説明

表皮一体発泡成形用表皮材の縫製構造

【課題】液状の発泡性樹脂の針孔からの漏出を防止することに加え、重ね合わせた表皮材の端縁間の口開き部からの漏出を防止することができる表皮一体発泡成形用表皮材の縫製構造を提供すること。
【解決手段】表皮材2を、成形体の外側に配置される表生地3と、この表生地3の内側に接着されるポリウレタンフォーム4とで構成し、この表皮材2の端縁2aの表生地3,3同士を重ね合わせて重ね合せ部11を形成するとともに、この重ね合せ部11の外側を覆って不織布12を設け、この不織布12の外側から重ね合せ部11を縫製して連結縫製部13を設ける。これにより、この連結縫製部13は不織布12を重ねて縫合することで針孔からの発泡性樹脂の漏出を防止するとともに、重ね合わせた表皮材2,2の端縁2a,2a間もその外側を不織布12で覆うことで、口開き部8からの発泡性樹脂の漏出も防止でき、品質に優れた表皮一体発泡成型体を製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は表皮一体発泡成形用表皮材の縫製構造に関し、表皮材を立体的に縫製してその内部に液状の発泡性樹脂を注入して発泡させ、表皮材と一体とした成形体を得る場合に、液状の発泡性樹脂の縫製部および縫製部の端縁間の口開き部からの漏出を防止しするようにしたもので、特に車両用のヘッドレストやアームレスト、コンソールボックスなどの成形に使用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
表皮材を立体的に縫製してその内部に液状の発泡性樹脂を注入して発泡させ、表皮材と一体とした成形体を得る表皮一体発泡成形法で作られる製品のひとつに車両用のヘッドレストやアームレスト、コンソールボックスなどがある(特許文献1参照)。
このような表皮一体発泡成形法では、図4〜図6に示すように、例えば車両用のヘッドレスト1やアームレスト、コンソールボックスを成形する場合に用いる表皮材2としては、風合い、伸縮性などの観点から織布、不織布、編布、合成皮革などの表生地3の裏面に通常、軟質ポリウレタンフォーム4を接着したものが使用され、例えば図5に示すように、表生地3,3同士が内側となるように中合せ状態として立体的に縫製した後、図6に一部分を拡大して示すように、表生地3,3が外側になるように裏返し、芯材5,5などをセットして金型に収め、液状の発泡性樹脂を注入して発泡させ、表皮材2と一体とした成形体である車両用のヘッドレスト1やアームレスト、コンソールボックスなどが造られる。
【0003】
このような表皮材2,2同士を立体的に縫製した内部に液状の発泡性樹脂を注入すると、縫製部6の針孔を通って発泡性樹脂が外部に漏出する欠陥が生じることから、針孔からの発泡性樹脂の漏出を防止するため種々の提案がなされている。
そのひとつは、縫製後、表皮材の裏面側に縫製部を覆ってポリウレタンフィルムを貼着することで針孔をシールして発泡性樹脂の漏出を防止するもの(特許文献2参照)や、図6に示すように、表皮材2,2の裏面に起毛処理を施して毛羽立たせたシール材7,7を当てて縫製することで針孔をシールして発泡性樹脂の漏出を防止するもの(特許文献3参照)、さらには、表皮材の端縁同士を重ね合せ、重ね合せた端縁に沿ってオーバーロック縫いで縫合することで縫い目にかかる力を分散して針孔からの漏出を防止するもの(特許文献4参照)がある。
【0004】
【特許文献1】特開平4−314507号公報
【特許文献2】特開平2−55110号公報
【特許文献3】特開2005−34212号公報
【特許文献4】特開平8−309765号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献2の縫製後、針孔の外側にポリウレタンフィルムを貼着したり、特許文献3のシール材7,7を当てて縫製することで針孔を塞ぐようにするもの、あるいは特許文献4の特殊な縫い方であるオーバーロック縫いで針孔が広がらないようにするものの何れの方法であっても、発泡性樹脂の注入前に縫合された表生地3,3が外側となるように裏返すと、図6に拡大して示すように、表皮材2,2の表側では、縫製部6の針孔部分を中心に表生地3,3が両側に引っ張られた状態となる一方、発泡性樹脂が注入される表皮材2,2の裏側では、重ね合された表皮材2,2が縫製部6の針孔を中心に表皮材2,2の端縁2a,2a間が外側に広がる口開き状態になり易く、この口開き部8から発泡性樹脂の漏出が起こるという問題がある。この口開き部8からの発泡性樹脂の漏出は、表皮材2,2にシボを有する合成皮革を用いる場合に特に顕著に見られる。これは、合成皮革の表面に凹凸があるために、表皮材2,2が重ね合された際に隙間ができ、縫製部6の表皮材2,2同士が完全に密着することが難しいこと、また、合成皮革は気密性が高いために、注入する発泡性樹脂から発生する気体(ガス)が縫製部に集中しやすいことが要因である。
【0006】
また、ヘッドレスト1やアームレスト、コンソールボックス等の成形体の縫製は、意匠性の観点から縫製部6を挟む両側に飾り縫製部21を設けた所謂ダブルステッチという手法が好んで採用される。しかしながらダブルステッチにおいては、飾り縫製部21を縫製する際に、縫製部6を支点に両側に強く引っ張られるため、通常の縫製方法に比べて口開き部8が生じやすい傾向にあった。
【0007】
