説明

衝撃緩衝床

【課題】人の転倒によるダメージの緩和、落下物自体の破壊の低減、床の損傷の低減し、JIS A6519の硬さ試験の最大加速度を100G以下とするる衝撃緩衝床を提供する。

【解決手段】スプリング硬さ30〜45のEVA発泡体を5mm〜20mm厚さで介して、切断伸び200〜400%の弾性ウレタン塗り床材を設けるた衝撃緩衝床とし、これが、JIS A6519床の硬さ試験において、最大加速度が100G以下であること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝撃緩衝床材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、塗り床は施工の面積、形状に関わらす、継ぎ目のない施工が可能である。一方弾性のある塗り床のウレタン樹脂系では膜厚を増すと泡残り等の不具合や重ね塗り等の制限があり、工期制約が生じるなどの欠点を有する他、発泡を有する層を介在させないと満足のいく、緩衝作用は得られなかった。
【0003】
内在するセルが厚み方向に紡錘状に延びたポリオレフィン発泡体からなるクッション層と表面層とを含む衝撃吸収床材で、最大加速度G値は100以下となり、発泡体からなるクッション層の厚さは2〜15mmで、発泡倍率は4〜20倍で、内在するセルのアスペクト比Dz/Dxyの平均値は1.1〜4であることにより、ポリオレフィン発泡体の厚み方向の圧縮強度が増大するとともに、座屈強度が増し、通常の歩行や車椅子歩行では表面の歪みが発生せず、転倒などの一定以上の荷重が加わったときのみ芯材が座屈し衝撃を吸収し、人体への衝撃を緩和することが開示されている。(特許文献1)
【0004】
中間支持材の両面を発泡率3.5〜4.0の発泡体で被覆し一体化した発泡基礎材及び該発泡基材の一方の面に発泡率2.0〜2.5の発泡中間層を積層一体化し、該発泡中間層の表面に発泡率1.2〜1.6の発泡表皮層を積層一体化し、希望により前記発泡表皮層の表面に任意の模様を付与したフィルムを積層一体化することで床材用基材に、床材に寸法安定性、及びソフトな歩行感を付与する機能を与え、且つ該床材用基材を利用した床材が開示されている。(特許文献2)
【0005】
硬化性発泡ウレタン塗料として、ウレタン樹脂分の硬化した塗膜密度とほぼ同じ密度を有しかつ粒子径が5〜300ミクロンの微小中空体の無機質フィラーを含有する床仕上げ用塗料を塗布硬化させた硬化発泡ウレタン層と弾性のある硬化ウレタン層を積層した床構造物がクッション性、断熱性。吸音性など機能が向上し、上層弾性ウレタン層の破断を防ぎ、発泡層が連続気泡のため、下地から水蒸気を拡散させ、膨れを防ぐことが開示されている。(特許文献3)
【0006】
基盤面上に中空単一粒子および発泡弾性粒子の少なくとも中空単一粒子を含有するポリウレタンベース層が形成され、さらにその上にポリウレタン床材層が積層形成されることで、圧縮強度が充分に高く耐荷重性に優れ、床材としての基本的な機能を損なうことなく、かつ遮音性,弾力性,断熱性,衝撃吸収性等の各種機能に優れた床材層および施工法となることが開示されている。(特許文献4)
【0007】
床仕上げを施すべき基盤に塗膜厚さにほぼ等しい直径を有する1mm以上の粒状物を含有する発泡性ウレタンを塗布した後、その層上にレベリング層を施し、更にその上に2成分系弾性ウレタン塗り床材を塗布する床施工方法で、クツシヨン性、断熱性、吸音性など機能性の向上の他厚さ規制がし易いことが開示されている。(特許文献5)
【0008】
これらはクッション性を有する発泡体そのものか、シームレスが得られる塗り床であるが、発泡層を発泡性ウレタン樹脂に依存し、下地の水分、温度等外乱因子も多く、衝撃吸収性が定量かつ安定した床を形成するには多くの課題が残っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−317548号公報
【特許文献2】特開平10−317655号公報
【特許文献3】特開平2−227478号公報
【特許文献4】特開平6−73870号公報
【特許文献5】特開昭60−253657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
解決しようとする課題は、人の転倒によるダメージの緩和、落下物自体の破壊の低減、床の損傷の低減、JIS A6519の硬さ試験の最大加速度を100G以下とする衝撃緩衝床を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明は、スプリング硬さ30〜45のEVA発泡体を5mm〜20mm厚さで介して、伸び200〜400%の弾性ウレタン塗り床材を設けることを特徴とする衝撃緩衝床で、人の転倒や落下損傷、床の損傷を防ぐ。
【0012】
請求項2の発明は、前記がJIS A6519床の硬さ試験において、最大加速度が100G以下であることを特徴とする請求項1に記載の衝撃緩衝床で、人の転倒時の打撲による脳損傷を防ぐ。
