説明

表示シート

【課題】取り付け場所の制限を受けず、また識別性を損なうことなく強い取り付け力を有する表示シートを提供する。
【解決手段】 シート基材101と、シート基材101に印刷される任意の画像が形成された印刷層103と、シート基材101又は印刷層103に積層された透明吸着層105と、を備え、透明吸着層105は、シート基材101又は印刷層103に対向する面に設けられた透明粘着層201と、透明粘着層201を支持する支持層203と、支持層203の透明粘着層201と反対の面にシリコーンゲル材料で形成されたシリコーンゲル層205とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、画像を形成したシートをガラス面などに取り付けて使用する表示シートに関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆる若葉マークなどの交通標識が付された表示シートは、車内のガラス面もしくは車外のボディーに取り付けられている。取り付け方法としては、ガラス面であれば吸着盤を用い、ボディーであればマグネットを用いたものが知られている(特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開2001-022309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吸着盤を用いた取り付け方法において、取り付け強度は、吸着盤の面積に比例するため、取り付け力を強くするためには吸着盤を大きくしなければならない。しかし、視認方向に対して吸着盤が表示部を覆ってしい識別性が損なわれることから、吸着盤の大きさにも限度がある。また、マグネットを用いた取り付け方法は、取り付け場所として磁性体を選択しなければならず、取り付け場所が制限される。
【0005】
なお、表示シートに粘着層を形成し、粘着力により取り付ける方法も考えられるが、表示シートを剥がしたときに、粘着剤が取り付け面に残ってしまう場合が残るある。また取り付け面が高温になるボディーのような場所では、高温により粘着力が低下するという問題もある。
【0006】
この発明は、取り付け場所の制限を受けず、また識別性を損なうことなく強い取り付け力を有する表示シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る表示シートは、シート基材と、前記シート基材に印刷される任意の画像が形成された印刷層と、前記シート基材又は前記印刷層に積層された透明吸着層と、を備え、前記透明吸着層は、前記シート基材又は前記印刷層に対向する面に設けられた透明粘着層と、前記透明粘着層を支持する支持層と、前記支持層の前記透明粘着層と反対の面にシリコーンゲル材料で形成されたシリコーンゲル層とを有する。
【0008】
上記構成によれば、ゲル材料が有する吸着力により表示シートを取り付けことができるため、取り付け面の自由度が増し、また印刷層に形成した画像を直接若しくは薄肉の透明吸着層を介して識別することができるため、識別性を損なうこともない。
【0009】
この発明において、前記シート基材は可視光に対して透明であり、前記受像層は前記シート基材の何れか一方に形成することができる。この構成によれば、シート基材が可視光に対して透明であるため、シート基材の一方に設けた受像層の画像を他方からの識別することができる。このため、表示シートの表裏面に同一の画像を形成する場合は、シート基材の一方に対してのみの印刷工程でよいため、製造工程を簡素化することができる。
【0010】
また、この発明において、前記シート基材は可視光に対して不透明であり、前記受像層は前記シート基材の少なくとも一方に形成することができる。この構成によれば、シート基材が可視光に対して不透明であるため、シート基材の一方に設けた受像層を他方から識別することはできないが、表示シートの表裏面に異なる画像を形成したい場合には、シート基材の両面にそれぞれ異なる画像を印刷することにより、表示シートの表裏面に異なる画像を形成することができる。
【0011】
なお、前記シリコーンゲル層を、オルガノポリシロキサンを主成分とする付加反応硬化タイプのシリコーンゲル材料と、オルガノポリシロキサンを主成分とする付加反応硬化タイプのシリコーンゴム材料とを配合して成る配合原料を、前記支持層に塗布し硬化させて形成することができる。このようにシリコーンゲル層を形成することにより、シリコーンゲル層の強度を向上させることができる。
【0012】
なお、表示シートの形状を前記印刷層に印刷された画像の形状に合わせて調整してもよい。これにより表示シート自体の形状と画像とが一致しているため、画像の識別性が向上するとともに、意匠的効果も得ることができる。また、前記印刷層に印刷する画像として交通標識を挙げることができる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、 ゲル材料が有する吸着力により表示シートを取り付けことができるため、取り付け面の自由度が増し、また印刷層に形成した画像を直接若しくは薄肉の透明吸着層を介して識別することができるため、識別性を損なうこともない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の一実施の形態に係る表示シートの分解斜視構成を示す図である。
【図2】この発明の他の実施の形態に係る表示シートの分解斜視構成を示す図である。
【図3】この発明のさらに他の実施の形態に係る表示シートの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1はこの発明の実施の形態に係る表示シートの構成を示す分解斜視図である。表示シート100は、透明シート基材101と、透明シート基材101の一方に面に印刷により積層される印刷層103と、印刷層103の上に積層される透明吸着層105と、を備える。
