説明

表示・外観検査装置

【目的】 複数のカメラを用いて並列処理するもので、カメラ間の感度差や照明系の差異による影響を緩和し、隣接する画像に連続性をもたせた状態で画像処理が行える検査精度の信頼性の高い表示・外観検査装置を提供する。
【構成】 反射率が一様な標準画像を複数のカメラで撮像し、隣接カメラの両画像の低周期の濃度ムラをシェーディング補正部20によって一様な明るさに補正し、オフセット調整部30により隣接画像の重複部分の濃度値を等しい状態とし、結合補正部40により重複部分での隣接画像の濃度値に重み付け処理をして連続した画像として結合する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、液晶ディスプレイの表示状態を検査したり、ウエハのパターンや複写した紙の外観(複写品位)を検査する表示・外観検査装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、被検査物の表示パターンの検査や外観上の傷、汚れ等を検査するシステムでは、ある一定の解像度を得るために、被検査物を光学系により拡大し、視野送り機構を設けて連続的に被検査物の局部画像を取り込み、入力した検査画像ごとに検査を行うのが一般的であった。
【0003】しかし、この手法では、検査する画像の枚数が増加すると、それに伴い送り機構部による視野の移動回数が増加するため、検査時間が長くなるという欠点が指摘されていた。より具体的には次のとおりである。
【0004】従来行われている表示・外観検査では、CCDカメラの解像度から512×512画素の画像メモリを用いることが一般的に行われていた。このため、1画素1μmの分解能を得ようとすれば、視野は512μmとなり、例えば2mm×2mmの被検査物を検査する場合、16回の画像入力・処理が必要となる。また、これに伴い、被検査物の着目視野をカメラの撮像位置に移動するために機構的な移動も16回必要となる。このようなケースでは、画像の処理自体は0.1〜0.5秒で完了するのに対して、送り機構系が1回当たりの移動・制振・停止に要するのは約1秒と長く、このことが検査時間短縮の上で大きな阻害要因となっていた。また、きわめて高精度な位置決めが必要であるため、送り機構系の価格が画像処理系の価格に対して2〜4倍となるのが通常である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記の問題を解決するため、複数のカメラを用いて並列処理する手法も考えられる。この場合、機構系の移動が省略されるため、1/10〜1/2の時間短縮が可能となる。また、送り機構系の価格も低く抑えられる。
【0006】しかしながら、並列に使用するカメラの感度差や光学系・照明系に差があるため、カメラ間で連続している表示やパターンの欠陥の検出がむずかしく、処理が複雑になるという問題があった。具体的には次のとおりである。
【0007】図6の(a),(b)は2台のカメラA,Bにより入力された濃淡画像のシェーディング状態を示す。通常、CCDカメラにより入力された画像は、■レンズ系の固体差、■照明による差異、■CCD各素子の感度のバラツキの影響を受ける。このうち、レンズ系の固体差、照明による差異の影響は低周期の濃度ムラとなり、レンズ系および一般的な照明の特性により、中央が明るく周辺が暗くなる傾向があるため、そのシェーディングは図6で点線で示すような結果となる。これに対して、CCD各素子の感度のバラツキは高周期となるため、最終的な入力画像のシェーディングは図6で実線で示す形となる。
【0008】このような個々のカメラによってシェーディング特性が異なる入力画像を視野の重複部分Cの濃度値から得られる補正値εを用いて、重複部分Cの平均濃度値が等しくなるようにシェーディング状態を補正する。これが図7の(a),(b)の状態である。補正値εは、ε=カメラAでの重複部分の平均濃度値/カメラBでの重複部分の平均濃度値で表され、ε=1となるようにシェーディング補正する。そして、両カメラA,Bの画像を実際にその重複部分Cで結合して図8のように連続させた画像を得る。しかし、結合部分において両方の画像の平均濃度はおおむね一致しても、破線で示す低周波の濃度変化と実線で示す高周期の濃度変化とがともに不一致となり、画質の良好な連続した画像を得ることができない。
【0009】本発明は、このような事情に鑑みて創案されたものであって、複数のカメラを用いて並列処理することを前提に、カメラ間の差による影響を緩和し、隣接する画像に連続性をもたせた状態で画像処理が行える検査精度の信頼性の高い表示・外観検査装置を提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明に係わる表示・外観検査装置は、複数のカメラと、各カメラが撮像した反射率が一様な標準画像の低周期の濃度ムラを一様な明るさに補正するシェーディング補正部と、前記シェーディング補正された隣接カメラの画像の重複部分での濃度値を等しくするオフセット調整部と、前記重複部分での隣接画像の濃度値に重み付け処理をして重複部分で連続した画像を得る結合補正部とを備えたことを特徴とするものである。
【0011】また、本発明に係わる表示・外観検査装置は、シェーディング補正とオフセット調整と結合補正とを総合した補正値がルックアップテーブルに格納されており、各カメラ入力に対してテーブル参照を行うことを特徴とするものである。
【0012】
【作用】上記の構成においては、複数のカメラを用いて同時並列的に被検査物の画像を入力して処理するから、1台のカメラを送り機構系で移動させていた従来例に比べて処理速度の向上と低価格化が図れる。そして、複数のカメラ間に感度差や照明系の差異があっても、シェーディング補正とオフセット調整と結合補正とによって隣接画像を重複部分で正しく連続した画像として取り扱える。
【0013】また、テーブル参照で総合の補正値から変換するようにしておけば、処理時間の一層の短縮化が図られる。
【0014】
【実施例】以下、本発明に係わる表示・外観検査装置の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0015】図1は実施例の表示・外観検査装置の概略構成を示すブロック図である。図1において、10は目的に応じて用意された複数台のCCDカメラ、20は各カメラ10によって撮像されて送られてきた画像に対して低周期のシェーディング補正を行うシェーディング補正部、30は各カメラ10における画像重複部分のデータによりオフセット調整を行うオフセット調整部、40は隣接画像の結合部分の連続性を維持するための結合補正を行う結合補正部、50は各結合補正部40からの画像を合成して記憶する合成画像記憶部、60はシステムの目的に応じて合成画像記憶部50から読み出した画像データに所要の処理を施す画像処理部、70は各部の一連の処理を統括的に制御する全体制御部である。
【0016】予め、反射率の一様な被写体を用意し、この被写体を格子状に配列された複数のカメラ10で撮像し、各カメラ10ごとにその撮像した画像データをシェーディング補正部20に送る。各シェーディング補正部20ではCCD1画素単位でカメラごとのシェーディング補正を行う。ここでは、横方向で隣接するカメラAによる画像とカメラBによる画像とについて説明する。図2R>2の(a),(b)に示すように、カメラAによる画像の濃淡データとカメラBによる画像の濃淡データとでは、レンズ系の固体差や照明による差異の影響によって点線で示す低周期の濃度ムラが生じ、中央が明るく周辺が暗くなっている。そして、両濃淡データはレベルが互いに相違している。そこで、カメラA,Bについてそれぞれ式(1),(2)に基づいてシェーディング補正を行う。
【0017】
【数1】


