説明

表皮代謝促進装置

【課題】肌の状態を健康的な状態に維持できるようにすること。
【解決手段】送風ポンプ3が吸引口1から吐出口2へ空気を送風し、その空気は紫外線ランプ5により紫外線照射を受けた光触媒4によって改質され、励起した酸素を含有する空気が吐出口2から吐出される。この吐出される空気を人体が吸入すると人体の自律神経系が安静化し、表皮の代謝活動が活発化するので、吸引を止めた後も肌が健康的な状態に維持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体の肌の表皮代謝を促進する表皮代謝促進装置に関し、更に詳しくは、経口にて吸引するか或いは直接肌に照射することにより特に光触媒により改質された空気を供給する表皮代謝促進装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人体の肌を健康的に保持するための装置としては、スチームを肌に直接噴霧する方式が知られていた。この従来方式では、スチームを顔などの肌の表皮に直接噴霧して、表皮に水分を与えることにより肌を健康的な状態に保持しようとするものである(特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3142859号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記従来の手法では、スチームを直接表皮に噴霧するので表皮の水分含有量は一時的に速やかに向上する一方で、スチーム噴霧後は元の状態に戻りやすく、肌状態の恒常的な健康維持は困難であると言う課題を有していた。
【0004】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、光触媒によって改質され一部は励起された酸素を含有する空気を人体に供給するか或いは肌に直接照射することにより、人体表皮の代謝活動が活発化し、半恒常的に表皮の健康維持が可能な表皮代謝促進装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、前記従来の手法の課題を解決するものであり、空気吸引口と吐出口の空気経路内に少なくとも光触媒による空気改質手段を設け、吐出口から吐出される改質され一部は励起した酸素を含む空気を人体が経口にて吸引するか乃至は肌に直接照射する構成であることを特徴とする表皮代謝促進装置であって、本装置から供給される改質された酸素を含む空気を人体が経口にて吸引した場合は、人体の自律神経系が安静化し、その結果、表皮の代謝活動が活発化するので、本装置から供給される空気の吸引を止めた後も肌が健康的な状態に維持されることとなる。
【0006】
また、本装置から供給される改質され一部は励起された酸素を含む空気を肌に直接照射した場合は、改質された酸素が肌に直接的に素早く吸収されることにより表皮の新陳代謝が活発となり肌が改質されるので、従来装置使用時の様な一時的な肌状態の健常化ではなく、装置の使用後にも持続可能な肌状態の健常化を実現する装置が可能となる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の表皮代謝促進装置は、光触媒によって改質され、励起された酸素を含む空気を供給し、人体がその供給ガスを経口にて吸引するか乃至は肌に直接照射することにより、人体の自律神経系が安静化するといういわゆるリラックス効果が得られ、また、肌が直接的に素早く改質された酸素を吸収し、表皮の新陳代謝が活発化して装置の使用後も肌状態が健康的に維持される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
第1の発明は、空気吸引口と吐出口からなり、吸引口と吐出口の空気経路内に少なくとも光触媒による空気改質手段を設け、吐出口から吐出される空気を人体が経口にて吸引する構成であることを特徴とする表皮代謝促進装置であり、本装置が供給する空気を人体が吸引することにより、改質された酸素が人体へのリラックス効果や自律神経系の安静化を生じ、その結果として表皮の代謝が活発化して、装置使用後にも健康な肌状態が維持されることとなる。
【0009】
第2の発明は、空気吸引口と吐出口からなり、吸引口と吐出口の空気経路内に少なくとも光触媒による空気改質手段を設け、吐出口から吐出される空気を肌に直接照射する構成であることを特徴とする表皮代謝促進装置であり、改質された酸素が肌に直接的に速やかに吸収されることにより肌表皮の新陳代謝が活発となり肌が改質されるので、従来装置使用時の場合のような一時的な肌状態の健常化ではなく、装置の使用後にも持続可能な肌状態の健常化を実現する装置が可能となる。
【0010】