この発明は、かかる従来技術の課題に鑑みてなされたもので、液状の発泡性樹脂の針孔からの漏出を防止することに加え、重ね合わせた表皮材の端縁間の口開き部からの漏出を防止することができる表皮一体発泡成形用表皮材の縫製構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記従来技術の課題を解決するため表皮一体発泡成型用表皮材の縫製構造について鋭意検討を重ねたところ、表皮材の重ね合わせ部分の縫製による針孔だけでなく、発泡性樹脂が注入される内側において、縫製された部分を中心に2枚の表皮材の端縁間の表生地の接触状態が保持されずに表生地同士が離れる口開きが生じ、この口開き部から発泡性樹脂が浸入することで発泡性樹脂の漏出が生じるという課題を見出し、これを解決すべくこの発明を完成したものであり、この課題を解決するための具体的な構成は、以下の通りである。
【0009】
すなわち、この発明の請求項1記載の表皮一体発泡成型用表皮材の縫製構造は、成形体の外形状に縫製され内部に液状の発泡性樹脂を注入して発泡させ一体化する表皮一体発泡成形用表皮材の縫製構造であって、前記表皮材を、少なくとも成形体の外側に配置される表生地と、この表生地の内側に接着されるポリウレタンフォームとで構成し、この表皮材の端縁の前記表生地同士を重ね合わせて重ね合せ部を形成するとともに、この重ね合せ部の外側を覆って不織布を設け、この不織布の外側から前記重ね合せ部を縫製して連結縫製部を設けてなることを特徴とするものである。
この表皮一体発泡成形用表皮材の縫製構造によれば、表皮材を、少なくとも成形体の外側に配置される表生地と、この表生地の内側に接着されるポリウレタンフォームとで構成し、この表皮材の端縁の前記表生地同士を重ね合わせて重ね合せ部を形成するとともに、この重ね合せ部の外側を覆って不織布を設け、この不織布の外側から前記重ね合せ部を縫製して連結縫製部を設けるようにしており、この連結縫製部は不織布を重ねて縫合することで針孔からの発泡性樹脂の漏出を防止するとともに、重ね合わせた表皮材の端縁間もその外側を不織布で覆うことで、口開き部からの発泡性樹脂の漏出も防止できるようになる。
これにより、表皮一体発泡成型用表皮材を縫製した成形体では、針孔および表皮材の端縁間の口開き部からの発泡性樹脂の漏出を防止でき、品質に優れた表皮一体発泡成型体を製造できるようになる。
【0010】
また、この発明の請求項2記載の表皮一体発泡成型用表皮材の縫製構造は、請求項1記載の構成に加え、前記連結縫製部を挟む両側に、前記不織布の端縁部と前記各表皮材とを縫製して飾り縫製部をそれぞれ形成したことを特徴とするものである。
この表皮一体発泡成形用表皮材の縫製構造によれば、前記連結縫製部を挟む両側に、前記不織布の端縁部と前記各表皮材とを縫製して飾り縫製部をそれぞれ形成するようにしており、意匠性を高めるため飾り縫製部を形成する場合でも不織布を介して縫製することで、この飾り縫製部の針孔からの発泡性樹脂の漏出も防止できるようになる。
【0011】
さらに、この発明の請求項3記載の表皮一体発泡成型用表皮材の縫製構造は、 成形体の外形状に縫製され内部に液状の発泡性樹脂を注入して発泡させ一体化する表皮一体発泡成形用表皮材の縫製構造であって、前記表皮材を、少なくとも成形体の外側に配置される表生地と、この表生地の内側に接着されるポリウレタンフォームとで構成し、この表皮材の端縁の前記表生地同士を重ね合わせて重ね合せ部を形成し、この重ね合せ部で縫製して連結縫製部を形成し、この連結縫製部から前記各表皮材の端縁部を折り返して折り返し部を設け、これら折り返し部および前記連結縫製部を覆って不織布を設け、この不織布の外側から前記各折り返し部を縫製して飾り縫製部を形成してなり、これら飾り縫製部および前記連結縫製部からの発泡性樹脂の漏出を防止するように構成したことを特徴とするものである。
この表皮一体発泡成形用表皮材の縫製構造によれば、表皮材を、少なくとも成形体の外側に配置される表生地と、この表生地の内側に接着されるポリウレタンフォームとで構成し、この表皮材の端縁の前記表生地同士を重ね合わせて重ね合せ部を形成し、この重ね合せ部で縫製して連結縫製部を形成し、この連結縫製部から前記各表皮材の端縁部を折り返して折り返し部を設け、これら折り返し部および前記連結縫製部を覆って不織布を設け、この不織布の外側から前記各折り返し部を縫製して飾り縫製部を形成するようにしており、表皮材の連結を連結縫製部で行い、連結縫製部とその両側の折り返し部を不織布で覆って折り返し部を縫製して飾り縫製部を形成することで、これら飾り縫製部には不織布が当てられて縫製されることで針孔からの発泡性樹脂の漏出が防止され、連結縫製部はその外側が不織布で覆われることで発泡性樹脂の漏出が防止できるようになる。
【0012】
また、この発明の請求項4記載の表皮一体発泡成型用表皮材の縫製構造は、請求項1〜3いずれかに記載の構成に加え、前記不織布が前記不織布が耐水圧450mmHO以上であるとともに、平均ポアサイズが0.1〜20μmである。
この表皮一体発泡成形用表皮材の縫製構造によれば、不織布が耐水圧450mmHO以上であるとともに、平均ポアサイズが0.1〜20μmの不織布使用することにより、針孔および端縁間の口開き部からの発泡性樹脂の漏出を防止できるようになる。
【0013】
さらに、この発明の請求項5記載の表皮一体発泡成型用表皮材の縫製構造は、請求項1〜4のいずれかに記載の構成に加え、前記不織布が、熱可塑性エラストマー樹脂からなる不織布の単層またはこれに他の樹脂からなる不織布を積層した複数層で構成されることを特徴とするものである。
この表皮一体発泡成形用表皮材の縫製構造によれば、不織布を、熱可塑性エラストマー樹脂からなる不織布の単層またはこれに他の樹脂からなる不織布を積層した複数層で構成することで、液状の発泡性樹脂の浸透による染み出しの防止に必要な耐水性、通気度、ポアサイズなどを確保でき、針孔および端縁間の口開き部からの発泡性樹脂の漏出を防止できるようになる。
