説明

衛生用紙、容器入り衛生用紙、及び包装用袋体入り衛生用紙

【課題】使用前の衛生用紙からの香料成分の揮発が有効に防止されるとともに、使用時においては十分な香りを得ることが可能な衛生用紙を提供する。
【解決手段】本発明の衛生用紙1は、原紙2と、原紙2に付着されるマイクロカプセル3と、マイクロカプセル3に封入される香料成分4と、を備えた衛生用紙1であって、マイクロカプセル3は、その膜厚(L)が0.03〜0.17μmのものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛生用紙、容器入り衛生用紙、及び包装用袋体入り衛生用紙に関する。更に詳しくは、香料成分が封入されたマイクロカプセルが原紙に付着された衛生用紙、容器入り衛生用紙、及び包装用袋体入り衛生用紙に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ティシュペーパー等の衛生用紙は、風邪や花粉症等によって鼻水が出た際に鼻をかむために用いられている。このような衛生用紙を用いて頻繁に鼻をかんだ場合には、鼻の粘膜が炎症を起こして痛みを感じたり、鼻の表面が擦れて赤く荒れてしまったりすることがある。このような症状を緩和するために、例えば、メントール及びユーカリ油を配合した香料を含浸させた香料入りティシュペーパーが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、香料成分の揮発を防止することを目的として、このような香料成分をマイクロカプセルに封入するとともに、前記マイクロカプセルをローション中に分散させ、原紙に塗布したローションティシュペーパーが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
更に、マイクロカプセルを破壊しなくても爽快感を得ることができるローションティシュペーパーとして、原紙に対して0.2〜0.5重量%の割合で、粒径が8μm以上のマイクロカプセルによってカプセル化された香料成分が配合されているとともに、前記香料成分は20℃において6.7〜270Paの蒸気圧を有する香料成分を少なくとも1種以上含むティシュペーパーが開示されている(特許文献3参照)。
【0005】
【特許文献1】実公平4−50861号公報
【特許文献2】特表平10−510839号公報
【特許文献3】特許第3615534号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された香料入りティシュペーパーは、単に香料成分を原紙に含浸させたものであるため、カートン等に収納された状態で長期間に亘って使用した場合に、経時的にメントール等の香料成分が揮発し、未使用のティシュペーパーから香料成分が消散してしまうという問題があった。
【0007】
また、特許文献2に記載された前記ローションティシュペーパーは、香料成分をマイクロカプセルに封入することによって、香料成分の揮発を防止することはできるものの、例えば、鼻をかむ際に生じる応力や、実際にティシュペーパーを手で揉み解す等の操作を行わなければマイクロカプセルが破壊されないため、使用者が十分な香りを得られない場合があるという問題があった。
【0008】
また、特許文献3に記載された前記ローションティシュペーパーは、適度の揮発性能(20℃において6.7〜270Pa)を有する香料成分をマイクロカプセル化したものであるため、マイクロカプセルを破壊しない場合であっても封入された香料成分が揮発するものである。このため、特許文献1の香料入りティシュペーパーと同様に、経時的に香料成分が揮発してしまうという問題があった。また、一定量の香料成分はマイクロカプセルから徐々に放出されるものの、香料成分の放出量が少なく、実際の使用時に十分な香りを得られないという問題もある。また、このような除放性のマイクロカプセルに香料成分が封入されているため、例えば、マイクロカプセル内に香料成分が大量に残存した状態で、使用済みの原紙とともに廃棄されてしまう場合もある。
【0009】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、使用前の衛生用紙からの香料成分の揮発が有効に防止されるとともに、使用時においては十分な香りを得ることが可能な衛生用紙、容器入り衛生用紙、及び包装用袋体入り衛生用紙を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討した結果、香料成分を封入したマイクロカプセルを備えた衛生用紙において、衛生用紙を収納したカートン等の容器や包装用袋体の取出口が未開封の状態、又はこれらの取出口を開封した後であっても取出口から取り出す前の状態においては、香料成分がマイクロカプセルから外部へは放出されず、且つ、この衛生用紙をカートン等の取出口から取り出す際における取出口内周縁との接触により、直接又は原紙を介した物理的衝撃を受けることで破壊されるような膜厚のマイクロカプセルを用いることによって、上記課題を解決可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明によれば、以下に示す衛生用紙、容器入り衛生用紙、及び包装用袋体入り衛生用紙が提供される。
【0011】
[1] 原紙と、前記原紙に付着されるマイクロカプセルと、前記マイクロカプセルに封入される香料成分と、を備えた衛生用紙であって、前記マイクロカプセルは、その膜厚(L)が0.03〜0.17μmのものである衛生用紙。
【0012】
[2] 前記マイクロカプセルは、その内径(d)に対する前記膜厚(L)の割合(L/d)が0.01〜0.06のものである前記[1]に記載の衛生用紙。
【0013】
[3] 前記マイクロカプセルは、レーザー回折/散乱法による体積粒度分布における、50体積%での平均粒径(D50)が、2〜4μmのものである前記[1]又は[2]に記載の衛生用紙。
【0014】
[4] 前記マイクロカプセルは、レーザー回折/散乱法による体積粒度分布における、粒径(D)が1.5〜5.0μmのマイクロカプセルの頻度が、85体積%以上のものである前記[1]〜[3]のいずれかに記載の衛生用紙。
【0015】
[5] 前記原紙と前記マイクロカプセルとの付着力[N]が、前記マイクロカプセルの破壊強度[N]よりも大である前記[1]〜[4]のいずれかに記載の衛生用紙。
