説明

表示媒体の駆動装置、駆動プログラム、及び表示装置

【課題】粒子群を移動させる画素に隣接する、粒子群を移動させない隣接画素に粒子群が移動するのを防ぐ。
【解決手段】駆動装置20は、透光性を有する表示基板1と、表示基板1と対向配置された背面基板2と、基板間に封入された分散媒6と、分散媒6中に分散され且つ基板間に形成された電界に応じて基板間を移動するように基板間に封入された第1泳動粒子11、第2泳動粒子12と、を有する表示媒体10に対して、第1泳動粒子11の色を表示する場合、第1泳動粒子11を表示基板1又は背面基板2から剥離させるのに必要な閾値電圧以上の電圧を、第1泳動粒子11を移動させる画素の基板間に印加した後、第1の電圧と同極性で且つ閾値電圧より低い第2の電圧を、第1泳動粒子11を移動させる画素及び当該画素に隣接する隣接画素であって第1泳動粒子11を移動させない隣接画素の基板間に印加する電圧印加部30を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示媒体の駆動装置、駆動プログラム、及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、第1の基板と第2の基板との間に電気泳動粒子を含む電気泳動素子を挟持してなり、前記第1の基板の前記電気泳動素子側に形成された第1の電極と、前記第2の基板の前記電気泳動素子側に形成された第2の電極とを有する電気泳動表示装置の駆動方法であって、前記電気泳動素子に電圧を印加する画像表示ステップが、前記第1の電極に第1の電位を入力する一方、前記第2の電極に第2の電位を入力することで前記電気泳動素子を駆動する素子駆動ステップと、前記第1の電極の電位を前記素子駆動ステップの開始時における電位の変化速度よりも遅い速度で一様に又は段階的に変化させ、前記第1の電位から前記第2の電位に移行させる蓄積電荷除去ステップと、を有することを特徴とする電気泳動表示装置の駆動方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−128202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、粒子群の色を表示する場合に、粒子群を表示基板又は背面基板から剥離させるのに必要な閾値電圧以上の電圧を、粒子群を移動させる画素の基板間に印加した後、粒子群を移動させる画素及び当該画素に隣接する隣接画素であって粒子群を移動させない隣接画素に何ら電圧を印加しない場合と比較して、当該隣接画素に粒子群が移動してしまうのを抑えることができる表示媒体の駆動装置、駆動プログラム、及び表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明の表示媒体の駆動装置は、透光性を有する表示基板と、前記表示基板と間隙を持って対向して配置された背面基板と、前記表示基板と前記背面基板との基板間に封入された分散媒と、前記分散媒中に分散され且つ前記基板間に形成された電界に応じて前記基板間を移動するように前記基板間に封入された前記分散媒と色が異なる粒子群と、を有する表示媒体に対して、前記粒子群の色を表示する場合、前記粒子群を前記表示基板又は前記背面基板から剥離させるのに必要な閾値電圧以上の第1の電圧を、前記粒子群を移動させる画素の前記基板間に印加した後、前記第1の電圧と同極性で且つ前記閾値電圧より低い第2の電圧を、前記粒子群を移動させる画素及び当該画素に隣接する隣接画素であって前記粒子群を移動させない隣接画素の前記基板間に印加する電圧印加手段を備える。
【0006】
請求項2記載の発明は、前記電圧印加手段は、前記第2の電圧を予め定めた時間印加し、徐々に電圧を低下させる。
【0007】
請求項3記載の発明は、前記電圧印加手段は、前記画素のサイズが小さくなるに従って、前記第2の電圧を印加する画素の領域を拡大する。
【0008】
請求項4記載の発明は、前記粒子群は、色及び帯電極性が異なる複数種類の粒子群を含む。
【0009】
請求項5記載の発明の表示媒体の駆動プログラムは、コンピュータを、請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の表示媒体の駆動装置を構成する各手段として機能させる。
【0010】
