説明

表示媒体用粒子および情報表示用パネル

【課題】高い耐久性および改善された正帯電特性を有する表示媒体用粒子、および、その表示媒体用粒子により構成される表示媒体を用いた良好な表示安定性を有する情報表示用パネルを提供する。
【解決手段】基板1,2間の空間に光学的反射率および帯電特性を有する表示媒体を封入し、表示媒体に電界を付与することによって、表示媒体を移動させて画像等の情報を表示する情報表示用パネルの表示媒体を構成する本発明の表示媒体用粒子は、窒素含有複素環もしくは窒素含有脂肪族を両末端に有するアゾ系開始剤を用いて微小粒子を作製した後、有機スルホン酸アルキルと反応させることにより、表層部に正帯電を示す官能基が存在する球状樹脂微粒子として構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示媒体用粒子、特に、少なくとも一方が透明な2枚の基板間の空間に光学的反射率および帯電特性を有する表示媒体を封入し、表示媒体に電界を付与することによって、表示媒体を移動させて画像等の情報を表示する情報表示用パネルの表示媒体を構成する表示媒体用粒子の耐久性および正帯電特性を改善するために用いる表示媒体用粒子、および、該表示媒体用粒子を用いる情報表示用パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示装置(LCD)に代わる情報表示装置として、電気泳動方式、エレクトロクロミック方式、サーマル方式、2色粒子回転方式等の技術を用いた情報表示装置が提案されている。
【0003】
これら従来技術は、LCDと比較すると、通常の印刷物に近い広い視野角が得られる、消費電力が小さい、メモリー機能を有している等のメリットがあることから、次世代の安価な情報表示装置に使用可能な技術として考えられており、携帯端末用情報表示、電子ペーパー等への展開が期待されている。特に最近では、分散粒子と溶液から成る分散液をマイクロカプセル化し、これを対向する基板間に配置して成る電気泳動方式が提案され、期待が寄せられている。
【0004】
しかしながら、電気泳動方式では、液中を粒子が泳動するために液の粘性抵抗により応答速度が遅くなるという問題がある。さらに、低比重の溶液中に酸化チタン等の高比重の粒子を分散させているため沈降しやすくなっており、分散状態の安定性維持が難しく、情報表示の繰り返し安定性に欠けるという問題を抱えている。また、マイクロカプセル化にしても、セルサイズをマイクロカプセルレベルにして、見かけ上、上述した欠点が現れにくくしているだけであって、本質的な問題は何ら解決されていない。
【0005】
一方、溶液中での挙動を利用する電気泳動方式に対し、溶液を使わず、導電性粒子と電荷輸送層とを基板の一部に組み入れる方式も提案され始めている(例えば、非特許文献1参照)。しかし、電荷輸送層、さらには電荷発生層を配置するために構造が複雑化するとともに、導電性粒子に電荷を一定に注入することは難しいため、安定性に欠けるという問題もある。
【0006】
上述した種々の問題を解決するための一方法として、少なくとも一方が透明な2枚の基板間の空間に光学的反射率および帯電特性を有する表示媒体を封入し、表示媒体に電界を付与することによって、表示媒体を移動させて画像等の情報を表示する情報表示用パネルが知られている。
【非特許文献1】趙 国来、外3名、”新しいトナーディスプレイデバイス(I)”、1999年7月21日、日本画像学会年次大会(通算83回)”Japan Hardcopy'99 ”論文集、p.249-252
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
情報表示用パネルに用いる表示用媒体粒子は、情報表示用パネル内において表示用媒体粒子同士、また、情報表示用パネルと衝突を繰り返すため、耐久性が要求される。表示用媒体粒子の表面を被覆する樹脂微小粒子は強度が要求されるため、架橋密度が高いことが望ましい。このため、例えばジビニルベンゼンのようにビニル基を少なくとも2つ以上有するモノマーを用いる必要がある。
粒子径が1000nm以下の粒子を作製する手法として、乳化重合が挙げられる。この手法は、界面活性剤を用いて水溶液中にモノマーを分散させ、重合させる手法であるが、ポリビニルアルコール等の高分子系界面活性剤を用いると界面活性剤複合微粒子が作製され、界面活性剤複合微粒子は帯電特性が悪く、表示用パネルには使用できない。
界面活性剤を使用しない微粒子の作製方法としてソープフリー重合がある。ソープフリー重合は、水溶解性開始剤を用いて重合を開始し、オリゴマー状態になると水に不溶となり、凝集し、ミセルを形成し、さらに重合が進行することにより微粒子となる。このとき親水部分は水溶液側に向くため、この親水基が帯電基として機能する。官能基部分を親水化するため官能基は塩となることが望ましい。
しかし、2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2'−アゾビス[2−(イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩等の市販塩酸塩タイプのアゾ系重合開始剤を用いた場合、例えばスチレン、ジビニルベンゼン(重量比)1:1配合下での粒子の製造は困難であり、癒着物、巨大固定物等が生成し、1000nm以下の球状樹脂微小粒子を得ることはできなかった。
さらに、情報表示用パネルに用いる表示用媒体粒子は、正、負の極性を有する粒子が各々必要であり、帯電特性の向上のために樹脂微小粒子表面に帯電機能を有する官能基が必要となる。
しかしながら、架橋密度が高く、かつ、表面に帯電機能を有する官能基を有する構造を有する球状樹脂微小粒子は実現されていない。
【0008】