【0014】
また、この発明の請求項6記載の表皮一体発泡成型用表皮材の縫製構造は、請求項1〜4のいずれかに記載の構成に加え、前記不織布が、熱可塑性エラストマー樹脂からなる不織布の少なくとも一方面または両方面に、ポリブチレンテレフタレート樹脂からなる不織布を熱接着してなる2層または3層の積層体で構成されることを特徴とするものである。
この表皮一体発泡成形用表皮材の縫製構造によれば、前記不織布が熱可塑性エラストマー樹脂からなる不織布の少なくとも一方面または両方面に、ポリブチレンテレフタレート樹脂からなる不織布を設けた2層または3層の積層体で構成してあり、液状の発泡性樹脂の浸透による染み出しを一層確実に防止して針孔および端縁間の口開き部からの発泡性樹脂の漏出を防止できるようになるとともに、表面摩擦の小さいポリブチレンテレフタレート樹脂によって縫製の際のミシンの送り性にも優れ、縫製が容易にできるようになる。
【発明の効果】
【0015】
この発明の請求項1記載の表皮一体発泡成型用表皮材の縫製構造によれば、成形体の外形状に縫製され内部に液状の発泡性樹脂を注入して発泡させ一体化する表皮一体発泡成形用表皮材の縫製構造であって、前記表皮材を、少なくとも成形体の外側に配置される表生地と、この表生地の内側に接着されるポリウレタンフォームとで構成し、この表皮材の端縁の前記表生地同士を重ね合わせて重ね合せ部を形成するとともに、この重ね合せ部の外側を覆って不織布を設け、この不織布の外側から前記重ね合せ部を縫製して連結縫製部を設けてなり、この連結縫製部および前記重ね合わせた表皮材の端縁間の口開き部からの発泡性樹脂の漏出を防止するように構成したので、この連結縫製部は不織布を重ねて縫合することで針孔からの発泡性樹脂の漏出を防止することができるとともに、重ね合わせた表皮材の端縁間もその外側を不織布で覆うことで、口開き部からの発泡性樹脂の漏出も防止することができる。
これにより、表皮一体発泡成型用表皮材を縫製した成形体では、針孔および表皮材の端縁間の口開き部からの発泡性樹脂の漏出を防止することができ、品質に優れた表皮一体発泡成型体を製造することができる。
【0016】
また、この発明の請求項2記載の表皮一体発泡成型用表皮材の縫製構造によれば、前記連結縫製部を挟む両側に、前記不織布の端縁部と前記各表皮材とを縫製して飾り縫製部をそれぞれ形成するようにしたので、意匠性を高めるため飾り縫製部を形成する場合でも不織布を介して縫製することで、この飾り縫製部の針孔からの発泡性樹脂の漏出も防止することができる。
【0017】
さらに、この発明の請求項3記載の表皮一体発泡成型用表皮材の縫製構造によれば、成形体の外形状に縫製され内部に液状の発泡性樹脂を注入して発泡させ一体化する表皮一体発泡成形用表皮材の縫製構造であって、前記表皮材を、少なくとも成形体の外側に配置される表生地と、この表生地の内側に接着されるポリウレタンフォームとで構成し、この表皮材の端縁の前記表生地同士を重ね合わせて重ね合せ部を形成し、この重ね合せ部で縫製して連結縫製部を形成し、この連結縫製部から前記各表皮材の端縁部を折り返して折り返し部を設け、これら折り返し部および前記連結縫製部を覆って不織布を設け、この不織布の外側から前記各折り返し部を縫製して飾り縫製部を形成してなり、これら飾り縫製部および前記連結縫製部からの発泡性樹脂の漏出を防止するように構成したので、表皮材の連結を連結縫製部で行い、連結縫製部とその両側の折り返し部を不織布で覆って折り返し部を縫製して飾り縫製部を形成することで、これら飾り縫製部には不織布が当てられて縫製されることで針孔からの発泡性樹脂の漏出を防止することができ、連結縫製部はその外側が不織布で覆われることで発泡性樹脂の漏出を防止することができる。
【0018】
また、この発明の請求項4記載の表皮一体発泡成型用表皮材の縫製構造によれば、耐水圧450mmHO以上であるとともに、平均ポアサイズが0.1〜20μmの不織布を使用したので、より液状の発泡性樹脂の浸透による染み出しを防止しすることができ、これにより、針孔および端縁間の口開き部からの発泡性樹脂の漏出を防止することができる。また、不織布の平均ポアサイズが0.1〜2.0μmであることから、注入された発泡性樹脂が発泡する際に生じる気体(ガス)が適度に抜ける通気性を有するため、表皮材と発泡性樹脂の界面における空隙の発生(巣穴)を防止することができる。
【0019】
さらに、この発明の請求項5記載の表皮一体発泡成型用表皮材の縫製構造によれば、不織布を、熱可塑性エラストマー樹脂からなる不織布の単層またはこれに他の樹脂からなる不織布を積層した複数層で構成することで、必要な耐水性、通気度、ポアサイズを確保することができ、液状の発泡性樹脂の浸透による染み出しを防止し、発泡の際の気体(ガス)が適度に抜ける通気性を確保することができる。これにより、針孔および端縁間の口開き部からの発泡性樹脂の漏出を防止することができる。また、熱可塑性エラストマー樹脂からなる不織布を使用することで、より高い柔軟性を持たせることができ、これにより、表皮材の表面に折れ皺(角)が出やすくなることを防止できる。
【0020】
また、この発明の請求項6記載の表皮一体発泡成型用表皮材の縫製構造によれば、前記不織布が熱可塑性エラストマー樹脂からなる不織布の少なくとも一方面または両方面に、ポリブチレンテレフタレート樹脂からなる不織布を設けた2層または3層の積層体で構成したので、液状の発泡性樹脂の浸透による染み出しを一層確実に防止して針孔および端縁間の口開き部からの発泡性樹脂の漏出を防止することができるようになるとともに、表面摩擦の小さいポリブチレンテレフタレート樹脂によって縫製の際のミシンの送り性にも優れ、縫製を容易に行うことができる。