【発明の効果】
【0013】
本発明の衝撃緩衝床は容易に施工でき、不意の転倒による脳等へのダメージを防ぐ衝撃緩衝作用が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は人の不意の転倒時に致命的なダメージを回避し、また床自体も落下物からの損傷を受け難い、継ぎ目のない衝撃緩衝床を構成から見出し、発明に到った。
【0015】
本発明に用いるエチレン酢酸ビニル共重合樹脂(EVAと記す。)の発泡体はEVAの特徴に依存する種々の樹脂や添加物との包容性から、軟質化や接着性等の改質が可能でであり、EVA独立気泡発泡体が可能となる。このEVA発泡体材料の特定はJIS K7312の附属書2 スプリング硬さ試験タイプC試験方法に従い行われる。これはアスカーC型硬度計と同一となる。本発明のEVA発泡体はアスカーC型において30〜45、すなわち JIS K7312の附属書2 スプリング硬さで30〜45が好ましい。また、このEVA発泡体の厚さは5〜20mmが好ましい。さらに好ましくは7mm以上となる。7mm未満となるとEVA発泡体の下地の影響を受ける。20mmを超えると床が柔らかいと感じる歩行感となる。このEVA発泡体は下地や弾性ウレタン塗り床材との接着を増すためにプライマーを塗布したものや投錨効果を有する不織布等を熱ラミネート等で必要な面を処理することができる。これにより、下地への接着や塗り床材料の依存性をなくすことができる。
【0016】
本発明に用いる弾性ウレタン塗り床塗材は2液型で、末端イソシアネート基を有するプレポリマーと前記イソシアネート基と反応する複数の水酸基或いは複数のアミノ基を有するプレホリマーの2液からなるもので、プレポリマーの主鎖構造や架橋度で様々な物性が得られる。このうち、本発明に最も重要な因子として、伸びがあり、JIS K6251の試験方法に基づく伸び200〜400%のものが最も好ましい。
その他の物性としては公共建築改修工事標準仕様書((財)建築保全センター)の内装改修工事の弾性ウレタン塗り床材の品質が適用され、引張強さが6.5N/mm以上、伸び200〜400%(以上JIS K6251)硬さ80〜95Hs(JIS K6253)、引張接着強さ1.0N/mm以上(JIS A5536)摩耗質量200mg以下(JIS K7204)があり、これを満足する市販品として ジョリエースエコJU−20(アイカ工業(株)、商品名、伸び250%、ウレタン塗り床材)がある。
【0017】
本発明の衝撃緩衝性評価としてJIS A6519の硬さ試験を応用した。この試験は体育館、柔道場の所定の場所に厚さ8mm,ショアA硬度37,大きさ300×150mmのゴム板を置き、高さ20cmから質量3.85kgのヘッドモデルを自由落下させ,床に衝突したときの加速度を測定し,転倒衝突時の硬さを求めるものである。鋼製ヘッドが曲率半径50mm、直径50mmであるが、本発明では、試験の簡易化のために、試験体の鋼球の落下中心位置に感圧紙を貼り、実際に測定済みの材料と比較して、数値が担保されていることを確認した。実際の測定は試験対象の床に上記ゴム板はおかずに評価した。
この数値は前記規格では100G以下とされ、最大加速度60Gで頭を打った場合で脳震盪、400G以上になると永久障害を引き起こす可能性があるとされる。
【0018】
本発明の施工後の上記硬さは下地や構造により緩和されると考えられる。本発明では緩和されないと考えられるコンクリートパネルで、実施した。実際の施工においては様々な下地があるが、必要に応じて、下地調整、シーラー、プライマー等適宜施す。また、弾性ウレタン塗り床の上塗り仕上げも必要に応じて適宜行う。
【0019】
本発明は衝撃緩衝作用があり、老人介護設備、幼稚園等の遊び場、廊下、遊技場の転倒の恐れのある場所、刑務所、病院等に向き、また、床自体が落下物による破損、落下物の破損を防ぐため、クリーンルーム、病院の手術室等に適応できる。
【0020】
以下に実施例・参考例・比較例を記して詳細な説明をする。結果を表1に記した。
【0021】
使用塗材
塗材A:アイカピュールJJ−100(アイカ工業(株)、商品名)のA液(ポリアルコールエマルジョン)、同B液(ポリメリックMDI)、同専用骨材C(セメント・シリカ質骨材混合物)を重量比1:1:3で撹拌混合し、塗材Aとした。
塗材B:アイカピュールJJ−100(アイカ工業(株)、商品名)のA液(ポリアルコールエマルジョン)、同B液(ポリメリックMDI)、ポルトランドセメント(太平洋セメント(株)製)を重量比1:1:1で撹拌混合し、塗材Bとした。
塗材C:ジョリエースエコJU−20 A液(ポリエーテルポリオール)、B液(トリレンジイソシアネート化合物)を重量比1:1で混合し、塗材Cとした。
塗材D:アイカピュールJJ-103(アイカ工業(株)、商品名、伸び率 66%) A液(ポリオール)、B液(ポリメリックMDI)を重量比で4:1で混合し、塗材Dとした。
