説明

衣服保形用ワイヤーおよびその製造方法

【課題】 外れ難い保護部でワイヤーの先端を被覆した安全で簡単な構成の衣服保形用ワイヤーおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】衣服の形状を保持するために用いられる衣服保形用ワイヤー1であって、金属製または樹脂製の線材からなるワイヤー本体2と、このワイヤー本体2の端部を被覆する樹脂製の保護部3と、から構成され、保護部3の内側に配置されて保護部3の内面と係合する返り部21が、ワイヤー本体2の端部に形成されている。また、保護部3は、アエロジルを混合したエポキシ樹脂からなり、外面形状及び保護部とワイヤー本体の境界が円滑に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣服に取り付けて衣服の形状を保持するために用いられる衣服保形用ワイヤーおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、衣服の襟の形状を保持するためや、ブラジャーのカップ形状を整えるために金属製や樹脂製のワイヤーを衣服等に取り付けている。
【0003】
ところが、このようなワイヤーをそのまま衣服に取り付けたのでは、ワイヤーの端縁が尖っているために、布地を傷つけたり、ワイヤーが布地を突き抜けて、露出したワイヤーの鋭利な先端縁で人体を傷付けるといった問題があった。
【0004】
そのため、ワイヤーの先端にキャップを取り付けたり、ワイヤーの端部に樹脂を塗布し、さらに布帛を巻き付け、その上から柔らかい樹脂を塗布するワイヤーの先端構造が提案されている(例えば、特許文献1、2参照。)。
【特許文献1】特開2004−149987号公報
【特許文献2】特開平9−49106号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来例のように、切断したままの状態のワイヤーの先端にキャップを取り付た場合は、衣服の着用者の動きによって衣服とワイヤーとが擦れるため、キャップが外れ易い。また、ワイヤーとキャップの継ぎ目に段差が生じるために、この段差が着用者の身体に当たって、不快であるといった問題があった。
【0006】
一方、ワイヤーの先端に樹脂を塗布し、さらに布帛を巻き付け、その上から柔らかい樹脂を塗布する場合は、ワイヤーの先端を被覆するための工程が複雑で、コストがかかるといった問題が生じていた。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑み創案されたもので、外れ難い保護部でワイヤーの先端を被覆した安全な衣服保形用ワイヤーおよびその製造方法を簡単な構成で提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明に係る衣服保形用ワイヤーは、衣服の形状を保持するために用いられる衣服保形用ワイヤーであって、金属製または樹脂製の線材からなるワイヤー本体と、このワイヤー本体の端部を被覆する樹脂製の保護部と、から構成され、前記保護部の内側に配置されて保護部の内面と係合する返り部が、ワイヤー本体の端部に形成されていることを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、ワイヤー本体の端部が保護部で被覆されているので、衣服から突出して布地を損傷したり、人体を傷付ける危険性がなく安全である。
【0010】
また、ワイヤー本体の端部に保護部の内面と係合する返り部が形成されているので、保護部が抜脱する方向に外力が加わったとしても、返り部によって逆方向に抵抗力が働く。したがって、保護部がワイヤー本体から外れ難い。
【0011】
さらに、ワイヤー本体の端部に返り部を形成するとともに、返り部と内面で係合する保護部でワイヤー本体の端部を被覆するだけで、ワイヤー本体の端部を確実に被覆することができるので、構成が簡単で、コストを抑制することができる。
【0012】
本発明は、上記構成の衣服保形用ワイヤーにおいて、前記保護部は、アエロジルを混合したエポキシ樹脂からなり、外面形状及び保護部とワイヤー本体の境界が円滑に形成されていることを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、保護部をアエロジルを混合したエポキシ樹脂で形成しているので、アエロジルの働きによりエポキシ樹脂に適度な粘性を付与して、例えば涙滴形のような円滑な外面形状に形成することができる。また、このように保護部の外面形状及び保護部とワイヤー本体の境界が円滑に形成されているので、ワイヤー端部が滑らかで、衣服保形用ワイヤーを衣服に容易に取り付けることができるとともに、衣服の着用者に快適な装着感を与えることができる。
