説明

衣料用柔軟剤組成物

【課題】 保管時に変色を呈さない衣料用柔軟剤組成物の提供。
【解決手段】 (a)炭素数12〜29の炭化水素基を分子内に少なくとも1つ以上有する第3級アミン、その酸塩、及びその4級化物から選ばれる1種以上の衣料用柔軟基剤、(b)イソオイゲノール、カルバクロール、チモール、オルシノールモノメチルエーテル及びプロペニルグアエトールから選ばれる1種以上の芳香族アルコール、並びに(c)水及び/又は有機溶剤を含有する衣料用柔軟剤組成物。
ここで、(a)成分の含有量は10〜95質量%であり、(b)成分/(a)成分の質量比は(b)成分/(a)成分=1/85〜1/5である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は衣料用柔軟剤組成物、及びその変色抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、衣料用柔軟基剤としては、炭素数12以上の炭化水素基を分子内に少なくとも1つ以上有する第3級アミン、その酸塩、及びその4級化物から選ばれる化合物が用いられており(特許文献1)、かかる柔軟基剤で処理した繊維製品の吸水性の低下を抑制するために、炭化水素基に不飽和結合を有する柔軟基剤を用いた柔軟剤組成物の技術も知られている(特許文献2)。また、イソオイゲノール、カルバクロール、チモール及びオルシノールモノメチルエーテルなどの香料成分を含有する柔軟剤組成物の技術も知られている(特許文献3及び4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−13335号公報
【特許文献2】特開平6−123071号公報
【特許文献3】特開2006−161229号公報
【特許文献4】特開2004−211230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1及び2に記載の、炭素数12以上の炭化水素基を分子内に少なくとも1つ以上有する第3級アミン、その酸塩、及びその4級化物から選ばれる衣料用柔軟基剤を含有する柔軟剤組成物は、衣料に優れた柔軟性を付与することができる。しかし、かかる柔軟剤組成物は、高温下で保管したり、太陽光の下で保管した後に常温(5℃〜35℃)で保管すると、変色する問題のあることを見出した。とりわけ、組成物のpHが酸性である場合に変色の問題は顕著となり、中でも、分子内の炭化水素基に不飽和結合を有する柔軟基剤を用いた柔軟剤組成物に関しその程度が顕著となることを見出した。
【0005】
また、変色の抑制には一般的に酸化防止剤として2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)が用いられるが、BHTを含有する柔軟剤組成物を例えば太陽光の下で保管した直後は変色は抑制されているが、その後常温(5℃〜35℃)で保管すると変色する課題が見出された。
【0006】
従って本発明の課題は、特に保管時に、特に過酷な保管条件においても変色を呈さない衣料用柔軟剤組成物、並びに衣料用柔軟剤組成物の変色抑制方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記特許文献3及び4に記載されるように、イソオイゲノールやカルバクロール、チモールなどは、柔軟剤組成物に用いられる香料成分として公知ではあるが、これらは柔軟剤組成物や柔軟処理後の衣料に香りを付与するために用いられるものにすぎない。例えば、上記特許文献4の〔表2〕(段落0098)に記載される香料(d−8)は、香料成分としてカルバクロール、チモール、イソオイゲノールを含有するが(段落0100、〔表4〕)、各成分を合計しても香料中に僅か0.502質量%である。該特許文献4の実施例22(段落0118、〔表19〕)には、3級アミン組成物を10質量%及び香料(d−8)を1質量%含有する柔軟剤組成物が開示されているが、3級アミン組成物に対するカルバクロール、チモール、イソオイゲノールの含有比(質量比)は1/1992にすぎず、3級アミン組成物に対して非常に僅かな量でしか用いられていない。また、これら特定の成分が衣料用柔軟剤組成物の変色を抑制するという特別な効果を示すことに関しては何ら示唆がなかった。
【0008】
本出願人は、炭素数12〜29の炭化水素基を分子内に少なくとも1つ以上有する第3級アミン、その酸塩、及びその4級化物から選ばれる柔軟基剤と共に、イソオイゲノールやカルバクロール、チモールなどの特定の芳香族アルコールを柔軟剤組成物中に含有させることによって、高温下で保管したり、太陽光の下で保管した後に常温(5℃〜35℃)で保管する場合にも柔軟剤組成物の変色を抑制し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、下記(a)成分、(b)成分及び(c)成分を含有し、(a)成分の含有量が10〜95質量%であり、(b)成分/(a)成分の質量比が(b)成分/(a)成分=1/85〜1/5である、衣料用柔軟剤組成物を提供する。
(a)成分:炭素数12〜29の炭化水素基を分子内に少なくとも1つ以上有する第3級アミン、その酸塩、及びその4級化物から選ばれる1種以上の衣料用柔軟基剤
(b)成分:イソオイゲノール、カルバクロール、チモール、オルシノールモノメチルエーテル及びプロペニルグアエトールから選ばれる1種以上の芳香族アルコール
(c)成分:水及び/又は有機溶剤