本発明は、高い耐久性および改善された正帯電特性を有する表示媒体用粒子、および、その表示媒体用粒子により構成される表示媒体を用いた良好な表示安定性を有する情報表示用パネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の表示媒体用粒子は、窒素含有複素環もしくは窒素含有脂肪族を両末端に有するアゾ系開始剤を用いて微小粒子を作製した後、有機スルホン酸アルキルと反応させることにより、表層部に正帯電性を示す官能基が存在する球状樹脂微粒子として構成したことを特徴とする。
【0010】
本発明の表示媒体用粒子の好適例としては、前記球状樹脂微粒子の平衡重量平均帯電量Qが、次式
1.0<Q<600 [μC/g]
の範囲内にあること、粒子径が30〜1000nmであること、前記開始剤を、モノマー量に対し0.5〜80mol%用いてなること、ビニル基を少なくとも2つ以上有するモノマーを1mol%以上有すること、および、表面付着複合化処理に用いる表示媒体用粒子であること、がある。
【0011】
本発明の情報表示用パネルは、少なくとも一方が透明な2枚の基板間の空間に少なくとも1種類以上の粒子からなる光学的反射率および帯電特性を有する表示媒体を少なくとも1種類以上封入し、表示媒体に電界を付与することによって、表示媒体を移動させて画像等の情報を表示する情報表示用パネルの、表示媒体を構成する表示媒体用粒子として請求項1〜6の何れか1項に記載の表示媒体用粒子を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
上記本発明の表示媒体用粒子によれば、窒素含有複素環もしくは窒素含有脂肪族を両末端に有するアゾ系開始剤を用いて微小粒子を作製した後、有機スルホン酸アルキルと反応させることにより、表層部に正帯電性を示す官能基が存在する球状樹脂微粒子として構成したものであるから、この表示媒体用粒子は、高い耐久性および改善された正帯電特性を有する表示媒体用粒子となり、この表示媒体用粒子から成る表示媒体を用いた情報表示用パネルは、良好な表示安定性を得ることができるものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0014】
まず、本発明の表示媒体用粒子より成る表示媒体を用いる情報表示用パネルの構成について説明する。本発明の情報表示用パネルでは、対向する2枚の基板間の空間に封入した表示媒体に電界が付与される。付与された電界方向に沿って、帯電した表示媒体が電界による力やクーロン力などによって引き寄せられ、表示媒体が電界方向の変化によって移動することにより、画像等の情報表示がなされる。従って、表示媒体が、均一に移動し、かつ、繰り返し表示情報を書き換える時あるいは表示情報を継続して表示する時の安定性を維持できるように、情報表示用パネルを設計する必要がある。ここで、表示媒体を構成する粒子にかかる力は、粒子同士のクーロン力により引き付けあう力の他に、電極や基板との電気鏡像力、分子間力、液架橋力、重力などが考えられる。
【0015】
本発明の対象となる情報表示用パネルの例を、図1(a),(b)〜図4(a),(b)、図5(a)〜(d)に基づき説明する。
【0016】
図1(a),(b)に示す例では、少なくとも1種以上の粒子から構成される光学的反射率および帯電特性の異なる少なくとも2種以上の表示媒体3(ここでは表示媒体用白色粒子3Waの粒子群からなる白色表示媒体3Wと表示媒体用黒色粒子3Baの粒子群からなる黒色表示媒体3Bを示す)を、隔壁4で形成された各セルにおいて、基板1に設けた電極5(個別電極)と基板2に設けた電極6(個別電極)との間に電圧を印加することにより発生する電界に応じて、基板1、2と垂直に移動させる。そして、図1(a)に示すように白色表示媒体3Wを観察者に視認させて白色の表示を行うか、あるいは、図1(b)に示すように黒色表示媒体3Bを観察者に視認させて黒色の表示を行っている。なお、図1(a)、(b)において、手前にある隔壁は省略している。電極は、基板の外側に設けても、基板の内側に設けても、基板内部に埋め込むように設けてもよい。
【0017】
図2(a)、(b)に示す例では、少なくとも1種以上の粒子から構成される光学的反射率および帯電特性の異なる少なくとも2種以上の表示媒体3(ここでは表示媒体用白色粒子3Waの粒子群からなる白色表示媒体3Wと表示媒体用黒色粒子3Baの粒子群からなる黒色表示媒体3Bを示す)を、隔壁4で形成された各セルにおいて、基板1に設けた電極5(ライン電極)と基板2に設けた電極6(ライン電極)との間に電圧を印加することにより発生する電界に応じて、基板1、2と垂直に移動させる。そして、図2(a)に示すように白色表示媒体3Wを観察者に視認させて白色の表示を行うか、あるいは、図2(b)に示すように黒色表示媒体3Bを観察者に視認させて黒色の表示を行っている。なお、図2(a)、(b)において、手前にある隔壁は省略している。電極は、基板の外側に設けても、基板の内側に設けても、基板内部に埋め込むように設けてもよい。
【0018】
図3(a),(b)に示す例では、少なくとも1種以上の粒子から構成される光学的反射率および帯電性を有する1種の表示媒体3(ここでは表示媒体用白色粒子3Waの粒子群からなる白色表示媒体3Wを示す)を、隔壁4で形成された各セルにおいて、基板1に設けた電極5と電極6との間に電圧を印加することにより発生する電界に応じて、基板1、2と平行方向に移動させる。そして、図3(a)に示すように、白色表示媒体3Wを観察者に視認させて白色の表示を行うか、あるいは、図3(b)に示すように、黒色板7を観察者に視認させて黒色の表示を行っている。なお、図3(a)、(b)において、手前にある隔壁は省略している。
【0019】