塗材E:ジョリエースJE−70(アイカ工業(株)、商品名、エポキシプライマー)A液(ビスフェノールA型樹脂30重量%溶液主剤)、B液(変性脂肪族ポリアミドアミン25重量%溶液硬化剤)重量比1:1で混合し、塗材Eとした。
【実施例1】
【0022】
コンクリート舗道板(300×300×100mm)に、塗材Aを金鏝ですり込む様に0.6kg/m(約0.4mm)を塗布し、10mm厚のV−10(三福工業(株)、商品名、EVA10倍発泡体、アスカーC型硬度39/20℃)を載せ、その上に塗材Bを0.2kg/m(約0.1mm)塗布し、その上に塗材Cを下塗りとして、1.0kg/m金鏝で塗布し、硬化後さらに塗材C、1.0kg/mを金鏝にて上塗りし(塗材Cの厚さは約1.6mm)実施例1の床試験体とした。
【実施例2】
【0023】
実施例1のEVA10倍発泡体を10mm厚のV−6(三福工業(株)、商品名、EVA6倍発泡体、アスカーC型硬度45/20℃)に変えた以外実施例1と同じに行い、実施例2の床試験体とした。
【実施例3】
【0024】
実施例1のEVA10倍発泡体を7mm厚のV−15(三福工業(株)、商品名、EVA15倍発泡体、アスカーC型硬度30/20℃)に変えた以外実施例1と同じに行い、実施例3の床試験体とした。
【実施例4】
【0025】
実施例1のEVA10倍発泡体を5mm厚のV−10に変えた以外実施例1と同じに行い、実施例4の床試験体とした。
【0026】
比較例1
実施例1の塗材Cの2度塗りに変えて、塗材Dを1.5kg/m金鏝で塗布し(塗材Dの塗膜厚さ約1.1mm)、に変えた以外実施例1と同じに行い比較例1の床試験体とした。
【0027】
比較例2
実施例1の塗材Aに変えて塗材Eを0.2kg/m塗り、10mm厚のV−10を入れないで、また、塗材Bを塗らない以外、実施例1と同じに行い、比較例2の床試験体とした。
【0028】
比較例3
比較例1の10mm厚のV−10を入れないで行う以外比較例1に同じに行い、比較例3の床試験体とした。
【0029】
比較例4
実施例1の10mm厚のV−10に変えて20mm厚スタイロフォームIB(ダウ化工(株)、ポリスチレン発泡体、密度20kg/m)に変えた以外実施例1と同じに行い、比較例4の床試験体とした。
【0030】
参考例1
実施例1の塗材C下塗りに変え、塗材Dを1.5kg/mとした以外実施例1と同じに行い、参考例1の床試験体とした。
【0031】
参考例2
実施例1の上塗り塗材Cに変え、塗材Dを1.5kg/mとした以外実施例1と同じに行い、参考例2の床試験体とした。
【0032】
参考例3
実施例1で使用した10mm厚のV−10がJIS A6519の床材の硬さ試験のG値65を標準とするため、コンクリート舗道板に載せた状態で、衝撃試験Iを行い、0.2MPaの結果を得た。
【0033】
参考例4
参考例3の10mm厚のV−10に変えJIS A6519の床材の硬さ試験のG値75である10mm厚のエラスチックワンEL1062(三福工業(株)、商品名、特殊オレフィン、ポリエチレンエラストマー10倍発泡体、アスカーC型硬度20/20℃)を参考とするため、コンクリート舗道板に載せた状態で、衝撃試験Iを行い、0.2〜0.25MPaの結果を得た。
【表1】

【0034】
表の説明
−:試験ができないか、不要のため行っていないことを示す。
【0035】
衝撃試験I:63φ(1kg)の鋼球を各床試験体に30cmの高さより落下させ、その落下中心にプレスケール(富士フィルム(株)、商品名、極超低圧用、 超低圧用)を5mm角で置き、カラーチャートと目視で比色して圧力(MPa)を求めた。この際プレスケールの適性圧力から外れた場合、種類を変えて行った。なお、落下位置は硬質塩ビ管VP65(内径67φ)を鉛直に立て、芯を出した。
【0036】
衝撃試験II:63φ(1kg)の鋼球を各床試験体に100cmの高さより同位置に3回落下させ、異常のないものを○、それ以外を×とした。
なお異常は *1は塗り床塗膜のひび割れ *2は舗道板の割れ *3へこみをノギスで測定した結果約2.3mmあった。
【0037】
評価:JIS A6519の硬さ試験で100G以下であり、また歩行感が損なわれない場合を○:歩行感は損なわれず、硬さ試験が100Gを超えるが衝撃緩衝性能を有するものを△、歩行感が損なわれるか、衝撃緩衝性能はないものを×とした。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の衝撃緩衝床は人の安全性確保の他、物の落下による物の破損の防止、床自体の損傷を防ぐことができ、様々な床で応用が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプリング硬さ30〜45のエチレン酢酸ビニル共重合樹脂発泡体を5mm〜20mm厚さで介して、伸び200〜400%の弾性ウレタン塗り床材を設けることを特徴とする衝撃緩衝床。
【請求項2】
前記がJIS A6519床の硬さ試験において、最大加速度が100G以下であることを特徴とする請求項1に記載の衝撃緩衝床。