説明

衛生洗浄装置

【課題】洗浄ノズルの収納時の高さを抑えることで衛生洗浄装置の高さ方向に対するコンパクト化を狙い、洗浄ノズル使用時は確実に使用者の臀部に洗浄ノズルが接触しない衛生洗浄装置を提供することを目的とする。
【解決手段】洗浄ノズルと、洗浄ノズルを収納可能なケーシングとを備え、洗浄ノズルは、収納状態と、収納状態と水平面に対する角度が異なる進出状態と、の間を移動可能とする駆動手段を備え、駆動手段は、洗浄ノズルの角度を変化させる第一の駆動部と、洗浄ノズルを進退させる第二の駆動部とからなり、第一の駆動部による洗浄ノズルの角度変化の動作と、第二の駆動部による洗浄ノズルの進退動作とを同時に動作させる制御手段とを備え、洗浄ノズルは、第一の駆動部により、水平面の角度を収納状態の角度よりも前記進出状態の角度が大きくなるように変化させつつ、第二の駆動部により進退させたことを特徴とする衛生洗浄装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般的に、衛生洗浄装置に関し、具体的には洋式腰掛便器に腰掛けた使用者の「おしり」などを水で洗浄する衛生洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
衛生洗浄装置では、便座に座った使用者の「おしり」などの身体を洗浄する洗浄ノズルや、洗浄ノズルを駆動する駆動部などは、例えばケーシング内に収納されている。そして、洗浄ノズルは、使用者の「おしり」などに水を噴射する際には、収納されている状態の角度のままで直線的に移動して、ケーシングから便器のボウル内に進出する。また、洗浄ノズルは、一般的に、便器のボウル内に進出する際に使用者の臀部と接触しないように、進出する際の角度と同じである所定の角度でケーシング内に収納されている。ここで、近年のトイレ空間のデザイン向上に伴い、衛生洗浄装置のコンパクト化が望まれている。このコンパクト化を実現するにあたり、洗浄ノズルの高さ方向に対する収納を低くすることが必要とされている。その達成手段として、洗浄ノズルの収納角度を低くする手段があるが、そのまま収納時と同じ角度で洗浄ノズルを進出させると使用者の臀部と接触するという問題が発生してくる。
【0003】
その問題に対して、洗浄ノズルの角度を変えることができる衛生洗浄装置がある(特許文献1)。特許文献1に記載された衛生洗浄装置では、洗浄ノズルは、回転運動、円弧運動、直線運動の何れかによって、使用状態の位置と格納状態の位置を確保することができる。しかしながら、洗浄ノズルの前進運動は、水圧と回転ダイアルの前後方向への移動のみで移動制御させているものであり、使用者の臀部接触を考慮した移動軌跡を設定したものではない。また、おしり洗浄時とビデ洗浄時の洗浄水の噴射方向を切替るために、回転ダイアルの回転方向の操作により洗浄ノズルの水平面に対する角度を変化させるが、使用者の設定自在となっている為、こちらも使用者の臀部接触を回避することを考慮した洗浄ノズルの水平面に対する角度調整を設定したものではない。
【0004】
また、特許文献2に記載された衛生洗浄装置では、洗浄ノズルはノズルシリンダの進退運動に連動して起伏し、洗浄ノズルが後退した状態のときに起立状態となる。この衛生洗浄装置の場合、洗浄ノズルと使用者の臀部との接触回避は可能となるが、洗浄ノズルが収納されているときに起立状態である為、洗浄ノズルの収納時の高さを抑え、衛生洗浄装置のコンパクト化を実現する点において、課題が残る。
さらに、洗浄ノズルが使用状態である進退運動及び洗浄の状態にある場合と、収納状態にある場合とに関わらず、シリンダは、ベース部材上に存在する。その為、例え洗浄ノズルの収納角度を伏せた状態から変化させることができたとしても、洗浄ノズルが進退する際には使用者の臀部と接触しない角度以上にする必要がある。つまり、シリンダがベース部材上で回動するための空間、特にケーシング上側の空間が必要となる為、どちらにせよ前述した課題が残ってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−249671号公報
【特許文献2】特開2000−160650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明では、洗浄ノズルの収納時の高さを抑えることで衛生洗浄装置の高さ方向に対するコンパクト化を狙い、且つ洗浄ノズル使用時は確実に使用者の臀部に洗浄ノズルが接触しない衛生洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、吐水口を有し、前記吐水口から水を噴射して使用者の身体を洗浄する洗浄ノズルと、前記洗浄ノズルを収納可能なケーシングとを備え、前記洗浄ノズルは、前記ケーシング内に収納された収納状態と、前記ケーシングから進出し、前記収納状態と水平面に対する角度が異なる進出状態と、の間を移動可能とする駆動手段を備えた衛生洗浄装置であって、
