説明

表示体及び表示体付き物品

【課題】より高い偽造防止効果を実現する。
【解決手段】表示体は、200nm乃至500nmの範囲内の最小中心間距離で二次元的な周期構造で配置された複数の凹部又は凸部が設けられ、その表面が反射性材料層で被覆された第1界面部と、平坦面に反射性材料層が被覆された第2界面部と、200nm乃至500nmの範囲内の最小中心間距離で第1界面部とは異なる空間周波数の二次元的な周期構造で配置された複数の凹部又は凸部が設けられ、その表面が反射性材料層で被覆された第3界面部と、を1面に含み、第二界面部が第1界面部及び第二界面部の両方と境界を接して配置されている第1光学効果層と、第1光学効果層を間に挟んで反射性材料層と向き合っているか又は反射性材料層を間に挟んで前記第1光学効果層と向き合った部分を備え、コレステリック液晶、パール顔料及び多層干渉膜の少なくとも1つを含んだ第2光学効果層とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偽造防止効果、装飾効果及び/又は美的効果を提供する光学技術を用いた表示体及び表示体付き物品に関する。
【背景技術】
【0002】
有価証券、証明書、及び個人認証媒体などの物品は、偽造が困難であることが重要である。ブランド品などの物品では、高級感を演出するために美的効果に優れたものが望まれる。そのため、このような物品には、偽造防止効果/又は美的効果に優れた表示体を支持させることがある。
【0003】
このような表示体として、例えば、特許文献1には、複数の溝からなるレリーフ型回折格子が設けられた第1界面部と、前記複数の溝の最小中心間距離と比較してより小さい中心間距離で二次元的に配置されると共に複数の凹部又は凸部が設けられた第2界面部とを備えたことを特徴とする表示体が記載されている。この表示体は、高精細な構造を含んでおり且つ特殊な光学特性を有している。それゆえ、この表示体は、高い偽造防止効果を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008―107470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、より高い偽造防止効果を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1側面によると、200nm乃至500nmの範囲内の最小中心間距離で二次元的な周期構造で配置された複数の凹部又は凸部が設けられ、その表面が反射性材料層で被覆された第1界面部と、平坦面に反射性材料層が被覆された第2界面部と、200nm乃至500nmの範囲内の最小中心間距離で前記第1界面部とは異なる空間周波数の二次元的な周期構造で配置された複数の凹部又は凸部が設けられ、その表面が反射性材料層で被覆された第3界面部と、を1面に含み、第二界面部が第1界面部及び第二界面部の両方と境界を接して配置されている第1光学効果層と、前記第1光学効果層を間に挟んで前記反射性材料層と向き合っているか又は前記反射性材料層を間に挟んで前記第1光学効果層と向き合った部分を備え、コレステリック液晶、パール顔料及び多層干渉膜の少なくとも1つを含んだ第2光学効果層とを具備した表示体が提供される。
【0007】
本発明の第2側面によると、基材と、前記基材に支持された第1側面に係る表示体とを具備した表示体付き物品が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、より高い偽造防止効果を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一態様に係る表示体を概略的に示す平面図。
【図2】図1に示す表示体のI−II線に沿った断面図。
【図3】図1及び図2に示す表示体の第1界面部及び第3界面部に採用可能な構造の一例を示す斜視図。
【図4】図1及び図2に示す表示体のうち第1界面部及び第3界面部に対応した部分が示す光学効果を概略的に示す図。
【図5】本発明の別の態様に係る表示体を概略的に示す平面図。
【図6】第1界面部及び第3界面部に採用可能な凹部又は凸部の配置パターンの例を概略的に示す平面図。
【図7】第1界面部及び第3界面部に採用可能な凹部又は凸部の配置パターンの例を概略的に示す平面図。
【図8】図1及び図2に示す表示体の第1界面部及び第3界面部に採用可能な構造の他の例を拡大して示す斜視図。
【図9】図1及び図2に示す表示体の第1界面部及び第3界面部に採用可能な構造の他の例を拡大して示す斜視図。
【図10】図1及び図2に示す表示体の第1界面部及び第3界面部に採用可能な構造の他の例を拡大して示す斜視図。
【図11】本発明の一態様に係る粘着ラベルを概略的に示す断面図。
【図12】本発明の一態様に係る転写箔を概略的に示す断面図。
【図13】表示体付き物品の一例を概略的に示す断面図。
【図14】表示体付き物品の他の例を概略的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0011】
図1は、本発明の一態様に係る表示体を概略的に示す平面図である。図2は、図1に示す表示体のI−II線に沿った断面図である。図1及び図2では、表示体10の主面に平行であり且つ互いに直交する方向をX方向及びY方向とし、表示体10の主面に垂直な方向をZ方向としている。
【0012】
この表示体10は、図1に示すように、光学特性の異なる表示部DP1,DP2、DP3を含んでいる。そして、図2に示すように、基材11と、第1光学効果層12と、反射性材料層13と、光透過層15と、第2光学効果層17とを含んでいる。第1光学効果層12と反射性材料層13との界面には、第1界面部IF1と、第2界面部IF2と、第3界面部IF3とを含んでいる。後述するように、第1界面部IF1及び第3界面部IF3には複数の凹部又は凸部が設けられている。
【0013】
以下では、反射性材料層13によって被覆されている部分のうち表示部DP1に相当する第1界面部IF1の領域を第1領域と呼ぶ。また、表示部DP2に相当する第2界面部IF2の領域を第2領域と呼ぶ。そして、表示部DP3に相当する第3界面部IF3の領域を第3領域と呼ぶ。
【0014】
基材11は、典型的には、樹脂からなるシート又はフィルムである。この樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル、アクリルスチレン共重合体、又は塩化ビニルを使用する。基材11は、省略してもよい。
【0015】
第1光学効果層12は、基材11上に形成されている。第1光学効果層12は、典型的には、光透過性を有している。第1光学効果層12の材料としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、及び紫外線又は電子線硬化性樹脂(以下、光硬化性樹脂ともいう)などの樹脂を使用する。第1光学効果層12の材料として熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂を用いると、原版を用いた転写により、一方の主面に、凹構造及び/又は凸構造を容易に形成することができる。
