説明

衣料用賦香剤

【課題】 加熱乾燥後も軽快な香調を出す高揮散性香料の残香性が高く、洗濯及び乾燥工程のいずれの工程においても簡便に使用でき、更に、乾燥機を用いた衣料リフレッシュに用いる事ができる賦香剤及び賦香方法の提供。
【解決手段】 香料(A)と融点が30〜90℃の油剤(B)を含有し、香料(A)の含有量が3〜30重量%、香料(A)と油剤(B)の重量比香料(A)/油剤(B)が3/97〜30/70である薬剤を、可撓性基体に担持させてなり、加熱工程を含む衣料の処理に用いられる賦香剤、この賦香剤を、回転式衣類加熱乾燥機又は加熱乾燥機能付き洗濯機の使用中に、衣料1kgに対し、薬剤量が0.2〜2.0gになる割合で用いる衣料の賦香方法、並びに回転式衣類加熱乾燥機又は加熱乾燥機能付き洗濯機を用い、この賦香剤で着用又は使用後の衣料を処理する衣料のリフレッシュ方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣料用賦香剤、及びそれを用いる衣料の賦香方法並びに衣料のリフレッシュ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、洗濯機に乾燥機能を搭載した洗濯乾燥機が急速に普及している。又、洗濯後には、汚れがとれる、ふんわり感が出る等のみならず、衣料に好ましい香りを付与したいという要求も増加している。一般的に香りの付与は、洗剤や柔軟剤の香料成分によって付与されるが、乾燥機の加熱乾燥工程で香料成分が揮散し印象の弱いものとなってしまう。又、低揮散性香料を用いると残香性は高まるものの重い香調となり好ましい香りとはいえないのが現状である。又、スーツやコートのような1回着ただけでは洗濯しない、或いは洗濯したくない衣料についても洗濯直後の好ましい香りの持続、リフレッシュが望まれている。
【0003】
香料の揮散を抑制する技術として、特許文献1には香料/シクロデキストリン複合体が開示され、特許文献2には特定の気孔容積、気孔径を有する粒子に香料を吸収させてなる疎水性多孔質無機担体粒子が開示され、特許文献3にはジアシルグリセロールを含有する香料等の揮発性成分の保留剤が開示され、特許文献4には融点が100℃より低い蝋物質及び香料が水溶性ポリマーに包含されたマイクロカプセルが開示され、特許文献5には香料、固形吸収剤及び保留剤を含有するフレグランスマトリックスが開示されている。
【0004】
しかしながら、香料の保留性は十分ではなく、特に回転式衣類加熱乾燥機や加熱乾燥機能付き洗濯機等を用いた加熱乾燥後においても軽快な香調を出す高揮散性香料の残香性が高い賦香剤が望まれている。
【特許文献1】特許第2911538号公報
【特許文献2】特開平5−209189号公報
【特許文献3】特開2002−87905号公報
【特許文献4】特開平5−222672号公報
【特許文献5】特開2001−32176号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、加熱乾燥後も軽快な香調を出す高揮散性香料の残香性が高く、洗濯及び乾燥工程のいずれの工程においても簡便に使用でき、更に、乾燥機を用いた衣料リフレッシュに用いる事ができる賦香剤及び賦香方法を提供する事にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、香料(A)と融点が30〜90℃の油剤(B)を含有し、香料(A)の含有量が3〜30重量%、香料(A)と油剤(B)の重量比香料(A)/油剤(B)が3/97〜30/70である薬剤を、可撓性基体に担持させてなり、加熱工程を含む衣料の処理に用いられる賦香剤、この賦香剤を、回転式衣類加熱乾燥機又は加熱乾燥機能付き洗濯機の使用中に、衣料1kgに対し、薬剤量が0.2〜2.0gになる割合で用いる衣料の賦香方法、並びに回転式衣類加熱乾燥機又は加熱乾燥機能付き洗濯機を用い、この賦香剤で着用又は使用後の衣料を処理して好ましい香りを付与する事により着用前の様なさわやかな状態にする衣料のリフレッシュ方法を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の賦香剤を用いると、加熱乾燥後も軽快な香調を出す高揮散性香料の残香性が高く、洗濯及び乾燥工程のいずれの工程においても簡便に使用でき、更に、着用後の衣料を簡単にリフレッシュすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
[香料(A)]
本発明に用いられる香料(A)としては、沸点が250℃以下の高揮散性香料成分、沸点が250℃より高く300℃以下の中揮散性香料成分を含むものが挙げられ、沸点が300℃より高い低揮散性香料成分を含んでいても良い。
【0009】
沸点が250℃以下の高揮散性香料成分としては、表1に示す香料成分等が挙げられる。沸点が250℃より高く300℃以下の中揮散性香料成分としては、表2に示す香料成分等が挙げられる。沸点が300℃より高い低揮散性香料成分としては、表3に示す香料成分等が挙げられる。
【0010】
【表1】