前記駆動手段は、前記洗浄ノズルの角度を変化させる第一の駆動部と、前記洗浄ノズルを進退させる第二の駆動部とからなり、
前記第一の駆動部による前記洗浄ノズルの角度変化の動作と、前記第二の駆動部による洗浄ノズルの進退動作とを同時に動作させる制御手段とを備え、
前記洗浄ノズルは、前記第一の駆動部により、水平面の角度を前記収納状態の角度よりも前記進出状態の角度が大きくなるように変化させつつ、前記第二の駆動部により進退させたことを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0008】
この衛生洗浄装置によれば、洗浄ノズルの収納角度を小さくし、且つ角度を変化させながら進出させることで、ノズル上に必要な空間を削減でき、製品のコンパクト化が実現可能となる。また角度を変化させながら進出させることは、使用者の臀部接触への問題も解決できる。
【0009】
さらに、第一の駆動部と第二の駆動部を連動制御させることによって、複雑な機構なしで実現できる。また、連動制御の場合、洗浄ノズルの進出量に対して、角度の変化量を制御する為、使用者の臀部接触回避を確実に実現できる。1つの駆動部によって同様な動作をさせる為には、2つの動きを関連付けた複雑な機構が必要となり、さらにその動きのタイミングを変更する際には改めて機構を設計し直す必要がある。それに比べ本発明では制御の設定1つでタイミングの変更が可能であり、これはノズルユニットを他機種へ流用することも可能となり、ユニットを統一化することでコストダウンへと繋がる。
また、動力を各々の駆動部に分割することで、駆動源の必要力を小さくすることができ、例えばモータ径等のサイズを小さくできる為、限られた収納制約の中でも効率良く駆動部を配置することが可能となる。
【0010】
また、第2の発明は、第1の発明にて、使用者がおしり、または女性のデリケートエリアを洗浄する際に、前記洗浄ノズルは、前記進出状態において、進退位置を調整可能であり、前記制御手段は、前記第一の駆動部による角度変化の動作を、前記進出状態の中で、一番ケーシング側に位置する箇所に前記洗浄ノズルが進出する前に終了させるようにしたことを特徴とした衛生洗浄装置である。
【0011】
この衛生洗浄装置によれば、洗浄ノズルをどの洗浄位置へ使用者が調整しても、第一の駆動部による角度変化が終了している為、常に一定の洗浄角度をもって「おしり」などを洗浄することができる。
【0012】
また、第3の発明は、第1または第2の発明にて、使用者がおしり、または女性のデリケートエリアを洗浄する際に、前記洗浄ノズルを起動させる又は停止させるためのスイッチを操作したときに、前記制御手段は、前記洗浄ノズルの前記第二の駆動部による進退動作を開始すると同時又はそれ以前に、前記第一の駆動部による角度変化の動作を開始させるようにしたことを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0013】
この衛生洗浄装置によれば、角度変化を動作開始時からさせることで、「おしり」などを洗浄する所定の角度へ早く変化を終了させることができ、使用者により選択できる洗浄範囲をより広く設定することが可能である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の態様によれば、これまで使用者の臀部への接触を回避する為に起立状態で収納し、そのまま進退動作をするために必要な洗浄ノズルの収納高さがあり、それにより製品の高さを低くすることが困難であった状態を、使用者の臀部接触を確実に回避して尚且つ収納時は洗浄ノズルユニットの高さを抑えることが可能となり、よりコンパクト化された製品デザインの自由度の高い衛生洗浄装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態にかかる衛生洗浄装置を備えたトイレ装置を表す斜視模式図である。
【図2】本実施形態のノズルユニットを例示する斜視模式図である。
【図3】本実施形態の洗浄ノズルの軌道を例示する平面模式図である。
【図4】本実施形態のノズルユニットを表す平面模式図である。
【図5】本実施形態の洗浄ノズルの軸に沿うような切断面すなわち図2に表した切断面A−Aにおける断面模式図である。