図4(a),(b)に示す例では、3個のセルで単位画素を構成するカラー表示の例を示している。図4(a)、(b)に示す例では、表示媒体としてはセル21−1〜21−3の全てに白色表示媒体3Wと黒色表示媒体3Bとを封入し、第1のセル21−1の観察者側に赤色カラーフィルター22Rを設け、第2のセル21−2の観察者側に緑色カラーフィルター22Gを設け、第3のセル21−3の観察者側に青色カラーフィルター22Bを設け、第1のセル21−1、第2のセル21−2および第3のセル21−3の3個のセルで単位画素を構成している。本例では、カラー表示を行う際に、図4(a)に示すように、観察者側に、第1セル21−1〜第3のセル21−3の全てにおいて白色表示媒体3Wを移動することで、観察者に対し白色表示を行うか、あるいは、図4(b)に示すように、観察者側に、第1セル21−1〜第3のセル21−3の全てにおいて黒色表示媒体3Bを移動することで、観察者に対し黒色表示を行っている。なお、図4(a)、(b)において、手前にある隔壁は省略している。電極は、基板の外側に設けても、基板の内側に設けても、基板内部に埋め込むように設けてもよい。各セルにおける表示媒体の移動のさせ方で多色カラー表示が行える。
【0020】
図5(a)〜(d)に示す例では、まず、図5(a)、(c)に示すように、少なくとも1種以上の粒子から構成される光学的反射率および帯電特性の異なる少なくとも2種以上の表示媒体3(ここでは表示媒体用白色粒子3Waの粒子群からなる白色表示媒体3Wと表示媒体用黒色粒子3Baの粒子群からなる黒色表示媒体3Bを示す)を、隔壁4で形成された各セルにおいて、基板1の外側に設けた外部電界形成手段11と基板2の外側に設けた外部電界形成手段12との間に電圧を印加することにより発生する電界に応じて、基板1、2と垂直に移動させる。そして、図5(b)に示すように白色表示媒体3Wを観察者に視認させて白色の表示を行うか、あるいは、図5(d)に示すように黒色表示媒体3Bを観察者に視認させて黒色の表示を行っている。なお、図5(a)〜(d)において、手前にある隔壁は省略している。また、基板1の内側には導電部材13を設けるとともに、基板2の内側には導電部材14を設けている。これら導電部材は設けなくてもよい。
【0021】
以下、本発明の表示媒体用粒子について説明する。本発明の表示媒体用粒子は、表面付着複合化処理に用いることができる表示媒体用粒子であるとともに、図1(a),(b)〜図4(a),(b)、図5(a)〜(d)の情報表示用パネルの表示媒体を構成する表示媒体用粒子として用いることができるものであり、上記情報表示用パネルの少なくとも一方が透明な2枚の基板間の空間に光学的反射率および帯電特性を有する表示媒体を構成して封入されるものである。
【0022】
本発明の表示媒体用粒子は、イミダゾール、ピリジン等の窒素含有複素環もしくはアルキルアミン、ジアルキルアミン、シクロヘキシルアミン等の窒素含有脂肪族を両末端に有するアゾ系開始剤を用いて微小粒子を作製した後、トリフルオロスルホン酸メチル、パラトルエンスルホン酸メチル等の有機スルホン酸アルキルと反応させることにより、表層部に正帯電性を示す官能基が存在する球状樹脂微粒子として構成されている。
本発明の表示媒体用粒子の好適条件としては、以下のものがある。
(1)上記球状樹脂微粒子の平衡重量平均帯電量Qが、次式
1.0<Q<600 [μC/g]
の範囲内にあること。
(2)粒子径が30〜1000nmであること。
(3)上記開始剤を、モノマー量に対し0.5〜80mol%用いてなること。
(4)ビニル基を少なくとも2つ以上有するモノマーを1mol%以上有すること。さらに好ましくは、ビニル基を少なくとも2つ以上有するモノマーを10mol%以上有すること。
【0023】
上述した本発明の表示媒体用粒子の構造は、高耐久性および正帯電性能の向上を実現するための子粒子の構造を規定するものである。具体的には、表層部に正帯電性を示す官能基が存在する球状樹脂微粒子(球状子粒子)であり、正帯電性を示す官能基を持つ球状樹脂微粒子を作製する際には、素含有複素環もしくは窒素含有脂肪族を両末端に有するアゾ系開始剤を用いて微小粒子を作製した後、有機スルホン酸アルキルと反応させることにより、粒子径が1000nm以下の球状樹脂微粒子が得られる。また、高耐久性および高強度を実現するためには、ビニル基を少なくとも2つ以上有するモノマーを1mol%以上用いることにより、本発明の表示媒体用粒子が得られる。
【0024】
[原材料例]
本発明の表示媒体用粒子を作製する際に用いる開始剤は、イミダゾール、ピリジン等の窒素含有複素環もしくはアルキルアミン、ジアルキルアミン、シクロヘキシルアミン等の窒素含有脂肪族を両末端に有するアゾ系開始剤である。
具体的には、2,2'−アゾビス[2−(イミダゾリン−2−イル)プロパン]等のイミダゾリン基を有するアゾ開始剤、4,4'−アゾビス[4−シアノ吉草酸(メチルピリジン)アミド]等のピリジン基を有するアゾ開始剤、4,4'−アゾビス[4−シアノ吉草酸(メチルアミン)アミド]、4,4'−アゾビス[4−シアノ吉草酸(メチルシクロヘキシルアミン)アミド]等のアミノ基を有するアゾ開始剤等が挙げられる。
粒子が正帯電を示すためには、上記開始剤をモノマー量に対し0.5〜80%用いるのが好ましい。
[微粒子原材料例]
粒子合成に用いるモノマーとしては、スチレン、ビニルナフタレン、4−ビニルビフェニル、アセナフチレン、1,1−ジフェニルエチレン、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル等のビニル基を単独、もしくは、複数有するモノマーが挙げられる。これらはビニル基を少なくとも2つ以上有するモノマーを単独、もしくは、他モノマー複数種と組み合わせて使用してもよい。本発明に使用可能なモノマーは上記化合物に限定されるものではない。
粒子の強度を上げるためには、ビニル基を少なくとも2つ以上有するモノマーがモノマー全体に対し1mol%以上存在することが好ましく、ビニル基を少なくとも2つ以上有するモノマーが10mol%以上存在することがさらに好ましい。
粒子重合溶媒としては、水単独でも、水/メタノール、水/エタノール、水/プロパノール、水/酢酸エチル等の混合溶媒でもよい。混合比率は0〜80%であり、好ましくは0〜40%である。
粒子径の調整には,pH調整剤を使用してもよい。
樹脂微粒子表層部に正帯電性を示す官能基を存在させるために、イミダゾール、ピリジン等の窒素含有複素環もしくはアルキルアミン、ジアルキルアミン、シクロヘキシルアミン等の窒素含有脂肪族と微粒子表層部に存在する有機スルホン酸アルキル等とを反応させる。