【0011】
【表2】

【0012】
【表3】

【0013】
香料(A)は、衣料に新鮮で爽やかな香調を与える観点から、沸点が250℃以下の高揮散性香料成分を20重量%以上含有することが好ましく、30重量%以上含有することが更に好ましい。
【0014】
[油剤(B)]
本発明に用いられる油剤(B)は、融点が30〜90℃のものであり、20℃における水100gに対する溶解度が0.05g未満のものが好ましい。水に対する溶解度が低いことで洗濯時の香料保持性が増し、香料の損失を少なくすることができ好ましい。
【0015】
油剤(B)としては、例えば以下の(1)〜(9)に示すものが挙げられる。
(1)炭素数6〜28の飽和もしくは不飽和脂肪酸
(2)炭素数6〜28の飽和もしくは不飽和脂肪酸と炭素数6〜28の1価アルコールとのエステル
(3)炭素数6〜28の飽和もしくは不飽和脂肪酸と炭素数2〜8の多価アルコールとのエステル
(4)アルキル基の炭素数が10〜28で、オキシアルキレン基の平均付加モル数が20〜200であるポリオキシアルキレンアルキルエーテル
(5)炭素数12〜28の1価アルコール
(6)炭素数6〜28の飽和もしくは不飽和の脂肪酸アミド
例えば、ラウリン酸モノエタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、ミリスチン酸モノエタノールアミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミドなど
(7)植物油、動物油から選ばれる油脂を水素化触媒を用いて水素化又は部分水素化した硬化油脂、又は部分硬化油脂
(8)炭素数20〜35のパラフィン
油剤(B)は1種又は2種以上を混合して用いることができ、上記(1)、(2)、(3)及び(8)から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましく、上記(1)、(2)及び(3)から選ばれる少なくとも1種を用いることがより好ましい。
【0016】
これら油剤(B)としては、耐洗濯性、及び加熱工程における香料の揮散抑制の観点から、ラウリン酸(mp43℃)、ミリスチン酸(mp53℃)、パルミチン酸(mp62℃)、ステアリン酸(mp70℃)等の炭素数12〜22の脂肪酸、ミリスチン酸ミリスチル(mp42℃)、ミリスチン酸パルミチル、ミリスチル酸ステアリル、パルミチン酸ミリスチル、パルミチン酸パルミチル、パルミチン酸ステアリル、ステアリン酸ミリスチル、ステアリン酸パルミチル、ステアリン酸ステアリル等の炭素数12〜22の脂肪酸と炭素数12〜28の1価アルコールとのエステル、ソルビタントリステアレート(mp54℃)、ソルビタンモノステアレート(mp50℃)、グリセロールモノパルミテート、グリセロールモノステアレート(mp60℃)、エチレングリコールジステアレート(mp63℃)、エチレングリコールジパルミテート等の炭素数12〜22の脂肪酸と炭素数2〜8の多価アルコールとのエステル、ペンタコサン(mp53℃)等の炭素数20〜35のパラフィンがより好ましい。
【0017】
また、シミ残りを防止する観点からは、上記(1)、(2)及び(3)から選ばれる少なくとも1種の油剤と、上記(5)に示す炭素数12〜28の1価アルコールとの混合物を用いることがより好ましい。
【0018】
[薬剤]
本発明の薬剤は、香料(A)と融点が30〜90℃の油剤(B)を含有する。本発明の薬剤中の香料(A)の含有量は、十分な賦香効果を得る観点から、3重量%以上であり、5重量%以上が好ましい。また油剤(B)による香料の保持効果を高めて加熱時の香料の損失を抑制する観点から、30重量%以下であり、20重量%以下が好ましい。
【0019】
本発明の薬剤中の香料(A)と油剤(B)の割合は、十分な香料の保持力及び賦香効果を得る観点から、重量比香料(A)/油剤(B)が3/97〜30/70であり、5/95〜20/80が好ましい。また薬剤中の油剤(B)の含有量は、十分な香料の保持力を得る観点から、50重量%以上が好ましく、60〜95重量%がより好ましい。
