説明

表示媒体

【課題】印加電圧の周波数の切り替えにより複数の液晶層の配向をそれぞれ制御することができる表示媒体を提供すること。
【解決手段】本発明の表示媒体は、液晶層250Bのバインダー251Bに、バインダー251Bの誘電率よりも低い誘電率を持つ中空粒子2500が分散されて低誘電率化することにより、液晶層250Bのインピーダンスが増加する。これにより、中空粒子2500が分散されていないときに比べて、液晶層250Bに印加される電圧Vbの分圧比が増加し、電圧Vbの電圧値は高くなり、積層液晶層300に印加される電圧Vbgに対するしきい値VBpf、VBfhは、中空粒子2500が分散されていない状態に比べて低い電圧値となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
光記録型表示媒体に光を照射することにより画像を記録する技術において、一対の電極間に複数の液晶層が積層された表示層を有し、各液晶層の配向状態が変化するしきい値電圧を異ならせることにより、カラー表示可能な表示媒体が開示されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−198949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、複数の液晶層におけるそれぞれの配向状態を変化させる電圧のしきい値の調整を容易に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1に係る表示媒体は、外部から電圧が印加される一対の電極と、第1のバインダーと、前記第1のバインダーに分散されたカプセルに内包された第1の液晶と、前記第1のバインダーに分散された粒子状の部材であって前記第1のバインダーよりも低誘電率の低誘電部材とを有し、印加される電圧が予め設定された第1の電圧値以上になると前記第1の液晶が特定の配向状態となる第1の液晶層と、前記第1の液晶層に積層される第2の液晶層であって、第2のバインダーと、前記第2のバインダーに分散されたカプセルに内包された第2の液晶とを有し、印加される電圧が予め設定された第2の電圧値以上になると前記第2の液晶が特定の配向状態となる第2の液晶層とを具備し、積層された前記第1の液晶層および前記第2の液晶層は、前記電極に電圧が印加されると、前記第1の液晶層および前記第2の液晶層が分圧した電圧が各々に対して印加されるように、前記一対の電極間に設けられ、前記電極への印加電圧が、予め設定された周波数、電圧値であるときには、前記第1の液晶層への印加電圧が前記第1の電圧値以上となるとともに、前記第2の液晶層への印加電圧が前記第2の電圧値未満となることを特徴とする。
【0006】
本発明の請求項2に係る表示媒体は、請求項1の構成において、前記第1の液晶層および前記第2の液晶層に積層され、光が照射されると抵抗値が減少する感光層であって、前記電極に電圧が印加されると、前記第1の液晶層、前記第2の液晶層および前記感光層が分圧した電圧が各々に対して印加されるように、前記一対の電極間に設けられる感光層とをさらに具備し、前記電極への印加電圧が、予め設定された周波数、電圧値であるときには、前記第1の液晶層への印加電圧は前記第1の電圧値未満となるとともに、前記第2の液晶層への印加電圧は前記第2の電圧値未満となり、前記感光層に光が照射されると、前記第1の液晶層への印加電圧が前記第1の電圧値以上となるとともに、前記第2の液晶層への印加電圧が前記第2の電圧値未満となることを特徴とする。
【0007】
本発明の請求項3に係る表示媒体は、請求項1または請求項2の構成において、前記予め設定された周波数における前記第1の液晶層のインピーダンスは、当該周波数における前記第2の液晶層のインピーダンスより大きいことを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項4に係る表示媒体は、請求項1乃至請求項3のいずれかの構成において、前記第1の液晶層および前記第2の液晶層は、前記特定の配向状態とは異なる配向状態であるときに、互いに異なる波長分布の光を反射することを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項5に係る表示媒体は、請求項4の構成において、前記低誘電部材は中空の粒子状の部材であって、当該中空部分の径は前記第1の液晶層および前記第2の液晶層において反射される波長より短いことを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項6に係る表示媒体は、請求項1乃至請求項5のいずれかの構成において、前記第2の液晶層は、前記第2のバインダーに分散された部材であって前記第2のバインダーよりも高誘電率の高誘電部材を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1に記載の発明によれば、第1のバインダー中に第1のバインダーよりも低誘電率の低誘電部材が分散されない場合に比べ、複数の液晶層におけるそれぞれの配向状態を変化させる電圧のしきい値の調整を容易に行うことができる。