【0016】
[6] 更に、保湿液を含浸させてなる前記[1]〜[5]のいずれかに記載の衛生用紙。
【0017】
[7] ティシュペーパー、トイレットペーパー、ウエットティシュペーパー、及びタオルペーパーからなる群より選択させる少なくとも一種の衛生用紙である前記[1]〜[6]のいずれかに記載の衛生用紙。
【0018】
[8] 前記[1]〜[7]のいずれかに記載の衛生用紙と、前記衛生用紙を収納し得る内部空間が形成された箱状をなすとともに、前記衛生用紙の取出口を有する容器本体と、を備えた容器入り衛生用紙。
【0019】
[9] 前記容器本体が、上面、底面、一対の側面、及び一対の妻面を有する形状に折り曲げられ、これらの面によって区画されたカートンである前記[8]に記載の容器入り衛生用紙。
【0020】
[10] 前記[1]〜[7]のいずれかに記載の衛生用紙と、その内部に前記衛生用紙を収納し得る扁平な袋状をなすとともに、前記衛生用紙の取出口を有する包装用袋体と、を備えた包装用袋体入り衛生用紙。
【発明の効果】
【0021】
本発明の衛生用紙は、膜厚が0.03〜0.17μmのマイクロカプセルに香料成分が封入されているため、衛生用紙を収納したカートン等の容器や包装用袋体の取出口が未開封の状態、又はこれらの取出口を開封した後であっても取出口から取り出す前の状態においては、マイクロカプセルによって香料成分の揮発が有効に防止される。このため、未使用の衛生用紙から香料成分が消散してしまうということがない。
【0022】
また、このマイクロカプセルは、衛生用紙をカートン等の容器の取出口から取り出す際における取出口内周縁との接触により、直接又は原紙を介した物理的衝撃を受けることで破壊されるように構成されているため、衛生用紙を使用する直前にマイクロカプセルに封入されていた香料成分が外部に放出され、使用者は十分な香りを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の衛生用紙、容器入り衛生用紙、及び包装用袋体入り衛生用紙を実施するための最良の形態について図面を参照しながら具体的に説明する。但し、本発明はその発明特定事項を備える衛生用紙、容器入り衛生用紙、及び包装用袋体入り衛生用紙を広く包含するものであり、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0024】
[1]衛生用紙:
まず、本発明の衛生用紙の一の実施形態について具体的に説明する。本発明の衛生用紙は、例えば、図1に示すように、原紙2と、原紙2に付着されるマイクロカプセル3と、マイクロカプセル3に封入される香料成分4と、を備えた衛生用紙1であって、マイクロカプセル3は、その膜厚(L)が0.03〜0.17μmのものである。ここで、図1は、本発明の衛生用紙の一の実施形態の表面の一部拡大平面図である。
【0025】
このように構成することによって、衛生用紙を収納したカートン等の容器や包装用袋体等の取出口が未開封の状態、又はこれらの取出口を開封した後であっても取出口から取り出す前の状態においては、上記マイクロカプセルによって香料成分の揮発が有効に防止される。このため、未使用の衛生用紙から香料成分が消散してしまうということがない。また、このマイクロカプセルは、衛生用紙をカートン等の容器の取出口から取り出す際における取出口内周縁との接触により、直接又は原紙を介した物理的衝撃を受けることで破壊されるように構成されているため、衛生用紙を使用する直前にマイクロカプセルに封入されていた香料成分が外部に放出され、使用者は十分な香りを得ることができる。
【0026】
なお、香料成分の揮発を防止することを目的として、特表平10−510839号公報(特許文献2)等には、香料成分をマイクロカプセルに封入するとともに、前記マイクロカプセルをローション中に分散させ、原紙に塗布したローションティシュペーパーが開示されているが、このような発明においては、マイクロカプセルの具体的な構成については何ら考慮されておらず、鼻をかむ際に生じる応力や、実際にティシュペーパーを手で揉み解す等の操作を行わなければマイクロカプセルが破壊されないため、使用者が十分な香りを得られない場合があるという問題があった。
【0027】
また、本発明の衛生用紙は、例えば、ロール状のトイレットペーパーとして用いた場合には、トイレットペーパーの上部を覆うように配置され、このトイレットペーパーを切断するために用いられるカバープレートとの接触により、直接又は原紙を介した物理的衝撃を受けることでマイクロカプセルが破壊され、香料成分を外部に放出することができる。
【0028】
なお、このマイクロカプセルの膜厚(L)が0.03μm未満であると、マイクロカプセルの強度が低すぎて、カートン等の容器の取出口から衛生用紙を取り出す前にマイクロカプセルが破壊され、香料成分が揮発してしまう。
【0029】
一方、マイクロカプセルの膜厚(L)が0.17μmを超えると、マイクロカプセルの強度が高すぎて、取出口内周縁との接触による物理的衝撃だけではマイクロカプセルが破壊されず、例えば、本発明の衛生用紙を用いて鼻をかむ際に生じる押圧力や、実際に衛生用紙を手で揉み解す等の操作を行わなければマイクロカプセルが破壊されないため、単に取出口から衛生用紙を取り出して使用したとしても、十分な香りを得ることができない。
【0030】
[1−1]原紙:
本発明の衛生用紙を構成する原紙の種類について特に制限はなく、従来公知の衛生用紙を構成する原紙を用いることができる。例えば、ティシュペーパー(顔ふき紙、化粧紙等と呼ばれるもの)、ちり紙、タオルペーパー(キッチンペーパー等)、トイレットペーパー、ワッティング(紙綿)等の使い捨て紙(例えば、紙パルプ技術便覧第5版、第459頁参照、1992年1月30日発行、紙パルプ技術協会編集・発行)等を構成する原紙を挙げることができる。
【0031】
例えば、原紙としてティシュペーパーを構成する原紙を用いた場合には、マイクロカプセルに封入された香料成分によって、鼻をかんだ際に爽快感を得ることができる。また、風邪や花粉症などのアレルギー症状等によって、鼻の粘膜が炎症を起こした場合には、この香料成分の作用によって炎症を緩和することができる。
【0032】
また、原紙としてトイレットペーパーを構成する原紙を用いた場合には、排便の際に用いることによって、香料成分の発散により排便臭を軽減することができる。
【0033】