【0020】
本発明の薬剤は、香料(A)と油剤(B)を上記の割合で含有することにより加熱下での香料の揮散を抑制することができる。また香料(A)と油剤(B)は相溶することが望ましい。
【0021】
一般に高揮発性香料には、シトラス、グリーンといった新鮮で爽やかな香調を与えるものが含まれるが、加熱工程で揮散し易い。そのため柔軟仕上げ剤等に配合される調合香料は、回転式衣類加熱乾燥機や加熱乾燥機能付き洗濯機などで乾燥まで行うと揮発性の高い香料成分は揮散・消失してしまい、衣類には低揮発性香料成分が主体となったバランスの崩れた香調が残るだけとなる。本発明では、特に香料(A)として沸点が250℃以下の高揮散性香料成分を含有する香料を用いた場合、香料(A)を本発明の薬剤中に3〜30重量%配合することで、回転式衣類加熱乾燥機や加熱乾燥機能付き洗濯機などで乾燥まで行っても、衣料の芳香として好ましい新鮮で爽やかな香調を与えることができる。
【0022】
本発明の薬剤は、シミ残りを防止する観点からシリコーンオイル(C)を含有することが好ましい。
【0023】
シリコーンオイル(C)としては、例えば以下の(1)〜(10)に示すものが挙げられる。
(1)ジメチルシリコーンオイル
(2)メチルフェニルシリコーンオイル
(3)アルキル変性シリコーンオイル
(4)高級脂肪酸変性シリコーンオイル
(5)ポリエーテル変性シリコーンオイル
(6)アミノ変性シリコーンオイル
(7)カルボキシル変性シリコーンオイル
(8)アルキルポリエーテル変性シリコーンオイル
(9)アルコール変性シリコーンオイル
(10)フルオロアルキル変性シリコーンオイル
これらシリコーンオイルの中では、特にアルキル変性シリコーンオイル、及びアミノ変性シリコーンオイルが望ましい。
【0024】
アルキル変性シリコーンオイルは、ジメチルシリコーンオイルのメチル基の一部を長鎖アルキル基に置き換えた化合物であり、長鎖アルキル基の炭素数は6〜22が望ましい。また、25℃における動粘度は50〜30000mm2/sが好ましく、100〜20000mm2/sがより好ましい。
【0025】
アミノ変性シリコーンオイルとしては、特開2005−213666号公報の段落番号0017〜0021に記載のものが挙げられる。アミノ変性シリコーンオイルの25℃における動粘度は100〜20000mm2/sが好ましく、200〜10000mm2/sがより好ましい。またアミノ当量(窒素原子1つ当りの分子量、アミノ当量=分子量/N原子数で求められる。分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィーでポリスチレンを標準として求めた値であり、窒素原子数は元素分析法により求めることができる)は、400〜8000が好ましく、600〜5000がより好ましい。
【0026】
可撓性基体から衣料に薬剤を直接転写させる本発明の賦香剤においては、薬剤が局所的に多く転写されると、その箇所はシミが目立ち商品の品質を著しく低下させることが懸念される。しかし、シリコーンオイルを配合することで、こうしたシミを目立たなくする効果が生じる(この効果は特に処理した衣料を次に洗濯したとき顕著である。通常、シミは薬剤付着箇所と非付着箇所の屈折率差に起因しており、洗濯により付着部分の表面が粗くなると乱反射が増大して屈折率差がより大きくなる。シリコーンオイルが表面をコートすることで洗濯による表面の荒れを抑えているものと推察される)。
【0027】
薬剤中のシリコーンオイル(C)の含有量は、シミを目立たなくし、また耐洗濯性、及び加熱工程における香料の揮散を抑制する観点から、油剤(B)との重量比シリコーンオイル(C)/油剤(B)が、5/95〜30/70となる割合が好ましく、7/93〜20/80となる割合がより好ましい。
【0028】
[賦香剤、並びに衣料の賦香方法及びリフレッシュ方法]
本発明の賦香剤は、上記のような本発明の薬剤を、可撓性基体に担持させてなるものである。
【0029】
