表示板及びその製造方法
【課題】 植え物を接着によって固定した表示板において、植え物の鍔の縁から表示板の表示面に接着剤が流れ出ないようにする。
【解決手段】 表示板31の表示面31aと植え物32の鍔32aとの間に断面が楔型形状をなした楔状隙間層34を形成し、その楔状隙間層34に毛細管現象を利用して接着剤35を浸透させて流し込み、楔状隙間層34内の隙間幅の大きい部位で接着剤35に表面張力を起こさせ、その表面張力の作用を利用して接着剤35の流れをストップさせる。楔状隙間層34の隙間が一番大きい部位の隙間幅を20〜50μmにする。
【解決手段】 表示板31の表示面31aと植え物32の鍔32aとの間に断面が楔型形状をなした楔状隙間層34を形成し、その楔状隙間層34に毛細管現象を利用して接着剤35を浸透させて流し込み、楔状隙間層34内の隙間幅の大きい部位で接着剤35に表面張力を起こさせ、その表面張力の作用を利用して接着剤35の流れをストップさせる。楔状隙間層34の隙間が一番大きい部位の隙間幅を20〜50μmにする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植え物を有する表示板に関し、特に、固定力が強く、変形が生じない表示板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、表示板に植え物を設けた構造のものとして、時計用の表示板においては、表示板に窓枠なる植え物を設け、窓枠の穴から曜日などが視認できる構造を取っているものがある。例えば、下記の特許文献1には文字板(表示板)に窓枠を圧入し、更に接着剤にて固定した構造が記載されている。特許文献1に示された文字板と窓枠の固定構造は、図11に示されるように、鍔aを設けた窓枠2を文字板1に圧入し、圧入嵌合部を接着剤3で接着固定した構造をなしている。
【0003】
また、接着剤を使った他の固定構造としては、例えば、下記の特許文献2に示された固定構造などがある。特許文献2に示された固定構造は、図12、図13に示されるように、固定足11bの下面に突出した折返し部11cを設けた金属からなる窓枠11を樹脂からなる上板12の貫通穴(窓枠取付穴)12aに上面側から挿入し、上板12の裏面側で折返し部11cが上板12の裏面に接するように折り曲げ、折り曲げた折返し部11c及び上板12の裏面に接着剤15を介して透光部材からなる下板13を貼付けた構造を取っているものである。
【0004】
【特許文献1】実開昭52−81163号公報
【特許文献2】特開平11−183648号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記で述べた固定構造は次のような問題を有する。最初に、特許文献1に示した固定構造は、用いられる接着剤の粘度や量などによって接着品質は変わってくる。例えば、粘度が低く量が多いと、鍔aの裏面と文字板1の上面の圧接面に接着剤3が毛細管現象などで浸透していき、矢印Aで示したように鍔aの外側に接着剤3がはみ出してきて文字板1の表示面を汚し外観品質を損なうと云う問題を起こす。この場合、接着剤のはみ出し部分の除去は困難で、文字板は不良となり製品にならない。また、接着剤の量が少なかったりすると嵌合面や圧接面への付着量が少なくなり、十分な接着強度が得られないと云う問題を起こす。
【0006】