また、熱可塑性エラストマー樹脂からなる不織布のポリウレタンフォーム側の一方面にポリブチレンテレフタレート樹脂からなる不織布を積層させることにより、ポリウレタンフォームとの接着強力を向上させることが出来る。また、ポリウレタンフォームとの反対側の一方面にポリブチレンテレフタレート樹脂からなる不織布を積層させることにより、表皮一体発泡成形用表皮材の裏面の滑り性が向上し、縫製作業効率の向上を図ることが出来る。
【0021】
上述のとおり、この発明の表皮一体発泡成形用表皮材の縫製構造よれば、液状の発泡性樹脂の針孔からの漏出を防止することに加え、重ね合わせた表皮材の端縁間の口開き部からの漏出を確実に防止することができる。なお、この発明の表皮一体発泡成形用表皮材の縫製構造にあっては、表皮材にシボを有する合成皮革を用いる場合やダブルステッチの場合等の口開き部が生じやすい形態であっても、確実に口開き部からの発泡性樹脂の漏出を防止することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、この発明の表皮一体発泡成形用表皮材の縫製構造の実施の形態について、詳細に説明する。
図1は、この発明の表皮一体発泡成形用表皮材の縫製構造の一実施の形態にかかり、(a)は発泡性樹脂を注入する状態で示す縫製部の部分拡大断面図、(b)は縫製開始状態で示す部分拡大図である。
【0023】
この発明の表皮一体発泡成形用表皮材の縫製構造10は、既に図4で説明した表皮一体発泡成形される例えば車両用のヘッドレスト1の表皮材2,2の縫製部6に適用されるものであり、ヘッドレスト1の外形に対応する形状に裁断された表皮材2を立体的に縫製したのち金型にセットし、その内部に補強材や支柱などのインサート部品を装着し、これら装着されたインサート部品と表皮材2との内部空間に液状の発泡性樹脂を注入することで、表皮材2と発泡した発泡性樹脂とが一体となった表皮一体発泡成形体の製品であるヘッドレストを成形する場合の縫製部6の針孔からの発泡性樹脂の漏出だけでなく、表皮材2,2の端縁2a,2a間の口開き部8からの発泡性樹脂の漏出を防止できるようにしたものである。
【0024】
このような表皮一体発泡成形用表皮材の縫製構造10に用いられる表皮材2は、例えば図1に示すように、表生地3と、軟質ポリウレタンフォーム4とを接着して構成したものを挙げることができる。
表生地2としては、ヘッドレスト1としての風合いや感触および通気性を考慮して繊維を編織した布地や不織布などが用いられるほか、天然皮革や合成皮革など従来から一般的に使用されている素材が用いられる。
【0025】
また、軟質ポリウレタンフォーム3は、この表生地2の裏面側に接着され、表生地2の風合いや伸縮性などが内部に注入発泡されて一体とされる発泡性樹脂によって損なわれないようにするものである。この軟質ポリウレタンフォーム3は、一般に表皮一体発泡成形用に用いられているものが使用できるが、好ましくは密度が18〜60Kg/m、さらに好ましくは35〜55Kg/mであり、硬度が90〜500N、さらに好ましくは350〜450Nのものである。また、その厚さは、成形品の種類や材質によっても異なるが、例えば1mm〜15mm程度とされる。
なお、軟質ポリウレタンフォーム4の裏面には、注入する液状の発泡性樹脂が軟質ポリウレタンフォーム4に含侵することを防止するため、合成樹脂フィルムや耐水性を有する不織布等を設けてもよい。
【0026】
このような表皮材2を用いる表皮一体発泡成形用表皮材の縫製構造10(以下、単に、縫製構造10とする。)では、図1(b)に示すように、表皮材2,2の表生地3,3同士を中合わせ状態で重ねるとともに、表皮材2,2の端縁2a,2aを揃えた状態として重ね合わせ部11を形成し、この重ね合わせ部11の外側を覆うように不織布12が設けられる。
すなわち、この不織布12は、重ね合わせた表皮材2,2の外側である軟質ポリウレタンフォーム4,4上とこれらの間の端縁2a,2aの外側を連続して覆うように配置してある。
そして、不織布12の外側から2枚の重ね合わせた表皮材2,2を貫通してミシンなどで縫製し、連結縫製部13が形成され、この連結縫製部13によって2枚の表皮材2,2が縫製された連結状態となる。
この状態では、表皮材2,2の表生地3,3が内側となる裏返し状態であることから、これを表生地3,3が外側になるように裏返し、図1(a)に示すように、連結縫製部13が発泡性樹脂が注入される空間の内側に入った状態とする。
こうして立体的に縫製された表皮材2,2の内部に液状の発泡性樹脂が注入され、発泡によって表皮材と一体にされる。
【0027】
このような縫製構造10によれば、ミシンなどで縫製された連結縫製部13は、その外側に不織布12が当てられてその上から縫い合わせてあるので、針孔が不織布12の微細な繊維によって塞がれるようになり、注入される発泡性樹脂の漏出が防止される。
さらに、この縫製構造10では、表皮材2,2を連結縫製部13を中心に表生地3,3が外側になるように裏返すと、図1(a)に示すように、表皮材2,2の端縁2a,2aでは、軟質ポリウレタンフォーム4,4の弾性力などで連結縫製部13を支点として外側に開いた口開き状態になり易く、2つの表皮材2,2の端縁2a,2a間に表生地3,3同士が離れてしまう口開き部8が形成される場合でも、口開き部8の外側である2つの表皮材2,2の端縁2a,2a間が不織布12で覆ってあるので、発泡性樹脂が浸入することを防止でき、連結縫製部13を越えて発泡性樹脂が漏出することを防止できる。