本発明はさらに、上記(a)成分及び(c)成分を含有する衣料用柔軟剤組成物に、(b)成分を(b)成分/(a)成分の質量比で(b)成分/(a)成分=1/85〜1/5となるように共存させることによる、(a)成分及び(c)成分を含有する衣料用柔軟剤組成物の変色抑制方法も提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、保管時、特に過酷な保管条件においても変色を呈さない衣料用柔軟剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<(a)成分>
本発明の衣料用柔軟剤組成物に用いる(a)成分は、炭素数12〜29の炭化水素基を分子内に少なくとも1つ以上有する第3級アミン、その酸塩、及びその第4級アンモニウム塩から選ばれる1種以上の衣料用柔軟基剤である。具体的には下記一般式(1)で表される第3級アミン、その酸塩、及びその4級化物から選ばれる1種以上の化合物であることが好ましい。
【0012】
【化1】

【0013】
〔式中、Ra1、Ra2及びRa3は、それぞれ独立に、エステル基又はアミド基で分断されていても良い総炭素数12〜29の炭化水素基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、又は炭素数1〜3のアルキル基であるが、Ra1、Ra2及びRa3のうち少なくとも1つはエステル基又はアミド基で分断されている総炭素数12〜29の炭化水素基である。〕
(b)成分による変色抑制効果をより享受できる観点から、エステル基又はアミド基で分断されていても良い総炭素数12〜29の炭化水素基に関しては、エステル基又はアミド基で分断されている総炭素数12〜24の炭化水素基であることが好ましい。また、本発明の効果をより享受できる観点から、前記炭化水素基に占める不飽和炭化水素基の割合は好ましくは10〜100質量%、より好ましくは25〜100質量%、更に好ましくは30〜100質量%、特に好ましくは40〜100質量%、最も好ましくは50〜100質量%である。一つの炭化水素基中に不飽和基が2つ以上含まれる不飽和炭化水素基の割合は、(b)成分による変色抑制効果をより享受できる観点から、全炭化水素基中5質量%以上、好ましくは8質量%以上であることが好ましい。
本明細書において、全炭化水素基中の不飽和炭化水素基の割合は、(a)成分を製造する際の原料の一つである、下記記載の脂肪酸、又は脂肪酸低級アルキル(アルキル基の炭素数1〜3)エステルの組成をガスクロマトグラフィーで分析して算出した値である。また、分子内にエステル基又はアミド基を有する(a)成分の場合は、(a)成分を加水分解して得られる脂肪アルコール又は脂肪酸をメチルエステル化した化合物をガスクロマトグラフィーで分析して算出することができる。
【0014】
一般式(1)で表される化合物は、例えば下記一般式(2)で表されるアミン化合物(a1)と、炭素数12〜26の脂肪酸又は脂肪酸低級アルキル(アルキル基の炭素数1〜3)エステル(a2)とのエステル化反応、アミド化反応、又はエステル交換反応により得ることができる。また、その酸塩は、無機酸若しくは有機酸を用いてさらに中和反応させることにより、また、その4級化物は、アルキル化剤を用いてさらに4級化反応させることにより得ることができる。
【0015】
【化2】

【0016】
〔式中、X、Y、Zはそれぞれ独立に水素、ヒドロキシ基、1級アミノ基及び2級アミノ基から選ばれる基であり、X、Y、Zの少なくとも一つはヒドロキシ基である。R21、R22、R23はそれぞれ独立に、炭素数1〜3のアルキレン基であり、好ましくはエチレン基、又はプロピレン基である。〕
一般式(2)で表される化合物の好ましい具体例としては、特に制限されるものではないがN−メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−N−(3−アミノプロピル)アミン、N,N−ジメチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アミン、N,N−ジメチル−N−(3−アミノプロピル)アミン等が挙げられる。
【0017】
(a)成分の製造に用いられる上記(a2)成分に関しては、種々の炭素数範囲及び飽和脂肪酸/不飽和脂肪酸の質量比率を有する脂肪酸又は脂肪酸低級アルキルエステルを得るために、通常油脂便覧等で知られているような脂肪酸を用いるだけでは達成できない場合は、不飽和結合への水素添加反応、不飽和結合の異性化反応、又は蒸留操作、ボトムカット、トップカットによるアルキル鎖長の調整、あるいは複数の脂肪酸の混合により得ることができる。
【0018】
(a2)成分の具体例としては、特に制限されるものではないが、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、又はオレイン酸等の飽和もしくは不飽和脂肪酸又はその低級アルキルエステル;牛脂、豚脂、パーム油、大豆油、ナタネ油、サフラワー油、ヒマワリ油、オリーブ油等の天然油脂を分解・精製して得られる脂肪酸又はその低級アルキルエステル(好ましくはメチルエステル又はエチルエステル);並びにこれらの硬化脂肪酸、部分硬化脂肪酸又はそれらの低級アルキルエステル(好ましくはメチルエステル又はエチルエステル)等を挙げることができる。
【0019】
(a2)成分としては、特に制限されるものではないが、炭素数12〜26、好ましくは炭素数14〜20の脂肪酸又はその低級アルキル(アルキル基の炭素数1〜3)エステルが好適であり、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0020】
