説明

表示方法、表示媒体、及び表示素子

【課題】可視光領域内の広範囲にわたる発色を実現可能な表示方法、表示媒体、及び表示素子を提供する。
【解決手段】少なくとも金属イオンを含む電解液からなる電解液層に電界を形成することにより、前記電解液層中の前記金属イオンを多角形金属粒子として析出させる析出工程を経て所定の画像を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示方法、この表示方法を用いた表示媒体及び表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の情報化の進展に伴い、情報伝達媒体としての用紙の消費量は増大しつつある。その一方で、紙に替わるメディアとして、いわゆる電子ペーパーと呼ばれる画像の記録・消去が繰り返しでき画像表示媒体が注目されつつある。電子ペーパーを実用化するためには、用紙と同様に持ち運びに適し軽量で嵩張らない(薄い)ことや、書き換えに要するエネルギーが小さいこと、また、繰り返し書き換えを行った場合の劣化が少なく信頼性に優れていることなどが求められる。
【0003】
このような表示媒体への利用に適した表示技術としては、銀塩溶液のような電解液を利用して、電界印加により銀などの金属を析出・溶解させて表示する方法(例えば、特許文献1〜5等参照)がある。
【0004】
このような電解析出型の電子ペーパーは、その他の種類のリライダブルマーキング技術に比べて優れていると言われ、このような電解析出型の電子ペーパーには、金属として銀のナノ粒子が多く用いられている。ただし、現状の電解析出型の電子ペーパーは銀を析出させて、白黒表示させるものであった。
【0005】
金属のナノ粒子の粒径を制御してプラズモン共鳴による発色を変化させる技術としては、例えば、非特許文献1では、印加電圧を調整することにより析出される銀の粒径をナノオーダーで制御している。
【特許文献1】特開2000−338528号公報
【特許文献2】特開2005−92183号公報
【特許文献3】特開2004−18549号公報
【特許文献4】特開2004−198451号公報
【特許文献5】特開平11−101994号公報
【非特許文献1】G.Sandmann et al.:“Preparation of silver nanoparticles on ITO surfaces by a double−pulse method”,J.Electroanal.Chem.491(2000)pp.7 8−86
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術では、金属ナノ粒子の粒径を制御することにより特徴なプラズモン吸収を発生させることができるものの、発生するプラズモン吸収の波長域は、可視光領域全領域の内の、金属種と粒径とによって定まる一定の波長域に限られ、可視光領域内の広範囲にわたる発色を実現することは難しかった。
【0007】
本発明は、上記諸問題に鑑み、可視光領域内の広範囲にわたる発色を実現可能な表示方法、表示媒体、及び表示素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明の表示方法は、少なくとも金属イオンを含む電解液からなる電解液層に電界を形成することにより、前記電解液層中の前記金属イオンを還元して多角形金属粒子として析出させる析出工程を経て所定の画像を表示する。
【0009】
本発明の表示媒体は、少なくとも一方が透光性を有し、間隙を持って対向配置された一対の基板と、前記一対の基板間に設けられ、少なくとも金属イオンを含む電解液からなる電解液層と、を備え、電圧が印加されることにより、前記電解液層中の前記金属イオンが多角形金属粒子として析出されることを特徴としている。
【0010】
本発明の表示素子は、少なくとも一方が透光性を有し、間隙を持って対向配置された一対の基板と、前記一対の基板間設けられ、少なくとも金属イオンを含む電解液からなる電解液層と、前記電解液に含まれる前記金属イオンを還元して多角形金属粒子を析出する電圧を前記電解液層に印加する電圧印加手段と、を備えている。
【0011】
本発明の表示素子は、前記一対の基板間を、前記一対の基板の基板面方向に沿って複数のセルに区画する間隙部材を備え、前記複数のセルの少なくとも2つに析出される前記多角形金属粒子の形状が互いに異なる。
【0012】
また、本発明の表示素子は、前記電圧印加手段は、前記電解液層に印加する電圧として、前記電解液層中の前記金属イオンが還元されて前記多角形金属粒子として析出する析出電位と、前記多角形金属粒子が酸化されて前記金属イオンとして溶解する溶解電位と、の間で周期的に変化し、且つ前記析出電位が継続される時間T1が、前記溶解電位が継続される時間T2より大きい電圧波形で変化する電圧を印加することが好ましい。
【0013】
上記本発明の表示方法、表示媒体、及び表示素子に用いられる前記金属イオンの一例には、銀イオンが挙げられる。前記電解液は、界面活性剤を含んでいる。前記界面活性剤は、炭素数1以上20以下のアルキル鎖を有している。また、前記界面活性剤が、前記電解液中の金属イオン100重量部に対して、1重量部以上10000重量部以下含まれている。
【0014】
析出した前記多角形金属粒子は、可視光領域にプラズモン吸収波長を有している。
【0015】
この析出する多角形金属粒子は、三角錐状、三角柱状、円柱状、または四角柱状である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の表示方法、表示媒体、及び表示素子によれば、可視光領域内の広範囲にわたる発色を実現可能な表示方法、表示媒体、及び表示素子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の表示素子及び表示媒体の構成について、図1を用いて説明する。
【0018】
図1(A)に示すように、本発明の表示素子10は、電解液層34を含んで構成される表示媒体12と、電解液層34に電圧を印加するための電圧印加部14と、電解液層34内に印加する電圧値を調整するために電圧印加部14を制御するための制御部15と、を含んで構成されている。
【0019】
なお、表示素子10が本発明の表示素子に相当し、表示媒体12が本発明の表示媒体に相当し、電解液層34が本発明の表示素子及び表示媒体の電解液層に相当する。
【0020】
表示媒体12は、背面基板16、該背面基板16に間隙をもって対向して設けられた表示基板20、複数の間隙部材26、電解液層34、第2の電極22、及び第1の電極24を含んで構成されている。
なお、背面基板16及び表示基板20を、電気伝導性を有する材料により構成する場合には、表示基板20及び背面基板16の各々が、第2の電極22及び第1の電極24として機能するため、第2の電極22及び第1の電極24を設けない構成も可能である。
【0021】
表示媒体12は、背面基板16に、第2の電極22、電解液層34、第1の電極24、及び表示基板20を順に積層して構成されている。
間隙部材26は、背面基板16と表示基板20との間隙を所定間隔となるように保持すると共に、電解液層34の電解液が表示媒体12の外部に流れ出すことを抑制するための部材であって、背面基板16と表示基板20との間に複数設けられている。
【0022】
電解液層34は、背面基板16に積層された第2の電極22、間隙部材26、及び表示基板20に積層された第1の電極24によって囲まれることによって形成された各領域(以下、適宜、セルと称する)の総称であり、電解液32によって構成され、色を表示する機能を発揮する層である。
すなわち、間隙部材26によって、背面基板16と表示基板20との間の領域が、複数の区画に区切られることにより、電解液層34(詳細後述)は、複数の領域に分割される。
【0023】
第2の電極22及び第1の電極24には、第2の電極22及び第1の電極24に電圧を印加することにより、電解液層34内に電界を形成するための電圧印加部14が信号授受可能に接続されている。なお、上記第2の電極22、第1の電極24、電圧印加部14、及び制御部15は、本発明の表示素子10の電圧印加手段に相当する。
【0024】
表示基板20及び背面基板16の内の少なくとも表示基板20は、透明基板によって構成されている。
【0025】