これにより、表皮一体発泡成形体であるヘッドレスト1の成形後、縫い合わせた部分などから漏出した発泡性樹脂を取り除く後処理の必要がなく、不織布12は連結縫製部13の縫製と同時に配置されるので、効率よく縫製および発泡性樹脂の漏出防止を行うことができる。
【0028】
このような縫製構造10に使用される不織布12は、表皮材2,2の縫製部6および表皮材2,2の端縁2a,2a間の口開き部8への液状の発泡性樹脂の浸透を防止する必要があり、しかも発泡性樹脂との接触により熱変形しない耐熱性を有するものが必要である。
このような浸透防止性および耐熱性を備える不織布12としては、浸透性を表す物性として、耐水圧を用い、耐水圧(JIS−L1092)が450mmHO(mmAq)以上であること、好ましくは500mmHO以上、更に好ましくは550mmHO以上である。
不織布12の耐水圧が450mmHO(mmAq)未満であると、液状の発泡性樹脂が浸透して染み出してしまう。
表皮材2に合成皮革を用いた場合や、注入する液状の発泡性樹脂の軟質ポリウレタンフォーム4への染み出しを防止するために軟質ポリウレタンフォーム4の裏面に合成樹脂フィルム等の気密性の裏材を設ける場合、表皮材の気密性が高くなるため、縫製部6にかかる圧力が高くなり、縫製部6から発泡性樹脂の漏出が生じやすいが、不織布12が耐水性を有していれば発泡樹脂の漏出を防止することできる。
【0029】
また、上記のように表皮材2の気密性が高くなると、発泡の際に生じる気体(ガス)が抜けずに残り、冷えると収縮し巣穴と呼ばれる空洞が発生し、これにより表皮材2にしわが生じる不具合がある。そのため、不織布12は通気度(JIS−L1096)が0.1〜20cc/cm程度の通気性を有していることが好ましい。通気度が0.1〜20cc/cm程度の通気性を有していると、発泡性樹脂から生じる気体(ガス)が不織布12から抜け、巣穴の発生を防止することができる。
【0030】
さらに、これら耐水圧や通気度を決定する物性としてポアサイズを用い、ポアサイズによって耐水圧や通気度がある程度定まることから、ポアサイズ(ASTMF‐361‐80のバルブポイント法に基づく測定)の平均が0.1〜20μmであること、好ましくは、5〜15μmであることが好ましい。
不織布12の平均ポアサイズが20μmを超えて大きいと、耐水圧や通気度を上記の範囲に保つことができなくなる。なお、このポアサイズは、表皮材2として用いる場合にこれらの値であれば良く、不織布をエンボスやカレンダーなどの後工程で加工を施す場合には、これらの加工によってポアサイズを調整することができ、調整後、液状の発泡性樹脂を充填する前の状態で上記の値を確保できれば良い。
【0031】
また、不織布12としては、その平均繊維径が、0.1〜10μmであることが好ましく、より好ましくは2〜5μmである。繊維径は、不織布12のポアサイズを決定する要素の1つであり、平均繊維径を10μmを超えて大きくすると、ポアサイズが大きくなって上記のポアサイズの範囲にすることが難しくなる。
また、平均繊維径が0.1μm未満の不織布は、その生産性が極端に落ちる。
なお、不織布13の繊維径が大きくてもエンボスやカレンダーなどの後加工によりポアサイズを上記の範囲内にすることもできる。
【0032】
さらに、不織布12の目付が、30〜70g/mであることが好ましい。
不織布12の目付が30g/m未満であると、不織布として必要な物性を得難く、70g/mを超えて大きくなると、硬くなり成形不良となりやすい。
この不織布12の目付は、表皮一体発泡成形体としての製品によっても好ましい範囲が異なるが、例えばヘッドレストの場合には、30〜50g/mの範囲が好ましく、アームレストの場合には、40〜70g/mの範囲が好ましい。
なお、不織布12の目付が同じでも繊維径などにより物性は異なるが、その場合でも上記ポアサイズを満たす必要がある。
【0033】
なお、不織布12の製造方法は、特に限定するものでないが、メルトブロー製法が好ましい。例えば不織布12の製法として一般なスパンボンド法、スパンレース法等であると、製法上細い繊維径のものを採取するのが困難である。そのため、必要な耐水圧・ポアサイズの不織布12を得ようとすると、高目付になり剛性が高く硬くなる傾向にある。
これに対し、メルトブロー製法によれば、溶融状態の樹脂を紡糸する際に高速高温空気で噴射、開繊して、ベルト又は金網上に集積して不織布の形態とするので、極細の繊維径にすることが容易となり、低目付で柔軟な状態で適宜な耐水圧・ポアサイズの不織布12を得ることができる。
【0034】
このような不織布12を構成する合成樹脂としては、特に問わないが、不織布が柔軟なことで表皮材の表面に折れ皺(角)が出にくくなり、外観上好ましいことから、例えば熱可塑性エラストマーが好ましく、その中でもスチレン系熱可塑性エラストマーがさらに好ましく、例えばSEPS(スチレンエチレンプロピレンスチレンブロック共重合体)、SIS(スチレンイソプレンスチレンブロック共重合体)、SBPS(スチレンブチレンプロピレンスチレンブロック共重合体)、SEBS(スチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体)などを挙げることができるほか、耐水性やポアサイズが上記範囲となる合成樹脂を用いることができる。
【0035】
