説明

衛生洗浄装置

【課題】洗浄機能の使い勝手を損なわずに、低コストかつ簡易な構成でノズル洗浄を行うことのできる衛生洗浄装置を提供すること。
【解決手段】人体の局部洗浄を行うノズル装置100と、ノズル装置100を洗浄するノズル洗浄手段151と、温水を貯溜する温水タンク20と、温水タンク20内の洗浄水を加温する温水ヒータと、使用者が操作する操作部52と、操作部52の操作により温水ヒータへの通電を一定時間停止させる保温中断設定手段63とを含み、保温中断設定手段63により、温水ヒータへの通電が停止されている間に、ノズル装置100の洗浄を実施することにより、使用者自身が保温中断設定手段により通電停止を設定することにより、その間に温水タンク20内の温水を使用してノズル装置100を洗浄することが可能となり、次の局部洗浄時に使用する温水がないといった、使い勝手を損なうことがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛生洗浄装置におけるノズル洗浄機能に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の衛生洗浄装置は、人体局部を洗浄する場合よりも高い温度の洗浄水を使用後のノズルに吐水することにより、ノズルに付着した汚物や雑菌を取り除いている。(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、高温水ではなく、人体局部を洗浄する場合と同等の温度の洗浄水にて、ノズル洗浄を行うことにより、ノズル装置に付着した汚物を取り除いている衛生洗浄装置もある。(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
特許文献2に記載された構成では、所定のサイクルで定期的に、または、一定の不使用時間経過後にノズル洗浄を行うことにより、ノズル装置に付着した汚物が乾燥してこびりつくことを防止し、ノズル装置を衛生的に維持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−311078号公報
【特許文献2】特開2002−356896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来の特許文献1に記載の構成では、ノズル装置に付着した雑菌を、洗浄により取り除く(以下、「ノズル除菌洗浄」と表現する)ためには、人体局部を洗浄する場合よりも高い温度の洗浄水を必要とする。
【0007】
特にタンク内に洗浄用温水を貯めて、洗浄を行ういわゆる「貯湯式」の衛生洗浄装置においては、洗浄水を急速に昇温するヒータを設ける、あるいは温水タンク内の温水を高温に保持し、人体局部洗浄時、ノズル除菌洗浄時等必要な温度に応じて、湯水を所定の割合で混合する湯水混合弁を設ける等、多くの構成部品を必要とするため、装置全体が複雑になりコストがかかるという点において改良の余地があった。
【0008】
また、前記従来の特許文献2に記載の構成では、人体局部を洗浄する場合と同等の温度の洗浄水でノズルの洗浄を行うため、ノズルの形状によっては、雑菌を十分取り除けないことが懸念され、さらに雑菌を取り除くまでノズルの洗浄を行うには大量の温水を必要とするため、「貯湯式」の衛生洗浄装置においては、ノズル除菌洗浄直後は、タンク内の温水が湯切れし、ノズル除菌洗浄の直後には温水で人体の局部洗浄を行うことができないという点において改良の余地があった。
【0009】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、人体局部の洗浄機能の使い勝手を損なわずに、低コストかつ簡易な構成にて、ノズル除菌洗浄を行うことのできる衛生洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記従来の課題を解決するために、本発明の衛生洗浄装置は、人体の局部洗浄を行うノズル装置と、ノズル装置を洗浄するノズル洗浄手段と、洗浄用の温水を貯溜する温水タン
クと、温水タンク内の洗浄水を加温する温水ヒータと、使用者が操作する操作部と、操作部の操作により、温水ヒータへの通電を一定時間停止させる保温中断設定手段とを含み、保温中断設定手段により、温水ヒータへの通電が停止されている間に、ノズル洗浄手段により、ノズル装置の洗浄を実施する衛生洗浄装置である。
【0011】
これにより、使用者自身が保温中断設定手段により温水ヒータへの通電停止を設定することにより、一定時間衛生洗浄装置を使用しない意思が明確となり、その間に温水タンク内の温水を使用してノズル装置を洗浄することが可能となり、しかも次の局部洗浄時に使用する温水がないといった、使い勝手を損なうことがない。
