説明

衛生用紙製品

【課題】複数枚の衛生用紙が重ね合わされた状態で使用される衛生用紙製品であって、衛生用紙製品を構成する衛生用紙のすべてに同質素材ものを使用した従来の衛生用紙製品とほぼ同等の使用感や白色度が得られるとともに、原料コストを低減でき、かつ、脱墨処理や洗浄処理のようなバージンパルプには不要な処理工程を付加することなく製造可能なものを提供する。
【解決手段】ドライパルプとスラッシュパルプとからなるパルプ原料を主原料として製造された衛生用紙が複数枚重ね合わされた状態で使用される衛生用紙製品であって、前記衛生用紙の内の少なくとも1枚が、他の衛生用紙に対して、ドライパルプの含有率が低く、かつ、坪量が多くなるように構成された衛生用紙製品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2枚重ねのトイレットペーパーやティシュペーパーのような、複数枚の衛生用紙が重ね合わされた状態で使用される衛生用紙製品に関する。
【背景技術】
【0002】
衛生用紙製品は、使用時に直接肌に接触するため、柔らかく、肌触りの良いものが好まれる。このため、2枚重ねのトイレットペーパーやティシュペーパーのような、複数枚の衛生用紙が重ね合わされた状態で使用される衛生用紙製品では、当該衛生用紙製品を構成する個々の衛生用紙すべてに、肌触り等の良い同質素材ものを使用するのが一般的である。
【0003】
しかしながら、近年の資源枯渇問題やそれに伴う良質な輸入パルプの価格高騰等により、衛生用紙の原料コストは年々上昇する傾向にあり、柔らかさ、肌触り等の官能性を極力損なうことなくコストを抑える技術の開発が切望されている。
【0004】
そのような技術の一例として、特許文献1には、2枚以上のティシュペーパーを重ね合わせたティシュ製品において、最上層にのみバージンパルプを主原料とした柔らかく肌触りの良いものを使用し、その他の層には柔らかさや肌触りは劣るが安価な古紙パルプを主原料としたものを使用することが提案されている。通常、ティシュペーパー等の衛生用紙製品の使用時に肌に触れるのは片側面であるので、このように片側面を構成する層にのみ官能性に優れたものを使用し、その他の層に安価な材料を使用すれば、原料コストを抑えることが可能となる。
【0005】
しかし、前記のように一部の層の主原料に古紙パルプを用いる場合には、脱墨処理や洗浄処理が必要となるため、製造工程が増加し、生産効率が低下する。また、古紙パルプは、バージンパルプに比べると柔らかさの点でかなり劣るため、たとえ肌に触れない部分にのみ使用したとしても、製品全体としての柔軟性はバージンパルプのみを使用した製品に劣り、満足できる使用感が得られないのが実情である。更に、古紙パルプを用いた場合には、バージンパルプを用いた場合に比べて白色度が劣るため、見た目も良くない。
【0006】
【特許文献1】特開2002−235299号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような従来の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、複数枚の衛生用紙が重ね合わされた状態で使用される衛生用紙製品であって、衛生用紙製品を構成する衛生用紙のすべてに同質素材ものを使用した従来の衛生用紙製品とほぼ同等の使用感や白色度が得られるとともに、原料コストを低減でき、かつ、脱墨処理や洗浄処理のようなバージンパルプには不要な処理工程を付加することなく製造可能なものを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明によれば、以下の衛生用紙製品が提供される。
【0009】
[1] ドライパルプとスラッシュパルプとからなるパルプ原料を主原料として製造された衛生用紙が複数枚重ね合わされた状態で使用される衛生用紙製品であって、前記衛生用紙の内の少なくとも1枚が、他の衛生用紙に対して、ドライパルプの含有率が低く、かつ、坪量が多くなるように構成された衛生用紙製品(第一の衛生用紙製品)。
【0010】
[2] 前記衛生用紙の内の少なくとも1枚のドライパルプの含有率が0〜30質量%であり、他の衛生用紙のドライパルプの含有率が30〜100質量%である[1]に記載の衛生用紙製品。