また、不織布12は摩擦抵抗が少ないことが好ましい。不織布12の裏面が摩擦抵抗の少ない樹脂からなることにより、ミシンによる縫製の際の滑り性が向上し、作業効率を向上することができる。このため不織布12の裏面に用いる摩擦抵抗の低い樹脂としては特に制限は無いが、ポリエチレンテレフタレート・ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂などを挙げることができ、その中でも、メルトブロー製法により不織布化が容易なものとしては、ポリブチレンテレフタレート・ポリプロピレンである。
【0036】
さらに、不織布12としては、上記樹脂によるものを単層で用いるほか、他の合成樹脂を積層して不織布を構成するようにしても良く、すでに説明した積層状態で不織布としての物性を満たすものであれば良い。
【0037】
次に、この発明の他の一実施の形態について、図2により説明する。
図2は、この発明の表皮一体発泡成形用表皮材の縫製構造の他の一実施の形態にかかり、(a)は発泡性樹脂を注入する状態の縫製部の部分拡大断面図、(b)は連結縫製部の縫製状態を示す部分拡大図、(c)は飾り縫製部の縫製状態を示す部分拡大図である。
【0038】
この縫製構造20では、例えば2枚の表皮材2,2を縫製部6の連結縫製部13で連結するのに加え、連結縫製部13の両側に飾り縫製部21を設けダブルステッチとする場合に、これら飾り縫製部21、21からの発泡性樹脂の漏出も防止できるようにしている。
この縫製構造20では、図2(c)に示すように、例えば縫製される2枚の表皮材2,2の端縁2a,2aを間隔をあけて配置し、裏面である軟質ポリウレタンフォーム4,4上に不織布12を重ねるとともに、不織布12を端縁2a,2a間を跨ぐように配置する。そして、各表皮材2の端縁2aから所定のダブルステッチを露出させる位置で、ミシンなどにより不織布12を貫通して縫製し、飾り縫製部21、21をそれぞれに形成する。
これにより、飾り縫製部21、21は、不織布12が重ねられて縫製されることで、針孔が不織布によって塞がれることになり、発泡性樹脂の漏出が防止される。
次に、飾り縫製部21,21を形成した表皮材2,2を表生地3,3を重ね合わせるようにして重ね合わせ部11を形成することで、表皮材2,2の端縁2a,2a間の外側を不織布12で覆うようにし、この後、図2(b)に示すように、飾り縫製部21,21より端縁2a,2a側の所定位置で不織布12に挟まれた表皮材2,2の重ね合わせ部11をミシンなどで縫製し、連結縫製部13を形成する。
これにより、2枚の表皮材2,2が連結縫製部13で連結されるとともに、その両側に飾り縫製部21,21が形成された状態となる。
この状態では、表皮材2,2の表生地3,3が内側となる裏返し状態であることから、これを表生地3,3が外側になるように裏返し、図2(a)に示すように、連結縫製部13が発泡性樹脂を注入する空間の内側に位置する状態とする。
こうして立体的に縫製された表皮材2,2の内部に液状の発泡性樹脂が注入され、発泡によって表皮材と一体にされる。
【0039】
このような縫製構造20によれば、ミシンなどで縫製された飾り縫製部21を形成しても、その外側に不織布12が当てられてその上から縫い合わせてあるので、針孔が不織布12の微細な繊維によって塞がれるようになり、飾り縫製部21,21からの注入される発泡性樹脂の漏出が防止される。
また、この縫製構造20でも、ミシンなどで縫製された連結縫製部13は、すでに説明した上記縫製構造10と同様に、その外側に不織布12が当てられてその上から縫い合わせてあるので、針孔が不織布12の微細な繊維によって塞がれるようになり、注入される発泡性樹脂の漏出が防止されるとともに、2つの表皮材2,2の端縁2a,2a間に表生地3,3同士が離れてしまう口開き部8が形成される場合でも、口開き部8の外側である2つの表皮材2,2の端縁2a,2a間が不織布12で覆ってあるので、発泡性樹脂が浸入することを防止でき、連結縫製部13を越えて発泡性樹脂が漏出することを防止できる。
これにより、表皮一体発泡成形体であるヘッドレスト1の意匠性を飾り縫製部21,21で高めることができるとともに、成形後に飾り縫製部21,21や連結縫製部13の縫い合わせた部分などから漏出した発泡性樹脂を取り除く後処理の必要がなく、成形効率を高めて能率良く生産することができる。
【0040】
このような縫製構造20に使用される不織布12は、すでに説明した縫製構造10に用いる不織布12と同一の物性のもので良い。
【0041】
次に、この発明のさらに他の一実施の形態について、図3により説明する。
図3は、この発明の表皮一体発泡成形用表皮材の縫製構造のさらに他の一実施の形態にかかり、(a)は発泡性樹脂を注入する状態の縫製部の部分拡大断面図、(b)は飾り縫製部の縫製状態を示す部分拡大図、(c)は連結縫製部の縫製状態を示す部分拡大図である。
【0042】
この縫製構造30では、縫製構造20と同様に、例えば2枚の表皮材2,2を縫製部6の連結縫製部13で連結するのに加え、連結縫製部13の両側にダブルステッチによる飾り縫製部21を設ける場合に、これら飾り縫製部21、21からの発泡性樹脂の漏出も防止できるようにしたものであるが、この縫製工程が異なっている。
この縫製構造30では、図3(c)に示すように、例えば縫製される2枚の表皮材2,2の表生地3,3を合わせる中合わせ状態とするとともに、端縁2a,2aをそろえた状態として重ね合わせ部11を形成し、これら表皮材2,2の端縁2a、2aから所定の位置で、ミシンなどにより縫製して連結縫製部13を形成する。
これにより、2枚の表皮材2,2が連結縫製部13で連結された状態となる。
次に、図3(b)に示すように、この連結縫製部13から各表皮材2,2の端縁部2a,2aを折り返して折り返し部31,31を設け、これら折り返し部31,31の表皮材2,2の端縁部2a,2a側に不織布12を当てて連結縫製部13を覆うようにする。