本発明の請求項2に記載の発明によれば、光を照射して画像を記録することができる。
本発明の請求項3に記載の発明によれば、第1の液晶層と第2の液晶層とのインピーダンスの関係を定めない場合に比べ、複数の液晶層の作製を容易にすることができる。
本発明の請求項4に記載の発明によれば、カラーの画像を記録することができる。
本発明の請求項5に記載の発明によれば、第1のバインダー中に分散される低誘電部材の中空部分の径が、第1の液晶層および第2の液晶層において反射される波長より長い場合に比べ、表示品位を向上させることができる。
本発明の請求項6に記載の発明によれば、第2のバインダー中に第2のバインダーよりも高誘電率の高誘電部材が分散されない場合に比べ、複数の液晶層におけるそれぞれの配向状態を変化させる電圧のしきい値の調整を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態に係る記録装置の構成を示すブロック図である。
【図2】実施形態に係る電子ペーパの構成を示す図である。
【図3】積層液晶層の等価回路の一例を示す図である。
【図4】液晶層250B,250Gの反射率特性の一例を示す図である。
【図5】液晶層250Rの反射率特性の一例を示す図である。
【図6】液晶層250B、250Gの配向状態の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0014】
<実施形態>
図1は、本発明の実施形態に係る記録装置100の構成を示すブロック図である。記録装置100は、記録装置100に保持された電子ペーパ200に対して、画像情報に応じた画像を記録する装置である。記録装置100は、制御部110、操作部120、光照射部130、電圧印加部140および情報取得部150を備える。
【0015】
制御部110は、CPU(Central Processing Unit)などの演算装置やメモリなどの記憶手段を備え、記録装置100の各部の動作を制御する。操作部120は、利用者が記録装置100に対して選択、確認、取り消しなどの指示を行うための操作を行うタッチパネル、キーボードなどの操作手段であって、操作内容を示す情報を制御部110に出力する。
【0016】
光照射部130は、電子ペーパ200に対して画像を記録するときに、光を照射する光源を有している。この光源は半導体レーザなどであって、光源から発生した光を、回転するポリゴンミラーなどの反射物に反射させて、電子ペーパ200の画像を表示する単位である画素に対してスポット上の光を照射する。光照射部130は、制御部110の制御により、スポット状の光が電子ペーパ200を走査して照射するように制御される。なお、この光源は、複数のLED(Light Emitting Diode)が線状に配置され、画像を記録する解像度に応じた範囲に各LEDの光を収束するレンズを備えたLEDアレイであってもよいし、面状の光源であってもよい。この例においては、光照射部130から照射される記録光は、赤色または青色に対応する波長の光を用い、制御部110の制御によって発光させる色が切り替えられる。
【0017】
電圧印加部140は、電極を有し、制御部110の制御により、電極を介して電子ペーパ200に記録電圧を印加する。記録装置100に電子ペーパ200が保持されているときに、電圧印加部140が記録電圧を発生させると、その記録電圧は、後述する透明電極220、260間、または後述する透明電極222、262間に印加される。いずれの電極間に記録電圧を印加するかは、制御部110の制御によって決定される。また、電圧印加部140からの印加電圧は、制御部110により予め設定された態様で周波数、電圧値が変化するように制御され、この変化は光照射部130における記録光の照射と同期するように制御されている。
【0018】
