説明

表示方法、表示媒体及び表示装置

【課題】初めて見た人でも、その意味が理解できるように絵記号を表示するためにより誤解を生じにくい絵記号の表示を可能とするための技術を提供すること。
【解決手段】見る者に対して伝達すべき伝達意味を表す絵記号である本絵記号12と、伝達意味と関連する他の意味を表す絵記号である付加絵記号11とを、近い領域にそれぞれ表示する。付加絵記号上には、その意味が伝達意味ではないことを示す否定記号111を表示する。また、見る者に対して伝達すべき伝達意味を表す絵記号である本絵記号と、付加絵記号とを時系列で順に表示し、前記付加絵記号を表示する全ての時間又は一部の時間では、その意味が伝達意味ではないことを示す否定記号を前記付加絵記号上に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人間に対して視覚的に意味を伝える画像の表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
絵記号(Pictogram(ピクトグラム)、絵単語、絵文字)は、様々な家電製品や通信機器などに利用されている。具体的には、絵記号は、操作ボタンやインタフェース部分などに、操作内容などを表すために配置されている。このような絵記号に関する技術については、非特許文献1や非特許文献2に開示されている。
【0003】
図5は、従来の絵記号の表示例を示す図である。
絵記号100−1は、汗をかいている人がタオルを右手に持っている姿を表しており、暑いことを表現している。例えば、非常に暑い施設への入口や、暑い国への旅行情報を表示するパンフレットなどに配置された絵記号100−1は、それを見た人に対して、暑いという概念を伝達する。
【0004】
絵記号100−2は、直立した男性の全身の姿を現しており、男性を表現している。例えば、男性用便所の入口や、男性用の商品が陳列された棚などに配置された絵記号100−2は、それを見た人に対して男性用という概念を伝達する。
絵記号100−3は、箱から1枚の紙が上方へ向けて出ている様子を表しており、ティッシュペーパーを表現している。例えば、ティッシュペーパー売り場や、ティッシュペーパーの外装などに配置された絵記号100−3は、それを見た人に対してティッシュペーパーという概念を伝達する。
このように、絵記号を付すことによって、それを見た者に対して容易に何かしらの意味を伝えることが可能となる。例えば、「犬」のように名前を絵記号で表現する場合は、表現したいそのもの(この場合は犬)を具象的に描くことで、容易に理解可能な絵記号を表示することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】日本工業規格、「コミュニケーション支援用絵記号デザイン原則(JIS T 0103)」、http://www.jisc.go.jp/app/pager?id=25897
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、初めて見た人でも、その意味が理解できるように絵記号を表示することは困難な場合がある。例えば、「尋ねる」という動作や、「妬む」のような精神活動の動作を理解可能に表示することは困難である。そのため、絵記号によっては見る者に誤解を与えてしまう場合がある。
上記事情に鑑み、本発明は、より誤解を生じにくい絵記号の表示を可能とする技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、見る者に対して伝達すべき伝達意味を表す絵記号である本絵記号と、前記伝達意味と関連する他の意味を表す絵記号である付加絵記号とを、近い領域にそれぞれ表示し、前記付加絵記号上には、その意味が伝達意味ではないことを示す否定記号を表示する表示方法である。
【0008】
本発明の一態様は、表面に絵記号を表示する表示媒体であって、見る者に対して伝達すべき伝達意味を表す絵記号である本絵記号と、前記伝達意味と関連する他の意味を表す絵記号である付加絵記号とを、近い領域にそれぞれ表示し、前記付加絵記号上には、その意味が伝達意味ではないことを示す否定記号を表示する表示媒体である。
【0009】
本発明の一態様は、見る者に対して伝達すべき伝達意味を表す絵記号である本絵記号と、前記伝達意味と関連する他の意味を表す絵記号である付加絵記号とを時系列で順に表示し、前記付加絵記号を表示する全ての時間又は一部の時間では、その意味が伝達意味ではないことを示す否定記号を前記付加絵記号上に表示する表示方法である。
【0010】