請求項6記載の発明の表示装置は、透光性を有する表示基板と、前記表示基板と間隙を持って対向して配置された背面基板と、前記表示基板と前記背面基板との基板間に封入された分散媒と、前記分散媒中に分散され且つ前記基板間に形成された電界に応じて前記基板間を移動するように前記基板間に封入された前記分散媒と色が異なる粒子群と、を有する表示媒体と、前記請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の前記表示媒体の駆動装置と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
請求項1、5、6の発明によれば、粒子群を表示基板又は背面基板から剥離させるのに必要な閾値電圧以上の電圧を、粒子群を移動させる画素の基板間に印加した後、粒子群を移動させる画素及び当該画素に隣接する隣接画素であって粒子群を移動させない隣接画素に何ら電圧を印加しない場合と比較して、当該隣接画素に粒子群が移動してしまうのを抑えることができる、という効果を有する。
【0012】
請求項2の発明によれば、第2の電圧を予め定めた時間印加してすぐに電圧の印加を停止した場合と比較して、粒子の移動完了をスムーズにすることができる、という効果を有する。
【0013】
請求項3の発明によれば、画素のサイズに関係なく、粒子群を移動させる画素及び当該画素に隣接する隣接画素にのみ第2の電圧を印加する場合と比較して、隣接画素に粒子群が移動してしまうのを抑えることができる、という効果を有する。
【0014】
請求項4の発明によれば、粒子群の色が1種類の場合と比較して、多くの色を表示することができる、という効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】表示装置を示す概略図である。
【図2】各泳動粒子の電圧印加特性を示す図である。
【図3】電圧印加に応じた泳動粒子の挙動を示す概略図である。
【図4】電圧印加に応じた泳動粒子の挙動を示す概略図である。
【図5】電圧印加に応じた泳動粒子の挙動を示す概略図である。
【図6】電圧印加に応じた泳動粒子の挙動を示す概略図である。
【図7】基板間に形成される電界の電気力線を示す図である。
【図8】制御部で実行される処理のフローチャートである。
【図9】電圧印加する際の電圧印加シーケンスについて説明するための図である。
【図10】電圧印加する際の電圧印加シーケンスについて説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。作用・機能が同じ働きを担う部材には、全図面を通して同じ符合を付与し、重複する説明を省略する場合がある。また、説明を簡易化するために、適宜1つのセルに注目した図を用いて本実施形態を説明する。
【0017】
また、シアン色の粒子をシアン粒子C、マゼンタ色の粒子をマゼンタ粒子Mと記し、各粒子とその粒子群は同じ記号(符号)によって示す。
【0018】
図1(A)は、第1実施形態に係る表示装置を概略的に示している。この表示装置100は、表示媒体10と、表示媒体10を駆動する駆動装置20と、を備えている。駆動装置20は、表示媒体10の表示側電極3、背面側電極4間に電圧を印加する電圧印加部30と、表示媒体10に表示させる画像の画像情報に応じて電圧印加部30を制御する制御部40と、を含んで構成されている。なお、表示側電極3及び背面側電極4は、表示基板1及び背面基板2に設けず、外部電極としてもよい。
【0019】
表示媒体10は、画像表示面とされる、透光性を有する表示基板1と、非表示面とされる背面基板2と、が間隙を持って対向して配置されている。
【0020】
これらの基板1、2間を定められた間隔に保持すると共に、当該基板間を複数のセルに区画する間隙部材5が設けられている。
【0021】
上記セルとは、背面側電極4が設けられた背面基板2と、表示側電極3が設けられた表示基板1と、間隙部材5と、によって囲まれた領域を示している。セル中には、例えば絶縁性液体で構成された分散媒6と、分散媒6中に分散された第1粒子群11、第2粒子群12、及び白色粒子群13とが封入されている。
【0022】
第1粒子群11と第2粒子群12は、色及び帯電極性が互いに異なり、一対の電極3、4間に予め定めた閾値電圧以上の電圧を印加することにより、第1粒子群11及び第2粒子群12がそれぞれ単独で泳動する特性を有している。一方、白色粒子群13は、第1粒子群11、第2粒子群12よりも帯電量が少なく、第1粒子群11、第2粒子群12が何れか一方の電極側まで移動する電圧が電極間に印加されても、何れの電極側まで移動しない粒子群である。