このように、本発明の衛生用紙は、直接肌に接触させて使用する衛生用紙として好適に用いられるため、衛生用紙を構成する原紙は、柔軟性を有する肌触りが良好なものであることが好ましい。また、ティシュペーパーやトイレットペーパー等を構成する原紙を用いる場合には、上記した柔軟性を有するとともに、使用時に容易に破れることのない程度の強度を有し、更に吸収性を有するものであることが好ましい。
【0034】
[1−2]マイクロカプセル:
本発明の衛生用紙に用いられるマイクロカプセルは、その内部に香料成分を封入したものである。このマイクロカプセルは、原紙に付着された状態で配置され、衛生用紙の使用前には、香料成分の揮発を防止するとともに、使用時においては、衛生用紙をカートン等の容器の取出口から取り出す際における取出口内周縁との接触により、直接又は原紙を介した物理的衝撃を受けることで破壊され、香料成分を外部に放出することができるように、その膜厚(L)が0.03〜0.17μmとなるように構成されている。
【0035】
香料成分が封入されたマイクロカプセルを原紙に付着させる方法については特に制限はないが、例えば、グラビアコーターやスプレー式の従来公知の塗工方法を用いることができる。
【0036】
本発明の衛生用紙においては、上記したように、容器の取出口から取り出す際における取出口内周縁との接触による物理的衝撃によってマイクロカプセルが破壊されるため、衛生用紙を収納する容器やその取出口の形状によって、好ましいマイクロカプセルの膜厚(L)を適宜決定することができる。
【0037】
例えば、衛生用紙を収納する容器として、従来、ティシュペーパーの収納に用いられるウインドウフィルム付きカートンを用いる場合には、マイクロカプセルの膜厚(L)は、0.05〜0.17μmであることが好ましく、0.07〜0.15μmであることが更に好ましい。このようなウインドウフィルム付きカートンは、ウインドウフィルムに形成された取出用のスリットの幅が狭く構成されているため、衛生用紙に均一且つ比較的大きな物理的衝撃が直接加わり易く、マイクロカプセルの膜厚(L)を比較的広い範囲に設定することができる。
【0038】
また、衛生用紙を収納する容器として、上記したようなウインドウフィルムが配置されていない、いわゆるフィルムレスカートンを用いる場合には、マイクロカプセルの膜厚(L)は、0.03〜0.15μmであることが好ましく、0.05〜0.13μmであることが更に好ましい。このようなフィルムレスカートンを用いた場合は、カートンに形成された取出口の周縁の一部との接触により衛生用紙が物理的衝撃を受けるものである。このため、原紙を介した物理的衝撃によってもマイクロカプセルが確実に破壊されるように、マイクロカプセルの膜厚(L)を比較的薄くすることが好ましい。なお、このような衛生用紙を収納するためのカートンの具体的な構成は、本発明の容器入り衛生用紙の実施形態において具体的に説明する。
【0039】
また、衛生用紙を収納する容器として、例えば、ポケットティシュ等の扁平な袋状をなす包装用袋体を用いる場合には、マイクロカプセルの膜厚(L)は、0.03〜0.15μmであることが好ましく、0.05〜0.13μmであることが更に好ましい。
【0040】
また、本発明の衛生用紙がロール状のトイレットペーパーであり、トイレットペーパーホルダーに配置して用いる際には、トイレットペーパーホルダーのカバープレートとの接触による物理的衝撃でマイクロカプセルが破壊されるように、マイクロカプセルの膜厚(L)は、0.05〜0.17μmであることが好ましく、0.07〜0.15μmであることが更に好ましい。
【0041】
なお、本発明におけるマイクロカプセルの膜厚(L)は、電子顕微鏡において、無作為に抽出した100個のマイクロカプセルの膜厚の平均値とする。
【0042】
また、このマイクロカプセルは、その内径(d)に対する膜厚(L)の割合(L/d)が、0.01〜0.06のものであることが好ましく、0.02〜0.05のものであることが更に好ましい。上記割合(L/d)が、0.01未満であると、製造工程においてマイクロカプセルが潰れ易くなってしまうことがある。一方、上記割合(L/d)が、0.06を超えると、マイクロカプセル中に内包される香料成分の量が相対的に少なくなり、十分な香りを付与するためのマイクロカプセルが大量に必要となり、効率的でなく、経済的にも好ましくない。
【0043】
なお、マイクロカプセルの内径(d)は、電子顕微鏡によって測定することができる。上記した割合(L/d)は、無作為に抽出した100個のマイクロカプセルにおける平均値とする。
【0044】
また、このマイクロカプセルは、レーザー回折/散乱法による体積粒度分布における、50体積%での平均粒径(D50)が、2〜4μmのものであることが好ましく、2.5〜3.5μmのものであることが更に好ましい。マイクロカプセルの平均粒径(D50)が4μmを超えると、例えば、香料成分が封入されたマイクロカプセルを原紙に付着させる際に用いられるグラビアコーター用のグラビアロールの凸部分によってマイクロカプセルが潰れてしまうことがあったり、スプレー式の塗工に用いられるスプレーノズルにマイクロカプセルが詰まってしまうことがある。一方、平均粒径(D50)が2μm未満であると、1個のマイクロカプセル中に封入される香料成分の量が少なくなり、十分な香りを付与するためのマイクロカプセルが大量に必要となり、効率的でなく、経済的にも好ましくない。
【0045】
上記したレーザー回折/散乱法による体積粒度分布は、従来公知のレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置、例えば、堀場製作所製のLA−920(商品名)等を用いて測定することができる。
【0046】
また、本発明の衛生用紙に用いられるマイクロカプセルは、レーザー回折/散乱法による体積粒度分布における、粒径(D)が1.5〜5.0μmのマイクロカプセルの頻度が、85体積%以上のものであることが好ましく、粒径(D)が2.0〜4.0μmのマイクロカプセルの頻度が、50体積%以上であることが更に好ましい。このように、本発明の衛生用紙に用いられるマイクロカプセルは、上記体積粒度分布がシャープな分布を有するものであることが好ましい。例えば、上記した1.5〜5.0μmのマイクロカプセルの頻度が85体積%未満であると、マイクロカプセル中に封入される香料成分の量が少ない粒径の小さなマイクロカプセルや、上記したようにマイクロカプセルを原紙に付着させる塗工工程において好ましくない粒径の大きなマイクロカプセルの割合が多くなってしまう。
