衣料
【課題】筋肉の動きを着用者の目的とする運動に適合させることが可能な衣料を実現することである。
【解決手段】本発明の衣料は、(A)該衣料が前記人体に着用された際に、該人体の筋肉の起始部に対応する位置に位置して、緊締力を該起始部に付与する第一部分と、(B)該第一部分よりも伸縮度合いが大きく、前記衣料が前記人体に着用された際に、前記第一部分により緊締力が付与される前記筋肉の前記起始部と、該筋肉の停止部と、の間の筋肉部分に対応する位置に位置して、前記第一部分が前記起始部に付与する緊締力よりも小さい緊締力を前記筋肉部分に付与する第二部分と、を備える。
【解決手段】本発明の衣料は、(A)該衣料が前記人体に着用された際に、該人体の筋肉の起始部に対応する位置に位置して、緊締力を該起始部に付与する第一部分と、(B)該第一部分よりも伸縮度合いが大きく、前記衣料が前記人体に着用された際に、前記第一部分により緊締力が付与される前記筋肉の前記起始部と、該筋肉の停止部と、の間の筋肉部分に対応する位置に位置して、前記第一部分が前記起始部に付与する緊締力よりも小さい緊締力を前記筋肉部分に付与する第二部分と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体に着用される衣料に関する。
【背景技術】
【0002】
コンディショニングウェアなど、人体に着用された際に該人体の筋肉に緊締力を付与する衣料は既に知られている。このような衣料は、上記緊締力により筋肉をサポートし、例えば、筋肉の疲労の軽減やスポーツ障害の防止を目的として着用される(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−192903号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記衣料を着用した者(着用者)が運動する際、該着用者の筋肉は、前記緊締力を付与されながらも、該着用者の目的とする運動に適合するように伸縮できる方が望ましい。つまり、筋肉が前記緊締力により制動されながらも本来の弾力性を発揮することが可能な衣料の開発が求められている。
【0004】
ここで、筋肉の動き(伸び縮み)を着用者の目的とする運動に適合させるためには、該筋肉の起始部を固定させる必要があるが、起始部が固定されないままの状態では、筋肉がその伸展方向に伸び難くなるとともに、該筋肉の動きの支点が定まらなくなってしまう。この結果、筋肉の動きが着用者の目的とする運動に適合できなくなり、更に筋肉が疲労し易くなってスポーツ傷害が誘発され易くなってしまう。
【0005】
また、筋肉の動きを着用者の目的とする運動に適合させる上では、筋肉の起始部及び停止部の間の筋肉部分(すなわち、筋腹)が緊締力に抗して適切に膨張できることも必要であるが、筋腹が過度に緊締されると、該筋腹の収縮に伴う膨張が妨げられる結果、筋肉の動きが着用者の目的とする運動に適合できなくなる。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、筋肉の動きを着用者の目的とする運動に適合させることが可能な衣料を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、主たる発明は、人体に着用される衣料であって、該衣料が前記人体に着用された際に、該人体の筋肉の起始部に対応する位置に位置して、緊締力を該起始部に付与する第一部分と、該第一部分よりも伸縮度合いが大きく、前記衣料が前記人体に着用された際に、前記第一部分により緊締力が付与される前記筋肉の前記起始部と、該筋肉の停止部と、の間の筋肉部分に対応する位置に位置して、前記第一部分が前記起始部に付与する緊締力よりも小さい緊締力を前記筋肉部分に付与する第二部分と、を備えることを特徴とする衣料である。
【0008】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により少なくとも次のことが明らかにされる。
先ず、人体に着用される衣料であって、該衣料が前記人体に着用された際に、該人体の筋肉の起始部に対応する位置に位置して、緊締力を該起始部に付与する第一部分と、該第一部分よりも伸縮度合いが大きく、前記衣料が前記人体に着用された際に、前記第一部分により緊締力が付与される前記筋肉の前記起始部と、該筋肉の停止部と、の間の筋肉部分に対応する位置に位置して、前記第一部分が前記起始部に付与する緊締力よりも小さい緊締力を前記筋肉部分に付与する第二部分と、を備える衣料である。
【0010】
かかる構成の衣料が人体に着用されると、第一部分により比較的強い緊締力が筋肉の起始部に付与される。このため、衣料の着用者が運動をする際に筋肉の起始部が固定され、該筋肉の動きの支点が定まる結果、該筋肉は、正常な可動範囲において動く(伸縮する)ようになる。また、筋肉の生理学的性質により、起始部が固定された筋肉は、その伸展方向に伸び易くなる。さらに、第一部分により起始部に緊締力が付与される筋肉の起始部と、該筋肉の停止部と、の間の筋肉部分には、第二部分により比較的弱い緊締力が付与される。このため、当該筋肉部分は収縮時に膨張し易くなり、着用者の運動に要する筋力を効率良く生み出すことが可能になる。以上の効果により、筋肉は、その柔軟性が向上し、着用者の目的とする運動に適合して動くことが可能となり、以って前記筋肉の疲労の軽減、及び、スポーツ障害の予防を図ることが可能となる。
【0011】
また、上記の衣料において、前記第二部分よりも伸縮度合いが小さく、前記衣料が前記人体に着用された際に、前記停止部に対応する位置に位置して、前記第二部分が前記筋肉部分に付与する緊締力よりも大きい緊締力を前記停止部に付与する第三部分を備えることとしてもよい。かかる構成の衣料であれば、第一部分及び第二部分により緊締力が付与される筋肉、の張力をより有効に発揮させることが可能になる。つまり、起始部及び停止部が固定された筋肉は、その伸展方向により伸び易くなる。この結果、筋肉の動きを着用者の目的とする運動に適合させることがより容易になる。
【0012】
また、上記の衣料において、前記第二部分は、前記起始部から前記停止部へ向かう方向と交差する交差方向における一端から他端に亘る前記筋肉部分に、対応する位置に位置していることとしてもよい。かかる構成の衣料であれば、前記筋肉部分が収縮時に膨張し易くなり、着用者の運動に要する筋力をより効率良く生み出すことが可能になる。
【0013】
また、上記の衣料において、前記筋肉は、骨格筋であることとしてもよい。かかる場合、骨格筋が付着する骨の動きが着用者の目的とする運動に適合するように、該骨格筋が適切に伸縮する。
【0014】
また、上記の衣料において、該衣料は、パンツであり、前記骨格筋は、大殿筋、ハムストリング筋、大腿直筋、縫工筋、腹直筋、又は、脊柱起立筋であることとしてもよい。かかる場合、下肢を動かす筋肉群が適切に伸縮するようになり、下肢の動きが着用者の目的とする運動に適合するようになる。
【0015】
また、上記の衣料において、該衣料は、トップスであり、前記骨格筋は、大胸筋、広背筋、又は、棘下筋であることとしてもよい。かかる場合、上肢を動かす筋肉群が適切に伸縮するようになり、上肢の動きが着用者の目的とする運動に適合するようになる。
【0016】
===本実施形態の衣料の形状について===
本発明の衣料の一例として、図1及び図2に示す上半身用のコンディショニングウェア(以下、トップス10)、及び、図3乃至図5に示す下半身用のコンディショニングウェア(以下、パンツ20)について、それぞれ説明する。
【0017】
図1はトップス10を前側(腹側)から見た図であり、図2はトップス10を後側(背側)から見た図である。図3はパンツ20を前側(腹側)から見た図であり、図4はパンツ20を後側(背側)から見た図であり、図5はパンツ20を横から見た図である。なお、上記の各図には、人体に着用された状態のトップス10若しくはパンツ20が示されている。
【0018】
トップス10は、図1及び図2に示すように、胴部11と、該胴部11に縫合された左右一対の腕部12と、を有する、シャツ型のコンディショニングウェアである。パンツ20は、図3及び図4に示すように、腰部21と、該腰部に隣接する左右一対の脚部22と、を有する、履き込み型のコンディショニングウェアである。本実施形態のトップス10及びパンツ20は、いずれも、伸縮性を有する生地からなる衣料であり、人体に着用された際に該人体にフィットして該人体の所定の筋肉(所定の筋肉については後述する)に緊締力を付与する。ここで、緊締力とは、生地の張力によって生じ、筋肉を締め付けて該筋肉を制動するような力のことである。
【0019】
そして、本実施形態のトップス10及びパンツ20は、図1乃至図5に示すように、互いに伸縮度合いが異なる3種類の生地部分を有する。すなわち、本実施形態のトップス10及びパンツ20は、いずれも、互いに伸縮度合いが異なる3種類の部分(図1乃至図5中、白、グレー、黒色にて塗り分けられた部分)を有している。ここで、伸縮度合いとは、伸縮し易さのことである。伸縮度合いが小さい(伸縮し難い)とは、元の状態(外力が付与されていない状態)を維持し易い生地の性質(つまり、大きな外力を加えないと伸びず、伸びた状態で外力が解放された場合には、元の状態に戻り易い性質)を表し、伸縮度合いが大きい(伸縮し易い)とは、元の状態を維持し難い生地の性質(つまり、小さな外力で伸び、伸びた状態で外力が解放された場合に、元の状態に戻り難い性質)を表す。
【0020】
本実施形態では、トップス10及びパンツ20の各々の生地の伸縮度合いが3段階に設定されているため、該トップス10及びパンツ20の各々が人体に着用された際に筋肉に付与される緊締力が、3段階に設定されていることになる。なお、当然のことながら、当該緊締力は、生地の伸縮度合いが大きくなるほど弱くなる。このため、トップス10及びパンツ20の各々は、最も伸縮度合いが小さいために最も強い緊締力を筋肉に付与する生地部分(以下、強緊締部)と、最も伸縮度合いが大きいために最も弱い緊締力を筋肉に付与する生地部分(以下、弱緊締部)と、伸縮度合いが強緊締部より大きく、且つ、弱緊締部より小さいために、強緊締部より弱く、且つ、弱緊締部より強い緊締力を筋肉に付与する生地部分(以下、中緊締部)と、を有することになる。なお、図1乃至図5中、白く塗られた部分が強緊締部に、グレーで塗られた部分が中緊締部に、黒く塗られた部分が弱緊締部に、それぞれ相当する。
【0021】
以下、トップス10及びパンツ20の各々について、強緊締部、中緊締部、及び、弱緊締部の配置について説明する。なお、以下では、トップス10又はパンツ20が人体に着用された状態での上記配置について説明する。また、以降の説明において、人体の所定部位(例えば、所定の筋肉、骨など)に対応する位置とは、前記所定部位を覆う位置のことを意味する(つまり、人体の所定部位に対応する位置の奥に当該所定部位が存在する)。
【0022】
<<トップス10について>>
本実施形態のトップス10では、強緊締部、中緊締部、及び、弱緊締部が、それぞれ、人体の中心軸を中心として左右対称に連携された状態で配置されている。以下、トップス10における強緊締部、中緊締部、及び、弱緊締部の各々の配置について説明する。
【0023】
<強緊締部の配置>
トップス10の前面では、図1に示すように、強緊締部が首元から脇下に向けて襷掛け状に配置されている。つまり、強緊締部は、トップス10の前面において、襟ラインに沿って斜めに延び胸鎖関節に対応する位置辺りで合流している部分(図1中、記号a11にて示した部分)と、当該部分a11の合流位置から再び分岐して脇下に向かって斜め下方に延びた部分(図1中、記号a12にて示した部分)を有している。また、強緊締部は、胸鎖関節に対応する位置辺りから肩に向かって鎖骨に沿うように伸びた部分(図1中、記号a13にて示した部分)を有している。さらに、トップス10の前面では、強緊締部が、脇下から胴部11の裾に向けて襷掛け状に配置されている。具体的に説明すると、強緊締部は、トップス10の前面において、脇下の下方位置から斜め下方に延びて臍に対応する位置辺りにて合流した部分(図1中、記号a14にて示した部分)と、当該部分a14の合流位置から再び分岐して寛骨の上前腸骨棘に対応する位置に向かって斜め下方に延びた部分(図1中、記号a15にて示した部分)と、を有している。
【0024】
一方、図2に示すように、トップス10の後面では、強緊締部が、首元周りに配置されている。また、強緊締部は、トップス10の後面において、肩甲骨内側縁に対応する位置から脇下に向かって斜め下方に延びた部分(図2中、記号a16にて示した部分)と、当該部分a16の中途位置から胸椎の中心に対応する位置に向かって延び、当該位置から脇下の下方位置に向かって斜めに延びた部分(図2中、記号a17にて示した部分)と、を有している。なお、部分a17は、脇下の下方位置において部分a14と連結している。さらに、強緊締部は、トップス10の後面において、脇下の下方位置から骨盤中央(詳しくは、腰仙椎部の基部)に対応する位置に向かって斜め下方に延びた部分(図2中、記号a18にて示した部分)と、当該部分a18に隣接し胴部11の裾まで延びた部分(図2中、記号a19にて示した部分)と、を有している。なお、部分a19は、胴部11の裾部において部分a15と連結している。これにより、胴部11の裾部における強緊締部の配置位置が、骨盤(詳しくは、腰仙骨部)を取り囲むような位置になっている。
【0025】
<中緊締部の配置>
中緊締部は、図1及び図2に示すように、肩上方を覆って上腕を取り巻くように配置されている。つまり、中緊締部は、トップス10の前面及び後面の双方において、肩峰に対応する位置から上腕骨頭に対応する位置を通過して脇下周辺に向かって延びた部分(図1及び図2において、記号b11にて示す部分)を有している。
【0026】
<弱緊締部の配置>
トップス10の前面では、図1に示すように、弱緊締部が、胸郭部中央に対応する位置から臍に対応する位置よりもやや上方の位置まで幅広く配置されている。つまり、弱緊締部は、トップス10の前面において、強緊締部の部分a12及び部分a14に包囲され横隔膜に対応する位置周辺を覆う部分(図1中、記号c11にて示す部分)を有している。また、弱緊締部は、トップス10の前面において、胴部11の裾から略三角形状に広がった部分(図1中、記号c12にて示す部分)と、強緊締部の部分a11及び部分a12と中緊締部の部分b11との間において脇下から肩前方を覆う部分(図1中、記号c13にて示す部分)と、を有している。
【0027】
一方、トップス10の後面では、図2に示すように、弱緊締部が、胸椎の中心に対応する位置よりやや下側から腰上部まで幅広く配置されている。つまり、弱緊締部は、トップス10の後面において、強緊締部の部分a17及び部分a18に包囲され横隔膜に対応する位置周辺を背面側から覆う部分(図1中、記号c14にて示す部分)を、有している。また、弱緊締部は、トップス10の後面において、強緊締部の部分a17と中緊締部の部分b11との間において脇下から肩後方を覆う部分(図1中、記号c15にて示す部分)を有している。さらに、図1及び図2に示すように、弱緊締部は、腕部12の中央から該腕部12の裾よりもやや上側の位置にかけて上腕を取り囲む部分(図1及び図2中、記号c16にて示す部分)と、脇腹を覆う部分(図1及び図2中、記号c17にて示す部分)とを有している。
【0028】
<<パンツ20について>>
本実施形態のパンツ20では、図3及び図4に示すように、強緊締部、中緊締部、及び、弱緊締部が、それぞれ、人体の中心軸を中心として左右対称に連携された状態で配置されている。以下、パンツ20における強緊締部、中緊締部、及び、弱緊締部の各々の配置について説明する。
【0029】
<強緊締部の配置>
パンツ20の後面では、図4に示すように、強緊締部が、恥骨に対応する位置から仙骨に対応する位置まで引き上げられてから腸骨稜の外側上方に対応する位置に向かうように、略V字状に配置されている。つまり、強緊締部は、パンツ20の後面において、恥骨に対応する位置から逆三角形状に広がって仙腸関節に対応する位置周辺を覆う部分(図4中、記号a21にて示した部分)と、当該部分a21から左右に分岐して腸骨稜に対応する位置に向かって斜め上方に延びた部分(図4中、記号a22にて示した部分)と、を有している。また、強緊締部は、腰部21の幅方向端部において前記部分a22と連結し、大転子に対応する位置辺りまで幅広く延びた部分(図4及び図5中、記号a23にて示した部分)を有している。そして、強緊締部は、図5に示すように部分a23の下端部から分岐して、大腿の前側に向かって延びた部分(図5中、記号a24にて示した部分)と、大腿の後側に向かって延びた部分(図5中、記号a25にて示す部分)と、をそれぞれ形成している。
【0030】
さらに、強緊締部は、パンツ20の後面において、恥骨結合に対応する位置から坐骨結節に対応する位置を通過するように延びた部分(図4及び図5中、記号a26にて示す部分)と、恥骨結合に対応する位置から大腿内側を覆う部分(図4中、記号a27にて示す部分)とを有する。なお、部分a26及び部分a27は、いずれも部分a25と連結している。また、部分a27は、恥骨結合に対応する位置から三角形状に広がり、該部分a27と連結した部分a25は、脚部22の下端まで達している。
【0031】
一方、図3に示すように、パンツ20の前面では、強緊締部が、腸骨稜に対応する位置から大腿の鼠径部に対応する位置に向かって襷掛け状に配置されている。つまり、強緊締部は、パンツ20の前面において、腸骨稜に対応する位置において部分a22と連結し、その連結位置から斜め下方に延びて臍に対応する位置よりも幾分上方の位置にて合流した部分(図3中、記号a28にて示した部分)と、当該部分a28の合流位置から再び分岐して鼠径部に対応する位置に向かって延びた部分(図1中、記号a29にて示した部分)と、を有している。また、図3及び図5に示すように、大転子に対応する位置辺りから大腿の前側に向かって延びた部分(すなわち、部分a24)が、大腿の前側まで回り込み該鼠径部に沿って恥骨結合に対応する位置まで延びている。また、部分a24は、図3に示すように、大腿前面において大腿上部を覆っている。
【0032】
以上のように、本実施形態のパンツ20では、強緊締部が、骨盤を取り囲み該骨盤の前方で交差してから大腿上部に繋がれるように配置されている。
【0033】
<中緊締部の配置>
中緊締部は、図3に示すように、パンツ20の前面において腰部21の上端から逆三角形状に広がった部分(図3中、記号b21にて示した部分)と、骨盤前方で交差して大腿上部に繋がれた強緊締部(具体的には、部分a24、a28、a29)に包囲された部分(図3中、記号b22にて示した部分)と、を有している。また、中緊締部は、大転子に対応する位置よりも下方の位置からパンツ20の前面に回り込んで、大腿内側に向かって延びた部分(図3及び図5中、記号b23にて示した部分)を有している。当該部分b23は、図3に示すように、大腿前面において大腿下部を覆っている。
【0034】
また、中緊締部は、図4に示すように、パンツ20の後面において、大腿の後側で強緊締部(具体的には、部分a25、a26、a27)に包囲され略三角形状に広がって大腿の後側上部を覆う部分(図4中、記号b25にて示した部分)と、腰部21の上端から腰仙関節に対応する位置辺りまで逆三角形状に広がった部分(図4中、記号b26にて示した部分)と、を有している。
