本体WAaに送信される。本体WAaは、このような操作信号が送信されると、ノズル18を繰り出して洗浄水を吐出する動作を実行する。
【0023】
ノズル18は、便座WAbに着座している使用者の肛門近傍や膣口近傍や尿道口近傍を洗浄するために洗浄水を吐出するものである。ノズル18には、ビデ洗浄吐水孔181とおしり洗浄吐水孔182とが設けられている。使用者が操作パネルの「おしり洗浄」と表示された部分を操作すると、おしり洗浄吐水孔182から洗浄水が吐出される。また使用者が操作パネルの「ビデ洗浄」と表示された部分を操作すると、ビデ洗浄吐水孔181から洗浄水が吐出される。
【0024】
本実施形態の場合、「ビデ洗浄」には2種類あって、「スポット洗浄」と「ワイド洗浄」とが切り替えられるようになっている。「ビデ洗浄」の「スポット洗浄」が操作されると、ビデ洗浄吐水孔181から比較的狭い範囲に集約された吐水がなされる。一方、「ビデ洗浄」の「ワイド洗浄」が操作されると、ビデ洗浄吐水孔181から比較的広い範囲に広がる吐水がなされる。
【0025】
引き続いて、ノズル18から吐出される洗浄水の態様を切り替える機構について、図2を参照しながら説明する。図2は、衛生洗浄装置としての温水洗浄便座の機能的な構成を示すブロック構成図であって、ノズル18から吐出される洗浄水の態様を切り替える機構を主に記載した図である。図2に示されるように、温水洗浄便座WAは、操作部10と、制御部12と、電磁弁14(吐水手段)と、脈動発生部15(空気調整手段)と、流路切替弁16(吐水手段)と、ノズル18(一部が空気調整手段としても機能する)とを備えている。図2において、各ブロックを破線で結んでいる場合は信号の授受があることを示し、各ブロックを実線で結んでいる場合は水の流れがあることを示している。
【0026】
操作部10は、ビデ洗浄機能やおしり洗浄機能の実行にあたって、使用者の操作を受け付けて、その操作に応じた操作信号を制御部12に送信する部分である。制御部12は、操作部10から入力される操作信号に応じて、電磁弁14、脈動発生部15及び流路切替弁16に所定の動作信号を出力する部分である。制御部12は、CPUといった演算素子と、RAMやROMといった記憶素子と、信号を送受信するためのインターフェイスとを備えている。
【0027】
電磁弁14は、制御部12から入力される動作信号に応じて、弁体を弁座から離脱させ給水源から供給される洗浄水を下流側に流したり、弁体を弁座に当接させて給水源から供給される洗浄水を止めたりする役割を果たす弁である。電磁弁14の下流側には、流路切替弁16が設けられている。
【0028】
脈動発生部15は、ノズル18に送り込む水の水圧を変動させ、ノズル18から吐出される水を脈動させる部分である。具体的には、脈動発生部15には、円柱状の空間を有するシリンダが設けられている。シリンダ内には、ピストンが設けられている。ピストンには、Oリングが装着されている。ピストンとシリンダとで画された空間が加圧室となる。シリンダには、洗浄水入口が設けられている。そして、電磁弁14から繋がる給水管路が洗浄水入口に接続され、加圧室に水を流入させることができるようになっている。洗浄水入口には、アンブレラパッキンが設けられ、給水管路への逆流を防止している。また、シリンダには、洗浄水出口が設けられている。洗浄水出口は、流路切替弁16に繋がる給水管路と接続され、シリンダ内で加圧された水は、給水管路に送り出される。
【0029】
制御部12からの指令により、脈動発生部15のモーターに通電されると、回転軸が回転し、ピストンが上下に往復運動する。すなわち、ピストンが下死点から上死点に移動し、水を加圧して給水管路に向けて押す動作と、ピストンが上死点から下死点に復帰し、水をシリンダ内に流入させる動作とが繰り返される。これにより、給水管路に給水される洗浄水には、周期的な圧力変動すなわち脈動が発生する。
【0030】
流路切替弁16は、電磁弁14が開かれたことで流れてくる洗浄水を、下流側に設けられている複数の流路のいずれかに流すために流路を切り替える弁である。本実施形態の場合、流路切替弁16の下流側には、三つの流路である、第一給水路185と、第二給水路186と、第三給水路187とが繋がっている。従って、流路切替弁16は、電磁弁14側から流れてくる洗浄水を、第一給水路185、第二給水路186、及び第三給水路187のいずれか一つの流路に流すように弁体を切り替えるものである。流路切替弁16の下流側には、ノズル18が設けられている。