【発明の効果】
【0012】
本発明の衛生洗浄装置は、人体局部の洗浄機能の使い勝手を損なわずに、低コストかつ簡易な構成にて、ノズル装置に付着した雑菌を取り除くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1における衛生洗浄装置の外観を示す斜視図
【図2】本発明の実施の形態1における本体内部の構成を示す分解斜視図
【図3】本発明の実施の形態1におけるノズル装置の収納位置における外観を示す斜視図
【図4】本発明の実施の形態1におけるノズル装置の収納位置における断面図
【図5】図3に示すAA断面図
【図6】(a)は本発明の実施の形態1におけるノズル装置のビデ洗浄位置における断面図、(b)は同先端部の詳細断面図
【図7】(a)は本発明の実施の形態1におけるノズル装置のお尻洗浄位置における断面図、(b)は同先端部の詳細断面図
【図8】(a)は本発明の実施の形態1におけるノズルユニットの上面図、(b)は同断面図
【図9】本発明の実施の形態1における操作部の平面図
【図10】本発明の実施の形態1における制御部のノズル洗浄開始判定処理のフローチャート
【図11】本発明の実施の形態2における制御部のノズル洗浄開始判定処理のフローチャート
【図12】本発明の実施の形態3における制御部のノズル洗浄開始判定処理のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0014】
第1の発明は、人体の局部洗浄を行うノズル装置と、前記ノズル装置を洗浄するノズル洗浄手段と、洗浄用の温水を貯溜する温水タンクと、前記温水タンク内の洗浄水を加温する温水ヒータと、使用者が操作する操作部と、前記操作部の操作により、前記温水ヒータへの通電を一定時間停止させる保温中断設定手段と、を含み、前記保温中断設定手段により、前記温水ヒータへの通電が停止されている間に、前記ノズル洗浄手段により、前記ノズル装置の洗浄を実施する衛生洗浄装置である。
【0015】
これにより、使用者自身が保温中断設定手段により温水ヒータへの通電停止を設定することにより、一定時間衛生洗浄装置を使用しない意思が明確となり、その間に温水タンク内の温水を使用してノズル装置を洗浄することが可能となり、しかも次の局部洗浄時に使用する温水がないといった、使い勝手を損なうことがない。
【0016】
第2の発明は、特に、第1の発明において、前記操作部の操作により、前記ノズル洗浄の実施を設定するノズル洗浄設定手段を備え、前記ノズル洗浄設定手段によるノズル洗浄
の実施の設定と、前記保温中断設定手段による温水ヒータへの通電停止が設定された場合にのみ、ノズル洗浄を実施するものである。
【0017】
これにより、無駄な温水を使用することなく、さらに使い勝手よく、必要な時のみノズル洗浄を実施することができる。
【0018】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明において、前記ノズル洗浄は、前回の局部洗浄が終了してから一定時間経過後に実施するものである。
【0019】
これにより、温水タンク内の洗浄水は局部洗浄に使用される温度まで昇温されるため、ノズル装置に付着した雑菌を取り除くに十分な水量および温度を確保してからノズル洗浄を実施することができる。
【0020】
第4の発明は、特に、第1〜3のいずれか1つの発明において、前記ノズル洗浄は、前記局部洗浄に使用する温水と略同温度で実施するものである。
【0021】
これにより、人体局部洗浄時よりも高温でノズル洗浄を行う必要がなく、洗浄水を急速に昇温するヒータ、高温に保持した温水タンク内の温水を混合する湯水混合弁といった部品を必要としないため、人体局部の洗浄機能の使い勝手を損なわずに、低コストかつ簡易な構成にて、ノズル装置に付着した雑菌を取り除くことができる。
【0022】
第5の発明は、特に、第1〜4のいずれか1つの発明において、前記ノズル装置は、先端部に洗浄水を噴出する複数の噴出口を有するノズル本体と、前記ノズル本体の少なくとも一部を覆う筒状のノズルカバーとを含み、前記ノズルカバーには前記ノズル本体の少なくとも1個の噴出口に対応する噴出開口を備え、前記噴出口から噴出する洗浄水は前記噴出開口を介して噴出することを特徴とするものである。
【0023】
これにより、ノズル装置の表面は、汚物および雑菌が付着し難く、温水で洗い流すことにより容易に付着した雑菌を取り除くことが可能となる。