本発明の一態様は、見る者に対して伝達すべき伝達意味を表す絵記号である本絵記号と、前記伝達意味と関連する他の意味を表す絵記号である付加絵記号とを、それぞれ対応付けて記憶するデータ記憶部と、前記本絵記号と、前記本絵記号に対応する前記付加絵記号とを前記データ記憶部から読み出し、それぞれの絵記号を時系列で順に表示し、前記付加絵記号を表示する全ての時間又は一部の時間では、その意味が伝達意味ではないことを示す否定記号を前記付加絵記号上に表示する制御部と、を備える表示装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、より誤解を生じにくい絵記号の表示が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態の表示例を示す図である。
【図2】本発明の第2実施形態の表示装置の機能構成を表す概略ブロック図である。
【図3】画像データテーブルの具体例を示す図である。
【図4】制御部による表示制御の具体例を示す図である。
【図5】従来の絵記号の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態の表示例を示す図である。本発明の第1実施形態では、絵記号を見る者(以下、「観察者」という。)に対して伝達すべき本来の意味(以下、「伝達意味」という。)を表す絵記号(以下、「本絵記号」という。)とともに、他の意味を表す絵記号(以下、「付加絵記号」という。)を表示する。付加絵記号には、その意味を否定する記号(以下、「否定記号」という。)111を付加して表示する。そのため、観察者は、伝達意味は、付加絵記号から連想される意味ではないことを容易に判断することができる。
【0014】
各絵記号は、表示媒体上に表示される。表示媒体は、その表面に絵記号を表示できればどのような媒体であっても良い。例えば、表示媒体は、シート状の紙やプラスチックや木材などであっても良いし、ボタン等の部品であっても良いし、その他の物体であっても良い。表示媒体がこのような物体である場合は、絵記号は、例えば表示媒体上に印刷やシールの添付などによって表示される。また、表示媒体は、液晶ディスプレイ等の表示装置であっても良い。表示媒体がこのような装置である場合は、電子制御によって絵記号が表示媒体上に表示される。
【0015】
付加絵記号として用いられる絵記号は、本絵記号と関連する意味を表す絵記号である。例えば、本絵記号と対義語の意味を表す絵記号(例えば右と左、善と悪)、本絵記号と類似した意味を表す絵記号(例えばティッシュペーパーとトイレットペーパー)、本絵記号を連想可能な意味を表す絵記号(例えばスプーンとフォーク)等が付加絵記号として表示される。
【0016】
観察者によっては、本絵記号を見た際に伝達意味とは異なった意味を連想する場合がある。このような場合、伝達意味とは異なる意味で絵記号が解釈されてしまうため、観察者に対して誤解を生じさせてしまうおそれがある。そこで、本願発明の第1実施形態では、本絵記号の近傍に付加絵記号を表示することによって問題を解決している。付加絵記号を見た観察者は、上述したように伝達意味は付加絵記号の意味ではないと容易に判断できる。その上で、付加絵記号の近傍に表示されている本絵記号を見ることによって、付加絵記号の意味との関連性から、本絵記号の意味(伝達意味)を容易に判断することができる。そのため、より誤解を生じにくい絵記号の表示が可能となる。
【0017】
図1の具体例を用いて説明する。「暑い」という伝達意味を表す本絵記号12−1は、対義語の意味(「寒い」という意味)を表す付加絵記号11−1とともに表示される。付加絵記号11−1の表面には、否定記号としてバツ印(×)111が表示される。
【0018】
本絵記号12−1のみが表示された場合、正しい意味である「暑い」を連想する者もいるが、見る者によっては「汗」、「湿度が高い」、「泣く」のように、伝達意味とは異なった意味も連想してしまう場合がある。しかし、本願発明の第1実施形態では、本絵記号12−1の近傍に付加絵記号11−1が表示される。付加絵記号11−1は「寒い」を意味しているため、付加絵記号11−1を見た者は「寒い」という意味ではないと容易に判断できる。その上で、付加絵記号11−1の近傍に表示されている本絵記号12−1を見た観察者は、例え本絵記号12−1から上述したような複数の意味(「暑い」、「汗」、「湿度が高い」、「泣く」など)を連想したとしても、「寒い」と関連した「暑い」という意味が伝達意味であることを容易に判断することができる。そのため、より誤解を生じにくい絵記号の表示が可能となる。
【0019】
「男性」という伝達意味を表す本絵記号12−2は、対義語の意味(「女性」という意味)を表す付加絵記号11−2とともに表示される。付加絵記号11−2の表面には、否定記号としてバツ印(×)111が表示される。
【0020】