【0016】
光透過性を有する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、ニトロセルロース、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリルスチレン共重合体、塩化ビニル及びポリメタクリル酸メチルが挙げられる。
【0017】
光透過性を有する熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステルウレタン、アクリルウレタン、エポキシウレタン、シリコーン、エポキシ及びメラミン樹脂が挙げられる。
【0018】
光硬化性樹脂とは、紫外線及び電子線などの光の照射によって硬化する樹脂をいう。光の照射によってラジカル重合する代表的な樹脂としては、分子中にアクリロイル基を有するアクリル樹脂が挙げられ、例えば、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエステルアクリレート系若しくはポリオールアクリレート系のオリゴマー若しくはポリマー、単官能、2官能若しくは多官能重合性(メタ)アクリル系モノマー(例えば、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート,ポリプロピレングリコールジアクリレート,トリメチロールプロパントリアクリレート,ペンタエリトリトールトリアクリレート又はペンタエリトリトールテトラアクリレート)又はそのオリゴマー若しくはポリマー、又はこれらの混合物が使用される。
【0019】
第1光学効果層12の材料として光硬化性樹脂を用いる場合、この層には、光重合開始剤を更に含有させてもよい。この光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モリフォリノプロパン−1、及びアシルホスフィンオキサイドが挙げられる。但し、光重合開始剤は、100%反応するわけではなく、未反応のものが性能に悪影響を及ぼす可能性がある。そのため、光重合開始剤の添加量は、光硬化性樹脂に対して、例えば0.1〜7質量%、典型的には0.5〜5質量%の範囲内とし、未硬化部が残らない程度に留めることが好ましい。
【0020】
第1光学効果層12の一方の主面には、界面部IF1乃至IF3が設けられている。これら界面部IF1乃至IF3の構造及び光学特性に関しては、後で詳しく説明する。
【0021】
界面部IF1乃至IF3を被覆する反射性材料層13としては、例えば、アルミニウム、銀、錫、クロム、ニッケル、銅、金及びこれらの合金などの金属材料からなる金属又は合金層を使用することができる。この場合、反射性材料層13は、典型的には、真空製膜法を用いて形成する。真空製膜法としては、例えば、真空蒸着法及びスパッタリング法が挙げられる。反射性材料層13の厚みは、例えば、1nm乃至100nmの範囲内とする。
【0022】
反射性材料層13は、表示体10に、視認性がより優れた像を表示させる役割を担っている。また、反射性材料層13を設けることにより、第1光学効果層12の一方の主面に設けられた凹構造及び/又は凸構造の損傷を生じ難くすることも可能となる。
【0023】
光透過層15は、反射性材料層13と第2光学効果層17との間に介在している。光透過層15は、これら層間の密着性を向上させる役割を担っている。
【0024】
光透過層15は、光透過性を有しており、典型的には、透明である。光透過層15の材料としては、例えば、酢酸ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂、エポキシ樹脂、エポキシウレタン樹脂、ポリカーボネートウレタン樹脂、ブチラール樹脂及び塩素化プロピレン樹脂が挙げられる。光透過層15は、省略してもよい。
【0025】
第2光学効果層17は、反射性材料層13を間に挟んで第1光学効果層12と向き合った部分を備えている。図1及び図2には、一例として、第2光学効果層17が反射性材料層13を間に挟んで第1光学効果層12の全体と向き合っている場合を描いている。
【0026】
第2光学効果層17は、コレステリック液晶、パール顔料及び多層干渉膜の少なくとも1つを含んでいる。第2光学効果層17は、典型的には、コレステリック液晶を含んでいる。
【0027】
第2光学効果層17がコレステリック液晶を含んでいる場合、第2光学効果層17は、例えば、コレステリック構造を有する化合物を含んだ材料、又は、ネマチック液晶にカイラル剤を添加してコレステリック構造を持たせたものを含んだ材料を用いて製造することができる。コレステリック液晶は、例えば、ネマチック液晶に添加するカイラル剤の量及び種類などを変化させることにより、そのヘリカルピッチ及び偏光面の捩じれ方向を変化させることが可能である。また、液晶分子の両末端に、アクリル基などの重合基を導入することもできる。こうすると、各液晶分子を配向させた後に、その配向を固定することが容易となる。
【0028】
第2光学効果層17がコレステリック液晶を含んでいる場合、第2光学効果層17は、コレステリック液晶からなる層であってもよく、コレステリック液晶顔料を含んだ層であってもよい。
【0029】
第2光学効果層17がコレステリック液晶からなる層である場合、第2光学効果層17における光の散乱を、最小限に抑えることが可能となる。
【0030】
第2光学効果層17がコレステリック液晶顔料を含んだ層である場合、第2光学効果層17は、典型的には、コレステリック液晶の粉末と、透明なバインダとを含んでいる。この場合、例えば、ヘリカルピッチ及び偏光面の捩じれ方向などが互いに異なった複数のコレステリック液晶顔料を用いることにより、第2光学効果層17の光学特性を微調整することが可能となる。
【0031】
第2光学効果層17がコレステリック液晶を含んでいる場合、第2光学効果層17を照明すると、第2光学効果層17は、円偏光性の選択反射光を射出し得る。なお、以下では、コレステリック液晶の配向軸が表示体10の主面に略平行であると仮定する。
【0032】
コレステリック液晶のヘリカルピッチをPとし、表示体10の主面に平行な軸を基準としたときの入射角をθとし、反射光の波長をλとすると、下式が成立することが知られている。
2P・sinθ=nλ(n=1,2,3,…)。
【0033】
この式によると、例えば、第2光学効果層17に対して垂直に白色光が入射した場合、即ちθ=90゜の場合、ヘリカルピッチPの2倍の波長の正反射光が、第2光学効果層17に対して垂直に射出される。
【0034】
例えば、ヘリカルピッチPが280nmのコレステリック液晶を用いた場合、第2光学効果層17は、緑色の色相に対応した光(波長λ=560nm)を射出し得る。或いは、ヘリカルピッチPが360nmのコレステリック液晶を用いた場合、第2光学効果層17は、赤色の色相に対応した光(波長λ=720nm)を射出し得る。このように、コレステリック液晶のヘリカルピッチPを変化させることにより、コレステリック液晶を含んだ第2光学効果層17の光学特性を変化させることができる。