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0025】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における衛生洗浄装置の外観を示す斜視図であり、図2は本体内部の構成を示す分解斜視図である。
【0026】
<1>衛生洗浄装置の全体構成
図1に示すように、本実施の形態に係る衛生洗浄装置50は、本体部51、操作部52、便座部53、便蓋54等を備えている。衛生洗浄装置50の本体部51、便座部53および便蓋54は、一体的に組み付けられて図示されない便器の上面に設置される。以下、衛生洗浄装置50の構成を説明するにあたっては、便座部53に着座した使用者から見て前方を前方向または前側、後方を後方向または後側、左側方を左方向または左側、右側方を右方向または右側として説明する。また、便座部53と便蓋54とは、それぞれ起立位置と倒伏位置との間で、それぞれ別個にかつ両者一緒に回動可能に設けられるが、以下では、便宜上、これらが倒伏位置から起立位置へ向かって回動することを「開く」といい、起立位置から倒伏位置へ向かって回動することを「閉じる」という。
【0027】
本体部51の具体的な構成は特に限定されず、例えば、本体部51は、本実施の形態では、横長の形状を有し、その長手方向が便器の後側で左右方向に横断するように当該便器
に配置されている。本体部51には、操作部52が一体的に設けられているとともに、便座部53および便蓋54が開閉自在に取り付けられている。また、本体部51における便座部53の下側となる位置には、本体部51内に収容されているノズル装置100が先端面のみ露出している。
【0028】
ノズル装置100のノズルユニット200が便器の中央に向けて進出し、ノズルユニット200の先端に設けた噴出口から使用者の局部に向けて洗浄水を噴出し、使用者の局部を洗浄する。なお、本体部51の内部構成およびノズル装置100については、後述する。
【0029】
操作部52は、本体部51の右側面から前側に延伸するように設けられ、その形状は例えば柱状であって、その上面が操作面となっている。操作面には、衛生洗浄装置50が有する各種機能を操作するための複数の操作スイッチと、操作状況等を表示する表示手段が設けられている。
【0030】
図1に示すように、本体部51の左右の側面は便蓋支持側面51aとなっており、便蓋54の回動軸が回動可能に挿入されることで、便蓋54が開閉可能に支持されている。また、本体部51の左右の側面における前方は、便蓋支持側面51aから見て本体部51の左右方向の中央部に向かって落ち込んだような段差面である便座支持側面51bとなっており、便座部53の回動軸が回動可能に挿入されることで、便座部53が開閉可能に支持されている。
【0031】
便座部53は、本体部51に取り付けられた状態で、起立位置および倒伏位置の間で回動自在となっており、倒伏位置(閉じた状態)で使用者が着座する。便蓋54も、本体部51に取り付けられた状態で、起立位置および倒伏位置の間で回動自在となっており、使用時には起立位置(開いた状態)とし、未使用時には倒伏位置(閉じた状態)とする。便座部53および便蓋54は、いずれも手動で開閉される構成であってもよいし、本体部51内に設けられる便座・便蓋開閉ユニットにより自動的に開閉される構成であってもよい。
【0032】
便座部53は内部に図示されない便座ヒータを備え、当該便座部53を加温するよう構成されている。すなわち、本実施の形態に係る衛生洗浄装置50は、暖房便座機能を備えている。
【0033】
本体部51は、図2に示すように、内部が中空の筐体511内に、温水タンク20、ノズル装置100、図示されない乾燥ユニット、および制御部等が収容されている。
【0034】
本体部は、筐体511の下側となり、前記各機能ユニットを載置した状態で収容する下部筐体511aと、この下部筐体511aの上側を覆う状態で取り付けられる図示されない上部筐体とから構成されている。図2においては、温水タンク20およびノズル装置100を説明する便宜上、本体部51を構成する筐体511については、下部筐体511aのみ図示し、他の機能ユニットおよび制御部等についても図示していない。なお、温水タンク20およびノズル装置100は、まとめて一つの洗浄ユニットを構成してもよい。
【0035】
温水タンク20は、本体部51の右下側に位置する給水接続部34から図2には図示されない入水口部を介して内部に洗浄水が導入され、当該洗浄水を貯蔵するとともに、内部に設けられている温水ヒータによって所定の温度範囲に加温する。
【0036】