有機スルホン酸アルキルとしては、ベンゼンスルホン酸メチル、ベンゼンスルホン酸エチル、パラトルエンスルホン酸メチル、パラトルエンスルホン酸エチル、トリフルオロメタンスルホン酸メチル、トリフルオロメチルベンゼンスルホン酸メチル等が挙げられる。
有機スルホン酸アルキルの使用量は、粒子作製時に使用した開始剤1モルに対し、2〜10モル使用するのがよく、好ましくは2.1〜5モルである。
有機スルホン酸アルキルと粒子に存在する官能基との反応に用いる溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、クロロフォルム等のハロゲン系有機溶媒等が挙げられ、好ましくはメタノール、エタノール、イソプロパノールであり、さらに好ましくは脱水メタノール、脱水エタノールである。
【0025】
[微粒子合成例]
4,4'−アゾビス[4−シアノ吉草酸(メチルピリジン)アミド]を水に溶解した後、スチレンおよびジビニルベンゼンの混合液を加え、温度75℃で22時間反応させた。反応終了後、不要固形物を除去した後、遠心分離機にて粒子を回収した。回収した粒子をメタノール、アセトン、n−へキサンの順で洗浄した後、回収した粒子を60℃のオーブンで乾燥させると高架橋ポリスチレン粒子が得られる。
この粒子をメタノール等の有機溶媒に分散させた後、トルエンスルホン酸メチル等の有機スルホン酸アルキルを滴下し、室温で18時間反応した後、メタノール、アセトン、n−へキサンの順で洗浄し、60℃のオーブンで乾燥させることにより、正帯電官能基を有する高架橋ポリスチレン粒子が得られる。
【0026】
本発明の表示媒体用粒子は、素含有複素環もしくは窒素含有脂肪族を両末端に有するアゾ系開始剤を用いて微小粒子を作製した後、有機スルホン酸アルキルと反応させることにより、従来の開始剤を用いて作製した樹脂微粒子では不可能であった、正帯電を示し、かつ、粒子径30〜1000nmを有する微粒子を得ることを可能としている。本願の発明者らは、ソープフリー重合の重合機構を鋭意検討することにより、微粒子の表面状態(表面電位等)を制御し、重合初期に発生する粒子同士の凝集、癒着による粒径の巨大化、歪化を大幅に抑制することが可能になっており、イミダゾール、ピリジン等の窒素含有複素環またはシクロヘキシルアミン等の窒素含有脂肪族が粒子表面に存在することから、有機スルホン酸アルキルと反応させることにより粒子表面にカチオン性官能基の合成することが可能になっている。具体的には、イミダゾール、ピリジン等の窒素含有複素環またはシクロヘキシルアミン等の窒素含有脂肪族を両末端に有するアゾ系開始剤を用いて、粒子径30〜1000nmを有する球状微粒子を得た後に、有機スルホン酸アルキルと反応させることにより、粒子表面にカチオン性官能基が存在し、かつ、正帯電を示す球状微粒子を得ることが可能になる。また、モノマーの選択肢に幅を持たせることができ、少なくとも2つ以上のビニル基を有するモノマーを使用することにより、高架橋の微粒子が作製可能になり、高耐久性が可能になる。
本発明の表示媒体用粒子は、素含有複素環もしくは窒素含有脂肪族を両末端に有するアゾ系開始剤を用いて微小粒子を作製した後、有機スルホン酸アルキルと反応させることにより、正帯電を示す粒子径30〜1000nmの範囲にある高架橋微粒子が得られるため、良好な表示安定性を得ることができる表示媒体用粒子における母粒子表面に付着もしくは固着させる微小子粒子に好適に使用できる。
【0027】
以下、本発明の表示媒体用粒子より成る表示媒体を用いる情報表示用パネルを構成する各部材について説明する。
【0028】
基板については、少なくとも一方の基板はパネル外側から表示媒体の色が確認できる透明な基板であり、可視光の透過率が高くかつ耐熱性の良い材料が好適である。もう一方の基板となる背面基板は透明でも不透明でもかまわない。基板材料を例示すると、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルサルフォン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリイミド、アクリルなどのポリマーシートや、金属シートのように可とう性のあるもの、および、ガラス、石英などの可とう性のない無機シートが挙げられる。基板の厚みは、2〜5000μmが好ましく、さらに5〜2000μmが好適であり、薄すぎると、強度、基板間の間隔均一性を保ちにくくなり、5000μmより厚いと、薄型情報表示用パネルとする場合に不都合がある。
【0029】
必要に応じて基板に設ける電極の電極形成材料としては、アルミニウム、銀、ニッケル、銅、金等の金属類や酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム、亜鉛ドープ酸化インジウム(IZO)、導電性酸化錫、アンチモン錫酸化物(ATO)導電性酸化亜鉛等の導電金属酸化物類、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンなどの導電性高分子類が例示され、適宜選択して用いられる。電極の形成方法としては、上記例示の材料をスパッタリング法、真空蒸着法、CVD(化学蒸着)法、塗布法等で薄膜状にパターニング形成する方法や、導電剤を溶媒や合成樹脂バインダーに混合して塗布してパターニング形成する方法が用いられる。視認側(表示面側)基板に設ける電極は透明である必要があるが、背面側基板に設ける電極は透明である必要がない。いずれの場合もパターン形成可能である導電性である上記材料を好適に用いることができる。なお、電極厚みは、導電性が確保でき光透過性に支障がなければ良く、3〜1000nm、好ましくは5〜400nmが好適である。背面側基板に設ける電極の材質や厚みなどは上述した表示面側基板に設ける電極と同様であるが、透明である必要はない。なお、この場合の外部電圧入力は、直流あるいは交流を重畳しても良い。