【0023】
本実施形態では、第1粒子11は、マゼンタの色彩を有する負帯電の電気泳動粒子(マゼンタ粒子M)であり、第2粒子12は、シアンの色彩を有する正帯電の電気泳動粒子(シアン粒子C)である場合について説明するが、これに限定されない。各粒子の色と帯電極性は適宜設定すればよい。また、以下の説明で印加する電圧の値も一例であって、これに限定されず、各粒子の帯電極性、応答性、電極間の距離等に応じて適宜設定すればよい。
【0024】
なお、分散媒に着色剤を混合することで、泳動粒子の色とは異なる白色を表示させてもよい。
【0025】
駆動装置20(電圧印加部30及び制御部40)は、表示媒体10の表示側電極3、背面側電極4間に表示させる色に応じた電圧を印加することにより、粒子群11、12を泳動させ、それぞれの帯電極性に応じて表示基板1、背面基板2の何れか一方に引き付ける。
【0026】
電圧印加部30は、表示側電極3及び背面側電極4にそれぞれ電気的に接続されている。また、電圧印加部30は、制御部40に信号授受されるように接続されている。
【0027】
制御部40は、図1(B)に示すように、例えばコンピュータ40として構成される。コンピュータ40は、CPU(Central Processing Unit)40A、ROM(Read Only Memory)40B、RAM(Random Access Memory)40C、不揮発性メモリ40D、及び入出力インターフェース(I/O)40Eがバス40Fを介して各々接続された構成であり、I/O40Eには電圧印加部30が接続されている。この場合、後述する各色の表示に必要な電圧の印加を電圧印加部30に指示する処理をコンピュータ40に実行させるプログラムを、例えば不揮発性メモリ40Dに書き込んでおき、これをCPU40Aが読み込んで実行させる。なお、プログラムは、CD−ROM等の記録媒体により提供するようにしてもよい。
【0028】
電圧印加部30は、表示側電極3及び背面側電極4に電圧を印加するための電圧印加装置であり、制御部40の制御に応じた電圧を表示側電極3及び背面側電極4に印加する。
【0029】
本実施形態では、一例として表示側電極3を接地し、背面側電極4に電圧を印加する場合について説明する。
【0030】
図2には、本実施形態に係る表示装置100において、シアン粒子C、マゼンタ粒子Mを表示基板1側、背面基板2側に移動させるために必要な印加電圧の特性を示した。図2では、シアン粒子Cの印加電圧特性を特性50C、マゼンタ粒子Mの印加電圧特性を特性50Mで表わしている。
【0031】
また、図2は、表示側電極3をグランド(0V)として背面側電極4に印加されたパルス電圧と、各粒子群による表示濃度との関係を示したものである。
【0032】
図2に示すように、背面基板2側のマゼンタ粒子Mが表示基板1側へ移動開始する移動開始電圧(閾値電圧)は−Vmであり、表示基板1側のマゼンタ粒子Mが背面基板2側へ移動開始する移動開始電圧(閾値電圧)は+Vmである。従って、−Vm以下の電圧を印加することで背面基板2側のマゼンタ粒子が表示基板1側へ移動し、+Vm以上の電圧を印加することで表示基板1側のマゼンタ粒子Mが背面基板2側へ移動する。
【0033】
そして、背面基板2側のマゼンタ粒子Mを表示基板1側へ移動させる粒子量は、例えば印加する電圧の電圧値を同一にした場合には、そのパルス幅(印加時間)によって制御される(パルス幅変調)。例えば印加する電圧の電圧値を−Vmより小さい予め定めた電圧とした場合、そのパルス幅が長くなるに従って表示基板1側へ移動させるマゼンタ粒子Mの粒子量が多くなる。これによりマゼンタ粒子Mの階調表示が制御される。表示基板1側のマゼンタ粒子Mを背面基板2側へ移動させる場合の粒子量についても同様である。
【0034】
また、背面基板2側のシアン粒子Cが表示基板1側へ移動開始する移動開始電圧(閾値電圧)は+Vcであり、表示基板1側のシアン粒子Cが背面基板2側へ移動開始する移動開始電圧は−Vcである。従って、+Vc以上の電圧を印加することで背面基板2側のシアン粒子Cが表示基板1側へ移動し、−Vc以下の電圧を印加することで表示基板1側のシアン粒子Cが背面基板2側へ移動する。
【0035】