また、給水接続部34と入水口部との間には、図示されない分岐した流路が設けられ、この分岐した流路には温水タンク20に一定の圧力以上の水圧がからないように、水圧を
逃すための圧力逃し弁341が設けられている。給水源から一定以上の水圧で給水が行われると、この圧力逃し弁341が開き、余剰水を逃し配管342から出水する。給水接続部34としては、ニップル、配管およびバルブ等から構成されている。配管としては軟質の樹脂製チューブが用いられている。
【0037】
また、温水タンク20の底部には、温水タンク20内に貯溜された水を排水する図示されない水抜口部が設けられており、温水タンク20内の水が凍結することが予想される場合や、長期間使用されない場合に、温水タンク20内の水を排水することができる。
【0038】
また、温水タンク20の出水口部252は、配管331からノズル装置100の流路と流量を調節する流量調節弁(図示せず)を介して配管332、配管333、配管334に接続され、各配管332、333、334がそれぞれノズル装置100に接続され、加温された洗浄水(温水)をノズル装置100へ供給する。
【0039】
また、温水タンク20の上面には、図2に示すように、真空破壊弁253が、ノズル装置100から汚水が入ったとき、逆流を防止するために設けられている。真空破壊弁253には配管254が接続され、洗浄水の加熱の際に、温水タンク20から膨張水が流出するような場合を想定して、配管254から下部筐体511aを介して膨張水を便器内に流すように構成されている。
【0040】
なお、温水タンク20は、図示されない温水ヒータ調節部等とともに温水生成部を構成しており、ノズル装置100と同様に前記制御部により制御されることで、内部の洗浄水の水温を所定の温度範囲に調節して保持する。
【0041】
加えて、温水タンク20には図示されないサーミスタからなる温水温度測定手段と、保安器とが設置されている。保安器としては、応答速度の速いサーモスタット使用し、異常温度になったことを瞬時に検知して温水ヒータを停止することができる。
【0042】
<2>ノズル装置の構成およびノズル洗浄動作
図3はノズルが収納位置にあるノズル装置全体の外観の斜視図を示すものであり、
図4はノズル装置の収納位置における断面図を示し、図5は図3に示すAA断面図を示し、図6(a)はノズル装置のビデ洗浄位置における断面図を示し、(b)ノズル装置の先端部の詳細断面図を示すものである。図7(a)はノズル装置のお尻洗浄位置における断面図を示し、(b)ノズル装置の先端部の詳細断面図を示すものである。図8(a)はノズルユニットの上面図を示し、(b)は断面図を示すものである。
【0043】
図3に示すように、ノズル装置100は、樹脂材料で成型したケーシング110は上下に分離可能な上ケース120と下ケース130を組み合わせた構成であり、ケーシング110の中央部には略円筒形のノズルガイド111が形成してあり、ノズルガイド111の一端には先端開口112が設けてある。
【0044】
ノズルガイド111の先端開口112の上部には、上下に回動自在なノズルシャタ140が枢支されており、ノズルユニット200をノズルガイド111に収納した状態で先端開口112を閉塞する。ノズルシャタ140はノズルユニット200が洗浄位置に進出するときには、ノズルユニット200の先端が押進することにより上方に開放され、ノズルユニット200を収納位置に収納したときはノズルシャタ140の自重で下方に回動して閉塞する構成である。
【0045】
ノズルガイド111内には円筒形のノズルユニット200が摺動自在に設置してあり、図3および図4に示すように、ノズルユニット200をノズルガイド111内に収容した
収納位置と、図6(a)および図7(a)に示すように、ノズルユニット200が先端開口112より突出したビデ洗浄位置およびお尻洗浄位置の2カ所の洗浄位置間を進退可能となっている。
【0046】
図8(a)および(b)に示すように、ノズルユニット200は略円筒形のノズル本体300と、ノズル本体300を収容する略円筒形状のノズルカバー400と、ノズルカバー400でノズル本体200を牽引する連結手段500で構成している。ノズルカバー400はノズルカバー本体410とノズルラックブロック420とが一体となって構成されている。ノズルカバー本体410はステンレスの薄板を円筒状に形成したものであり、先端面は閉塞面をなし、後端面は開放面となっており、後端面よりノズル本体300が挿入可能な形状をなしている。
【0047】