【図6】本実施形態の洗浄ノズルの制御動作を例示するタイムチャートである。
【図7】収納状態の洗浄ノズルと便座に着座した使用者の臀部との位置関係を例示する平面模式図である。
【図8】進出状態の洗浄ノズルと便座に着座した使用者の臀部との位置関係を例示する平面模式図である
【図9】進出途中の洗浄ノズルと便座に着座した使用者の臀部との位置関係を例示する平面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の実施の形態にかかる衛生洗浄装置を備えたトイレ装置を表す斜視模式図である。
【0017】
図1に表したトイレ装置は、洋式腰掛便器(以下説明の便宜上、単に「便器」と称する)800と、その上に設けられた衛生洗浄装置100と、を備える。衛生洗浄装置100は、ケーシング400と、便座200と、便蓋300と、を有する。便座200と便蓋300とは、ケーシング400に対して開閉自在にそれぞれ軸支されている。
【0018】
ケーシング400の内部には、便座200に座った使用者の「おしり」などの洗浄を実現する身体洗浄機能部などが内蔵されている。また、例えばケーシング400には、使用者が便座200に座ったことを検知する着座検知センサ404が設けられている。着座検知センサ404が便座200に座った使用者を検知している場合において、使用者が例えばリモコンなどの図示しない操作部を操作すると、洗浄ノズル473を便器800のボウル801内に進出させることができる。なお、図1に表した衛生洗浄装置100では、洗浄ノズル473がボウル801内に進出した状態を表している。
【0019】
洗浄ノズル473の先端部には、ひとつあるいは複数の吐水口474が設けられている。そして、洗浄ノズル473は、その先端部に設けられた吐水口474から水を噴射して、便座200に座った使用者の「おしり」などを洗浄することができる。なお、本願明細書において「水」という場合には、冷水のみならず、加温されたお湯も含むものとする。
【0020】
図2は、本実施形態のノズルユニットを例示する斜視模式図である。
なお、図2(a)は、洗浄ノズルが収納された状態を表す斜視模式図であり、図2(b)は、洗浄ノズルが進出した状態を表す斜視模式図である。
【0021】
本実施形態のノズルユニット470は、図2に表したように、基台475と、基台475に支持された洗浄ノズル473と、洗浄ノズル473を進退させるノズルモータ(第二の駆動部)476と、を有する。洗浄ノズル473は、ノズルヘッド471と、シリンダ472と、を有する。すなわち、図2に表した洗浄ノズル473は、2段式である。なお、本実施形態では、2段式すなわち2本の可動部を有する洗浄ノズルを例に挙げて説明するが、本発明はこれに限定されず、可動部が3本以上の多段式の洗浄ノズル、および可動部がノズルヘッドのみの単段式の洗浄ノズルも包含する。
【0022】
ノズルヘッド471は、シリンダ472に対して摺動自在に設けられ、少なくともその一部がシリンダ472の中に格納可能とされている。ノズルヘッド471は、ノズルモータ476から伝達される駆動力により、基台475に対して摺動自在に設けられている。これについては、後に詳述する。
【0023】
ノズルモータ476は、基台475に固定されている。また、洗浄ノズル473は、スライダ477を有する。シリンダ472は、スライダ477に固定されている。スライダ477は、基台475に対して摺動自在に設けられている。そのため、シリンダ472は、スライダ477とともに基台475に対して摺動可能である。これにより、洗浄ノズル473は、ケーシング400および基台475から進退自在に移動できる。
【0024】
また、基台475には、ラック450が設けられており、このラック450に係合させる歯車451を有する洗浄ノズル473の角度を変化させるノズルモータ(第一の駆動部)480がケーシング400に取り付けられている。第一の駆動部であるノズルモータ480から伝達される駆動力により、ノズルユニット470は、ラック450の軌道上に一定の軌道を描き、ノズルユニット470の水平面に対する角度を変化させる。このとき、洗浄ノズル473は、収納状態において洗浄ノズル473の上方に存在する空間B(図4参照)を前進動作により利用し、例えば便器800の上面などの水平面850(図4参照)に対する洗浄ノズル473の軸473cの角度θ(図4参照)が大きくなる姿勢へ遷移しつつ進出する。言い換えれば、洗浄ノズル473は、収納状態において洗浄ノズル473の上方に存在する空間Bを前進動作により利用して、収納状態よりも起立する姿勢へ遷移しつつ進出する。これについて、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0025】