エステル化反応、アミド化反応又はエステル交換反応において、前記アミン(a1)中のヒドロキシ基、1級アミノ基及び2級アミノ基の合計モル数と、脂肪酸又は脂肪酸低級アルキルエステル(a2)とのモル比、(a1)/(a2)は、好ましくは1/0.5〜1/1であり、より好ましくは1/0.5〜1/0.98であり、更に好ましくは1/0.54〜1/0.95である。
【0021】
(a1)成分と(a2)成分との反応において(a2)成分として脂肪酸を用いる場合には、エステル化及び/又はアミド化反応温度を140〜230℃で縮合水を除去しながら反応させることが好ましい。反応を促進させる目的から通常のエステル化触媒を用いても差し支えなく、例えば硫酸、燐酸などの無機酸、酸化錫、酸化亜鉛などの無機酸化物、テトラプロポキシチタンなどのアルコラートなどを選択することができる。反応の進行はJIS K0070−1992に記載の方法で酸価(AV)及び鹸化価(SV)を測定することで確認を行い、AVが好ましくは10mgKOH/g以下、より好ましくは6mgKOH/g以下となった時、反応を終了する。
【0022】
(a1)成分と(a2)成分との反応において、(a2)成分として脂肪酸の低級アルキルエステルを用いる場合には、好ましくは50〜150℃の温度で、生成する低級アルコールを除去しながら反応を行う。反応促進のために水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムなどの無機アルカリや、メチラート及びエチラートなどのアルコキシ触媒を用いることも可能である。反応の進行の終点はガスクロマトグラフィーなどを用いて、脂肪酸低級アルキルエステルの量を直接定量することで決定することができる。仕込みの脂肪酸低級アルキルエステルの含有量に対して、測定時の未反応脂肪酸低級アルキルエステルの含有量が、ガスクロマトグラフィーチャートでの面積%において、1/10以下、好ましくは1/15以下となったとき反応を終了させることが好ましい。
【0023】
また、一般式(1)で表される第3級アミンを無機酸または有機酸で中和することで、酸塩を得る事ができる。好ましい無機酸は、塩酸、硫酸であり、好ましい有機酸はグリコール酸、安息香酸、サリチル酸等の炭素数2〜8のモノカルボン酸、クエン酸、マレイン酸等の炭素数3〜10の多価カルボン酸、炭素数6〜36のアルキル硫酸エステル、又はポリオキシアルキレンアルキル(アルキル基の炭素数6〜36)硫酸エステルである。
【0024】
一般式(1)で表される化合物の4級化に用いられるアルキル化剤としては、メチルクロリド、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸等が挙げられる。アルキル化剤としてメチルクロリドを用いる場合には、特に溶媒を使用する必要はないが、溶媒を使用する場合は、エタノールやイソプロパノールなどの溶媒を、エステル化合物に対して10〜50質量%程度混合した溶液をオートクレーブなどの加圧反応器に仕込み、密封下30〜120℃の反応温度でメチルクロリドを圧入させて反応させる。このとき、メチルクロリドの一部が分解し塩酸が発生する場合があるため、アルカリ剤を少量加えることもできる。メチルクロリドと一般式(1)で表される化合物とのモル比は、一般式(1)で表される化合物のアミノ基1当量に対してメチルクロリドを0.9〜1.5倍当量用いることが好適である。
【0025】
アルキル化剤としてジメチル硫酸、ジエチル硫酸を用いる場合には、特に溶媒を使用する必要はないが、溶媒を使用する場合、エタノールやイソプロパノールなどの溶媒を一般式(1)で表される化合物に対して10〜50質量%程度混合した溶液を40〜100℃に加熱混合し、ジメチル硫酸及び/又はジエチル硫酸を滴下して行う。ジメチル硫酸及び/又はジエチル硫酸と一般式(1)で表される化合物とのモル比は、一般式(1)で表される化合物のアミノ基1当量に対してジメチル硫酸及び/又はジエチル硫酸を0.85〜1.1倍当量用いることが好ましい。
【0026】
着色を抑える観点から、(a)成分の製造時には、製造工程の全て、又は一部を窒素雰囲気下(例えば、酸素含有量が2容積%以下)で行うことが好ましい。また、色及び/又は匂いを改善する観点から、BHT等の酸化防止剤、又はEDTA等のキレート剤の存在下で製造することができる。
【0027】
(a)成分が着色する原因は、推定ではあるがアミン部分や不飽和炭化水素基等の反応性が高い官能基が酸化反応によって、酸化されることで着色しているものと考えている。
【0028】
<(b)成分>
本発明の衣料用柔軟剤組成物に用いる(b)成分は、イソオイゲノール、カルバクロール、チモール、オルシノールモノメチルエーテル及びプロペニルグアエトール(2−エトキシ−5−プロペニル−フェノール;CAS No. 94-86-0)から選ばれる1種以上の芳香族アルコールである。中でも、(a)成分を含有する衣料用柔軟剤組成物の変色を抑制する観点から、イソオイゲノール及びプロペニルグアエトールから選ばれる化合物が好ましく、イソオイゲノールが更に好ましい。
【0029】
<(c)成分>
本発明の衣料用柔軟剤組成物に用いる(c)成分は、水及び/又は有機溶剤である。
【0030】
水としては市水、又は市水をイオン交換して得られるイオン交換水を使用することができる。
【0031】