【0047】
更に、本発明の衛生用紙においては、原紙とマイクロカプセルとの付着力[N]が、マイクロカプセルの破壊強度[N]よりも大であることが好ましい。本発明の衛生用紙は、衛生用紙をカートン等の取出口から取り出す際における取出口内周縁との接触により、直接又は原紙を介した物理的衝撃を受けることでマイクロカプセルが破壊されるため、上記した構成とすることにより、取出口内周縁との接触による物理的衝撃によってマイクロカプセルが良好に破壊される。例えば、原紙とマイクロカプセルとの付着力[N]が、マイクロカプセルの破壊強度[N]未満であると、マイクロカプセルが破壊される前に、原紙からマイクロカプセルが脱落してしまうことがある。
【0048】
マイクロカプセルを構成する被膜の材料については特に制限はないが、例えば、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、尿素樹脂、ゼラチン、アクリル樹脂、ポリスチレン、ナイロン、アルギン酸カルシウム、アラビアゴム、ポリビニルアルコール、パラフィン、及びポリエチレンからなる群より選択される少なくとも一種の成分を含む材料を用いることができる。これらの中で、例えば、メラミン樹脂、ウレタン樹脂等が好ましい。このような材料は、マイクロカプセルの粒径を小さく調製し易く、また、気密性に優れるため、香料成分を長時間保持することが可能となる。
【0049】
なお、特に限定されることはないが、本発明の衛生用紙においては、原紙100質量部に対して、香料成分を、0.01〜2.0質量部付着させることが好ましく、0.05〜1.0質量部付着させることが更に好ましく、0.1〜0.5質量部付着させることが特に好ましい。このように構成することによって、使用時において良好な香りを得ることができる。なお、上記した原紙に付着させる香料成分の量は、原紙に付着させたマイクロカプセル中に封入された香料成分の量のことである。
【0050】
[1−2a]マイクロカプセルの製造方法:
本発明の衛生用紙に用いられるマイクロカプセルは、例えば、化学的方法、物理化学的方法、及び機械的方法等の従来公知のマイクロカプセルを製造する方法を用いて製造することができる。
【0051】
例えば、化学的方法は、化学反応を利用してカプセルを形成する方法であり、界面重合法やin−situ(その場)重合等の方法を好適に用いることができる。また、物理化学的方法は、凝固、析出等のような化学反応以外の方法によってカプセルを形成する方法であり、例えば、液中乾燥法やコアセルベーション法等の方法を好適に用いることができる。更に、機械的方法は、噴霧乾燥法や乾式混合法等の方法を好適に用いることができる。
【0052】
以下、マイクロカプセルの製造方法の一例として、マクロカプセルの材料にメラミン樹脂を用いた例について説明する。
【0053】
まず、マイクロカプセルに封入するための香料成分と、乳化液と、メラミン樹脂プレポリマーとをそれぞれ準備する。上記乳化液としては、例えば、エチレン無水マレイン酸等を好適に用いることができる。
【0054】
準備した乳化液を攪拌しながら、その中に香料成分を添加する。その後、徐々に乳化液を攪拌する回転数を上げて、香料の油滴を調製する。
【0055】
次に、香料の油滴を調製した乳化液に、メラミン樹脂プレポリマーを添加し、攪拌、反応を続けることにより、香料成分からなる油滴の周りにメラミン樹脂膜が生成されて、マイクロカプセルとなる。なお、香料成分及びメラミン樹脂プレポリマーの量により、マイクロカプセルの膜厚を調節することができる。
【0056】
[1−3]香料成分:
本発明の衛生用紙に用いられる香料成分としては、従来、様々な製品に香りや香味を付与するために使用されているものを用いることができる。本発明の衛生用紙においては、衛生用紙を使用した際に、マイクロカプセルの破壊によって香料成分が放出され、使用者に心地よい香りを与えられるように、揮発性を有するものであることが好ましい。
【0057】
香料成分としては、例えば、ユーカリプトール、メントン、リモネン、プレゴン、ティーツリー、バーベナ、ローズ、アネトール、安息香酸メチル、オイゲノール、ゲラニオール、シトロネラール、ベンジルアルコール等を挙げることができる。このような香料成分は、単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0058】
また、マイクロカプセル中に封入する香料成分としては、マイクロカプセル化工程において作業がし易いように、親油性の高いものであることが好ましい。また、この香料成分は、合成香料、天然香料のいれずも用いることができる。
【0059】
[1−4]保湿液:
本発明の衛生用紙は、保湿液を含浸させてなるものであってもよい。このような保湿液は環境中の水分を吸湿して保湿性を保持することができる。本発明の衛生用紙が、このような保湿液を含浸させてなるものであると、保湿液を介在してマイクロカプセルが原紙に保持されるため、原紙との付着力を向上させ、衛生用紙を使用する際のマイクロカプセルの脱落を有効に防止することができる。
【0060】
また、保湿液がパルプ繊維で構成される原紙の空隙及びパルプ繊維に浸透するのに伴って、香料成分を封入させたマイクロカプセルもパルプ繊維間に侵入して、原紙内部のパルプ繊維又はパルプ繊維の交絡点に達してマイクロカプセルがより強固に保持される。これは、香料成分を封入させたマイクロカプセルを一旦保湿液に分散させ、その保湿液とともに原紙に塗工することで実現することができる。
【0061】
保湿液としては、従来、衛生用紙に保湿性を与えるために用いられる保湿液を用いることができる。具体的には、グリセリン、ジグリセリン、平均分子量200〜1000のポリエチレングリコール、ソルビット、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリシンベタイン、ピロリドンカルボン酸、ピロリドンカルボン酸塩、マルチトール、乳酸ナトリウム、尿素、トレハロース、ヒアルロン酸ナトリウム等を好適例として挙げることができる。
【0062】