図3は、本実施形態の洗浄ノズルの軌道を例示する平面模式図である。また、図4は、本実施形態のノズルユニットを表す平面模式図である。また、図5は、本実施形態のノズルユニットを表す断面模式図である。
なお、図3及び図4は、本実施形態のノズルユニット470を右側方から眺めた平面模式図である。また、図5は、洗浄ノズル473の軸473cに沿うような切断面すなわち図2に表した切断面A−Aにおける断面模式図である。さらに、図5に表したノズルユニット470では、説明の便宜上、ノズルモータ481及びラック450を省略している。
【0026】
ケーシング400は、図4に表したように、ケースプレート401と、ケースカバー402と、を有する。身体洗浄機能部などは、ケースプレート401に適宜載置され、その上方をケースカバー402により覆われている。
【0027】
ノズルヘッド471には、図5に表したように、ケーブルラック(伝達部)478が固定されている。ケーブルラック478は、例えば柔軟性を有する樹脂などの材料により形成されている。ケーブルラック478の少なくとも一側面には、歯車(伝達部)481、483と係合する凹凸が設けられている。そして、ケーブルラック478は、基台475に設けられた第1のケーブルガイド部479と、ケーシング400に設けられた第2のケーブルガイド部411と、に沿って衛生洗浄装置100内で摺動可能に支持されている。
【0028】
第二の駆動部であるノズルモータ476は、駆動出力を適宜減速させて歯車481、483に出力可能である。ケーブルラック478は、歯車483に係合され、歯車483の回転駆動力を直線方向の駆動力に変換してノズルヘッド471を移動させる。つまり、ノズルヘッド471は、歯車481、483およびケーブルラック478を介してノズルモータ476から伝達される駆動力により、基台475に対して摺動自在に設けられている。
【0029】
図6は本実施形態の洗浄ノズルを進出させる際の制御動作を例示するタイムチャートである。図6のように、使用者が洗浄ノズル473を起動させるスイッチを操作するまで、洗浄ノズル473を進退させる第二の駆動部であるノズルモータ476と、洗浄ノズル473の角度を変化させる第一の駆動部であるノズルモータ480は、ともに停止状態である。使用者が洗浄ノズル473を起動させるスイッチを操作すると、洗浄ノズル473は収納状態から進出状態へ変化を始める。ノズルモータ476の動力により洗浄ノズル473は、基台475をスライダ477が摺動して進出する。スライダ477が進出すると同時に、ノズルモータ480の角度変化運動により、洗浄ノズル473の角度は回動軸462を中心軸として変化していく。これにより、洗浄ノズル473は、洗浄ノズル473の軸473cの水平面850に対する角度θが大きくなる姿勢へ遷移しつつ進出する。言い換えれば、洗浄ノズル473は、収納状態よりも起立する姿勢へ遷移しつつ進出する。
【0030】
図6(a)、(b)は第一の駆動部であるノズルモータ480と、第二の駆動部であるノズルモータ476を同時に駆動開始する。(a)は2つの駆動が同時に動作した状態で、洗浄ノズル473の角度変化が終了後、第二の駆動部であるノズルモータ476による駆動で洗浄ノズル473を進出させる制御であり、(b)は第一の駆動部と第二の駆動部による同時駆動を、ある所定の進出位置で、第一の駆動部であるノズルモータ480による駆動のみで角度変化をさせ、角度変化終了後に第二の駆動部であるノズルモータ476による駆動で洗浄ノズル473を進出させる制御である。
【0031】
図6(c)、(d)は使用者が洗浄ノズル473を起動させるスイッチを操作後、第一の駆動部あるいは第二の駆動部のどちらか一方による駆動の時間がある。その後第一の駆動部であるノズルモータ480と、第二の駆動部であるノズルモータ476を同時駆動させ、洗浄ノズルの角度変化が終了後、に第二の駆動部であるノズルモータ476による駆動で洗浄ノズル473を進出させる制御である。
【0032】
また、筒体461の回動中心に位置する回動軸463は、収納状態の洗浄ノズル473の先端側に設けられている。そのため、ノズルモータ480が洗浄ノズル473の角度を変化させる際には、洗浄ノズル473の先端部473aの移動量は、洗浄ノズル473の後端部および上端部(スライダ477の上端部)477aの移動量よりも小さい。例えば、洗浄ノズル473の先端部473aの曲線軌道491の長さは、スライダ477の上端部477aの軌道495の長さよりも短い。そのため、衛生洗浄装置100の前側において、洗浄ノズル473が移動する空間を抑えることができる。そのため、便座200の近傍に位置するケーシング400の前方部をより低くし、便座200に沿ったより滑らかな形状とすることができる。これにより、衛生洗浄装置100のデザイン性の向上化およびコンパクト化を図ることができる。
