説明

衣服

【課題】雨天の場合に雨水の浸入を確実に阻止する又は気温の低いときに外気の取り入れを遮断することができながらも、気温の変化に応じて外気の取り入れ量の調整を行える構成にすることによって、快適に使用できる衣服を提供する。
【解決手段】本体の内外への給排気を行うための開口7に通気性を有する通気性部材8を設け、その通気性部材8を覆うための覆い部材10を設けてなる衣服において、前記覆い部材10は、前記通気性部材8を覆った閉状態と該通気性部材8から離間させた開状態とに保持するための保形部材16を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本体の内外への給排気を行うための開口に通気性を有する通気性部材を設け、その通気性部材を覆うための覆い部材を設けた衣服に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上着やズボンなどの衣服を着て釣り等をしていると、温度上昇に伴って衣服の内部が蒸れることがある。
そこで、衣服の内外を通気性部材を通して通気することで衣服の内部の熱を発散して衣服の内部が蒸れることを解消できるようにしている。
また、雨の際に通気性部材を通して雨水が衣服の内部に浸入してくることを阻止する、又は寒い日に外気が必要以上に入り込むことがないように、通気性部材を覆うための覆い部材を衣服本体に縫着したものが提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】「FISHING WEAR COLLECTION 2007−2008 AUTUMN AND WINTER」、発行元:株式会社シマノ、p23のRT−162 FUNCTIONSの左下のベンチレーション
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1の構成によれば、雨水の浸入を防止する又は気温の低い時には外気の取り入れを遮断することができるように一枚の覆い部材が通気性部材を完全に覆った閉じ状態になっている。つまり、覆い部材の一端を除く周縁が衣類本体に縫着されているため、覆い部材の一端と衣服本体との間に形成される小さな隙間から外気を取り入れなければならないため、外気を大量に取り入れることができないだけでなく、外気の取り入れ量の調整もできないものであり、改善の余地があった。
【0005】
本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、雨天の場合に雨水の浸入を確実に阻止する又は気温の低いときに外気の取り入れを遮断することができながらも、気温の変化に応じて外気の取り入れ量の調整を行える構成にすることによって、快適に使用できる衣服を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の衣服は、前述の課題解決のために、本体の内外への給排気を行うための開口に通気性を有する通気性部材を設け、その通気性部材を覆うための覆い部材を設けてなる衣服において、前記覆い部材は、前記通気性部材を覆った閉状態と該通気性部材から離間させた開状態とに保持するための保形部材を備えていることを特徴としている。
【0007】
上記のように保形部材を備えることによって、覆い部材を通気性部材から離間していくことによって、通気部材に対する覆い部材の開き度合いを変更することで外気取り入れ量を調整することができる。そして、調整後は覆い部材が保形部材によりその開き位置で保持することで本体内が蒸れること等を阻止することができる。また、雨天時や気温が低い時には、覆い部材を閉状態にすることによって、保形部材がその閉状態を保持して外気が本体内に入り込むことを阻止することができる。
【0008】
前記覆い部材の一端部を除く周囲を縫着して該覆い部材をポケット構造とし、前記保形部材が、線状の部材からなり、該線状の保形部材を前記覆い部材の一端部に沿って配置してもよい。
【0009】
上記のように線状の保形部材を覆い部材の一端部に沿って配置しておけば、覆い部材の一端部のみを持って覆い部材を通気性部材から離間させるだけでよいから、覆い部材全体に保形部材を備えさせる構成に比べて小さな操作力で迅速に通気部材に対する覆い部材の開き度合いを調整することができる。
【0010】
前記通気性部材が、メッシュ状生地からなり、前記保形部材がポリオレフィンなどの塑性変形性を備えた樹脂材料からなっていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
覆い部材を閉状態と開状態とに保持する保形部材を備えることによって、閉状態の覆い部材を開状態へ変更するだけで、通気部材に対する覆い部材の開き度合いを調整することができる。従って、雨天の場合に雨水の浸入を確実に阻止する又は気温の低いときに閉状態に保持して外気の取り入れを遮断することができながらも、気温の変化に応じて開状態にして外気の取り入れ量の調整を行えることから、快適に使用できる衣服を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の衣服である釣り用上着の正面図である。
【図2】釣り用上着の外気を取り入れる箇所の斜視図である。
【図3】釣り用上着の外気を取り入れる箇所の断面図である。
【図4】本発明の衣服であるズボンの正面図である。
【図5】図4のズボンの側面図である。
【図6】ズボンの外気を取り入れる箇所の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に、本発明の衣服としての釣り用上着1を示している。この釣り用上着1は、着用者の頭部又は着用者が被った帽子の全体を覆うことができるフード2を備えている。