【0035】
照明光の入射角θを次第に小さくすると、第2光学効果層17から射出される光の波長が次第に短くなり、最終的には、可視光の最短波長よりも短くなる。即ち、こうすると、射出光の色相が赤色から緑色、緑色から青色へと変化し、最終的には、射出光が視認でなくなる。例えば、ヘリカルピッチPが360nmのコレステリック液晶を用いた場合、入射角θを30゜(表示体10の主面の法線方向を基準とすると60゜)とすると、選択反射される光の波長は、360nmとなる。したがって、この場合、観察者は、第2光学効果層17に起因した視覚効果を視認することができないか又は視認することが極めて困難である。
【0036】
コレステリック液晶を含んだ第2光学効果層17は、例えば、以下のようにして形成する。
第1の方法では、まず、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ナイロン、セロハン及びポリビニルアルコールなどの延伸フィルムを準備する。この延伸フィルムには、ラビング処理を施してもよい。次に、コレステリック液晶の原料を有機溶剤に溶解させた塗工液を準備する。次いで、この塗工液を、上記の延伸フィルム上に塗布する。その後、得られた塗膜を乾燥させる。これにより、延伸フィルム上で、液晶分子を配向させる。そして、この状態で紫外線を照射して、液晶分子の配向を固定する。このようにして、コレステリック液晶形成フィルムを得る。
【0037】
次に、被転写体、例えば第1光学効果層12又は反射性材料層13の一方の主面に、光透過性を有した接着剤を塗布する。そして、その上に、コレステリック液晶形成フィルムを貼り合わせる。次いで、延伸フィルムのみを剥がす。このようにして、被転写体、例えば第1光学効果層12又は反射性材料層13の一方の主面上に、コレステリック液晶を含んだ第2光学効果層17を形成する。
【0038】
第2の方法では、まず、第2光学効果層17を形成すべき主面、例えば第1光学効果層12又は反射性材料層13の一主面上に、光配向インキを塗布する。その後、その塗膜を乾燥させ、偏光性の紫外光を照射して、配向膜を形成する。次いで、コレステリック液晶の原料を有機溶剤に溶解させた塗工液を準備し、この塗工液を、上記の配向膜上に塗布する。その後、得られた塗膜を乾燥させ、液晶分子を配向させる。そして、この状態で紫外線を照射して、液晶分子の配向を固定する。このようにして、コレステリック液晶を含んだ第2光学効果層17を得る。なお、この場合、第2光学効果層17を形成すべき主面と光配向インキからなる配向膜との接着性が不十分である場合には、アンカー層を更に設けてもよい。
【0039】
なお、上では、配向膜を用いて液晶分子を配向させる方法について説明したが、液晶分子を配向させる方法は、これには限られない。例えば、液晶分子は、電場及び/又は磁場の印加又はせん断応力の印加によって配向させてもよい。
【0040】
また、上では、紫外線の照射によって液晶分子の配向を固定する方法について説明したが、液晶分子の配向を固定する方法は、これには限られない。例えば、液晶分子の配向は、液晶分子を含んだ層を急冷させることによって固定してもよい。これらの方法のうち、紫外線の照射によって液晶分子の配向を固定する方法がより好ましい。
【0041】
表示体10の製造コストの観点から、上記の第1及び第2の方法のうち、典型的には、第1の方法を採用する。
【0042】
第2光学効果層17がパール顔料を含んでいる場合、第2光学効果層17は、例えば、雲母などの層状物質の粉末、又は、これら層状物質を還元二酸化チタン及び酸化鉄などの被覆材料で被覆してなる粉末を含んでいる。或いは、この場合、第2光学効果層17は、後述する多層干渉膜を粉砕してなる粉末を用いてもよい。第2光学効果層17がパール顔料を含んでいる場合、第2光学効果層17は、典型的には、透明なバインダを更に含んでいる。
【0043】
第2光学効果層17がパール顔料を含んでいる場合、第2光学効果層17は、典型的には、印刷法又は塗布法により形成する。これら印刷法又は塗布法としては、公知の方法を採用することができる。
【0044】
第2光学効果層17が含み得る多層干渉膜は、屈折率が互いに異なった複数の層が積層されてなる。多層干渉膜を構成する各層は、例えば、金属薄膜、セラミクス薄膜又は有機ポリマー薄膜である。多層干渉膜は、例えば、屈折率が互いに異なった層の交互積層体を含んでいる。例えば、セラミクス薄膜又は光透過率を20乃至70%の範囲内とした金属薄膜と、有機ポリマー薄膜とを、所定の厚みで交互に積層させることにより、特定波長の可視光のみを吸収又は反射する多層干渉膜が得られる。
【0045】
以下に、多層干渉膜を構成する各層に採用可能な材料の例を挙げる。なお、以下において、化学式又は化合物名の後ろに記載した括弧内の数値は、各々の屈折率を表している。
【0046】
セラミクス:Sb(3.0)、Fe(2.7)、TiO(2.6)、CdS(2.6)、CeO(2.3)、ZnS(2.3)、PbCl(2.3)、CdO(2.2)、Sb2O(2.0)、WO(2.0)、SiO(2.0)、Si2O(2.5)、In(2.0)、PbO(2.6)、Ta(2.4)、ZnO(2.1)、ZrO(2.0)、MgO(1.6)、Si(1.5)、MgF(1.4)、CeF(1.6)、CaF(1.3〜1.4)、AlF(1.6)、Al(1.6)及びGaO(1.7)。
【0047】
金属:Al、Fe、Mg、Zn、Au、Ag、Cr、Ni、Cu、Si、及びこれらの合金。
【0048】
有機ポリマー:ポリエチレン(1.51)、ポリプロピレン(1.49)、ポリテトラフロロエチレン(1.35)、ポリメチルメタクリレート(1.49)及びポリスチレン(1.60)。
【0049】
第2光学効果層17が多層干渉膜を含んでいる場合、第2光学効果層17は、膜厚、成膜速度、積層数及び光学膜厚などの制御が可能な公知の方法を用いて形成する。このような方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法及び化学気相堆積法(CVD法)が挙げられる。なお、光学膜厚とは、屈折率と膜厚との積である。
【0050】
或いは、上記の多層干渉膜は、多層同時押し出しにより形成された多層フィルムであってもよい。この多層フィルムは、屈折率が互いに異なった複数のプラスチック薄膜の交互積層体である。これらプラスチック薄膜の各々は、プラスチック材料を含んでいる。これらプラスチック薄膜の各々は、必要に応じて、助剤を含んでいてもよい。
【0051】