ノズル本体300とノズルカバー400とは相互に摺動可能な構成をなしており、ビデ洗浄位置とお尻洗浄位置において、ノズル本体300とノズルカバー400とは、連結手段500によって所定の相対位置に停止する構成となっている。図6(b)に示すように、ノズルカバー本体410の上面には1個の噴出開口411が設けてあり、ビデ洗浄位置においてはノズル本体300のビデ洗浄噴出口340と重合して配置される。
【0048】
また、図7(b)に示すように、お尻洗浄位置においてはお尻洗浄噴出口320に重合するようになっている。噴出開口411はビデ洗浄噴出口340およびお尻洗浄噴出口320より開口が大きく、洗浄水が噴出開口411に当たって噴出に支障が生ずることがない構成となっている。
【0049】
また、本実施の形態においては、ノズル本体には、お尻洗浄機能とビデ洗浄機能の2つの機能を備えた構成としたが、これに限るものではなく、お尻洗浄またはビデ洗浄の単独の機能のみを備えた構成でもよい。この場合、ノズル本体300とノズルカバー400とは相互に摺動可能な構成とする必要はなく、噴出開口411に重合する構成のビデ洗浄噴出口340およびお尻洗浄噴出口320のいずれか一方を備えていればよい。
【0050】
図4はノズルユニット200が収納位置に収納されている状態の断面図を示すものであり、図5は図3に示すAA断面図であり、収納状態におけるノズル洗浄噴出口の部分の断面図を示すものである。
【0051】
ノズルガイド111の先端開口112の近傍には内径の大きい洗浄拡大部が設置してあり、洗浄拡大部はノズルユニット200の収納位置においてノズルカバー本体410上面の噴出開口411およびその周辺を十分にカバーする奥行きとなっている。洗浄拡大部の上部横向き接線方向へノズル洗浄噴出口151が開口しており、ケーシング110の外側にノズル洗浄噴出口151と連通するノズル洗浄流路150が設置してあり、洗浄水供給手段とホース(図示せず)を介して連通してある。洗浄拡大部の内径はノズルカバー本体410の外面と略全周に亘り僅かな隙間を形成する寸法となっており、前記隙間にノズル洗浄用の洗浄水が流通可能な構成となっている。
【0052】
ノズルユニットの収納状態においては、図6(b)に示すビデ洗浄位置の場合と同様に、ノズルカバー本体410の噴出開口411とノズル本体300のビデ洗浄噴出口340とは重合して配置される。
【0053】
ノズル洗浄噴出口151はノズルガイド111の横向き接線方向へ洗浄水を噴出する構成のため、洗浄水はノズルカバー本体410の周囲を旋回するように流れるため、ノズルカバー本体410裏側まで洗浄水を流すことができ、ノズルカバー400および噴出開口411の付着物を洗い流すことができる。また、洗浄拡大部の下部には洗浄水を排出する
排水口412が設置してある。
【0054】
またノズルユニット200を収納位置から前進させることにより、噴出開口411の近辺のみならず、ノズルカバー400全体を洗浄することも可能である。
【0055】
ノズルカバー400をステンレス鋼にて構成されたことにより、ステンレス鋼は樹脂と比較した場合、自由エネルギーが高いため親水性が高く、さらに凹凸をなくした略円筒形状とし、表面を研磨することによって、表面に付着した汚物や雑菌も洗い流しやすくなり、洗浄汚水がかかっても錆び難いとしたものである。
【0056】
これにより表面に付着した雑菌を取り除くために、人体局部を洗浄する温水温度よりも高い温度(例えば特許文献1に記載の従来の構成では、約70℃)の温水を必要としていたが、本実施の形態においては、人体局部を洗浄する温水温度と同等の温度で可能となった。
【0057】
発明者および第三者機関の実験では、約40℃の温水で所定時間、所定の流量でノズルカバー表面の洗浄を行うことにより、99%以上の雑菌を取り除くことを確認した。
【0058】
人体局部洗浄時よりも高温でノズル洗浄を行う必要がないため、ノズル洗浄中および前後での人体局部洗浄への操作切り換え時等に、高温水が人体にかかる危険性がなくより安全な衛生洗浄装置を提供できる。また洗浄水を急速に昇温するヒータ、高温に保持した温水タンク内の温水を混合する湯水混合弁等の部品を必要としないため、人体局部の洗浄機能の使い勝手を損なわずに、低コストかつ簡易な構成にて、ノズル装置に付着した雑菌を取り除くことが可能となった。
【0059】
なお、本実施の形態においては、ノズル洗浄のためにノズル洗浄流路150とノズル洗浄噴出口151を設けた構成としたが、噴出開口411の近辺のみの洗浄であれば、ノズル洗浄流路150およびノズル洗浄噴出口151を設ける必要はなく、ノズルユニット200が収納位置に収納されている状態で、噴出開口411に重合するビデ洗浄噴出口340から洗浄水を噴出することにより、洗浄水は噴出開口411の上部を覆っているノズルガイド111の内面に反射しノズルカバー400に噴霧され、表面の付着物を洗い流すことも可能である。