本絵記号12−2のみが表示された場合、正しい意味である「男性」を連想する者もいるが、見る者によっては「人(性別によらず人間全般)」、「大人」、「直立」のように、伝達意味とは異なった意味も連想してしまう場合がある。しかし、本願発明の第1実施形態では、本絵記号12−2の近傍に付加絵記号11−2が表示される。付加絵記号11−2は「女性」を意味しているため、付加絵記号11−2を見た者は「女性」という意味ではないと容易に判断できる。その上で、付加絵記号11−2の近傍に表示されている本絵記号12−2を見た観察者は、例え本絵記号12−2から上述したような複数の意味(「男性」、「人(性別によらず人間全般)」、「大人」、「直立」など)を連想したとしても、「女性」と関連した「男性」という意味が伝達意味であることを容易に判断することができる。そのため、より誤解を生じにくい絵記号の表示が可能となる。
【0021】
「ティッシュペーパー」という伝達意味を表す本絵記号12−3は、類似した商品の意味(「トイレットペーパー」という意味)を表す付加絵記号11−3とともに表示される。付加絵記号11−3の表面には、否定記号としてバツ印(×)111が表示される。
【0022】
本絵記号12−3のみが表示された場合、正しい意味である「ティッシュペーパー」を連想する者もいるが、見る者によっては「紙(形態によらず紙全般)」、「ウェットティッシュ」、「鼻をかむ」のように、伝達意味とは異なった意味も連想してしまう場合がある。しかし、本願発明の第1実施形態では、本絵記号12−3の近傍に付加絵記号11−3が表示される。付加絵記号11−3は「トイレットペーパー」を意味しているため、付加絵記号11−3を見た者は「トイレットペーパー」という意味ではないと容易に判断できる。その上で、付加絵記号11−3の近傍に表示されている本絵記号12−3を見た観察者は、例え本絵記号12−3から上述したような複数の意味(「ティッシュペーパー」、「紙(形態によらず紙全般)」、「ウェットティッシュ」、「風呂」など)を連想したとしても、「トイレットペーパー」と関連した「ティッシュペーパー」という意味が伝達意味であることを容易に判断することができる。そのため、より誤解を生じにくい絵記号の表示が可能となる。
【0023】
<変形例>
図1の例では、付加絵記号11は本絵記号12の左隣に少しの間隔をおいて表示されているが、付加絵記号11の表示位置はこれに限定される必要は無い。付加絵記号11は、ともに表示される本絵記号12と関連している絵記号であることが観察者に伝わる態様であれば、どのように表示されても良い。例えば、付加絵記号11の表示位置は、本絵記号12の右隣や上方又は下方や斜めの位置であっても良い。
【0024】
図1の例では、一つの本絵記号12に対して一つの付加絵記号11を表示しているが、一つの本絵記号12に対して複数の付加絵記号11を表示しても良い。また、同一の伝達意味を表す複数の本絵記号12に対して一つの付加絵記号11を表示しても良い。また、同一の伝達意味を表す複数の本絵記号12に対して複数の付加絵記号11を表示しても良い。
【0025】
図1の例では、否定記号111の具体例としてバツ印を表示しているが、否定の意図が観察者に伝わる記号であれば他の記号であってもよい。
図1の例では、本絵記号12はそのまま表示しているが、肯定の意味を表す記号(肯定記号)がその表面に表示されても良い。例えば、本絵記号12の上に、丸印(○)が表示されても良い。
【0026】
[第2実施形態]
図2は、本発明の第2実施形態の表示装置20の機能構成を表す概略ブロック図である。第2実施形態の表示装置20は、付加絵記号11と本絵記号12とを時系列で表示する。
【0027】
表示装置20は、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)やメモリや補助記憶装置などを備え、表示プログラムを実行する。表示装置20は、表示プログラムの実行により、表示部21、データ記憶部22、制御部23を備える装置として機能する。なお、表示装置20の各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されても良い。表示プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されても良い。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。表示プログラムは、電気通信回線を介して送信されても良い。
【0028】
表示部21は、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等の画像表示装置である。表示部21は、本絵記号12の画像データや付加絵記号11の画像データを表示する。表示部21は、画像表示装置を表示装置20に接続するためのインタフェースであっても良い。この場合、表示部21は、本絵記号12の画像データや付加絵記号11の画像データを表示するための映像信号を生成し、自身に接続されている画像表示装置に映像信号を出力する。
【0029】