この多層フィルムは、例えば、高屈折率材料からなるプラスチック薄膜と、低屈折率材料からなるプラスチック薄膜との交互積層体を含んでいる。高屈折率材料としては、例えば、ポリエチレンナフタレート(1.63)、ポリカーボネート(1.59)、ポリスチレン(1.59)、及びポリエチレンテレフタレート(1.58)が挙げられる。低屈折率材料としては、例えば、ナイロン(1.53)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリメチルペンテン(1.46)、及びフッ素系ポリメチルメタクリレート(1.4)が挙げられる。
【0052】
第2光学効果層17は、観察角度の変化により、その色彩が変化する。第2光学効果層17と第1光学効果層12と反射性材料層13との組合せに起因した光学特性については、後で詳しく説明する。
【0053】
図3は、図1及び図2に示す表示体の第1界面部IF1及び第3界面部IF3に採用可能な構造の一例を拡大して示す斜視図である。
【0054】
第1界面部IF1及び第3界面部IF3には、複数の凹部又は凸部14bが設けられている。これら凹部又は凸部14bは、200nm乃至500nmの範囲内の最小中心間距離で二次元的な周期構造として配置されている。凹部又は凸部14bは、典型的には、規則的に配置されている。第1界面部と第3界面部では、凹部又は凸部14bの平均最小中心間距離すなわち空間周波数が異なるように配置されている。また凹部又は凸部14bの各々は、典型的には、順テーパ形状を有している。凹部又は凸部14bの深さ又は高さは、通常は溝14aの深さよりも大きく、典型的には0.3μm乃至0.5μmの範囲内にある。凹部又は凸部14bの最小中心間距離に対する深さ又は高さの比(以下、アスペクト比ともいう)は、例えば、0.5乃至1.5の範囲内にある。
【0055】
第3界面部IF2は、平坦面である。
【0056】
以下、第1光学効果層12と反射性材料層13と第2光学効果層17との組合せに起因した光学効果について説明する。
【0057】
表示部DP1及びDP3の光学効果について説明する。
図4は、図1及び図2に示す表示体のうち第1界面部及び第3界面部に対応した部分が示す光学効果を概略的に示す図である。図4において、31b及び31cは照明光を示し、32b及び32cは正反射光又は0次回折光を示し、33bは1次回折光を示している。なお、図4では、第1光学効果層12及び反射性材料層13の図示を省略している。
【0058】
上述した通り、凹部又は凸部14bの最小中心間距離は、200nm乃至500nmの範囲内にある。この最小中心間距離を小さくすると、界面部IF1から回折光を射出させることが困難となる場合がある。この最小中心間距離を大きくすると、第1界面部IF1から比較的小さな射出角度で射出される回折光の強度が、比較的大きくなる場合がある。
【0059】
なお、凹部又は凸部14bの最小中心間距離は、例えば、200nm乃至350nmの範囲内としてもよい。この場合、空間周波数が短くなるので、青色に対応した波長を有する回折光が観察されやすい。
【0060】
或いは、凹部又は凸部14bの最小中心間距離は、300nm乃至500nmの範囲内としてもよい。こうすると、凹部又は凸部14bが射出する1次回折光33bを観察できる角度範囲が比較的広くなる。即ち、こうすると、凹部又は凸部14bが設けられた真正品と、凹部又は凸部14bが設けられていない偽造品との判別を、より容易に行うことが可能となる。
【0061】
第1界面部IF1及び第3界面部IF3の凹部又は凸部14bの周期構造の範囲では、第1界面部IF1及び第3界面部IF3から射出される正反射光の反射率は小さい。また、第1界面部IF1及び第3界面部IF3から比較的小さな射出角度で射出される回折光の強度は、ゼロであるか又は極めて小さい。したがって、第1界面部IF1及び第3界面部IF3から射出される正反射光又は回折光が、第2光学効果層17のうち第1界面部IF1又は第3界面部IF3に対応した部分が射出する光に対して与える影響は、比較的小さい。それゆえ、表示部DP1及びDP3では、第2光学効果層17に起因した光学効果を、観察者に極めて明瞭に視認させることができる。
【0062】
次いで、表示部DP2の光学効果について説明する。
第2界面部IF2は、上述した通り、平坦面である。したがって、第2界面部IF2の反射性材料層13によって被覆された部分は、照明光を鏡面反射させる。この反射光の強度は、第2光学効果層17の対応する部分が射出する光と比較して、その強度が遥かに高い。したがって、表示部DP3は、通常、鏡面として観察される。
【0063】
また、この表示体10において、第1〜3界面部IF1は同一面内にある。それゆえ、例えば、各界面部の凹部又は凸部14bに対応した凹構造及び/又は凸構造を1枚の原版に形成し、この凹構造及び/又は凸構造を第1光学効果層12に転写することにより、凹部又は凸部14bを同時に形成することができる。したがって、原版に凹構造及び/又は凸構造を高精度に形成しておけば、第1〜3界面部間での位置ずれの問題を生じ得ない。また、微細な凹凸構造及び高精度の特徴は、高精細な像表示を可能とし、他の方法によって作られたものとの区別を容易にする。そして、真正品が極めて高精度に安定して製造できるという事実は、偽造品や模造品との区別を一層容易にする。
【0064】
図1及び図2に示す表示体10は、照明光の入射角及び観察者の観察角度に応じて、極めて特殊な視覚効果を呈する。
【0065】
以下では、表示体10の法線方向を基準として、特定の照明光に対する正反射光の射出方向を含む角度範囲を「正の角度範囲」と呼び、上記特定の照明光の入射方向を含む角度範囲を「負の角度範囲」と呼ぶ。また、照明光は、白色光であるとする。
【0066】
まず、負の角度範囲のみから照明光を入射させ且つ正の角度範囲から表示体10を観察する場合を考える。この場合、上述した通り、表示部DP1及びDP3は、第2光学効果層17に起因した光学効果を極めて明瞭に示す。即ち、表示部DP1及びDP3は、観察角度に応じて異なった色彩を示す領域として視認される。そして、この場合、表示部DP3は、通常、鏡面として観察される。即ち、表示部DP3では、正反射光が観察可能な角度から観察した場合に、照明光に対応した波長の光が視認される。このように、正の角度範囲から表示体10を観察した場合、表示体10は、観察角度に応じて異なった色彩を示す領域(DP1,DP3)と、鏡面が設けられた領域(DP2)とを含んだものとして視認される。
【0067】
次に、負の角度範囲のみから照明光を入射させ且つ負の角度範囲から表示体10を観察する場合を考える。この場合、照明光の入射角度及び観察角度が深いとき、即ち入射角度及び観察角度の絶対値が大きいときには、観察者は、表示部DP1、DP3からの回折光を視認することができる。したがって、例えば、照明光の光源の位置と観察者の位置とを固定して、これらと表示体10とが為す角度を変化させていくと、表示部DP1、DP3において、視覚効果の不連続的な変化が生じる。具体的には、入射角度及び観察角度を深くしていくと、ある角度において、表示部DP1からの回折光が観察可能となる。このとき第1界面部と第3界面部では、凹部又は凸部14bの空間周波数が異なるので、表示部DP1と表示部DP3は異なる角度で不連続な光学的変化を示し、視覚的に異なる領域として視認されるようになる。