【0030】
必要に応じて基板に設ける隔壁については、その形状は表示にかかわる表示媒体の種類や、配置する電極の形状、配置により適宜最適設定され、一概には限定されないが、隔壁の幅は2〜100μm、好ましくは3〜50μmに、隔壁の高さは10〜100μm、好ましくは10〜50μmに調整される。
また、隔壁を形成するにあたり、対向する両基板1、2の各々にリブを形成した後に接合する両リブ法、片側の基板上にのみリブを形成する片リブ法が考えられる。この発明では、いずれの方法も好適に用いられる。
これらのリブからなる隔壁により形成されるセルは、図6に示すごとく、基板平面方向からみて四角状、三角状、ライン状、円形状、六角状が例示され、配置としては格子状やハニカム状や網目状が例示される。表示面側から見える隔壁断面部分に相当する部分(セルの枠部の面積)はできるだけ小さくした方が良く、表示の鮮明さが増す。
ここで、隔壁の形成方法を例示すると、金型転写法、スクリーン印刷法、サンドブラスト法、フォトリソ法、アディティブ法が挙げられる。いずれの方法もこの発明の情報表示装置に搭載する情報表示用パネルに好適に用いることができるが、これらのうち、レジストフィルムを用いるフォトリソ法や金型転写法が好適に用いられる。
【0031】
次に、本発明の対象となる情報表示用パネルにおいて表示媒体を構成する表示媒体用粒子(以下、粒子ともいう)について説明する。表示媒体用粒子は、そのまま該表示媒体用粒子だけで構成して表示媒体としたり、その他の粒子と合わせて構成して表示媒体としたりして用いられる。
粒子には、その主成分となる樹脂に、必要に応じて、荷電制御剤、着色剤、無機添加剤等を含ますことができる。以下に、樹脂、荷電制御剤、着色剤、その他添加剤を例示する。
【0032】
樹脂の例としては、ウレタン樹脂、ウレア樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリルウレタンシリコーン樹脂、アクリルウレタンフッ素樹脂、アクリルフッ素樹脂、シリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレンアクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ブチラール樹脂、塩化ビニリデン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられ、2種以上混合することもできる。特に、基板との付着力を制御する観点から、アクリルウレタン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、アクリルフッ素樹脂、アクリルウレタンシリコーン樹脂、アクリルウレタンフッ素樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂が好適である。
【0033】
荷電制御剤としては、特に制限はないが、負荷電制御剤としては例えば、サリチル酸金属錯体、含金属アゾ染料、含金属(金属イオンや金属原子を含む)の油溶性染料、4級アンモニウム塩系化合物、カリックスアレン化合物、含ホウ素化合物(ベンジル酸ホウ素錯体)、ニトロイミダゾール誘導体等が挙げられる。正荷電制御剤としては例えば、ニグロシン染料、トリフェニルメタン系化合物、4級アンモニウム塩系化合物、ポリアミン樹脂、イミダゾール誘導体等が挙げられる。その他、超微粒子シリカ、超微粒子酸化チタン、超微粒子アルミナ等の金属酸化物、ピリジン等の含窒素環状化合物及びその誘導体や塩、各種有機顔料、フッ素、塩素、窒素等を含んだ樹脂等も荷電制御剤として用いることもできる。
【0034】
着色剤としては、以下に例示するような、有機または無機の各種、各色の顔料、染料が使用可能である。
【0035】
黒色着色剤としては、カーボンブラック、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭等がある。
青色着色剤としては、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBC等がある。
赤色着色剤としては、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッド、カルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B、C.I.ピグメントレッド2等がある。
【0036】
黄色着色剤としては、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファーストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、C.I.ピグメントイエロー12等がある。
緑色着色剤としては、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、C.I.ピグメントグリーン7、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG等がある。
橙色着色剤としては、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダンスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダンスレンブリリアントオレンジGK、C.I.ピグメントオレンジ31等がある。
紫色着色剤としては、マンガン紫、ファーストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ等がある。
白色着色剤としては、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛等がある。
【0037】