【0018】
【数2】


【0019】このシェーディング補正により、図3の(a),(b)に示すように中央が明るく周辺が暗いというシェーディングの傾向が是正され、両画像とも点線で示す低周期のシェーディングが一様な明るさとなる。つまり、濃度値AIxy′,BIxy′がともにx方向全幅にわたって一定となる。
【0020】次に、シェーディング補正された画像データをオフセット調整部30に送る。
【0021】オフセット調整部30は、視野の重複部分Cにおける両カメラA,Bの濃度値AIxy′,BIxy′が図4の(a),(b)に示すように互いに等しくなるようにオフセット調整を行う。このオフセット調整においては、ε=カメラAでの重複部分の平均濃度値/カメラBでの重複部分の平均濃度値で表される補正値εを用いて、ε=1となるように調整する。
【0022】上記の図3のシェーディング補正と図4のオフセット調整とにより、レンズ系の固体差と照明による差異が吸収される。しかし、CCD各素子の感度バラツキは完全には吸収できていない。これは、CCD各素子の感度バラツキの中には電源変動等に起因する不安定なノイズ成分も含まれているからである。したがって、厳密には、2枚の画像境界上にやはり濃淡的に不連続なラインが現れる。
【0023】そこで、オフセット調整後の画像データを結合補正部40に送る。結合補正部40は、カメラAとカメラBの視野の重複部分Cにおいて、式(3)に基づいた重み付け処理を施した上で、両カメラA,Bの画像をその重複部分Cで結合して図5のように連続した画像を得る。
【0024】
【数3】