情報取得部150は、図示しない記憶手段、外部装置から、制御プログラム、画像を示す画像情報など各種情報を取得する。この例においては、有線、無線などによる通信手段を用いて外部装置からの情報取得の機能を実現している。なお、外部装置より、各種情報を取得する手段は、通信手段に限らず、USBメモリ、メモリカードなどの半導体メモリ、CD、DVDなどの光ディスクなどから取得するインターフェースであってもよい。以上が記録装置100の構成についての説明である。
【0019】
図2は、本発明の実施形態に係る光記録型の表示媒体である電子ペーパ200の構成を示す図である。電子ペーパ200は、予め設定された記録電圧が印加されているときに照射された記録光に応じて記録される画像を表示する光記録型表示媒体であって、フィルム基板270、212に挟まれた第1表示層400、およびフィルム基板212、210に挟まれた第2表示層420を有する。第1表示層400は、透明電極220、260、光導電層230、積層液晶層300(液晶層250B、250G)を有する。第2表示層420は、透明電極222、262、光導電層232、液晶層250Rを有する。
【0020】
フィルム基板210、212、270は、電子ペーパ200の表面の保護、形状の支持などのために設けられた層である。例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)である。フィルム基板270は、記録された画像を使用者が観察する側に設けられている。
【0021】
透明電極220、222、260、262、は、例えば、ITO(酸化インジウム錫)を有する層である。透明電極220、222、260、262、のそれぞれは、図示しない電極に接続されている。この電極は、記録装置100に電子ペーパ200が保持されているときには、電圧印加部140の電極と接続される。その状態で電圧印加部140から電極を介して電圧が印加されると、上述したように、透明電極220、260間、または透明電極222、262間に電圧が印加される。
【0022】
光導電層230、232は、照射される記録光が照射されると、光電荷が発生して導電率を異ならせる導電体を有する感光層であって、例えば、有機光導電体を用いる。光導電層230は、この例においては、赤色を透過し、青色と緑色の電荷発生物質を有することより青色および緑色の光を吸収する構成となっている。一方、光導電層232は、青色と緑色を透過し、赤色の電荷発生物質を有することより赤色の光を吸収する構成となっている。
【0023】
光導電層230、232は、記録光を吸収すると、吸収した部分の抵抗値が低下する。したがって、電圧印加部140によって透明電極220、260間に電圧が印加されているときには、その電圧は光導電層230と積層液晶層300とによって分圧されるが、光導電層230の抵抗値が低下すると、積層液晶層300の分圧比が増加し、光導電層230の分圧比が低下する。また、電圧印加部140によって透明電極222、262間に電圧が印加されているときに、光導電層232と液晶層250Rとによって分圧されるが、光導電層232の抵抗値が低下すると、液晶層250Rの分圧比が増加し、光導電層232の分圧比が低下する。
【0024】
液晶層250B、250G、250Rは、印加される電圧に応じて配向が変化することにより光の反射状態を異ならせる素子を含み、ゼラチン、PVA(polyvinyl alcohol)などの水溶性高分子を用いたバインダー樹脂(以下、バインダー251B、251G、251Rという)中にマイクロカプセルなどのカプセルに内包されたコレステリック液晶素子(以下、液晶252B、252G、252Rという)を分散させたものである。液晶252B、252G、252Rは、電圧が印加されていないときの配向状態として、プレーナ配向状態とフォーカルコニック配向状態とになりうる。液晶252B、252G、252Rは、プレーナ配向状態の場合は光を反射して、あらかじめ決められた色を呈し、フォーカルコニック配向状態にある場合は光を透過する。この例においては、液晶層250B、250G、250Rは、それぞれ青色、緑色、赤色を反射する材料を調整した液晶252B、252G、252Rを有し、プレーナ配向状態である場合には、入射光に対して、それぞれ青色、緑色、赤色と異なる波長分布の光を選択反射する。これらの配向状態の制御については後述する。
【0025】