体質顔料としては、バライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイト等がある。また、塩基性、酸性、分散、直接染料等の各種染料として、ニグロシン、メチレンブルー、ローズベンガル、キノリンイエロー、ウルトラマリンブルー等がある。
【0038】
無機系添加剤の例としては、酸化チタン、亜鉛華、硫化亜鉛、酸化アンチモン、炭酸カルシウム、鉛白、タルク、シリカ、ケイ酸カルシウム、アルミナホワイト、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、カドミウムオレンジ、チタンイエロー、紺青、群青、コバルトブルー、コバルトグリーン、コバルトバイオレット、酸化鉄、カーボンブラック、マンガンフェライトブラック、コバルトフェライトブラック、銅粉、アルミニウム粉などが挙げられる。
これらの顔料および無機系添加剤は、単独であるいは複数組み合わせて用いることができる。このうち特に黒色顔料としてカーボンブラックが、白色顔料として酸化チタンが好ましい。上記着色剤を配合して所望の色の表示用有色粒子を作製できる。
【0039】
また、本発明の表示媒体用粒子(以下、粒子ともいう)は平均粒子径d(0.5)が、1〜50μmの範囲であり、均一で揃っていることが好ましい。平均粒子径d(0.5)がこの範囲より大きいと表示上の鮮明さに欠け、この範囲より小さいと粒子同士の凝集力が大きくなりすぎるために表示媒体としての移動に支障をきたすようになる。
【0040】
さらに本発明では、各粒子の粒子径分布に関して、下記式に示される粒子径分布Spanを5未満、好ましくは3未満とする。
Span=(d(0.9)−d(0.1))/d(0.5)
(但し、d(0.5)は粒子の50%がこれより大きく、50%がこれより小さいという粒子径をμmで表した数値、d(0.1)はこれ以下の粒子の比率が10%である粒子径をμmで表した数値、d(0.9)はこれ以下の粒子が90%である粒子径をμmで表した数値である。)
Spanを5以下の範囲に納めることにより、各粒子のサイズが揃い、均一な表示媒体としての移動が可能となる。
【0041】
さらにまた、各粒子の相関について、使用した粒子の内、最大径を有する粒子のd(0.5)に対する最小径を有する粒子のd(0.5)の比を50以下、好ましくは10以下とすることが肝要である。たとえ粒子径分布Spanを小さくしたとしても、互いに帯電特性の異なる粒子が互いに反対方向に動くので、互いの粒子サイズが近く、互いの粒子が当量ずつ反対方向に容易に移動できるようにするのが好適であり、それがこの範囲となる。
【0042】
なお、上記の粒子径分布および粒子径は、レーザー回折/散乱法などから求めることができる。測定対象となる粒子にレーザー光を照射すると空間的に回折/散乱光の光強度分布パターンが生じ、この光強度パターンは粒子径と対応関係があることから、粒子径および粒子径分布が測定できる。
ここで、本発明における粒子径および粒子径分布は、体積基準分布から得られたものである。具体的には、Mastersizer2000(Malvern Instruments Ltd.)測定機を用いて、窒素気流中に粒子を投入し、付属の解析ソフト(Mie理論を用いた体積基準分布を基本としたソフト)にて、粒子径および粒子径分布の測定を行なうことができる。
【0043】
さらに、本発明の表示媒体用粒子で構成する表示媒体を気体中空間で駆動させる情報表示用パネルに適用する場合には、基板間の表示媒体を取り巻く空隙部分の気体の管理が重要であり、表示安定性向上に寄与する。具体的には、空隙部分の気体の湿度について、25℃における相対湿度を60%RH以下、好ましくは50%RH以下とすることが重要である。
この空隙部分とは、図1(a),(b)〜図4(a),(b)、図5(a)〜(d)において、対向する基板1、基板2に挟まれる部分から、電極5、6(電極を基板の内側に設けた場合)、表示媒体3の占有部分、隔壁4の占有部分(隔壁を設けた場合)、情報表示用パネルのシール部分を除いた、いわゆる表示媒体が接する気体部分を指すものとする。
空隙部分の気体は、先に述べた湿度領域であれば、その種類は問わないが、乾燥空気、乾燥窒素、乾燥アルゴン、乾燥ヘリウム、乾燥二酸化炭素、乾燥メタンなどが好適である。この気体は、その湿度が保持されるように情報表示用パネルに封入することが必要であり、例えば、表示媒体の充填、情報表示用パネルの組み立てなどを所定湿度環境下にて行い、さらに、外からの湿度侵入を防ぐシール材、シール方法を施すことが肝要である。
【0044】
本発明の対象となる情報表示用パネルにおける基板と基板との間隔は、表示媒体が移動できて、コントラストを維持できればよいが、通常10〜500μm、好ましくは10〜200μmに調整される。
対向する基板間の気体中空間における表示媒体の体積占有率は5〜70%が好ましく、さらに好ましくは5〜60%である。70%を超える場合には表示媒体の移動に支障をきたし、5%未満の場合にはコントラストが不明確となり易い。
【実施例】
【0045】
以下、本発明の実施例および比較例を示して、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0046】
[測定条件]
粒子径は、日本電子製透過型電子顕微鏡写真(S3000)から直径を測定することにより求めた。
粒子の帯電量は、一般的なブローオフ法に基づいて測定した。
測定装置:ブローオフ方式帯電量測定機(京セラケミカル社製、TB−203)
メッシュアバーチャ:32[μm]
ブロー圧/サクション圧:4.5[kPa]/9.5[kPa]
キャリア:F96−80(パウダーテック社製)
振とう回数:1000(初期)、4000(長期)
【0047】
<カチオン性開始剤の合成>
和光純薬製V−501(4,4'−アゾビス(4−シアノ吉草酸))11.93gをテトラヒドロフラン180gに溶解した後、東京化成製AMP(2−アミノメチルピリジン)8.50gを加えた。和光純薬製DCC(ジシクロカルボジイミド)25gをテトラヒドロフラン50gに溶解した溶液を発熱に注意しながら、室温にて滴下した。18時間室温にて攪拌した後、白色の析出物を回収し、テトラヒドロフランで洗浄した後、減圧乾燥することにより、白色の粉末の4,4'−アゾビス[4−シアノ吉草酸(メチルピリジン)アミド](以下V501−AMPという)混合物17.11gが得られた。