【0031】
ノズル18は、電磁弁14が開かれたことで下流側に流れ、流路切替弁16によって振り分けられた洗浄水を、ビデ洗浄吐水(膣口近傍及び尿道口近傍を洗浄するための吐水)又はおしり洗浄吐水(肛門近傍を洗浄するための吐水)に切り替えて吐出するものである。ノズル18には、ビデ洗浄吐水を行うためのビデ洗浄吐水孔181が連通されてなるビデ洗浄旋回室183と、おしり洗浄吐水を行うためのおしり洗浄吐水孔182が連通されてなるおしり洗浄旋回室184とが形成されている。
【0032】
ビデ洗浄旋回室183には、第一給水路185及び第二給水路186が繋がっている。また、おしり洗浄旋回室184には、第三給水路187が繋がっている。従って、流路切替弁16によって洗浄水が第一給水路185又は第二給水路186に流されると、その洗浄水は、ビデ洗浄旋回室183に供給されビデ洗浄吐水孔181から吐出される。一方、流路切替弁16によって洗浄水が第三給水路187に流されると、その洗浄水は、おしり洗浄旋回室184に供給されおしり洗浄吐水孔182から吐出される。
【0033】
続いて、ノズル18について、図3を参照しながら説明する。図3は、ノズル18を示す斜視図であって、最外郭のカバーを取り外した状態を示している。図3に示されるように、ノズル18は、ノズル本体28aと管路部材28bとを有している。ノズル本体28aの一端側から第一給水路185、第二給水路186、及び第三給水路187が延出するように設けられている。ノズル本体28aの他端側には管路部材28bが配置されている。管路部材28bには、ビデ洗浄吐水孔281a及びおしり洗浄吐水孔282aが形成されている。ビデ洗浄吐水孔281aは、図1に示したビデ洗浄吐水孔181に繋がり、おしり洗浄吐水孔282aは、図1に示したおしり洗浄吐水孔182に繋がっている。
【0034】
本実施形態では、流路切替弁16によって第一給水路185に流路が切り替わると、スポット吐水である第一吐水モードを実行するように構成されている。また、流路切替弁16によって第二給水路186に流路が切り替わると、ワイド吐水である第二吐水モードを実行するように構成されている。本実施形態では、スポット吐水とワイド吐水との吐水態様の変更を、ビデ洗浄吐水孔281aが形成されているビデ洗浄旋回室183の形態、及びビデ洗浄旋回室183への第一給水路185及び第二給水路186の接続形態によって実現している。
【0035】
続いて、図4及び図5を参照しながら、ビデ洗浄旋回室183の形態、及びビデ洗浄旋回室183への第一給水路185及び第二給水路186の接続形態について説明する。図4は、ビデ洗浄旋回室183の平面視断面図であって、第一給水路185及び第二給水路186がビデ洗浄旋回室183に繋がっているレベルの断面図である。図5は、ビデ洗浄旋回室183の側面視断面図であって、ビデ洗浄吐水孔281aの中心を通る部分の断面図である。
【0036】
図4に示されるように、ビデ洗浄旋回室183内には、旋回円柱183aが設けられている。旋回円柱183aは、尖塔状に上端が円錐形状を成している円柱として形成されている。従って、ビデ洗浄旋回室183内に洗浄水が供給されると、旋回円柱183a周りに旋回流が発生し、その旋回流がビデ洗浄吐水孔281aから吐出される。
【0037】
第一給水路185及び第二給水路186は、それぞれの中心線である第一流入中心185b及び第二流入中心186bがビデ洗浄旋回室183の中心から離れ、ビデ洗浄旋回室183の外周の接線方向に近づくように配置されている。第一給水路185の第一流入中心185bとビデ洗浄旋回室183の中心との距離d1は、第二給水路186の第二流入中心186bとビデ洗浄旋回室183の中心との距離d2よりも短くなるように配置されている。第二給水路186は、その外側の内壁がビデ洗浄旋回室183の外周側の内壁の接線に沿うように配置されている。従って、第二給水路186から供給される洗浄水は、ビデ洗浄旋回室183内において最大限の旋廻流を発生し得るように構成されている。
【0038】
続いて、図5を参照しながら管路部材28bの構成について説明する。図5は、ビデ洗浄旋回室183の側面視断面図であって、ビデ洗浄吐水孔281aの中心を通る部分の断面図である。
【0039】