【0033】
本実施形態では、回動軸463は、ケーシング400に設けられている。そのため、ケーシング400からみた回動軸463の相対的位置は、変化しない。一方、洗浄ノズル473からみた回動軸463の相対的位置は、洗浄ノズル473の移動に伴い、洗浄ノズル473の先端側と後端側との間において変化する。このように、回動軸463をケーシング400に対して移動させることなく、洗浄ノズル473の軸473cの水平面850に対する角度θを変化させることができる。そのため、衛生洗浄装置100の高さをより低く抑え、衛4洗浄装置100のコンパクト化を図ることができる。
【0034】
図7は収納状態の洗浄ノズルと便座に着座した使用者の臀部との位置関係を例示する平面模式図である。
また、図8は、進出状態の洗浄ノズルと便座に着座した使用者の臀部との位置関係を例示する平面模式図である。
また、図9は、進出途中の洗浄ノズルと便座に着座した使用者の臀部との位置関係を例示する平面模式図である。
図3〜図5に関して前述したように、本実施形態では、洗浄ノズル473の軸473cの水平面850に対する角度θが進出状態よりも小さい姿勢で洗浄ノズル473を収納させることができる。より具体的には、図7に表したように、収納状態の洗浄ノズル473の軸473cは、便座200に着座した使用者の臀部600と干渉する。言い換えれば、収納状態における洗浄ノズル473の軸473cの水平面850に対する角度θは、洗浄ノズル473が収納状態の姿勢(角度)のままで進出した場合に便座200に着座した使用者の臀部600と接触する角度である。
【0035】
これに対して、本実施形態の洗浄ノズル473は、図9に表したように、洗浄ノズル473の軸473cの水平面850に対する角度θが大きくなる姿勢へ遷移しつつ進出する。そのため、図8に表したように、進出状態の洗浄ノズル473の軸473cは、便座200に着座した使用者の臀部600とは干渉しない。また、図8および図9に表したように、進出状態および進出途中の洗浄ノズル473は、便座200に着座した使用者の臀部600とは接触しない。本実施形態では、洗浄ノズル473の先端部473aが描く曲線軌道491は、洗浄ノズル473が便座200に着座した使用者の臀部600と接触することを回避する軌道である。一方、洗浄ノズル473の先端部473aが描く直線軌道493は、進出状態へ到達する軌道である。これにより、収納状態の洗浄ノズル473の軸473cが便座200に着座した使用者の臀部600と干渉する程度にまで、洗浄ノズル473の軸473cの水平面850に対する角度θが小さい姿勢で洗浄ノズル473を収納させることができる。また、便座200の後部の先端部に洗浄ノズル473の先端部473aが到達するタイミングで曲線軌道491から直線軌道493に遷移していることで、洗浄ノズル473と使用者の臀部600との干渉を確実に防ぐことができる。
なお、洗浄ノズル473と使用者の臀部600との干渉を回避する角度θは、一般的な形状を有する便座200および便器800、並びに一般的な収納位置(例えば臀部600との水平方向および鉛直方向の相対的位置)に設置された洗浄ノズル473を有する衛生洗浄装置100を使用した場合には、例えば約30〜45°程度である。
【0036】
本実施形態によれば、収納状態の洗浄ノズル473の高さをより低く抑えた場合でも、進出状態および進出途中の洗浄ノズル473が便座200に着座した使用者の臀部600と接触することを回避できる。これにより、収納状態の洗浄ノズル473の高さをより低く抑えることができる。そのため、衛生洗浄装置100の高さをより低く抑え、衛生洗浄装置100のコンパクト化を図ることができる。
【0037】