【0011】
[3] 前記衛生用紙の内の少なくとも1枚の坪量が、他の衛生用紙の坪量の1.2〜1.7倍である[1]又は[2]に記載の衛生用紙製品。
【0012】
[4] 前記衛生用紙の内の少なくとも1枚の坪量が12〜30g/mであり、他の衛生用紙の坪量が8〜20g/mである[1]〜[3]の何れかに記載の衛生用紙製品。
【0013】
[5] ドライパルプとスラッシュパルプとからなるパルプ原料を主原料として製造された衛生用紙が3枚以上重ね合わされた状態で使用される衛生用紙製品であって、前記衛生用紙の内、最上層と最下層の衛生用紙以外の衛生用紙が、最上層と最下層の衛生用紙に対して、ドライパルプの含有率が低く、かつ、坪量が多くなるように構成された衛生用紙製品(第二の衛生用紙製品)。
【0014】
[6] ドライパルプとスラッシュパルプとからなるパルプ原料を主原料として製造された衛生用紙が複数枚以上重ね合わされた状態で使用される衛生用紙製品であって、前記衛生用紙の内、最上層の衛生用紙以外の衛生用紙が、最上層の衛生用紙に対して、ドライパルプの含有率が低く、かつ、坪量が多くなるように構成された衛生用紙製品(第三の衛生用紙製品)。
【発明の効果】
【0015】
本発明の衛生用紙製品は、当該衛生用紙製品を構成する複数枚の衛生用紙のパルプ原料の配合を同一とせず、複数枚の衛生用紙の内の少なくとも一枚が、他の衛生用紙よりもドライパルプの含有率が低くなるようにすることで、柔らかさや肌触りには優れるが高価であるドライパルプの使用量を抑え、コストを低減することができる。そして、ドライパルプの含有率が低い方の衛生用紙は肌に触れない層とし、ドライパルプの含有率が高い方の衛生用紙を肌に触れる層として使用すれば、すべての衛生用紙にドライパルプを同一の高含有率で配合した衛生用紙製品とほぼ同等の柔らかさや肌触りが得られる。また、ドライパルプの含有率が高い方の衛生用紙の坪量を少なくする(厚さを薄くする)ことで、当該衛生用紙の柔らかさがより発現しやすくなるとともに、高価なドライパルプの使用量をより低減させることが可能となる。更に、ドライパルプの含有率が低い方の衛生用紙の坪量を多くする(厚さを厚くする)ことで、ドライパルプの含有率が高い方の衛生用紙を薄く形成したことによる引っ張り強度の不足を補って、衛生用紙製品全体として必要な引っ張り強度を確保することができる。また、パルプ原料に用いるドライパルプとスラッシュパルプは、何れもバージンパルプであるので、コストを抑えるために古紙パルプを利用する場合のように脱墨処理や洗浄処理を施す必要が無く、その分製造工程が簡略化し、生産効率が向上する。また、これらバージンパルプは古紙パルプより柔らかいため、一部に古紙パルプを用いた衛生用紙製品よりも製品全体が柔らかくなり、良好な使用感が得られる。更にまた、バージンパルプを用いたことにより、古紙パルプを用いた衛生用紙製品よりも白色度が高く、外見的にも優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を具体的な実施形態に基づき説明するが、本発明は、これに限定されて解釈されるもではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良を加え得るものである。
【0017】
前記のとおり、本発明の衛生用紙製品は、ドライパルプとスラッシュパルプとからなるパルプ原料を主原料として製造された衛生用紙が複数枚重ね合わされた状態で使用されるものである。
【0018】
ドライパルプは、針葉樹あるいは広葉樹の木材チップを蒸解し、漂白して得られるスラッシュパルプを、25%以下程度の水分含有量となるまで乾燥させたものであり、この乾燥工程で繊維を構成する細胞が潰れ、細くて長い繊維となる。このためバージンパルプを主原料とする衛生用紙の製造においては、このドライパルプの含有率を高めるほど、柔らかさ、肌触りといった官能性に優れた衛生用紙が得られるが、乾燥の手間がかかるためコストは上昇する。
【0019】
一方、スラッシュパルプは、このような乾燥工程を経ていないため、ドライパルプに比べて繊維が太く、柔らかさ、肌触りといった官能性では劣るが、乾燥の手間が掛からない分コスト的に有利である。このためバージンパルプを主原料とする衛生用紙の製造においては、このスラッシュパルプの含有率を高めるほど、安価な衛生用紙が得られる。