【0060】
<3>操作部の構成
図9は本実施の形態における操作部の平面図を示すものである。
【0061】
図に示すように操作部52には複数の操作スイッチと表示手段が配設されている。洗浄機能を操作するスイッチとしては、お尻洗浄を開始するお尻洗浄スイッチ60と、ビデ洗浄を開始するビデ洗浄スイッチ61と、それらの洗浄動作を停止する停止スイッチ62が設けられている。
【0062】
また、各種機能の設定を行うスイッチとして、夜間等、長時間温水洗浄を使用しない場合に、所定時間温水ヒータへの通電停止を設定する保温中断設定スイッチ63が設けられている。設定状態を表示するために、「保温中断」に設定されている時は、保温中断設定表示手段63aが点灯する。保温中断の所定時間が経過すると、制御部により自動的に「保温中断」の設定は解除され、保温中断設定表示手段63aは消灯する。温水ヒータは通電を再開し、温水タンク20内の温水は人体洗浄に適した所定の温度に保温される。
【0063】
また、ノズル洗浄を許可するノズル洗浄設定スイッチ64と、ノズル洗浄許可設定時に点灯するノズル洗浄設定表示手段64aが設けられている。ノズル洗浄設定スイッチ64
で「ノズル洗浄」を設定された場合は、「保温中断」で設定されている間に、制御部はノズル洗浄を自動的に実施する。
【0064】
本実施の形態では、「保温中断」の設定時間は夜間等を想定し、約8時間としているが、これに限定されず、任意の時間としてよい。また操作部52によって使用者が中断時間を設定する構成としてもよい。また、保温中断設スイッチ63は便座部53の加温停止機能を兼用する構成としてもよい。
【0065】
<4>ノズル洗浄の制御および動作
図10は、本発明の実施の形態1における制御部のノズル洗浄開始判定処理のフローチャートである。
【0066】
制御部は、最初のステップS1にて保温中断設定スイッチ63が「保温中断」に設定されているか判断する。「保温中断」に設定されている場合、次にS2にてノズル洗浄設定スイッチ64により、「ノズル洗浄」設定されているか判断する。
【0067】
「ノズル洗浄」が設定されている場合、次にS3にて今回の「保温中断」設定中に既にノズル洗浄を行っていないかを判断する。これは、ノズル洗浄動作を「保温中断」設定中に繰り返し行わないためである。
【0068】
次にS4にて、使用者が便座部53に着座し、操作部52により人体洗浄開始操作を行う等によって人体洗浄要求が発生していないかを判断する。人体洗浄要求が発生している場合は、ノズル洗浄を開始せず、人体洗浄を行う。人体洗浄要求がなく、S1、S2、S3の条件を満たすと制御部はノズル洗浄を開始する。
【0069】
以上のように、本実施の形態における衛生洗浄装置は、使用者が保温中断設定スイッチ63により「保温中断」を設定することにより、一定時間衛生洗浄装置を使用しない意思が明確となり、その間に温水タンク20内の温水を使用することがないため、温水ヒータへの通電を停止する。
【0070】
また、ノズル洗浄設定スイッチ64で「ノズル洗浄」を設定された場合は、温水タンク20内に残った温水を使用してノズル洗浄を行うものであり、温水タンク20内の温水を有効に活用してノズル装置を衛生的に維持することが可能となるとともに、次の局部洗浄時に使用する温水がないといった、使い勝手を損なうことがない。
【0071】
なお、本実施の形態においては、ノズル洗浄設定スイッチ64を設け、「ノズル洗浄」の設定がなされた場合にのみノズル洗浄を実施する構成としたが、これに限るものではなく、ノズル洗浄設定スイッチ64を設けず、保温中断設定スイッチ63で「保温中断」の設定がなされた場合には、自動的にノズル洗浄が実施される構成としてもよい。この場合、図10に示すS2のステップはなく、制御フローはS1、S3、S4の順に実施される。
【0072】
(実施に形態2)
図11は、本発明の実施の形態2における制御部のノズル洗浄開始判定処理のフローチャートである。
【0073】
本実施の形態が実施の形態1と異なる点は、制御ステップとしてS5の前回洗浄からの経過時間の判断を追加したものである。S1〜S4については重複するため説明は省略する。
【0074】
制御部は、S5にて前回局部洗浄等の温水使用からの所定の時間経過しているか判断する。所定時間経過している場合、温水タンク20にはノズル洗浄に必要な水量および所定温度の温水で満たされていると判断し、S1、S2、S4、S3、S4の各ステップにおける条件が満たされている場合、ノズル洗浄を実施する。