そして、背面基板2側のシアン粒子Cを表示基板1側へ移動させる粒子量、表示基板1側のシアン粒子Cを背面基板2側へ移動させる粒子量は、前述したマゼンタ粒子Mの場合と同様に、例えば印加する電圧の電圧値を同一にした場合には、そのパルス幅によって制御される。
【0036】
なお、印加する電圧のパルス幅を同一にして、電圧値を変えることで移動する粒子量を制御し、階調表示を制御するようにしてもよい(電圧変調)。例えば、背面基板2側のマゼンタ粒子Mを表示基板1側へ移動させる粒子量を制御する場合、印加する電圧のパルス幅は同一で、電圧値を−Vm以下の任意の電圧値とすることにより、その電圧値に応じた粒子量のマゼンタ粒子Mを表示基板1側へ移動させられる。
【0037】
以下では、一例として、電圧変調により、移動する粒子の粒子量を制御する場合について説明する。
【0038】
次に、各色の表示について説明する。なお、表示側電極3はグランド(0V)とする。また、マゼンタ粒子M及びシアン粒子Cは同量ずつ基板間に封入されているものとする。
【0039】
図3〜6は、第1実施形態に係る表示媒体において電圧印加に応じたマゼンタ粒子M、シアン粒子Cの挙動の一例を概略的に示している。なお、図3〜図6では、白色粒子13、分散媒6、間隙部材5等は省略されている。
【0040】
図3(A)に示すように、背面側電極4に−Vmより小さい電圧値であって、背面基板2側の全てのマゼンタ粒子Mを表示基板1側に付着させるのに必要な電圧値−V1の電圧を予め定めたパルス幅で印加すると、負帯電の全てのマゼンタ粒子Mは表示基板1側に、正帯電のシアン粒子Cは背面基板2側に泳動して各基板の全面に付着した状態となる。これによりマゼンタ色が表示される。
【0041】
図3(A)の状態(マゼンタ表示)から、図3(B)に示すように、背面側電極4に+Vmより大きい電圧値であって、表示基板1側の全てのマゼンタ粒子Mを背面基板2側に付着させると共に、背面基板2側の全てのシアン粒子Cを表示基板1側に付着させるのに必要な電圧値+V1の電圧を予め定めたパルス幅で印加すると、正帯電のシアン粒子Cは表示基板1側に、負帯電のマゼンタ粒子Mは背面基板2側に泳動して各基板の全面に付着した状態となる。これによりシアン色が表示される。
【0042】
図3(B)の状態(シアン表示)から、図3(C)に示すように、背面側電極4に−Vcより小さく且つ−Vmより大きい電圧値であって、表示基板1側のシアン粒子Cのうち表示すべき階調に応じた粒子量のシアン粒子Cを表示基板1側に残し、他のシアン粒子C(表示基板1から剥離させるべきシアン粒子C)を背面基板2側に移動させるのに必要な電圧値−V2の電圧を予め定めたパルス幅で印加すると、階調に応じて剥離すべき粒子量のシアン粒子Cが背面基板2側に泳動して背面基板2側に付着した状態となる。図3(C)では、左側、中央、右側の順に、背面基板2側へ移動するシアン粒子Cが少なくなる場合を示している。すなわち、図3(C)の左側、中央、右側の順に、印加する電圧のパルス幅は短くなる。
【0043】
図4(A)(図3(A)と同一)の状態(マゼンタ表示)から、図4(B)に示すように、背面側電極4に+Vmより大きい電圧値であって、表示基板1側のマゼンタ粒子Mのうち表示すべき階調に応じた粒子量のマゼンタ粒子Mを表示基板1側に残し、他のマゼンタ粒子M(表示基板1から剥離させるべきマゼンタ粒子M)を背面基板2側に移動させるのに必要な電圧値+V1の電圧を予め定めたパルス幅で印加すると、階調に応じて剥離すべき粒子量のマゼンタ粒子Mが背面基板2側に泳動して背面基板2側に付着すると共に、シアン粒子Cが表示基板1側に泳動して表示基板1に付着した状態となる。
【0044】
そして、図4(B)の状態から、図4(C)に示すように、背面側電極4に−Vcより小さく且つ−Vmより大きい電圧値であって、表示基板1側のシアン粒子Cのうち表示すべき階調に応じた粒子量のシアン粒子Cを表示基板1側に残し、他のシアン粒子C(表示基板1から剥離させるべきシアン粒子C)を背面基板2側に付着させるのに必要な電圧値−V2の電圧を予め定めたパルス幅で印加すると、階調に応じて剥離すべき粒子量のシアン粒子Cが背面基板2側に泳動して背面基板2側に付着した状態となる。
【0045】
図4(C)では、図3(C)と同様に、左側、中央、右側の順に、背面基板2側へ移動するシアン粒子Cが少なくなる場合を示している。すなわち、図4(C)の左側、中央、右側の順に、印加する電圧の電圧値は小さくなる。
【0046】