第3の発明は、空気吸引口と吐出口からなり、吸引口と吐出口の空気経路内に少なくとも光触媒による空気改質手段と脱臭装置とを設け、吐出口から吐出される空気を人体が吸引する構成であることを特徴とする表皮代謝促進装置であり、脱臭装置による空気の無臭化により、空気吸引時の人体へのリラックス効果のみならず脱臭された空気を吸引することによる人体の自律神経系の安静化が生じ、その結果として表皮の代謝が活発化して、装置使用後にも健康な肌状態が維持されることとなる。
【0011】
第4の発明は、空気吸引口と吐出口からなり、吸引口と吐出口の空気経路内に少なくとも光触媒による空気改質手段と脱臭装置とを設け、吐出口から吐出される空気を肌に直接照射する構成であることを特徴とする表皮代謝促進装置であり、脱臭された空気を肌に照射することにより、不快な空気を人体が吸引することがないので、人体が感じる臭気への不快感に伴う自律神経の乱れがほとんど無く、従って、自律神経の乱れにより生じる肌表皮の新陳代謝の遅延化が防止され、新陳代謝促進がより効果的に行われることになる。
【0012】
第5の発明は、空気吸引口と吐出口からなり、吸引口と吐出口の空気経路内に少なくとも光触媒による空気改質手段と加湿装置とを設け、吐出口から吐出される空気を人体が吸引する構成であることを特徴とする表皮代謝促進装置であり、加湿装置により湿度調整された空気を吸引することにより、冬季などの空気が乾燥しやすい季節でも不快感を伴うことなく連続して本装置からの空気を吸引することができる。
【0013】
第6の発明は、空気吸引口と吐出口からなり、吸引口と吐出口の空気経路内に少なくとも光触媒による空気励起手段と加湿装置とを設け、吐出口から吐出される空気を肌に直接照射する構成であることを特徴とする表皮代謝促進装置であり、冬季などの空気がが乾燥しやすい季節でも、乾燥空気の直接照射による肌の乾燥が防止されることとなるので、本装置使用による表皮の改質がより効果的に行われることとなる。
【0014】
第7の発明は、光触媒を紫外線によって励起するので、励起手段を特に設けない室温での光触媒使用よりも更に効果的に触媒が活性化されることとなる。
【0015】
第8の発明は、光触媒をコロナ放電によって励起することにより、放電部材としてノコギリ歯状や針状に加工したサス部材などの安価な部材が使用できるので、装置全体として低コスト化が実現する。
【0016】
以下、本発明の実施例を図面を参照しながら説明する。なお、この実施例によって本発明が限定されるものではない。
【0017】
(実施例1)
図1は本発明の実施例1における表皮代謝促進装置の構成断面図である。図において、
送風ポンプ3が吸引口1から吐出口2へ空気を送風し、その空気は紫外線ランプ5により紫外線照射を受けた光触媒4によって改質され、励起した酸素を含有する空気が吐出口2から吐出されることとなる。
【0018】
本実施例における表皮代謝促進装置を用いて人体表皮の代謝活動の変化を測定した。以下にその実験方法について述べる。
【0019】
温湿度が25℃×50%RHに調整された実験室を用意し、被験者をその環境に充分馴染ませた後に実験を開始した。実験では、被験者の前腕部内側のあらかじめマーキングした皮膚測定点の経皮水分喪失量(以下、TEWLと略する)を測定した後に(本測定量をTEWL初期値とする)、その皮膚測定点に市販のセロハンテープを貼付、剥離し、その2時間後に皮膚測定点のTEWLを再度測定し(本測定量をTEWL比較値とする)、TEWL初期値をTEWL比較値で除した値をTEWL回復率として計算した。
【0020】
なお、TEWLとは、皮膚の単位面積、単位時間当たりに人体内部から皮膚を通過して蒸散する水分量であり、単位は通常g/(m×h)を用いる。皮膚の表皮が厚いほど皮膚を通過して人体外部へ蒸散する水分量は少なくなるので、TEWLは低い数値となる。また、セロハンテープを皮膚へ貼付、剥離した直後は、セロハンテープにより表皮が剥離され表皮の厚みが薄くなっているので、TEWLは高い数値となる。そして、上記の実験の様にセロハンテープ貼付、剥離前後のTEWL回復値を測定することにより、皮膚の代謝速度が測定されることとなる。つまり、セロハンテープ貼付、剥離の一定時間後のTEWL回復率が1に近いほど、皮膚の新陳代謝が活発で、表皮の代謝活動が促進されていることになる。
【0021】
本実施の形態では、表皮代謝促進装置の吐出部2から供給される空気の流量を4L/minに調整し、吐出部2から5mmの位置が被験者の鼻部位となるよう装置を設置した。なお比較実験として光触媒4が無い条件でも同様の実験を行い被験者の皮膚測定点のTEWL回復率を測定した。
【0022】