そして、不織布12,12の外側から各折り返し部31,31をミシンなどで縫製して飾り縫製部32を形成する。
これにより、図3(a)に示すように、2枚の表皮材2,2が連結縫製部13で連結されるとともに、その両側に飾り縫製部32,32が形成された状態となる。
こうして立体的に縫製された表皮材2,2の内部に液状の発泡性樹脂が注入され、発泡によって表皮材と一体にされる。
【0043】
この縫製構造30によれば、飾り縫製部32、32は、不織布12が内側に当てられて縫製されることで、針孔が不織布によって塞がれることになり、発泡性樹脂の漏出が防止される。
また、表皮材2,2を連結する連結縫製部13は、表皮材2,2の端縁2a,2aを折り返した折り返し部31,31内に位置するとともに、その外側が飾り縫製部32,32で縫製されて折り返し部31,31の入口部が圧着されて閉じられることから、折り返し部31,31内への発泡性樹脂の浸透が防止され、飾り縫製部32,32の針孔からの折り返し部31,31内への発泡性樹脂の浸透も不織布12を重ねて縫製することで防止される。
【0044】
このような縫製構造30によれば、表皮一体発泡成形体であるヘッドレスト1の意匠性を飾り縫製部32,32で高めることができるとともに、成形後に飾り縫製部32,32や連結縫製部13の縫い合わせた部分などから漏出した発泡性樹脂を取り除く後処理の必要がなく、成形効率を高めて能率良く生産することができる。
【0045】
このような縫製構造30に使用される不織布12も、すでに説明した縫製構造10、20に用いる不織布12と同一の物性のもので良い。
【実施例】
【0046】
以下、この発明の実施例について、比較例とともに説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0047】
<実施例1>
厚さ5mm、硬度35N(JIS K6400−2)の軟質ポリウレタンフォームと表生地として合成皮革をフレームラミネート法により積層し表皮材を作成した。この表皮材を縦300mm横200mmの長方形に2枚切り出し、ポリエステル糸を使用して3方を図3のように工業用ミシンで縫製し、袋状の評価サンプルを作成した。このとき、縫製部には不織布1を設けた。
なお、この評価サンプルの内部に発泡樹脂(ポリエーテルポリオール100重量部、ポリイソシアネートとしてTDI−80とポリメリックMDIの混合物70重量部、反応性の触媒としてジメチルエタノールアミン(2−ジメチルアミノエタノール、DMEA)2.5重量部、非反応性の触媒としてトリエチレンジアミン(TEDA)1.0重量部、発泡剤として水3.5重量部および整泡剤としてシリコーンオイル1重量部の混合物)を注入ノズルから注入し発泡させ、硬化させることで評価サンプルと一体の発泡成形体を得た。
【0048】
<実施例2>
厚さ5mm、硬度35N(JIS K6400−2)の軟質ポリウレタンフォームと表生地として合成皮革をフレームラミネート法により積層し表皮材を作成した。この表皮材を縦300mm横200mmの長方形に2枚切り出し、ポリエステル糸を使用して3方を図1のように工業用ミシンで縫製し、袋状の評価サンプルを作成した。このとき、縫製部には不織布2を設けた。
なお、この評価サンプルに上記実験例1と同様の方法で発泡樹脂を注入し、評価サンプルと一体の発泡成形体を得た。
【0049】
<実施例3>
厚さ5mm、硬度35N(JIS K6400−2)の軟質ポリウレタンフォームと表生地として合成皮革をフレームラミネート法により積層し表皮材を作成した。この表皮材を縦300mm横200mmの長方形に2枚切り出し、ポリエステル糸を使用して3方を図2のように工業用ミシンで縫製し、袋状の評価サンプルを作成した。このとき、縫製部には不織布2を設けた。
なお、この評価サンプルに上記実験例1と同様の方法で発泡樹脂を注入し、評価サンプルと一体の発泡成形体を得た。
【0050】
<実施例4>
厚さ5mm、硬度35N(JIS K6400−2)の軟質ポリウレタンフォームと表生地として合成皮革をフレームラミネート法により積層し表皮材を作成した。この表皮材を縦300mm横200mmの長方形に2枚切り出し、ポリエステル糸を使用して3方を図3のように工業用ミシンで縫製し、袋状の評価サンプルを作成した。このとき、縫製部には不織布2を設けた。
なお、この評価サンプルに上記実験例1と同様の方法で発泡樹脂を注入し、評価サンプルと一体の発泡成形体を得た。
【0051】
<比較例1>
厚さ5mm、硬度35N(JIS K6400−2)の軟質ポリウレタンフォームと表生地として合成皮革をフレームラミネート法により積層し表皮材を作成した。この表皮材を縦300mm横200mmの長方形に2枚切り出し、ポリエステル糸を使用して3方を図3のように工業用ミシンで縫製し、袋状の評価サンプルを作成した。このとき、縫製部には不織布を設けなかった。
なお、この評価サンプルに上記実験例1と同様の方法で発泡樹脂を注入し、評価サンプルと一体の発泡成形体を得た。
【0052】
上記実験例で用いた不織布は以下のとおりである。
不織布1:目付が80g/mで平均繊維径が15.0μmのPETスパンレース。
不織布2:目付が25g/mのスチレン系エラストマー樹脂メルトブローン不織布(SEPS 平均繊維径4.5μm)の片面に目付が20g/mのポリブチレンテレフタレート(PBT 平均繊維径3.5μm)からなるメルトブローン不織布を熱エンボスにて熱圧着した2層積層体の不織布。通気度(JIS−L1096)が12.5cc/cm/s、耐水圧(JIS−L1092)が529mmHOであり、ポアサイズ(ASTMF−361−80のバブルポイント法に基づく 多孔質材料自動細孔測定装置 パームポロメーター POROUS MATERIAL,INC.製による)の平均値が12.1μm。