【0068】
続いて、蛍光灯が複数の箇所に設けられた室内などを想定して、照明光の光源が2つ以上存在する場合を考える。具体的には、その一例として、負の角度範囲から第1照明光を入射させる第1光源と、正の角度範囲から第2照明光を入射させる第2光源とが存在する場合を考える。この場合、例えば、第1及び第2光源の位置と観察者の位置とを固定して、これらと表示体10とが為す角度を変化させていくと、表示部DP1、DP3において、視覚効果の不連続的な変化が生じる。具体的には、観察角度が浅い場合には、表示部DP1は、第2光学効果層17に起因した連続的な色彩の変化を生じる。そして、入射角度及び観察角度を深くしていくと、ある角度を境として、表示部DP1、DP3からの回折光が観察可能となる。このとき第1界面部IF1と第3界面部IF3では、凹部又は凸部14bの空間周波数が異なるので、表示部DP1と表示部DP3は異なる角度で不連続な光学的変化を示し、視覚的に異なる領域として視認されるようになる。
【0069】
第1界面部IF1と第2界面部IF2、第3界面部IF3の境界は、電子線描画及びナノインプリントなどの手法により、高い精度で定めることができる。したがって、このような構成を採用すると、表示部DP1と表示部DP2、表示部DP3との境界を、高い精度で定めることができる。したがって、こうすると、表示体10に、第1界面部IF1と第2界面部IF2、第3界面部IF3の境界に対応した高精細なパターンを表示させることが可能となる。
【0070】
図1の表示体のように、表示部DP1と表示部DP3の境界に表示部DP2が配置され、表示部DP2のみが鏡面として視認されるため、コントラストが際立つ。また、表示部DP1と表示部DP3との境界に位置する表示部DP2の形状が線状であると、銀インクの印刷等では位置合わせが難しいため、偽造が困難になる。特にこの場合、表示部DP2の線幅が0.01mm以上0.1mm以下であることが好ましい。
【0071】
また、表示体の他の様態として、図5のように、表示部DP1と表示部DP2、表示部DP3と表示部DP3との境界が繋がるように配置する。このようにすることにより、表示部DP1〜3の頂点が共有される形となり、やはり銀インクの印刷等では位置合わせが難しいため、偽造が困難になる。
【0072】
このように、表示体10は、極めて特殊な視覚効果を有している。そして、偽造を試みようとする者がこのような視覚効果を再現することは、不可能であるか又は極めて困難である。即ち、この表示体10は、高い偽造防止効果を有している。
【0073】
なお、第2光学効果層17がコレステリック液晶を含んでいる場合、第2光学効果層17は、円偏光性の選択反射光を射出し得る。また、本発明者らは、第1界面部IF1から射出される回折光が直線偏光性を有していることを見出している。したがって、第2光学効果層17がコレステリック液晶を含んでいる場合には、これら偏光性の相違に基づいて、射出光の変化を追跡することも可能となる。即ち、この場合、表示体10は、コバート用の偽造防止媒体としても有用である。
【0074】
真正品であるか否かが不明である物品を、真正品と非真正品との間で判別する方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
まず、第1の操作として、入射角の絶対値が60゜未満である照明光で、表示体10を照明する。このとき、絶対値が60゜未満である角度範囲において、第2光学効果層17に起因した光学効果が観察されることを確認する。例えば、第2光学効果層17がコレステリック液晶を含んでいる場合、この角度範囲に、第2光学効果層17からの選択反射光が射出されていることを確認する。
【0075】
次に、第2の操作として、入射角の絶対値が60゜以上且つ90゜未満である照明光で、表示体10を照明する。このとき、絶対値が60゜以上且つ90゜未満であり且つ上記の入射角と正負が等しい角度範囲において、第1界面部IF1に起因した光学効果が観察されることを確認する。即ち、この角度範囲において、第1界面部IF1からの回折光が観察されることを確認する。
【0076】
第1及び第2の操作の両方において、上記の光学効果が観察された場合、当該物品は真正品であると判断する。他方、第1及び第2の操作の一方又は両方において、上記の各光学効果が観察されなかった場合、当該物品は、非真正品であると判断する。
【0077】
なお、第2光学効果層17がコレステリック液晶を含んでいる場合には、以下のようにして、真正品と非真正品との間での判別を行ってもよい。即ち、第1の操作において、絶対値が60゜未満である角度範囲に円偏光が射出され、且つ、第2の操作において、絶対値が60゜以上且つ90゜未満であり且つ上記の入射角と正負が等しい角度範囲に直線偏光が射出された場合に、当該物品を真正品であると判断してもよい。この判断は、例えば、円偏光板及び直線偏光板などの偏光板を介して表示体10を観察することにより行うことができる。
【0078】
図6及び図7は、第1界面部及び第3界面部に採用可能な凹部又は凸部の配置パターンの例を概略的に示す平面図である。
【0079】
図6では、凹部又は凸部14bの配列は、正方格子を形成している。この構造は、電子線描画装置やステッパなどの微細加工装置を用いた製造が比較的容易であり、凹部又は凸部14bの中心間距離などの高精度な制御も比較的容易である。
【0080】
図6では、凹部又は凸部14bの中心間距離をX方向とY方向とで等しくしているが、凹部又は凸部14bの中心間距離は、X方向とY方向とで異ならしめてもよい。即ち、凹部又は凸部14bの配列は、矩形格子を形成していてもよい。
【0081】
凹部又は凸部14bの中心間距離をX方向及びY方向の双方で比較的長く設定すると、Y方向に垂直な方向から表示体10を照明した場合とX方向に垂直な方向から表示体10を照明した場合との双方において第1界面部IF1又は第3界面部IF3から回折光を射出させることができ、且つ、前者と後者とで回折光の波長を異ならしめることができる。凹部又は凸部14bの中心間距離を、X方向及びY方向の一方で比較的長く設定し、他方で比較的短く設定すると、Y方向及びX方向の一方に垂直な方向から表示体10を照明した場合には第1界面部IF1から回折光を射出させ、Y方向及びX方向の他方に垂直な方向から表示体10を照明した場合には第1界面部IF1からの回折光の射出を防止できる。
【0082】
図7では、凹部又は凸部14bの配列は、三角格子を形成している。この構造を採用した場合、凹部又は凸部14bの中心間距離を適宜設定すれば、例えば、A方向から表示体10を照明したときには第1界面部IF1からの回折光の射出を防止し、B方向及びC方向から表示体10を照明したときには第1界面部IF1から回折光を射出させることができる。即ち、より複雑な視覚効果が得られる。