表示基板20及び背面基板16としては、その表面に多角形金属粒子が析出されることから、電解液や刺激の付与によって劣化したり腐食したりせず、また電解液から析出した多角形金属粒子が再度溶解するまでの間、多角形金属粒子を安定的に同じ位置に保持できるものであれば特に限定されない。
【0026】
透明基板としては、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、)、ポリイミド、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、ナイロン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルフォン、シリコーン樹脂、ポリアセタール樹脂、フッ素樹脂、セルロース誘導体、ポリオレフィンなどの高分子のフィルムや板状基板、ガラス基板、金属基板、セラミック基板等の無機基板などが好ましく用いられる。なお、透明基板としては、少なくとも50%以上の光透過率(可視光)を有することが好ましい。
【0027】
間隙部材26の材料としては、特に限定されず、公知の樹脂材料を用いることができるが、製造上の観点から、感光性樹脂を用いることが好ましい。
【0028】
間隙部材26の幅(表示媒体12の積層方向に直交する方向の長さ)は、特に限定されるものではないが、一般的には幅が小さい方が表示素子10の解像度の観点より有効であり、通常、1μm〜1mm程度であることが好ましい。
【0029】
間隙部材26の高さ、すなわち、電解液層34の層厚は、製造される表示媒体12のサイズや重さ、発色性等により、適宜決定されるが、1μm〜200μm、好ましくは、3μmから100μmが好ましい。
【0030】
なお、この間隙部材26は、粒子状であってもよい。粒度分布は、狭いことが好ましく、単分散であることが、より好ましい。色は、淡色、より好ましくは、白色が良い。材質は、上記、ポリマー微粒子、もしくは、二酸化珪素、酸化チタンが好ましい。これらの粒子表面は、溶媒への分散性、溶媒からの保護の目的で、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤等の表面処理剤で、処理されることが、好ましい。
【0031】
上記部材及び各層は、図示を省略する接着層を介して接着されている。接着層の材料としては、特に限定されず、熱硬化性樹脂、紫外光硬化性樹脂等を使用することができるが、間隙部材26の材料や、電解液層34に含まれる電解液32等の表示媒体12を構成する各部材の材料に影響を与えない材料が選択される。
【0032】
第2の電極22及び第1の電極24の内の少なくとも表示媒体12の視認方向X側に設けられた第1の電極24は、少なくとも50%以上の光透過率(可視光)を有する透明電極が用いられる。
具体的には、酸化錫−酸化インジウム(ITO)、酸化錫、酸化亜鉛などに代表される金属酸化物層が好ましく用いられる。また、電極は、これらの材料を単独で用いて形成されていてもよいし、複数種の材料を積層したものであってもよい。
なお、第2の電極22及び第1の電極24の厚みや大きさは、表示媒体12によって様々なものが利用でき、特に限定されるものではない。
【0033】
なお、表示素子10の高解像度を実現するために、表示媒体12では、電解液層34が、背面基板16の基板面に沿った方向に複数セルに区切られるように、間隙部材26によって背面基板16と表示基板20との間を複数のセルに区切ることによって、複数のセルが背面基板16の板面に沿った方向に配列された構成としてもよい。
このセルを、例えば、表示媒体12に画像を表示したときの、該画像の各画素に対応して1または複数区画設けるようにすれば、各画素に対応する領域毎に表示色を調整することが可能となり好ましいが、画素や特定の領域に対応していなくてもよい。
【0034】
電解液層34は、背面基板16に積層された第2の電極22、間隙部材26、及び表示基板20に積層された第1の電極24によって囲まれることによって形成された各領域(以下、適宜、セルと称する)の総称であり、電解液32によって構成され、色を表示する機能を発揮する層である。
【0035】
また、このように間隙部材26によって表示媒体12の電解液層34を複数領域に区切ることによって、表示媒体12の一部の領域が破損した場合であっても、表示媒体12全体の機能が損なわれることを抑制することが可能となる。
【0036】
また、表示媒体12は、可撓性を有していることが好ましい。この場合、表示媒体12を、電子ペーパーや携帯型電子機器等の可撓性が求められる用途に利用することが容易となる。なお、このような用途に用いる場合には、表示基板20、背面基板16、間隙部材26、第1の電極24、及び第2の電極22として、可撓性を有する材料を用いることが好ましい。
【0037】
次に、電解液層34について説明する。
電解液層34は、電解液32によって構成され、電解液32中には、少なくとも金属イオン30が溶解されていると共に、界面活性剤が含まれている。電解液層34は、この金属イオン30と、界面活性剤と、を少なくとも含む電解液32によって構成され、表示素子10及び表示媒体12として使用する場合には、種々の色を表示する機能を発揮する。
【0038】
図1(A)に示すように、金属イオン30は、析出電位の電圧が電解液層34に印加されることにより還元されて、図1(B)に示すように、詳細を後述する多角形金属粒子36として析出する。析出した多角形金属粒子36は、溶解電位の電圧が印加されることにより酸化されて金属イオン30となり電解液32中に溶解する(図1(A)参照)。
【0039】
この析出電位は、電解液32中に溶解されている金属イオン30を還元させて析出させうる電位であり、溶解電位は、析出した金属の少なくとも1部を還元させて金属イオン30として溶解させうる電位である。
具体的には、図2に示すように、析出電位と溶解電位との閾値、すなわち金属イオン30が還元される閾値としての還元電位以上の電圧が印加されると、電解液32中の金属イオン30の還元反応により金属粒子が析出する。また、この還元電位未満の電圧が印加されると、析出した金属粒子が酸化反応により酸化して金属イオン30となり、電解液32中に溶解する。
ここで、上記「還元電位以上」とは、金属粒子の酸化反応に対して金属イオン30の還元反応が優位となるような電位であることを示している。同様に、上記「還元電位未満」とは、金属イオン30の還元反応に対して、析出した多角形金属粒子36の酸化反応が優位となるような電位であることを示している。
【0040】
表示媒体12では、詳細な作用は後述するが、電解液32中への電解形成により、多角形状の多角形金属粒子36が析出される。
この「多角形状」とは、外周の少なくとも一部に平面状の平面部を有する形状であって、非球状であればよく、一例には、三角錐状、三角柱状、円柱状、四角柱状、5角柱状等がある。
【0041】
析出した多角形金属粒子は、プラズモン発色を呈する。
この「プラズモン発色を呈する」とは、析出した多角形金属粒子が、可視光領域にプラズモン吸収波長を有し、このプラズモン吸収波長に応じた色(発色性)を呈することを示している。この「可視光領域にプラズモン吸収波長を有する」とは、可視光の波長域において、多角形金属粒子の表面プラズモン共鳴による光吸収ピークを有することを意味する。
【0042】
このようなプラズモン吸収による発色は、粒径が数nm〜数十nm程度の所謂ナノ粒子において見られ、彩度や光線透過率が高く、耐久性等に優れている。表示素子及び表示媒体は、このプラズモン吸収による発色を利用した表示を行うことで、彩度、耐久性、及び光線透過率に優れた表示素子及び表示媒体を提供することができる。
【0043】
電解液32中に含有される金属イオンとしては、多角形金属粒子として析出したときに可視光領域の光の波長である400nm〜800nmにおいて、多角形金属粒子の表面プラズモン共鳴による光吸収ピークを有するという観点から、例えば、金、銀、銅、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金、ニッケル、鉄、コバルト、亜鉛、鉛、クロム、スズ等の金属のイオンが挙げられる。これらの中でも、多角形金属粒子の形状の違いによる吸収波長の変化が大きいという観点から、金、銀等が好適に用いられる。
【0044】