【0020】
本発明の第一の衛生用紙製品においては、当該衛生用紙製品を構成する複数枚の衛生用紙の内の少なくとも一枚が、他の衛生用紙よりもドライパルプの含有率が低くなるようにしている。また、本発明の第二の衛生用紙製品においては、当該衛生用紙製品を構成する3枚以上の衛生用紙の内、最上層と最下層の衛生用紙以外の衛生用紙が、最上層と最下層の衛生用紙よりもドライパルプの含有率が低くなるようにしている。更に、本発明の第三の衛生用紙製品においては、当該衛生用紙製品を構成する複数枚の衛生用紙の内、最上層の衛生用紙以外の衛生用紙が、最上層の衛生用紙よりもドライパルプの含有率が低くなるようにしている。このように、複数枚の衛生用紙のドライパルプの含有率に差を設けることで、それぞれの衛生用紙に異なった機能や性質が付与される。
【0021】
まず、ドライパルプの含有率が高い方の衛生用紙は、使用時に肌に触れる層となることを想定したものであり、ドライパルプの含有率が高いことにより、柔らかさ、肌触りといった官能性において優れた性質を有する。
【0022】
一方、ドライパルプの含有率が低い方の衛生用紙は、使用時に肌に触れない層となることを想定したものであり、主に衛生用紙製品全体として必要な引っ張り強度を確保する役割を担う。この衛生用紙は肌に触れない層となることを想定しているため、ドライパルプの含有率が高い方の衛生用紙に比して、柔らかさ、肌触りといった官能性は劣っていても良く、高価なドライパルプの含有率を低くすることで衛生用紙製品全体としてのコスト低下を図ることができる。
【0023】
また、この衛生用紙はドライパルプの含有率が低い分、スラッシュパルプの含有率が相対的に高くなるが、スラッシュパルプであっても古紙パルプに比べれば、十分な柔らかさを持っているため、ドライパルプの含有率が高い方の衛生用紙と重ねた状態でも全体としての柔軟性は高く、すべての衛生用紙に柔らかく肌触りの良い同質素材ものを使用した従来品と比べてもほとんど使用感の差の無いものを得ることが可能である。
【0024】
これら衛生用紙の具体的なドライパルプの含有率としては、まず、ドライパルプの含有率が低い方の衛生用紙は、0〜30質量%とすることが好ましく、0〜10質量%とすることがより好ましく、2〜5質量%とすることが更に好ましい。この衛生用紙のドライパルプの含有率が前記範囲を超えると、原料コストの低減効果が乏しくなる。また、ドライパルプの含有率が高い方の衛生用紙は、30〜100質量%とすることが好ましく、50〜100質量%とすることがより好ましく、75〜95質量%とすることが更に好ましい。この衛生用紙のドライパルプの含有率が前記範囲に満たないと、十分な柔らかさや肌触りが得られない場合がある。
【0025】
本発明においては、ドライパルプの含有率が低い方の衛生用紙が、ドライパルプの含有率が高い方の衛生用紙に対して、坪量が多くなるようにしている。
【0026】
このように、衛生用紙製品を構成する複数枚の衛生用紙の坪量に差を設けたのは、ドライパルプの含有率が高い方の衛生用紙は、坪量を少なくした方が高価なドライパルプの使用量が少なくて済み、コスト低下を図る観点から好ましいことに加え、薄い(坪量が少ない)方が柔らかさや肌触りの良さといった性質が発現しやすいのに対し、ドライパルプの含有率が低い方の衛生用紙は、ドライパルプの含有率が高い方の衛生用紙を薄く形成することによる引っ張り強度の不足を補って、衛生用紙製品全体として必要な引っ張り強度を確保するため、少なくともドライパルプの含有率が高い方の衛生用紙よりも厚く(坪量を多く)する必要が有るからである。
【0027】
ドライパルプの含有率が低い方の衛生用紙の坪量は、ドライパルプの含有率が高い方の衛生用紙の坪量の1.2〜1.7倍であることが好ましく、1.3〜1.6倍であることがより好ましい。これが1.2倍未満では、十分な引っ張り強度を得られない場合があり、1.7倍を超えると、衛生用紙製品全体としての柔軟性が不十分となったり、厚くなりすぎて使用しにくくなる場合がある。
【0028】