次に、特許文献2に示された固定構造は、窓枠11の窓から下板13を通してその下方に設けられる曜日などの表示を見ることになる。このため、下板13を介するために光の透過率も低下して視認性も低下する。また、折返し部11cの折り曲げた部分では下板13に凹凸が生じ易くなり、この凹凸によって反射光が乱れ、表示品質が更に悪くなると云う問題も生じる。また、カシメ工程や下板13と云う使用部材も増えるので製作コストもアップする。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたもので、窓枠などの植え物と表示板とに強固な固定力が得られると共に、接着剤が窓枠からはみ出さない固定構造を見出すこと、また、製造コストが安い製造方法を見出すことを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するための手段として、本発明の特徴は、鍔と外周角面取りを設けた固定足を有する植え物を表示板の植え物取付穴に固定する表示板において、
前記表示板の表示面と前記植え物の前記鍔の裏面との係合部に接着剤の流出を防止する第1の流出防止手段、又は前記表示板の前記植え物取付穴の内周面と前記植え物の前記固定足の外周面の係合部に接着剤の流出を防止する第2の流出防止手段の少なくともいずれか1つの流出防止手段を設けたことを特徴とする。
【0009】
本発明においては、表示板と植え物を嵌入して一次固定を行い、その後に、接着剤によって二次固定を行う固定構造を取る。一次固定の表示板と植え物の嵌入は表示板に反りなどの変形が生じないように好適な嵌合代を設定して行う。
また、嵌入した植え物の固定足と表示板の植え物取付穴との嵌合した係合部は、植え物取付穴の内周面の面粗さと固定足の外周面の面粗さなどにより数μmの極めて微小な微小隙間が発生する。また、表示板の表示面と植え物の鍔の裏面との圧接面の係合部も同様に微小隙間が発生する。
そして、表示板の裏面側にある固定足の外周角面取り周辺部に接着剤を塗布すると、毛細管現象の作用でこの係合部の微小隙間に接着剤が浸透して流れて行き、最後に植え物の鍔の縁の方に到達する。接着剤の量が少ないと係合部の微小隙間の隅々まで行き届かず、また、接着剤の量が多いと植え物の鍔の縁から外に、即ち、表示板の表示面上に流れ出してしまう。
本発明においては、表示板の表示面と植え物の鍔の裏面との係合部に接着剤の流出を防止する第1の流出防止手段を設けて、接着剤が鍔の縁から表示面への流出を防止する。また、場合によって、接着剤の塗布する部位が異なるときには、第1の流出防止手段と第2の流出防止手段を設けて窓枠から外に流出するのを防止する。
【0010】
また、本発明の特徴は、前記第1の流出防止手段は、前記植え物と前記表示板の嵌入後に前記植え物取付穴の回り一周に渡って形成される断面楔状の形状をなした楔状隙間層、又は凹部形状をなした凹部隙間層、又はコーナ部隙間層の少なくとも一つからなることを特徴とする。
【0011】
本発明においては、断面楔状の形状をなした楔状隙間層とは、断面の形状が楔型形状をした隙間を表しており、楔状隙間層と表現する。この楔状隙間層は隙間が傾斜を持った隙間層で、大きい隙間幅は徐々に隙間幅が小さくなる。逆の言い方をすると、小さい隙間幅は徐々に隙間幅が大きくなる。そして、楔状隙間層を植え物取付穴から遠ざかるに従って隙間幅を大きくすることによって、係合部の微小隙間と繋がった隙間は徐々に隙間幅が大きくなっていく。
楔状隙間層においては、微小隙間の係合部を浸透して流れてきた接着剤は楔状隙間層に流れ、毛細管現象によって隙間幅の大きい方へと進んでいく。そして、ある隙間幅に至ったときに表面張力が起き、そこで接着剤は表面張力の作用を受けて、表面が丸味を帯びて流れは止まる。
また、凹部隙間層もある隙間幅をなしたときに接着剤に表面張力が起き、接着剤の表面が丸味を帯びで接着剤の流れがそこで止まる。
そこで、楔状隙間層を植え物取付穴から遠ざかるに従って隙間幅が大きくなるようにし、鍔の縁の部位で表面張力が起きる隙間幅にすると鍔の縁の部位で接着剤の流れが止まる。
また、凹部隙間層を植え物の鍔の縁に近い部位に設けることによって鍔の縁の部位で接着剤の流れが止まる。
【0012】