【0035】
<弱緊締部の配置>
弱緊締部は、図4及び図5に示すように、パンツ20の後面において大殿筋の筋腹に対応する位置に配置された部分(図4及び図5中、記号c21にて示した部分)と、パンツ20の側面において強緊締部の部分a25と中緊締部の部分b23とに包囲され大腿の側面下部を覆う部分(図4及び図5中、記号c22にて示した部分)と、を有している。
【0036】
==本実施形態の衣料が付与する緊締力と筋肉との関係について==
コンディショニングウェアは、人体に着用されることにより、該人体の筋肉に緊締力を付与して該筋肉をサポートする。このコンディショニングウェアにより緊締力が付与される筋肉は、主に、骨格筋である。骨格筋は、人体の支柱となる骨格に付着し、人間の運動において骨格を直接的に動かすことにより骨格間の関節の動きを実現している。そして、骨格筋の両端部に位置し、骨に付着している部位が該骨格筋の起始部及び停止部である。ここで、起始部とは、骨格筋の両端部のうち、人体の中心により近い側の端部であり、停止部とは、人体の中心からより離れた側の端部である。換言すると、関節が動く際、当該関節を構成する骨(より詳しくは、関節を構成する一対の骨のうちの一方の骨)の動きの支点となる側の端部が起始部であり、当該骨を動かすために動く側の端部が停止部である。なお、一部の骨格筋(例えば、後述の大腿直筋)については、骨格筋の両端部のうち、骨盤により近い側の端部が起始部であり、骨盤からより離れた側の端部が停止部である。
【0037】
上記骨格筋についてより詳しく説明すると、該骨格筋の動きには、短縮性筋収縮(コンセントリック収縮)、等尺性筋収縮(アイソメトリック収縮)、及び、伸張性筋収縮(エキセントリック収縮)の3様式がある。コンセントリック収縮は、骨格筋の起始部から停止部までの長さが縮み、該骨格筋が付着する骨同士の距離が短くなるような筋収縮である。アイソメトリック収縮は、骨格筋の起始部から停止部までの長さに変化がなく、該骨格筋が付着する骨同士の距離も変わらず、該骨格筋が一定の位置に位置した状態で収縮する筋収縮である。エキセントリック収縮は、骨格筋の起始部と停止部の長さが伸長し、該骨格筋が付着する骨同士の距離が長くなるように、筋肉が伸張しながら(引き伸ばされながら)収縮する筋収縮である。
【0038】
ところで、骨格筋が大きな負荷を受けた状態で上記の動き(筋収縮)を行い続けると、該骨格筋は硬化し(柔軟性が失われ)、筋力も低下してしまう。特に、エキセントリック収縮では、骨格筋の筋線維のアクチン及びミオシンが離れた状態で筋力を生み出すため、該筋線維に大きな負荷(ストレス)が掛かり易くなる。この結果、エキセントリック収縮を繰り返した骨格筋は疲労し易く、そして該骨格筋の柔軟性も低下し易くなる。骨格筋の柔軟性の低下が進行すると、着用者の運動能力の低下を招く虞がある。骨格筋の柔軟性が低下した状態でスポーツ等の運動を行うと、所謂スポーツ障害が起こり易くなる。具体的に説明すると、骨格筋の柔軟性が低下した状態での運動においては、筋線維を覆う筋膜の炎症や肉離れ等、骨格筋自体の損傷が起こり易くなる。また、骨格筋の柔軟性の低下により、該骨格筋の腱に掛かる牽引力(骨格筋を該骨格筋が付着している骨から引き離そうとする力)が強くなる結果、腱炎や剥離骨折が起きる可能性もある。更に、骨格筋の柔軟性が低下した状態での運動では、該骨格筋が付着した骨により構成される関節において骨位置がずれ易くなる結果、関節内での圧迫摩擦等による関節軟骨の損傷や関節包炎が起こり易くなる。
【0039】
以上のような骨格筋の動きの特性を踏まえ、該骨格筋の疲労の軽減やスポーツ障害の予防を目的としてコンディショニングウェアが着用される。その一方で、コンディショニングウェアの着用者が該コンディショニングウェアを着用したままの状態で運動する場合、該コンディショニングウェアの緊締力によってサポートされる筋肉は、当該緊締力を受けながらも前記着用者の目的とする運動に適合するように伸縮できることが求められる。
【0040】
しかし、従来のコンディショニングウェアは、関節を確実に固定する(関節の、ある方向への動きを制限する)等の目的のために骨格筋全域に強い緊締力を付与するものであった。このため、骨格筋の膨張や伸縮が過度に制限され、前記骨格筋が本来の筋力を発揮することができなくなる虞があった。また、骨格筋の伸縮が過度に制限される結果、腕や脚の可動範囲が狭くなり、着用者に動き難さを感じさせてしまっていた。
【0041】
一方、骨格筋に付与する緊締力が弱くしてしまうと、該骨格筋の起始部、及び、起始部が付着する関節が固定され難くなり振れ易くなってしまう。そして、着用者が運動する間に筋肉の起始部が振れてしまうと、該筋肉はその伸展方向に伸展し難くなり、更に該筋肉の動きの支点が定まらなくなってしまう。このため、運動中の着用者の体勢(フォーム)が崩れ易くなり、崩れた体勢のまま運動を継続すると、筋肉の柔軟性が失われ(すなわち、筋肉が硬くなり)、筋肉疲労を起こし易くなってしまう。かかる場合には、上述のスポーツ障害を誘発する虞もある。
【0042】
これに対し、本実施形態のコンディショニングウェア(すなわち、トップス10及びパンツ20)は、異なる強さの緊締力を骨格筋に付与する3種類の部分を備え、各部分の配置が前述のように設定されている。この結果、本実施形態のコンディショニングウェアが人体に着用された際、該人体の骨格筋に付与される緊締力は、該骨格筋の部位に応じて変わることになる。
【0043】
具体的に説明すると、本実施形態では、コンディショニングウェアが人体に着用された際に、第一部分が、該人体の骨格筋の起始部に対応する位置に位置して、緊締力を該起始部に付与し、第二部分が、前記第一部分により緊締力が付与される前記骨格筋の起始部と、該骨格筋の停止部と、の間の筋肉部分(所謂、筋腹)に対応する位置に位置して、前記第一部分が前記起始部に付与する緊締力よりも小さい緊締力を前記筋肉部分に付与する。
【0044】
このように、本実施形態では、骨格筋の起始部は第一部分によって緊締力が付与されるため、当該起始部は、より強い緊締力によって制動される(つまり、固定される)。これにより、骨格筋の動きの支点が定まる。この結果、前記骨格筋が正常な可動範囲内において動く(筋収縮する)ようになる。換言すると、骨格筋の動きの支点であり該骨格筋の起始部が付着する関節の位置が定まることにより、当該関節を構成する骨に付着した前記骨格筋の停止部が適切に動く結果、該停止部が付着した前記骨も正常に動くようになる。さらに、筋肉は、該筋肉の起始部が固定されると、該筋肉の伸展方向に伸展し易くなるという生理学的性質を有している。
【0045】
以上の効果により、第一部分によって起始部に緊締力が付与された骨格筋は、当該骨格筋の本来の伸張力を発揮することが可能となる。骨格筋は本来の伸張力を発揮できれば効率良く筋収縮するため、該骨格筋の疲労を軽減することが可能となる。他方、骨格筋の筋腹は第二部分によって緊締力が付与されるため、該筋腹を緊締する力が弱くなり、該筋腹が緊締力に抗して膨張し易くなる。この結果、筋腹は効率良く筋力を生み出すことが可能になる。
【0046】
以上の結果、骨格筋は、柔軟に伸縮して本来の筋力を発揮することが可能になる。特に、骨格筋が痛み易いエキセントリック伸縮では、該骨格筋へのダメージを軽減することが可能になる。このように、骨格筋が正常な可動範囲内で柔軟に伸縮することが可能になることにより、当該骨格筋の動きが着用者の目的とする運動に適合するようになり、以って、骨格筋の疲労の軽減やスポーツ障害の予防を図ることが可能になる。以下、上記の内容について、トップス10とパンツ20とに分けて具体的に説明する。
【0047】
<<トップス10がサポートする骨格筋と該骨格筋に付与される緊締力との関係>>
本実施形態のトップス10がサポートする骨格筋と、該骨格筋に付与される緊締力と、の関係について説明する。
【0048】
本実施形態のトップス10は、人体(具体的には人体の上半身)に着用された際に該人体の骨格筋に緊締力を付与する。そして、上半身の骨格筋のうち、大胸筋、広背筋、及び、棘下筋については、その起始部がトップス10の第一部分によって緊締力を付与され、その筋腹がトップス10の第二部分によって、第一部分が起始部に付与する緊締力よりも弱い緊締力を付与される。この結果、トップス10を着用することにより、大胸筋、広背筋、及び、棘下筋の各々が適切に伸縮し、体幹や上肢帯の動きが着用者の目的とする運動に適合するようになる。以下、大胸筋、広背筋、及び、棘下筋の各骨格筋について、その役割と、該骨格筋に緊締力を付与する部分(すなわち、第一部分及び第二部分)と、該緊締力が前記骨格筋に及ぼす作用と、を説明する。
【0049】
<大胸筋のケースについて>
先ず、大胸筋のケースについて、図6A及び図6Bと、図7A及び図7Bとを参照しながら説明する。図6Aは、大胸筋を示す骨格筋図である。図6Bは、トップス10のうち、大胸筋に緊締力を付与する部分を示した図である。図7A及び図7Bは、大胸筋に緊締力を付与する部分が該大胸筋に及ぼす作用についての説明図である。
【0050】
大胸筋は、図6Aに示すように、人体の腹側に位置し、その起始部を胸骨、第2〜第6肋軟骨、及び、鎖骨に有し、その停止部を上腕骨の大結節稜に有する筋肉である。この大胸筋は、肩前方を保護しながら腕を前方に振る動作(例えば、投球動作であり、以下、スウィング動作)においてパワーを発揮する。また、大胸筋は、スウィング動作の準備動作として行われるテイクバック動作(腕を後方に引く動作)において上腕骨を介して腕を支える。このとき、大胸筋は、腕の重みによる負荷を受けながらエキセントリック収縮をする(伸展する)。また、大胸筋は、テイクバック動作からスウィング動作(具体的には、後方に引いた腕を前方に勢いを付けながら出すアクセレーション動作)にかけてコンセントリック収縮する。そして、大胸筋は、スウィング動作からフォロー動作(例えば、投球動作においてボールをリリースした位置から更に下側に腕を振り下ろす動作)にかけてコンセントリック収縮の状態を維持する。
【0051】
そして、大胸筋は、図6Bに示すように、トップス10が着用された際に、該トップス10の前面において大胸筋に対応する位置に位置する部分によってサポートされる。具体的に説明すると、大胸筋の起始部に対応する位置(より具体的には、大胸筋の起始部の面積の半分以上に亘った範囲、に対応する位置)に、強緊締部の部分a11が位置しており、大胸筋の起始部は当該部分a11により緊締力を付与される。一方、大胸筋の筋腹に対応する位置(より具体的には、大胸筋の筋腹の面積の半分以上に亘った範囲、に対応する位置)に、弱筋締部の部分c11及びc13が位置しており、大胸筋の筋腹は当該部分c11及びc13により緊締力を付与される。したがって、大胸筋のケースにおいては、強緊締部の部分a11が第一部分に相当し、弱緊締部の部分c11及びc13が第二部分に相当する。
【0052】
さらに、本実施形態のトップス10では、大胸筋の停止部に対応する位置に、中緊締部の部分b11が位置している。ここで、第二部分よりも伸縮度合いが小さく、コンディショニングが人体に着用された際に、骨格筋の停止部に対応する位置に位置して、第二部分が筋腹に付与する緊締力よりも大きい緊締力を前記停止部に付与する部分を第三部分とする。大胸筋のケースでは、大胸筋の停止部に対応する位置に位置し、弱緊締部の部分c11及びc13よりも強い緊締力を該停止部に付与する中緊締部の部分b11が、第三部分に相当することになる。
【0053】
以上のように、大胸筋のケースでは、その筋腹に最も弱い緊締力が付与される一方、その起始部には最も強い緊締力が付与されることになる。これにより、大胸筋は、正常な可動範囲において柔軟に伸縮することが可能になる。さらに、大胸筋の停止部には、筋腹に付与された緊締力よりも強い緊締力が付与される結果、該停止部も制動されて固定されることになる。これにより、大胸筋は、腕を後方に引く動作において、その伸展方向に更に伸び易くなる。以上の結果、トップス10の着用者がスウィング動作における一連の動作(すなわち、テイクバック動作、アクセレーション動作、及び、フォロー動作)を行う場合、大胸筋は、これらの動作に適合するように伸縮するようになる。特に、スウィング動作において、大胸筋は、コンセントリック収縮し易くなるため、スウィング動作に要する筋力を効率良く生み出すことが可能になる。
【0054】
また、スウィング動作前のテイクバック動作において、大胸筋は、図7A中、破線矢印にて示す方向にエキセントリック収縮する(伸展する)一方で、大胸筋に付与される緊締力により、伸展する方向とは逆の方向(図7A中、実線矢印にて示す方向)に引っ張られる。これにより、大胸筋がエキセントリック収縮する際に過度に伸張するのを抑制することが可能になる。一方、図7Bに示すように、大胸筋は、スウィング動作において、コンセントリック収縮の方向(図7B中、破線矢印にて示す方向)と同一の方向に引っ張られる。これにより、大胸筋がエキセントリック収縮した状態からコンセントリック収縮し易くなり、テイクバック動作からスウィング動作への切替えを速やかに行うことが可能となる(すなわち、後方に引いた腕を素早く前方に振り出すことが可能になる)。
【0055】
さらに、大胸筋が、該大胸筋に付与される緊締力により、図8において破線矢印にて示す方向に引っ張られる結果、トップス10の着用者の円背姿勢を矯正することも可能になる。円背姿勢では肩甲骨が正常な位置よりも人体の中心(すなわち、背骨)から離れた位置にあり(つまり、肩甲骨が外転した状態にあり)、大胸筋が収縮した状態となっている。これに対し、本実施形態のトップス10を着用すれば、大胸筋が図8に実線矢印にて示す方向に引っ張られることにより、該大胸筋の伸展力が刺激される。この結果、大胸筋がその伸展方向(図8中、実線矢印にて示す方向)に伸び、肩甲骨が人体の中心に向かって正常な位置に戻り(つまり、内転して)円背姿勢が改善されることになる。なお、図8は、本実施形態のトップス10による、円背姿勢の矯正についての説明図である。
【0056】
<広背筋のケース>
次に、広背筋のケースについて、図9A及び図9Bと、図10A及び図10Bとを参照しながら説明する。図9Aは、広背筋を示す骨格筋図である。図9Bは、トップス10のうち、広背筋に緊締力を付与する部分を示した図である。図10A及び図10Bは、広背筋に緊締力を付与する部分が該広背筋に及ぼす作用についての説明図である。
【0057】
広背筋は、図9Aに示すように、人体の背側に位置し、その起始部を第6胸椎以降の椎骨の棘突起、腸骨稜、及び、仙骨に有し、その停止部を上腕骨の小結節稜に有する筋肉である。広背筋は、スウィング動作において大胸筋の拮抗筋となる(すなわち、大胸筋とは相反する筋収縮をすることによりスウィング動作を実現する)。このため、広背筋は、スウィング動作(アクセレーション動作からフォロー動作)においてエキセントリック収縮する。一方、広背筋は、テイクバック動作においてコンセントリック収縮する。
【0058】
そして、広背筋は、図9Bに示すように、トップス10が着用された際に、該トップス10の背面において広背筋に対応する位置に位置する部分によってサポートされる。具体的に説明すると、広背筋の起始部に対応する位置(より具体的には、広背筋の起始部の面積の半分以上に亘った範囲、に対応する位置)に、強緊締部の部分a18及びa19が位置しており、広背筋の起始部は当該部分a18及びa19により緊締力を付与される。一方、広背筋の筋腹に対応する位置(より具体的には、広背筋の起始部の面積の半分以上に亘った範囲、に対応する位置)に、弱緊締部の部分c14及びc15が位置しており、広背筋の筋腹は当該部分c14及びc15により緊締力を付与される。さらに、広背筋の停止部に対応する位置に、中緊締部の部分b11が位置しており、広背筋の停止部は当該部分b11により緊締力を付与される。したがって、広背筋のケースにおいては、強緊締部の部分a18及びa19が第一部分に相当し、弱緊締部の部分c14及びc15が第二部分に相当し、中緊締部の部分b11が第三部分に相当する。
【0059】
以上のように、広背筋のケースでは、その筋腹に最も弱い緊締力が付与される一方、その起始部には最も強い緊締力が付与される。また、広背筋の停止部には、該広背筋の筋腹に付与された緊締力よりも強い緊締力が付与される。これにより、広背筋は、正常な可動範囲において柔軟に伸縮することが可能になる。これにより、広背筋は、アクセレーション動作からフォロー動作にかけて、その伸展方向(図10B中、破線矢印にて示す方向)に伸展し易くなる(すなわち、エキセントリック収縮し易くなる)。この結果、トップス10の着用者は、スムーズにスウィング動作を行うことが可能になる。また、テイクバック動作時において、広背筋は、図10A中、破線矢印にて示す方向に収縮(コンセントリック収縮)する一方、広背筋に付与される緊締力により、収縮方向と同一の方向(図10A中、実線矢印にて示す方向)に引っ張られる。これにより、広背筋は、コンセントリック収縮し易くなる。
【0060】
<棘下筋のケース>
次に、棘下筋のケースについて、図11A及び図11Bと、図12A及び図12Bとを参照しながら説明する。図11Aは、棘下筋を示す骨格筋図である。図11Bは、トップス10のうち、棘下筋に緊締力を付与する部分を示した図である。なお、図を簡略化するために、図11A及び図11Bでは、棘下筋及びその起始部、停止部を片側のみ図示することとした。図12A及び図12Bは、棘下筋に緊締力を付与する部分が該棘下筋に及ぼす作用についての説明図である。
【0061】
棘下筋は、図11Aに示すように、人体の背側に位置し、その起始部を肩甲骨の棘下窩に有し、その停止部を上腕骨の大結節に有する筋肉である。この棘下筋は、肩関節の外旋動作(図12A中、二重線矢印にて示す方向に上腕骨が動く動作)及び内旋動作(外旋動作とは反対の方向に上腕骨が動く動作)を実現する筋肉である。棘下筋は、テイクバック動作時において肩関節が外旋動作を行う際にコンセントリック収縮し、アクセレーション動作からフォロー動作にかけて肩関節が内旋動作を行う際にエキセントリック収縮する。
【0062】
そして、棘下筋は、図11Bに示すように、トップス10が着用された際に、該トップス10の背面において棘下筋に対応する位置に位置する部分によってサポートされる。具体的に説明すると、棘下筋の起始部に対応する位置(より具体的には、棘下筋の起始部全体に亘る範囲、に対応する位置)に強緊締部の部分a17が位置している。つまり、棘下筋の起始部は当該部分a17により緊締力を付与される。一方、棘下筋の筋腹に対応する位置に、弱緊締部の部分c15が位置している。つまり、棘下筋の筋腹は当該部分c15により緊締力を付与される。また、棘下筋の停止部に対応する位置には、中緊締部の部分b11が位置している。つまり、棘下筋の停止部は当該部分b11により緊締力を付与される。したがって、棘下筋のケースにおいては、強緊締部の部分a17が第一部分に相当し、弱緊締部の部分c15が第二部分に相当し、中緊締部の部分b11が第三部分に相当する。
【0063】