データ記憶部22は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などの記憶装置を用いて構成される。データ記憶部22は、画像データテーブルを記憶する。図3は、画像データテーブルの具体例を示す図である。画像データテーブルは、伝達意味毎に本絵記号12の画像データと付加絵記号11の画像データとを対応付けたテーブルである。
【0030】
制御部23は、表示すべき伝達意味に対応する本絵記号12の画像データ及び付加絵記号11の画像データをデータ記憶部22から読み出す。制御部23は、読み出した本絵記号12の画像データや付加絵記号11の画像データを、時間の経過に応じて順に表示部21に表示する。制御部23が表示する伝達意味は、表示装置20本体又は他の装置において実行中の他のプログラムによって指定された伝達意味であっても良いし、表示装置20の管理者などによって指定された伝達意味であっても良い。また、日時などに応じて画像データテーブルに記録されている順に伝達意味が変わっても良い。
【0031】
図4は、制御部23による表示制御の具体例を示す図である。まず、制御部23は、付加絵記号11の画像データを表示する(図4の符号31)。このとき制御部23が表示する付加絵記号11には、否定記号111は表示されない。否定記号111を伴わない状態での付加絵記号11の表示を開始して所定時間が経過すると、制御部23は、付加絵記号11の表面に否定記号111を重ねて表示する(図4の符号32)。否定記号111を伴う状態での付加絵記号11の表示を開始して所定時間が経過すると、制御部23は、本絵記号12を表示する(図4の符号33)。
【0032】
このように、時間の経過と共に付加絵記号11及び本絵記号12の表示を行うことにより、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、第2実施形態では、付加絵記号11が表示されている表示領域と重複する領域に本絵記号12を表示することが可能となる。そのため、第1実施形態に比べて、同じ大きさの絵記号を表示する場合に、より狭い領域で表示を行う事が可能となる。例えば、第1実施形態に比べて、同じ大きさの絵記号を表示する場合に半分の領域で表示を行う事が可能である。
【0033】
<変形例>
制御部23が行う表示の順序は図4に示される具体例に限定される必要は無い。例えば、図4に示される順と逆の順序であっても良い。また、制御部23は、図4に示される符号31に相当する表示(否定記号111を伴わない付加絵記号11の表示)を行わなくとも良い。
【0034】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0035】
11…付加絵記号, 12…本絵記号, 111…否定記号, 20…表示装置, 21…表示部, 22…データ記憶部, 23…制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
見る者に対して伝達すべき伝達意味を表す絵記号である本絵記号と、前記伝達意味と関連する他の意味を表す絵記号である付加絵記号とを、近い領域にそれぞれ表示し、
前記付加絵記号上には、その意味が伝達意味ではないことを示す否定記号を表示する表示方法。
【請求項2】
表面に絵記号を表示する表示媒体であって、
見る者に対して伝達すべき伝達意味を表す絵記号である本絵記号と、前記伝達意味と関連する他の意味を表す絵記号である付加絵記号とを、近い領域にそれぞれ表示し、
前記付加絵記号上には、その意味が伝達意味ではないことを示す否定記号を表示する表示媒体。
【請求項3】
見る者に対して伝達すべき伝達意味を表す絵記号である本絵記号と、前記伝達意味と関連する他の意味を表す絵記号である付加絵記号とを時系列で順に表示し、前記付加絵記号を表示する全ての時間又は一部の時間では、その意味が伝達意味ではないことを示す否定記号を前記付加絵記号上に表示する表示方法。
【請求項4】
見る者に対して伝達すべき伝達意味を表す絵記号である本絵記号と、前記伝達意味と関連する他の意味を表す絵記号である付加絵記号とを、それぞれ対応付けて記憶するデータ記憶部と、
前記本絵記号と、前記本絵記号に対応する前記付加絵記号とを前記データ記憶部から読み出し、それぞれの絵記号を時系列で順に表示し、前記付加絵記号を表示する全ての時間又は一部の時間では、その意味が伝達意味ではないことを示す否定記号を前記付加絵記号上に表示する制御部と、
を備える表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−113960(P2013−113960A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258681(P2011−258681)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】