析出する多角形金属粒子の各辺の長さとしては、効率よくプラズモン共鳴するという理由から、1〜100nmであることが好ましく、2〜50nmであることが特に好ましい。100nm以上になると、プラズモン共鳴が起こらない場合が起こり得る。1〜100nmの範囲にある多角形金属粒子は、実用的で色の強さが良好な点で有意である。特に、2〜50nmの範囲にあると色の強さをより向上させることができる。そのため、視野角依存性をより低くし、コントラストをより向上させることができる。
【0045】
なお、多角形金属粒子の各辺の長さの測定方法としては、多角形金属粒子群にレーザ光を照射し、そこから発せられる回折、散乱光の強度分布パターンから平均粒径を測定する、レーザ回折散乱法や、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した粒子の写真から、画像解析あるいは、直接計測する方法等がある。
本発明における粒子の各辺の長さの測定方法としては、上記記載のSEM写真から直接計測する方法を採用する。
【0046】
電解液層34を構成する成分の全質量に対する、該電解液層34に含まれる金属イオン30の濃度としては、所望の色相が得られる濃度であれば特に限定されるものではないが、電解液32の安定性、発色濃度の確保、刺激を付与してから画像が表示されるまでの応答速度等の観点から0.0001〜5mol/lの範囲内であることが好ましい。
【0047】
電解液32中に含まれる金属イオン30は、上記金属を含む金属化合物を原料とすることにより得ることができる。金属化合物としては、上記金属を含むものであれば特に限定されず、例えば、塩化金酸、硝酸銀、酢酸銀、過塩素酸銀、ヨウ化銀、塩化白金酸、塩化白金酸カリウム、塩化銅(II)、酢酸銅(II)、硫酸銅(II)等を挙げることができる。
これらの金属化合物を電解液32に溶解させることにより、電解液層34中に上記金属の金属イオン30を含有させることができる。
【0048】
表示媒体12の電解液32には、界面活性剤が含まれている。
界面活性剤としては、分子の主鎖中の炭素数が1以上20以下のアルキル鎖を有する界面活性剤であることが必須であり、炭素数2以上18以下であることが好ましく、炭素数4以上16以下であることが特に好ましい。
【0049】
このような界面活性剤としては、例えば、アミン塩や、アンモニウム塩、リン酸塩等のカチオン性界面活性剤や、スルホン酸塩等のアニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤等が挙げられ、中でも金属イオンの電荷の観点から、カチオン性界面活性剤を好適に用いることができる。
【0050】
このような界面活性剤の具体例としては、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、ブチルトリエチルアンモニウムブロマイド、テトラオクチルアンモニウムブロマイド、テトラドデシルアンモニウムブロマイド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、あるいは上記の陰イオンを変えたアルキルアンモニウムクロライド、アルキルアンモニウムアイオダイド、あるいはアンモニウムをリン酸に変えたアルキルフォスフォニウムブロマイド等を挙げることができるがこれらに限定されるわけではない。
【0051】
なお、表示媒体12の電解液32に含まれる界面活性剤としては、上記界面活性剤の内の少なくとも1種類が含まれていればよいが、複数種の界面活性剤を含むようにしてもよい。
【0052】
本発明における電解液32内に含まれる界面活性剤量は、金属イオン100重量部に対して、1重量部以上10000重量部以下であることが好ましく、より好ましくは10重量部以上5000重量部以下、さらに好ましくは、100重量部以上3000重量部以下である。
【0053】
電解液32内に含まれる界面活性剤量が、金属イオン100重量部に対して1重量部未満であると、析出粒子を完全に界面活性剤で覆うことができず、形状制御が難しくなると言う問題があり、10000重量部を超えると、溶液に溶解しにくくなると言う問題がある。
【0054】
例えば、上記金属イオン30を含む電解液32中に界面活性剤を含ませた状態で、電解液32内に電界を形成することによって、析出する粒子の形状を、多角形状とすることができる。また、界面活性剤が電解液32中に含まれることにより、析出した多角形金属粒子36の安定化を図ることができる。
具体的には、界面活性剤のアルキル鎖長が長くなるほど、より多角形の金属粒子、例えば、三角柱、四角柱、5角柱の形状の多角形金属粒子を析出することができる。また、界面活性剤の電解液32への添加量が多くなるほど、析出する多角形金属粒子の大きさを小さくすることが可能となる。
【0055】
電解液層34を構成する電解液32は、上記金属イオン30と、上記界面活性剤と、金属イオン30を溶解させるための溶媒と、を少なくとも含んで構成されていれば特に限定されるものではないが、必要に応じて種々の材料を用いることができる。
【0056】
上記溶媒としては水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール、その他の非水溶媒(有機溶媒等)などを1種類または2種類以上を組み合わせて利用することができる。
【0057】
上記非水溶媒としては、たとえば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、ジメチルスルホキシド、γ―ブチロラクトン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、プロピオニトリル、メチルピロリドン等、シリコーンオイル等の非プロトン性非水溶媒を上げることができる。
【0058】
電解液32には、添加剤として、水溶性樹脂、界面活性剤、多角形金属粒子として析出する金属イオン以外の電解物質、ポリマー微粒子、金属酸化物微粒子等を適宜含有させることができる。すなわち、上記溶媒としては、上記金属を溶解するとともに、電解物質、ポリマー、及び界面活性剤を含有させることが可能なものが選択される。
【0059】
上記水溶性樹脂としては、ポリエチレンオキサイド等のポリアルキレンオキサイド、ポリエチレンイミン等のポリアルキレンイミン、ポリエチレンスルフィド、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、等のポリマーを単独、あるいは複数組み合わせて使用することができる。
【0060】
水溶性樹脂を、電解液32中に溶解または分散させることにより、電解液層34中の金属イオン30の移動速度の制御、及び析出した多角形金属粒子36の安定化を図ることができる。水溶性樹脂の電解液32への添加量は、金属イオン30の種類や、その他の添加量との関係から適宜調整すればよい。
【0061】
なお、電解液32中には、金属イオンのカウンターイオンを含むことが好ましい。
このカウンターイオンとしては、電解液層34に上記析出電圧が印加されない限り、電解液32中で金属イオン30がイオン状態で安定に存在できるものであれば特に限定されないが、例えば、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ブロムイオン、ヨウ素イオン、過塩素酸イオン、ホウフッ化イオン等を挙げることができる。
【0062】
なお、電解液32はゲル状であってもよい。電解液32をゲル状とすることにより、表示媒体12の一部が破損したような場合でも、電解液32が表示媒体12外へ流失したり漏れたりすることを防ぐことが容易になる。なお、電解液32をゲル状とするには、水溶性樹脂などを利用することができる。
【0063】
制御部15は、所定の電圧を電解液層34に印加するように、電圧印加部14を制御する。この所定の電圧が電解液層34に印加されて、電解液層34の電解液32内に電界が形成されると、多角形状の多角形金属粒子が析出する。
【0064】
上記所定の電圧とは、上記析出電位の電圧であればよいが、図2に示すように、析出電位と溶解電位との間で周期的に変化し、且つ析出電位が継続される時間T1と溶解電位が継続される時間T2との関係が、下記式(1)の関係を満たす電圧波形(以下、適宜、第1の電圧波形と称する)で示される電圧であることがより好ましい。
【0065】
【数1】