図5に示されるように、第一給水路185及び第二給水路186は、ビデ洗浄旋回室183の下端側(ビデ洗浄噴射孔281cが形成されている上端とは反対側の端部)に繋がるように配置されている。従って、第一給水路185及び第二給水路186から供給された洗浄水は、旋回円柱183a周りに旋回しながらビデ洗浄噴射孔281cへと向かうように構成されている。第二給水路186から供給される洗浄水によってビデ洗浄旋回室183内に大きな旋回流が形成されるように構成されている一方で、第一給水路185から供給される洗浄によってはビデ洗浄旋回室183内には極めて小さな旋回流が発生するように構成されている。
【0040】
ビデ洗浄旋回室183のビデ洗浄噴射孔281cが形成されている側に、管路部材28bが配置されている。ノズル本体28aから管路部材28b側に向けて、隆起部281dが形成されている。ビデ洗浄噴射孔281cは、ビデ洗浄旋回室183から隆起部281dを貫通するように形成されている。
【0041】
管路部材28bには、管路281bが形成されている。管路281bは、ビデ洗浄吐水孔281aから、ビデ洗浄噴射孔281cに対向する面を貫通するように形成されている。従って、第一給水路185及び第二給水路186から供給されてビデ洗浄旋回室183に入った洗浄水は、ビデ洗浄噴射孔281cから噴射され、管路281bを通ってビデ洗浄吐水孔281aへと向かい、ビデ洗浄吐水孔281aから洗浄対象に向けて吐出される。
【0042】
続いて、ビデ洗浄旋回室183に、第一給水路185から洗浄水が供給された場合の吐水態様について、図6を参照しながら説明する。図6は、ビデ洗浄旋回室183に第一給水路185から洗浄水を供給した様子を示す側面視断面図である。
【0043】
図6に示されるように、第一給水路185からビデ洗浄旋回室183に洗浄水が供給されると、その旋回成分は小さいため、ビデ洗浄旋回室183内を満たした洗浄水がビデ洗浄噴射孔281cから直進流として管路281bへと噴射される。ビデ洗浄噴射孔281cから直進流として噴射される水流の周辺には、粒化された水滴WFgが多数形成される。この水滴WFgは、管路281bの内壁に衝突して減速される。減速された水滴WFgは、管路281b内を満たし、その満たされた部分にビデ洗浄噴射孔281cから噴射される直進流が突入する。この直進流の突入によって、ノズル本体28aの隆起部281dと管路部材28bの隙間から導入される空気AFが巻き込まれ、エジェクタ効果によって気泡Baが混入されたスポット吐水WFsaが形成される。スポット吐水WFsaは、管路281b内を進行し、ビデ洗浄吐水孔281aから比較的狭い範囲に吐出される。
【0044】
続いて、脈動発生部15を駆動して脈動吐水を行った場合の、吐水圧と空気混入量との関係について図7を参照しながら説明する。図7の(A)は、吐水圧を示すグラフであって、ビデ洗浄吐水孔281aに送り込まれる水の圧力変動を示すものである。図7の(B)は、吐水圧を変動させた場合の吐水に含まれる空気の混入量を示すグラフである。
【0045】
図7の(A)に示されるように、本実施形態では、吐水圧のピークが閾値圧Vtを超えるように吐水圧を変動させている。一般的には吐水圧の変動に伴って吐水への空気混入量が変動し、吐水圧が高くなると空気混入量が増え、吐水圧が低くなると空気混入量が減る。しかしながら、図示したように吐水圧のピークが閾値圧Vtを超えるように変動させると、図7の(B)に示されるように、その閾値圧Vtを超えている間は空気混入量が著しく減少している。
【0046】
図8を参照しながら、吐水圧が変動した場合の空気混入量の変動メカニズムについて説明する。図7の(A)に示されるように、吐水圧のピークが閾値圧Vtを下回っていると、図6を参照しながら説明したエジェクタ効果によって気泡を多く含む第一水槐WFmが生成され吐出される。一方、吐水圧のピークが閾値圧Vtを超えるように変動させると、図6を参照しながら説明したエジェクタ効果が発生せず、気泡をあまり含まない第二水槐WFnが生成され吐出される。
【0047】
吐水圧のピークが閾値圧Vtを超えると、気泡をあまり含まない第二水槐WFnが生成される理由は、次のようなものであると考えられる。図6を参照しながら説明したように、ビデ洗浄噴射孔281cから噴射された水は、ビデ洗浄吐水孔281a近傍において一時的に滞留し、その滞留した水に向って噴射水が突入することで気泡を多く含む第一水槐WFmが生成される。
【0048】