【0053】
上記実験例1〜5で得られた評価サンプルと一体の発泡成形体について、縫製部における染み出し防止性について目視で評価した。評価基準は以下のとおりである。
◎:縫製部から注入ウレタンが全く染み出していない。
〇:縫製部から注入ウレタンの染み出しが若干あるが、表面外観に支障はない。
×:縫製部からの注入ウレタンの染み出しが顕著であり、表面外観が悪い。
【0054】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】この発明の表皮一体発泡成形用表皮材の縫製構造の一実施の形態にかかり、(a)は発泡性樹脂を注入する状態で示す縫製部の部分拡大断面図、(b)は縫製開始状態で示す部分拡大図である。
【図2】この発明の表皮一体発泡成形用表皮材の縫製構造の他の一実施の形態にかかり、(a)は発泡性樹脂を注入する状態の縫製部の部分拡大断面図、(b)は連結縫製部の縫製状態を示す部分拡大図、(c)は飾り縫製部の縫製状態を示す部分拡大図である。
【図3】この発明の表皮一体発泡成形用表皮材の縫製構造のさらに他の一実施の形態にかかり、(a)は発泡性樹脂を注入する状態の縫製部の部分拡大断面図、(b)は飾り縫製部の縫製状態を示す部分拡大図、(c)は連結縫製部の縫製状態を示す部分拡大図である。
【図4】この発明の表皮一体発泡成形用表皮材の縫製構造が適用される成形体の一例の車両用のヘッドレストの概略断面図である。
【図5】従来の表皮一体発泡成形用表皮材の縫製構造の裏返し状態の横断面図である。
【図6】従来の縫製構造の発泡性樹脂注入状態の部分拡大断面図である。
【符号の説明】
【0056】
10 表皮一体発泡成形用表皮材の縫製構造
11 重ね合わせ部
12 不織布
13 連結縫製部
20 表皮一体発泡成形用表皮材の縫製構造
21 飾り縫製部
30 表皮一体発泡成形用表皮材の縫製構造
31 折り返し部
32 飾り縫製部
1 ヘッドレスト(成形体)
2 表皮材
2a 端縁
3 表生地
4 軟質ポリウレタンフォーム
5 芯材(インサート部品)
6 縫製部
7 シール部
8 口開き部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形体の外形状に縫製され内部に液状の発泡性樹脂を注入して発泡させ一体化する表皮一体発泡成形用表皮材の縫製構造であって、
前記表皮材を、少なくとも成形体の外側に配置される表生地と、この表生地の内側に接着されるポリウレタンフォームとで構成し、
この表皮材の端縁の前記表生地同士を重ね合わせて重ね合せ部を形成するとともに、この重ね合せ部の外側を覆って不織布を設け、この不織布の外側から前記重ね合せ部を縫製して連結縫製部を設けてなることを特徴とする表皮一体発泡成形用表皮材の縫製構造。
【請求項2】
前記連結縫製部を挟む両側に、前記不織布の端縁部と前記各表皮材とを縫製して飾り縫製部をそれぞれ形成したことを特徴とする請求項1記載の表皮一体発泡成形用表皮材の縫製構造。
【請求項3】
成形体の外形状に縫製され内部に液状の発泡性樹脂を注入して発泡させ一体化する表皮一体発泡成形用表皮材の縫製構造であって、
前記表皮材を、少なくとも成形体の外側に配置される表生地と、この表生地の内側に接着されるポリウレタンフォームとで構成し、
この表皮材の端縁の前記表生地同士を重ね合わせて重ね合せ部を形成し、この重ね合せ部で縫製して連結縫製部を形成し、この連結縫製部から前記各表皮材の端縁部を折り返して折り返し部を設け、これら折り返し部および前記連結縫製部を覆って不織布を設け、この不織布の外側から前記各折り返し部を縫製して飾り縫製部を形成してなり、これら飾り縫製部および前記連結縫製部からの発泡性樹脂の漏出を防止するように構成したことを特徴とする表皮一体発泡成形用表皮材の縫製構造。
【請求項4】
前記不織布が耐水圧450mmHO以上であるとともに、平均ポアサイズが0.1〜20μmであることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の表皮一体発泡成形用表皮材の縫製構造。
【請求項5】
前記不織布が、熱可塑性エラストマー樹脂からなる不織布の単層またはこれに他の樹脂からなる不織布を積層した複数層で構成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の表皮一体発泡成形用表皮材の縫製構造。
【請求項6】
前記不織布が、熱可塑性エラストマー樹脂からなる不織布の少なくとも一方面または両方面に、ポリブチレンテレフタレート樹脂からなる不織布を熱接着してなる2層または3層の積層体で構成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の表皮一体発泡成形用表皮材の縫製構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−22402(P2010−22402A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−183639(P2008−183639)
【出願日】平成20年7月15日(2008.7.15)
【出願人】(000000077)アキレス株式会社 (402)
【出願人】(508213595)株式会社シンテック (1)
【出願人】(307046545)クラレクラフレックス株式会社 (50)