【0083】
図8乃至図10は、図1及び図2に示す表示体の第1界面部に採用可能な構造の他の例を拡大して示す斜視図である。
【0084】
図8乃至図10に示す構造は、図3に示す構造の変形例である。図8乃至図10に示す凹部又は凸部14bは何れも、順テーパ形状を有している。
【0085】
図3に示す構造では、凹部又は凸部14bは、円錐形状を有している。凹部又は凸部14bを円錐形状とする場合、凹部又は凸部14bは先端が尖っていてもよく、切頭円錐形状を有していてもよい。但し、凹部又は凸部14bを先端が尖った円錐形状とした場合、凹部又は凸部14bは第1界面部IF1に平行な面を有していないので、切頭円錐形状とした場合と比較して、第1界面部IF1の正反射光の反射率をより小さくすることができる。
【0086】
図8に示す構造では、凹部又は凸部14bは、四角錐形状を有している。凹部又は凸部14bは、三角錐形状などの四角錐形状以外の角錐形状を有していてもよい。この場合、特定条件で発生する回折光の強度を高くすることができ、観察をより容易にする。また、凹部又は凸部14bを角錐形状とする場合、凹部又は凸部14bは先端が尖っていてもよく、切頭角錐形状を有していてもよい。但し、凹部又は凸部14bを先端が尖った角錐形状とした場合、凹部又は凸部14bは第1界面部IF1に平行な面を有していないので、切頭角錐形状とした場合と比較して、第1界面部IF1の正反射光の反射率をより小さくすることができる。
【0087】
図9に示す構造では、凹部又は凸部14bは、半紡錘形状を有している。即ち、凹部又は凸部14bは、先端が丸みを帯びた円錐形状を有している。図9に示す構造を採用した場合、図4又は図8に示す構造を採用した場合と比較して、原版への凸構造及び/又は凹構造の形成や原版から第1光学効果層12への凸構造及び/又は凹構造の転写がより容易である。
【0088】
図10に示す構造では、凹部又は凸部14bは、底面積が異なる複数の四角柱をその底面積が大きなものから順に積み重ねた構造を有している。なお、四角柱の代わりに、円柱や三角柱などの四角柱以外の柱状体を積み重ねてもよい。
【0089】
図10に示す構造を採用した場合、図9に示す構造を採用した場合と同様、図4又は図8に示す構造を採用した場合と比較して原版への凸構造及び/又は凹構造の形成や原版から第1光学効果層12への凸構造及び/又は凹構造の転写がより容易である。
【0090】
第1界面部IF1及び第3界面部IF3は、光学効果を異ならしめるために、上記凸構造及び/又は凹構造のうちそれぞれ異なる構造のものを採用しても良い。
【0091】
第1界面部IF1及び第3界面部IF3は、凹部又は凸部14bの深さ又は高さを大きくすると、例えば、それらの最小中心間距離の1/2以上とすると、第1界面部IF1又は第3界面部IF3から射出される反射光の強度を低くすることができる。それゆえ、こうすると、表示部DP1における第2光学効果層17に起因した光学効果が、より明瞭に視認できるようになる。また、凹部又は凸部14bの深さ又は高さが異なる複数の画素で第1界面部IF1又は第3界面部IF3を構成すると、第1界面部IF1又は第3界面部IF3で階調表示を行うことができる。
【0092】
以上において説明した表示体10は、例えば、シールラベルなどの粘着ラベル、ストライプ転写箔及びスポット転写箔などの転写箔、又はスレッドの一部として使用してもよい。或いは、この表示体10は、ティアテープの一部として使用してもよい。
【0093】
図11は、本発明の一態様に係る粘着ラベルを概略的に示す断面図である。図11に示す粘着ラベル100は、図1及び図2に示す表示体10と、表示体10上に設けられた粘着層30とを備えている。
【0094】
粘着層30は、基材11の主面うち、第2光学効果層17とは反対側の主面上に設けられている。粘着層30は、第1光学効果層12及び反射性材料層13を間に挟んで第2光学効果層17と向き合っている。粘着層30の材料としては、例えば、感圧接着剤を使用する。粘着層30は、例えば、この接着剤と溶媒との混合物を、グラビアコート、ロールコート、スクリーンコート及びブレードコートなどの方法により塗布することによって形成する。なお、粘着層30の厚みは、例えば1μm乃至10μmの範囲内とする。
【0095】
この粘着ラベル100は、例えば、真正さが確認されるべき物品に貼り付けるか、又は、そのような物品に取り付けられるべきタグの基材などの他の物品に貼り付ける。これにより、当該物品に偽造防止効果を付与することができる。
【0096】
なお、表示体10と粘着層30との間に脆性層を更に設けることにより、粘着ラベル100に貼替え防止機能を付与することもできる。これにより、更に高い偽造防止効果を達成できる。
【0097】
図12は、本発明の一態様に係る転写箔を概略的に示す断面図である。図12に示す転写箔200は、図1及び図2に示す表示体10と、表示体10を剥離可能に支持した支持体層45とを備えている。図12には、一例として、第2光学効果層17と支持体層45との間に剥離層43が設けられており、基材11の主面のうち第2光学効果層17とは反対側の主面上に接着層41が設けられている場合を描いている。
【0098】
支持体層45は、例えば、樹脂からなるフィルム又はシートである。支持体層45の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、又は塩化ビニル樹脂を使用する。
【0099】
剥離層43は、転写箔200を被転写体に転写する際の支持体層45の剥離を容易にする役割を担っている。剥離層43の材料としては、例えば、先にレリーフ構造形成層110の材料として挙げた樹脂を使用する。剥離層43は、パラフィンワックス、カルナバワックス、ポリエチレンワックス及びシリコーンなどの添加剤を更に含んでいてもよい。なお、剥離層43の厚みは、例えば0.5μm乃至5μmの範囲内とする。
【0100】
接着層41の材料としては、例えば、反応硬化型接着剤、溶剤揮散型接着剤、ホットメルト型接着剤、電子線硬化型接着剤及び感熱接着剤などの接着剤を使用する。
【0101】
反応硬化性接着剤としては、例えば、ポリエステルウレタン、ポリエーテルウレタン及びアクリルウレタンなどのポリウレタン系樹脂、又は、エポキシ樹脂を使用する。
【0102】
溶剤揮散型接着剤としては、例えば、酢酸ビニル樹脂、アクリル酸エステル共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、アイオノマー樹脂及びウレタン樹脂などを含んだ水性エマルジョン型接着剤、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合樹脂及びアクリロニト
リル−ブタジエン共重合樹脂などを含んだラテックス型接着剤を使用する。
【0103】
ホットメルト型接着剤としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルエーテル樹脂及びポリウレタン樹脂などをベース樹脂として含んだものを使用する。