本発明に用いられる可撓性基体としては、薬剤を担持できる可撓性のものであれば、材質や形状は特に限定されず、紙、織物(布)、不織布等のシート状の基体や、スポンジや発砲スチロール等で作られた球状の基体などが挙げられる。耐洗濯性や、衣料への薬剤の転写効率や転写の均一性を十分満足させる可撓性基体としては、不織布が最も好適である。
【0030】
不織布としては、湿式不織布、乾式ケミカルボンド、乾式ニードルパンチ、乾式スパンレース、乾式サーマルボンド、乾式ステッチボンド、スパンボンド、メルトブロー、エアレイドなどを挙げることができるが、特にスパンボンド、メルトブロー、及びエアレイドが上述の観点から好適である。また、不織布の坪量は、薬剤の担持力を強め、良好な転写性を得、シミ残りを防ぎ、更に耐洗濯性を高める観点から、15〜70g/m2が好ましく、20〜60g/m2がより好ましく、30〜60g/m2が特に好ましい。不織布の厚さは、耐洗濯性、及び衣料への薬剤の転写効率の観点から、好ましくは50〜700μm、より好ましくは100〜500μmである。不織布は、各種不織布を単独で用いても複数枚重ね合わせて接着したものを用いても構わない
不織布の材質としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ナイロン、レーヨン、アクリル、ビニロン、ポリウレタン、セルロース、レーヨン等が挙げられるが、本発明においては、疎水性繊維、特にポリエステル、ポリプロピレン及びポリエチレンから選ばれる1種以上の疎水性繊維を少なくとも50重量%含有することが、耐洗濯性を高める上で好ましい。
【0031】
可撓性基体に担持する薬剤量は、十分な賦香効果を得、またシミ残りを防止する観点から、可撓性基体1g当たり0.1〜1.2gが好ましく、0.2〜0.9gがより好ましい。
【0032】
本発明の薬剤を可撓性基体に担持させる方法としては、特に制限されるものではないが、リバースロールコーター法、グラビアロールコーター法、インバースナイフコーター法、キスロールコーター法、スプレーコート法、エアナイフコーター法、ディップロールコーター法、ダイレクトロールコーター法、ハケ塗り法等のコーティング法等が挙げられる。
【0033】
本発明の賦香剤は、加熱工程を含む衣料の処理に用いられる。加熱工程を含む衣料の処理は、凡そ70℃以上に加温でき、薬剤を溶融することができる処理であれば特に限定されず、アイロンや温風ヒーター等を用いても構わないが、回転式衣類加熱乾燥機や加熱乾燥機能付き洗濯機を用いる処理が簡便であり望ましい。加熱乾燥機能付き洗濯機を用いる場合、本発明の薬剤を担持した可撓性基体を洗濯の始めに洗濯する衣料と一緒に洗濯機に投じて、洗濯から乾燥まで連続して行っても良いし、洗濯が終了した時点で、本発明の薬剤を担持した可撓性基体を投じて、その後乾燥させてもよい。回転式衣類加熱乾燥機を用いる場合は、洗濯が終了した衣料と、本発明の薬剤を担持した可撓性基体を一緒に乾燥させれば良い。また、1回着ただけの衣料やあまり洗いたくない衣料といった着用又は使用後の衣料をリフレッシュする目的から、こうした衣料と、本発明の薬剤を担持した可撓性基体を回転式衣類加熱乾燥機や加熱乾燥機能付き洗濯機に一緒に入れ、加熱処理する方法も挙げられる。
【0034】
回転式衣類加熱乾燥機や加熱乾燥機能付き洗濯機を用いる処理では、可撓性基体の大きさは、転写の均一性、及び回転式衣類加熱乾燥機内の排気口を閉塞する等の不都合を生じさせないために、縦10〜30cm、横10〜50cm程度のものが好適であり、これらを1枚、もしくは複数枚用いることができる。
【0035】
本発明の衣料の賦香方法及びリフレッシュ方法において、本発明の賦香剤は、十分な賦香効果を付与し、またシミ残りを防止する観点から、衣料1kgに対し、本発明の薬剤量が0.2〜2.0g、特に0.3〜1.5gになるように処理することが好ましい。
【実施例】
【0036】
香料の調製例
表4に示す組成の香料1(高揮散性香料含有量60重量%)、香料2(高揮散性香料含有量30重量%)及び香料3(高揮散性香料含有量10重量%)を調製した。
【0037】
【表4】