液晶層250Bのバインダー251Bには、バインダー251Bの誘電率よりも低い誘電率を持つ中空粒子2500が分散されている。この中空粒子2500は、この例においては、水系重合により生成されたポリマーにより内部に空間を有するように構成された粒子状の部材である。水系重合により生成されているため、水溶性高分子を用いたバインダー251Bに分散する際には凝集しにくいものとなっている。なお、バインダー251Bに分散される部材は中空の粒子状の部材である中空粒子2500でなくてもよく、バインダー251Bより誘電率が低いものであれば、どのような部材であってもよい。
【0026】
この中空粒子2500の径(粒子が球状でない場合は最長部分となる径)は、液晶層250B、250G、250Rにおいて反射される光の波長より短いことが望ましく、さらには可視光の波長より短いことが望ましい。このようにすると、中空粒子2500における可視光の屈折、回折などの散乱現象が低減される。なお、中空粒子2500を構成するポリマーの屈折率とバインダー251Bの屈折率との関係(例えば、屈折率の差が光の散乱に影響を与えない関係)により、中空粒子2500の中空部分の径(中空部分が球状でない場合は最長部分となる径)が上記条件を満たすものとしてもよい。
【0027】
図3は、積層液晶層300の等価回路の一例を示す図である。積層液晶層300について、図3を用いて説明する。図に示す電圧Vbgは、電圧印加部140から透明電極220、260に記録電圧が印加されたときに、第1表示層400に対して分圧される電圧である。また、電圧Vb、Vgは、液晶層250B、250Gが電圧Vbgを分圧したときに、液晶層250B、250Gの各々に対して印加される電圧である。
【0028】
液晶層250Bの等価回路は、抵抗RbとコンデンサCbが並列に接続され、液晶層250Gの等価回路は、抵抗RgとコンデンサCgが並列に接続されている。
【0029】
上述したように、液晶層250Bのバインダー251Bには、バインダー251Bの誘電率よりも低い誘電率を持つ中空粒子2500が分散されているため、中空粒子2500が分散されていない状態に比べて低誘電化される。したがって、コンデンサCbの静電容量は、中空粒子2500が分散されていない状態よりも低い値となる。
【0030】
これにより電圧印加部140から透明電極220、260を介して印加される記録電圧の周波数が予め設定された周波数であるときには、液晶層250Bのインピーダンスは、中空粒子2500が分散されていないときに比べて大きくなる。したがって、電圧Vbgが変化していなくても、中空粒子2500が分散されていないときに比べて、液晶層250Bに印加される電圧Vbの分圧比が増加し、電圧Vbの電圧値は高くなる。
【0031】
また、液晶層250B、250G、250Rは、各々に印加される電圧(例えば、液晶層250Bであれば電圧Vb)の電圧値が予め設定された第1しきい値以上になると、元の配向状態(プレーナ配向状態またはフォーカルコニック配向状態)からフォーカルコニック配向状態となり、さらに、第2しきい値以上になると、ホメオトロピック配向状態となる。この状態で電圧Vbへの印加が停止されるとプレーナ配向状態となるように構成されている。
【0032】
次に、図4、図5を用いて、第1表示層400と第2表示層420の各画素における液晶配向状態の制御の一例について説明する。
【0033】
図4は、液晶層250B、250Gの反射率特性の一例を示す図である。図の縦軸は、液晶層250B、250Gの反射率であり、横軸は、積層液晶層300、すなわち液晶層250B、250G全体に印加される電圧Vbg(=電圧Vb+電圧Vg)を示している。図5は、液晶層250Rの反射率特性を示す図である。図の縦軸は、液晶層250Rの反射率であり、横軸は、液晶層250Rに印加される電圧を示している。
【0034】
図4に示すように、積層液晶層300に印加される電圧Vbgの電圧値が増加し、しきい値VBpfを超えると、電圧Vbが液晶層250Bの第1しきい値以上となり、液晶層250Bはフォーカルコニック配向状態となる。そして、電圧Vbgの電圧値がしきい値VGpfを超えると、電圧Vgが液晶層250Gの第1しきい値以上となり液晶層250Gもフォーカルコニック配向状態となる。さらに電圧Vbgの電圧値が増加し、しきい値VBfhを超えると、電圧Vbが液晶層250Bの第2しきい値以上となり、液晶層250Bはホメオトロピック配向状態となる。そして、電圧Vbgの電圧値がしきい値VGfhを超えると、電圧Vgが液晶層250Gの第2しきい値以上となり液晶層250Gもホメオトロピック配向状態となる。