【0066】
なお、上記式(1)中のT1×100/(T1+T2)の値は、上記式(1)に示されるように、50より大きく100未満であることが必須であるが、より好ましくは、55以上95以下の範囲内であり、特に好ましくは、60以上90以下の範囲内である。
【0067】
上記式(1)中のT1×100/(T1+T2)の値が100%であると、溶解電位が第1の電圧波形に含まれず、多角形金属粒子の析出が生じるものの、多角形金属粒子の大きさが不揃いとなる可能性があり、50%以下であると、溶解電位の継続電圧印加時間T2が析出電位の継続電圧印加時間T1より長くなることから、析出より溶解の方が優位となり、第1の電圧波形で変化する電圧の印加による多角形金属粒子の析出が生じず、好ましくない。
【0068】
上記第1の電圧波形で変化する電圧が電解液層34に印加されると、析出電位の電圧の印加が継続される間(時間T1)においては、電解液32中に溶解されている金属イオン30の還元反応が進行し、金属イオン30が還元されて多角形金属粒子として析出される。さらに、溶解電位の電圧印加が継続される間(時間T2)においては、析出した多角形金属粒子の酸化反応が進行し、酸化反応により析出された多角形金属粒子の内の大きさの小さいものは金属イオン30として電解液32中に溶解され、粒子としては存在しなくなり、大きな粒子は、その大きさが小さくなる。
【0069】
このため、第1の電圧波形で変化する電圧が電解液層34に印加されると、多角形金属粒子の析出と、多角形金属粒子の溶解とが周期的に生じ、且つ析出電位の電圧印加が継続される時間T1は溶解電位の電圧印加が継続される時間T2より長いことから、粒子の大きさのばらつきが抑制された多角形金属粒子の析出を実現することができる。
【0070】
なお、図2に示す例では、第1の電圧波形40は、矩形波である場合を説明するが、高電位部分と低電位部分とに平坦部を有する波形、矩形状、電位が連続的に変化するサイン波状、及び三角波状等の何れの形状の波形であってもよい。
【0071】
この第1の電圧波形の周波数は、金属イオンの拡散速度および、酸化還元の反応速度の観点から、10Hz〜100MHzであることが好ましく、50Hz〜10MHzであることがさらに好ましく、100Hz〜1MHzであることが特に好ましい。
【0072】
なお、この第1の電圧波形40を規定するための還元電位、第1の電圧波形40の形状(サイン波、矩形波等)、及び周波数は、電解液32の種類、第2の電極22及び第1の電極24の種類、間隙部材26の厚み(即ち、第2の電極22と第1の電極24との間の距離)等によって定まる。
【0073】
具体的には、還元電位は、電解液32に溶解されている金属イオン30の溶媒の種類や、濃度、その他の添加物の種類、濃度等の条件により定まる。
【0074】
また、第1の電圧波形40の形状(サイン波、矩形波等)や、還元電位からの振幅幅は、電解液中に含まれる銀イオン以外の物質が可能な限り還元、酸化されないという条件によって定まる。
また、この第1の電圧波形で変化する電圧の印加時間は、電極表面上に目的の量の多角形金属粒子が析出されるまで印加すればよい。
【0075】
上述のような電圧を電解液層34の電解液32に印加することにより、電解液32中の金属イオン30を還元して、多角形状の多角形金属粒子を析出させることができる。
【0076】
このように、多角形状の多角形金属粒子が析出される作用は明らかではないが、界面活性剤が析出過程で金属粒子あるいは金属イオンの周りを取り囲み、電極からの電子の受け渡しをアルキル鎖の長さで制限しているであるためと考えられる。
【0077】
析出した多角形金属粒子の長辺の長さとしては、1〜1000nmであることが好ましく、2〜500nmであることが特に好ましい。長辺の長さが4〜100nmの範囲にある多角形金属粒子は、実用的で色の強さが良好な点で有意である。
【0078】
なお、本発明における多角形金属粒子の辺の長さは、析出した多角形金属粒子の電子顕微鏡による観察画像から、画像解析により算出している。
【0079】
ここで、上述のように、プラズモン吸収による光吸収ピークは、粒子の各辺の長さに応じた波長に現れる。このため、析出した粒子は、粒子の各辺の長さに応じた発色性を示す。
【0080】
例えば、図3(A)に示すように、析出した粒子の形状が三角柱状であり、該三角柱の辺が、長さaと長さbとの2種類の辺により構成されているとすると、このような辺の長さの異なる粒子は、図3(B)に示すように、辺の長さaに対応する光吸収ピーク13と、辺の長さbに対応する光吸収ピーク19と、の二つの光吸収ピークを有する。
【0081】
このため、析出した粒子の形状が、三角柱状のように互いに長さの異なる2種類以上の辺により構成された形状である場合には、このような形状の粒子は、辺の長さの種類に応じて、波長の異なる複数の光吸収ピークを有する。
【0082】
一方、図4(A)に示すように、析出した粒子の形状が三角錐状であり、三角錐の辺の長さは均一(例えば、長さc)である場合には、多角形金属粒子は、図4(B)に示すように、辺の長さcに対応する光吸収ピーク17のみを有する。
【0083】
プラズモン吸収による発色は、析出される粒子の各辺の長さに依存するため、析出する多角形金属粒子の辺の長さが均一であるほど、辺の長さが不均一である粒子に比べて、色純度の高い発色性を有することができるといえる。
【0084】
このように、析出した多角形金属粒子は、多角形金属粒子の各辺の長さに応じて異なる発色性を有することから、表示素子10は、析出した多角形金属粒子の形状に応じた色を表示することができる。
【0085】
次に、図1に示す表示素子10における表示方法の一例を説明する。
なお、本例では、表示素子10に、第1の電圧波形として図2に示す矩形波を印加するものとして説明する。なお、この第1の電圧波形は、上述のように、上記式(1)の関係を満たすものである。
【0086】
金属イオン30が電解液32中に溶解された状態にあるときには、視認方向(図1中矢印X方向)から視認されると、表示媒体12は、表示基板20、透明な第1の電極24、及び電解液層34を介して、第2の電極22または背面基板16による色が視認される。
【0087】
制御部15の制御によって、第1の電圧波形で変化する電圧を、第1の電極24及び第2の電極22に印加するように電圧印加部14が制御されると、電圧印加部14は、第1の電圧波形で変化する電圧を、第1の電極24及び第2の電極22に印加する。
なお、このとき、表示媒体12の視認方向X上流側に多角形金属粒子が析出するように、金属イオン30は陽イオンであることから、視認方向X上流側に設けられた第1の電極24側をマイナス極とし、視認方向X下流側に設けられた第2の電極22側をプラス極として電圧を印加する。
【0088】
この第1の電極24と第2の電極22とを介して電解液層34に第1の電圧波形で変化する電圧が印加されると、析出電位と溶解電位とが交互に印加されることにより、多角形金属粒子36が表示基板20側に析出する。
【0089】
そして、視認方向X側から視認されると、表示基板20側に析出した多角形金属粒子の形状及び大きさ(各辺の長さ)に応じたプラズモン共鳴による発色の色が、表示素子10の色として視認される。
【0090】
さらに、制御部15の制御によって、溶解電位の電圧を所定時間以上、第1の電極24及び第2の電極22に印加するように電圧印加部14が制御されると、電圧印加部14は、溶解電位の電圧を、所定時間以上第1の電極24及び第2の電極22に印加する。
なお、この「所定時間」とは、析出した多角形金属粒子36の略全てが酸化されて金属イオン30として電解液32中に溶解する時間であればよく、予め表示媒体12毎に測定して定めればよい。
【0091】
溶解電位の電圧が上記所定時間以上印加されると、図1(B)に示すように、析出した多角形金属粒子36が酸化されて、図1(A)に示すように金属イオン30となり電解液32中に溶解するため、表示素子10は、視認方向X側から視認されると、第2の電極22または背面基板16による色として視認される。
【0092】
以上説明したように、表示素子10の表示媒体12は、析出する多角形金属粒子36の形状に応じた色を呈する。析出した多角形金属粒子36が呈する色は、形状により定まることから、電解液層34中に溶解する金属イオン30の種類、及び界面活性剤の種類や濃度を調整して電解液層34内に電界を形成することにより、表示素子10及び表示媒体12は、可視光領域の広範囲に渡る色を呈示することが出来る。