【0014】
前記釣り用上着1は、胴体を覆う本体としての身頃部3と、左右の腕を覆う左右の袖部4,4と、首の全周囲を覆うことができる襟部5とを備えている。
【0015】
前記身頃部3は、左右の前側身頃3A,3Bを備えるとともに、それら前側身頃3A,3Bの左右方向中心部端にスライドファスナー6を備え、スライドファスナー6を開閉操作することによって、釣り用上着1を身体に着脱することができる。
【0016】
前記左右の前側身頃3A,3Bのそれぞれに、図1に示すように、本体の内外への給排気を行うための開口7を備え、各開口7を形成する生地の縁に、図2に示すように、メッシュ状生地からなる通気性部材8の外周を縫着している。
【0017】
また、図2に示すように、前記開口7に、該開口7を開閉操作するためのファスナー9を備えている。そして、前記通気性部材8へ雨天時の雨水の浸入や低温時の外気の取り入れを遮断するために該通気性部材8を覆うための帯状の生地からなる覆い部材10を、該通気性部材8にその上から重ね合わせ、この状態で該覆い部材10の前端10Aが開放されるように該前端10Aを除いた外周を、図1に破線で示すように前記開口7が形成された2枚の表生地11,12に縫着することによって、ポケット構造を構成している。図1の矢印で示す範囲10Eが覆い部材10の前端10Aの開放範囲を示し、ここから外気を取り入れることになる。
【0018】
前記開口7は、図1及び図2に示すように、2枚の生地11,12のそれぞれを切り欠き、それらの切り欠きが一致するように2枚の生地11,12を連結することにより、2枚の生地11,12に跨った開口が形成されるようになっている。
【0019】
図3に示すように、前記ファスナー9を構成するテープ9Aが、前記2枚の生地11,12の開口7縁の内側に配置され、そのテープ9Aの内側に通気性部材8が配置され、生地11,12とテープ9Aと通気性部材8が縫着されて一体化されている。
【0020】
また、前記開口7を通過した外気は、裏地13に形成された内側の開口14を通して釣り用上着1の内部に入り込み、内部の熱気が裏地側の開口14を通した後、表地側の開口7を通して外部へ放出されるようになっている。前記開口14の表地側には、開口14の縁に縫着されたメッシュ状生地からなる通気性部材15を備えている。尚、前記裏地側の開口14を、前記表地側の開口7と同一の大きさに構成する他、大きく構成したり小さく構成しても構わない。また、裏地側の開口14と、前記表地側の開口7とを上着の厚み方向において一致する位置に配置することが好ましいが、少しずれた位置に配置することもできる。
【0021】
前記ファスナー9は、図2に示すように、一対のテープ(基布)9A,9Aと、それらテープ9A,9Aに互いに対向するように取り付けられた多数の歯からなるエレメント(務歯部)9B,9Bと、前記一対のエレメント9B,9Bを噛み合わせる、又はその噛み合いを解除操作するためのスライダー(開閉部材)9Cとを備えている。前記スライダー9Cには、連結環17を介して引き手18が連結されるとともに、前記連結環17に更に布製の帯体19が連結され、引き手18又は帯体19を引き操作することによって、開口7を開閉操作することができるようになっている。
【0022】
前記覆い部材10は、前記通気性部材15を覆った閉状態と該通気性部材15から離間させた開状態とに保持する保形部材16を備えている。この保形部材16は、ポリオレフィンなどの塑性変形性を備えた樹脂材料からなるとともに、断面形状が円形で線状の部材からなり、該保形部材16を覆い部材10の前端10Aに沿って配置している。また、覆い部材10の前端10A付近には、前記生地11に備えた面ファスナー20Aに係止して覆い部材10の前端を閉じた状態を更に強固に保持するための面ファスナー20Bを備えている。
【0023】
例えば気温の変化に応じて、外気を釣り用上着1内に取り込んで内部にこもった熱を発散したい場合には、前記面ファスナー20A,20Bの係止を解除してから、図2の2点鎖線で示す覆い部材10の前端10Aを持って生地11,12から離間する側(図2の矢印の方向)へ引っ張る。この状態から手を離すことにより保形部材16の保形作用によって、その状態が保持され、覆い部材10の前端10Aと生地11,12の表面との間に大きな開口が形成される(図2の実線で示す)。このように大きな開口を形成することによって、開口7を通して多量の外気を取り込んで内部にこもった熱を開口7を通して外部へ排出することができる。また、生地11,12から離間する覆い部材10の位置を変更することで、前記開口の大きさを調整して外気の取り入れ量を調整することができる。尚、雨天時に雨水の浸入を確実に阻止する又は気温の低い時に外気の取り入れを遮断したい場合には、覆い部材10の前端10Aを持って生地11,12の表面側へ接近操作することによって、通気性部材15(開口7)を閉じた閉状態に覆い部材10を保持することができる。また、覆い部材10を閉状態にする前に、前記ファスナー9を閉じ操作することによって、更に外気が本体内に入り込むことを確実に阻止することができる。更に、前記覆い部材10を閉状態にしたときに、面ファスナー20A,20Bを係止状態にすることによって、その状態を確実に保持することができる利点があるが、面ファスナー20A,20Bを省略して実施することもできる。
【0024】
前記のように外気を取り入れる構成を備えたズボン(パンツともいう)を図4に示し、図5及び図6にそれの具体的構成を示しており、以下その構成について説明する。