また、図5、6も図4と同様であり、図5(A)から同図(B)の状態、図6(A)から同図(B)に移行する際の、背面基板2側へ移動するマゼンタ粒子Mの粒子量が異なるだけである。
【0047】
ところで、表示媒体10は、本実施形態では一例としてアクティブマトリクス駆動方式により駆動される。このため、本実施形態では、一例として図7(A)に示すように、表示側電極3は表示基板1の全面に形成された共通電極であり、背面側電極4は、画素数に対応した複数の孤立電極4Aからなる。なお、同図(A)、(B)においては、説明を簡単にするために2つの孤立電極14Aを備えた構成を示したが、複数の孤立電極14Aは、実際は二次元状に多数配置される。
【0048】
本実施形態では、全面電極である表示側電極3を接地(0V)し、表示させたい画像に応じて、粒子を移動させるべき画素に対応した孤立電極14Aに電圧を印加することにより、画像を表示させる。すなわち、背面基板2側の正に帯電されたシアン粒子Cを表示基板1側に移動させたい場合は、+Vc以上の階調に応じた電圧を、シアン粒子Cを移動させるべき画素に対応する孤立電極14Aに印加する。
【0049】
ここで、全てのシアン粒子Cが背面基板2側に配置された状態において、図7(A)の右側の孤立電極14A(以下、孤立電極14ARと称する)が、シアン粒子を表示基板1側へ移動させるべき画素に対応した孤立電極であり、同図(A)左側の孤立電極14A(以下、孤立電極14ALと称する)が、シアン粒子Cを表示基板1側へ移動させない画素に対応した孤立電極であった場合、従来の駆動方法では、孤立電極14ARには+Vc以上の階調に応じた電圧V1を印加し、孤立電極14ALは接地(0V)する。
【0050】
この場合、図7(A)に示すように、基板間には、孤立電極14ARから表示側電極3に向かう電気力線60Aだけでなく、孤立電極14ARから孤立電極14ALに向かう電気力線60Bも形成される。このため、本来、孤立電極14AR側から表示側電極3側へ移動すべきシアン粒子Cの一部が、孤立電極14ARに隣接する孤立電極14AL側へ移動してしまい、シアン粒子Cの表示濃度が低下してしまう場合がある。また、電気力線60Aも、本来表示したくない孤立電極14ALの画素側まではみ出しており、表示解像度が低下する(この場合、孤立電極14ARの画素が大きくなってしまう)場合がある。

【0051】
そこで、本実施形態では、例えばシアンを表示する場合、シアン粒子Cを背面基板2から剥離させるのに必要な閾値電圧+Vc以上の階調に応じた第1の電圧V1を、孤立電極14ARに印加した後、第1の電圧と同極性で且つ閾値電圧+Vcより低い第2の電圧V2を、粒子群を移動させる画素に対応する孤立電極14AR及び孤立電極14ARに隣接する隣接電極であって粒子群を移動させる必要のない画素に対応した孤立電極14ALに印加する。
【0052】
このように、第1の電圧V1を印加した後に、第2の電圧を印加することにより、図7(B)に示すように、孤立電極14ARから孤立電極14ALに向かう電気力線は形成されず、孤立電極14ARから表示側電極3へ向かう電気力線60Cが形成されると共に、孤立電極14ALから表示側電極3へ向かう電気力線60Dが形成される。このため、孤立電極14ARから孤立電極14ALへシアン粒子Cは移動しない。
【0053】
なお、マゼンタ粒子Mが背面基板2側に配置された状態から表示基板側へ移動させる場合には、第1の電圧は、マゼンタ粒子Mの閾値電圧である−Vmよりも低い電圧−V1であり、第2の電圧は、マゼンタ粒子Mの閾値電圧である−Vmよりも高い(絶対値が小さい)電圧−V2である。
【0054】
次に、本実施形態の作用として、制御部40のCPU40Aで実行される制御について図8に示すフローチャートを参照して説明する。
【0055】
まず、ステップS10では、表示媒体100に表示させるべき画像の画像情報を例えばI/O40Eを介して図示しない外部装置から取得する。
【0056】
ステップ12では、リセット電圧VRを印加するように電圧印加部30に指示する。ここでは、リセット電圧VRは、全てのシアン粒子Cを表示基板1側へ移動させ、全てのマゼンタ粒子Mを背面基板2側へ移動させるための電圧とする。すなわち、図9に示すように、リセット電圧VRは、マゼンタ粒子Mの閾値電圧+Vmよりも高い電圧である。このため、リセット用電圧VRが背面側電極4に印加されると、表示基板1側へ全てのシアン粒子Cが移動して付着し、背面基板2側へ全てのマゼンタ粒子Mが移動して付着する。