【0093】
なお、表示媒体12において、複数のセルが背面基板16の板面に沿った方向に配列された構成とした場合には、図5に示すように、表示素子10の各セル34〜セル34に、互いに異なる形状の多角形金属粒子が析出するように、各セル34〜セル34各々内に封入する金属イオン30〜30の種類、界面活性剤の種類、及び界面活性剤の濃度を調整してもよい。
【0094】
このようにすれば、表示素子10の第1の電極24と第2の電極22とに所定の電圧を印加したときに、表示素子10内の複数のセル34〜セル34に互いに形状の異なる複数種の多角形金属粒子を析出させることができ、析出した粒子の形状に応じた様々な色を表現することができるので、簡易な構成で容易に可視光領域の広範囲に渡る多色表示を実現することができる。
【0095】
また、各セルを、例えば、表示媒体12に画像を表示したときの、該画像の各画素に対応して複数セル設けるようにし、各画素に対応する複数セル毎に、析出したときに互いに異なる形状の多角形金属粒子が析出されて互いに異なる発色性を呈するように、金属イオンの種類、界面活性剤の種類、及び界面活性剤の濃度を調整してもよい。
【0096】
このようにすれば、表示素子10の表示媒体12の各画素に対応する領域毎に表示色を調整することが可能となり、可視光領域の広範囲に渡る多色画像を表示する表示媒体12及び表示素子10を提供することが可能となる。
【実施例】
【0097】
(実施例1)
図1に示す構成を有する表示素子10を以下の手順で作製した。
まず、表示基板として、厚さ1mm、3×3cmのガラス基板を用意した。このガラス基板上にITO(酸化錫−酸化インジウム)をスパッタリング法により200nmの厚さで且つガラス基板全面に成膜し第1の電極を形成した。
【0098】
背面基板としては、上記ガラス基板上に、第1の電極と同様にして、このガラス基板上にITO(酸化錫−酸化インジウム)をスパッタリング法により200nmの厚さで且つガラス基板全面に成膜し第2の電極を形成した。
【0099】
次に、ヨウ化銀(アルドリッチ社製)と、ヨウ化リチウム(アルドリッチ社製)と、を各々ジメチルスルホキシド(DMSO、アルドリッチ社製)に溶解させ、それぞれの濃度が5mmol/lとなるように調整した。さらに、それらのヨウ化銀溶液、ヨウ化リチウム溶液を等量ずつ混合した。
さらに、界面活性剤として、炭素数16(C16)のアルキル鎖を有する、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイドを濃度0.5mmol/lとなるように、また、炭素数12(C12)のアルキル鎖を有するテトラドデシルアンモニウムブロマイドを濃度0.25mmol/lとなるように、添加することにより、銀イオンと、界面活性剤と、を少なくとも含む電解液を調整した。
【0100】
なお、上記第1の電極及び第2の電極各々に電圧印加可能となるように、適当な長さの引き出し配線を接続した。
【0101】
次に、第1の電極が形成されたガラス基板上の該第1の電極上に、間隙部材として、第1の電極と第2の電極との間隙が200μmとなるように、高さ200μmのポリイミド樹脂からなる間隙部材を第1の電極上の析出部分の面積が1.5cm2となるように配置した。その後、表面基板上の第1の電極と背面基板上の第2の電極とが互いに対向されるように重ね合わせて積層体を形成し、続いて、この積層体端面の全周を、一部を除いてエポキシ系接着剤のアラルダイト(ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)で硬化させた。
【0102】
次に、積層体端面のシールがされていない部分(電解液注入口)から上記電解液を積層体内に充填した後、上記のアラルダイトにより電解液注入口をシールた。これにより、表示媒体を作製した。
【0103】
上記第1の電極及び第2の電極は、各々引き出し配線を介して、電圧印加部としてのファンクションジェネレータ(テクトロニクス社製:AFG310)に信号授受可能に接続した。さらにこのファンクションジェネレータには、制御部として、パーソナルコンピュータを接続した。このように構成することにより、電解液層内に任意の波形の電圧を印加可能な状態とした。これにより、表示素子を作製した。
【0104】
次に、上記作製した表示媒体の電解液層中に溶解されている銀イオンの還元電位を測定した。
還元電位の測定は、サイクリックボルタンメトリー(CV)の技法により測定した。
具体的には、
測定機器:ALS製電気化学アナライザー(CHI604A)
作用電極/対向電極:Pt電極
参照電極:Pt電極
試料溶液:電解液
測定モード:DC
Scan Range:1.0〜−1.50V
Scan Rate:0.1V/s
【0105】
上記測定機器および測定条件により得られた測定データの解析方法について説明する。
図6および図7に上記条件にて測定したデータの具体例を示す。なお、グラフ中の上の曲線は酸化体の還元反応を、下の曲線は還元体の酸化反応をそれぞれ示す。
図6の場合には、下の曲線のピーク値における電位E1と上の曲線のピーク値における電位E2の平均値が上記還元電位である。
還元電位=(E1+E2)/2
また、図7のような複数ピークを有する曲線が得られる場合には、還元波として大きい方(0に近い方)の値を代表値とした。即ち図7におけるE'1およびE'2の値を採用し、その平均値が上記還元電位である。
還元電位=(E'1+E'2)/2
【0106】
実施例1において調整した電解液を用いて上記測定方法により還元電位を測定したところ、図8に示す結果が得られた。この結果から、上記解析方法から算出した該電解液中における還元電位は、約−300mVであることがわかった。ただし、本実施例では、析出を確実にするため、還元電位を還元反応のピーク値である約−900mVにとる。
【0107】
次に、第1の電極に、上記電圧印加部としてのファンクションジェネレータのマイナス端子を接続し、第2の電極にファンクションジェネレータのプラス端子を接続し、第1の電圧波形として、図9に示す矩形波で変化する電圧を印加した。
【0108】
図9に示す矩形波は、該矩形波の半値線に相当する電位(パルス振幅の中間)を還元電位である−900mVとした。また、図8に示す測定結果から、−1400mV以上の電圧印加(−1400mVの絶対値以上のマイナス電圧印加)により再び電流値の増加が見られることから、第1の電圧波形としての矩形波のパルス振幅を、900mVとし、−1400mV以上の電圧、例えば−1600mV等の電圧が印加されないようにした。なお、この矩形波の周波数は、100Hz、析出電位の継続電圧印加時間T1と、溶解電位の継続電圧印加時間T2と、の式、{T1×100/(T1+T2)}によって示される値は、90%であるものとした。
【0109】
この図9によって示される電圧波形としての矩形波を、第1の電極及び第2の電極を介して上記電解液層に200秒印加したところ、第1の電極部分が黄色に着色した。この第1の電極表面の吸収ピーク波長を日立分光光度計 U−4100を用いて測定しところ、約500nmであった。
【0110】
さらに、この第1の電極表面を、日立製作所製走査型電子顕微鏡(FE-SEM:S-4500、倍率1万〜10万倍)で観察したところ、図10の写真(倍率 3万倍)に示すように、一辺約100〜300nm以下の三角錐状の多角形金属粒子の析出が観察された。なお、吸収ピークが一つしか観測されなかったので各辺の長さの差分は、ほとんどないと考えられる。
【0111】
さらにこれらの多角形金属粒子が凝集し、さらに高次の構造体として三角錐状の多角形金属粒子が観察された。
さらに、FE−SEMのエネルギー分散型X線分析装置(EDX)で分析したところ、析出した粒子は銀であることが確認できた。すなわち第1の電極表面に析出した多角形金属粒子は、電解液中の銀イオンが還元析出したものであることが確認された。
【0112】
なお、上記粒子の一辺の長さは、上記日立製作所走査型電子顕微鏡(FE−SEM:S―4500)を用い、倍率×6万倍にて、第1の電極表面の任意の5点を撮像した画像から、実測し、倍率で換算し求めた。
また、実施例1における「一辺の長さ」とは、凝集体を構成している三角錐状の銀粒子の一辺(すなわち長辺)の長さを実測したものとした。