有機溶剤としては、logPが−2〜2の有機溶剤を用いることが好適である。ここで、logPとは、有機化合物の水と1−オクタノールに対する親和性を示す係数である。1−オクタノール/水分配係数Pは、1−オクタノールと水の2液相の溶媒に微量の化合物が溶質として溶け込んだときの分配平衡で、それぞれの溶媒中における化合物の平衡濃度の比であり、底10に対する1−オクタノール/水分配係数Pの対数LogPの形で示すのが一般的である。多くの化合物のLogP値が報告され、Daylight Chemical Information Systems, Inc.(Daylight CIS)等から入手しうるデータベースには多くの値が掲載されているので参照できる。実測のLogP値がない場合には、Daylight CISから入手できるプログラム“CLOGP”で計算すると最も便利である。
【0032】
このプログラムは、Hansch, Leoのフラグメントアプローチにより算出される“計算LogP(ClogP)”の値を出力する。フラグメントアプローチは化合物の化学構造に基づいており、原子の数及び化学結合のタイプを考慮している(cf. A. Leo, Comprehensive Medicinal Chemistry, Vol.4, C. Hansch, P.G. Sammens, J.B. Taylor and C.A. Ramsden, Eds.,p.295, Pergamon Press, 1990)。このClogP値は現在最も汎用的で信頼できる推定値であるので、化合物の選択に際して実測のLogP値の代わりに用いることができる。本発明では、プログラムCLOGP v4.01により計算したClogP値を用いた。
【0033】
本発明の(c)成分に用いられる有機溶剤としては、炭素数2又は3の鎖状の1価アルコール、炭素数2〜10の多価アルコール、分子内に芳香族炭化水素基を有するアルコール、炭素数2〜8のジオールのアルキル(炭素数1〜6)エーテル誘導体、及び炭素数4〜10の炭化水素基を有するグリセリルエーテルから選ばれる1種以上の有機溶剤が好ましい。
【0034】
炭素数2又は3の鎖状の1価アルコールの好適な例としては、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール等が挙げられる。
【0035】
炭素数2〜10の多価アルコールの好適な例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ソルビトール等の糖アルコール、2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、及び2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール等が挙げられる。
【0036】
分子内に芳香族炭化水素基を有するアルコールの好適な例としては、ベンジルアルコール、2−フェノキシエタノール、2−ベンジルオキシエタノール、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノフェニルエーテル、及びテトラエチレングリコールモノフェニルエーテル等が挙げられる。
【0037】
炭素数2〜8のジオールのアルキル(炭素数1〜6)エーテル誘導体の好適な例としては、2−ブトキシエタノール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、及びジエチレングリコールモノ−2−メチルプロピルエーテル等が挙げられる。
【0038】
炭素数4〜10のグリセリルエーテルの好適な例としては、ペンチルグリセリルエーテル、ヘキシルグリセリルエーテル、及びオクチルグリセリルエーテル等が挙げられる。
【0039】
(c)成分は、(b)成分と(a)成分を均一に混合させることで(b)成分による変色抑制効果を高めるために使用される。よって、(a)成分の種類や含有量、並びに組成物のpHなどに応じて、最適な種類及び含有量は異なる。
【0040】
例えば、衣料用柔軟剤組成物中の(a)成分の含有量が40質量%を超える場合には、(c)成分としては、炭素数2又は3の鎖状の1価アルコール、炭素数2〜10の多価アルコール、及び分子内に芳香族炭化水素基を有するアルコールを主に使用することが、過酷な保管条件下における(a)成分を含有する衣料用柔軟剤組成物の変色抑制効果の点で好適である。中でもエタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール及びグリセリンがより好ましい。
衣料用柔軟剤組成物中の(a)成分の含有量が10質量%〜40質量%の場合には、主に水、分子内に芳香族炭化水素基を有するアルコール、炭素数2〜8のジオールのアルキル(炭素数1〜6)エーテル誘導体、及び炭素数4〜10のグリセリルエーテルを使用することが、過酷な保管条件下における(a)成分を含有する衣料用柔軟剤組成物の変色抑制効果の点で好適である。中でも、水、2−フェノキシエタノール、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノフェニルエーテル、テトラエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、及びオクチルグリセリルエーテルがより好ましい。
【0041】
<その他成分>
本発明の衣料用柔軟剤組成物は、(a)成分と(b)成分との相溶性を高めることで(b)成分による変色抑制効果を更に高める目的で、炭素数12〜24の脂肪酸及び炭素数12〜24の脂肪酸の低級(炭素数1〜3)アルキルエステルから選ばれる化合物〔以下、(d)成分という〕を含有することが出来る。