【0035】
上述したように、液晶層250Bに印加される電圧Vbは、液晶層250Bのバインダー251Bに中空粒子2500が分散されていない状態に比べて、分圧比が大きくなる。したがって、電圧Vbgに対するしきい値VBpf、VBfhは、中空粒子2500が分散されていない状態に比べて低い電圧値となる。
【0036】
このように電圧Vbgに対するしきい値VBpf、VBfhがより低い電圧値となることによって、しきい値VBpfはしきい値VGpfより小さく、しきい値VBfhはしきい値VGfhより小さくなるように、液晶層250B、250Gの第1しきい値、第2しきい値、中空粒子2500が分散される量、印加電圧の周波数が設定されている。ここで、液晶層250Bの第1、第2のしきい値が液晶層250Gの第1、第2しきい値以下である場合には、液晶層250Bのインピーダンスが液晶層250Gのインピーダンスより大きくなるようにすればよい。
【0037】
なお、中空粒子2500が分散されていない状態で、しきい値VBpfがしきい値VGpfより小さく、しきい値VBfhがしきい値VGfhより小さくなる場合に、バインダー251Bに中空粒子2500を分散させることが望ましく、この場合には中空粒子2500が分散されたことにより、しきい値VBpfとしきい値VGpfとの差、およびしきい値VBfhとしきい値VGfhとの差のそれぞれが、より大きいものとなる。
【0038】
液晶層250Rについては、図5に示すように、液晶層250Rに印加される電圧の電圧値が増加し、しきい値VRpfを超えると、液晶層250Rはフォーカルコニック配向状態となり、さらに電圧が増加し、しきい値VRfhを超えると、液晶層250Rはホメオトロピック配向状態となる。そして、ホメオトロピック配向状態において、電圧の印加を停止すると、ホメオトロピック配向状態は、プレーナ配向状態に変化し、プレーナ配向状態として維持され安定する。以上が、電子ペーパ200の構成についての説明である。
【0039】
次に、記録装置100における電子ペーパ200への画像の記録動作について、図4、図5、図6を用いて説明する。記録装置100は、電子ペーパ200を保持し、操作部120の操作などによって画像の記録指示がされると、制御部110は、カラーの画像を示す画像情報を取得し、電子ペーパ200への画像の記録処理を開始する。
【0040】
まず、図5を用いて赤色成分の画像の記録について説明する。第2表示層420に対する制御を行って、画像の赤色成分の記録が行われる。制御部110は、電圧印加部140を制御して、透明電極222、262間に記録電圧V3を印加させると、光導電層232と液晶層250Rとによって分圧され、液晶層250Rには、電圧値V3Lの電圧が印加される。
【0041】
そして、制御部110は、画像情報の赤色成分の情報に応じて、光照射部130から赤色の記録光を照射させると、光導電層232の抵抗が低下し、液晶層250Rによって分圧される電圧値が増加する。ここで、記録光の照射は、フィルム基板210側から行われる。なお、フィルム基板270側から記録光を照射するように光照射部130を構成してもよい。
【0042】
これにより、液晶層250Rのうち、記録光が照射された領域については、印加される電圧が電圧値V3Hに増加する。そして、記録電圧V3の印加を停止すると、記録光が照射された部分の液晶層250Rがプレーナ配向状態となり、赤色を選択反射する状態となり、記録光が照射されなかった部分はフォーカルコニック配向状態となる。なお、画像の記録前にすでに記録されている画像を消去するなどのリセット処理を行ってもよい。
【0043】
ここで、光導電層230は赤色の光を透過するから、フィルム基板270側から入射する外光のうち、赤色の光が液晶層250Rに到達し、液晶層250Rのプレーナ配向状態の部分において反射される赤色の光は、再びフィルム基板270から放射される。一方、液晶層250Rのフォーカルコニック配向状態の部分において透過する赤色の光は、光導電層232において吸収される。なお、光導電層232における赤色の光の吸収率が黒色を呈しない程度の低い吸収率である場合には、記録光の光導電層232への入射の妨げにならない層、例えば、フィルム基板210側から記録光が入射される構成である場合には、光導電層232と液晶層250Rとに挟まれる層に、赤色の光を吸収する光吸収層を設けてもよい。
【0044】