以上のように、棘下筋のケースでは、その筋腹に最も弱い緊締力が付与され、その起始部には最も強い緊締力が付与される。また、棘下筋の停止部には、該棘下筋の筋腹に付与される緊締力よりも強い緊締力が付与される。これにより、棘下筋は、正常な可動範囲において柔軟に伸縮することが可能になる。この結果、棘下筋の動きは、肩の外旋動作及び内旋動作に適合するようになる。
【0064】
特に、アクセレーション動作からフォロー動作にかけて肩関節が内旋動作する際、棘下筋は、上腕骨が肩甲骨の棘下窩から離れないように該上腕骨の速度を減速させるためにエキセントリック収縮(伸展)するが、伸展方向(図12B中、破線矢印にて示す方向)に伸展し易くなっているため、上腕骨に対する減速効果を効果的に発揮することが可能である。また、このとき、棘下筋は、該棘下筋に付与される緊締力により、伸展方向とは逆の方向(図12B中、実線矢印にて示した方向)に引っ張られる。このため、棘下筋が過度に伸展するのを抑制し、以って、棘下筋の疲労を軽減し、該棘下筋に発生する障害(例えば、腱板炎)を予防することが可能になる。
【0065】
また、テイクバック動作において肩関節が外旋動作する際、棘下筋は、該棘下筋に付与される緊締力により、コンセントリック収縮の方向(図12A中、破線矢印にて示した方向)と同一の方向(図12A中、実線矢印にて示した方向)に引っ張られる。このため、棘下筋は、コンセントリック収縮し易くなり、テイクバック動作に要する筋力を効率良く生み出すことが可能になる。
【0066】
<<パンツ20がサポートする骨格筋と該骨格筋に付与される緊締力との関係>>
本実施形態のパンツ20がサポートする骨格筋と、該骨格筋に付与される緊締力と、の関係について説明する。
本実施形態のパンツ20は、人体(主に、人体の下半身)に着用された際に該人体の骨格筋に緊締力を付与する。そして、骨格筋のうち、大殿筋、ハムストリング筋、大腿直筋、縫工筋、腹直筋、及び、脊柱起立筋については、その起始部がパンツ20の第一部分によって緊締力を付与され、その筋腹がパンツ20の第二部分によって、第一部分が起始部に付与する緊締力よりも弱い緊締力を付与される。この結果、パンツ20を着用することにより、大殿筋、ハムストリング筋、大腿直筋、縫工筋、腹直筋、及び、脊柱起立筋の各々が適切に伸縮するようになり、下肢が着用者の目的とする運動に適合して動くようになる。以下、大殿筋、ハムストリング筋、大腿直筋、縫工筋、腹直筋、及び、脊柱起立筋の各骨格筋について、その役割と、該骨格筋に緊締力を付与する部分(すなわち、第一部分及び第二部分)と、該緊締力が前記骨格筋に及ぼす作用と、を説明する。
【0067】
<大殿筋のケースについて>
先ず、大殿筋のケースについて、図13A及び図13Bと、図14とを参照しながら説明する。図13Aは、大殿筋を示す骨格筋図である。図13Bは、パンツ20のうち、大殿筋に緊締力を付与する部分を示した図である。なお、図を簡略化するために、図13A及び図13Bでは、大殿筋及びその起始部、停止部を片側のみ図示することとした。図14は、大殿筋に緊締力を付与する部分が該大殿筋に及ぼす作用についての説明図である。
【0068】
大殿筋は、図13Aに示すように、人体の背側に位置し、起始部を腸骨外唇、仙骨、及び、尾骨に有し、停止部を大腿骨の殿筋粗面に有する筋肉である。この大殿筋は、股関節の伸展動作(後方に脚を振る動作)においてコンセントリック収縮をしてパワーを発揮する筋肉である。また、股関節の屈曲動作(前方に脚を振り出す動作)において脚が着地する際、着地脚側の大殿筋はエキセントリック収縮をする。
【0069】
そして、大殿筋は、図13Bに示すように、パンツ20が着用された際に、該パンツ20の後面において大殿筋に対応する位置に位置する部分によってサポートされる。具体的に説明すると、大殿筋の起始部に対応する位置(より具体的には、大殿筋の起始部の全体に亘る範囲、に対応する位置)に強緊締部の部分a21が位置しており、大殿筋の起始部は当該部分a21により緊締力を付与される。一方、大殿筋の筋腹に対応する位置(より具体的には、大殿筋の筋腹の面積の半分以上に亘った範囲、に対応する位置)に、弱緊締部の部分c21が位置しており、大殿筋の筋腹は当該部分c21により緊締力を付与される。また、大殿筋の停止部に対応する位置に、強緊締部の部分a26が位置しており、大殿筋の停止部は当該部分a26により緊締力を付与される。したがって、大殿筋のケースにおいては、強緊締部の部分a21が第一部分に相当し、弱緊締部の部分c21が第二部分に相当し、強緊締部の部分a26が第三部分に相当する。
【0070】
以上のように、大殿筋のケースでは、その起始部及び停止部に最も強い緊締力が付与される一方、その筋腹には、起始部及び停止部に付与される緊締力よりも弱い緊締力が付与される。これにより、大殿筋は、正常な可動範囲において柔軟に伸縮する結果、股関節の伸展動作及び屈曲動作に適合するように伸縮することが可能になる。
【0071】
また、大殿筋の筋腹については、筋肉量が多く、膨張した際の膨張量も大きくなることを考慮して、図13Bに示すように、大殿筋の筋腹に対応する位置には、主に弱緊締部の部分c21が位置している。つまり、大殿筋の筋腹の広範囲には、伸縮度合いが最も高い(すなわち、最も伸び易い)弱緊締部の緊締力が付与されるようになっている。これにより、大殿筋の筋腹が伸縮し易くなる結果、股関節が伸展動作及び屈曲動作を行い易くなる。特に、脚を後方に振り上げる際(すなわち、股関節が伸展動作をする際)、大殿筋は、コンセントリック収縮し易くなり、脚を後方に振り上げるための筋力を効率良く生み出すことが可能になる。以上のような効果によって、脚の振り出し幅(すなわち、歩幅)を拡げ、歩行速度を上昇させることが可能になる。
【0072】
さらに、本実施形態では、図13Bから分かるように、第二部分である弱緊締部の部分c21が、大殿筋の起始部から停止部へ向かう方向(図13B中、矢印にて示す方向)と交差する交差方向において、筋腹の一端から他端(大殿筋の筋腹の一端及び他端については、図13Bを参照)に亘る範囲に対応する位置に位置している。ここで、交差方向とは、筋腹の筋線維方向とも交差する方向である。つまり、本実施形態のパンツ20では、大殿筋の筋線維と交差する方向の一端から他端に亘って、大殿筋の起始部及び停止部に付与される緊締力よりも弱い緊締力を、該大殿筋の筋腹に付与する部分が存在する。筋肉は、膨張する際に、当該筋肉の筋線維と交差する方向に拡がるため、筋線維と交差する方向における筋腹の一端から他端に亘って該筋腹に付与する緊締力が弱くなるほど、該筋腹は膨張し易くなる。したがって、第二部分である部分c21が、大殿筋の起始部から停止部へ向かう方向と交差する交差方向において、筋腹の一端から他端に亘る範囲に対応する位置に位置することにより、大殿筋の筋腹は、より膨張し易くなる。これにより、大殿筋は、コンセントリック収縮し易く、筋力をより効率良く生み出せるようになる。
【0073】
なお、起始部から停止部へ向かう方向と交差する交差方向とは、該起始部から停止部へ向かう方向と直角をなす方向のみならず、該起始部から停止部へ向かう方向と直角以外の角度をなす方向も含む。
【0074】
また、股関節の屈曲動作において、大殿筋は、該大殿筋に付与される緊締力により、エキセントリック収縮の方向(すなわち、伸展方向であり、図14中、破線矢印にて示す)とは逆方向(図14中、破線矢印にて示す方向)に引っ張られる。これにより、大殿筋は、エキセントリック収縮した状態からコンセントリック収縮し易くなる。この結果、屈曲した股関節は、次の動作、すなわち、伸展動作を速やかに行うことが可能になる。さらに、大殿筋が伸展方向とは逆方向に引っ張られることにより、該大殿筋が過度に伸展するのを抑制することが可能になる。
【0075】
<ハムストリング筋のケース>
次に、ハムストリング筋のケースについて、図15A及び図15Bと、図16A及び図16Bと、図17A及び図17Bと、図18A乃至図18Cとを参照しながら説明する。
【0076】
図15Aは、大腿二頭筋長頭を示す骨格筋図である。図15Bは、パンツ20のうち、大腿二頭筋長頭に緊締力を付与する部分を示した図である。図16Aは、半膜様筋を示す骨格筋図である。図16Bは、パンツ20のうち、半膜様筋に緊締力を付与する部分を示した図である。図17Aは、半腱様筋を示す骨格筋図である。図17Bは、パンツ20のうち、半腱様筋に緊締力を付与する部分を示した図である。なお、図を簡略化するために、上記の各図では、ハムストリング筋及びその起始部、停止部を片側のみ図示することとした。図18A乃至図18Cは、ハムストリング筋に緊締力を付与する部分が該ハムストリング筋に及ぼす作用についての説明図である。
【0077】
ハムストリング筋は、人体の背側に位置し、図15Aに示す大腿二頭筋長頭と、図16Aに示す半膜様筋と、図17Aに示す半腱様筋と、を有する。このハムストリング筋は、股関節の伸展動作や膝関節の屈曲動作においてコンセントリック収縮してパワーを発揮する。また、脚を前方に振り出して該脚が着地する際、着地脚側のハムストリング筋は、エキセントリック収縮する。
【0078】
大腿二頭筋長頭は、図15Aに示すように、起始部を坐骨結節に、停止部を腓骨頭にそれぞれ有する。大腿二頭筋短頭は、起始部を大腿骨粗線に、停止部を腓骨頭にそれぞれ有し、大腿二頭筋長頭と合流している。半膜様筋は、図16Aに示すように、起始部を坐骨結節に、停止部を脛骨内側顆に有する。半腱様筋は、図17Aに示すように、起始部を坐骨結節に、停止部を脛骨内側の鵞足にそれぞれ有する。
【0079】
そして、ハムストリング筋は、図15B、図16B及び図17Bに示すように、パンツ20が着用された際に、該パンツ20の背面においてハムストリング筋に対応する位置に位置する部分によってサポートされる。具体的に説明すると、大腿ニ頭筋長頭、半膜様筋、及び、半腱様筋の各々の起始部に対応する位置(より具体的には、大腿ニ頭筋長頭、半膜様筋、及び、半腱様筋の各々の起始部の全体に亘る範囲、に対応する位置)には、強緊締部の部分a26が位置している。つまり、ハムストリング筋の起始部は、部分a26により緊締力を付与される。一方、ハムストリング筋の筋腹に対応する位置には、中緊締部の部分b25が位置している。つまり、ハムストリング筋の筋腹は、当該部分b25により緊締力を付与される。したがって、ハムストリング筋のケースでは、強緊締部の部分a26が第一部分に相当し、中緊締部の部分b25が第二部分に相当する。
【0080】
以上のように、ハムストリング筋のケースでは、起始部に付与される緊締力が最も強く、筋腹に付与される緊締力が、前記起始部に付与される緊締力よりも弱くなっている。これにより、ハムストリング筋は、正常な可動範囲において柔軟に伸縮するようになる結果、股関節の伸展動作及び屈曲動作、膝関節の伸展動作及び屈曲動作にそれぞれ適合するように伸縮することが可能になる。
【0081】
そして、ハムストリング筋の柔軟性が向上する結果、該ハムストリング筋は、図18A中、破線矢印にて示す方向にエキセントリック収縮(伸展)し易くなる。この結果、ハムストリング筋のエキセントリック収縮により実現される、股関節の屈曲動作が速やかに行われるようになる。また、股関節の屈曲動作において、ハムストリング筋は、該ハムストリング筋に付与される緊締力により、伸展方向とは逆の方向(図18A中、実線矢印にて示す方向)に引っ張られる。これにより、エキセントリック収縮した状態のハムストリング筋は、速やかにコンセントリック収縮することが可能となる。この結果、屈曲した股関節が速やかに伸展動作を行うようになる。以上のような効果によって、脚の振り出し幅を拡げ、歩行速度を上昇させることが可能になる。
【0082】
さらに、ハムストリング筋が伸展方向とは逆方向に引っ張られることにより、例えば、図18Bに示すように、脚を大きく前方に踏み出した際、当該脚側のハムストリング筋が過度に伸展するのを抑制することが可能になる。この結果、ハムストリング筋に発生する障害(たとえば、ハムストリング筋の起始部が付着する坐骨結節、における腱の炎症や剥離骨折)を予防することが可能になる。
【0083】
一方、股関節の伸展動作において、ハムストリング筋は、該ハムストリング筋に付与される緊締力により、コンセントリック収縮の方向(図18C中、破線矢印にて示す方向)と同一の方向(図18C中、実線矢印にて示す方向)に引っ張られる。これにより、ハムストリング筋は、コンセントリック収縮し易くなり、筋力を効率良く生み出すことが可能になる。
【0084】
また、図15B、図16B、図17Bから分かるように、第二部分である中緊締部の部分b25が、大腿ニ頭筋長頭、半膜様筋、及び、半腱様筋の各々の起始部から停止部へ向かう方向(図15B、図16B、図17B中、矢印にて示す方向)と交差する交差方向において、当該各々の筋腹の一端から他端に亘る範囲(各々の筋腹の一端及び他端については、図15B、図16B、図17Bを参照)に対応する位置に位置している。これにより、ハムストリング筋は、より膨脹し易くなり、股関節の伸展動作に要する筋力をより効率良く生み出すことが可能になる。
【0085】
<大腿直筋及び縫工筋のケース>
次に、大腿直筋及び縫工筋のケースについて、図19A及び図19Bと、図20A及び図20Bと、図21A及び図21Cと、を参照しながら説明する。
【0086】
図19Aは、大腿直筋を示す骨格筋図である。図19Bは、パンツ20のうち、大腿直筋に緊締力を付与する部分を示した図である。図20Aは、縫工筋を示す骨格筋図である。図20Bは、パンツ20のうち、縫工筋に緊締力を付与する部分を示した図である。なお、図を簡略化するために、上記の各図では、大腿直筋、縫工筋、及び、これらの起始部、停止部を片側のみ図示することとした。図21A乃至図21Cは、大腿直筋及び縫工筋に緊締力を付与する部分が該大腿直筋及び縫工筋に及ぼす作用についての説明図である。
【0087】
大腿直筋及び縫工筋は、いずれも、人体の腹側に位置し、股関節の伸展動作及び屈曲動作、膝関節の伸展動作及び屈曲動作を実現するための筋肉である。これらの筋肉は、股関節の屈曲動作及び膝関節の伸展動作においてコンセントリック収縮し、股関節の伸展動作及び膝関節の屈曲動作においてエキセントリック収縮する。大腿直筋は、図19Aに示すように、起始部を寛骨の下前腸骨棘に、停止部を脛骨結節にそれぞれ有する。縫工筋は、図20Aに示すように、起始部を寛骨の上前腸骨棘に、停止部を脛骨内側の鵞足にそれぞれ有する。
【0088】
そして、大腿直筋及び縫工筋の各々は、図19B及び図20Bに示すように、パンツ20が着用された際に、該パンツ20の前面において大腿直筋及び縫工筋の各々に対応する位置に位置する部分によってサポートされる。具体的に説明すると、大腿直筋の起始部に対応する位置(より具体的には、大腿直筋の起始部全体に亘る範囲、に対応する位置)、及び、縫工筋の起始部に対応する位置(より具体的には、縫工筋の起始部全体に亘る範囲、に対応する位置)には、強緊締部の部分a24が位置している。このため、大腿直筋及び縫工筋の各々の起始部は、前記部分a24により緊締力を付与される。一方、大腿直筋の筋腹に対応する位置、及び、縫工筋の筋腹に対応する位置には、中緊締部の部分b23が位置しており、大腿直筋及び縫工筋の各々の筋腹は、当該部分b23により緊締力を付与される。したがって、大腿直筋及び縫工筋のケースでは、強緊締部の部分a24が第一部分に相当し、中緊締部の部分b23が第二部分に相当する。
【0089】
以上のように、大腿直筋及び縫工筋のケースでは、起始部に付与される緊締力が最も強く、筋腹に付与される緊締力は、起始部に付与される緊締力よりも弱くなっている。これにより、大腿直筋及び縫工筋の各々は、正常な可動範囲において柔軟に伸縮する結果、股関節の伸展動作及び屈曲動作、膝関節の伸展動作及び屈曲動作にそれぞれ適合するように伸縮することが可能になる。
【0090】
そして、大腿直筋及び縫工筋の各々の柔軟性が向上する結果、大腿直筋及び縫工筋は、伸展方向(図21A中、破線矢印にて示す方向)に伸展し易くなる(エキセントリック収縮し易くなる)。このため、大腿直筋及び縫工筋のエキセントリック収縮により実現される、股関節の伸展動作がスムーズに行われるようになる。
【0091】
また、股関節の伸展動作において、大腿直筋及び縫工筋は、該大腿直筋及び縫工筋に付与される緊締力により、伸展方向とは逆の方向(図21A中、実線矢印にて示す方向)に引っ張られる。これにより、大腿直筋及び縫工筋が過度に伸展することを抑制し、以って、該大腿直筋及び縫工筋に発生する障害(たとえば、大腿直筋及び縫工筋の起始部が付着する前腸骨棘、における剥離骨折等)を予防することが可能になる。かかる効果は、図21Cに示すように脚を前方に大きく踏み出して膝を屈曲させる動作において大腿直筋及び縫工筋がエキセントリック収縮する場合に、特に有効である。
【0092】
また、図21Bに示すように脚を振り上げて膝を屈曲させる動作において、大腿直筋及び縫工筋は、コンセントリック収縮する。このとき、大腿直筋及び縫工筋に付与される緊締力により、該大腿直筋及び縫工筋は、収縮方向(図21B中、破線矢印にて示す方向)と同一の方向(図21B中、実線矢印にて示す方向)に引っ張られる。これにより、大腿直筋及び縫工筋は、コンセントリック収縮し易くなり、脚の重みを支えるのに十分な筋力を効率良く筋力を生み出すことが可能になる。
【0093】
また、本実施形態では、図19Bから分かるように、第二部分である中緊締部の部分b23が、大腿直筋の起始部から停止部へ向かう方向(図19B中、矢印にて示す方向)と交差する交差方向において、該大腿直筋の筋腹の一端から他端(当該筋腹の一端及び他端については、図19B参照)に亘る範囲に対応する位置に位置している。また、前記部分b23は、図20Bから分かるように、縫工筋の起始部から停止部へ向かう方向(図20B中、矢印にて示す方向)と交差する交差方向において、該縫工筋の筋腹の一端から他端(当該筋腹の一端及び他端については、図20B参照)に亘る範囲に対応する位置に位置している。これにより、大腿直筋及び縫工筋は、より膨脹し易くなり、前記筋力をより効率良く生み出すことが可能になる。以上のような効果によって、脚の振り上げ量、及び、振り上げ速度を大きくし、歩行速度を上昇させることが可能になる。
【0094】
<腹直筋のケース>
次に、腹直筋のケースについて、図22A及び図22Bと、図23A及び図23Bと、を参照しながら説明する。図22Aは、腹直筋を示す骨格筋図である。図22Bは、パンツ20のうち、腹直筋に緊締力を付与する部分を示した図である。なお、図を簡略化するために、図22A及び図22Bでは、腹直筋、及び、該腹直筋の起始部、停止部を片側のみ図示することとした。図23A及び図23Bは、腹直筋に緊締力を付与する部分が該腹直筋に及ぼす作用についての説明図である。
【0095】
腹直筋は、人体の腹側に位置し、図22Aに示すように、起始部を恥骨結合に、停止部を胸骨の剣状突起、及び、第5〜第7肋軟骨にそれぞれ有する筋肉である。腹直筋は、スウィング動作中のフォロー動作等において体幹が屈曲する(前屈みになる)際、コンセントリック収縮する。また、腹直筋は、体幹が伸展する(反り返る)際にエキセントリック収縮する。
【0096】