【0042】
(d)成分の好適な例としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、エルカ酸、及びベヘニン酸、並びにそれらのメチルエステルから選ばれる1種以上の化合物が挙げられる。特に、不飽和基を有するパルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸及びリノール酸、並びにそれらのメチルエステルから選ばれる1種以上の化合物が好ましい。
【0043】
(d)成分は、(a)成分を製造する時の副生成物若しくは未反応物として、又は(a)成分と共に衣料用柔軟剤組成物中に含有しても良い。
【0044】
また、本発明の衣料用柔軟剤組成物は、貯蔵安定性の観点から、下記一般式(3)で表される非イオン界面活性剤〔以下、(e)成分という〕を含有することが好ましい。
【0045】
3a−G−〔(R3bO)p−R3cq (3)
〔式中、R3aは、炭素数8〜20、好ましくは炭素数8〜18、より好ましくは炭素数10〜16の炭化水素基であり、R3bは、炭素数2又は3のアルキレン基、好ましくはエチレン基であり、R3cは、炭素数1〜3のアルキル基又は水素原子であり、pは2〜100、好ましくは5〜80、より好ましくは5〜60、更に好ましくは10〜60の数であり、付加形態はランダム付加又はブロック付加のいずれでもよい。Gは−O−、−COO−、−CONH−、−NH−、−CON<又は−N<であり、Gが−O−、−COO−、−CONH−又は−NH−の場合qは1であり、Gが−CON<又は−N<の場合qは2である。〕
本発明の衣料用柔軟剤組成物は、粘度を調整する目的、又は20℃での外観を透明にする目的から、必要に応じて無機塩又は有機塩〔以下、(f)成分という〕を含有することができる。無機塩としては、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、及び塩化マグネシウムが好ましく、有機塩としては炭素数1〜9のカルボン酸塩、スルホン酸塩、又は硫酸エステル塩が好ましい。
【0046】
本発明の衣料用柔軟剤組成物は、(a)成分と併用することで更に柔軟性を向上させる効果を付与する目的から、炭素数12〜22の脂肪酸と、エチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールとのエステル化合物〔以下、(g)成分という〕を含有することもできる。
【0047】
本発明の衣料用柔軟剤組成物は、所望の香調を実現する目的から、複数の香料成分を含有する香料混合物〔以下、(h)成分という〕を含有することができる。香料成分としては、「香料と調香の基礎知識」(中島 基貴著、産業図書(株)、2005年4月20日、第4刷)に記載のものを用いることができる。
【0048】
(h)成分の香料混合物は本願記載の(b)成分に相当する成分を含有していても良いが、衣料用柔軟剤組成物中の(a)成分と、全ての(b)成分の質量比が、本願特定の範囲外にならないように配慮する必要がある。
【0049】
本発明の衣料用柔軟剤組成物は、分子内に発色団としてアゾ基、フタロシアニン基、トリフェニルメタン基、キサンタン基又はアントラキノン基を有し、且つ水溶性、水分散性を高める官能基として、スルホン酸基、アミノ基、カルボキシル基又はポリオキシアルキレン基を有する染料〔以下、(i)成分という〕を含有することができる。
【0050】
本発明の衣料用柔軟剤組成物は、色相安定性、匂い安定性を向上する目的から、キレート剤〔以下、(j) 成分という〕を含有することが好ましい。(j)成分の好適な例としては、クエン酸、りんご酸、コハク酸等のポリカルボン酸化合物、エチレンジアミン4酢酸、ジエチレントリアミン5酢酸、ヒドロキシエチルイミノジ酢酸等のアミノポリカルボン酸、並びに1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラメチルホスホン酸等のホスホン酸等が挙げられる。これらのキレート剤は塩として組成物中に含有していてもよい。これらの中では、特にエチレンジアミン4酢酸のナトリウム塩が好ましい。
【0051】
また、本発明の効果に影響を与えない量の消泡シリコーン、酸化防止剤、防腐剤を含有することもできる。
【0052】
[衣料用柔軟剤組成物]
本発明の衣料用柔軟剤組成物は下記に示す、衣料用柔軟剤組成物(1)又は衣料用柔軟剤組成物(2)の2つの態様が挙げられる。
【0053】
衣料用柔軟剤組成物(1)
本発明の衣料用柔軟剤組成物中の(a)成分の含有量は10〜40質量%であり、好ましくは11〜30質量%である。
【0054】
また、衣料用柔軟剤組成物中の(b)成分の含有量は、変色抑制効果及び経済性の観点から、(b)成分/(a)成分との質量比で、(b)成分/(a)成分=1/85〜1/5であり、好ましくは1/40〜1/5、より好ましくは1/25〜1/5、更に好ましくは1/13〜1/5、最も好ましくは1/8〜1/5.5となる量が好適である。
【0055】
衣料用柔軟剤組成物(1)中の(c)成分の含有量は、(a)成分及び(b)成分を除く量、又は(a)〜(j)成分の合計が100質量%になるような量で使用することができるが、好ましくは52〜89.9質量%、より好ましくは60〜85質量%である。
【0056】