【0075】
このような制御を実施することにより、温水タンク内の洗浄水は局部洗浄に使用される温度まで昇温されるため、ノズル装置に付着した雑菌を取り除くに十分な水量および温度を確保してからノズル洗浄を実施することができる。
【0076】
(実施の形態3)
図13は、本発明の実施の形態3における制御部のノズル洗浄開始判定処理のフローチャートである。
【0077】
本実施の形態が実施の形態2と異なる点は、制御ステップとしてS6の温水温度の判断を追加したものである。S1〜S5については重複するため説明は省略する。
【0078】
制御部は、S6にて温水タンク20内の洗浄水の温度を温水温度測定手段(図示せず)により測定し、ノズル洗浄に必要な温度に到達しているか判断する。
【0079】
本実施の形態では、ノズルカバー400の表面に付着した雑菌を洗い流すには約40℃の温水が必要である。ノズル洗浄の所定時間中に安定して約40℃の温水を供給するためには、ノズル洗浄中の温水タンク20内の水温低下も考慮して、約1〜2℃高い温度に到達しているか判定する。到達していない場合は、前記判定温度まで温水ヒータに通電を行い加温する。温水温度が判定温度まで到達し、S1、S2、S4、S3、S4の各ステップにおける条件が満たされている場合、制御部はノズル洗浄を開始する。
【0080】
このような制御を実施することにより、人体局部洗浄時よりも高温でノズル洗浄を行う必要がなく、洗浄水を急速に昇温するヒータ、高温に保持した温水タンク内の温水を混合する湯水混合弁といった部品を必要としないため、人体局部の洗浄機能の使い勝手を損なわずに、低コストかつ簡易な構成にて、ノズル装置に付着した雑菌を取り除くことができる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、洗浄水を温水タンクに貯蔵して加温する貯湯式の衛生洗浄装置の分野に広く好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0082】
20 温水タンク
50 衛生洗浄装置
52 操作部
63 保温中断設定スイッチ(保温中断設定手段)
64 ノズル洗浄設定スイッチ(ノズル洗浄設定手段)
100 ノズル装置
151 ノズル洗浄噴出口(ノズル洗浄手段)
300 ノズル本体
320 お尻洗浄噴出口(噴出口)
340 ビデ洗浄噴出口(噴出口)
400 ノズルカバー
411 噴出開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の局部洗浄を行うノズル装置と、
前記ノズル装置を洗浄するノズル洗浄手段と、
洗浄用の温水を貯溜する温水タンクと、
前記温水タンク内の洗浄水を加温する温水ヒータと、
使用者が操作する操作部と、
前記操作部の操作により、前記温水ヒータへの通電を一定時間停止させる保温中断設定手段と、を含み、
前記保温中断設定手段により、前記温水ヒータへの通電が停止されている間に、前記ノズル洗浄手段により、前記ノズル装置の洗浄を実施する、
衛生洗浄装置。
【請求項2】
前記操作部の操作により、前記ノズル洗浄の実施を設定するノズル洗浄設定手段を備え、
前記ノズル洗浄設定手段によるノズル洗浄の実施の設定と、前記保温中断設定手段による温水ヒータへの通電停止が設定された場合にのみ、前記ノズル洗浄を実施することを特徴とする、
請求項1に記載の衛生洗浄装置。
【請求項3】
前記ノズル洗浄は、前回の局部洗浄が終了してから一定時間経過後に実施することを特徴とする、
請求項1または2に記載の衛生洗浄装置。
【請求項4】
前記ノズル洗浄は、前記局部洗浄に使用する温水と略同温度で実施することを特徴とする、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の衛生洗浄装置。
【請求項5】
前記ノズル装置は、先端部に洗浄水を噴出する複数の噴出口を有するノズル本体と、
前記ノズル本体の少なくとも一部を覆う筒状のノズルカバーと、を含み、
前記ノズルカバーには前記ノズル本体の少なくとも1個の噴出口に対応する噴出開口を備え、
前記噴出口から噴出する洗浄水は前記噴出開口を介して噴出することを特徴とする、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の衛生洗浄装置。

【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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