ここで、第1の流出防止手段としての楔状隙間層は、隙間幅が一番大きい部位における隙間幅を20〜50μmに規制する。楔状隙間層は表面張力が起きて接着剤の流れが止まる大きさであると共に、外観的に目に見えない隙間であることが求められる。隙間幅を20μm以上にすることで接着剤の流れが止まり、50μm以下にすることで隙間が視認できないようになる。
【0013】
また、楔状隙間層や凹部隙間層は、係合部の微小隙間層の隅々まで接着剤を浸透させて余った接着剤を溜める溜まり場としての働きもなす。
コーナ部隙間層は接着剤の溜まり場としての働きをなす。溜まり場を設けることで溜まり場に残り余った接着剤を溜め、鍔の縁にまで流れる接着剤を少なくし、縁から接着剤が流れ出すのを防止する。従って、コーナ部隙間層は流出防止手段としての役割を果たしている。
【0014】
つぎに、楔状隙間層は、植え物の鍔の裏面又は表示板の表示面の少なくともいずれか一方の面を傾斜面にすることによって形成する。また、凹部隙間層は、植え物の鍔の裏面又は表示板の表示面の少なくともいずれか一方の面に凹部を設けることによって形成する。また、コーナ部隙間層は、表示板の植え物取付穴の角面取りによって形成する。
【0015】
上記の傾斜面、凹部、角面取りの形状は非常にシンプルな形状である。そのため、表示板、植え物を金属で形成した場合は、何れもプレス加工方法で形成することができるので、量産性があって製作コストは安くできる。また、表示板をプラスチック材料で形成した場合は、射出成形方法で金型からの転写方法で形成することができるので製作コストは安くできる。
【0016】
また、コーナ部隙間層を植え物取付穴の角面取りによって形成するようにすれば、コーナ部隙間層が形成できると共に、植え物を嵌入する際の圧入作業がやり易くなる効果も生む。
【0017】
また、本発明の特徴は、前記表示板の裏面側で前記植え物取付穴の回り一周に渡って角面取りを設けたことを特徴とする。
【0018】
表示板の裏面側で、植え物取付穴の回り一周に渡って角面取りを設けることで植え物の固定足の角面取りと対向し、係合部を挟んで谷状の凹部が形成される。従って、この凹部の回りに塗布した接着剤の塗布面は安定し、塗布面から接着剤が流れ出す危険も減少する。また、係合部の微小隙間に接着剤が浸透し易くなると云う効果も生む。
【0019】
次に、本発明の特徴は、前記第2の流出防止手段は、前記植え物と前記表示板の嵌入後に前記植え物の固定足の外周面一周に渡って形成される断面楔状の形状をなした楔状隙間層であることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の特徴は、前記第2の流出防止手段の前記楔状隙間層は、前記植え物の鍔元から遠ざかるに従って隙間幅が大きくなることを特徴とする。
【0021】
第2の流出防止手段は接着剤の塗布後に植え物を表示板に嵌入する工程を設定した場合に設ける。接着剤を表示面上の植え物取付穴の回りに塗布し、その後に植え物を表示板に嵌入すると、植え物の鍔で押し潰された接着剤は固定足側においては第2の流出防止手段である楔状隙間層に浸透して流れる。そして、楔状隙間層を鍔元から遠ざかるに従って隙間幅を大きくすると、隙間幅の大きくなる方向へと流れていき、そして、表面張力が起きる隙間幅に至ると接着剤は丸味を帯びて流れは止まる。従って、植え物取付穴の内周面と固定足の外周面との間に形成された楔状隙間層に浸透して流れた接着剤は楔状隙間層内で流れが止まり、固定足の先端面や表示板の裏面などに流れ出ない。
【0022】
次に、本発明の特徴は、鍔と外周角面取りを設けた固定足を有する植え物を表示板の植え物取付穴に固定する表示板の製造方法において、
前記植え物の前記鍔の裏面又は前記表示板の前記植え物取付穴周辺の表示面の少なくともいずれか一方の面に一周に渡る傾斜面を有する部品を形成する工程と、