しかしながら、閾値圧Vtを超えるほどの吐水圧で水を噴射すると、ビデ洗浄吐水孔281a近傍において水が一時的に滞留しなくなり、そのまま吐水が第二水槐WFnとなって吐出される。従って、図8の(B)に示されるように、気泡を多く含む第一水槐WFmに続いて、気泡をあまり含まない第二水槐WFnが吐出される。
【0049】
図8の(C)に示されるように、密度も速度も高い第二水槐WFnが吐出されると、密度も速度も低い第一水槐WFmに追いつく。更に、図8の(D)に示されるように、第一水槐WFmに追いついた第二水槐WFnは、第一水槐WFmを突き抜ける。第二水槐WFnが突き抜けることで、第一水槐WFmの一部は飛沫Sbとなって着水面積を更に広げることができる。
【0050】
このように密度も速度も高い第二水槐WFnが生成され局部に着水することで、体感上の強さを創出することができ、使用者は刺激感を得ることができる。また、密度が低く体積の大きな第一水槐WFm及び飛沫Sbが生成され局部に着水することで、洗浄面積が広がり、使用者は量感(たっぷり感)を得ることができる。
【0051】
尚、上述した説明では、ビデ洗浄吐水孔281aからの吐水について説明したが、おしり洗浄吐水孔282aからの吐水についても同様である。
【0052】
参考までに、吐水圧を閾値圧Vtまで上げない場合の脈動吐水について、図9を参照しながら説明する。図9の(A)は、脈動吐水を行わない場合の吐水態様を示し、図9の(B)は、吐水圧を閾値圧Vtまで上げない場合の脈動吐水態様を示している。図9の(B)に示されるように、吐水圧を閾値圧Vtまで上げない場合は、密度も速度も比較的低い第一水槐WFmのみが生成される。
【0053】
上述したように本実施形態に係る衛生洗浄装置である温水洗浄便座WAは、使用者の局部に向けて水を吐出する衛生洗浄装置であって、水を吐出するビデ洗浄吐水孔281a(吐水孔)及びおしり洗浄吐水孔282a(吐水孔)が形成されたノズル18と、ビデ洗浄吐水孔281a及びおしり洗浄吐水孔282aから使用者の局部に向けて水を吐出するための吐水手段として機能する電磁弁14と、吐出する水に混入する空気の量を調整するための空気調整手段として機能する脈動発生部15、を備える。脈動発生部15は、周期的に圧力が変動して脈動する水をビデ洗浄吐水孔281a及びおしり洗浄吐水孔282aに向けて送り込むことで、ビデ洗浄吐水孔281a及びおしり洗浄吐水孔282aから脈動する水を吐出するように構成されている。脈動発生部15は、吐出する水の圧力が高い脈動のピークにおいて、ノズル18から吐出される水に混入する空気の量が極小となるように調整する。
【0054】
本実施形態では、周期的に圧力が変動して脈動する水をビデ洗浄吐水孔281a及びおしり洗浄吐水孔282aに向けて送り込むことで、ビデ洗浄吐水孔281a及びおしり洗浄吐水孔282aから脈動する水を吐出するように構成しているので、吐出された後の水の進行速度が高い部分と低い部分とが交互に存在するように吐水することができる。従って、吐出された後の水は、速度差による追いつき現象によって水槐を形成する。本実施形態では、ノズル18から吐出される水に空気を混入して気泡混入水を吐出しているので、吐出された後に形成される水槐も気泡混入水によって見かけ上の体積を大きくすることができる。
【0055】
更に本実施形態における脈動発生部15は、ノズル18から吐出される水の圧力が高い脈動のピークにおいて、ノズル18から吐出される水に混入する空気の量が極小となるように調整するものである。このように脈動吐水のピークにおいて、その吐水に混入する空気の量が極小となるようにすることで、密度が高く速度の高い水槐が形成され、着水対象である局部に向うことになる。このように密度も速度も高い水槐が局部に着水することで、衝撃力の高い着水が可能なものとなり、局部に付着している汚れを着水の衝撃力によって確実に落とすことができる。
【0056】
このように本実施形態では、見かけ上の体積を大きくした気泡混入水による水槐と、密度も速度も高い水槐とを混在させて局部に着水させることができるので、使用水量を抑制しつつ、広い面積への着水と洗浄力の高い着水とを両立させることができる。
【0057】
また本実施形態では、ノズル18からは、空気の混入量が多い第一水槐WFmと、空気の混入量が少ない第二水槐WFnとが交互に形成されるように吐出され、第一水槐WFmの速度よりも第二水槐WFnの速度が高く、先に進行する第一水槐WFmを、後に進行する第二水槐WFnが突き抜けて使用者の局部に到達する。
【0058】