以下に、この化合物の構造特定のための分析結果を示す。
1H−NMR δ(CDCl3 ):1.6[3.3H、s、=NCH(CN)C−]、2.2[4.5H、m、−CCH2 C−]、4.1[2.1H、s、−CCH2 N−]、7.4[1.0H、s、−C=CH−C−]、7.8[1.0H、s、−C=CH−C−]、8.5[1.0H、s、−C=CH−N−]
【0048】
<実施例1>粒子の作製
V501−AMP1.94gを水468gに溶解した後、スチレン(ナカライテスク)1.38gおよびジビニルベンゼン1.38gの混合液を静かに加え、容器を密閉した後、回転速度300rpm、温度75℃で22時間反応させた。反応終了後、不要固形物を除去した後、遠心分離機にて粒子を回収した。回収した粒子にさらにメタノール200mlを加え、分散させた後、遠心分離機にて粒子を回収した。この操作をアセトンで1回、n−へキサンで2回行って洗浄した後、回収した粒子を60℃のオーブンで乾燥させて、架橋ポリスチレン粒子0.85gを得た。粒子径は330nmであった。
【0049】
<実施例2>粒子表面処理
実施例1で得た架橋ポリスチレン粒子0.38gをメタノール38gに溶解した後、トルエンスルホン酸メチル(以下、TfOmeという)1.73gを加え、室温にて48時間反応させた。反応終了後、遠心分離機にて粒子を回収した。回収した粒子にさらにメタノール200mlを加え、分散させた後、遠心分離機にて粒子を回収した。この操作をアセトンで1回、n−へキサンで2回行って洗浄した後、回収した粒子を60℃のオーブンで乾燥させて、架橋ポリスチレン粒子0.29gを得た。初期摩擦帯電は33μC/gであり、長時間摩擦帯電は41μC/gであり、正帯電を示した。
【0050】
<実施例3>粒子表面処理
実施例1で得た架橋ポリスチレン粒子0.38gをメタノール38gに溶解した後、トルエンスルホン酸エチル(以下、TfOetという)1.79gを加え、室温にて48時間反応させた。反応終了後、遠心分離機にて粒子を回収した。回収した粒子にさらにメタノール200mlを加え、分散させた後、遠心分離機にて粒子を回収した。この操作をアセトンで1回、n−へキサンで2回行って洗浄した後、回収した粒子を60℃のオーブンで乾燥させて、架橋ポリスチレン粒子0.30gを得た。初期摩擦帯電は38μC/gであり、長時間摩擦帯電は50μC/gであり、正帯電を示した。
【0051】
<実施例4>粒子表面処理
実施例1で得た架橋ポリスチレン粒子0.38gをメタノール38gに溶解した後、トルエンスルホン酸エチル(以下、TfObuという)1.90gを加え、室温にて48時間反応させた。反応終了後、遠心分離機にて粒子を回収した。回収した粒子にさらにメタノール200mlを加え、分散させた後、遠心分離機にて粒子を回収した。この操作をアセトンで1回、n−へキサンで2回行って洗浄した後、回収した粒子を60℃のオーブンで乾燥させて、架橋ポリスチレン粒子0.32gを得た。初期摩擦帯電は50μC/gであり、長時間摩擦帯電は58μC/gであり、正帯電を示した。
【0052】
<実施例5>粒子の作製
V501−AMP4.15g、スチレン(ナカライテスク)2.4gおよびジビニルベンゼン2.4gを用いたこと以外は実施例1と同様にして架橋ポリスチレン粒子を作製した。収量は1.50gであり、粒子径は220nmであった。
【0053】
<実施例6>粒子表面処理
実施例5で得られた架橋ポリスチレン粒子1.0gをエタノール161gに溶解した後、エタノール26.87gに溶解させたトルエンスルホン酸メチル(TfOme)3.66gを室温にて10分かけて滴下した。滴下終了後、3時間加熱還流し、さらに15時間室温にて反応させた。反応終了後、遠心分離機にて粒子を回収した。回収した粒子にさらにメタノール200mlを加え、分散させた後、遠心分離機にて粒子を回収した。この操作をアセトンで1回、n−へキサンで2回行って洗浄した後、回収した粒子を60℃のオーブンで乾燥させて、架橋ポリスチレン粒子0.91gを得た。初期摩擦帯電は38μC/gであり、長時間摩擦帯電は49μC/gであり、正帯電を示した。
【0054】
<比較例1>
開始剤として、V−50(2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩)を0.25g用いたこと以外は実施例1と同様にして作製した。凝集体のみが得られ、球状粒子単体は得られなかった。
【0055】
<比較例2>
開始剤として、V−50(2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩)を0.25g用いて、それに水39gを加え、さらに濃塩酸0.04gを加えた。スチレン0.25gおよびジビニルベンゼン0.25gの混合溶液を静かに加え、容器を密閉した後、回転速度300rpm、温度75℃で18時間反応させた。反応終了後、不要固形物を除去した後、遠心分離機にて粒子を回収した。回収した粒子にさらにメタノール200mlを加え、分散させた後、遠心分離機にて粒子を回収した。この操作をアセトンで1回、n−へキサンで2回行って洗浄した後、回収した粒子を60℃のオーブンで乾燥させた。凝集体のみが得られ、球状粒子単体は得られなかった。
【0056】
<比較例3>
開始剤としてVA−044(2,2'−アゾビス[2−(イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩)0.3gを用いたこと以外は比較例2と同様にして作成した。凝集体のみが得られ、球状粒子単体は得られなかった。
【0057】
<比較例4>