前記表示板の植え物取付穴に前記植え物の固定足を嵌入する工程と、
前記固定足を嵌入した前記表示板の裏面側で前記固定足の前記外周角面取り周辺部に接着剤を塗布する工程と、
前記塗布した接着剤を前記表示板と前記植え物の係合部に浸透させて硬化させる工程と、
を有することを特徴とする。
【0023】
植え物と表示板の部品を形成するに当たり、植え物は鍔の裏面または表示板は表示面の少なくともいずれか一方に傾斜面を形成する。植え物は、金属の場合は、コイニング加工やプレス加工などで形成することができる。金型にテーパを付与することで容易に形成でき、量産も可能になって製作コストは安くできる。また、表示板についても同様で、金属で形成する場合はプレス加工で容易に形成できる。
また、表示板をプラスチック材で形成する場合は射出成形加工で容易に形成することができる。いずれも金型にテーパを付与することで製作できるので製作コストを安くすることができる。
この傾斜面を形成することで、次の嵌入工程を経ることによって前述した楔状隙間層が形成される。
【0024】
次に、表示板の植え物取付穴に植え物の固定足を嵌入する工程では圧入装置を使って圧入方法で嵌入する。ここでは、嵌入によって表示板に反りなどの変形が起きないように適正な嵌合代を設定し、部品段階で植え物取付穴の内径寸法と固定足の外形寸法の寸法決めをしておく。
表示板の植え物取付穴と植え物の固定足を嵌入によって固定した場合でも、植え物取付穴の内周面の面粗さ、固定足の外周面の面粗さによって嵌合した係合面は数μmの非常に微小な隙間が不規則的に現れる。つまり、微小隙間が現れる。また、表示板の表示面と鍔の下面との圧接した係合面面にも同様に微小隙間が現れる。従って、表示板と植え物との係合部はこれらの微小隙間と傾斜面を設けたことによる楔状隙間層が形成されることになる。
次に、接着剤の塗布はスクリーン印刷などの印刷方法で表示面の裏面側に塗布する。表示板の裏面側で植え物取付穴に角面取りを設けてあると、植え物取付穴と固定足の両方の角面取りが対向して向き合うことになり係合部を挟んで谷状の凹部が形成される。そして、この凹部回りに接着剤を印刷などの方法で塗布するので、接着剤の落ち着きは良くなり、角面取り部分に接着剤が多く溜まるようになる。
従って、接着剤が塗布部分から流れ出す危険性はなくなると共に、係合部を挟んで凹部に塗布した接着剤は係合部の微小隙間に毛細管現象によって浸透し易くなり、その浸透性も良くなる。
【0025】
そして、表示板に設ける傾斜面を植え物取付穴から遠ざかるに従って表示板の厚みが小さくなるような傾斜面に、或いは、植え物の鍔の裏面に設ける傾斜面を植え物の固定足から遠ざかるに従って鍔の厚みが小さくなるような傾斜面にすると、微小隙間に浸透して流れた接着剤は傾斜面によって形成された楔状隙間層に流れ込んでいく。
そして、楔状隙間層の一番大きい隙間幅を表面張力が起きる隙間幅にすることにより、楔状隙間層の中で表面張力が起きて接着剤の表面が丸味を帯びて流れが止まる。つまり、
植え物の鍔の縁の近傍で表面張力が起きるように楔状隙間層の隙間幅を設定すると、接着剤は表面張力を起こして植え物の鍔の縁で止まるようになる。
従って、鍔の縁から外に接着剤が流出することが防止できると共に、接着剤が微小隙間の隅々に浸透するようになる。また、楔状隙間層に充填されるので接着強度を高める効果を得る。
【0026】
次に、塗布した接着剤を前記表示板と前記植え物の係合部に浸透させて硬化させるにあたり、加熱装置を用いて低温加熱する。低温加熱することで接着剤の粘性は一次的に低下して流動性はより良くなる。このため、係合部への毛細管現象での浸透スピードも速められ、微小隙間の隅々まで浸透すると共に楔状隙間層に流れ込むスピードも速められる。そして、最後に硬化が行われる。