そして、腹直筋は、図22Bに示すように、パンツ20が着用された際に該パンツ20の前面において腹直筋に対応する位置に位置する部分によってサポートされる。具体的に説明すると、腹直筋の起始部に対応する位置(より具体的には、腹直筋の起始部全体に亘る範囲、に対応する位置)に、強緊締部の部分a24が位置している。つまり、腹直筋の起始部は当該部分a24により緊締力を付与される。一方、腹直筋の筋腹に対応する位置には、中緊締部の部分b21及びb22が位置している。つまり、腹直筋の筋腹は当該部分b21及びb22により緊締力を付与される。したがって、腹直筋のケースでは、強緊締部の部分a24が第一部分に相当し、中緊締部の部分b21及びb22が第二部分に相当する。
【0097】
以上のように、腹直筋のケースでは、起始部に最も強い緊締力が付与される一方、筋腹に、前記起始部に付与される緊締力よりも弱い緊締力が付与される。これにより、腹直筋は、正常な可動範囲において柔軟に伸縮するようになる。具体的に説明すると、腹直筋の起始部が付着した骨盤が安定し、体幹が骨盤を支点として適切に動くようになる。
【0098】
そして、腹直筋は、その柔軟性が向上したことにより、伸展方向(図23A中、破線矢印にて示す方向)に伸展し易くなる(エキセントリック収縮し易くなる)。この結果、例えば、図23Aに示すようなテイクバック動作において、体幹が伸展し易くなる。ここで、スウィング動作中、テイクバック動作からアクセレーション動作及びフォロー動作にかけて、腕が振り下ろされると同時に、体幹が伸展状態から屈曲し、かつ、回旋する(体の正面が前方を向くように捻られる)。このため、スウィング動作の速度は、体幹の動き分、加速されることになる。本実施形態では、テイクバック動作において体幹が伸展し易くなるため、スウィング動作の速度をより大きくすることが可能になる。
【0099】
また、テイクバック動作において、腹直筋は、該腹直筋に付与される緊締力により、伸展方向とは逆の方向(図23A中、実線矢印にて示す方向)に引っ張られる。これにより、腹直筋は、エキセントリック収縮した状態から速やかにコンセントリック収縮することが可能になる。この結果、スウィング動作中、テイクバック動作からアクセレーション動作への切替えがスムーズに行われるようになる。
【0100】
一方、スウィング動作中のアクセレーション動作及びフォロー動作において、腹直筋は、図23Bに示すように、該腹直筋に付与される緊締力により、コンセントリック収縮の方向(図23B中、破線にて示す方向)と同一の方向(図23B中、実線にて示す方向)に引っ張られる。この結果、アクセレーション動作及びフォロー動作において、腹直筋はコンセントリック収縮し易く、アクセレーション動作及びフォロー動作に要する筋力を効率良く生み出すことが可能になる。さらに、図22Bから分かるように、第二部分である中緊締部の部分b21が、腹直筋の起始部から停止部へ向かう方向(図22B中、矢印にて示す方向)と交差する交差方向において、該腹直筋の筋腹の一端から他端(当該筋腹の一端及び他端については、図22B参照)に亘る範囲に対応する位置に位置している。この結果、腹直筋はより膨脹し易くなり、筋力をより効率良く生み出すことが可能になる。
【0101】
<脊柱起立筋のケース>
次に、脊柱起立筋のケースについて、図24A及び図24Bと、図25A乃至図25Cと、を参照しながら説明する。図24Aは、脊柱起立筋を示す骨格筋図である。図24Bは、パンツ20のうち、脊柱起立筋に緊締力を付与する部分を示した図である。なお、図を簡略化するために、図24Bでは、脊柱起立筋、及び、該脊柱起立筋の起始部、停止部を片側のみ図示することとした。図25A乃至図25Cは、脊柱起立筋に緊締力を付与する部分が該脊柱起立筋に及ぼす作用についての説明図である。
【0102】
脊柱起立筋は、人体の背側において脊柱を支持して姿勢を維持するための筋肉であり、図24Aに示すように、起始部を仙骨及び腸骨稜に、停止部を胸郭部の上位胸椎にそれぞれ有する。脊柱起立筋は、体幹が屈曲する際にはエキセントリック収縮し、体幹が伸展する際にはコンセントリック収縮する。
【0103】
そして、脊柱起立筋は、図24Bに示すように、パンツ20が着用された際に該パンツ20の後面において脊柱起立筋に対応する位置に位置する部分によってサポートされる。具体的に説明すると、脊柱起立筋の起始部に対応する位置(より具体的には、脊柱起立筋の起始部全体に亘る範囲、に対応する位置)に、強緊締部の部分a21及びa22が位置している。つまり、脊柱起立筋の起始部は、当該部分a21及びa22により緊締力を付与される。一方、脊柱起立筋の筋腹に対応する位置には、中緊締部の部分b26が位置している。つまり、脊柱起立筋の筋腹は、当該部分b26により緊締力を付与される。したがって、脊柱起立筋のケースでは、強緊締部の部分a21及びa22が第一部分に相当し、中緊締部の部分b26が第二部分に相当する。
【0104】
以上のように、脊柱起立筋のケースでは、起始部に最も強い緊締力が付与され、筋腹に、前記起始部に付与される緊締力よりも弱い緊締力が付与される。これにより、脊柱起立筋は、正常な可動範囲において柔軟に伸縮するようになる。具体的に説明すると、脊柱起立筋の起始部が付着した骨盤が安定し、体幹が骨盤を支点として適切に動くようになる。
【0105】
そして、脊柱起立筋は、その柔軟性が向上したことにより、屈曲方向(図25A中、破線矢印にて示す方向)にエキセントリック収縮(伸展)し易なる。この結果、体幹も屈曲し易くなるため、例えば、スウィング動作において体幹を速やかに屈曲させることが可能になる。これにより、より速いスウィング動作を実現することも可能になる。さらに、脊柱起立筋が伸縮し易くなることにより、図25Cに示すような動作(所謂、立位体前屈動作)において前屈度合いを大きくさせることが可能になる。
【0106】
また、テイクバック動作において体幹が伸展する際には、脊柱起立筋がコンセントリック収縮し易くなっているため、体幹が伸展し易くなる。さらに、このとき、脊柱起立筋は、該脊柱起立筋に付与される緊締力により、コンセントリック収縮の方向(図25B中、破線矢印にて示す方向)と同一の方向(図25B中、実線矢印にて示す方向)に引っ張られる。これにより、腹直筋は、速やかにコンセントリック収縮することが可能になり、テイクバック動作において体幹が更に伸展し易くなる。この結果、スウィング動作の速度を上昇させることが可能になる。
【0107】
<<強緊締部、中緊締部、及び、弱緊締部の形成方法>>
本実施形態のトップス10及びパンツ20の各々は、既に説明したように、筋肉の各部位に付与する緊締力を当該各部位に応じて変えるために、互いに伸縮度合いが異なる3種類の部分(すなわち、強緊締部、中緊締部、及び、弱緊締部)を備えている。そして、本実施形態では、トップス10及びパンツ20の各々の生地の編組織を切替えることにより(つまり、編み分けを行うことにより)、前記トップス10及びパンツ20の各々に前記3種類の部分を形成している。ここで、生地の編組織を切替える(編み分けを行う)とは、生地内における編目の密度(度目密度)、地糸や挿入糸の種類、及び、各種類の糸の存在比率を変えることである。
【0108】
以下、本実施形態のトップス10及びパンツ20の各々における、前記3種類の部分の形成方法について、図26A乃至図26Cを参照しながら説明する。図26Aは、強緊締部の編組織を示した図である。図26Bは、中緊締部の編組織を示した図である。図26Cは、弱緊締部の編組織を示した図である。なお、図26A乃至図26Cには、それぞれ、矢印にて、各編組織の縦方向(図中、コース方向)及び横方向(図中、ウェール方向)を示している。
【0109】
本実施形態では、トップス10及びパンツ20の生地が、無縫製型横編機によって製造される。そして、当該無縫製型横編機による生地の製造工程において、3種類の編み分けを行うことにより、完成した生地に、互いに伸縮度合いが異なる3種類の部分が形成される。本実施形態では、生地内の度目密度を3段階に変化させるとともに、編組織を作るために使用されるナイロン系繊維、及び、ポリウレタン系繊維(通称、スパンデックス)の各々の存在比率を3段階に変化させている。
【0110】
また、本実施形態では、生地内の度目密度を変化させる方法として、編組織を形成する際の針抜きを行う回数を変化させている。編組織を形成する際に針抜きを全く行わない場合には、前記編組織の縦方向の各部(コース)に連続した編目(ウェール)が並ぶ。一方、針抜きを行った場合、当該針抜きを行った箇所には編目が編成されず、該編目の並びが不連続になる。そして、各コースにおいてウェールが編成されない箇所が多い部分であるほど(すなわち、各コースを編成する際の針抜き回数が多い部分であるほど)、生地の収縮性が高くなる。したがって、本実施形態では、図26A乃至図26Cに示すように、各コースを編成する際の針抜き回数を、トップス10及びパンツ20の生地中、強緊締部に相当する部分の編組織において最も多くし、中緊締部に相当する部分の編組織において2番目に多くし、弱緊締部に相当する部分の編組織において最も少なくする(本実施形態では、弱緊締部に相当する部分の編組織については針抜きを行わない)。
【0111】
また、ナイロン系繊維及びポリウレタン系繊維の各々の存在比率については、より高弾性なポリウレタン系繊維の存在比率が高い部分ほど、生地の伸張抵抗が高くなる。したがって、本実施形態では、ポリウレタン系繊維の存在比率を、強緊締部に相当する部分の編組織において最も高くし、中緊締部に相当する部分の編組織において2番目に高くし、弱緊締部に相当する部分の編組織において最も低くする。
【0112】
以上のような編分けにより、トップス10及びパンツ20の各々の生地に、互いに伸縮度合いが異なる3種類の部分が形成されることになる。この結果、完成品であるトップス10やパンツ20には、強緊締部、中緊締部、及び、弱緊締部が備えられることになる。
【0113】
ところで、トップス10やパンツ20に、強緊締部、中緊締部、及び、弱緊締部を備える方法としては、上記の方法以外に、例えば、同一の編組織からなる生地(すなわち、編み分けを行っていない生地であり、以下、無変調生地)の裏側に、強緊締部、中緊締部、及び、弱緊締部の配置に応じて、他の生地を縫い付ける方法(所謂、裏打ち縫合)も考えられる。つまり、無変調生地の、強緊締部に相当する部分の裏側には、伸縮度合いが比較的小さい生地を縫い付け、前記無変調生地の、中緊締部に相当する部分の裏側には、伸縮度合いが比較的大きい生地を縫い付ける方法であってもよい。
【0114】
但し、無変調生地に他の生地を縫い付けて製造されたトップス10やパンツ20を着用すると、無変調生地の裏側に生地が重ねられた分、着用者の皮膚に対する着圧が強くなり、該着用者に圧迫感を与えてしまう。また、無変調生地の裏側に生地を縫い付けられることにより形成される縫い目が着用者の皮膚に押し付けられる結果、当該皮膚に前記縫い目の痕が付き、前記着用者に不快感を与えてしまう。
【0115】
これに対し、本実施形態のトップス10やパンツ20では、強緊締部、中緊締部、及び、弱緊締部が編み分けによって同一の生地に形成されているため、生地の縫い合わせによって生じる着圧の上昇が回避される。また、前述したように、本実施形態のトップス10やパンツ20の各々の生地は無縫製型横編機により製造されるため、裏打ち縫合の場合と比較して、縫い目の数が格段に少なくなる。このため、トップス10やパンツ20が着用された際に、該着用者の皮膚に縫い目の痕が付くのを抑制することが可能になる。したがって、本実施形態のトップス10やパンツ20は、着用された際に適宜な着用感を着用者に与え、長時間の着用に適したコンディショニングウェアである。
【0116】
===その他の実施例===
以上、上記の実施形態に基づきトップス10及びハーフパンツ20について説明したが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。特に、本発明の実施形態は、上記の実施形態における形状(トップス及びパンツの外形形状や、強緊締部、中緊締部、及び、弱緊締部の形状や配置等)や生地の材質に限定されるものではない。
【0117】
また、上記の実施形態では、トップス10が着用された際、該トップス10は、大胸筋、広背筋、及び、棘下筋の各々の骨格筋の起始部には第一部分の緊締力を付与し、当該各々の骨格筋の筋腹には第二部分の緊締力を付与することとした。また、パンツ20が着用された際、該パンツ20は、大殿筋、ハムストリング筋、大腿直筋、縫工筋、腹直筋、及び、脊柱起立筋の各々の起始部には第一部分の緊締力を付与し、当該各々の骨格筋の筋腹には第二部分の緊締力を付与することとした。但し、トップス10は、大胸筋、広背筋、及び、棘下筋のうちの少なくとも一つの骨格筋の起始部に第一部分の緊締力を付与し、当該少なくとも一つの骨格筋の筋腹に第二部分の緊締力を付与するものであればよい。また、パンツ20は、大殿筋、ハムストリング筋、大腿直筋、縫工筋、腹直筋、及び、脊柱起立筋のうちの少なくとも一つの骨格筋の起始部に第一部分の緊締力を付与し、当該少なくとも一つの骨格筋の筋腹に第二部分の緊締力を付与するものであればよい。さらに、トップス10及びパンツ20が、上記以外の骨格筋の起始部に第一部分の緊締力を付与し、当該骨格筋の筋腹に第二部分の緊締力を付与することとしてもよい。
【0118】
また、上記の実施形態では、人体に着用されることにより、主として、該人体の骨格筋に緊締力を付与するコンディショニングウェアについて説明した。但し、本発明のコンディショニングウェアは、人体に着用された際、該人体の、骨格筋以外の筋肉(例えば、表皮等に付着した筋肉であり、以下、非骨格筋と呼ぶ)に緊締力を付与することとしてもよい。かかるコンディショニングウェアにおいて、該コンディショニングウェアの第一部分が、前記非骨格筋の起始部に対応する位置に位置して該起始部に緊締力を付与し、前記コンディショニングウェアの第二部分が、前記第一部分により緊締力が付与される前記非骨格筋の筋腹に対応する位置に位置して、前記第一部分が前記起始部に付与する緊締力よりも小さい緊締力を前記筋腹に付与することとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】トップス10を前側(腹側)から見た図である。
【図2】トップス10を後側(背側)から見た図である。
【図3】パンツ20を前側(腹側)から見た図である。
【図4】パンツ20を後側(背側)から見た図である。
【図5】パンツ20を横から見た図である。
【図6】図6Aは、大胸筋を示す骨格筋図である。図6Bは、トップス10のうち、大胸筋に緊締力を付与する部分を示した図である。
【図7】図7A及び図7Bは、大胸筋に緊締力を付与する部分が該大胸筋に及ぼす作用についての説明図である。
【図8】トップス10による、円背姿勢の矯正についての説明図である。
【図9】図9Aは、広背筋を示す骨格筋図である。図9Bは、トップス10のうち、広背筋に緊締力を付与する部分を示した図である。
【図10】図10A及び図10Bは、広背筋に緊締力を付与する部分が該広背筋に及ぼす作用についての説明図である。
【図11】図11Aは、棘下筋を示す骨格筋図である。図11Bは、トップス10のうち、棘下筋に緊締力を付与する部分を示した図である。
【図12】図12A及び図12Bは、棘下筋に緊締力を付与する部分が該棘下筋に及ぼす作用についての説明図である。
【図13】図13Aは、大殿筋を示す骨格筋図である。図13Bは、パンツ20のうち、大殿筋に緊締力を付与する部分を示した図である。
【図14】図14は、大殿筋に緊締力を付与する部分が該大殿筋に及ぼす作用についての説明図である。
【図15】図15Aは、大腿二頭筋長頭を示す骨格筋図である。図15Bは、パンツ20のうち、大腿二頭筋長頭に緊締力を付与する部分を示した図である。
【図16】図16Aは、半膜様筋を示す骨格筋図である。図16Bは、パンツ20のうち、半膜様筋に緊締力を付与する部分を示した図である。
【図17】図17Aは、半腱様筋を示す骨格筋図である。図17Bは、パンツ20のうち、半腱様筋に緊締力を付与する部分を示した図である。
【図18】図18A乃至図18Cは、ハムストリング筋に緊締力を付与する部分が該ハムストリング筋に及ぼす作用についての説明図である。
【図19】図19Aは、大腿直筋を示す骨格筋図である。図19Bは、パンツ20のうち、大腿直筋に緊締力を付与する部分を示した図である。
【図20】図20Aは、縫工筋を示す骨格筋図である。図20Bは、パンツ20のうち、縫工筋に緊締力を付与する部分を示した図である。
【図21】図21A乃至図21Cは、大腿直筋及び縫工筋に緊締力を付与する部分が該大腿直筋及び縫工筋に及ぼす作用についての説明図である。
【図22】図22Aは、腹直筋を示す骨格筋図である。図22Bは、パンツ20のうち、腹直筋に緊締力を付与する部分を示した図である。
【図23】図23A及び図23Bは、腹直筋に緊締力を付与する部分が該腹直筋に及ぼす作用についての説明図である。
【図24】図24Aは、脊柱起立筋を示す骨格筋図である。図22Bは、パンツ20のうち、脊柱起立筋に緊締力を付与する部分を示した図である。
【図25】図25A乃至図25Cは、脊柱起立筋に緊締力を付与する部分が該脊柱起立筋に及ぼす作用についての説明図である。
【図26】図26Aは、強緊締部の編組織を示した図である。図26Bは、中緊締部の編組織を示した図である。図26Cは、弱緊締部の編組織を示した図である。
【符号の説明】
【0120】
10 トップス、11 胴部、12 腕部、
20 パンツ、21 腰部、22 脚部
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体に着用される衣料に関する。
【背景技術】
【0002】
コンディショニングウェアなど、人体に着用された際に該人体の筋肉に緊締力を付与する衣料は既に知られている。このような衣料は、上記緊締力により筋肉をサポートし、例えば、筋肉の疲労の軽減やスポーツ障害の防止を目的として着用される(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−192903号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記衣料を着用した者(着用者)が運動する際、該着用者の筋肉は、前記緊締力を付与されながらも、該着用者の目的とする運動に適合するように伸縮できる方が望ましい。つまり、筋肉が前記緊締力により制動されながらも本来の弾力性を発揮することが可能な衣料の開発が求められている。
【0004】
ここで、筋肉の動き(伸び縮み)を着用者の目的とする運動に適合させるためには、該筋肉の起始部を固定させる必要があるが、起始部が固定されないままの状態では、筋肉がその伸展方向に伸び難くなるとともに、該筋肉の動きの支点が定まらなくなってしまう。この結果、筋肉の動きが着用者の目的とする運動に適合できなくなり、更に筋肉が疲労し易くなってスポーツ傷害が誘発され易くなってしまう。
【0005】