【0038】
薬剤の調製例
表5に示す各種油剤(B)又は比較油剤を予め90℃に加温して溶融し、そこに香料(A)、もしくは香料(A)とシリコーンオイル(C)を加え均一になるよう素早く混合して薬剤1〜22を調製した。
【0039】
【表5】

【0040】
注)
*1:アルキル変性シリコーンオイル KF−413 信越化学工業(株)製、粘度100mm2/s(25℃)
*2:アミノ変性シリコーンオイル KF−864 信越化学工業(株)製、モノアミンタイプ、粘度1700mm2/s(25℃)、アミノ当量3800。
【0041】
実施例1〜18及び比較例1〜4
可撓性基体として、ポリエステルスパンボンド不織布(バルコンポ HP6060G、坪量60g/m2、厚さ200μm、東洋紡(株)製)を用い、薬剤1〜22を不織布1g当たり0.25gになるよう担持させ(溶融した薬剤をハケで不織布に塗布した)、賦香剤を得た。これを13.5cm×22cmの長方形に切り出して試験片とした。
【0042】
加熱乾燥機能付き洗濯機としてドラム洗濯機(NA−V82 松下電器産業(株)製)を用い、以下に示す総量2.6kgの衣料を標準洗乾コースで洗濯〜乾燥を行う際、洗濯の始めに上記の試験片を各3枚ずつ投じて、洗濯・乾燥を行い、下記方法で耐洗濯性、残香の強さ・残香の好み、シミ残りを評価した。結果を表6に示す。
【0043】
<衣料構成(総量2.6kg)>
・赤色木綿Tシャツ(GT HAWKINS) 1枚
・青色木綿Tシャツ(LE WINNER) 1枚
・黄色木綿Tシャツ(・・'・・・・・・) 1枚
・薄青化繊ブラウス(SELERY) 1枚
・青木綿ポロシャツ(Big Jemuson) 1枚
・白木綿肌着(グンゼ) 10枚
・木綿タオル 3枚
<耐洗濯性の評価法>
耐洗濯性を評価する場合は、洗濯が終わった時点で試験片を取り出せるように、標準洗濯コースを選択して別途評価した。予め試験片基体重量(X)と薬剤重量(Y)を測定しておき、洗濯終了後、試験片を取り出し20℃、65%RHの環境下で2時間乾燥した後の重量(Z)を測定し、下記式で洗濯後の薬剤残存率を求めた。結果は試験片3枚の平均値で示した。
【0044】
洗濯後の薬剤残存率(%)=(Z−X)×100/Y
薬剤残存率は50%以上であれば賦香効率は良好といえる。
【0045】
<残香の強さ・残香の好みの評価法>
乾燥終了後、木綿タオルを用いて評価を行った。専用パネラー5名により、以下の評価基準に沿って判定した。結果は5名の平均値で示した。尚、この残香の強さ評価及び残香の好み評価において、3点以上は良好であり、残香の強さ及び残香の好みを改善する効果がある。又、いずれの評価においても0.2の差は、優位差として充分に認識できる。
【0046】
・残香の強さ評価基準
5点 強く香りを感じる
4点 やや強く香りを感じる
3点 香りを感じる
2点 わずかに香りを感じる
1点 香りを感じない
・残香の好み評価基準
5点 好ましい香りに感じる
4点 やや好ましい香りに感じる
3点 どちらとも言えない
2点 あまり好ましい香りに感じない
1点 好ましい香りに感じない
<シミ残り評価法>
乾燥終了後、専用パネラー5名により、上述の色物衣料5枚についてシミの有無を以下の評価基準に沿って判定した(処理後)。評価後、同条件(試験片は投じていない)で再度洗濯〜乾燥を行い、改めてシミの有無を判定した(洗濯後)。結果は5名の平均値で示した。尚、本評価で4.0以上はシミ残りが少なく良好である。又、この評価の0.5の差は、優位差として充分に認識できる。
【0047】
・シミ残り評価基準
5点 全衣料とも全くシミが見当たらない
4点 かろうじてシミと判断できる箇所が全衣料を通じて1〜2箇所
3点 シミと判断できる箇所が全衣料を通じて複数箇所
2点 目立つシミが全衣料を通じて複数箇所
1点 殆どの衣料に複数の目立つシミ
【0048】
【表6】