次に、第1表示層400に対する制御を行って、画像の緑色成分、青色成分の記録が行われる。以下の説明においては、プレーナ配向状態をPとし、フォーカルコニック配向状態をFとし、液晶層250Bと250Gとの配向状態の関係を例えば(P,P)のように示す。ここで、液晶層250B、250Gの配向状態の組み合わせは、(P,P)、(P,F)、(F,P)、(F,F)の4通りである。この4通りの液晶配向状態にするための制御について、図4、図6を用いて説明する。
【0045】
図4に示すように、制御部110は、電圧印加部140を制御して、透明電極220、260間に記録電圧V1を印加させると、光導電層230と積層液晶層300とによって分圧され、積層液晶層300に印加される電圧Vbgは、電圧値V1L(VBfh<V1L<VGfh)となる。この状態において、液晶層250Bは、ホメオトロピック配向状態となり、液晶層250Gは、フォーカルコニック配向状態となる。
【0046】
そして、制御部110は、画像情報の緑色成分の情報に応じて、光照射部130から青色(緑色でもよい)の記録光を照射すると、光導電層230の抵抗が低下し、積層液晶層300の分圧比が増加する。ここで、記録光の照射は、フィルム基板210側から行われる。なお、フィルム基板270側から記録光を照射するように光照射部130を構成してもよい。
【0047】
これにより、積層液晶層300のうち、記録光が照射された領域については、印加される電圧Vbgが電圧値V1H(VGfh<V1H)に増加する。そして、記録電圧V1の印加を停止すると、液晶の配向状態は、記録光が照射されていない部分は(P,F)となり、記録光が照射された部分は液晶層250Gがプレーナ配向状態となって(P,P)となる。なお、画像の記録前にすでに記録されている画像を消去するなどの初期化処理を行ってもよい。
【0048】
次に、制御部110は、電圧印加部140を制御して、透明電極220、260間に記録電圧V2を印加させると、導電層230と積層液晶層300とによって分圧され、積層液晶層300に印加される電圧Vbgは、電圧値V2L(V2L<VBph)となる。この状態において、液晶層250B、250Gは、それぞれ、上記の配向状態((P,F)、(P,P)のいずれか)を保っている。
【0049】
そして、制御部110は、画像情報の青色成分の情報に応じて、光照射部130から青色(緑色でもよい)の記録光を照射すると、光導電層230の抵抗が低下し、積層液晶層300の分圧比が増加する。このとき、記録光の照射は、フィルム基板270側から行われる。これにより、積層液晶層300のうち、記録光が照射された領域については、印加される電圧Vbgが、電圧値V2H(VBpf<V2H<VGpf)に増加して、記録光が照射された部分の液晶層250Bがフォーカルコニック配向状態となる。すなわち、配向状態が(P,F)であった部分のうち、記録光が照射された部分は(F,F)となり、(P,P)であった部分のうち、記録光が照射された部分は、(F,P)となる。一方、記録光が照射されなかった部分は、元の配向状態((P,F)、(P,P)のいずれか)となる。そして、記録電圧V2の印加を停止しても、これらの配向状態は維持される。
【0050】
図6は、液晶層250B、250Gの液晶配向状態の変化を示している。上述のように処理することにより、図6に示すように、制御部110は、画像情報の緑色成分および青色成分に応じて、光照射部130および電圧印加部140を制御して、記録電圧V1の印加中の記録光照射の有無、および記録電圧V2の印加中の記録光照射の有無によって、液晶層250B、250Gの配向を(P,P)、(P,F)、(F,P)、(F,F)のいずれかの組み合わせとして選択する。
【0051】
このとき、上述したように、液晶層250Bのバインダー251Bには、バインダー251Bの誘電率よりも低い誘電率を持つ中空粒子2500が分散されているため、中空粒子2500が分散されていない状態に比べて、しきい値VBpfとしきい値VGpfとの差、しきい値VBfhとしきい値VGfhとの差のそれぞれが大きくなる。したがって、しきい値VBpfより高くしきい値VGpfより低い範囲に設定される電圧値V2H、また、しきい値VBfhより高くしきい値VGfhより低い範囲に設定される電圧値V1Lの取りうる範囲が広くなり電圧制御が容易となる。
【0052】