【0014】
また、本発明は、衣服の形状を保持するために用いられる衣服保形用ワイヤーを製造する方法であって、金属製または樹脂製の線材を加熱した切断器具を用いて切断する切断工程と、前記切断した線材の端部を加熱溶融して先端縁を丸く成形するとともに、先端縁近傍に返り部を形成する線材端部加工工程と、前記返り部を含む線材の端部に樹脂を塗布して、返り部を含む線材の端部を被覆する被覆工程と、を備えることを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、加熱した切断器具を用いて線材を切断するので、線材の切断器具と接触する部分を溶融しながら切断するために線材の端縁が鋭利にならず、この端縁をさらに加熱溶融して丸く成形することが可能になる。
【0016】
また、このように線材の端縁を溶融して丸く成形することができるので、樹脂を塗布した際に滑らかな外形形状にすることができる。
【0017】
さらに、線材の端部を加熱溶融して返り部を形成し、返り部を含む線材の端部に樹脂を塗布しているので、樹脂が線材から外れ難く、また、加工工程が簡単である。
【0018】
上記衣服保形用ワイヤーの製造方法の線材端部加工工程において、線材の外径と略同一の直径の半球状の穴を形成した金属板を加熱し、この金属板の穴に線材の先端を押し入れてもよい。この場合、線材の先端の加工が簡単にできる。
【0019】
また、上記構成の衣服保形用ワイヤーの製造方法の被覆工程において、前記線材の端部に塗布する樹脂を、アエロジルを混合したエポキシ樹脂で構成すると、アエロジルの働きによりエポキシ樹脂に適度な粘性を付与して、例えば涙滴形のような円滑な外面形状に形成することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、外れ難い保護部でワイヤーの先端を被覆した安全な衣服保形用ワイヤーを簡単な構成で提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して説明する。
【0022】
図1には、本実施形態の衣服保形用ワイヤー1の端部が示されている。
【0023】
この衣服保形用ワイヤー1は、衣服の襟などの形状を保持するために用いられ、金属製または樹脂製の線材からなるワイヤー本体2と、このワイヤー本体2の端部を被覆する樹脂製の保護部3と、から構成されている。
【0024】
ワイヤー本体2は、例えば、アルミ製、鉄製、ステンレス製などの金属製線材、またはこれらの金属製線材を樹脂コーティングしたものや、ポリエチレン、ポリエリレンなどの樹脂からなるもので構成されている。
【0025】
なお、ワイヤー本体2の素材は、上記したものに限定されるものではない。また、ワイヤー本体2は、断面が円形状のもののほか、偏平状のものであってもよい。
【0026】
ワイヤー本体2の端部には、保護部3の内側に配置されて保護部3の内面と係合する返り部21が形成されている。この返り部21は、ワイヤー本体2の外周面から突出するように形成されたものである。また、ワイヤー本体2の先端縁は、丸みを帯びるようになされている(図1、図3参照)。
【0027】
保護部3は、アエロジルを混合したエポキシ樹脂からなっており、返り部21を含むワイヤー本体2の端部にこの混合樹脂を塗布して硬化させることにより返り部21と係合するようになされている。また、保護部3の外面形状は円滑に形成されており、例えば、涙滴形になされている。
【0028】
なお、保護部3は、上記したように樹脂を塗布して形成するものに限定されるものではなく、例えば、内面に返り部21と対応する凹部を備えた樹脂製のキャップで構成してもよい。この場合においても、返り部21と凹部とが保護部3の内面で係合しているので、保護部3がワイヤー本体2端部から外れ難くなる。
【0029】
次に、上記構成の衣服保形用ワイヤー1を製造する方法について図2および図3を参照しながら説明する。
【0030】
まず、例えばポリエリレン製の線材Aを加熱したニッパーで切断する。このように加熱したニッパーで切断すると、ニッパーと接する部分の線材Aをある程度溶融しながら切断するので、切断した端縁は鋭角にはならない。したがって、さらに後述する工程で加熱溶融した場合に、端縁を丸く成形することが可能になる。