【0016】
印刷層103は任意の画像の形状に調整させており、図示例では若葉マークの交通標識の形状に調整した場合を示している。透明シート基材101に直接印刷層103を積層させてもよいが、透明フィルム上に任意の形状の印刷層を形成した状態で、透明フィルムを透明シート基材101に積層するようにしてもよい。
【0017】
透明吸着層105は、透明シート基材101に積層した印刷層103が外部から識別できるように可視光に対して透明であり、また、表示シート100を吸着させるための吸着機能を有する。
【0018】
透明吸着層105は、透明粘着層201と、透明粘着層201を支持する支持層203と、支持層203の透明粘着層201とは反対の面で支持するシリコーンゲル材料で形成されたシリコーンゲル層205とを有する。
【0019】
透明吸着層105は、透明粘着層201を介して透明基材シート101及び印刷層103に対して積層される。透明吸着層105を積層した状態の表示シート100を、外部に露出するシリコーンゲル層205の吸着作用を利用して取り付け面に取り付けることができる。
【0020】
図示例では、透明吸着層105を印刷層103が積層されている面の透明シート基材101に設けた場合を示しているが、印刷層103が積層されていない面に設けることもできる。
【0021】
なお、透明シート基材101の一方の面に印刷した画像は、他方の面からも識別することができるため、表示シート100の表裏方向から同じ画像を観察する場合には表示シート100の何れか一方の面に画像を印刷すればよい。しかし、表示シートの表裏方向から異なる画像を観察したい場合も考えらる。
【0022】
図2は表示シートの他の実施形態を示している。表示シート300は、可視光に対して不透明なシート基材301と、シート基材310の一方の面に積層される第一の画像を含む印刷層303aと、シート基材310の他方の面に積層される第2の画像を含む印刷層303bと、印刷層303aに積層される透明吸着層305aと、 印刷層303bに積層される透明吸着層305bと、を備える。
【0023】
図1に示した表示シート100と異なる点は、表示シート300の表裏面にそれぞれ異なる画像の印刷層303a、303bを積層させた点、表示シート300の表裏面にそれぞれ透明吸着層305a、305bを積層させた点、印刷層303a、303b及び透明吸着層305a、305bを支持するシート基材301が不透明である点にある。
【0024】
シート基材301は、材料自体を不透明材料で形成してもよいが、透明シート基材に遮光機能を有するフィルム又はシートを設けたものでもよい。
【0025】
表示シート300の表裏面にそれぞれ透明吸着層305a、305bを積層させることにより、表示シート300の表裏面の各画像を選択的に識別させることができる。例えば、一方の面に若葉マークの交通標識の画像を印刷し、他方の面にもみじマークの交通標識の画像を印刷した表示シート300をボディに取り付けて使用するような場合において、一方の面に印刷された若葉マークを識別させたい場合は、他方の面に積層された透明吸着層をボディに吸着させ、また、他方に印刷されたもみじマークを識別させたい場合は、一方の面に積層された透明吸着層をボディに吸着させて使用することができる。
【0026】
透明吸着層に吸着機能を与えるゲル層は、シリコーンゲル材料で構成されており、それ自体が吸着性を有するが、強度が不足することから、表示シートの吸着及び剥離を繰り返すと、透明吸着層に亀裂が生じるおそれがある。ゲル層を圧肉にして強度を強くすることもできるが、ゲルの弾性力が大きくなり曲面への吸着追従性が低下してしまう。
【0027】
そこで透明吸着層の強度を向上させて、表示シートの薄肉化を可能にするために、以下の構成により形成した透明吸着層を使用した(特開2008-291232号公報参照)。まず、シリコーンゲルシートの作成において、オルガノポリシロキサンを主成分とする付加反応硬化タイプのシリコーンゲル材料と、オルガノポリシロキサンを主成分とする付加反応硬化タイプのシリコーンゴム材料とを配合して成る配合原料を支持層に塗布し硬化させたところ、適当な引っ張り強度を確保することが確認された。
【0028】
次に、上記シリコーンゲルシートを支持する透明基材(PETフィルム)に透明タイプのアクリル系の粘着剤を塗工し、粘着剤を乾燥させた後、上記シリコーンゲルシートを貼り合わせて透明吸着層を得た。
【0029】
透明基材上に接着されたシリコーンゲルシートについて説明する。シリコーンゲル材料としてCY52-276(東レ・ダウコーニング株式会社製)を94重量部と、シリコーンゴム材料としてLR6200(株式会社旭化成ワッカーシリコーン社製)を6重量部と、白金触媒0. 5重量部とを混合して調整した配合原料をコーティング装置に供給する。ロールに巻き付けられて連続的に供給される予めプライマが塗布されたPETフィルム(厚さ50μm)をコーティング装置に供給し、フィルム表面に配合原料を塗布して全体の厚みを300μmとする。配合原料が塗布されたフィルムを、150℃の乾燥炉に5分間通して硬化する。これにより、片面はPETフィルムと一体化し 、反対面は表面強度を保持しつつ、ゲル特有のクッション性を有するシリコーンゲルシートが得られる。さらに、シリコーンゲルシートのシリコーン材側に保護フィルムを貼り合わせた。
【0030】
上記シリコーンゲルシートの強度について説明する。シリコーンゲル材料とシリコーンゴム材料とを上記の割り合いで混合することで、シリコーンゲル材料で調整した場合に比べて強度を向上させることができた。