これら衛生用紙の具体的な坪量としては、まず、ドライパルプの含有率が低い方の衛生用紙は、12〜30g/mとすることが好ましく、15〜25g/mとすることがより好ましい。この衛生用紙の坪量が前記範囲に満たないと、十分な引っ張り強度を得られない場合があり、前記範囲を超えると、衛生用紙製品全体としての柔軟性が不十分となったり、厚くなりすぎて使用しにくくなる場合がある。また、ドライパルプの含有率が高い方の衛生用紙は、8〜20g/mとすることが好ましく、10〜16g/mとすることがより好ましい。この衛生用紙の坪量が前記範囲に満たないと、引っ張り強度が低下しすぎる場合があり、前記範囲を超えると、十分な柔らかさや肌触りが得られない場合がある。
【0029】
本発明の衛生用紙製品において、主原料であるパルプ原料を構成するドライパルプとスラッシュパルプは何れもバージンパルプである。このため、本発明の衛生用紙製品を製造する際には、古紙パルプを使用する場合に必要な脱墨処理や洗浄処理は不要であるので、前述の古紙パルプを利用する従来技術よりも製造工程を簡略化することができる。また、バージンパルプを用いたことにより、古紙パルプを用いた衛生用紙製品よりも白色度が高くなり、清潔感のあるより良い外観が得られる。
【0030】
なお、本発明の衛生用紙製品は、当該衛生用紙製品を構成する複数枚の衛生用紙のパルプ原料の配合と坪量とが、前記のように異なっている以外は、従来の一般的な衛生用紙製品と同様の構成であるので、その製造方法や製造装置等には基本的に従来公知のものを用いることが可能である。また、パルプ原料以外の構成成分として、例えば、紙用柔軟剤や湿潤紙力増強剤等が、必要に応じて添加されていても良い。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、2枚重ねのトイレットペーパーやティシュペーパーのような、複数枚の衛生用紙が重ね合わされた状態で使用される衛生用紙製品として利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライパルプとスラッシュパルプとからなるパルプ原料を主原料として製造された衛生用紙が複数枚重ね合わされた状態で使用される衛生用紙製品であって、
前記衛生用紙の内の少なくとも1枚が、他の衛生用紙に対して、ドライパルプの含有率が低く、かつ、坪量が多くなるように構成された衛生用紙製品。
【請求項2】
前記衛生用紙の内の少なくとも1枚のドライパルプの含有率が0〜30質量%であり、他の衛生用紙のドライパルプの含有率が30〜100質量%である請求項1に記載の衛生用紙製品。
【請求項3】
前記衛生用紙の内の少なくとも1枚の坪量が、他の衛生用紙の坪量の1.2〜1.7倍である請求項1又は2に記載の衛生用紙製品。
【請求項4】
前記衛生用紙の内の少なくとも1枚の坪量が12〜30g/mであり、他の衛生用紙の坪量が8〜20g/mである請求項1〜3の何れか一項に記載の衛生用紙製品。
【請求項5】
ドライパルプとスラッシュパルプとからなるパルプ原料を主原料として製造された衛生用紙が3枚以上重ね合わされた状態で使用される衛生用紙製品であって、
前記衛生用紙の内、最上層と最下層の衛生用紙以外の衛生用紙が、最上層と最下層の衛生用紙に対して、ドライパルプの含有率が低く、かつ、坪量が多くなるように構成された衛生用紙製品。
【請求項6】
ドライパルプとスラッシュパルプとからなるパルプ原料を主原料として製造された衛生用紙が複数枚以上重ね合わされた状態で使用される衛生用紙製品であって、
前記衛生用紙の内、最上層の衛生用紙以外の衛生用紙が、最上層の衛生用紙に対して、ドライパルプの含有率が低く、かつ、坪量が多くなるように構成された衛生用紙製品。

【公開番号】特開2009−160022(P2009−160022A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−339404(P2007−339404)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(390036799)王子ネピア株式会社 (387)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】