また、本実施形態の洗浄ノズル473は、図6のような一連の動作が終了後に、使用者のおしり、または女性のデリケートエリアを洗浄するための水が吐水口474から噴射される。洗浄ノズル473は、使用者がおしり、または女性のデリケートエリアを洗浄する際に、第二の駆動部であるノズルモータ476の動力により洗浄ノズル473の進退位置が調整可能である。本実施形態の洗浄ノズル473は、図6のように、洗浄ノズル473を角度変化させる第一の駆動部であるノズルモータ480の動作が、洗浄ノズル473のスライダ477が基台475を摺動して進出させる第二の駆動部であるノズルモータ476の動作よりも、使用者が洗浄中に調整可能とする洗浄ノズル473の進退位置の調整幅分以上先に終了する。これにより、洗浄ノズル473をどの洗浄位置へ使用者が調整しても、第一の駆動部による角度変化が終了している為、常に一定の洗浄角度をもって「おしり」または女性のデリケートエリアなどを洗浄することができる。
【0038】
なお、図6(b)、(c)のように、洗浄ノズル473の角度変化を終えた後の、第二の駆動部であるノズルモータ476の駆動による洗浄ノズル473の進出する移動量が大きい程、使用者が洗浄中に調整可能とする洗浄ノズル473の進退位置の調整幅を大きく設定することが可能となる。
【0039】
また、本実施形態の洗浄ノズル473は図6(a)〜(c)のように洗浄ノズル473の角度変化をさせる第一の駆動部であるノズルモータ480の動作が、洗浄ノズル473の進退動作をさせる第二の駆動部であるノズルモータ476の動作が開始すると同時に開始させる。これにより、洗浄ノズル473の角度が、おしりまたは女性のデリケートエリアを洗浄する所定の角度へ早く変化を終了させることができ、使用者により選択できる洗浄範囲をより広く設定することが可能である。
【符号の説明】
【0040】
100 衛生洗浄装置、 200 便座、 300 便蓋、 400 ケーシング、 401 ケースプレート、 402 ケースカバー、 404 着座検知センサ、 411 第2のケーブルガイド部、 450ラック、 451歯車、 453 曲線規制部、 455 直線規制部、 461 筒体、 463 回動軸、 470 ノズルユニット、 471 ノズルヘッド、 472 シリンダ、 473 洗浄ノズル、 473a 先端部、 473c 軸、 474 吐水口、 475 基台、 476 ノズルモータ、 477 スライダ、 477a 上端部、 477b 嵌合部、 478 ケーブルラック、 479 第1のケーブルガイド部、 480ノズルモータ、 481、483 歯車、 491 曲線軌道、 493 直線軌道、 495 軌道、 600 臀部、 800 便器、 801 ボウル、 850 水平面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐水口を有し、前記吐水口から水を噴射して使用者の身体を洗浄する洗浄ノズルと、前記洗浄ノズルを収納可能なケーシングとを備え、
前記洗浄ノズルは、前記ケーシング内に収納された収納状態と、前記ケーシングから進出し、前記収納状態と水平面に対する角度が異なる進出状態と、の間を移動可能とする駆動手段を備えた衛生洗浄装置であって、
前記駆動手段は、前記洗浄ノズルの角度を変化させる第一の駆動部と、前記洗浄ノズルを進退させる第二の駆動部とからなり、
前記第一の駆動部による前記洗浄ノズルの角度変化の動作と、前記第二の駆動部による前記洗浄ノズルの進退動作を同時に動作可能な制御手段とを備え、
前記洗浄ノズルは、前記第一の駆動部により、水平面の角度を前記収納状態の角度よりも前記進出状態の角度が大きくなるように変化させつつ、前記第二の駆動部により進退させたことを特徴とする衛生洗浄装置。
【請求項2】
使用者がおしり、または女性のデリケートエリアを洗浄する際に、前記洗浄ノズルは、前記進出状態において、進退位置を調整可能であり、前記制御手段は、前記第一の駆動部による角度変化の動作を、前記進出状態の中で、一番ケーシング側に位置する箇所に前記洗浄ノズルが進出する前に終了させるようにしたことを特徴とする請求項1記載の衛生洗浄装置。
【請求項3】
使用者がおしり、または女性のデリケートエリアを洗浄する際に、前記洗浄ノズルを起動させる又は停止させるためのスイッチを操作したときに、
前記制御手段は、
前記洗浄ノズルの前記第二の駆動部による進退動作を開始すると同時又はそれ以前に、前記第一の駆動部による角度変化の動作を開始させるようにしたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の衛生洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−211467(P2012−211467A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77526(P2011−77526)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】