【0113】
(実施例2)
電解液として、実施例1で用いた界面活性剤(ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、及びテトラドデシルアンモニウムブロマイド)に換えて、炭素数4(C4)のアルキル鎖を有する、テトラブチルアンモニウムブロマイドを濃度0.5mmol/lとなるように添加することにより、銀イオンと、界面活性剤と、を少なくとも含む電解液を調整した以外は、実施例1と同様にして表示媒体及び表示素子を作製し、実施例1と同様にして、図9によって示される電圧波形としての矩形波を、第1の電極及び第2の電極を介して上記電解液層に200秒印加したところ、第1の電極部分が薄い黒色から赤色に着色した。この第1の電極表面の吸収ピーク波長を日立分光光度計 U−4100を用いて測定しところ、約450nmにブロードのピークが観測された。
【0114】
さらに、この第1の電極表面を、日立製作所製走査型電子顕微鏡(FE-SEM:S-4500、倍率1〜10万倍)で観察したところ、図11(図11(A)倍率3万倍、図11(B)倍率6万倍)の写真に示すように、1辺約50nm以下の三角柱状の多角形金属粒子の析出が観察された。
【0115】
さらに、FE−SEMのエネルギー分散型X線分析装置(EDX)で分析したところ、析出した粒子は銀であることが確認できた。すなわち第1の電極表面に析出した多角形金属粒子は、電解液中の銀イオンが還元析出したものであることが確認された。
【0116】
なお、上記粒子の一辺の長さは、上記日立製作所走査型電子顕微鏡(FE−SEM:S―4500)を用い、倍率×10万倍にて、第1の電極表面の任意の5点を撮像した画像から、実測し、倍率で換算し求めた。
また、実施例2における「一辺の長さ」とは、三角形をなしている面の一番長い辺の長さを実測したものとした。
【0117】
(実施例3)
電解液として、実施例1で用いた界面活性剤(ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、及びテトラドデシルアンモニウムブロマイド)に換えて、炭素数8(C8)のアルキル鎖を有する、テトラブチルアンモニウムブロマイドを濃度0.5mmol/lとなるように添加することにより、銀イオンと、界面活性剤と、を少なくとも含む電解液を調整した以外は、実施例1と同様にして表示媒体及び表示素子を作製し、実施例1と同様にして、図9によって示される電圧波形としての矩形波を、第1の電極及び第2の電極を介して上記電解液層に200秒印加したところ、第1の電極部分が薄い黒色から赤色に着色した。この第1の電極表面の吸収ピーク波長を日立分光光度計 U−4100を用いて測定しところ、約450nmにブロードのピークが観測された。
【0118】
さらに、この第1の電極表面を、日立製作所製走査型電子顕微鏡(FE-SEM:S-4500、倍率1〜10万倍)で観察したところ、図12(倍率 10万倍)の写真に示すように、1辺約1500nm以下の四角形形状の多角形金属粒子の析出が観察された。
【0119】
さらに、FE−SEMのエネルギー分散型X線分析装置(EDX)で分析したところ、析出した粒子は銀であることが確認できた。すなわち第1の電極表面に析出した多角形金属粒子は、電解液中の銀イオンが還元析出したものであることが確認された。
【0120】
なお、上記粒子の一辺の長さは、上記日立製作所走査型電子顕微鏡(FE−SEM:S―4500)を用い、倍率×10万倍にて、第1の電極表面の任意の5点を撮像した画像から、実測し、倍率で換算し求めた。
また、実施例3における「一辺の長さ」とは、各粒子の最も長い辺の長さを実測したものとした。
【0121】
(実施例4)
電解液として、実施例1で用いた界面活性剤(ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、及びテトラドデシルアンモニウムブロマイド)に換えて、炭素数16(C16)のアルキル鎖を有する、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイドを濃度0.5mmol/lとなるように添加すると共に、炭素数12(C12)テトラドデシルアンモニウムブロマイドを濃度0.5mmol/lとなるように添加することにより、銀イオンと、界面活性剤と、を少なくとも含む電解液を調整した以外は、実施例1と同様にして表示媒体及び表示素子を作製し、実施例1と同様にして、図9によって示される電圧波形としての矩形波を、第1の電極及び第2の電極を介して上記電解液層に200秒印加したところ、第1の電極部分が薄い黒色から赤色に着色した。この第1の電極表面の吸収ピーク波長を日立分光光度計 U−4100を用いて測定しところ、約450nmにブロードのピークが観測された。
【0122】
さらに、この第1の電極表面を、日立製作所製走査型電子顕微鏡(FE-SEM:S-4500、倍率1〜10万倍)で観察したところ、図13(倍率 4万倍)の写真に示すように、1辺約500nm以下の円柱状の多角形金属粒子の析出が観察された。
【0123】
さらに、FE−SEMのエネルギー分散型X線分析装置(EDX)で分析したところ、析出した粒子は銀であることが確認できた。すなわち第1の電極表面に析出した多角形金属粒子は、電解液中の銀イオンが還元析出したものであることが確認された。
【0124】
なお、上記粒子の一辺の長さは、上記日立製作所走査型電子顕微鏡(FE−SEM:S―4500)を用い、倍率×10万倍にて、第1の電極表面の任意の5点を撮像した画像から、円柱状粒子の長尺方向の長さを実測し、倍率で換算し求めた。
また、実施例4における「一辺の長さ」とは、円柱状粒子の長尺方向の最大長を実測したものとした。
【0125】
(実施例5)
電解液として、実施例1で用いた界面活性剤(ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、及びテトラドデシルアンモニウムブロマイド)に換えて、親水基に硫酸エステル基を持ち、炭素数12(C12)のアルキル鎖を有する硫酸ドデシルナトリウム(SDS)を濃度0.5mmol/lとなるように添加することにより、銀イオンと、界面活性剤と、を少なくとも含む電解液を調整した以外は、実施例1と同様にして銀三角錐粒子製造装置を作製し、実施例1と同様にして、図9によって示される電圧波形としての矩形波を、第1の電極及び第2の電極を介して上記電解液層に200秒印加したところ、第1の電極部分が薄い黄色に着色した。この第1の電極表面の吸収ピーク波長を日立分光光度計 U−4100を用いて測定しところ、約500nmであった
さらに、この第1の電極表面を、日立製作所製走査型電子顕微鏡(FE-SEM:S-4500、倍率1万〜10万倍)で観察したところ、図15(図15(A)倍率3万倍、図15(B)倍率10万倍)に示すように、一辺約100nm以下の不定形の多面体状の粒子の析出が観察された。
さらに、FE−SEMのエネルギー分散型X線分析装置(EDX)で分析したところ、析出した粒子は銀であることが確認できた。すなわち第1の電極表面に析出した銀三角錐粒子は、電解液中の銀イオンが還元析出したものであることが確認された。
【0126】
なお、上記粒子の一辺の長さは、上記日立製作所走査型電子顕微鏡(FE−SEM:S―4500)を用い、倍率×6万倍にて、第1の電極表面の任意の5点を撮像した画像から、実測し、倍率で換算し求めた。
【0127】
(実施例6)
電解液として、実施例1で用いた界面活性剤(ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、及びテトラドデシルアンモニウムブロマイド)に換えて、炭素数4(C4)のアルキル鎖を有する、テトラブチルアンモニウムブロマイドを濃度0.05mmol/lとなるように添加することにより、銀イオンと、界面活性剤と、を少なくとも含む電解液を調整した以外は、実施例1と同様にして表示媒体及び表示素子を作製し、実施例1と同様にして、図9によって示される電圧波形としての矩形波を、第1の電極及び第2の電極を介して上記電解液層に200秒印加したところ、第1の電極部分が薄い赤色に着色した。この第1の電極表面の吸収ピーク波長を日立分光光度計 U−4100を用いて測定しところ、約400nmにブロードのピークが観測された。