ここで、フィルム基板270側から入射した外光のうち、液晶層250B、250Gにおいて反射せずに透過した光について、上述したように、青色の光および緑色の光は、光導電層230において吸収され、赤色の光は、液晶層250Rにおいて反射するか光導電層232において吸収される。なお、光導電層230における青色、緑色の光の吸収率が黒色を呈しない程度の低い吸収率である場合には、記録光の光導電層230への入射の妨げにならない層、例えば、フィルム基板210側から記録光が入射される構成である場合には、光導電層230と液晶層250Gとに挟まれる層に、青色、緑色の光を吸収する光吸収層を設けてもよい。
【0053】
これにより、液晶層250B、250G、250Rがすべてフォーカルコニック配向状態の部分は、フィルム基板270側からは黒に見えることとなる。その他、液晶層250Rがプレーナ配向状態であり、液晶層250B、250Gの配向状態が(P,P)であれば白、(P,F)であればマゼンタ、(F,P)であればイエロー、(F,F)であれば赤、液晶層250Rがフォーカルコニック配向状態であり、液晶層250B、250Gの配向状態が(P,P)であればシアン、(P,F)であれば青、(F,P)であれば緑に見えることになる。
【0054】
なお、以上の制御は、第2表示層420、第1表示層400の順序で行っているが、これとは逆に、第1表示層400、第2表示層420の順序で行ってもよい。
【0055】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は以下のように、さまざまな形態で実施可能である。
【0056】
<変形例1>
上述した実施形態においては、液晶層250Bのバインダー251Bに中空粒子2500が分散されていたが、液晶層250Bと液晶層250Gの関係を入れ替えて、液晶層250Gのバインダー251Gに中空粒子2500が分散されるようにして、液晶層250Gに印加される電圧Vgの分圧比が大きくなるようにし、しきい値VGpf、VGfhを低下させ、その結果、しきい値VGpfはしきい値VBpfより低く、しきい値VGfhはしきい値VBfhより低いものとなればよい。このようにすれば、液晶層250Bと液晶層250Gとの各しきい値を入れ替えることができる。
【0057】
なお、中空粒子2500が分散されていない状態において、しきい値VGpfはしきい値VBpfより低い電圧値となり、しきい値VGfhはしきい値VBfhより低い電圧値となっていることが望ましく、この場合には、中空粒子2500が分散されたことにより、しきい値VBpfとしきい値VGpfとの差、しきい値VBfhとしきい値VGfhとの差のそれぞれが大きくなる。
【0058】
<変形例2>
上述した実施形態において、さらに、液晶252Bの電気的特性を調整して、抵抗Rbの抵抗値がより大きく、コンデンサCbの静電容量がより小さくなるようにしてもよい。また、液晶252Gの電気的特性を調整して、抵抗Rgの抵抗値がより小さく、コンデンサCgの静電容量がより大きくなるようにしてもよい。
【0059】
<変形例3>
上述した実施形態においては、液晶層250B、250G、250Rは、プレーナ配向状態であるときにおいて、それぞれ反射する色が異なり、互いに異なる波長分布の光を反射するように構成されていたが、異なるものとせず、複数の液晶層の反射、透過の制御により階調を制御するようにしてもよい。
【0060】
<変形例4>
上述した実施形態において、液晶層250Gのバインダー251Gに、バインダー251Gの誘電率よりも高い誘電率の高誘電率部材を分散させることにより、コンデンサCgの静電容量を増加させてもよい。これにより、電圧印加部140から透明電極220、260を介して印加される記録電圧の周波数が予め設定された周波数であるときには、液晶層250Gのインピーダンスは、高誘電率部材が分散されていないときに比べて小さくなる。したがって、しきい値VBpfとしきい値VGpfとの差、しきい値VBfhとしきい値VGfhとの差のそれぞれは、実施形態における差に比べてさらに大きくなる。
【0061】
<変形例5>
上述した実施形態においては、光を照射することにより画像を記録していたが、別の構成により画像を記録してもよい。例えば、透明電極220、222、260、262を分割して、分割した透明電極の各々に印加する記録電圧を個々に制御できる構成とすればよい。このようにして、分割された各透明電極に印加する記録電圧の電圧値、周波数を個々に制御し、各透明電極間の液晶層の配向状態を変化させて画像を記録してもよい。この場合は光導電層230、232が無くてもよい。
【0062】
<変形例6>