また、筋肉の動きを着用者の目的とする運動に適合させる上では、筋肉の起始部及び停止部の間の筋肉部分(すなわち、筋腹)が緊締力に抗して適切に膨張できることも必要であるが、筋腹が過度に緊締されると、該筋腹の収縮に伴う膨張が妨げられる結果、筋肉の動きが着用者の目的とする運動に適合できなくなる。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、筋肉の動きを着用者の目的とする運動に適合させることが可能な衣料を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、主たる発明は、人体に着用される衣料であって、該衣料が前記人体に着用された際に、該人体の筋肉の起始部に対応する位置に位置して、緊締力を該起始部に付与する第一部分と、該第一部分よりも伸縮度合いが大きく、前記衣料が前記人体に着用された際に、前記第一部分により緊締力が付与される前記筋肉の前記起始部と、該筋肉の停止部と、の間の筋肉部分に対応する位置に位置して、前記第一部分が前記起始部に付与する緊締力よりも小さい緊締力を前記筋肉部分に付与する第二部分と、を備えることを特徴とする衣料である。
【0008】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により少なくとも次のことが明らかにされる。
先ず、人体に着用される衣料であって、該衣料が前記人体に着用された際に、該人体の筋肉の起始部に対応する位置に位置して、緊締力を該起始部に付与する第一部分と、該第一部分よりも伸縮度合いが大きく、前記衣料が前記人体に着用された際に、前記第一部分により緊締力が付与される前記筋肉の前記起始部と、該筋肉の停止部と、の間の筋肉部分に対応する位置に位置して、前記第一部分が前記起始部に付与する緊締力よりも小さい緊締力を前記筋肉部分に付与する第二部分と、を備える衣料である。
【0010】
かかる構成の衣料が人体に着用されると、第一部分により比較的強い緊締力が筋肉の起始部に付与される。このため、衣料の着用者が運動をする際に筋肉の起始部が固定され、該筋肉の動きの支点が定まる結果、該筋肉は、正常な可動範囲において動く(伸縮する)ようになる。また、筋肉の生理学的性質により、起始部が固定された筋肉は、その伸展方向に伸び易くなる。さらに、第一部分により起始部に緊締力が付与される筋肉の起始部と、該筋肉の停止部と、の間の筋肉部分には、第二部分により比較的弱い緊締力が付与される。このため、当該筋肉部分は収縮時に膨張し易くなり、着用者の運動に要する筋力を効率良く生み出すことが可能になる。以上の効果により、筋肉は、その柔軟性が向上し、着用者の目的とする運動に適合して動くことが可能となり、以って前記筋肉の疲労の軽減、及び、スポーツ障害の予防を図ることが可能となる。
【0011】
また、上記の衣料において、前記第二部分よりも伸縮度合いが小さく、前記衣料が前記人体に着用された際に、前記停止部に対応する位置に位置して、前記第二部分が前記筋肉部分に付与する緊締力よりも大きい緊締力を前記停止部に付与する第三部分を備えることとしてもよい。かかる構成の衣料であれば、第一部分及び第二部分により緊締力が付与される筋肉、の張力をより有効に発揮させることが可能になる。つまり、起始部及び停止部が固定された筋肉は、その伸展方向により伸び易くなる。この結果、筋肉の動きを着用者の目的とする運動に適合させることがより容易になる。
【0012】
また、上記の衣料において、前記第二部分は、前記起始部から前記停止部へ向かう方向と交差する交差方向における一端から他端に亘る前記筋肉部分に、対応する位置に位置していることとしてもよい。かかる構成の衣料であれば、前記筋肉部分が収縮時に膨張し易くなり、着用者の運動に要する筋力をより効率良く生み出すことが可能になる。
【0013】
また、上記の衣料において、前記筋肉は、骨格筋であることとしてもよい。かかる場合、骨格筋が付着する骨の動きが着用者の目的とする運動に適合するように、該骨格筋が適切に伸縮する。
【0014】
また、上記の衣料において、該衣料は、パンツであり、前記骨格筋は、大殿筋、ハムストリング筋、大腿直筋、縫工筋、腹直筋、又は、脊柱起立筋であることとしてもよい。かかる場合、下肢を動かす筋肉群が適切に伸縮するようになり、下肢の動きが着用者の目的とする運動に適合するようになる。
【0015】
また、上記の衣料において、該衣料は、トップスであり、前記骨格筋は、大胸筋、広背筋、又は、棘下筋であることとしてもよい。かかる場合、上肢を動かす筋肉群が適切に伸縮するようになり、上肢の動きが着用者の目的とする運動に適合するようになる。
【0016】
===本実施形態の衣料の形状について===
本発明の衣料の一例として、図1及び図2に示す上半身用のコンディショニングウェア(以下、トップス10)、及び、図3乃至図5に示す下半身用のコンディショニングウェア(以下、パンツ20)について、それぞれ説明する。
【0017】
図1はトップス10を前側(腹側)から見た図であり、図2はトップス10を後側(背側)から見た図である。図3はパンツ20を前側(腹側)から見た図であり、図4はパンツ20を後側(背側)から見た図であり、図5はパンツ20を横から見た図である。なお、上記の各図には、人体に着用された状態のトップス10若しくはパンツ20が示されている。
【0018】
トップス10は、図1及び図2に示すように、胴部11と、該胴部11に縫合された左右一対の腕部12と、を有する、シャツ型のコンディショニングウェアである。パンツ20は、図3及び図4に示すように、腰部21と、該腰部に隣接する左右一対の脚部22と、を有する、履き込み型のコンディショニングウェアである。本実施形態のトップス10及びパンツ20は、いずれも、伸縮性を有する生地からなる衣料であり、人体に着用された際に該人体にフィットして該人体の所定の筋肉(所定の筋肉については後述する)に緊締力を付与する。ここで、緊締力とは、生地の張力によって生じ、筋肉を締め付けて該筋肉を制動するような力のことである。
【0019】
そして、本実施形態のトップス10及びパンツ20は、図1乃至図5に示すように、互いに伸縮度合いが異なる3種類の生地部分を有する。すなわち、本実施形態のトップス10及びパンツ20は、いずれも、互いに伸縮度合いが異なる3種類の部分(図1乃至図5中、白、グレー、黒色にて塗り分けられた部分)を有している。ここで、伸縮度合いとは、伸縮し易さのことである。伸縮度合いが小さい(伸縮し難い)とは、元の状態(外力が付与されていない状態)を維持し易い生地の性質(つまり、大きな外力を加えないと伸びず、伸びた状態で外力が解放された場合には、元の状態に戻り易い性質)を表し、伸縮度合いが大きい(伸縮し易い)とは、元の状態を維持し難い生地の性質(つまり、小さな外力で伸び、伸びた状態で外力が解放された場合に、元の状態に戻り難い性質)を表す。
【0020】
本実施形態では、トップス10及びパンツ20の各々の生地の伸縮度合いが3段階に設定されているため、該トップス10及びパンツ20の各々が人体に着用された際に筋肉に付与される緊締力が、3段階に設定されていることになる。なお、当然のことながら、当該緊締力は、生地の伸縮度合いが大きくなるほど弱くなる。このため、トップス10及びパンツ20の各々は、最も伸縮度合いが小さいために最も強い緊締力を筋肉に付与する生地部分(以下、強緊締部)と、最も伸縮度合いが大きいために最も弱い緊締力を筋肉に付与する生地部分(以下、弱緊締部)と、伸縮度合いが強緊締部より大きく、且つ、弱緊締部より小さいために、強緊締部より弱く、且つ、弱緊締部より強い緊締力を筋肉に付与する生地部分(以下、中緊締部)と、を有することになる。なお、図1乃至図5中、白く塗られた部分が強緊締部に、グレーで塗られた部分が中緊締部に、黒く塗られた部分が弱緊締部に、それぞれ相当する。
【0021】
以下、トップス10及びパンツ20の各々について、強緊締部、中緊締部、及び、弱緊締部の配置について説明する。なお、以下では、トップス10又はパンツ20が人体に着用された状態での上記配置について説明する。また、以降の説明において、人体の所定部位(例えば、所定の筋肉、骨など)に対応する位置とは、前記所定部位を覆う位置のことを意味する(つまり、人体の所定部位に対応する位置の奥に当該所定部位が存在する)。
【0022】
<<トップス10について>>
本実施形態のトップス10では、強緊締部、中緊締部、及び、弱緊締部が、それぞれ、人体の中心軸を中心として左右対称に連携された状態で配置されている。以下、トップス10における強緊締部、中緊締部、及び、弱緊締部の各々の配置について説明する。
【0023】
<強緊締部の配置>
トップス10の前面では、図1に示すように、強緊締部が首元から脇下に向けて襷掛け状に配置されている。つまり、強緊締部は、トップス10の前面において、襟ラインに沿って斜めに延び胸鎖関節に対応する位置辺りで合流している部分(図1中、記号a11にて示した部分)と、当該部分a11の合流位置から再び分岐して脇下に向かって斜め下方に延びた部分(図1中、記号a12にて示した部分)を有している。また、強緊締部は、胸鎖関節に対応する位置辺りから肩に向かって鎖骨に沿うように伸びた部分(図1中、記号a13にて示した部分)を有している。さらに、トップス10の前面では、強緊締部が、脇下から胴部11の裾に向けて襷掛け状に配置されている。具体的に説明すると、強緊締部は、トップス10の前面において、脇下の下方位置から斜め下方に延びて臍に対応する位置辺りにて合流した部分(図1中、記号a14にて示した部分)と、当該部分a14の合流位置から再び分岐して寛骨の上前腸骨棘に対応する位置に向かって斜め下方に延びた部分(図1中、記号a15にて示した部分)と、を有している。
【0024】
一方、図2に示すように、トップス10の後面では、強緊締部が、首元周りに配置されている。また、強緊締部は、トップス10の後面において、肩甲骨内側縁に対応する位置から脇下に向かって斜め下方に延びた部分(図2中、記号a16にて示した部分)と、当該部分a16の中途位置から胸椎の中心に対応する位置に向かって延び、当該位置から脇下の下方位置に向かって斜めに延びた部分(図2中、記号a17にて示した部分)と、を有している。なお、部分a17は、脇下の下方位置において部分a14と連結している。さらに、強緊締部は、トップス10の後面において、脇下の下方位置から骨盤中央(詳しくは、腰仙椎部の基部)に対応する位置に向かって斜め下方に延びた部分(図2中、記号a18にて示した部分)と、当該部分a18に隣接し胴部11の裾まで延びた部分(図2中、記号a19にて示した部分)と、を有している。なお、部分a19は、胴部11の裾部において部分a15と連結している。これにより、胴部11の裾部における強緊締部の配置位置が、骨盤(詳しくは、腰仙骨部)を取り囲むような位置になっている。
【0025】
<中緊締部の配置>
中緊締部は、図1及び図2に示すように、肩上方を覆って上腕を取り巻くように配置されている。つまり、中緊締部は、トップス10の前面及び後面の双方において、肩峰に対応する位置から上腕骨頭に対応する位置を通過して脇下周辺に向かって延びた部分(図1及び図2において、記号b11にて示す部分)を有している。
【0026】
<弱緊締部の配置>
トップス10の前面では、図1に示すように、弱緊締部が、胸郭部中央に対応する位置から臍に対応する位置よりもやや上方の位置まで幅広く配置されている。つまり、弱緊締部は、トップス10の前面において、強緊締部の部分a12及び部分a14に包囲され横隔膜に対応する位置周辺を覆う部分(図1中、記号c11にて示す部分)を有している。また、弱緊締部は、トップス10の前面において、胴部11の裾から略三角形状に広がった部分(図1中、記号c12にて示す部分)と、強緊締部の部分a11及び部分a12と中緊締部の部分b11との間において脇下から肩前方を覆う部分(図1中、記号c13にて示す部分)と、を有している。
【0027】
一方、トップス10の後面では、図2に示すように、弱緊締部が、胸椎の中心に対応する位置よりやや下側から腰上部まで幅広く配置されている。つまり、弱緊締部は、トップス10の後面において、強緊締部の部分a17及び部分a18に包囲され横隔膜に対応する位置周辺を背面側から覆う部分(図1中、記号c14にて示す部分)を、有している。また、弱緊締部は、トップス10の後面において、強緊締部の部分a17と中緊締部の部分b11との間において脇下から肩後方を覆う部分(図1中、記号c15にて示す部分)を有している。さらに、図1及び図2に示すように、弱緊締部は、腕部12の中央から該腕部12の裾よりもやや上側の位置にかけて上腕を取り囲む部分(図1及び図2中、記号c16にて示す部分)と、脇腹を覆う部分(図1及び図2中、記号c17にて示す部分)とを有している。
【0028】
<<パンツ20について>>
本実施形態のパンツ20では、図3及び図4に示すように、強緊締部、中緊締部、及び、弱緊締部が、それぞれ、人体の中心軸を中心として左右対称に連携された状態で配置されている。以下、パンツ20における強緊締部、中緊締部、及び、弱緊締部の各々の配置について説明する。
【0029】
<強緊締部の配置>
パンツ20の後面では、図4に示すように、強緊締部が、恥骨に対応する位置から仙骨に対応する位置まで引き上げられてから腸骨稜の外側上方に対応する位置に向かうように、略V字状に配置されている。つまり、強緊締部は、パンツ20の後面において、恥骨に対応する位置から逆三角形状に広がって仙腸関節に対応する位置周辺を覆う部分(図4中、記号a21にて示した部分)と、当該部分a21から左右に分岐して腸骨稜に対応する位置に向かって斜め上方に延びた部分(図4中、記号a22にて示した部分)と、を有している。また、強緊締部は、腰部21の幅方向端部において前記部分a22と連結し、大転子に対応する位置辺りまで幅広く延びた部分(図4及び図5中、記号a23にて示した部分)を有している。そして、強緊締部は、図5に示すように部分a23の下端部から分岐して、大腿の前側に向かって延びた部分(図5中、記号a24にて示した部分)と、大腿の後側に向かって延びた部分(図5中、記号a25にて示す部分)と、をそれぞれ形成している。
【0030】
さらに、強緊締部は、パンツ20の後面において、恥骨結合に対応する位置から坐骨結節に対応する位置を通過するように延びた部分(図4及び図5中、記号a26にて示す部分)と、恥骨結合に対応する位置から大腿内側を覆う部分(図4中、記号a27にて示す部分)とを有する。なお、部分a26及び部分a27は、いずれも部分a25と連結している。また、部分a27は、恥骨結合に対応する位置から三角形状に広がり、該部分a27と連結した部分a25は、脚部22の下端まで達している。
【0031】
一方、図3に示すように、パンツ20の前面では、強緊締部が、腸骨稜に対応する位置から大腿の鼠径部に対応する位置に向かって襷掛け状に配置されている。つまり、強緊締部は、パンツ20の前面において、腸骨稜に対応する位置において部分a22と連結し、その連結位置から斜め下方に延びて臍に対応する位置よりも幾分上方の位置にて合流した部分(図3中、記号a28にて示した部分)と、当該部分a28の合流位置から再び分岐して鼠径部に対応する位置に向かって延びた部分(図1中、記号a29にて示した部分)と、を有している。また、図3及び図5に示すように、大転子に対応する位置辺りから大腿の前側に向かって延びた部分(すなわち、部分a24)が、大腿の前側まで回り込み該鼠径部に沿って恥骨結合に対応する位置まで延びている。また、部分a24は、図3に示すように、大腿前面において大腿上部を覆っている。
【0032】
以上のように、本実施形態のパンツ20では、強緊締部が、骨盤を取り囲み該骨盤の前方で交差してから大腿上部に繋がれるように配置されている。
【0033】
<中緊締部の配置>
中緊締部は、図3に示すように、パンツ20の前面において腰部21の上端から逆三角形状に広がった部分(図3中、記号b21にて示した部分)と、骨盤前方で交差して大腿上部に繋がれた強緊締部(具体的には、部分a24、a28、a29)に包囲された部分(図3中、記号b22にて示した部分)と、を有している。また、中緊締部は、大転子に対応する位置よりも下方の位置からパンツ20の前面に回り込んで、大腿内側に向かって延びた部分(図3及び図5中、記号b23にて示した部分)を有している。当該部分b23は、図3に示すように、大腿前面において大腿下部を覆っている。
【0034】
また、中緊締部は、図4に示すように、パンツ20の後面において、大腿の後側で強緊締部(具体的には、部分a25、a26、a27)に包囲され略三角形状に広がって大腿の後側上部を覆う部分(図4中、記号b25にて示した部分)と、腰部21の上端から腰仙関節に対応する位置辺りまで逆三角形状に広がった部分(図4中、記号b26にて示した部分)と、を有している。
【0035】
<弱緊締部の配置>
弱緊締部は、図4及び図5に示すように、パンツ20の後面において大殿筋の筋腹に対応する位置に配置された部分(図4及び図5中、記号c21にて示した部分)と、パンツ20の側面において強緊締部の部分a25と中緊締部の部分b23とに包囲され大腿の側面下部を覆う部分(図4及び図5中、記号c22にて示した部分)と、を有している。
【0036】
==本実施形態の衣料が付与する緊締力と筋肉との関係について==
コンディショニングウェアは、人体に着用されることにより、該人体の筋肉に緊締力を付与して該筋肉をサポートする。このコンディショニングウェアにより緊締力が付与される筋肉は、主に、骨格筋である。骨格筋は、人体の支柱となる骨格に付着し、人間の運動において骨格を直接的に動かすことにより骨格間の関節の動きを実現している。そして、骨格筋の両端部に位置し、骨に付着している部位が該骨格筋の起始部及び停止部である。ここで、起始部とは、骨格筋の両端部のうち、人体の中心により近い側の端部であり、停止部とは、人体の中心からより離れた側の端部である。換言すると、関節が動く際、当該関節を構成する骨(より詳しくは、関節を構成する一対の骨のうちの一方の骨)の動きの支点となる側の端部が起始部であり、当該骨を動かすために動く側の端部が停止部である。なお、一部の骨格筋(例えば、後述の大腿直筋)については、骨格筋の両端部のうち、骨盤により近い側の端部が起始部であり、骨盤からより離れた側の端部が停止部である。
【0037】
上記骨格筋についてより詳しく説明すると、該骨格筋の動きには、短縮性筋収縮(コンセントリック収縮)、等尺性筋収縮(アイソメトリック収縮)、及び、伸張性筋収縮(エキセントリック収縮)の3様式がある。コンセントリック収縮は、骨格筋の起始部から停止部までの長さが縮み、該骨格筋が付着する骨同士の距離が短くなるような筋収縮である。アイソメトリック収縮は、骨格筋の起始部から停止部までの長さに変化がなく、該骨格筋が付着する骨同士の距離も変わらず、該骨格筋が一定の位置に位置した状態で収縮する筋収縮である。エキセントリック収縮は、骨格筋の起始部と停止部の長さが伸長し、該骨格筋が付着する骨同士の距離が長くなるように、筋肉が伸張しながら(引き伸ばされながら)収縮する筋収縮である。
【0038】
ところで、骨格筋が大きな負荷を受けた状態で上記の動き(筋収縮)を行い続けると、該骨格筋は硬化し(柔軟性が失われ)、筋力も低下してしまう。特に、エキセントリック収縮では、骨格筋の筋線維のアクチン及びミオシンが離れた状態で筋力を生み出すため、該筋線維に大きな負荷(ストレス)が掛かり易くなる。この結果、エキセントリック収縮を繰り返した骨格筋は疲労し易く、そして該骨格筋の柔軟性も低下し易くなる。骨格筋の柔軟性の低下が進行すると、着用者の運動能力の低下を招く虞がある。骨格筋の柔軟性が低下した状態でスポーツ等の運動を行うと、所謂スポーツ障害が起こり易くなる。具体的に説明すると、骨格筋の柔軟性が低下した状態での運動においては、筋線維を覆う筋膜の炎症や肉離れ等、骨格筋自体の損傷が起こり易くなる。また、骨格筋の柔軟性の低下により、該骨格筋の腱に掛かる牽引力(骨格筋を該骨格筋が付着している骨から引き離そうとする力)が強くなる結果、腱炎や剥離骨折が起きる可能性もある。更に、骨格筋の柔軟性が低下した状態での運動では、該骨格筋が付着した骨により構成される関節において骨位置がずれ易くなる結果、関節内での圧迫摩擦等による関節軟骨の損傷や関節包炎が起こり易くなる。