【0031】
次いで、線材Aの外径と略同一の直径の半球状の穴40を形成した真鍮プレート4を加熱し、このプレート4の穴40に線材Aの先端を押し入れて(図2参照)溶融し、この先端縁を丸く加工するとともに、穴40からはみ出した部分により返り部21を形成してワイヤー本体2を構成する(図3参照)。このように、返り部21を形成することにより、保護部3がワイヤー本体2から外れ難くなる。また、ワイヤー本体2の先端縁を丸く成形することにより、保護部3を円滑な形状に形成することができる。
【0032】
次に、返り部21を含むワイヤー本体2の端部を覆うようにアエロジル(微粉末シリカ)を混合したエポキシ樹脂を塗布し、硬化させて保護部3を形成する。
【0033】
このように、エポキシ樹脂にアエロジルを混合しているので、この混合した樹脂をワイヤー本体2の端部に塗布すれば、例えば涙滴形のような円滑な外形形状に速乾硬化させることができる。これは、アエロジルを添加すると、アエロジルのシラノール基の水素架橋結合の働きにより、エポキシ樹脂の加工に適したレオロジー特性が付与されることに基づいている。
【0034】
上記説明したように製造された衣服保形用ワイヤー1は、例えば衣服の襟の形状を保持するために、衣服の襟の端縁に挿入したり、ブラジャーのカップの形状を整えるためにカップに沿って挿入して用いられる。
【0035】
衣服保形用ワイヤー1の端部は涙滴形のような円滑な保護部3で被覆されているので、衣服への挿入が容易である。
【0036】
また、本発明に係る衣服保形用ワイヤー1を取り付けた衣服をドライクリーニング試験をした結果、保護部3の樹脂の変化や、衣服への染み出し等は確認されなかった。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、外れ難い保護部でワイヤーの先端を被覆した安全で簡単な構成の衣服保形用ワイヤーおよびその製造方法に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る衣服保形用ワイヤーを示す側面図である。
【図2】本発明に係る衣服保形用ワイヤーの製造方法の概略を示す側面図である。
【図3】本発明に係る衣服保形用ワイヤーのワイヤー本体を示す側面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 衣服保形用ワイヤー
2 ワイヤー本体
21 返り部
3 保護部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣服の形状を保持するために用いられる衣服保形用ワイヤーであって、
金属製または樹脂製の線材からなるワイヤー本体と、このワイヤー本体の端部を被覆する樹脂製の保護部と、から構成され、
前記保護部の内側に配置されて保護部の内面と係合する返り部が、ワイヤー本体の端部に形成されていることを特徴とする衣服保形用ワイヤー。
【請求項2】
前記保護部は、アエロジルを混合したエポキシ樹脂からなり、外面形状及び保護部とワイヤー本体の境界が円滑に形成されていることを特徴とする請求項1記載の衣服保形用ワイヤー。
【請求項3】
衣服の形状を保持するために用いられる衣服保形用ワイヤーを製造する方法であって、
金属製または樹脂製の線材を加熱した切断器具を用いて切断する切断工程と、
前記切断した線材の端部を加熱溶融して先端縁を丸く成形するとともに、先端縁近傍に返り部を形成する線材端部加工工程と、
前記返り部を含む線材の端部に樹脂を塗布して、返り部を含む線材の端部を被覆する被覆工程と、を備えることを特徴とする衣服保形用ワイヤーの製造方法。
【請求項4】
前記線材端部加工工程において、
線材の外径と略同一の直径の半球状の穴を形成した金属板を加熱し、この金属板の穴に線材の先端を押し入れることを特徴とする請求項3記載の衣服保形用ワイヤーの製造方法。
【請求項5】
前記被覆工程において、線材の端部に塗布する樹脂は、アエロジルを混合したエポキシ樹脂からなることを特徴とする請求項3または4記載の衣服保形用ワイヤーの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−31880(P2007−31880A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−217214(P2005−217214)
【出願日】平成17年7月27日(2005.7.27)
【出願人】(591111569)仲内株式会社 (1)
【Fターム(参考)】