【0025】この式から、例えばx方向CCD画素が重複部分Cの左端にあって、x=xC1となるとき、第2項が0となり、また、xCN−xC1=Nから、その左端のCCD画素での濃度値は、Ixy=AIxy′となる。また、例えばx方向CCD画素が重複部分Cの右端にあって、x=xCNとなるとき、第1項が0となり、また、xCN−xC1=Nから、その右端のCCD画素での濃度値は、Ixy=BIxy′となる。
【0026】すなわち、CCD画素の位置が重複部分Cの左側にあるほどカメラAによる濃度値AIxy′の方が強調され、右側にあるほどカメラBによる濃度値BIxy′の方が強調される。
【0027】以上の重み付け処理により、図5に示すようにカメラA,B間で不連続成分を生じることのない状態で滑らかに連続した画像結合が行われる。
【0028】以上の説明は、横方向(x方向)で隣接する任意の2つのカメラA,Bでの画像についてのものであったが、この説明は縦方向(y方向)で隣接する任意の2つのカメラでの画像についても同様に当てはまる。
【0029】以上のように、比較的簡単な処理により広視野画像の入力が可能であり、従来のシステムに対して2〜10倍の速度向上が見込める。また、単純なカメラ台数の増加によって高価な送り機構系を省略できるため、1/2〜1/4程度の低価格化が可能である。
【0030】なお、上記した式(1),(2),(3)による補正は、予め用意した反射率一様な被写体を撮像して行われるもので、その補正の値はCCD各素子ごとに一意に決まるから、実際の設計に当たっては、個々のカメラごとにCCD各素子ごとの補正値をルックアップテーブルの形でメモリ内に記憶させておき、実演算を行うことなくテーブル参照で正確な濃度値を求めるように構成してもよい。この場合、演算に要する時間を短くできるので、カメラ入力とのリアルタイム処理も可能となる。
【0031】
【発明の効果】本発明に係わる表示・外観検査装置によれば、カメラ移動の機構系を必要とした従来例に比べて処理速度の向上と低価格化を図ることができるとともに、複数のカメラ間に感度差や照明系の差異があっても、シェーディング補正とオフセット調整と結合補正とによって隣接画像を重複部分で連続した画像として処理することができ、その検査精度の信頼性を高いものとすることができる。
【0032】また、カメラ入力をテーブル参照で総合の補正値から変換するようにしておくことにより、処理時間を一層短縮化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係わる表示・外観検査装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】実施例における2台のカメラにより入力された画像のシェーディング状態を示す図である。
【図3】実施例において低周期のシェーディングが一様な明るさに補正された状態を示す図である。
【図4】実施例においてオフセット調整が行われた状態を示す図である。
【図5】実施例において両画像の重複部分の濃度値に重み付け処理を行って連続性をもたせた状態の図である。
【図6】従来例における2台のカメラにより入力された画像のシェーディング状態を示す図である。
【図7】従来例において重複部分の平均濃度値が両画像で等しくなるようにシェーディング補正した画像の図である。
【図8】従来例において2つのカメラのシェーディング補正後の画像を重複部分で結合した画像の図である。
【符号の説明】
10……カメラ(CCDカメラ)
20……シェーディング補正部
30……オフセット調整部
40……結合補正部
50……合成画像記憶部
60……画像処理部
70……全体制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数のカメラと、各カメラが撮像した反射率が一様な標準画像の低周期の濃度ムラを一様な明るさに補正するシェーディング補正部と、前記シェーディング補正された隣接カメラの画像の重複部分での濃度値を等しくするオフセット調整部と、前記重複部分での隣接画像の濃度値に重み付け処理をして重複部分で連続した画像を得る結合補正部とを備えたことを特徴とする表示・外観検査装置。
【請求項2】 シェーディング補正部によるシェーディング補正および結合補正部による重み付け処理を各カメラの1画素単位ごとに行うことを特徴とする請求項1に記載の表示・外観検査装置。
【請求項3】 シェーディング補正とオフセット調整と結合補正とを総合した補正値がルックアップテーブルに格納されており、各カメラ入力に対してテーブル参照を行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の表示・外観検査装置。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【図6】
image rotate


【図7】
image rotate


【図8】
image rotate