【0104】
電子線硬化型接着剤としては、例えば、アクリロイル基、アリル基及びビニル基などのビニル系官能基を1個又は複数個有したオリゴマーを主成分として含んだものを使用する。例えば、電子線硬化型接着剤として、ポリエステルアクリレート、ポリエステルメタクリレート、エポキシアクリレート、エポキシメタクリレート、ウレタンアクリレート、ウレタンメタクリレート、ポリエーテルアクリレート又はポリエーテルメタクリレートと、接着付与剤との混合物を使用することができる。この接着付与剤としては、例えば、リンを含んだアクリレート若しくはその誘導体、又は、カルボキシ基を含んだアクリレート若しくはその誘導体を使用する。
【0105】
感熱接着剤としては、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ゴム系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂又は塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂を使用する。
【0106】
接着層41は、例えば、上述した樹脂を、グラビアコータ、マイクログラビアコータ及びロールコータなどのコータを用いて基材11上に塗布することにより得られる。
【0107】
この転写箔200は、例えば、ロール転写機又はホットスタンプによって、被転写体に転写される。この際、剥離保護層43において剥離を生じると共に、表示体10が、被転写体に、接着層41を介して貼付される。
【0108】
上述したように、表示体10は、優れた偽造防止効果を有している。したがって、表示体10を物品に支持させた場合、真正品であるこの表示体付き物品の偽造も困難である。また、この表示体10は上述した視覚効果を有しているため、真正品であるかが不明の物品を真正品と非真正品との間で判別することも容易である。
【0109】
図13は、表示体付き物品の一例を概略的に示す概略図である。図13には、表示体付き物品の一例として、印刷物300を描いている。この印刷物300は、商品券であって、印刷物本体60を含んでいる。
【0110】
印刷物本体60は、基材61を含んでいる。基材61は、例えば、少なくとも表示体10に対応した部分が光透過性を有している紙である。基材61上には、印刷層61が形成されている。基材61の印刷層61が形成された面には、上述した表示体10が固定されている。表示体10は、例えば、粘着層又は接着層を介して貼り付けることにより、基材61に固定する。
【0111】
印刷物300は、表示体10を含んでいるため、その偽造は困難である。また、この印刷物300は、表示体10を含んでいるため、真正品であるかが不明の物品を真正品と非真正品との間で判別することも容易である。
【0112】
図13に示す印刷物300が含んでいる表示体10は、以下の点を除いては、図1及び図2に示す表示体10と同様の構成を有している。まず、図13に示す印刷物300が含んでいる表示体10では、基材11を省略している。また、この表示体10では、第2光学効果層17は、第1光学効果層12を間に挟んで反射性材料層13と向き合っている。そして、この表示体10では、光透過層15が反射性材料層13と基材61との間に介在している。
【0113】
なお、図13には、表示体10を含んだ印刷物300として商品券を例示しているが、表示体10を含んだ印刷物は、これに限られない。例えば、表示体10を含んだ印刷物は、株券などの他の有価証券であってもよい。
【0114】
或いは、表示体10を含んだ印刷物は、ID(identification)カード、磁気カード、無線カード及びIC(integratedcircuit)カードなどのカードであってもよい。或いは、表示体10を含んだ印刷物は、真正品であることが確認されるべき物品に取り付けられるべきタグであってもよい。或いは、表示体10を含んだ印刷物は、真正品であることが確認されるべき物品を収容する包装体又はその一部であってもよい。これらの場合、基材61の材料としては、例えば、光透過性を有したプラスチックを使用する。
【0115】
図13に示す印刷物300では、表示体10を基材61に貼り付けているが、表示体10は、他の方法で基材61に支持させてもよい。
【0116】
例えば、基材61として紙を使用する場合、表示体10をこの紙の内部に埋め込んでもよい。この場合、例えば、表示体10をこの紙の内部に漉き込んでもよい。
【0117】
なお、このような構成を採用する場合、表示体10は、典型的には、スレッド状とするそして、このスレッド状に加工された表示体10の一方の主面上には、典型的には、ホットメルト型接着剤を塗布する。
【0118】
表示体10の紙の内部への埋め込みは、例えば、以下のようにして行う。
【0119】
まず、セルロース繊維と分散媒とからなる紙料を準備する。次に、二槽式円網抄紙機を用いて、この紙料を漉いてなる2つの未乾燥の繊維層を作製する。そして、これら2つの繊維層を重ね合わせる際に、これら繊維層の間に上記の表示体10を送り出す。その後、2つの繊維層と、それらの間に介在した表示体10との積層構造を乾燥処理に供する。次いで、必要に応じて裁断を行う。このようにして、内部に表示体10が埋め込まれた紙を得る。
【0120】
或いは、表示体10の紙の内部への埋め込みは、以下のようにして行ってもよい。
【0121】
例えば、この埋め込みは、長網抄紙機を用いて行ってもよい。具体的には、まず、セルロース繊維と分散媒とからなる紙料の流れの中に、分散媒中に分散させた上記の表示体10をノズルを介して導入する。このようにして、抄紙網上に形成される紙匹中に表示体10を埋め込む。その後、これを乾燥処理に供する。次いで、必要に応じて裁断を行う。このようにして、内部に表示体10が埋め込まれた紙を得る。
【0122】
基材61として紙を使用する場合、この紙は、表示体10に対応した位置の全体又は一部において開口させてもよい。
【0123】
図14は、表示体付き物品の他の例を概略的に示す断面図である。
【0124】
図14に示す印刷物300が含んでいる表示体10は、基材11を省略して
いることと、第1光学効果層12の一方の主面に設けられている界面部及び反射性材料層
13の構成が異なっていることとを除いては、図15に示す表示体と同様の構成を有して
いる。
【0125】
図14に示す表示体付き物品は印刷物300であり、その基材61は、紙からなる。そして、この紙の内部には、表示体10が埋め込まれている。加えて、この紙の表示体10に対応した位置の一部には、開口APが設けられている。即ち、これら開口APの各々において、表示体10の一部が外界に露出している。このような構成を採用すると、表示体10が基材61から脱落し難くなる。加えて、開口APが設けられた位置においては、紙の光散乱性が表示体10の光学特性に与える影響を、最小限に抑えることができる。