また、このような保湿液に、流動パラフィン、及びスクワラン等の炭化水素類、オリーブ油、ツバキ油、ヒマシ油、及び大豆油等の植物油、ミツロウ、カルナバロウ、及びラノリン等のロウ類、セタノール、ステアリルアルコール、及びオレイルアルコール等の高級アルコール類の少なくとも一種を含有させてもよい。
【0063】
また、分子量が1000超で20000以下のポリエチレングリコール等の水溶性ワックスを含有させてもよい。このポリエチレングリコールは、融点が30℃以上であって常温で固体を呈する。
【0064】
更に、脂肪酸、脂肪酸塩、グリセリン脂肪酸エステルのうち一種以上を含み、脂肪酸はステアリン酸、パルチミン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸を含み、脂肪酸塩は上記脂肪酸のナトリウム、カリウム、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミンの各塩類を含み、グリセリン脂肪酸エステルは上記脂肪酸のグリセリンモノ脂肪酸エステル又はジグリセリン脂肪酸エステルを含んでなる脂肪酸類を更に含有させてもよい。
【0065】
このように構成することによって、原紙の強度の低下や紙粉の発生を抑制することができる。同時に、吸水性を阻害せずにしっとり感を保有できる一方で、べたつきのある油性感がなくなる。更に、比較的少量の保湿液を含浸させるだけで質感のある好ましい肌触りを得ることができる。
【0066】
[2]容器入り衛生用紙:
次に、本発明の容器入り衛生用紙の一の実施形態について具体的に説明する。本発明の容器入り衛生用紙は、これまでに説明した本発明の衛生用紙と、この衛生用紙を収納し得る内部空間が形成された箱状をなすとともに、衛生用紙の取出口を有する容器本体と、を備えた容器入り衛生用紙である。
【0067】
[2−1]衛生用紙:
本発明の容器入り衛生用紙に用いられる衛生用紙は、これまでに説明した図1に示すような、原紙2と、原紙2に付着されるマイクロカプセル3と、マイクロカプセル3に封入される香料成分4と、を備えた衛生用紙1であって、マイクロカプセル3は、その膜厚(L)が0.03〜0.17μmのものである。なお、衛生用紙を構成する各構成要素については、上記した本発明の衛生用紙と同様に構成されていることが好ましい。
【0068】
本発明の容器入り衛生用紙に用いられる衛生用紙は、原紙に付着されるマイクロカプセルが、容器本体の取出口から衛生用紙を取り出す際における取出口内周縁との接触による物理的衝撃を受けることで破壊されるように構成されているため、例えば、一の衛生用紙が折り畳まれ、その折り返し部分に他の衛生用紙が挟み込まれた状態で折り畳まれることによって、複数枚の衛生用紙が連続的に積層された衛生用紙束として構成されていることが好ましい。このような積層構造の衛生用紙は、容器本体の内部空間に収納して用いることにより、最上層の衛生用紙を取り出すことにより、これに挟み込まれていた次層の衛生用紙の一部が取出口から突出し、衛生用紙の取り出しが容易なものとなる利点がある(いわゆるポップアップ方式)。
【0069】
なお、このような積層構造の衛生用紙束を構成する場合には、従来のティシュペーパーのように、衛生用紙を二枚一組のプライとして用いてもよい。
【0070】
[2−2]容器本体:
「容器本体」とは、衛生用紙を収納し得る内部空間が形成された箱状をなすとともに、衛生用紙の取出口を有する箱体である。上記した内部空間は衛生用紙を収納するための空間となる。
【0071】
なお、本発明の容器入り衛生用紙に用いられる衛生用紙は、衛生用紙を容器本体の取出口から取り出す際における取出口内周縁との接触により、直接又は衛生用紙を構成する原紙を介した物理的衝撃を受けることで、香料成分を封入させたマイクロカプセルが破壊されるように構成されているため、容器本体の取出口は、衛生用紙を取り出す際に、少なくとも衛生用紙に対して物理的衝撃を与えるような形状、即ち、衛生用紙を取り出す際に、収納された状態の衛生用紙の形状のままでは取出口から取り出すことができず、何らかの形状変形を生じさせることによって取り出すことが可能な形状に構成されていることが好ましい。
【0072】
このような容器本体としては、例えば、図2及び図3に示すように、上面42、底面44、一対の側面46、及び一対の妻面48を有する形状に折り曲げられ、これらの面によって区画された、衛生用紙を収納し得る内部空間が形成された直方体の箱状をなすとともに、衛生用紙の取出口24を形成するための取出口形成用切込線14が形成されたカートン本体100を挙げることができる。ここで、図2及び図3は、本発明の容器入り衛生用紙の一の実施形態を示す斜視図であり、図2は、衛生用紙が収納された容器入り衛生用紙10の取出口24(取出口形成用切込線14)が未開封の状態を示し、図3は、容器入り衛生用紙10の取出口24から衛生用紙1を取り出した状態を示している。
【0073】
なお、容器本体の形状については、例えば、直方体状、立方体状等の六面体状を挙げることができる。これらの形状では、上面と底面、一の側面と他の側面、一の妻面と他の妻面が対向するように平行に配置される。これらの形状の中では、直方体状が好ましい。例えば、図2及び図3に示す容器入り衛生用紙10においては、カートン本体100の側面46側を長辺、一対の妻面48側を短辺とする直方体状にカートン本体100を構成した例である。なお、これらの形状において、2つの面の稜線部分を面取りしたものも、本明細書にいう「箱状」に含まれる。
【0074】
容器本体を構成する材質について特に制限はない。例えば、図2及び図3に示すような箱体を折り曲げ形成するカートン本体の場合には、厚紙等の紙材料を構成材料とすることが好ましい。一般に、これらの紙材料としては、例えば、木材パルプ、古紙等を原料として製造されたものを好適に用いることができる。
【0075】
図2及び図3に示すようなカートン本体100には、衛生用紙の取出口24を形成するための取出口形成用切込線14が形成されている。この「取出口形成用切込線」は、衛生用紙の取出口を形成するために設けられた切込線であり、前記取出口の外周形状と一致する環状に形成される。このような構成により、使用者は、この切込線を破断することによって取出口を形成することができ、その取出口から衛生用紙を取り出すことが可能となる。
【0076】