【0049】
実施例19〜36及び比較例5〜8
実施例1〜18及び比較例1〜4と同様の方法で試験片を調製した。
【0050】
加熱乾燥機能付き洗濯機としてドラム洗濯機(NA−V82 松下電器産業(株)製)を用い、実施例1〜18及び比較例1〜4と同様の衣料構成で標準洗濯コースで洗濯した。洗濯終了後、試験片を3枚入れ標準乾燥コースで乾燥し、下記方法で転写性を評価し、実施例1〜18及び比較例1〜4と同様の方法で残香の強さ・残香の好み、シミ残りを評価した。結果を表7に示す。
【0051】
<転写性の評価法>
予め試験片基体重量(X)と薬剤重量(Y)を測定しておき、乾燥終了後、試験片を取り出し、20℃、65%RHの環境下で2時間放置した後の重量(W)を測定し、下記式により転写率を求めた。結果は試験片3枚の平均値で示した。
【0052】
転写率(%)=100−(W−X)×100/Y
転写率は50%以上であれば賦香効率は良好といえる。
【0053】
【表7】

【0054】
実施例37〜44及び比較例9〜12
乾燥工程を、加熱乾燥機能付き洗濯機の代わりに回転式衣類加熱乾燥機(タンブル乾燥機 NH−D502 松下電器産業(株)製)を用いて行った以外は、実施例19,20,23,24,29〜31,33及び比較例5〜8と同様に処理し、同様に転写性、残香の強さ・残香の好み、シミ残りを評価した。結果を表8に示す。
【0055】
【表8】

【0056】
実施例45〜62及び比較例13〜16
実施例1〜18及び比較例1〜4と同様の方法で試験片を調製した。
【0057】
1日着用した下記に示す衣料(タオルは手拭用として数回使用 総計1.0kg)を、ドラム洗濯機(NA−V82 松下電器産業(株)製)を用い、試験片を各1枚投じて乾燥タイマー1時間で処理した。処理後、実施例19〜36及び比較例5〜8と同様に転写性、残香の強さ・残香の好み、シミ残りを評価した。結果を表9に示す。
【0058】
<衣料構成(総量1.0kg)>
・赤色木綿Tシャツ(GT HAWKINS) 1枚
・青色木綿Tシャツ(LE WINNER) 1枚
・黄色木綿Tシャツ(・・'・・・・・・) 1枚
・薄青化繊ブラウス(SELERY) 1枚
・青木綿ポロシャツ(Big Jemuson) 1枚
・木綿タオル 2枚
【0059】
【表9】