【0057】
ステップS14では、取得した画像情報に基づいて、背面側電極4に印加すべき第1の電圧を決定し、電圧印加部30に指示する。電圧印加部30は、制御部40から指示された第1の電圧を背面側電極4に印加する。
【0058】
この第1の電圧は、表示媒体100に表示すべき色の階調に応じた電圧である。例えばマゼンタの階調表示を行う場合には、例えば図9に示すように、第1の電圧は、マゼンタ粒子Mの閾値電圧である−Vmよりも低い電圧−V1であり、その電圧値は、表示すべきマゼンタ色の階調(濃度)に応じた電圧値である。なお、電圧値は同一で、パルス幅によって階調制御してもよい。
【0059】
電圧−V1を背面側電極4のうち粒子を移動させる画素に対応した孤立電極に印加し、粒子を移動させない画素に対応した孤立電極は接地することにより、背面基板2から印加電圧に応じた粒子量のマゼンタ粒子Mが画像パターンに応じて表示基板1側へ移動を開始すると共に、表示基板1側の対応する画素にあるシアン粒子Cが背面基板2側へ移動を開始する。
【0060】
ステップS16では、第2の電圧を背面側電極4のうち、粒子を表示基板側へ移動させる画素に対応した孤立電極及びこの画素に隣接する隣接画素であって粒子を表示基板側へ移動させない隣接画素に対応した孤立電極に印加するように電圧印加部30に指示する。これにより、電圧印加部30は、制御部40から指示された第2の電圧を背面側電極4に印加する。
【0061】
この第2の電圧は、第1の電圧と同極性で且つ第1の電圧よりも電圧値の絶対値が小さい電圧である。例えばマゼンタの階調表示を行う場合には、例えば図9に示すように、第2の電圧は、マゼンタ粒子Mの閾値電圧である−Vmよりも高い(絶対値が小さい)電圧−V2である。なお、電界強度が大きくなるに従って付着時間が短くなるので、応答性を考慮した場合、第2の電圧は、マゼンタ粒子Mの閾値電圧である−Vmになるべく近い電圧とすることが好ましい。さらに、−Vcより低い電圧値にすることにより、ステップS14で移動を開始しなかった全てのシアン粒子Cが背面側電極4に移動する。すなわち、マゼンタ粒子の階調表示とは独立してシアン粒子Cが背面側電極4側に移動し、リセットされる。
【0062】
電圧−V1を背面側電極4のうち粒子を表示基板側へ移動させる画素に対応した孤立電極に印加した後、電圧−V2を背面側電極4のうち粒子を表示基板側へ移動させる画素に対応した孤立電極及びこの画素に隣接する隣接画素であって粒子を表示基板側へ移動させない隣接画素に対応した孤立電極に印加することにより、図7(B)に示すように、背面側電極4のうち粒子を表示基板側へ移動させる画素に対応した孤立電極から、これに隣接する隣接画素であって粒子を表示基板側へ移動させない隣接画素に対応した孤立電極に向かう電気力線は形成されない。このため、表示基板1側へ移動させるべきマゼンタ粒子Mは平行移動せず、表示基板1側へ移動する。
【0063】
この状態からシアン粒子Cの階調制御を行う場合、図9に示すように、第1の電圧として、シアン粒子Cの閾値電圧+Vcよりも高く、マゼンタ粒子Mの閾値電圧+Vmよりも低い電圧であった階調に応じた電圧+V1を背面側電極4に印加する。その後、第2の電圧として、閾値電圧+Vcよりも低い電圧+V2を背面側電極4に印加する。これにより、背面基板2側のシアン粒子Cは電極に対して平行方向に移動せずに、背面基板2から印加電圧に応じた粒子量のシアン粒子Cが表示基板1側へ移動して付着する。
【0064】
なお、図9に示すように、第2の電圧を予め定めた時間印加してすぐに電圧の印加を停止するのではなく、図10に示すように、第2の電圧を予め定めた時間印加してその後徐々に電圧が低くなるように制御してもよい。
【0065】
また、画素のサイズが小さくなる、すなわち背面側電極4の各孤立電極のサイズが小さくなるに従って、第2の電圧を印加する画素の領域、すなわち第2の電圧を印加する孤立電極を含む領域を拡大するようにしてもよい。
【0066】
以上、本実施形態に係る表示装置について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0067】
例えば、本実施形態では、表示基板1に全面電極である表示側電極3、背面基板2に複数の孤立電極からなる背面側電極4を設けた構成で、アクティブマトリクス駆動を行う場合について説明したが、表示基板1に複数の孤立電極からなる表示側電極3、背面基板2に全面電極である背面側電極4を設けた構成としてもよい。