ここにいう「環状」とは、ある領域を区画するように、いくつかの線(切り込み)が断続的に配置された形状を意味する。カートン本体としては、直方体状のものが多く用いられるため、その取出口の形状はカートン本体の長手方向に沿った横長の環状とすることが通常である。例えば、略長方形状、略長円形状、略長楕円形状等の形状を挙げることができる。例えば、図2及び図3に示す容器入り衛生用紙10は、取出口の外周形状と一致するように略長方形状の取出口形成用切込線14を形成した例である。
【0077】
上記の取出口形成用切込線は、通常、ミシン目状のものが採用される。このミシン目は2本のミシン目が平行するように配置された2重ミシン目であってもよい。また、包装業界でジッパーと呼称されている切れ目が鉤形に屈曲した開封用破断線(包装産業の周知・慣用技術集第281頁参照、昭和53年12月20日特許庁発行)を採用することもできる。
【0078】
カートン本体には、前記の取出口形成用切込線の他に、別の目的に供する切込線を形成しておいてもよい。例えば、前記取出口形成用切込線が形成された面(通常、上面)と対向する面(通常、底面)に、一対の押上片を形成するための押上片形成用切込線を形成することも好ましい形態の一つである。この押上片形成用切込線を押圧して押し破り、カートン本体の内側に折り曲げると一対の押上片が形成される。この押上片によって、カートン本体内部の衛生用紙が上面側に押し上げられるため、上面の取出口から衛生用紙の最後の一枚まで、安定してポップアップさせることが可能となる。
【0079】
例えば、図4は、図2及び図3に示すようなカートン本体100の中間体となるカートンブランク110を示す平面図であるが、このカートンブランク110は、上面42となる面に取出口形成用切込線14が形成され、底面44となる面の中央部にU字状の押上片形成用切込線54が一対形成された例である。
【0080】
カートンブランク110は、一枚の紙材料によって、折り曲げ線を介して上面42、底面44、一対の側面46が形成されており、側面46の端縁からは、折り曲げ線を介して内フラップ26が延出されたものである。また、上面42の端縁からは、折曲線を介して上面外フラップ28が延出されており、これと同様に、底面44の端縁からは、折曲線を介して底面外フラップ30が延出されている。更に、底面44の一の側縁部からは、折曲線を介して、側面接合代32が延出されている。
【0081】
このカートンブランク110にはカートン本体の上面42に相当する面に環状の取出口形成用切込線14が形成されている。このようなカートンブランク110は、各折曲線を折り曲げ、側面接合代32と側面46を接合することにより、双方の妻面側が開放された角筒状カートンを形成し、その内部に衛生用紙を収納した後に、上面外フラップ28と底面外フラップ30とを、その一部が互いに重なり合うように折り曲げ、その重なり部分を接着剤等によって接着することによってカートン本体を製造することができる。
【0082】
このようなカートン本体は、ウインドウフィルムを備えたものであってもよいし、ウインドウフィルムを備えない、いわゆるフィルムレスカートンであってもよい。「ウインドウフィルム」は、取出口をカートン本体の内面側から被覆するように配置されたフィルム材であり、衛生用紙を取り出すためのスリットが形成されている。
【0083】
このウインドウフィルムは、外部の塵や埃から衛生用紙を保護することができるのは勿論のこと、スリット間の摩擦により、ポップアップした衛生用紙がカートンの内部に落ち込むことを防止し、衛生用紙を取出口から突出させた状態で保持することができる。また、上記したウインドウフィルムのスリット間の摩擦により、衛生用紙に均一且つ比較的大きな物理的衝撃が直接加わり易いため、マイクロカプセルの膜厚(L)を比較的広い範囲に設定することができる。このため、本発明の容器入り衛生用紙においては、ウインドウフィルムを備えたカートン本体を好適に用いることができる。
【0084】
ウインドウフィルムの形状は、衛生用紙の取出口を被覆することができる限りにおいて、どのような形状のものであってもよい。但し、取出口の形状として横長の環状のものが汎用されることから、長方形状のウインドウフィルムを用いることが好ましい。
【0085】
ウインドウフィルムの構成材料は特に制限されるものではない。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリビニルアルコール等のプラスチック;グラシン紙、クラフト紙、ケント紙、インディア紙等の印刷用紙、書道用紙、包装紙、加工原紙等の紙;等を好適に用いることができる。
【0086】
「スリット」とは、ウインドウフィルムを貫通する切れ目である。スリットの形成方向は特に制限されるものではないが、本発明の容器入り衛生用紙を構成する容器本体の長辺に沿う方向に形成されることが好ましい。例えば、図2及び図3に示す容器入り衛生用紙10は、ウインドウフィルム20の中央部に、カートン本体100の長辺に沿って直線状のスリット18を形成した例である。
【0087】
これまで、本発明の容器入り衛生用紙に用いられる容器本体として、カートンブランクを折り曲げて形成されるカートン本体を例として説明したが、例えば、本発明の容器入り衛生用紙に用いられる容器本体は、衛生用紙を収納し得る内部空間が形成された箱状をなすとともに、衛生用紙の取出口を有する箱体であれば、例えば、図5の(a)や(b)に示すような、樹脂材料を成形した製造された容器本体101であってもよい。このような樹脂材料を成形した製造された容器本体101は、例えば、ウエットティシュ等を収納する際に、水分の蒸発を抑えることが可能となる。なお、図5における符号102は、容器本体101の取出口24を封止するための蓋体を示している。
【0088】
[3]包装用袋体入り衛生用紙:
次に、本発明の包装用袋体入り衛生用紙の一の実施形態について具体的に説明する。本発明の包装用袋体入り衛生用紙は、これまでに説明した本発明の衛生用紙と、その内部に衛生用紙を収納し得る扁平な袋状をなすとともに、衛生用紙の取出口を有する包装用袋体と、を備えた包装用袋体入り衛生用紙である。
【0089】
[3−1]衛生用紙:
本発明の容器入り衛生用紙に用いられる衛生用紙は、これまでに説明した図1に示すような、原紙2と、原紙2に付着されるマイクロカプセル3と、マイクロカプセル3に封入される香料成分4と、を備えた衛生用紙1であって、マイクロカプセル3は、その膜厚(L)が0.03〜0.17μmのものである。なお、衛生用紙を構成する各構成要素については、上記した本発明の衛生用紙と同様に構成されていることが好ましい。