衣料用柔軟剤組成物(1)に(d)成分を含む場合、(a)成分と(d)成分との質量比で、(a)成分/(d)成分=99/1〜70/30、より好ましくは99/1〜80/20となる量にて含有することが好適である。
【0057】
衣料用柔軟剤組成物(1)に(e)成分を含む場合、(a)成分と(e)成分との質量比で、(a)成分/(e)成分=99/1〜50/50、より好ましくは97/3〜60/40、更に好ましくは95/5〜70/30となる量にて含有することが好適である。
【0058】
衣料用柔軟剤組成物(1)中の(f)成分の含有量は、好ましくは0〜3質量%、より好ましくは0.0001〜2.5質量%である。
【0059】
衣料用柔軟剤組成物(1)中の(g)成分の含有量は、好ましくは0.1〜5質量%、より好ましくは0.5〜3質量%である。
【0060】
衣料用柔軟剤組成物(1)中の(h)成分の含有量は、好ましくは0.1〜6質量%、より好ましくは0.2〜5質量%である。
【0061】
衣料用柔軟剤組成物(1)中の(i)成分の含有量は、好ましくは0.00001〜1質量%、好ましくは0.00002〜0.1質量%である。
【0062】
衣料用柔軟剤組成物(1)中の(j)成分の含有量は、好ましくは0.0005〜1質量%、より好ましくは0.001〜0.1質量%である。
【0063】
衣料用柔軟剤組成物(2)
本発明の衣料用柔軟剤組成物(2)中の(a)成分の含有量は40質量%を超え、95質量%以下であり、好ましくは70〜90質量%である。
【0064】
また、衣料用柔軟剤組成物(2)中の(b)成分の含有量は、変色抑制効果及び経済性の観点から、(b)成分/(ab)成分との質量比で、(b)成分/(a)成分=1/85〜1/10であり、好ましくは1/70〜1/15であり、より好ましくは1/50〜1/20となる量が好適である。
【0065】
衣料用柔軟剤組成物(2)中の(c)成分の含有量は、(a)成分及び(b)成分を除く量、又は(a)〜(j)成分の合計が100質量%になるような量で使用することができるが、好ましくは1〜49.5質量%、より好ましくは2〜30質量%である。但し、(a)成分として分子内にエステル基を有する衣料用柔軟基剤を用いる場合には、(a)成分の加水分解安定性の観点から、(c)成分として用いる水の量は、組成物中に好ましくは2質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは含有しないことが好適である。
【0066】
衣料用柔軟剤組成物(2)に関しても、(d)〜(j)成分を含有することができ、その含有量は衣料用柔軟剤組成物(1)の場合と同様である。
【0067】
本発明の衣料用柔軟剤組成物(1)及び(2)は、本願の効果をより享受できる観点から、20℃におけるpHが好ましくは2〜6.5、より好ましくは2〜5.0であることが好適である。衣料用柔軟剤組成物のpHは、塩酸や硫酸等の無機酸、安息香酸やトルエンスルホン酸、サリチル酸などの有機酸、及び/又は水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの塩基化合物を用いて調整することができる。なお、衣料用柔軟剤組成物(1)のpHは、JIS Z8802に準拠した測定方法を用いて、柔軟剤組成物そのものを20℃で測定した値である。衣料用柔軟剤組成物(2)のpHは衣料用柔軟剤組成物中の(a)成分が10質量%となるようにイオン交換水で希釈したものを20℃で測定した値である。本願実施例に記載したpHは、株式会社堀場製作所製のpHメータ「D−52S」(pH電極:6367−10D)を用いて測定した。
【0068】
<変色抑制方法>
本発明はまた、下記(a)成分及び(c)成分を含有する衣料用柔軟剤組成物の変色抑制方法を提供し、該方法は、(a)成分及び(c)成分を含有する衣料用柔軟剤組成物に、(b)成分を(b)成分/(a)成分の質量比で(b)成分/(a)成分=1/85〜1/5となるように共存させることによる。
(a)成分:炭素数12〜29の炭化水素基を分子内に少なくとも1つ以上有する第3級アミン、その酸塩、及びその4級化物から選ばれる1種以上の衣料用柔軟基剤
(b)成分:イソオイゲノール、カルバクロール、チモール、オルシノールモノメチルエーテル及びプロペニルグアエトールから選ばれる1種以上の芳香族アルコール
(c)成分:水及び/又は有機溶剤
本発明において、上記(a)成分及び(c)成分を含有する衣料用柔軟剤組成物に、(b)成分を共存させて変色を抑制する方法に特に制限はないが。例えば(a)成分、(b)成分及び(c)成分を混合する方法が挙げられる。(a)成分、(b)成分及び(c)成分はそれぞれ個別に用意して混合してもよく、予め(a)成分、(b)成分及び(c)成分から選ばれる、任意の2種の組み合わせの予備混合物同士を混合してもよい。
【0069】
混合時の上記(a)成分〜(c)成分及び混合時の衣料用柔軟剤組成物の温度に特に制限はないが、(a)成分、(b)成分及び(c)成分が互いに均一に混合可能な温度が好ましい。上記(a)成分〜(c)成分及び衣料用柔軟剤組成物が0〜90℃の温度範囲に物性変化温度(例えば融点、凝固点又は流動点等)を有する場合には、前記物性変化温度の温度以上で混合することが好ましい。しかしながら、物性変化温度以下の温度であっても、混合することで一方の成分が他の成分に溶解し得る場合には前記物性変化温度にこだわらない。
【実施例】
【0070】
実施例及び比較例で用いた各配合成分をまとめて以下に示す。
<(a)成分>
