説明

衣服

本発明は、首開口部(3)を有する衣服に関する。該衣服は、前面にファスナ(5)を有しており、該ファスナの一方の端部は前記首開口部(3)に到達している。首開口部(3)の、ファスナ(5)の前記端部(55)の領域に、噛みエッジとして働く補強部(6)が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣服であって、首開口部を有しており、衣服の前面にファスナが設けられており、該ファスナの一方の端部は前記首開口部に到達している形式のものに関する。
【0002】
冒頭で述べた形式の衣服は広く公知である。このような衣服は、ジャケット、セーター等として形成することができる。衣服に設けられたファスナは、着脱を容易にするため、又は気温上昇時に通気性を良くするために、衣服を開くのを容易に可能にする。さらにファスナは、例えばボタンのようなその他の衣服の閉鎖手段に対して、衣服を完全に閉鎖し、水分や隙間風を衣服内に進入させないという利点を有している。
【0003】
特に、極めて弾性的な材料から製造された衣服では、ファスナを片手のみで開放するのは困難である。これは衣服の弾性が高いことによりファスナを引き下げる際に衣服が撓ってしまうからである。これにより衣服にしわが生じ、その結果、ファスナの形状が波打つ。するとファスナを開くことはできなくなる。従って、ファスナの開放を可能にする程度に十分な衣服の安定性をもたらすために、もう一方の手で首開口部の領域で衣服を押さえておく必要がある。このことは、衣服の着用者に障害がある場合、又は、片方の手が別の操作のために必要であるといった状態では不都合である。このような別の操作とは例えば、片方の手をハンドルに置いておかなければならない自転車又は自動車の運転である。
【0004】
本発明の課題は、ファスナの開放を片手で行うことができるような衣服を提供することである。この課題は、本発明によれば、首開口部の、ファスナの前記端部の領域に、噛みエッジとして働く補強部が設けられていることにより解決される。
【0005】
本発明によれば、片手のみでファスナの開放を可能にする衣服が提供される。このために衣服の着用者は、噛みエッジとして働く補強部を口に入れるだけで良く、これにより衣服に十分な安定性が与えられ、弾性の高い衣服であってもファスナの操作が可能である。
【0006】
本発明の別の構成では、補強部がほぼU字形の横断面を有している。このような構成により、補強部は首開口部に所定の領域で被さることができ、これにより首開口部の領域において、衣服の内面上にも外面上にも、噛みエッジとして働く補強部が設けられる。
【0007】
有利には補強部はプラスチックまたは天然ゴムから成っている。プラスチックまたは天然ゴムを使用することにより、一方では良好な加工性が得られ、これにより補強部を衣服に簡単に適合させることができる。また他方では、口にしたとしても安全で健康に無害な材料を使用することができる。
【0008】
有利には補強部はファスナに少なくとも部分的に被さっている。これにより補強部をファスナのカバーとして利用することができ、ファスナが首に引っ掛かるのを防止することができる。これにより衣服の着用快適性はさらに高められる。
【0009】
本発明の別の構成は従属請求項に記載されている。以下に、本発明の実施例を図面につき詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】ファスナと補強部とを備えた衣服を部分的に示した図である。
【図2】衣服の首開口部の領域を側方から示した図である。
【図3】ファスナの操作時の人物を衣服と共に示した図である。
【0011】
実施例として示した衣服は、前面1と背面(図示せず)とから成っている。この衣服は袖部2を有している。この衣服は首開口部3を有しており、この首開口部3はこの実施例では立ち襟4によって形成されている。この衣服は前面1にファスナ5を有している。
【0012】
ファスナ5は公知の形式で衣服に縫い付けられていて、これは縫い目51によって明示されている。ファスナ5は公知の形式で複数の務歯52を有しており、これらの務歯52はスライダ53によって互いに噛み合わせられる。スライダ53には把持部54が設けられている。ファスナ5の一方の端部は首開口部3に到っている。この実施例では、ファスナ5の図示されている端部55が立ち襟4の上方領域に位置している。
【0013】