【0128】
さらに、この第1の電極表面を、日立製作所製走査型電子顕微鏡(FE-SEM:S-4500、倍率1〜10万倍)で観察したところ、図16の写真(倍率 6万倍)に示すように、1辺約100nm以下の三角柱状の多角形金属粒子の析出が観察された。
【0129】
さらに、FE−SEMのエネルギー分散型X線分析装置(EDX)で分析したところ、析出した粒子は銀であることが確認できた。すなわち第1の電極表面に析出した多角形金属粒子は、電解液中の銀イオンが還元析出したものであることが確認された。
【0130】
なお、上記粒子の一辺の長さは、上記日立製作所走査型電子顕微鏡(FE−SEM:S―4500)を用い、倍率×10万倍にて、第1の電極表面の任意の5点を撮像した画像から、実測し、倍率で換算し求めた。
また、実施例6における「一辺の長さ」とは、三角形をなしている面の一番長い辺の長さを実測したものとした
【0131】
(実施例7)
電解液として、実施例1で用いた界面活性剤(ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、及びテトラドデシルアンモニウムブロマイド)に換えて、炭素数4(C4)のアルキル鎖を有する、テトラブチルアンモニウムブロマイドを濃度150mmol/lとなるように添加することにより、銀イオンと、界面活性剤と、を少なくとも含む電解液を調整した以外は、実施例1と同様にして表示媒体及び表示素子を作製し、実施例1と同様にして、図9によって示される電圧波形としての矩形波を、第1の電極及び第2の電極を介して上記電解液層に200秒印加したところ、第1の電極部分が薄い灰色に着色した。この第1の電極表面の吸収ピーク波長を日立分光光度計 U−4100を用いて測定しところ、明確なピークが観測されなかった。
【0132】
さらに、この第1の電極表面を、日立製作所製走査型電子顕微鏡(FE-SEM:S-4500、倍率1〜10万倍)で観察したところ、図17の写真(図17(A)倍率3万倍、図17(B)倍率10万倍)に示すように、1辺約100nm以下の不定形の多角形金属粒子の析出が観察された。
【0133】
さらに、FE−SEMのエネルギー分散型X線分析装置(EDX)で分析したところ、析出した粒子は銀であることが確認できた。すなわち第1の電極表面に析出した多角形金属粒子は、電解液中の銀イオンが還元析出したものであることが確認された。
【0134】
なお、上記粒子の一辺の長さは、上記日立製作所走査型電子顕微鏡(FE−SEM:S―4500)を用い、倍率×10万倍にて、第1の電極表面の任意の5点を撮像した画像から、実測し、倍率で換算し求めた。
また、実施例7における「一辺の長さ」とは、各粒子の一番長い辺の長さを実測したものとした
【0135】
(実施例8)
電解液として、実施例1で用いた界面活性剤(ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、及びテトラドデシルアンモニウムブロマイド)に換えて、炭素数4(C4)のアルキル鎖を有する、テトラブチルアンモニウムブロマイドを濃度50mmol/lとなるように添加することにより、銀イオンと、界面活性剤と、を少なくとも含む電解液を調整した以外は、実施例1と同様にして表示媒体及び表示素子を作製し、実施例1と同様にして、図9によって示される電圧波形としての矩形波を、第1の電極及び第2の電極を介して上記電解液層に200秒印加したところ、第1の電極部分が薄い黄色に着色した。この第1の電極表面の吸収ピーク波長を日立分光光度計 U−4100を用いて測定しところ、約500nmにピークが観測された。
【0136】
さらに、この第1の電極表面を、日立製作所製走査型電子顕微鏡(FE-SEM:S-4500、倍率1〜10万倍)で観察したところ、図18の写真(図18(A)倍率6万倍、図18(B)倍率10万倍) に示すように、1辺約50nm以下の不定形の多角形金属粒子の析出が観察された。さらにそれらが凝集して高次の構造体を構成していることが分かる。
【0137】
さらに、FE−SEMのエネルギー分散型X線分析装置(EDX)で分析したところ、析出した粒子は銀であることが確認できた。すなわち第1の電極表面に析出した多角形金属粒子は、電解液中の銀イオンが還元析出したものであることが確認された。
【0138】
なお、上記粒子の一辺の長さは、上記日立製作所走査型電子顕微鏡(FE−SEM:S―4500)を用い、倍率×10万倍にて、第1の電極表面の任意の5点を撮像した画像から、実測し、倍率で換算し求めた。
また、実施例8における「一辺の長さ」とは、各粒子の一番長い辺の長さを実測したものとした。
【0139】
(比較例1)
電解液として、界面活性剤(具体的には、実施例1で電解液に添加した上記ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、及びテトラドデシルアンモニウムブロマイド)を含まない電解液を用意した以外は、実施例1と同様にして表示媒体及び表示素子を作製し、実施例1と同様にして、図9によって示される電圧波形としての矩形波を、第1の電極及び第2の電極を介して上記電解液層に200秒印加したところ、第1の電極部分が薄い灰色に着色した。この第1の電極表面の吸収ピーク波長を日立分光光度計 U−4100を用いて測定しところ、約410nmであった。
【0140】
さらに、この第1の電極表面を、日立製作所製走査型電子顕微鏡(FE-SEM:S-4500、倍率1万〜10万倍)で観察したところ、図14の写真(倍率6万倍)に示すように、粒径約20nm〜50nmの球状の粒子の析出が観察された。
さらに、FE−SEMのエネルギー分散型X線分析装置(EDX)で分析したところ、析出した粒子は銀であることが確認できた。すなわち第1の電極表面に析出した粒子は、電解液中の銀イオンが還元析出したものであることが確認された。
【0141】
なお、上記粒径は、上記日立製作所走査型電子顕微鏡(FE−SEM:S―4500)を用い、倍率×6万倍にて、第1の電極表面の任意の5点を撮像した画像から、実測し、倍率で換算し求めた。
【0142】
(比較例2)
電解液として、界面活性剤(具体的には、実施例1で電解液に添加した上記ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、及びテトラドデシルアンモニウムブロマイド)を含まない電解液を用意した以外は、実施例1と同様にして表示媒体及び表示素子を作製し、図9によって示される電圧波形のT1×100/(T1+T2)を比較例1とは異なり60%にした矩形波を、第1の電極及び第2の電極を介して上記電解液層に200秒印加したところ、第1の電極部分が薄い灰色に着色した。この第1の電極表面の吸収ピーク波長を日立分光光度計 U−4100を用いて測定しところ、約 410 nmであった。
【0143】
さらに、この第1の電極表面を、日立製作所製走査型電子顕微鏡(FE-SEM:S-4500、倍率1万〜10万倍)で観察したところ、比較例1同様に、粒径約20nm以下の球状の粒子の析出が観察された。
さらに、FE−SEMのエネルギー分散型X線分析装置(EDX)で分析したところ、析出した粒子は銀であることが確認できた。すなわち第1の電極表面に析出した粒子は、電解液中の銀イオンが還元析出したものであることが確認された。
【0144】
なお、上記粒径は、上記日立製作所走査型電子顕微鏡(FE−SEM:S―4500)を用い、倍率×6万倍にて、第1の電極表面の任意の5点を撮像した画像から、実測し、倍率で換算し求めた。
【0145】
(比較例3)
電解液として、界面活性剤(具体的には、実施例1で電解液に添加した上記ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、及びテトラドデシルアンモニウムブロマイド)を含まない電解液を用意した以外は、実施例1と同様にして表示媒体及び表示素子を作製し、図9によって示される電圧波形のT1×100/(T1+T2)を比較例1とは異なり99%にした矩形波を、第1の電極及び第2の電極を介して上記電解液層に100秒印加したところ、第1の電極部分が濃い灰色に着色した。この第1の電極表面の吸収ピーク波長を日立分光光度計 U−4100を用いて測定しところ、約410nmに非常なブロードなピークが観測された。