上述の実験を行った結果、セロハンテープ貼付、剥離2時間後のTEWL回復率は0.84であり、光触媒4が無い比較実験でのTEWL回復率は0.72であった。本結果から、本実施の形態の表皮代謝促進装置から供給される空気を吸引した場合、表皮の代謝速度が向上すること、つまり表皮の代謝が促進され、肌状態が健康に維持されることが確認された。
【0023】
(実施例2)
実施例1で用いたものと同一の装置を用いて、その装置から吐出される空気を直接肌に照射してTEWL回復率を測定した。また比較実験も実施の形態1と同様に光触媒4が無い装置を用意し、その装置から照射される空気を肌に直接してTEWL回復率を測定した。
【0024】
装置からの吐出空気量は実施例1と同じに調整し、また実験条件も実施の形態1と同一にした。
【0025】
上述の実験を行った結果、セロハンテープ貼付、剥離2時間後のTEWL回復率は0.80であり、光触媒4が無い比較実験でのTEWL回復率は0.73であった。本結果から、本実施の形態の表皮代謝促進装置から供給される空気を直接肌に照射した場合、表皮の代謝速度が向上すること、つまり表皮の代謝が促進され、肌状態が健康に維持されることが確認された。
【0026】
(実施例3)
図2は本発明の実施例3における表皮代謝促進装置の構成断面図である。図において、送風ポンプ1が吸引口1から吐出口2へ空気を送風し、その空気は紫外線ランプ5により紫外線照射を受けた光触媒4によって含有する酸素が改質された後に脱臭カラム6によって脱臭・無臭化され、ごく一部ではあろうが励起した酸素を含有する無臭の改質された空気が吐出口2から吐出されることとなる。
【0027】
本実施例における表皮代謝促進装置を用いて人体表皮の代謝活動の変化を測定したので、以下その実験方法について述べる。
【0028】
温湿度が25℃×50%RHに調整された実験室を用意し、被験者をその環境に充分馴染ませた後に実験を開始した。実験では、被験者の上腕部内側のあらかじめマーキングした皮膚測定点のTEWLを測定した後に(本測定量をTEWL初期値とする)、その皮膚測定点に市販のセロハンテープを貼付、剥離し、その2時間後に皮膚測定点のTEWLを再度測定し(本測定量をTEWL比較値とする)、TEWL初期値をTEWL比較値で除した値をTEWL回復率として計算した。
【0029】
本実験では、表皮代謝促進装置の吐出部2から供給される空気の流量を4L/minに調整し、吐出部2から5mmの位置が被験者の鼻部位となるよう装置を設置した。
【0030】
上述の実験を行った結果、セロハンテープ貼付、剥離2時間後のTEWL回復率は0.86であり、脱臭カラム6が無い実施の形態1におけるTEWL回復率0.80よりも若干にTEWL回復率が向上した。本結果から、本実施の形態の表皮代謝促進装置から供給される空気を吸引した場合、表皮の代謝速度が向上すること、つまり表皮の代謝が促進され、肌状態が健康に維持されることが確認された。
【0031】
(実施例4)
実施例3で用いたものと同一の装置を用いて、その装置から吐出される空気を直接肌に照射してTEWL回復率を測定した。また、装置からの吐出空気量は実施例2と同じに調整し、また実験条件も実施例2と同一にした。
【0032】
上述の実験を行った結果、セロハンテープ貼付、剥離2時間後のTEWL回復率は0.81であり、脱臭カラムが無い実施例2でのTEWL回復率よりも若干にTEWL回復率が向上した。本結果から、本実施例の表皮代謝促進装置から供給される空気を直接肌に照射した場合、表皮の代謝速度が向上すること、つまり表皮の代謝が促進され、肌状態が健康に維持されることが確認された。
【0033】
(実施例5)
図3は本発明の実施例3における表皮代謝促進装置の構成断面図である。図において、送風ポンプ1が吸引口1から吐出口2へ空気を送風し、その空気は紫外線ランプ5により紫外線照射を受けた光触媒4によって含有する酸素が改質された後に加湿装置7によって湿度が調整され、励起した酸素を含有し湿度に調整された空気が吐出口2から吐出されることとなる。
【0034】
本実施例における表皮代謝促進装置を用いて人体表皮の代謝活動の変化を測定したので、以下その実験方法について述べる。
【0035】
温湿度が25℃×50%RHに調整された実験室を用意し、被験者をその環境に充分馴染ませた後に実験を開始した。実験では、被験者の上腕部内側のあらかじめマーキングした皮膚測定点のTEWLを測定した後に(本測定量をTEWL初期値とする)、その皮膚測定点に市販のセロハンテープを貼付、剥離し、その2時間後に皮膚測定点のTEWLを再度測定し(本測定量をTEWL比較値とする)、TEWL初期値をTEWL比較値で除した値をTEWL回復率として計算した。
【0036】
本実験では、表皮代謝促進装置の吐出部2から供給される空気の流量を4L/minに調整し、温湿度が25℃×65%RHになるよう加湿装置を図示しない湿度センサーを用いて調整した。また、吐出部2から5mmの位置が被験者の鼻部位となるよう装置を設置した。