このように、空気の混入量が多い第一水槐WFmを、空気の混入量が少ない第二水槐WFnが突き抜けるので、第一水槐WFmの進行方向に直交する断面積を拡大することができる。従って、第一水槐WFmの着水領域を広げることができ、節水化と広い領域の洗浄とを両立させることができる。
【0059】
また本実施形態では、空気調整手段としてその一部が機能するノズル18は、ビデ洗浄吐水孔281a及びおしり洗浄吐水孔282a近傍において一時的に水を滞留させ、その滞留させた水にエジェクタ効果によって空気を混入させるものである。空気調整手段としての脈動発生部15は、ノズル18から吐出される水の圧力が所定圧力を超えて極大化するように調整することでエジェクタ効果を一時的に低減させ、このエジェクタ効果の一時的な低減によってノズル18から吐出される水への空気の混入量を極小化させている。
【0060】
このように、エジェクタ効果によって気泡混入水を生成するので、空気ポンプといった手段を用いることなく、見かけ上の体積が大きい水槐を形成して局部に着水させることができる。更に、ノズル18から吐出される水の圧力が所定圧力を超えて極大化するように調整することでエジェクタ効果を一時的に低減させ、このエジェクタ効果の一時的な低減によってノズル18から吐出される水への空気の混入量を極小化させるので、エジェクタ効果の調整によって空気の混入量が少ない第二水槐WFnを形成することができる。このように、エジェクタ効果を利用して気泡混入水を生成すると共に、そのエジェクタ効果を吐水圧力の調整という簡易な手法で調整することで空気の混入量を減じることができるので、簡易な手段で確実に節水化と広い領域の洗浄とを両立させることができる。
【0061】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0062】
10:操作部
12:制御部
14:電磁弁
15:脈動発生部
16:流路切替弁
18:ノズル
28a:ノズル本体
28b:管路部材
181:ビデ洗浄吐水孔
182:おしり洗浄吐水孔
183:ビデ洗浄旋回室
183a:旋回円柱
184:洗浄旋回室
185:第一給水路
185b:第一流入中心
186:第二給水路
186b:第二流入中心
187:第三給水路
281a:ビデ洗浄吐水孔
281b:管路
281c:ビデ洗浄噴射孔
281d:隆起部
282a:おしり洗浄吐水孔
AF:空気
Ba:気泡
CB:大便器
CBa:ボウル面
Sb:飛沫
Vt:閾値圧
WA:温水洗浄便座
WAa:本体
WAb:便座
WAc:便蓋
WFg:水滴
WFm:第一水槐
WFn:第二水槐
WFsa:スポット吐水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の局部に向けて水を吐出する衛生洗浄装置であって、
水を吐出する吐水孔が形成されたノズルと、
前記吐水孔から使用者の局部に向けて水を吐出するための吐水手段と、
前記吐水手段が吐出する水に混入する空気の量を調整するための空気調整手段と、を備え、
前記吐水手段は、周期的に圧力が変動して脈動する水を前記吐水孔に向けて送り込むことで、前記吐水孔から脈動する水を吐出するように構成され、
前記空気調整手段は、前記ノズルから吐出される水の圧力が高い脈動のピークにおいて、前記ノズルから吐出される水に混入する空気の量が極小となるように調整することを特徴とする衛生洗浄装置。
【請求項2】
前記ノズルからは、空気の混入量が多い第一水槐と、空気の混入量が少ない第二水槐とが交互に形成されるように吐出されるものであって、
前記第一水槐の速度よりも前記第二水槐の速度が高く、先に進行する前記第一水槐を、後に進行する前記第二水槐が突き抜けて使用者の局部に到達することを特徴とする請求項1に記載の衛生洗浄装置。
【請求項3】
前記空気調整手段は、前記吐水孔近傍において一時的に水を滞留させ、その滞留させた水にエジェクタ効果によって空気を混入させるものであって、前記ノズルから吐出される水の圧力が所定圧力を超えて極大化するように調整することでエジェクタ効果を一時的に低減させ、このエジェクタ効果の一時的な低減によって前記ノズルから吐出される水への空気の混入量を極小化させることを特徴とする請求項2に記載の衛生洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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