上述した実施形態における第1表示層400は、液晶層250B、250Gの2層を有していたが、いずれか1層、または反射する色がこれらとは異なる1層の液晶層であってもよい。逆に、第2表示層420は、液晶層250Rの1層であったが、反射する色が異なる液晶層がさらに積層されていてもよい。この場合には、光導電層230において透過する色を第2表示層420における液晶層において反射する色とすればよい。
【符号の説明】
【0063】
100…記録装置、110…制御部、120…操作部、130…光照射部、140…電圧印加部、150…情報取得部、200…電子ペーパ、210,212,270…フィルム基板,220,222,260,262…透明電極、230,232…光導電層、250B,250G,250R…液晶層、251B,251G,251R…バインダー、252B,252G,252R…液晶、2500…中空粒子、300…積層液晶層、400…第1表示層、420…第2表示層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から電圧が印加される一対の電極と、
第1のバインダーと、前記第1のバインダーに分散されたカプセルに内包された第1の液晶と、前記第1のバインダーに分散された粒子状の部材であって前記第1のバインダーよりも低誘電率の低誘電部材とを有し、印加される電圧が予め設定された第1の電圧値以上になると前記第1の液晶が特定の配向状態となる第1の液晶層と、
前記第1の液晶層に積層される第2の液晶層であって、第2のバインダーと、前記第2のバインダーに分散されたカプセルに内包された第2の液晶とを有し、印加される電圧が予め設定された第2の電圧値以上になると前記第2の液晶が特定の配向状態となる第2の液晶層と
を具備し、
積層された前記第1の液晶層および前記第2の液晶層は、前記電極に電圧が印加されると、前記第1の液晶層および前記第2の液晶層が分圧した電圧が各々に対して印加されるように、前記一対の電極間に設けられ、
前記電極への印加電圧が、予め設定された周波数、電圧値であるときには、前記第1の液晶層への印加電圧が前記第1の電圧値以上となるとともに、前記第2の液晶層への印加電圧が前記第2の電圧値未満となる
ことを特徴とする表示媒体。
【請求項2】
前記第1の液晶層および前記第2の液晶層に積層され、光が照射されると抵抗値が減少する感光層であって、前記電極に電圧が印加されると、前記第1の液晶層、前記第2の液晶層および前記感光層が分圧した電圧が各々に対して印加されるように、前記一対の電極間に設けられる感光層とをさらに具備し、
前記電極への印加電圧が、予め設定された周波数、電圧値であるときには、前記第1の液晶層への印加電圧は前記第1の電圧値未満となるとともに、前記第2の液晶層への印加電圧は前記第2の電圧値未満となり、前記感光層に光が照射されると、前記第1の液晶層への印加電圧が前記第1の電圧値以上となるとともに、前記第2の液晶層への印加電圧が前記第2の電圧値未満となる
ことを特徴とする請求項1に記載された表示媒体。
【請求項3】
前記予め設定された周波数における前記第1の液晶層のインピーダンスは、当該周波数における前記第2の液晶層のインピーダンスより大きい
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の表示媒体。
【請求項4】
前記第1の液晶層および前記第2の液晶層は、前記特定の配向状態とは異なる配向状態であるときに、互いに異なる波長分布の光を反射する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の表示媒体。
【請求項5】
前記低誘電部材は中空の粒子状の部材であって、当該中空部分の径は前記第1の液晶層および前記第2の液晶層において反射される波長より短い
ことを特徴とする請求項4に記載の表示媒体。
【請求項6】
前記第2の液晶層は、前記第2のバインダーに分散された部材であって前記第2のバインダーよりも高誘電率の高誘電部材を有する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の表示媒体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−211128(P2010−211128A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−59602(P2009−59602)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】