【0039】
以上のような骨格筋の動きの特性を踏まえ、該骨格筋の疲労の軽減やスポーツ障害の予防を目的としてコンディショニングウェアが着用される。その一方で、コンディショニングウェアの着用者が該コンディショニングウェアを着用したままの状態で運動する場合、該コンディショニングウェアの緊締力によってサポートされる筋肉は、当該緊締力を受けながらも前記着用者の目的とする運動に適合するように伸縮できることが求められる。
【0040】
しかし、従来のコンディショニングウェアは、関節を確実に固定する(関節の、ある方向への動きを制限する)等の目的のために骨格筋全域に強い緊締力を付与するものであった。このため、骨格筋の膨張や伸縮が過度に制限され、前記骨格筋が本来の筋力を発揮することができなくなる虞があった。また、骨格筋の伸縮が過度に制限される結果、腕や脚の可動範囲が狭くなり、着用者に動き難さを感じさせてしまっていた。
【0041】
一方、骨格筋に付与する緊締力が弱くしてしまうと、該骨格筋の起始部、及び、起始部が付着する関節が固定され難くなり振れ易くなってしまう。そして、着用者が運動する間に筋肉の起始部が振れてしまうと、該筋肉はその伸展方向に伸展し難くなり、更に該筋肉の動きの支点が定まらなくなってしまう。このため、運動中の着用者の体勢(フォーム)が崩れ易くなり、崩れた体勢のまま運動を継続すると、筋肉の柔軟性が失われ(すなわち、筋肉が硬くなり)、筋肉疲労を起こし易くなってしまう。かかる場合には、上述のスポーツ障害を誘発する虞もある。
【0042】
これに対し、本実施形態のコンディショニングウェア(すなわち、トップス10及びパンツ20)は、異なる強さの緊締力を骨格筋に付与する3種類の部分を備え、各部分の配置が前述のように設定されている。この結果、本実施形態のコンディショニングウェアが人体に着用された際、該人体の骨格筋に付与される緊締力は、該骨格筋の部位に応じて変わることになる。
【0043】
具体的に説明すると、本実施形態では、コンディショニングウェアが人体に着用された際に、第一部分が、該人体の骨格筋の起始部に対応する位置に位置して、緊締力を該起始部に付与し、第二部分が、前記第一部分により緊締力が付与される前記骨格筋の起始部と、該骨格筋の停止部と、の間の筋肉部分(所謂、筋腹)に対応する位置に位置して、前記第一部分が前記起始部に付与する緊締力よりも小さい緊締力を前記筋肉部分に付与する。
【0044】
このように、本実施形態では、骨格筋の起始部は第一部分によって緊締力が付与されるため、当該起始部は、より強い緊締力によって制動される(つまり、固定される)。これにより、骨格筋の動きの支点が定まる。この結果、前記骨格筋が正常な可動範囲内において動く(筋収縮する)ようになる。換言すると、骨格筋の動きの支点であり該骨格筋の起始部が付着する関節の位置が定まることにより、当該関節を構成する骨に付着した前記骨格筋の停止部が適切に動く結果、該停止部が付着した前記骨も正常に動くようになる。さらに、筋肉は、該筋肉の起始部が固定されると、該筋肉の伸展方向に伸展し易くなるという生理学的性質を有している。
【0045】
以上の効果により、第一部分によって起始部に緊締力が付与された骨格筋は、当該骨格筋の本来の伸張力を発揮することが可能となる。骨格筋は本来の伸張力を発揮できれば効率良く筋収縮するため、該骨格筋の疲労を軽減することが可能となる。他方、骨格筋の筋腹は第二部分によって緊締力が付与されるため、該筋腹を緊締する力が弱くなり、該筋腹が緊締力に抗して膨張し易くなる。この結果、筋腹は効率良く筋力を生み出すことが可能になる。
【0046】
以上の結果、骨格筋は、柔軟に伸縮して本来の筋力を発揮することが可能になる。特に、骨格筋が痛み易いエキセントリック伸縮では、該骨格筋へのダメージを軽減することが可能になる。このように、骨格筋が正常な可動範囲内で柔軟に伸縮することが可能になることにより、当該骨格筋の動きが着用者の目的とする運動に適合するようになり、以って、骨格筋の疲労の軽減やスポーツ障害の予防を図ることが可能になる。以下、上記の内容について、トップス10とパンツ20とに分けて具体的に説明する。
【0047】
<<トップス10がサポートする骨格筋と該骨格筋に付与される緊締力との関係>>
本実施形態のトップス10がサポートする骨格筋と、該骨格筋に付与される緊締力と、の関係について説明する。
【0048】
本実施形態のトップス10は、人体(具体的には人体の上半身)に着用された際に該人体の骨格筋に緊締力を付与する。そして、上半身の骨格筋のうち、大胸筋、広背筋、及び、棘下筋については、その起始部がトップス10の第一部分によって緊締力を付与され、その筋腹がトップス10の第二部分によって、第一部分が起始部に付与する緊締力よりも弱い緊締力を付与される。この結果、トップス10を着用することにより、大胸筋、広背筋、及び、棘下筋の各々が適切に伸縮し、体幹や上肢帯の動きが着用者の目的とする運動に適合するようになる。以下、大胸筋、広背筋、及び、棘下筋の各骨格筋について、その役割と、該骨格筋に緊締力を付与する部分(すなわち、第一部分及び第二部分)と、該緊締力が前記骨格筋に及ぼす作用と、を説明する。
【0049】
<大胸筋のケースについて>
先ず、大胸筋のケースについて、図6A及び図6Bと、図7A及び図7Bとを参照しながら説明する。図6Aは、大胸筋を示す骨格筋図である。図6Bは、トップス10のうち、大胸筋に緊締力を付与する部分を示した図である。図7A及び図7Bは、大胸筋に緊締力を付与する部分が該大胸筋に及ぼす作用についての説明図である。
【0050】
大胸筋は、図6Aに示すように、人体の腹側に位置し、その起始部を胸骨、第2〜第6肋軟骨、及び、鎖骨に有し、その停止部を上腕骨の大結節稜に有する筋肉である。この大胸筋は、肩前方を保護しながら腕を前方に振る動作(例えば、投球動作であり、以下、スウィング動作)においてパワーを発揮する。また、大胸筋は、スウィング動作の準備動作として行われるテイクバック動作(腕を後方に引く動作)において上腕骨を介して腕を支える。このとき、大胸筋は、腕の重みによる負荷を受けながらエキセントリック収縮をする(伸展する)。また、大胸筋は、テイクバック動作からスウィング動作(具体的には、後方に引いた腕を前方に勢いを付けながら出すアクセレーション動作)にかけてコンセントリック収縮する。そして、大胸筋は、スウィング動作からフォロー動作(例えば、投球動作においてボールをリリースした位置から更に下側に腕を振り下ろす動作)にかけてコンセントリック収縮の状態を維持する。
【0051】
そして、大胸筋は、図6Bに示すように、トップス10が着用された際に、該トップス10の前面において大胸筋に対応する位置に位置する部分によってサポートされる。具体的に説明すると、大胸筋の起始部に対応する位置(より具体的には、大胸筋の起始部の面積の半分以上に亘った範囲、に対応する位置)に、強緊締部の部分a11が位置しており、大胸筋の起始部は当該部分a11により緊締力を付与される。一方、大胸筋の筋腹に対応する位置(より具体的には、大胸筋の筋腹の面積の半分以上に亘った範囲、に対応する位置)に、弱筋締部の部分c11及びc13が位置しており、大胸筋の筋腹は当該部分c11及びc13により緊締力を付与される。したがって、大胸筋のケースにおいては、強緊締部の部分a11が第一部分に相当し、弱緊締部の部分c11及びc13が第二部分に相当する。
【0052】
さらに、本実施形態のトップス10では、大胸筋の停止部に対応する位置に、中緊締部の部分b11が位置している。ここで、第二部分よりも伸縮度合いが小さく、コンディショニングが人体に着用された際に、骨格筋の停止部に対応する位置に位置して、第二部分が筋腹に付与する緊締力よりも大きい緊締力を前記停止部に付与する部分を第三部分とする。大胸筋のケースでは、大胸筋の停止部に対応する位置に位置し、弱緊締部の部分c11及びc13よりも強い緊締力を該停止部に付与する中緊締部の部分b11が、第三部分に相当することになる。
【0053】
以上のように、大胸筋のケースでは、その筋腹に最も弱い緊締力が付与される一方、その起始部には最も強い緊締力が付与されることになる。これにより、大胸筋は、正常な可動範囲において柔軟に伸縮することが可能になる。さらに、大胸筋の停止部には、筋腹に付与された緊締力よりも強い緊締力が付与される結果、該停止部も制動されて固定されることになる。これにより、大胸筋は、腕を後方に引く動作において、その伸展方向に更に伸び易くなる。以上の結果、トップス10の着用者がスウィング動作における一連の動作(すなわち、テイクバック動作、アクセレーション動作、及び、フォロー動作)を行う場合、大胸筋は、これらの動作に適合するように伸縮するようになる。特に、スウィング動作において、大胸筋は、コンセントリック収縮し易くなるため、スウィング動作に要する筋力を効率良く生み出すことが可能になる。
【0054】
また、スウィング動作前のテイクバック動作において、大胸筋は、図7A中、破線矢印にて示す方向にエキセントリック収縮する(伸展する)一方で、大胸筋に付与される緊締力により、伸展する方向とは逆の方向(図7A中、実線矢印にて示す方向)に引っ張られる。これにより、大胸筋がエキセントリック収縮する際に過度に伸張するのを抑制することが可能になる。一方、図7Bに示すように、大胸筋は、スウィング動作において、コンセントリック収縮の方向(図7B中、破線矢印にて示す方向)と同一の方向に引っ張られる。これにより、大胸筋がエキセントリック収縮した状態からコンセントリック収縮し易くなり、テイクバック動作からスウィング動作への切替えを速やかに行うことが可能となる(すなわち、後方に引いた腕を素早く前方に振り出すことが可能になる)。
【0055】
さらに、大胸筋が、該大胸筋に付与される緊締力により、図8において破線矢印にて示す方向に引っ張られる結果、トップス10の着用者の円背姿勢を矯正することも可能になる。円背姿勢では肩甲骨が正常な位置よりも人体の中心(すなわち、背骨)から離れた位置にあり(つまり、肩甲骨が外転した状態にあり)、大胸筋が収縮した状態となっている。これに対し、本実施形態のトップス10を着用すれば、大胸筋が図8に実線矢印にて示す方向に引っ張られることにより、該大胸筋の伸展力が刺激される。この結果、大胸筋がその伸展方向(図8中、実線矢印にて示す方向)に伸び、肩甲骨が人体の中心に向かって正常な位置に戻り(つまり、内転して)円背姿勢が改善されることになる。なお、図8は、本実施形態のトップス10による、円背姿勢の矯正についての説明図である。
【0056】
<広背筋のケース>
次に、広背筋のケースについて、図9A及び図9Bと、図10A及び図10Bとを参照しながら説明する。図9Aは、広背筋を示す骨格筋図である。図9Bは、トップス10のうち、広背筋に緊締力を付与する部分を示した図である。図10A及び図10Bは、広背筋に緊締力を付与する部分が該広背筋に及ぼす作用についての説明図である。
【0057】
広背筋は、図9Aに示すように、人体の背側に位置し、その起始部を第6胸椎以降の椎骨の棘突起、腸骨稜、及び、仙骨に有し、その停止部を上腕骨の小結節稜に有する筋肉である。広背筋は、スウィング動作において大胸筋の拮抗筋となる(すなわち、大胸筋とは相反する筋収縮をすることによりスウィング動作を実現する)。このため、広背筋は、スウィング動作(アクセレーション動作からフォロー動作)においてエキセントリック収縮する。一方、広背筋は、テイクバック動作においてコンセントリック収縮する。
【0058】
そして、広背筋は、図9Bに示すように、トップス10が着用された際に、該トップス10の背面において広背筋に対応する位置に位置する部分によってサポートされる。具体的に説明すると、広背筋の起始部に対応する位置(より具体的には、広背筋の起始部の面積の半分以上に亘った範囲、に対応する位置)に、強緊締部の部分a18及びa19が位置しており、広背筋の起始部は当該部分a18及びa19により緊締力を付与される。一方、広背筋の筋腹に対応する位置(より具体的には、広背筋の起始部の面積の半分以上に亘った範囲、に対応する位置)に、弱緊締部の部分c14及びc15が位置しており、広背筋の筋腹は当該部分c14及びc15により緊締力を付与される。さらに、広背筋の停止部に対応する位置に、中緊締部の部分b11が位置しており、広背筋の停止部は当該部分b11により緊締力を付与される。したがって、広背筋のケースにおいては、強緊締部の部分a18及びa19が第一部分に相当し、弱緊締部の部分c14及びc15が第二部分に相当し、中緊締部の部分b11が第三部分に相当する。
【0059】
以上のように、広背筋のケースでは、その筋腹に最も弱い緊締力が付与される一方、その起始部には最も強い緊締力が付与される。また、広背筋の停止部には、該広背筋の筋腹に付与された緊締力よりも強い緊締力が付与される。これにより、広背筋は、正常な可動範囲において柔軟に伸縮することが可能になる。これにより、広背筋は、アクセレーション動作からフォロー動作にかけて、その伸展方向(図10B中、破線矢印にて示す方向)に伸展し易くなる(すなわち、エキセントリック収縮し易くなる)。この結果、トップス10の着用者は、スムーズにスウィング動作を行うことが可能になる。また、テイクバック動作時において、広背筋は、図10A中、破線矢印にて示す方向に収縮(コンセントリック収縮)する一方、広背筋に付与される緊締力により、収縮方向と同一の方向(図10A中、実線矢印にて示す方向)に引っ張られる。これにより、広背筋は、コンセントリック収縮し易くなる。
【0060】
<棘下筋のケース>
次に、棘下筋のケースについて、図11A及び図11Bと、図12A及び図12Bとを参照しながら説明する。図11Aは、棘下筋を示す骨格筋図である。図11Bは、トップス10のうち、棘下筋に緊締力を付与する部分を示した図である。なお、図を簡略化するために、図11A及び図11Bでは、棘下筋及びその起始部、停止部を片側のみ図示することとした。図12A及び図12Bは、棘下筋に緊締力を付与する部分が該棘下筋に及ぼす作用についての説明図である。
【0061】
棘下筋は、図11Aに示すように、人体の背側に位置し、その起始部を肩甲骨の棘下窩に有し、その停止部を上腕骨の大結節に有する筋肉である。この棘下筋は、肩関節の外旋動作(図12A中、二重線矢印にて示す方向に上腕骨が動く動作)及び内旋動作(外旋動作とは反対の方向に上腕骨が動く動作)を実現する筋肉である。棘下筋は、テイクバック動作時において肩関節が外旋動作を行う際にコンセントリック収縮し、アクセレーション動作からフォロー動作にかけて肩関節が内旋動作を行う際にエキセントリック収縮する。
【0062】
そして、棘下筋は、図11Bに示すように、トップス10が着用された際に、該トップス10の背面において棘下筋に対応する位置に位置する部分によってサポートされる。具体的に説明すると、棘下筋の起始部に対応する位置(より具体的には、棘下筋の起始部全体に亘る範囲、に対応する位置)に強緊締部の部分a17が位置している。つまり、棘下筋の起始部は当該部分a17により緊締力を付与される。一方、棘下筋の筋腹に対応する位置に、弱緊締部の部分c15が位置している。つまり、棘下筋の筋腹は当該部分c15により緊締力を付与される。また、棘下筋の停止部に対応する位置には、中緊締部の部分b11が位置している。つまり、棘下筋の停止部は当該部分b11により緊締力を付与される。したがって、棘下筋のケースにおいては、強緊締部の部分a17が第一部分に相当し、弱緊締部の部分c15が第二部分に相当し、中緊締部の部分b11が第三部分に相当する。
【0063】
以上のように、棘下筋のケースでは、その筋腹に最も弱い緊締力が付与され、その起始部には最も強い緊締力が付与される。また、棘下筋の停止部には、該棘下筋の筋腹に付与される緊締力よりも強い緊締力が付与される。これにより、棘下筋は、正常な可動範囲において柔軟に伸縮することが可能になる。この結果、棘下筋の動きは、肩の外旋動作及び内旋動作に適合するようになる。
【0064】
特に、アクセレーション動作からフォロー動作にかけて肩関節が内旋動作する際、棘下筋は、上腕骨が肩甲骨の棘下窩から離れないように該上腕骨の速度を減速させるためにエキセントリック収縮(伸展)するが、伸展方向(図12B中、破線矢印にて示す方向)に伸展し易くなっているため、上腕骨に対する減速効果を効果的に発揮することが可能である。また、このとき、棘下筋は、該棘下筋に付与される緊締力により、伸展方向とは逆の方向(図12B中、実線矢印にて示した方向)に引っ張られる。このため、棘下筋が過度に伸展するのを抑制し、以って、棘下筋の疲労を軽減し、該棘下筋に発生する障害(例えば、腱板炎)を予防することが可能になる。
【0065】
また、テイクバック動作において肩関節が外旋動作する際、棘下筋は、該棘下筋に付与される緊締力により、コンセントリック収縮の方向(図12A中、破線矢印にて示した方向)と同一の方向(図12A中、実線矢印にて示した方向)に引っ張られる。このため、棘下筋は、コンセントリック収縮し易くなり、テイクバック動作に要する筋力を効率良く生み出すことが可能になる。
【0066】
<<パンツ20がサポートする骨格筋と該骨格筋に付与される緊締力との関係>>
本実施形態のパンツ20がサポートする骨格筋と、該骨格筋に付与される緊締力と、の関係について説明する。
本実施形態のパンツ20は、人体(主に、人体の下半身)に着用された際に該人体の骨格筋に緊締力を付与する。そして、骨格筋のうち、大殿筋、ハムストリング筋、大腿直筋、縫工筋、腹直筋、及び、脊柱起立筋については、その起始部がパンツ20の第一部分によって緊締力を付与され、その筋腹がパンツ20の第二部分によって、第一部分が起始部に付与する緊締力よりも弱い緊締力を付与される。この結果、パンツ20を着用することにより、大殿筋、ハムストリング筋、大腿直筋、縫工筋、腹直筋、及び、脊柱起立筋の各々が適切に伸縮するようになり、下肢が着用者の目的とする運動に適合して動くようになる。以下、大殿筋、ハムストリング筋、大腿直筋、縫工筋、腹直筋、及び、脊柱起立筋の各骨格筋について、その役割と、該骨格筋に緊締力を付与する部分(すなわち、第一部分及び第二部分)と、該緊締力が前記骨格筋に及ぼす作用と、を説明する。
【0067】
<大殿筋のケースについて>
先ず、大殿筋のケースについて、図13A及び図13Bと、図14とを参照しながら説明する。図13Aは、大殿筋を示す骨格筋図である。図13Bは、パンツ20のうち、大殿筋に緊締力を付与する部分を示した図である。なお、図を簡略化するために、図13A及び図13Bでは、大殿筋及びその起始部、停止部を片側のみ図示することとした。図14は、大殿筋に緊締力を付与する部分が該大殿筋に及ぼす作用についての説明図である。
【0068】
大殿筋は、図13Aに示すように、人体の背側に位置し、起始部を腸骨外唇、仙骨、及び、尾骨に有し、停止部を大腿骨の殿筋粗面に有する筋肉である。この大殿筋は、股関節の伸展動作(後方に脚を振る動作)においてコンセントリック収縮をしてパワーを発揮する筋肉である。また、股関節の屈曲動作(前方に脚を振り出す動作)において脚が着地する際、着地脚側の大殿筋はエキセントリック収縮をする。