【0068】
また、表示側電極3を複数の第1のライン電極で構成し、背面側電極4を第1のライン電極と直交する複数の第2のライン電極で構成し、パッシブマトリクス駆動する構成としてもよい。
【0069】
また、本実施形態では、着色粒子としてシアン色及びマゼンタ粒子の2色の着色粒子を用いた場合について説明したが、色はこれに限定されるものではない。さらに、着色粒子の種類も2色に限らず3色以上の着色粒子を用いてもよく、1色の着色粒子のみを用いてもよい。
【0070】
また、泳動しない粒子群としては、白色粒子群に限らず、例えば黒色の粒子群を用いてもよい。
【0071】
なお、図1(A)に示した間隙部材5を各画素間(図7の場合、左右の孤立電極14ALと孤立電極14ARとの間など)の全てに設置することによっても、粒子が電極と平行な方向、すなわち隣接画素側に移動してしまうのが防止されるが、画素ごとにセルを形成するのは製造コストを上昇させると共に、解像度を上げてセルを小さくすると、各セルに分散媒6や泳動粒子群を均一に封入するのが困難になり、製造コストを上昇させてしまう。このため、間隔部材5は、画素間全てではなく一部に設けることが好ましい。
【符号の説明】
【0072】
1 表示基板
2 背面基板
3 表示側電極
4 背面側電極
5 間隙部材
6 分散媒
10 表示媒体
11 第1泳動粒子(群)
12 第2泳動粒子(群)
13 白色粒子(群)
20 表示媒体
30 電圧印加部
40 制御部
100 表示装置
C シアン粒子(群)
M マゼンタ粒子(群)
Y 黄色粒子(群)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性を有する表示基板と、前記表示基板と間隙を持って対向して配置された背面基板と、前記表示基板と前記背面基板との基板間に封入された分散媒と、前記分散媒中に分散され且つ前記基板間に形成された電界に応じて前記基板間を移動するように前記基板間に封入された前記分散媒と色が異なる粒子群と、を有する表示媒体に対して、
前記粒子群の色を表示する場合、前記粒子群を前記表示基板又は前記背面基板から剥離させるのに必要な閾値電圧以上の第1の電圧を、前記粒子群を移動させる画素の前記基板間に印加した後、前記第1の電圧と同極性で且つ前記閾値電圧より低い第2の電圧を、前記粒子群を移動させる画素及び当該画素に隣接する隣接画素であって前記粒子群を移動させない隣接画素の前記基板間に印加する電圧印加手段
を備えた表示媒体の駆動装置。
【請求項2】
前記電圧印加手段は、前記第2の電圧を予め定めた時間印加し、徐々に電圧を低下させる
請求項1記載の表示媒体の駆動装置。
【請求項3】
前記電圧印加手段は、前記画素のサイズが小さくなるに従って、前記第2の電圧を印加する画素の領域を拡大する
請求項1又は請求項2記載の表示媒体の駆動装置。
【請求項4】
前記粒子群は、色及び帯電極性が異なる複数種類の粒子群を含む
請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の表示媒体の駆動装置。
【請求項5】
コンピュータを、請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の表示媒体の駆動装置を構成する各手段として機能させるための表示媒体の駆動プログラム。
【請求項6】
透光性を有する表示基板と、前記表示基板と間隙を持って対向して配置された背面基板と、前記表示基板と前記背面基板との基板間に封入された分散媒と、前記分散媒中に分散され且つ前記基板間に形成された電界に応じて前記基板間を移動するように前記基板間に封入された前記分散媒と色が異なる粒子群と、を有する表示媒体と、
前記請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の前記表示媒体の駆動装置と、
を備えた表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−44882(P2013−44882A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181717(P2011−181717)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】