【0090】
[3−2]包装用袋体:
「包装用袋体」とは、その内部に衛生用紙を収納し得る扁平な袋状をなすとともに、衛生用紙の取出口を有する袋体である。
【0091】
なお、本発明の容器入り衛生用紙に用いられる衛生用紙は、衛生用紙を包装用袋体の取出口から取り出す際における取出口内周縁との接触により、直接又は衛生用紙を構成する原紙を介した物理的衝撃を受けることで、香料成分を封入させたマイクロカプセルが破壊されるように構成されているため、包装用袋体の取出口は、衛生用紙を取り出す際に、少なくとも衛生用紙に対して物理的衝撃を与えるような形状、即ち、衛生用紙を取り出す際に、収納された状態の衛生用紙の形状のままでは取出口から取り出すことができず、何らかの形状変形を生じさせることによって取り出すことが可能な形状に構成されていることが好ましい。
【0092】
例えば、このような包装用袋体としては、例えば、図6及び図7に示すように、その内部に衛生用紙1を収納し得る扁平な袋状をなすとともに、衛生用紙1の取出口24を形成するための取出口形成用切込線14が形成された包装用袋体120を挙げることができる。こで、図6及び図7は、本発明の包装用袋体入り衛生用紙の一の実施形態を示す斜視図であり、図6は、衛生用紙が収納された包装用袋体入り衛生用紙50の取出口24(取出口形成用切込線14)が未開封の状態を示し、図7は、包装用袋体入り衛生用紙50の取出口24から衛生用紙1を取り出した状態を示している。
【0093】
このような包装用袋体は、例えば、従来、携帯用のティシュペーパーを収納するために用いられるポケット型の包装用袋体である。この包装用袋体は、例えば、縦70〜80mm、横110〜120mm程度の大きさのポリエチレン製の袋体であり、その内部に10〜15組程度のティシュペーパーを折り畳んだ状態で収納することができる。
【0094】
また、図示は省略するが、このような包装用袋体は、包装用袋体の取出口の外周側に対応する位置に開閉可能に配設されたラベル蓋を有するものであってもよい。このように構成することによって、ウエットティシュ等を収納する際に、水分の蒸発を抑えることが可能となる。
【実施例】
【0095】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0096】
(実施例1)
原紙として、NBKP(針葉樹クラフト法漂白パルプ)60%と、LBKP(広葉樹クラフト法漂白パルプ)40%とを配合したパルプを、フリーネス(濾水度)610〜620ml(CSF)に叩解し、湿潤紙力増強剤(商品名「WS4024」:星光PMC社製)を、対パルプ0.15%(固形分換算)となるように内添し、坪量16.0g/m、クレープ率20%のティシュペーパー用原紙を抄紙した。
【0097】
一方、処理液として、グリセリン60質量部、ソルビット10質量部、及び水30質量部(合計100質量部)よりなる保湿液中に、香料成分が封入されたマイクロカプセルを分散したマイクロカプセル分散液(以下、「処理液」という)を作成した。
【0098】
得られた処理液を、グラビアコーターを用いて上記ティシュペーパー用原紙に塗工してティシュペーパー用原紙全体に含浸させた。その後、このティシュペーパー用原紙を、縦200mm、横225mmのティシュペーパーの形状に加工した。
【0099】
なお、香料成分としては、ユーカリプトールを用い、マイクロカプセルの材料としては、メラミン樹脂を用いた。マイクロカプセルの膜厚は、0.1μmとし、レーザー回折/散乱法による体積粒度分布における50体積%での平均粒径(D50)は3.0μmであり、マイクロカプセルの内径(d)に対する膜厚(L)の割合(L/d)は0.033であった。
【0100】
ティシュペーパー用原紙に対する上記処理液の付着率は28質量%であり、香料成分の付着率は0.20質量%である。なお、上記付着率(%)は、単位面積当たりのティシュペーパー用原紙の質量に対する、そのティシュペーパー用原紙に付着した各成分の質量の割合(%)である。
【0101】
このように構成された衛生用紙を二枚一組のプライとし、一のプライが折り畳まれ、その折り返し部分に他のプライが挟み込まれた状態で折り畳まれることによって、200組のプライが連続的に積層された衛生用紙束を形成した。この衛生用紙束を、図2及び図3に示すような、取出口24にウインドウフィルム20が配置されたカートン本体100の内部に収納してカートン入り衛生用紙(容器入り衛生用紙)を製造した。ウインドウフィルムは、ポリエチレン製の厚さ45μmのシートを用いた。また、このウインドウフィルムには、カートン入り衛生用紙の長辺に沿う方向に、長さ110mmのスリットを形成した。
【0102】
このようなカートン本体の取出口に配置されたウインドウフィルムのスリットから、衛生用紙(プライ)を取り出し、その衛生用紙を鼻に近づけて、その匂いについて評価を行った。
【0103】
また、このようなカートン入り衛生用紙の取出口を開封した状態で50日間放置し、その後、ウインドウフィルムのスリットから、衛生用紙(プライ)を取り出し、その衛生用紙を鼻に近づけて、その匂いについて評価を行った。
【0104】
(実施例2)
マイクロカプセルの膜厚を、0.15μmとした以外は、実施例1と同様の方法によってカートン入り衛生用紙を製造し、ウインドウフィルムのスリットから、衛生用紙(プライ)を取り出し、その衛生用紙を鼻に近づけて、その匂いについて評価を行った。
【0105】
(実施例3)
マイクロカプセルの材料として、ウレタン樹脂を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法によってカートン入り衛生用紙を製造し、ウインドウフィルムのスリットから、衛生用紙(プライ)を取り出し、その衛生用紙を鼻に近づけて、その匂いについて評価を行った。
【0106】
(実施例4)
マイクロカプセルの平均粒径(D50)を4.0μmとしたこと以外は、実施例1と同様の方法によってカートン入り衛生用紙を製造し、ウインドウフィルムのスリットから、衛生用紙(プライ)を取り出し、その衛生用紙を鼻に近づけて、その匂いについて評価を行った。
【0107】
(比較例1)