(a−1):下記合成例1で得られた第4級アンモニウム塩混合物
(a−2):下記合成例2で得られた第4級アンモニウム塩混合物
(a−3):下記合成例3で得られた第3級アミン化合物
<(b)成分>
(b−1):イソオイゲノール
(b−2):チモール
(b−3):カルバクロール
(b−4):オルシノールモノメチルエーテル
(b−5):プロペニルグアエトール
<(b’)成分((b)成分の比較成分)>
(b’−1):フェニルエチルアルコール
(b’−2):ベンジルアルコール
(b’−3):2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール
<(c)成分>
(c−1):イオン交換水
(c−2):エタノール
(c−3):2−メチル−2,4−ペンタンジオール
(c−4):2−フェノキシエタノール
(c−5):トリエチレングルコールモノフェニルエーテル
<その他成分>
(d−1):脂肪酸(組成:パルミチン酸2質量%、ステアリン酸1.5質量%、オレイン酸60質量%、エライジン酸26.5質量%、リノール酸10質量%)
(e−1):ポリオキシエチレン(平均付加モル数20)モノドデシルエーテル
(f−1):安息香酸ナトリウム
(f−2):塩化カルシウム
(g−1):ステアリン酸モノグリセリド
(j−1):エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム塩

以下に、(a)成分の合成例を示すが、別途明記のない限り、合成時は、当業者であれば当然行うべき、反応系内の空気の窒素による置換並びに気密度の維持など、色相の良好な反応物を得るための注意を払い合成を行った。実施例で用いる(a−1)成分〜(a−3)成分は、製造直後の色相がガードナー(JIS K 0071−2準拠)で1以下のものである。
【0071】
合成例1:第4級アンモニウム塩混合物(a−1)の合成
表1記載の原料脂肪酸Aを200g(0.71モル、平均分子量282)と、トリエタノールアミン55.6g(0.37モル)を混合し、180〜185℃(760mmHg下)で3時間反応させた後、200mmHgまで減圧し、更に3時間熟成した。その後、窒素で常圧に戻し、100℃に冷却して脱水縮合物242gを得た。得られた脱水縮合物の酸価(JIS K0070準拠)は1.2mgKOH/g、全アミン価(JIS K2501準拠)は88mgKOH/gであった。次にエタノール44gを加え、70〜75℃に調温し、前記脱水縮合物のアミン価を基に、脱水縮合物のアミン当量に対して0.98当量に相当するジメチル硫酸を2.5時間かけて滴下した。滴下終了後、50〜55℃で更に3時間熟成し、目的の(a)成分を含有する化合物を得た。得られた化合物の酸価(JIS K0070準拠)を測定し、脂肪酸含有量を算出した。得られた第4級アンモニウム塩混合物(a−1)中の(a)成分の含有量は85質量%、未反応脂肪酸の含有量は2質量%、エタノールの含有量は13質量%であった。
【0072】
合成例2:第4級アンモニウム塩混合物(a−2)の合成
原料脂肪酸Aに代えて、表1記載の原料脂肪酸Bを用いた以外は、合成例1と同様の方法で合成を行った。得られた第4級アンモニウム塩混合物(a−2)中の(a)成分の含有量は84質量%、未反応脂肪酸の含有量は2質量%、エタノールの含有量は14質量%であった。
【0073】
合成例3:第3級アミン化合物(a−3)の合成
表1記載の原料脂肪酸Cを193g(0.71モル、平均分子量273)と、N−(3−アミノプロピル)−N−(2−ヒドロキエチル)−N−メチルアミン46.3g(0.35モル)を混合し、180〜185℃(760mmHg下)で5時間反応させた後、200mmHgまで減圧し、更に1時間熟成した。その後、窒素で常圧に戻し、100℃に冷却して脱水縮合物234gを得た。得られた脱水縮合物(第3級アミン化合物(a−3))の酸価(JIS K0070準拠)は8mgKOH/g、全アミン価(JIS K2501準拠)は86mgKOH/gであり、また、(a)成分の含有量は96質量%、未反応脂肪酸の含有量は4質量%であった。
【0074】
【表1】

【0075】
実施例1〜9及び比較例1〜7
表2に示す成分を用い、以下に示す方法で、表2に示す組成の衣料用柔軟剤組成物(1)を調製した。得られた衣料用柔軟剤組成物(1)について、以下に示す評価方法(1)に沿って、変色の程度を評価した。結果を表2に示す。
【0076】
<衣料用柔軟剤組成物(1)の調製>
1000mLビーカーに、衣料用柔軟剤組成物(1)の出来あがり質量が700gになるのに必要な量の95%相当量のイオン交換水((c−1)成分)、(c−3)成分〜(c−5)成分、(e)成分、及び(j−1)成分を入れ、ウォーターバスで60℃に昇温した。一つの羽根の長さが4cmの攪拌羽根が3枚ついたタービン型の攪拌羽根で攪拌しながら(500r/m)、(a)成分、(c−2)成分、(d−1)成分、及び(g−1)成分を予備混合し70℃で溶解させた混合物を投入した。10分間攪拌後に、所要量の(f)成分を投入し、そのまま5分攪拌後、(b)成分又は(b’)成分を添加し、5分攪拌した後、35%塩酸水溶液と48%水酸化ナトリウム水溶液を用いて所望のpHに調整し、出来あがり質量とするのに必要な量のイオン交換水(60℃)を添加した。その後10分間攪拌し、5℃の水を入れたウォーターバスにビーカーを移し、攪拌しながら20℃に冷却した。なお、表2に示すpHは、冷却後(20℃)のpHを記載した。
【0077】
<変色の評価方法(1)>