【0037】
上述の実験を行った結果、セロハンテープ貼付、剥離2時間後のTEWL回復率は0.88であり、加湿装置7が無い実施の形態1におけるTEWL回復率よりも若干にTEWL回復率が向上した。本結果から、本実施の形態の表皮代謝促進装置から供給される空気を吸引した場合、表皮の代謝速度が向上すること、つまり表皮の代謝が促進され、肌状態が健康に維持されることが確認された。
【0038】
(実施例6)
実施例5で用いたものと同一の装置を用いて、その装置から吐出される空気を直接肌に照射してTEWL回復率を測定した。また、装置からの吐出空気量は実施例2、4と同じに調整し、また実験条件も実施例2、4と同一にした。
【0039】
上述の実験を行った結果、セロハンテープ貼付、剥離2時間後のTEWL回復率は0.82であり、加湿装置7が無い実施の形態2でのTEWL回復率よりも若干にTEWL回復率が向上した。本結果から、本実施例の表皮代謝促進装置から供給される空気を直接肌に照射した場合、表皮の代謝速度が向上すること、つまり表皮の代謝が促進され、肌状態が健康に維持されることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0040】
以上のように本発明にかかる表皮代謝促進装置は、装置単体で使用する用途以外にも、空気清浄機やエアコンなどの空気質改善装置に取り付ける用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施例1、2における表皮代謝促進装置の構成を示す断面図
【図2】本発明の実施例3、4における表皮代謝促進装置の構成を示す断面図
【図3】本発明の実施例5、6における表皮代謝促進装置の構成を示す断面図
【符号の説明】
【0042】
1 吸引口
2 吐出口
3 送風ポンプ
4 光触媒
5 紫外線ランプ
6 脱臭カラム
7 加湿装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を吸引する吸引口と、空気を吐出する吐出口と、前記吸引口と前記吐出口とを連通する空気経路と、該空気経路内に設けられ少なくとも光触媒による空気改質手段とを備え、
前記吐出口から吐出される空気を人体が吸引することを特徴とする表皮代謝促進装置。
【請求項2】
空気を吸引する吸引口と、空気を吐出する吐出口と、前記吸引口と前記吐出口とを連通する空気経路と、該空気経路内に設けられ少なくとも光触媒による空気改質手段とを備え、
前記吐出口から吐出される空気を肌に直接照射することを特徴とする表皮代謝促進装置。
【請求項3】
空気を吸引する吸引口と、空気を吐出する吐出口と、前記吸引口と前記吐出口とを連通する空気経路と、該空気経路内に設けられ少なくとも光触媒による空気改質手段と、脱臭装置とを備え、前記吐出口から吐出される空気を人体が吸引することを特徴とする表皮代謝促進装置。
【請求項4】
空気を吸引する吸引口と、空気を吐出する吐出口と、前記吸引口と前記吐出口とを連通する空気経路と、該空気経路内に設けられ少なくとも光触媒による空気改質手段と、脱臭装置とを備え、前記吐出口から吐出される空気を肌に直接照射することを特徴とする表皮代謝促進装置。
【請求項5】
空気を吸引する吸引口と、空気を吐出する吐出口と、前記吸引口と前記吐出口とを連通する空気経路と、該空気経路内に設けられ少なくとも光触媒による空気改質手段と、加湿装置とを備え、前記吐出口から吐出される空気を人体が吸引することを特徴とする表皮代謝促進装置。
【請求項6】
空気を吸引する吸引口と、空気を吐出する吐出口と、前記吸引口と前記吐出口とを連通する空気経路と、該空気経路内に設けられ少なくとも光触媒による空気改質手段と、加湿装置とを備え、前記吐出口から吐出される空気を肌に直接照射することを特徴とする表皮代謝促進装置。
【請求項7】
光触媒の触媒活性化手段が紫外線であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の表皮代謝促進装置。
【請求項8】
光触媒の触媒活性化手段がコロナ放電であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の表皮代謝促進装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−102197(P2006−102197A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−293510(P2004−293510)
【出願日】平成16年10月6日(2004.10.6)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】