開始剤としてVA−044(2,2'−アゾビス[2−(イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩)0.3gを用いたこと以外は実施例1と同様にして作成した。凝集体のみが得られ、球状粒子単体は得られなかった。
【0058】
<比較例5>
開始剤としてVA−044(2,2'−アゾビス[2−(イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩)0.12gを用いたこと以外は実施例1と同様にして作成した。凝集体のみが得られ、球状粒子単体は得られなかった。
【0059】
実施例1〜実施例6から、素含有複素環もしくは窒素含有脂肪族を両末端に有するアゾ系開始剤を用いて微小粒子を作製した後、有機スルホン酸アルキルと反応させることにより、粒子径30〜1000nmの粒子を作製することでき、この粒子は、データ電位および摩擦帯電から正帯電を示すことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の表示媒体用粒子からなる表示媒体を用いる情報表示用パネルは、ノートパソコン、電子手帳、PDA(Personal Digital Assistants )と呼ばれる携帯型情報機器、携帯電話、ハンディターミナル等のモバイル機器の表示部、電子書籍、電子新聞、電子マニュアル(電子取扱説明書)等の電子ペーパー、看板、ポスター、黒板やホワイトボード等の掲示板、電子卓上計算機、家電製品、自動車用品等の表示部、ポイントカード、ICカード等のカード表示部、電子広告、情報ボード、電子POP(Point Of Presence 、Point Of Purchase advertising )、電子値札、電子棚札、電子楽譜、RF−ID機器の表示部のほか、POS端末、カーナビゲーション装置、時計など様々な電子機器の表示部に好適に用いられる。他に、リライタブルペーパー(外部電界形成手段を用いて書き換えできる)としても好適に用いられる。
なお、本発明に係る情報表示用パネルの駆動方式については、パネル自体にスイッチング素子を用いない単純マトリックス駆動方式やスタティック駆動方式、また、薄膜トランジスタ(TFT)で代表される三端子スイッチング素子あるいは薄膜ダイオード(TFD)で代表される二端子スイッチング素子を用いたアクティブマトリックス駆動方式や、外部電界を用いた外部電界駆動方式など、種々のタイプの駆動方式が適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】(a),(b)は本発明の対象となる情報表示用パネルの原理的構成を示す図である。
【図2】(a),(b)は本発明の対象となる情報表示用パネルの原理的構成を示す図である。
【図3】(a),(b)は本発明の対象となる情報表示用パネルの原理的構成を示す図である。
【図4】(a),(b)は本発明の対象となる情報表示用パネルの原理的構成を示す図である。
【図5】(a)〜(d)は本発明の情報表示用パネルの原理的構成を示す図である。
【図6】本発明の対象となる情報表示用パネルにおける隔壁の形状の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0062】
1、2 基板
3 表示媒体(粒子群)
3W 白色表示媒体
3B 黒色表示媒体
3Wa 表示媒体用白色粒子
3Ba 表示媒体用黒色粒子
4 隔壁
5、6 電極
7 黒色板
11,12 外部電界形成手段
13,14 導電部材
21−1 第1のセル
21−2 第2のセル
21−3 第3のセル
22R 赤色カラーフィルター
22G 緑色カラーフィルター
22B 青色カラーフィルター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素含有複素環もしくは窒素含有脂肪族を両末端に有するアゾ系開始剤を用いて微小粒子を作製した後、有機スルホン酸アルキルと反応させることにより、表層部に正帯電を示す官能基が存在する球状樹脂微粒子として構成したことを特徴とする表示媒体用粒子。
【請求項2】
前記球状樹脂微粒子の平衡重量平均帯電量Qが、次式
1.0<Q<600 [μC/g]
の範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載の表示媒体用粒子。
【請求項3】
粒子径が30〜1000nmであることを特徴とする請求項1または2に記載の表示媒体用粒子。
【請求項4】
前記開始剤を、モノマー量に対し0.5〜80mol%用いてなることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の表示媒体用粒子。
【請求項5】
ビニル基を少なくとも2つ以上有するモノマーを1mol%以上有することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の表示媒体用粒子。
【請求項6】
表面付着複合化処理に用いる表示媒体用粒子であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の表示媒体用粒子。
【請求項7】
少なくとも一方が透明な2枚の基板間の空間に少なくとも1種類以上の粒子からなる光学的反射率および帯電特性を有する表示媒体を少なくとも1種類以上封入し、表示媒体に電界を付与することによって、表示媒体を移動させて画像等の情報を表示する情報表示用パネルの、表示媒体を構成する表示媒体用粒子として請求項1〜6の何れか1項に記載の表示媒体用粒子を用いることを特徴とする情報表示用パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−217005(P2008−217005A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−30818(P2008−30818)
【出願日】平成20年2月12日(2008.2.12)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】