【0060】
実施例63〜65及び比較例17〜19
可撓性基体として、これまでの例と同様にポリエステルスパンボンド不織布(バルコンポ HP6060G)を用い、薬剤2及び薬剤19を不織布1g当たり表10に示す重量になるよう担持させ(溶融した薬剤をハケで不織布に塗布した)、賦香剤を得た。これを13.5cm×22cmの長方形に切り出し試験片とした。
加熱乾燥機付き洗濯機としてドラム洗濯機(NA−V82 松下電器産業(株)製)を用い、先の例と同様に総量2.6kgの衣料を標準洗乾コースで洗濯〜乾燥を行う際、洗濯の始めに上記の試験片を表10に示す枚数を投じて、洗濯・乾燥を行い、同様に耐洗濯性、残香の強さ・残香の好み、シミ残りを評価した。結果を表10に示す。
【0061】
【表10】

【0062】
実施例66〜71及び比較例20〜25
下記に示す不織布1〜6を用い、薬剤2及び薬剤19を不織布に、不織布1g当たり0.25gになるよう担持させ(溶融した薬剤をハケで不織布に塗布した)、賦香剤を得た。これを13.5cm×22cmの長方形に切り出し試験片とした。
【0063】
これらの試験片を用い、実施例19と同様に加熱乾燥機能付き洗濯機を用いて洗濯し、乾燥工程で試験片を投入して乾燥を行い、同様に転写性、残香の強さ・残香の好み、シミ残りを評価した。これらの結果を表11に示す。
【0064】
<不織布の種類>
・不織布1:ポリエステルスパンボンド不織布 エクーレ 3251A 坪量25g/m2、厚さ180μm 東洋紡(株)製
・不織布2:ポリエステルスパンボンド不織布 エクーレ 3501A 坪量50g/m2、厚さ270μm 東洋紡(株)製
・不織布3:ポリプロピレンスパンボンド不織布 シンテックス PS110 坪量50g/m2、厚さ390μm 三井化学(株)製
・不織布4:ポリプロピレンスパンボンド不織布 シンテックス PS120 坪量100g/m2、厚さ600μm 三井化学(株)製
・不織布5:ポリエステルスパンボンド不織布 エクーレ 3151A 坪量15g/m2、厚さ120μm 東洋紡(株)製
・不織布6:レーヨン不織布 クラフレックス ZR−610−50 坪量46g/m2、厚さ300μm クラレ(株)製
【0065】
【表11】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
香料(A)と融点が30〜90℃の油剤(B)を含有し、香料(A)の含有量が3〜30重量%、香料(A)と油剤(B)の重量比香料(A)/油剤(B)が3/97〜30/70である薬剤を、可撓性基体に担持させてなり、加熱工程を含む衣料の処理に用いられる賦香剤。
【請求項2】
薬剤の担持量が、可撓性基体1g当たり0.1〜1.2gである請求項1記載の賦香剤。
【請求項3】
香料(A)が、沸点250℃以下の高揮散性香料成分を20重量%以上含有する請求項1又は2記載の賦香剤。
【請求項4】
油剤(B)が、炭素数12〜22の脂肪酸、もしくは炭素数12〜22の脂肪酸と炭素数12〜28の1価アルコール又は炭素数2〜8の多価アルコールとのエステルから選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3いずれかに記載の賦香剤。
【請求項5】
薬剤が、更にシリコーンオイル(C)を含有する請求項1〜4いずれかに記載の賦香剤。
【請求項6】
可撓性基体が、15〜70g/m2の坪量を有し、且つ疎水性繊維を少なくとも50重量%含有する不織布である請求項1〜5いずれかに記載の賦香剤。
【請求項7】
回転式衣類加熱乾燥機又は加熱乾燥機能付き洗濯機の使用中に、請求項1〜6いずれかに記載の賦香剤を、衣料1kgに対し、薬剤量が0.2〜2.0gになる割合で用いる衣料の賦香方法。
【請求項8】
回転式衣類加熱乾燥機又は加熱乾燥機能付き洗濯機を用い、請求項1〜6いずれかに記載の賦香剤で着用又は使用後の衣料を処理する衣料のリフレッシュ方法。

【公開番号】特開2008−144317(P2008−144317A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−334244(P2006−334244)
【出願日】平成18年12月12日(2006.12.12)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】