マイクロカプセルの膜厚を、0.02μmとした以外は、実施例1と同様の方法によってカートン入り衛生用紙を製造し、ウインドウフィルムのスリットから、衛生用紙(プライ)を取り出し、その衛生用紙を鼻に近づけて、その匂いについて評価を行った。
【0108】
(比較例2)
マイクロカプセルの膜厚を、0.2μmとした以外は、実施例1と同様の方法によってカートン入り衛生用紙を製造し、ウインドウフィルムのスリットから、衛生用紙(プライ)を取り出し、その衛生用紙を鼻に近づけて、その匂いについて評価を行った。
【0109】
また、実施例2〜4、比較例1及び2のカートン入り衛生用紙のそれぞれの取出口を開封した状態で50日間放置し、その後、ウインドウフィルムのスリットから、衛生用紙(プライ)を取り出し、その衛生用紙を鼻に近づけて、その匂いについて評価を行った。
【0110】
(考察)
本実施例1〜4の衛生用紙は、開封後直ぐ及び50日間放置した状態の両方において、良好な香りを得ることができた。一方、比較例1の衛生用紙は、マイクロカプセルの膜厚が薄すぎるため、カートン内でマイクロカプセルが破壊され、香料成分が揮発しまった。このため、50日間放置した状態においては、十分な香りを得ることができなかった。一方、比較例2の衛生用紙は、マイクロカプセルの膜厚が厚すぎるため、ウインドウフィルムのスリットから衛生用紙を取り出しただけではマイクロカプセルが破壊されず、衛生用紙から香料成分の匂いが感じられなかった。
【0111】
このように、本発明の衛生用紙は、使用前の衛生用紙からの香料成分の揮発が有効に防止されるとともに、使用時においては十分な香りを得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明の衛生用紙、容器入り衛生用紙、及び包装用袋体入り衛生用紙は、ティシュペーパー、キッチンペーパー等のタオルペーパー、トイレットペーパー、ワッティング(紙綿)等に利用することができる。特に、使用時において十分な香りを得ることができることから、ティシュペーパー、トイレットペーパー等に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本発明の衛生用紙の一の実施形態の表面の一部拡大平面図である。
【図2】本発明の容器入り衛生用紙の一の実施形態を示す斜視図であり、取出口が未開封の状態を示している。
【図3】本発明の容器入り衛生用紙の一の実施形態を示す斜視図であり、取出口から衛生用紙を取り出した状態を示している。
【図4】本発明の容器入り衛生用紙の第一の実施形態の一例を示す図であり、カートン本体を組み立てる前のカートンブランクの状態の展開図である。
【図5】本発明の容器入り衛生用紙の他の実施形態を示す斜視図である。
【図6】本発明の包装用袋体入り衛生用紙の一の実施形態を示す斜視図であり、取出口が未開封の状態を示している。
【図7】本発明の包装用袋体入り衛生用紙の一の実施形態を示す斜視図であり、取出口から衛生用紙を取り出した状態を示している。
【符号の説明】
【0114】
1:衛生用紙、2:原紙、3:マイクロカプセル、4:香料成分、10:容器入り衛生用紙、14:取出口形成用切込線、18:スリット、20:ウインドウフィルム、24:取出口、26:内フラップ、28:上面外フラップ、30:底面外フラップ、32:側面接合代、42:上面、44:底面、46:側面、48:妻面、50:包装用袋体入り衛生用紙、100:カートン本体、101:容器本体、102:蓋体、110:カートンブランク、120:包装用袋体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原紙と、前記原紙に付着されるマイクロカプセルと、前記マイクロカプセルに封入される香料成分と、を備えた衛生用紙であって、
前記マイクロカプセルは、その膜厚(L)が0.03〜0.17μmのものである衛生用紙。
【請求項2】
前記マイクロカプセルは、その内径(d)に対する前記膜厚(L)の割合(L/d)が0.01〜0.06のものである請求項1に記載の衛生用紙。
【請求項3】
前記マイクロカプセルは、レーザー回折/散乱法による体積粒度分布における、50体積%での平均粒径(D50)が、2〜4μmのものである請求項1又は2に記載の衛生用紙。
【請求項4】
前記マイクロカプセルは、レーザー回折/散乱法による体積粒度分布における、粒径(D)が1.5〜5.0μmのマイクロカプセルの頻度が、85体積%以上のものである請求項1〜3のいずれか一項に記載の衛生用紙。
【請求項5】
前記原紙と前記マイクロカプセルとの付着力[N]が、前記マイクロカプセルの破壊強度[N]よりも大である請求項1〜4のいずれか一項に記載の衛生用紙。
【請求項6】
更に、保湿液を含浸させてなる請求項1〜5のいずれか一項に記載の衛生用紙。
【請求項7】
ティシュペーパー、トイレットペーパー、ウエットティシュペーパー、及びタオルペーパーからなる群より選択させる少なくとも一種の衛生用紙である請求項1〜6のいずれか一項に記載の衛生用紙。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の衛生用紙と、
前記衛生用紙を収納し得る内部空間が形成された箱状をなすとともに、前記衛生用紙の取出口を有する容器本体と、を備えた容器入り衛生用紙。
【請求項9】
前記容器本体が、上面、底面、一対の側面、及び一対の妻面を有する形状に折り曲げられ、これらの面によって区画されたカートンである請求項8に記載の容器入り衛生用紙。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の衛生用紙と、
その内部に前記衛生用紙を収納し得る扁平な袋状をなすとともに、前記衛生用紙の取出口を有する包装用袋体と、を備えた包装用袋体入り衛生用紙。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−200124(P2008−200124A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−36853(P2007−36853)
【出願日】平成19年2月16日(2007.2.16)
【出願人】(390036799)王子ネピア株式会社 (387)
【出願人】(592002776)河野製紙株式会社 (10)
【出願人】(000105305)ケミテック株式会社 (13)
【Fターム(参考)】