【0069】
そして、大殿筋は、図13Bに示すように、パンツ20が着用された際に、該パンツ20の後面において大殿筋に対応する位置に位置する部分によってサポートされる。具体的に説明すると、大殿筋の起始部に対応する位置(より具体的には、大殿筋の起始部の全体に亘る範囲、に対応する位置)に強緊締部の部分a21が位置しており、大殿筋の起始部は当該部分a21により緊締力を付与される。一方、大殿筋の筋腹に対応する位置(より具体的には、大殿筋の筋腹の面積の半分以上に亘った範囲、に対応する位置)に、弱緊締部の部分c21が位置しており、大殿筋の筋腹は当該部分c21により緊締力を付与される。また、大殿筋の停止部に対応する位置に、強緊締部の部分a26が位置しており、大殿筋の停止部は当該部分a26により緊締力を付与される。したがって、大殿筋のケースにおいては、強緊締部の部分a21が第一部分に相当し、弱緊締部の部分c21が第二部分に相当し、強緊締部の部分a26が第三部分に相当する。
【0070】
以上のように、大殿筋のケースでは、その起始部及び停止部に最も強い緊締力が付与される一方、その筋腹には、起始部及び停止部に付与される緊締力よりも弱い緊締力が付与される。これにより、大殿筋は、正常な可動範囲において柔軟に伸縮する結果、股関節の伸展動作及び屈曲動作に適合するように伸縮することが可能になる。
【0071】
また、大殿筋の筋腹については、筋肉量が多く、膨張した際の膨張量も大きくなることを考慮して、図13Bに示すように、大殿筋の筋腹に対応する位置には、主に弱緊締部の部分c21が位置している。つまり、大殿筋の筋腹の広範囲には、伸縮度合いが最も高い(すなわち、最も伸び易い)弱緊締部の緊締力が付与されるようになっている。これにより、大殿筋の筋腹が伸縮し易くなる結果、股関節が伸展動作及び屈曲動作を行い易くなる。特に、脚を後方に振り上げる際(すなわち、股関節が伸展動作をする際)、大殿筋は、コンセントリック収縮し易くなり、脚を後方に振り上げるための筋力を効率良く生み出すことが可能になる。以上のような効果によって、脚の振り出し幅(すなわち、歩幅)を拡げ、歩行速度を上昇させることが可能になる。
【0072】
さらに、本実施形態では、図13Bから分かるように、第二部分である弱緊締部の部分c21が、大殿筋の起始部から停止部へ向かう方向(図13B中、矢印にて示す方向)と交差する交差方向において、筋腹の一端から他端(大殿筋の筋腹の一端及び他端については、図13Bを参照)に亘る範囲に対応する位置に位置している。ここで、交差方向とは、筋腹の筋線維方向とも交差する方向である。つまり、本実施形態のパンツ20では、大殿筋の筋線維と交差する方向の一端から他端に亘って、大殿筋の起始部及び停止部に付与される緊締力よりも弱い緊締力を、該大殿筋の筋腹に付与する部分が存在する。筋肉は、膨張する際に、当該筋肉の筋線維と交差する方向に拡がるため、筋線維と交差する方向における筋腹の一端から他端に亘って該筋腹に付与する緊締力が弱くなるほど、該筋腹は膨張し易くなる。したがって、第二部分である部分c21が、大殿筋の起始部から停止部へ向かう方向と交差する交差方向において、筋腹の一端から他端に亘る範囲に対応する位置に位置することにより、大殿筋の筋腹は、より膨張し易くなる。これにより、大殿筋は、コンセントリック収縮し易く、筋力をより効率良く生み出せるようになる。
【0073】
なお、起始部から停止部へ向かう方向と交差する交差方向とは、該起始部から停止部へ向かう方向と直角をなす方向のみならず、該起始部から停止部へ向かう方向と直角以外の角度をなす方向も含む。
【0074】
また、股関節の屈曲動作において、大殿筋は、該大殿筋に付与される緊締力により、エキセントリック収縮の方向(すなわち、伸展方向であり、図14中、破線矢印にて示す)とは逆方向(図14中、破線矢印にて示す方向)に引っ張られる。これにより、大殿筋は、エキセントリック収縮した状態からコンセントリック収縮し易くなる。この結果、屈曲した股関節は、次の動作、すなわち、伸展動作を速やかに行うことが可能になる。さらに、大殿筋が伸展方向とは逆方向に引っ張られることにより、該大殿筋が過度に伸展するのを抑制することが可能になる。
【0075】
<ハムストリング筋のケース>
次に、ハムストリング筋のケースについて、図15A及び図15Bと、図16A及び図16Bと、図17A及び図17Bと、図18A乃至図18Cとを参照しながら説明する。
【0076】
図15Aは、大腿二頭筋長頭を示す骨格筋図である。図15Bは、パンツ20のうち、大腿二頭筋長頭に緊締力を付与する部分を示した図である。図16Aは、半膜様筋を示す骨格筋図である。図16Bは、パンツ20のうち、半膜様筋に緊締力を付与する部分を示した図である。図17Aは、半腱様筋を示す骨格筋図である。図17Bは、パンツ20のうち、半腱様筋に緊締力を付与する部分を示した図である。なお、図を簡略化するために、上記の各図では、ハムストリング筋及びその起始部、停止部を片側のみ図示することとした。図18A乃至図18Cは、ハムストリング筋に緊締力を付与する部分が該ハムストリング筋に及ぼす作用についての説明図である。
【0077】
ハムストリング筋は、人体の背側に位置し、図15Aに示す大腿二頭筋長頭と、図16Aに示す半膜様筋と、図17Aに示す半腱様筋と、を有する。このハムストリング筋は、股関節の伸展動作や膝関節の屈曲動作においてコンセントリック収縮してパワーを発揮する。また、脚を前方に振り出して該脚が着地する際、着地脚側のハムストリング筋は、エキセントリック収縮する。
【0078】
大腿二頭筋長頭は、図15Aに示すように、起始部を坐骨結節に、停止部を腓骨頭にそれぞれ有する。大腿二頭筋短頭は、起始部を大腿骨粗線に、停止部を腓骨頭にそれぞれ有し、大腿二頭筋長頭と合流している。半膜様筋は、図16Aに示すように、起始部を坐骨結節に、停止部を脛骨内側顆に有する。半腱様筋は、図17Aに示すように、起始部を坐骨結節に、停止部を脛骨内側の鵞足にそれぞれ有する。
【0079】
そして、ハムストリング筋は、図15B、図16B及び図17Bに示すように、パンツ20が着用された際に、該パンツ20の背面においてハムストリング筋に対応する位置に位置する部分によってサポートされる。具体的に説明すると、大腿ニ頭筋長頭、半膜様筋、及び、半腱様筋の各々の起始部に対応する位置(より具体的には、大腿ニ頭筋長頭、半膜様筋、及び、半腱様筋の各々の起始部の全体に亘る範囲、に対応する位置)には、強緊締部の部分a26が位置している。つまり、ハムストリング筋の起始部は、部分a26により緊締力を付与される。一方、ハムストリング筋の筋腹に対応する位置には、中緊締部の部分b25が位置している。つまり、ハムストリング筋の筋腹は、当該部分b25により緊締力を付与される。したがって、ハムストリング筋のケースでは、強緊締部の部分a26が第一部分に相当し、中緊締部の部分b25が第二部分に相当する。
【0080】
以上のように、ハムストリング筋のケースでは、起始部に付与される緊締力が最も強く、筋腹に付与される緊締力が、前記起始部に付与される緊締力よりも弱くなっている。これにより、ハムストリング筋は、正常な可動範囲において柔軟に伸縮するようになる結果、股関節の伸展動作及び屈曲動作、膝関節の伸展動作及び屈曲動作にそれぞれ適合するように伸縮することが可能になる。
【0081】
そして、ハムストリング筋の柔軟性が向上する結果、該ハムストリング筋は、図18A中、破線矢印にて示す方向にエキセントリック収縮(伸展)し易くなる。この結果、ハムストリング筋のエキセントリック収縮により実現される、股関節の屈曲動作が速やかに行われるようになる。また、股関節の屈曲動作において、ハムストリング筋は、該ハムストリング筋に付与される緊締力により、伸展方向とは逆の方向(図18A中、実線矢印にて示す方向)に引っ張られる。これにより、エキセントリック収縮した状態のハムストリング筋は、速やかにコンセントリック収縮することが可能となる。この結果、屈曲した股関節が速やかに伸展動作を行うようになる。以上のような効果によって、脚の振り出し幅を拡げ、歩行速度を上昇させることが可能になる。
【0082】
さらに、ハムストリング筋が伸展方向とは逆方向に引っ張られることにより、例えば、図18Bに示すように、脚を大きく前方に踏み出した際、当該脚側のハムストリング筋が過度に伸展するのを抑制することが可能になる。この結果、ハムストリング筋に発生する障害(たとえば、ハムストリング筋の起始部が付着する坐骨結節、における腱の炎症や剥離骨折)を予防することが可能になる。
【0083】
一方、股関節の伸展動作において、ハムストリング筋は、該ハムストリング筋に付与される緊締力により、コンセントリック収縮の方向(図18C中、破線矢印にて示す方向)と同一の方向(図18C中、実線矢印にて示す方向)に引っ張られる。これにより、ハムストリング筋は、コンセントリック収縮し易くなり、筋力を効率良く生み出すことが可能になる。
【0084】
また、図15B、図16B、図17Bから分かるように、第二部分である中緊締部の部分b25が、大腿ニ頭筋長頭、半膜様筋、及び、半腱様筋の各々の起始部から停止部へ向かう方向(図15B、図16B、図17B中、矢印にて示す方向)と交差する交差方向において、当該各々の筋腹の一端から他端に亘る範囲(各々の筋腹の一端及び他端については、図15B、図16B、図17Bを参照)に対応する位置に位置している。これにより、ハムストリング筋は、より膨脹し易くなり、股関節の伸展動作に要する筋力をより効率良く生み出すことが可能になる。
【0085】
<大腿直筋及び縫工筋のケース>
次に、大腿直筋及び縫工筋のケースについて、図19A及び図19Bと、図20A及び図20Bと、図21A及び図21Cと、を参照しながら説明する。
【0086】
図19Aは、大腿直筋を示す骨格筋図である。図19Bは、パンツ20のうち、大腿直筋に緊締力を付与する部分を示した図である。図20Aは、縫工筋を示す骨格筋図である。図20Bは、パンツ20のうち、縫工筋に緊締力を付与する部分を示した図である。なお、図を簡略化するために、上記の各図では、大腿直筋、縫工筋、及び、これらの起始部、停止部を片側のみ図示することとした。図21A乃至図21Cは、大腿直筋及び縫工筋に緊締力を付与する部分が該大腿直筋及び縫工筋に及ぼす作用についての説明図である。
【0087】
大腿直筋及び縫工筋は、いずれも、人体の腹側に位置し、股関節の伸展動作及び屈曲動作、膝関節の伸展動作及び屈曲動作を実現するための筋肉である。これらの筋肉は、股関節の屈曲動作及び膝関節の伸展動作においてコンセントリック収縮し、股関節の伸展動作及び膝関節の屈曲動作においてエキセントリック収縮する。大腿直筋は、図19Aに示すように、起始部を寛骨の下前腸骨棘に、停止部を脛骨結節にそれぞれ有する。縫工筋は、図20Aに示すように、起始部を寛骨の上前腸骨棘に、停止部を脛骨内側の鵞足にそれぞれ有する。
【0088】
そして、大腿直筋及び縫工筋の各々は、図19B及び図20Bに示すように、パンツ20が着用された際に、該パンツ20の前面において大腿直筋及び縫工筋の各々に対応する位置に位置する部分によってサポートされる。具体的に説明すると、大腿直筋の起始部に対応する位置(より具体的には、大腿直筋の起始部全体に亘る範囲、に対応する位置)、及び、縫工筋の起始部に対応する位置(より具体的には、縫工筋の起始部全体に亘る範囲、に対応する位置)には、強緊締部の部分a24が位置している。このため、大腿直筋及び縫工筋の各々の起始部は、前記部分a24により緊締力を付与される。一方、大腿直筋の筋腹に対応する位置、及び、縫工筋の筋腹に対応する位置には、中緊締部の部分b23が位置しており、大腿直筋及び縫工筋の各々の筋腹は、当該部分b23により緊締力を付与される。したがって、大腿直筋及び縫工筋のケースでは、強緊締部の部分a24が第一部分に相当し、中緊締部の部分b23が第二部分に相当する。
【0089】
以上のように、大腿直筋及び縫工筋のケースでは、起始部に付与される緊締力が最も強く、筋腹に付与される緊締力は、起始部に付与される緊締力よりも弱くなっている。これにより、大腿直筋及び縫工筋の各々は、正常な可動範囲において柔軟に伸縮する結果、股関節の伸展動作及び屈曲動作、膝関節の伸展動作及び屈曲動作にそれぞれ適合するように伸縮することが可能になる。
【0090】
そして、大腿直筋及び縫工筋の各々の柔軟性が向上する結果、大腿直筋及び縫工筋は、伸展方向(図21A中、破線矢印にて示す方向)に伸展し易くなる(エキセントリック収縮し易くなる)。このため、大腿直筋及び縫工筋のエキセントリック収縮により実現される、股関節の伸展動作がスムーズに行われるようになる。
【0091】
また、股関節の伸展動作において、大腿直筋及び縫工筋は、該大腿直筋及び縫工筋に付与される緊締力により、伸展方向とは逆の方向(図21A中、実線矢印にて示す方向)に引っ張られる。これにより、大腿直筋及び縫工筋が過度に伸展することを抑制し、以って、該大腿直筋及び縫工筋に発生する障害(たとえば、大腿直筋及び縫工筋の起始部が付着する前腸骨棘、における剥離骨折等)を予防することが可能になる。かかる効果は、図21Cに示すように脚を前方に大きく踏み出して膝を屈曲させる動作において大腿直筋及び縫工筋がエキセントリック収縮する場合に、特に有効である。
【0092】
また、図21Bに示すように脚を振り上げて膝を屈曲させる動作において、大腿直筋及び縫工筋は、コンセントリック収縮する。このとき、大腿直筋及び縫工筋に付与される緊締力により、該大腿直筋及び縫工筋は、収縮方向(図21B中、破線矢印にて示す方向)と同一の方向(図21B中、実線矢印にて示す方向)に引っ張られる。これにより、大腿直筋及び縫工筋は、コンセントリック収縮し易くなり、脚の重みを支えるのに十分な筋力を効率良く筋力を生み出すことが可能になる。
【0093】
また、本実施形態では、図19Bから分かるように、第二部分である中緊締部の部分b23が、大腿直筋の起始部から停止部へ向かう方向(図19B中、矢印にて示す方向)と交差する交差方向において、該大腿直筋の筋腹の一端から他端(当該筋腹の一端及び他端については、図19B参照)に亘る範囲に対応する位置に位置している。また、前記部分b23は、図20Bから分かるように、縫工筋の起始部から停止部へ向かう方向(図20B中、矢印にて示す方向)と交差する交差方向において、該縫工筋の筋腹の一端から他端(当該筋腹の一端及び他端については、図20B参照)に亘る範囲に対応する位置に位置している。これにより、大腿直筋及び縫工筋は、より膨脹し易くなり、前記筋力をより効率良く生み出すことが可能になる。以上のような効果によって、脚の振り上げ量、及び、振り上げ速度を大きくし、歩行速度を上昇させることが可能になる。
【0094】
<腹直筋のケース>
次に、腹直筋のケースについて、図22A及び図22Bと、図23A及び図23Bと、を参照しながら説明する。図22Aは、腹直筋を示す骨格筋図である。図22Bは、パンツ20のうち、腹直筋に緊締力を付与する部分を示した図である。なお、図を簡略化するために、図22A及び図22Bでは、腹直筋、及び、該腹直筋の起始部、停止部を片側のみ図示することとした。図23A及び図23Bは、腹直筋に緊締力を付与する部分が該腹直筋に及ぼす作用についての説明図である。
【0095】
腹直筋は、人体の腹側に位置し、図22Aに示すように、起始部を恥骨結合に、停止部を胸骨の剣状突起、及び、第5〜第7肋軟骨にそれぞれ有する筋肉である。腹直筋は、スウィング動作中のフォロー動作等において体幹が屈曲する(前屈みになる)際、コンセントリック収縮する。また、腹直筋は、体幹が伸展する(反り返る)際にエキセントリック収縮する。
【0096】
そして、腹直筋は、図22Bに示すように、パンツ20が着用された際に該パンツ20の前面において腹直筋に対応する位置に位置する部分によってサポートされる。具体的に説明すると、腹直筋の起始部に対応する位置(より具体的には、腹直筋の起始部全体に亘る範囲、に対応する位置)に、強緊締部の部分a24が位置している。つまり、腹直筋の起始部は当該部分a24により緊締力を付与される。一方、腹直筋の筋腹に対応する位置には、中緊締部の部分b21及びb22が位置している。つまり、腹直筋の筋腹は当該部分b21及びb22により緊締力を付与される。したがって、腹直筋のケースでは、強緊締部の部分a24が第一部分に相当し、中緊締部の部分b21及びb22が第二部分に相当する。
【0097】
以上のように、腹直筋のケースでは、起始部に最も強い緊締力が付与される一方、筋腹に、前記起始部に付与される緊締力よりも弱い緊締力が付与される。これにより、腹直筋は、正常な可動範囲において柔軟に伸縮するようになる。具体的に説明すると、腹直筋の起始部が付着した骨盤が安定し、体幹が骨盤を支点として適切に動くようになる。
【0098】
そして、腹直筋は、その柔軟性が向上したことにより、伸展方向(図23A中、破線矢印にて示す方向)に伸展し易くなる(エキセントリック収縮し易くなる)。この結果、例えば、図23Aに示すようなテイクバック動作において、体幹が伸展し易くなる。ここで、スウィング動作中、テイクバック動作からアクセレーション動作及びフォロー動作にかけて、腕が振り下ろされると同時に、体幹が伸展状態から屈曲し、かつ、回旋する(体の正面が前方を向くように捻られる)。このため、スウィング動作の速度は、体幹の動き分、加速されることになる。本実施形態では、テイクバック動作において体幹が伸展し易くなるため、スウィング動作の速度をより大きくすることが可能になる。
【0099】
また、テイクバック動作において、腹直筋は、該腹直筋に付与される緊締力により、伸展方向とは逆の方向(図23A中、実線矢印にて示す方向)に引っ張られる。これにより、腹直筋は、エキセントリック収縮した状態から速やかにコンセントリック収縮することが可能になる。この結果、スウィング動作中、テイクバック動作からアクセレーション動作への切替えがスムーズに行われるようになる。
【0100】
一方、スウィング動作中のアクセレーション動作及びフォロー動作において、腹直筋は、図23Bに示すように、該腹直筋に付与される緊締力により、コンセントリック収縮の方向(図23B中、破線にて示す方向)と同一の方向(図23B中、実線にて示す方向)に引っ張られる。この結果、アクセレーション動作及びフォロー動作において、腹直筋はコンセントリック収縮し易く、アクセレーション動作及びフォロー動作に要する筋力を効率良く生み出すことが可能になる。さらに、図22Bから分かるように、第二部分である中緊締部の部分b21が、腹直筋の起始部から停止部へ向かう方向(図22B中、矢印にて示す方向)と交差する交差方向において、該腹直筋の筋腹の一端から他端(当該筋腹の一端及び他端については、図22B参照)に亘る範囲に対応する位置に位置している。この結果、腹直筋はより膨脹し易くなり、筋力をより効率良く生み出すことが可能になる。
【0101】
<脊柱起立筋のケース>