【0146】
さらに、この第1の電極表面を、日立製作所製走査型電子顕微鏡(FE-SEM:S-4500、倍率1万〜10万倍)で観察したところ、比較例1同様に、粒径約100nm以上の球状の粒子が一面に析出されている様子が観察された。
さらに、FE−SEMのエネルギー分散型X線分析装置(EDX)で分析したところ、析出した粒子は銀であることが確認できた。すなわち第1の電極表面に析出した粒子は、電解液中の銀イオンが還元析出したものであることが確認された。
【0147】
なお、上記粒径は、上記日立製作所走査型電子顕微鏡(FE−SEM:S―4500)を用い、倍率×6万倍にて、第1の電極表面の任意の5点を撮像した画像から、実測し、倍率で換算し求めた。
【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1】本発明の表示媒体及び表示素子の一例を示す模式断面図であり、(A)は、多角形金属粒子が析出されていない状態を示し、(B)は、多角形金属粒子が析出された状態を示す。
【図2】第1の電圧波形の一例を示す模式図である。
【図3】(A)は、析出した多角形金属粒子の形状が三角柱状である場合を示す模式図であり、(B)は、(A)の形状の粒子の光吸収ピークを示す模式図である。
【図4】(A)は、三角錐状の多角形金属粒子を示す模式図であり、(B)は、多角形金属粒子の光吸収ピークを示す模式図である。
【図5】互いに異なる形状の2種類以上の多角形金属粒子が析出するようにセルを構成した表示素子を示す模式図である。
【図6】還元電位測定データの一例を示す模式図である。
【図7】還元電位測定データの図6とは異なる例を示す模式図である。
【図8】実施例1における還元電位測定データを示す線図である。
【図9】実施例1において用いた第1の電圧波形を示す模式図である。
【図10】実施例1で析出した多角形金属粒子の走査型電子顕微鏡写真である。(倍率3万倍)
【図11】実施例2で析出した多角形金属粒子の走査型電子顕微鏡写真である。((A)倍率3万倍、(B)倍率6万倍)
【図12】実施例3で析出した多角形金属粒子の走査型電子顕微鏡写真である。(倍率10万倍)
【図13】実施例4で析出した多角形金属粒子の走査型電子顕微鏡写真である。(倍率4万倍)
【図14】比較例1で析出した多角形金属粒子の走査型電子顕微鏡写真である。(倍率6万倍)
【図15】実施例5で析出した多角形金属粒子の走査型電子顕微鏡写真である。((A)倍率3万倍、(B)倍率10万倍)
【図16】実施例6で析出した多角形金属粒子の走査型電子顕微鏡写真である。(倍率6万倍)
【図17】実施例7で析出した多角形金属粒子の走査型電子顕微鏡写真である。((A)倍率3万倍、(B)倍率10万倍)
【図18】実施例8で析出した多角形金属粒子の走査型電子顕微鏡写真である。((A)倍率6万倍、(B)倍率10万倍)
【符号の説明】
【0149】
10 表示素子
12 表示媒体
14 電圧印加部
16 背面基板
20 表示基板
26 間隙部材
30 金属イオン
32 多角形金属粒子
32 電解液
34 電解液層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも金属イオンを含む電解液からなる電解液層に電界を形成することにより、前記電解液層中の前記金属イオンを還元して多角形金属粒子として析出させる析出工程を経て所定の画像を表示することを特徴とする表示方法。
【請求項2】
前記電解液は、界面活性剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の表示方法。
【請求項3】
前記界面活性剤は、炭素数1以上20以下のアルキル鎖を有することを特徴とする請求項2に記載の表示方法。
【請求項4】
前記界面活性剤が、前記電解液中の金属イオン100重量部に対して、1重量部以上10000重量部以下含まれることを特徴とする請求項2に記載の表示方法。
【請求項5】
析出した前記多角形金属粒子が、可視光領域にプラズモン吸収波長を有することを特徴とする請求項1に記載の表示方法。
【請求項6】
前記多角形金属粒子が、三角錐状であることを特徴とする請求項1に記載の表示方法。
【請求項7】
前記多角形金属粒子が、三角柱状であることを特徴とする請求項1に記載の表示方法。
【請求項8】
前記多角形金属粒子が、円柱状であることを特徴とする請求項1に記載の表示方法。
【請求項9】
前記多角形金属粒子が、四角柱状であることを特徴とする請求項1に記載の表示方法。
【請求項10】
前記金属イオンは、銀イオンであることを特徴とする請求項1に記載の表示方法。
【請求項11】
少なくとも一方が透光性を有し、間隙を持って対向配置された一対の基板と、
前記一対の基板間に設けられ、少なくとも金属イオンを含む電解液からなる電解液層と、を備え、
電圧が印加されることにより、前記電解液層中の前記金属イオンが多角形金属粒子として析出されることを特徴とする表示媒体。
【請求項12】
前記多角形金属粒子が、可視光領域にプラズモン吸収波長を有することを特徴とする請求項11に記載の表示媒体。
【請求項13】
前記電解液は、界面活性剤を含むことを特徴とする請求項11に記載の表示媒体。
【請求項14】
前記界面活性剤は、炭素数1以上20以下のアルキル鎖を有することを特徴とする請求項13に記載の表示媒体。
【請求項15】
前記界面活性剤が、前記電解液中の金属イオン100重量部に対して、1重量部以上10000重量部以下含まれることを特徴とする請求項13に記載の表示媒体。
【請求項16】
前記金属イオンは、銀イオンであることを特徴とする請求項13に記載の表示媒体。
【請求項17】
少なくとも一方が透光性を有し、間隙を持って対向配置された一対の基板と、
前記一対の基板間設けられ、少なくとも金属イオンを含む電解液からなる電解液層と、
前記電解液に含まれる前記金属イオンを還元して多角形金属粒子を析出させる電圧を前記電解液層に印加する電圧印加手段と、
を備えた表示素子。
【請求項18】
前記電解液は、界面活性剤を含むことを特徴とする請求項17に記載の表示素子。
【請求項19】
前記界面活性剤は、炭素数1以上20以下のアルキル鎖を有することを特徴とする請求項18に記載の表示素子。
【請求項20】
前記界面活性剤が、前記電解液中の金属イオン100重量部に対して、1重量部以上10000重量部以下含まれることを特徴とする請求項18に記載の表示素子。
【請求項21】
前記多角形金属粒子が、可視光領域にプラズモン吸収波長を有することを特徴とする請求項17に記載の表示素子。
【請求項22】
前記多角形金属粒子が、三角錐状であることを特徴とする請求項17に記載の表示素子。
【請求項23】
前記多角形金属粒子が、三角柱状であることを特徴とする請求項17に記載の表示素子。
【請求項24】
前記多角形金属粒子が、円柱状であることを特徴とする請求項17に記載の表示素子。
【請求項25】
前記多角形金属粒子が、四角柱状であることを特徴とする請求項17に記載の表示素子。
【請求項26】
前記一対の基板間を、前記一対の基板の基板面方向に沿って複数のセルに区画する間隙部材を備え、
前記複数のセルの少なくとも2つに析出される前記多角形金属粒子の形状が互いに異なることを特徴とする請求項17に記載の表示素子。
【請求項27】
前記電圧印加手段は、前記電解液層に印加する電圧として、前記電解液層中の前記金属イオンが還元されて前記多角形金属粒子として析出する析出電位と、前記多角形金属粒子が酸化されて前記金属イオンとして溶解する溶解電位と、の間で周期的に変化し、且つ前記析出電位が継続される時間T1が、前記溶解電位が継続される時間T2より大きい電圧波形で変化する電圧を印加することを特徴とする請求項17に記載の表示素子。
【請求項28】
前記金属イオンは、銀イオンであることを特徴とする請求項17に記載の表示素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2007−328278(P2007−328278A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−161176(P2006−161176)
【出願日】平成18年6月9日(2006.6.9)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】