【0025】
図4は、一対のベルト21A,21Aからなるサスペンダー21と腰当22を備えたズボン23を示しているが、サスペンダー21と腰当22の無いズボンであってもよい。
【0026】
前記ズボン23の本体である左右の身頃24,25それぞれの横側で外側部分の上部に、外気を取り入れる構成を備えている。尚、いずれも同一構成であるため、左側の身頃24のみ説明する。図5は、外気を本体内に取り入れたり本体内の熱気を外部へ排出するための開口26を示している。
【0027】
その開口26を形成する生地の縁に、図6に示すように、メッシュ状生地からなる通気性部材35の外周を縫着している。
【0028】
また、前記開口26を開閉操作するためのファスナー27を備えるとともに、前記通気性部材35を覆うための帯状の生地からなる覆い部材28を該通気性部材35に上から重ね合わせ、その状態から、該覆い部材28の前端28Aが開放されるように該前端28Aを除いた外周を、図5に破線で示すように前記開口26が形成された2枚の表生地29,30に縫着することによって、ポケット構造を構成している。図1の矢印で示す範囲28Eが覆い部材28の前端28Aの開放範囲を示し、ここから外気を取り入れることになる。
【0029】
前記開口26は、前述と同様に、2枚の生地29,30のそれぞれを切り欠き、それらの切り欠きが一致するように2枚の生地29,30を連結することにより、2枚の生地29,30に跨った開口26が形成されるようになっている。尚、図示していないが、裏生地にも図3と同様に、開口を備えるとともに開口にメッシュ状生地からなる通気性部材を備えている。
【0030】
前記ファスナー27は、図6に示すように、一対のテープ(基布)27A,27Aと、それらテープ27A,27Aに互いに対向するように取り付けられた多数の歯からなるエレメント(務歯部)27B,27Bと、前記一対のエレメント27B,27Bを噛み合わせる、又はその噛み合いを解除操作するためのスライダー(開閉部材)27Cを備えている。前記スライダー27Cには連結環33を介して引き手34が連結され、引き手34を引き操作することによって、開口26を開閉操作することができるようになっている。
【0031】
前記覆い部材28は、前記同様に、通気性部材35を覆った閉状態と通気性部材35から離間させた開状態とに保持する保形部材31を備えている。この保形部材31は、ポリオレフィンなどの塑性変形性を備えた樹脂材料からなるとともに、断面形状が円形で線状の部材からなり、該保形部材31を覆い部材28の前端28Aに沿って配置している。また、覆い部材28の前端28A付近には、前記生地29に備えた面ファスナー32Aに係止して覆い部材28の前端を閉じた状態に更に強固に保持するための面ファスナー32Bを備えている。尚、外気を取り入れる手順及び外気の取り入れを遮断する手順は、前述と同様であるため、説明は省略する。また、図6では、図2と同様に覆い部材28の前端28Aを大きく開口させた状態を示している。
【0032】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0033】
例えば、前記実施形態では、ファスナー9又は27を用いて開口7又は26を完全に閉じることができるようにしたが、ファスナーを省略して実施することもできる。
【0034】
また、前記実施形態では、塑性変形性を備えた樹脂材料として、ポリオレフィンを示したが、塑性変形性を備えた樹脂であればどのような樹脂であってもよいし、ゴムなどでもよい。
【0035】
また、前記実施形態では、保形部材が、線状の部材から構成したが、帯状(板状)の部材であってもよい。
【符号の説明】
【0036】
1…釣り用上着、2…フード、3…身頃部、3A,3B…前側身頃、4…袖部、5…襟部、6…スライドファスナー、7…開口、8…通気性部材、9…ファスナー、9A…テープ、9B…エレメント、9C…スライダー、10…覆い部材、10A…前端、10E…範囲、11,12…表生地、13…裏地、14…開口、15…通気性部材、16…保形部材、17…連結環、18…引き手、19…帯体、20A,20B…面ファスナー、21…サスペンダー、21A,21A…ベルト、22…腰当、23…ズボン、24,25…身頃、26…開口、27…ファスナー、27A,27A…テープ、27B,27B…エレメント、27C…スライダー、28…覆い部材、28A…前端、28E…範囲、29,30…生地、31…保形部材、32A,32B…面ファスナー、33…連結環、34…引き手、35…通気性部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体の内外への給排気を行うための開口に通気性を有する通気性部材を設け、その通気性部材を覆うための覆い部材を設けてなる衣服において、
前記覆い部材は、前記通気性部材を覆った閉状態と該通気性部材から離間させた開状態とに保持するための保形部材を備えていることを特徴とする衣服。
【請求項2】
前記覆い部材の一端部を除く周囲を縫着して該覆い部材をポケット構造とし、前記保形部材が、線状の部材からなり、該線状の保形部材を前記覆い部材の一端部に沿って配置したことを特徴とする請求項1記載の衣服。
【請求項3】
前記通気性部材が、メッシュ状生地からなり、前記保形部材がポリオレフィンなどの塑性変形性を備えた樹脂材料からなることを特徴とする請求項1又は2記載の衣服。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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