衣料用柔軟剤組成物(1)600gを、以下に示す方法で得られたポリエチレンテレフタレート樹脂製のPETボトルに入れ密栓し、日当たりの良い場所に設置した(ボトル表面を南向きとし、ボトル側面を水平面から45度傾けて設置)。その後、20℃の恒温室で7日間保管した。組成物の変色は、以下に示すクレット値測定方法に従って、保存前の組成物のクレット値(a)と、保存後(光暴露量1.5kJ/m2(スガ試験機(積算照度計測装置PH−1−11−UT)で測定)後に20℃で7日間保管後)の組成物のクレット値(b)を測定し、その差(b−a)により評価した。(b−a)の差が大きいほど、変色の程度が大きいことを示す。
【0078】
PETボトル
ポリエチレンテレフタレート樹脂100質量部を溶融状態にして、2−(2H− ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾール0.1質量部を添加した。これらの混練には2軸押出機を利用した。2軸押出機により押出された溶融樹脂を乾燥することで、ポリエステル樹脂組成物を作成した。このポリエステル樹脂組成物
を用いて、延伸ブロー成形により、平均肉厚0.9mm、内容量1000mLの延伸ブローボトルを成形した。
【0079】
クレット測定方法
衣料用柔軟剤組成物(1)6gにテトラヒドロフラン7.5gを加え均一溶液にした。この溶液を石英ガラスセル(光路長10mm、東ソー・クォーツ株式会社 石英ガラスセル T−1−UV−1)に入れ、波長420nmでの吸光度を分光光度計(SHIMADZU UV−2500PC)を用いて測定し、その測定数値に1000をかけた値をクレット値とした。なお、対照セルにはイオン交換水を入れた。
【0080】
【表2】

【0081】
表2において、pHが酸性である実施例8と比較例2を比べると、変色の改善度合いは、105(比較例2の組成物を保存した時のクレットの差)と7(実施例8の組成物を保存した時のクレットの差)の差として表され、クレットとして98改善されている。一方、pHが弱アルカリ性である実施例9と比較例6を比べると、変色の改善度合いは、61(比較例6の組成物を保存した時のクレットの差)と5(実施例9の組成物を保存した時のクレットの差)の差として表され、クレットとして56改善されている。これより、pHが酸性側の衣料用柔軟剤組成物において、保存による変色抑制効果の高いことが把握される。
【0082】
実施例10〜14及び比較例8〜12
表3に示す成分を用い、以下に示す方法で、表3に示す組成の衣料用柔軟剤組成物(2)を調製した。得られた衣料用柔軟剤組成物(2)について、以下に示す評価方法(2)に沿って、変色の程度を評価した。結果を表3に示す。
【0083】
<衣料用柔軟剤組成物(2)の調製>
No.11のガラス製規格瓶に、(a)成分、(b)成分及び(c)成分を入れ、密栓し70℃のウォーターバスに入れ、振りまぜながら均一に混合し、表3記載の組成物を調製した。なお、表3中の(d)成分は(a)成分からキャリーオーバーされた(d)成分である。
【0084】
<変色の評価方法(2)>
衣料用柔軟剤組成物(2)50gを、大気雰囲気下(760mmHg)でガラス製規格瓶No.11に入れ密栓した。70℃の恒温器に入れ7日間保存した。組成物の変色は、評価方法(1)と同様に、保存前の組成物のクレット値(a)と、保存後(70℃、7日後)の組成物のクレット値(b)を測定し、差(b−a)により評価した。(b−a)の差が大きいほど、変色の程度が大きいことを示す。なお、測定時のサンプル温度は70℃であった。
【0085】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)成分、(b)成分及び(c)成分を含有し、(a)成分の含有量が10〜95質量%であり、(b)成分/(a)成分の質量比が(b)成分/(a)成分=1/85〜1/5である、衣料用柔軟剤組成物。
(a)成分:炭素数12〜29の炭化水素基を分子内に少なくとも1つ以上有する第3級アミン、その酸塩、及びその4級化物から選ばれる1種以上の衣料用柔軟基剤
(b)成分:イソオイゲノール、カルバクロール、チモール、オルシノールモノメチルエーテル及びプロペニルグアエトールから選ばれる1種以上の芳香族アルコール
(c)成分:水及び/又は有機溶剤
【請求項2】
前記(a)成分の炭化水素基に占める不飽和炭化水素基の含有割合が、5〜100質量%である、請求項1記載の衣料用柔軟剤組成物。
【請求項3】
下記(a)成分及び(c)成分を含有する衣料用柔軟剤組成物に、(b)成分を(b)成分/(a)成分の質量比で(b)成分/(a)成分=1/85〜1/5となるように共存させることによる、(a)成分及び(c)成分を含有する衣料用柔軟剤組成物の変色抑制方法。
(a)成分:炭素数12〜29の炭化水素基を分子内に少なくとも1つ以上有する第3級アミン、その酸塩、及びその4級化物から選ばれる1種以上の衣料用柔軟基剤
(b)成分:イソオイゲノール、カルバクロール、チモール、オルシノールモノメチルエーテル及びプロペニルグアエトールから選ばれる1種以上の芳香族アルコール
(c)成分:水及び/又は有機溶剤

【公開番号】特開2011−132639(P2011−132639A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−294931(P2009−294931)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】