【0031】
強度試験の内容は、シリコーンゲル材料(CY52-276(東レ・ダウコーニング株式会社製))94重量部及びシリコーンゴム材料(LR6200(株式会社旭化成ワッカーシリコーン社製))6重量部を含む実施品、シリコーンゲル材料(CY52?276(東レ・ダウコーニング株式会社製))94重量部のみを含む比較品を、JIS K6251に基づき、ダンベル状試験片3号を規定速度で破断するまで引っぱり、破断に至まので時間を測定し引張り強度を測定した。結果は、実施品が0.0079MPa、比較品が0.0023MPaとなった。
【0032】
このことから、シリコーンゲル材料のみに比べて、シリコーンゴム材料を混合することにより、引張り強度が大きくなることが確認できた。なお、シリコーンゴムの混合割合を高くすることにより、引張り強度も大きくなることが推測されるが、シリコーンゴムの混合割合が高くなると、弾力性能が低くなることが推測される。
【0033】
次に表示シートを構成する印刷層について説明する。受像層はシート基材に対してシルク印刷を行うことにより形成する。シルク印刷は耐候性に優れているため、表示シートを屋外で使用する場合に適している。シート基材は耐候性に優れたポリカーボネート樹脂であるパンライト(登録商標)2151(帝人化成株式会社製)を用いた。帝国インキ製造株式会社製のVGインク(白色以外)及びHASインク(白色)を用い、帝国インキ製造株式会社製のDー002溶剤を添加剤として用いてインクを調整した。シート基材(300μm)に株式会社桜井グラフィックシステムズ社製のスクリーン印刷機MS?72Aでシルク印刷を行った。その後、株式会社桜井グラフィックシステムズ社製のリーフ式乾燥機MS?90LHに30分から40分間通してインクを乾燥させた。
【0034】
受像層に印刷する画像は、交通標識などの図形に限らず文字や色彩のみであってもよい。さらに、図3に示すように表示シートの形状を図形の輪郭や文字の輪郭に合わせて裁断し調整するようにしてもよい。また、印刷層の厚さは、シルク印刷によれば適宜調整可能であるが、インクを厚盛りにして立体形状の受像層を形成するようにしてもよい。このとき耐水性等に優れた蛍光性を有するインクを選択することにより、立体形状を強調され、識別性をとともに意匠的効果も得ることができる。
【0035】
上記構成によれば、表示シートを、シート基材と、前記シート基材に任意の画像を印刷した印刷層と、前記シート基材又は前記印刷層に積層された透明吸着層と、を備え、前記透明吸着層は、前記シート基材又は前記印刷層に対向する面に設けられた透明粘着層と、前記透明粘着層を支持する支持層と、前記支持層の前記透明粘着層と反対の面にシリコーンゲル材料で形成されたシリコーンゲル層とを有して構成することにより、ゲル材料が有する吸着力により表示シートを取り付けことができるため、取り付け面の自由度が増し、また印刷層に形成した画像を直接若しくは薄肉の透明吸着層を介して識別することができるため、識別性を損なうこともない。
【0036】
また、前記シリコーンゲル層を、オルガノポリシロキサンを主成分とする付加反応硬化タイプのシリコーンゲル材料と、オルガノポリシロキサンを主成分とする付加反応硬化タイプのシリコーンゴム材料とを配合して成る配合原料を、前記支持層に塗布し硬化させて形成することにより、シリコーンゲル層の強度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0037】
100、300 表示シート
101 透明シート基材
103、303a、303b 印刷層
105、305a、305b 吸着層
201 透明粘着層
203 支持層
205 シリコーンゲル層
301 シート基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート基材と、前記シート基材に印刷される任意の画像が形成された印刷層と、前記シート基材又は前記印刷層に積層された透明吸着層と、を備え、
前記透明吸着層は、前記シート基材又は前記印刷層に対向する面に設けられた透明粘着層と、前記透明粘着層を支持する支持層と、前記支持層の前記透明粘着層と反対の面にシリコーンゲル材料で形成されたシリコーンゲル層とを有する表示シート。
【請求項2】
前記シート基材は可視光に対して透明であり、前記受像層は前記シート基材の何れか一方に形成されている請求項1記載の表示シート。
【請求項3】
前記シート基材は可視光に対して不透明であり、前記受像層は前記シート基材の少なくとも一方に形成されている請求項1記載の表示シート。
【請求項4】
前記シリコーンゲル層は、オルガノポリシロキサンを主成分とする付加反応硬化タイプのシリコーンゲル材料と、オルガノポリシロキサンを主成分とする付加反応硬化タイプのシリコーンゴム材料とを配合して成る配合原料を、前記支持層に塗布し硬化させて形成した請求項1から3の何れか一項に記載の表示シート。
【請求項5】
前記印刷層に印刷された画像の形状に調整した請求項1から4の何れか一項に記載の表示シート。
【請求項6】
前記印刷層に交通標識を印刷した請求項1から5の何れか一項に記載の表示シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−118063(P2011−118063A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−273895(P2009−273895)
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【出願人】(596012814)シーシーエス株式会社 (1)
【Fターム(参考)】