次に、脊柱起立筋のケースについて、図24A及び図24Bと、図25A乃至図25Cと、を参照しながら説明する。図24Aは、脊柱起立筋を示す骨格筋図である。図24Bは、パンツ20のうち、脊柱起立筋に緊締力を付与する部分を示した図である。なお、図を簡略化するために、図24Bでは、脊柱起立筋、及び、該脊柱起立筋の起始部、停止部を片側のみ図示することとした。図25A乃至図25Cは、脊柱起立筋に緊締力を付与する部分が該脊柱起立筋に及ぼす作用についての説明図である。
【0102】
脊柱起立筋は、人体の背側において脊柱を支持して姿勢を維持するための筋肉であり、図24Aに示すように、起始部を仙骨及び腸骨稜に、停止部を胸郭部の上位胸椎にそれぞれ有する。脊柱起立筋は、体幹が屈曲する際にはエキセントリック収縮し、体幹が伸展する際にはコンセントリック収縮する。
【0103】
そして、脊柱起立筋は、図24Bに示すように、パンツ20が着用された際に該パンツ20の後面において脊柱起立筋に対応する位置に位置する部分によってサポートされる。具体的に説明すると、脊柱起立筋の起始部に対応する位置(より具体的には、脊柱起立筋の起始部全体に亘る範囲、に対応する位置)に、強緊締部の部分a21及びa22が位置している。つまり、脊柱起立筋の起始部は、当該部分a21及びa22により緊締力を付与される。一方、脊柱起立筋の筋腹に対応する位置には、中緊締部の部分b26が位置している。つまり、脊柱起立筋の筋腹は、当該部分b26により緊締力を付与される。したがって、脊柱起立筋のケースでは、強緊締部の部分a21及びa22が第一部分に相当し、中緊締部の部分b26が第二部分に相当する。
【0104】
以上のように、脊柱起立筋のケースでは、起始部に最も強い緊締力が付与され、筋腹に、前記起始部に付与される緊締力よりも弱い緊締力が付与される。これにより、脊柱起立筋は、正常な可動範囲において柔軟に伸縮するようになる。具体的に説明すると、脊柱起立筋の起始部が付着した骨盤が安定し、体幹が骨盤を支点として適切に動くようになる。
【0105】
そして、脊柱起立筋は、その柔軟性が向上したことにより、屈曲方向(図25A中、破線矢印にて示す方向)にエキセントリック収縮(伸展)し易なる。この結果、体幹も屈曲し易くなるため、例えば、スウィング動作において体幹を速やかに屈曲させることが可能になる。これにより、より速いスウィング動作を実現することも可能になる。さらに、脊柱起立筋が伸縮し易くなることにより、図25Cに示すような動作(所謂、立位体前屈動作)において前屈度合いを大きくさせることが可能になる。
【0106】
また、テイクバック動作において体幹が伸展する際には、脊柱起立筋がコンセントリック収縮し易くなっているため、体幹が伸展し易くなる。さらに、このとき、脊柱起立筋は、該脊柱起立筋に付与される緊締力により、コンセントリック収縮の方向(図25B中、破線矢印にて示す方向)と同一の方向(図25B中、実線矢印にて示す方向)に引っ張られる。これにより、腹直筋は、速やかにコンセントリック収縮することが可能になり、テイクバック動作において体幹が更に伸展し易くなる。この結果、スウィング動作の速度を上昇させることが可能になる。
【0107】
<<強緊締部、中緊締部、及び、弱緊締部の形成方法>>
本実施形態のトップス10及びパンツ20の各々は、既に説明したように、筋肉の各部位に付与する緊締力を当該各部位に応じて変えるために、互いに伸縮度合いが異なる3種類の部分(すなわち、強緊締部、中緊締部、及び、弱緊締部)を備えている。そして、本実施形態では、トップス10及びパンツ20の各々の生地の編組織を切替えることにより(つまり、編み分けを行うことにより)、前記トップス10及びパンツ20の各々に前記3種類の部分を形成している。ここで、生地の編組織を切替える(編み分けを行う)とは、生地内における編目の密度(度目密度)、地糸や挿入糸の種類、及び、各種類の糸の存在比率を変えることである。
【0108】
以下、本実施形態のトップス10及びパンツ20の各々における、前記3種類の部分の形成方法について、図26A乃至図26Cを参照しながら説明する。図26Aは、強緊締部の編組織を示した図である。図26Bは、中緊締部の編組織を示した図である。図26Cは、弱緊締部の編組織を示した図である。なお、図26A乃至図26Cには、それぞれ、矢印にて、各編組織の縦方向(図中、コース方向)及び横方向(図中、ウェール方向)を示している。
【0109】
本実施形態では、トップス10及びパンツ20の生地が、無縫製型横編機によって製造される。そして、当該無縫製型横編機による生地の製造工程において、3種類の編み分けを行うことにより、完成した生地に、互いに伸縮度合いが異なる3種類の部分が形成される。本実施形態では、生地内の度目密度を3段階に変化させるとともに、編組織を作るために使用されるナイロン系繊維、及び、ポリウレタン系繊維(通称、スパンデックス)の各々の存在比率を3段階に変化させている。
【0110】
また、本実施形態では、生地内の度目密度を変化させる方法として、編組織を形成する際の針抜きを行う回数を変化させている。編組織を形成する際に針抜きを全く行わない場合には、前記編組織の縦方向の各部(コース)に連続した編目(ウェール)が並ぶ。一方、針抜きを行った場合、当該針抜きを行った箇所には編目が編成されず、該編目の並びが不連続になる。そして、各コースにおいてウェールが編成されない箇所が多い部分であるほど(すなわち、各コースを編成する際の針抜き回数が多い部分であるほど)、生地の収縮性が高くなる。したがって、本実施形態では、図26A乃至図26Cに示すように、各コースを編成する際の針抜き回数を、トップス10及びパンツ20の生地中、強緊締部に相当する部分の編組織において最も多くし、中緊締部に相当する部分の編組織において2番目に多くし、弱緊締部に相当する部分の編組織において最も少なくする(本実施形態では、弱緊締部に相当する部分の編組織については針抜きを行わない)。
【0111】
また、ナイロン系繊維及びポリウレタン系繊維の各々の存在比率については、より高弾性なポリウレタン系繊維の存在比率が高い部分ほど、生地の伸張抵抗が高くなる。したがって、本実施形態では、ポリウレタン系繊維の存在比率を、強緊締部に相当する部分の編組織において最も高くし、中緊締部に相当する部分の編組織において2番目に高くし、弱緊締部に相当する部分の編組織において最も低くする。
【0112】
以上のような編分けにより、トップス10及びパンツ20の各々の生地に、互いに伸縮度合いが異なる3種類の部分が形成されることになる。この結果、完成品であるトップス10やパンツ20には、強緊締部、中緊締部、及び、弱緊締部が備えられることになる。
【0113】
ところで、トップス10やパンツ20に、強緊締部、中緊締部、及び、弱緊締部を備える方法としては、上記の方法以外に、例えば、同一の編組織からなる生地(すなわち、編み分けを行っていない生地であり、以下、無変調生地)の裏側に、強緊締部、中緊締部、及び、弱緊締部の配置に応じて、他の生地を縫い付ける方法(所謂、裏打ち縫合)も考えられる。つまり、無変調生地の、強緊締部に相当する部分の裏側には、伸縮度合いが比較的小さい生地を縫い付け、前記無変調生地の、中緊締部に相当する部分の裏側には、伸縮度合いが比較的大きい生地を縫い付ける方法であってもよい。
【0114】
但し、無変調生地に他の生地を縫い付けて製造されたトップス10やパンツ20を着用すると、無変調生地の裏側に生地が重ねられた分、着用者の皮膚に対する着圧が強くなり、該着用者に圧迫感を与えてしまう。また、無変調生地の裏側に生地を縫い付けられることにより形成される縫い目が着用者の皮膚に押し付けられる結果、当該皮膚に前記縫い目の痕が付き、前記着用者に不快感を与えてしまう。
【0115】
これに対し、本実施形態のトップス10やパンツ20では、強緊締部、中緊締部、及び、弱緊締部が編み分けによって同一の生地に形成されているため、生地の縫い合わせによって生じる着圧の上昇が回避される。また、前述したように、本実施形態のトップス10やパンツ20の各々の生地は無縫製型横編機により製造されるため、裏打ち縫合の場合と比較して、縫い目の数が格段に少なくなる。このため、トップス10やパンツ20が着用された際に、該着用者の皮膚に縫い目の痕が付くのを抑制することが可能になる。したがって、本実施形態のトップス10やパンツ20は、着用された際に適宜な着用感を着用者に与え、長時間の着用に適したコンディショニングウェアである。
【0116】
===その他の実施例===
以上、上記の実施形態に基づきトップス10及びハーフパンツ20について説明したが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。特に、本発明の実施形態は、上記の実施形態における形状(トップス及びパンツの外形形状や、強緊締部、中緊締部、及び、弱緊締部の形状や配置等)や生地の材質に限定されるものではない。
【0117】
また、上記の実施形態では、トップス10が着用された際、該トップス10は、大胸筋、広背筋、及び、棘下筋の各々の骨格筋の起始部には第一部分の緊締力を付与し、当該各々の骨格筋の筋腹には第二部分の緊締力を付与することとした。また、パンツ20が着用された際、該パンツ20は、大殿筋、ハムストリング筋、大腿直筋、縫工筋、腹直筋、及び、脊柱起立筋の各々の起始部には第一部分の緊締力を付与し、当該各々の骨格筋の筋腹には第二部分の緊締力を付与することとした。但し、トップス10は、大胸筋、広背筋、及び、棘下筋のうちの少なくとも一つの骨格筋の起始部に第一部分の緊締力を付与し、当該少なくとも一つの骨格筋の筋腹に第二部分の緊締力を付与するものであればよい。また、パンツ20は、大殿筋、ハムストリング筋、大腿直筋、縫工筋、腹直筋、及び、脊柱起立筋のうちの少なくとも一つの骨格筋の起始部に第一部分の緊締力を付与し、当該少なくとも一つの骨格筋の筋腹に第二部分の緊締力を付与するものであればよい。さらに、トップス10及びパンツ20が、上記以外の骨格筋の起始部に第一部分の緊締力を付与し、当該骨格筋の筋腹に第二部分の緊締力を付与することとしてもよい。
【0118】
また、上記の実施形態では、人体に着用されることにより、主として、該人体の骨格筋に緊締力を付与するコンディショニングウェアについて説明した。但し、本発明のコンディショニングウェアは、人体に着用された際、該人体の、骨格筋以外の筋肉(例えば、表皮等に付着した筋肉であり、以下、非骨格筋と呼ぶ)に緊締力を付与することとしてもよい。かかるコンディショニングウェアにおいて、該コンディショニングウェアの第一部分が、前記非骨格筋の起始部に対応する位置に位置して該起始部に緊締力を付与し、前記コンディショニングウェアの第二部分が、前記第一部分により緊締力が付与される前記非骨格筋の筋腹に対応する位置に位置して、前記第一部分が前記起始部に付与する緊締力よりも小さい緊締力を前記筋腹に付与することとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】トップス10を前側(腹側)から見た図である。
【図2】トップス10を後側(背側)から見た図である。
【図3】パンツ20を前側(腹側)から見た図である。
【図4】パンツ20を後側(背側)から見た図である。
【図5】パンツ20を横から見た図である。
【図6】図6Aは、大胸筋を示す骨格筋図である。図6Bは、トップス10のうち、大胸筋に緊締力を付与する部分を示した図である。
【図7】図7A及び図7Bは、大胸筋に緊締力を付与する部分が該大胸筋に及ぼす作用についての説明図である。
【図8】トップス10による、円背姿勢の矯正についての説明図である。
【図9】図9Aは、広背筋を示す骨格筋図である。図9Bは、トップス10のうち、広背筋に緊締力を付与する部分を示した図である。
【図10】図10A及び図10Bは、広背筋に緊締力を付与する部分が該広背筋に及ぼす作用についての説明図である。
【図11】図11Aは、棘下筋を示す骨格筋図である。図11Bは、トップス10のうち、棘下筋に緊締力を付与する部分を示した図である。
【図12】図12A及び図12Bは、棘下筋に緊締力を付与する部分が該棘下筋に及ぼす作用についての説明図である。
【図13】図13Aは、大殿筋を示す骨格筋図である。図13Bは、パンツ20のうち、大殿筋に緊締力を付与する部分を示した図である。
【図14】図14は、大殿筋に緊締力を付与する部分が該大殿筋に及ぼす作用についての説明図である。
【図15】図15Aは、大腿二頭筋長頭を示す骨格筋図である。図15Bは、パンツ20のうち、大腿二頭筋長頭に緊締力を付与する部分を示した図である。
【図16】図16Aは、半膜様筋を示す骨格筋図である。図16Bは、パンツ20のうち、半膜様筋に緊締力を付与する部分を示した図である。
【図17】図17Aは、半腱様筋を示す骨格筋図である。図17Bは、パンツ20のうち、半腱様筋に緊締力を付与する部分を示した図である。
【図18】図18A乃至図18Cは、ハムストリング筋に緊締力を付与する部分が該ハムストリング筋に及ぼす作用についての説明図である。
【図19】図19Aは、大腿直筋を示す骨格筋図である。図19Bは、パンツ20のうち、大腿直筋に緊締力を付与する部分を示した図である。
【図20】図20Aは、縫工筋を示す骨格筋図である。図20Bは、パンツ20のうち、縫工筋に緊締力を付与する部分を示した図である。
【図21】図21A乃至図21Cは、大腿直筋及び縫工筋に緊締力を付与する部分が該大腿直筋及び縫工筋に及ぼす作用についての説明図である。
【図22】図22Aは、腹直筋を示す骨格筋図である。図22Bは、パンツ20のうち、腹直筋に緊締力を付与する部分を示した図である。
【図23】図23A及び図23Bは、腹直筋に緊締力を付与する部分が該腹直筋に及ぼす作用についての説明図である。
【図24】図24Aは、脊柱起立筋を示す骨格筋図である。図22Bは、パンツ20のうち、脊柱起立筋に緊締力を付与する部分を示した図である。
【図25】図25A乃至図25Cは、脊柱起立筋に緊締力を付与する部分が該脊柱起立筋に及ぼす作用についての説明図である。
【図26】図26Aは、強緊締部の編組織を示した図である。図26Bは、中緊締部の編組織を示した図である。図26Cは、弱緊締部の編組織を示した図である。
【符号の説明】
【0120】
10 トップス、11 胴部、12 腕部、
20 パンツ、21 腰部、22 脚部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体に着用される衣料であって、
該衣料が前記人体に着用された際に、該人体の筋肉の起始部に対応する位置に位置して、緊締力を該起始部に付与する第一部分と、
該第一部分よりも伸縮度合いが大きく、前記衣料が前記人体に着用された際に、前記第一部分により緊締力が付与される前記筋肉の前記起始部と、該筋肉の停止部と、の間の筋肉部分に対応する位置に位置して、前記第一部分が前記起始部に付与する緊締力よりも小さい緊締力を前記筋肉部分に付与する第二部分と、
を備えることを特徴とする衣料。
【請求項2】
請求項1に記載の衣料において、
前記第二部分よりも伸縮度合いが小さく、前記衣料が前記人体に着用された際に、前記停止部に対応する位置に位置して、前記第二部分が前記筋肉部分に付与する緊締力よりも大きい緊締力を前記停止部に付与する第三部分を備えることを特徴とする衣料。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の衣料において、
前記第二部分は、
前記起始部から前記停止部へ向かう方向と交差する交差方向における一端から他端に亘る前記筋肉部分に、
対応する位置に位置していることを特徴とする衣料。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の衣料において、
前記筋肉は、骨格筋であることを特徴とする衣料。
【請求項5】
請求項4に記載の衣料において、
該衣料は、パンツであり、
前記骨格筋は、大殿筋、ハムストリング筋、大腿直筋、縫工筋、腹直筋、又は、脊柱起立筋であることを特徴とする衣料。
【請求項6】
請求項4に記載の衣料において、
該衣料は、トップスであり、
前記骨格筋は、大胸筋、広背筋、又は、棘下筋であることを特徴とする衣料。
【請求項1】
人体に着用される衣料であって、
該衣料が前記人体に着用された際に、該人体の筋肉の起始部に対応する位置に位置して、緊締力を該起始部に付与する第一部分と、
該第一部分よりも伸縮度合いが大きく、前記衣料が前記人体に着用された際に、前記第一部分により緊締力が付与される前記筋肉の前記起始部と、該筋肉の停止部と、の間の筋肉部分に対応する位置に位置して、前記第一部分が前記起始部に付与する緊締力よりも小さい緊締力を前記筋肉部分に付与する第二部分と、
を備えることを特徴とする衣料。
【請求項2】
請求項1に記載の衣料において、
前記第二部分よりも伸縮度合いが小さく、前記衣料が前記人体に着用された際に、前記停止部に対応する位置に位置して、前記第二部分が前記筋肉部分に付与する緊締力よりも大きい緊締力を前記停止部に付与する第三部分を備えることを特徴とする衣料。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の衣料において、
前記第二部分は、
前記起始部から前記停止部へ向かう方向と交差する交差方向における一端から他端に亘る前記筋肉部分に、
対応する位置に位置していることを特徴とする衣料。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の衣料において、
前記筋肉は、骨格筋であることを特徴とする衣料。
【請求項5】
請求項4に記載の衣料において、
該衣料は、パンツであり、
前記骨格筋は、大殿筋、ハムストリング筋、大腿直筋、縫工筋、腹直筋、又は、脊柱起立筋であることを特徴とする衣料。
【請求項6】
請求項4に記載の衣料において、
該衣料は、トップスであり、
前記骨格筋は、大胸筋、広背筋、又は、棘下筋であることを特徴とする衣料。
【図7】
【図10】
【図12】
【図14】
【図18】
【図21】
【図23】
【図25】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図11】
【図13】
【図15】
【図16】
【図17】
【図19】
【図20】
【図22】
【図24】
【図26】
【図10】
【図12】
【図14】
【図18】
【図21】
【図23】
【図25】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図11】
【図13】
【図15】
【図16】
【図17】
【図19】
【図20】
【図22】
【図24】
【図26】
【公開番号】特開2009−293145(P2009−293145A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−146154(P2008−146154)
【出願日】平成20年6月3日(2008.6.3)
【出願人】(500349591)有限会社ディーガム (6)
【出願人】(390010917)ヨネックス株式会社 (31)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月3日(2008.6.3)
【出願人】(500349591)有限会社ディーガム (6)
【出願人】(390010917)ヨネックス株式会社 (31)
【Fターム(参考)】
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