首開口部3には、ファスナ5の端部55の領域に、噛みエッジとして働く補強部6が配置されている。この実施例では補強部6は、首開口部3を形成する立ち襟4の自由端部に設けられている。補強部6はこの実施例では立ち襟4に縫い付けられていて、このことは縫い目61によって明示されている。補強部6は有利にはプラスチックまたはゴムから製造されている。補強部6のための材料を選択する際、1つには良好な加工可能性が重要である。良好な加工可能性により補強部を簡単に、首開口部3の領域で衣服の形状に適合させることができる。さらにまた重要であるのは、選択した材料が身体に有害な特性を有さないことである。さらに材料は、運動性を制限しないために、比較的高い可動性を有しているのが望ましい。これらの特性は特に、適当なプラスチック及びゴムにより満たされる。
【0014】
補強部6はほぼU字形の横断面を有していて、首開口部3若しくは立ち襟4に被さっている。従って、補強部6の脚部62は衣服の外面上に位置していて、補強部6の脚部63は衣服の内面上に位置している。脚部62と脚部63とを結合している中央部64は、特に図2に示したように、首開口部3若しくは立ち襟4の自由端部の上方に位置している。
【0015】
特に図3に示したように、補強部6はファスナ5を部分的に覆っている。従って補強部6は水平方向でファスナ5を越えて突出している。ファスナ5の閉鎖状態では、補強部6は端部55に完全に被さっている。ファスナ5が完全に閉鎖されていない状態では、図3に示されているように、補強部6は部分的に、ファスナ5の一方の側を水平方向で越えて突出している。
【0016】
噛みエッジとして働く補強部6は、特に片方の手が、障害があるといったことや、例えば自転車走行時のハンドルの保持のような別の動作を行っているといった何らかの事情により、ファスナの操作のためには使えない場合、ファスナ5の操作を著しく容易にする。ファスナの操作のためには、衣服の着用者が補強部6を噛むだけで良い。これにより補強部6は、衣服の着用者の歯の間に噛まれて保持される。従って図3に示したように、ファスナ5の操作を片手で行えるように首開口部3を固定することができる。従って例えば、サイクリングウェアのトリコットの場合のように、弾性の高い衣服にファスナが設けられていても、ファスナの片手操作が可能である。しかしながら自転車走行の際は、多くの場合、両手ともがハンドルに取られてしまうわけではないので、本発明により、不都合な条件下でもファスナの操作は大きく改善される。
【符号の説明】
【0017】
1 前面、 2 袖部、 3 首開口部、 4 立ち襟、 5 ファスナ、 6 補強部、 51 縫い目、 52 務歯、 53 スライダ、 54 把持部、 55 端部、 61 縫い目、 62,63 脚部、 64 中央部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣服であって、首開口部を有しており、衣服の前面にファスナが設けられており、該ファスナの一方の端部は前記首開口部に到達している形式のものにおいて、
首開口部(3)の、ファスナ(5)の前記端部(55)の領域に、噛みエッジとして働く補強部(6)が設けられていることを特徴とする衣服。
【請求項2】
前記補強部(6)がほぼU字形の横断面を有している、請求項1記載の衣服。
【請求項3】
前記補強部(6)がプラスチックから成っている、請求項1又は2記載の衣服。
【請求項4】
前記補強部(6)がゴムから成っている、請求項1又は2記載の衣服。
【請求項5】
前記補強部(6)がファスナ(5)に少なくとも部分的に被さっている、請求項1から4までのいずれか1項記載の衣服。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2013−510957(P2013−510957A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−538229(P2012−538229)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【国際出願番号】PCT/EP2010/006778
【国際公開番号】WO2011/057746
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(504303687)エクス−テクノロジー スイス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (23)
【氏名又は名称原語表記】X−Technology Swiss GmbH
【住所又は居所原語表記】Samstagernstrasse 45, CH−8832 Wollerau, Switzerland
【Fターム(参考)】