【0126】
基材61の材料としては、紙以外の材料を使用してもよい。例えば、この材料として、少なくとも表示体10に対応した部分が光透過性を有している樹脂を使用してもよい。この場合、表示体10は、基材61の内部に埋め込んでもよい。或いは、基材61の少なくとも表示体10に対応した部分の光散乱性が小さい場合、例えばこの部分が透明である場合、基材61の裏面、即ち印刷層61が設けられている面とは反対側の面に表示体10を固定してもよい。
【0127】
表示体付き物品は、印刷物でなくてもよい。即ち、印刷層を含んでいない物品に表示体10を支持させてもよい。
【0128】
表示体10は、偽造防止以外の目的で使用してもよい。例えば、表示体10は、玩具、学習教材又は装飾品としても使用することができる。
【実施例】
【0129】
まず、支持体層45として、厚みが12μmの二軸延伸ポリエステルフィルム(PETフィルム;E5100、東洋紡績製)を準備した。また、下記の組成を有するインキを調製した。以下、このインキを「インキ1」と呼ぶ。
【0130】
光重合性ネマチック液晶(パリオカラーLC242、BASF製):100質量部;カイラル剤(パリオカラーLC756、BASF製):4.8質量部;
重合開始剤(イルガキュア369、チバスペシャリティーケミカルズ製):5質量部;
溶剤(メチルエチルケトン):200質量部。
【0131】
次に、インキ1を、上記の二軸延伸ポリエステルフィルム上に、5μmの厚みで塗布した。これを120℃の乾燥炉で乾燥させ、液晶分子を配向させた。次いで、この状態で、120W/cmの高圧水銀灯を500mJ/cm照射した。このようにして、コレステリック液晶を含んだ層を硬化させて、第2光学効果層17を得た。
【0132】
続いて、下記の組成を有するインキを調製した。以下、このインキを「インキ2」と呼ぶ。
【0133】
2液硬化性ウレタンインキ(K448、東洋インキ製造製):100質量部;
イソシアネート硬化剤(UR100B、東洋インキ製造製):10質量部;
溶剤(メチルエチルケトン):10質量部。
【0134】
次いで、このインキ2を、グラビア法を用いて、第2光学効果層17の上に、2μmの厚みで塗布した。これを乾燥させた後、40℃で3日間に亘ってエージングした。このようにして、樹脂からなる層を得た。
【0135】
次に、凹構造及び/又は凸構造を備えたニッケル電鋳版を準備した。このニッケル電鋳版には、第1に、2500本/mmの空間周波数で二次元的に配列しており且つ各々が順テーパ形状を有した複数の凸部からなる領域(第1界面部IF1に相当)と、2000本/mmの空間周波数で二次元的に配列しており且つ各々が順テーパ形状を有した複数の凸部からなる領域(第3界面部IF3に相当)と、平坦領域(第2界面部IF2に相当)を形成した。
このニッケル電鋳版をシリンダロールに装着し、上記の樹脂からなる層に対して、熱圧エンボスを行った。このようにして、図5に示すような第1界面部IF〜IF3を備えた第1光学効果層12を得た。
【0136】
その後、第1光学効果層12の界面部IF1〜IF3が設けられた主面上に、真空蒸着法を用いて、アルミニウムを蒸着させた。このようにして、厚みが500Åの反射性材料層13を得た。
【0137】
続いて、下記の組成を有するインキからなる反応硬化型接着剤を準備した。以下、このインキを「インキ3」と呼ぶ。
【0138】
ポリエステル樹脂(バイロン240、東洋紡績製):100質量部;
ブロックイソシアネート(TPA−B80X、旭化成ケミカルズ製):2質量部;
溶剤(トルエン):100質量部;
溶剤(メチルエチルケトン):100質量部。
【0139】
このインキ3からなる反応硬化型接着剤を、上記の反射性材料層13上に、マイクログラビア法を用いて、約10μmの厚みで塗布した。このようにして、接着層41を得た。
【0140】
以上のようにして、表示体10を備えた転写箔200を製造した。この転写箔200を、商品券の用紙に、160℃で10秒間の条件で熱圧着させた。これと同時に、支持体層45としてのPETフィルムを剥離した。このようにして、表示体10が転写された印刷物300を得た。
【0141】
実施例の表示体ではカラーシフト画像と回折構造画像が完全に位置合わせされ、高い偽造防止効果を達成することができた。
【符号の説明】
【0142】
10…表示体、11…基材、12…第1光学効果層、13…反射性材料層、14a…溝、14b…凹部又は凸部、15…光透過層、17…第2光学効果層、21…光透過性基材、23…光吸収層、25…接着層、30…粘着層、31a…照明光、31b…照明光、31c…照明光、32a…正反射光、32b…正反射光、32c…正反射光、33a…一次回折光、33b…一次回折光、41…接着層、43…剥離層、45…支持体層、60…印刷物本体、61…基材、62…印刷層、100…粘着ラベル、200…転写箔、300…印刷物、AP…開口、DP1…表示部、DP2…表示部、DP3…表示部、DP3’…表示部、IF1…第1界面部、IF2…第2界面部、IF3…第3界面部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
200nm乃至500nmの範囲内の最小中心間距離で二次元的な周期構造で配置された複数の凹部又は凸部が設けられ、その表面が反射性材料層で被覆された第1界面部と、
平坦面に反射性材料層が被覆された第2界面部と、
200nm乃至500nmの範囲内の最小中心間距離で前記第1界面部とは異なる空間周波数の二次元的な周期構造で配置された複数の凹部又は凸部が設けられ、その表面が反射性材料層で被覆された第3界面部と、を1面に含み、第二界面部が第1界面部及び第二界面部の両方と境界を接して配置されている第1光学効果層と、
前記第1光学効果層を間に挟んで前記反射性材料層と向き合っているか又は前記反射性材料層を間に挟んで前記第1光学効果層と向き合った部分を備え、コレステリック液晶、パール顔料及び多層干渉膜の少なくとも1つを含んだ第2光学効果層とを具備した表示体。
【請求項2】
前記第二界面部は線状の領域であり、線幅が0.01mm以上0.1mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の表示体。
【請求項3】
前記第一界面部、第二界面部、第三界面部はそれぞれ領域の境界の1点を共有することを特徴と末ウ請求項1に記載の表示体。
【請求項4】
基材と、前記基材に支持された請求項1乃至3のいずれかに記載の表示体とを具備した表示体付き物品。
【請求項5】
前記基材は紙であり、前記表示体は前記紙の内部に埋め込まれている請求項4に記載の表示体付き物品。
【請求項6】
前記表示体はスレッド状である請求項5に記載の表示体付き物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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