また、加熱は低温で行うため、表示板や植え物に生じる歪みなども小さく、表示板の反りなどの変形が生じない。
【0027】
以上述べた如く、製造方法も簡単であり、特別に高価な装置は使わないので、安いコストで製作することができる。また、楔状隙間層で接着剤の流れが止まり、植え物の外に接着剤が流出しない。また、微小隙間の隅々まで接着剤が浸透し強固な接着強度が得られる。
【0028】
また、本発明の特徴は、鍔と外周角面取りを設けた固定足を有する植え物を表示板の植え物取付穴に固定する表示板の製造方法において、
前記植え物の鍔の裏面又は前記表示板の前記植え物取付穴周辺の表示面の少なくともいずれか一方の面に一周に渡る凹部からなる溝を有する部品を形成する工程と、
前記表示板の植え物取付穴に前記植え物の固定足を嵌入する工程と、
前記固定足を圧入した前記表示板の裏面側で前記固定足の前記外周角面取り周辺部に接着剤を塗布する工程と、
前記塗布した接着剤を前記表示板と前記植え物の係合部に浸透させて硬化させる工程と、
を有することを特徴とする。
【0029】
ここでの植え物と表示板の部品は、植え物の鍔の裏面又は表示板の表示面の少なくともいずれか一方の面に一周に渡る凹部からなる溝を有する部品を形成する。凹部の形成は、表示板や植え物が金属の場合、型打型を用いてプレス加工で形成することができ、表示板がプラスチック材の場合、金型を用いての射出成形方法で金型からの転写で形成することができる。いずれも形成方法が容易である。
この凹部を形成することで、次の嵌入工程を経ることによって前述した凹部隙間層が形成される。
【0030】
また、凹部からなる溝を植え物の鍔の縁に近い部位、或いは、その部位に対応する表示板に設けることによって、形成される凹部隙間層が鍔の縁の近い部位に形成できる。そして、前述の固定構造の説明で述べたように、その凹部隙間層の隙間幅を接着剤に表面張力が起きて流れが止まるような隙間幅にすることによって接着剤の流れを止めることができる。
なお、嵌入工程、接着剤の塗布工程、接着剤の浸透と硬化工程は前述に記載の工程と同じであるのでその説明は省略する。
【0031】
また、本発明の特徴は、鍔と外周角面取りを設けた固定足を有する植え物を表示板の植え物取付穴に固定する表示板の製造方法において、
前記植え物部品と、前記植え物取付穴の表示面側に角面取りを有する表示板部品を形成する工程と、
前記表示板の植え物取付穴に前記植え物の固定足を嵌入する工程と、
前記固定足を圧入した前記表示板の裏面側で前記固定足の前記外周角面取り周辺部に接着剤を塗布する工程と、
前記塗布した接着剤を前記表示板と前記植え物の係合部に浸透させて硬化させる工程と、
を有することを特徴とする。
【0032】
ここでは、表示面側の植え物取付穴に角面取りを有する表示板部品を形成する。表示板が金属の場合は型打型を用いたプレス加工で形成でき、プラスチックの場合は金型を用いて射出成形加工で形成することができる。いずれも形成方法が容易である。
また、植え物取付穴に角面取りを有すると次の嵌入工程での圧入作業もやり易い。
植え物取付穴に角面取りを有する表示板部品を用いることで、嵌入工程後にコーナ部隙間層が形成される。このコーナ部隙間層の作用・効果は前述の固定構造の所で説明したのでここでの説明は省略する。
なお、次の嵌入工程、接着剤の塗布工程、接着剤の浸透と硬化工程は前述に記載の工程と同じであるのでその説明は省略する。
【0033】
前述したように、本発明の表示板にあっては、接着剤が植え物の鍔から外に流出しないので表示板が接着剤で汚れない。また、接着強度の強い表示板が得られる。また、本発明の製造方法を取った表示板にあっては、安いコストで製作できる。
【発明の効果】
【0034】
以上、発明の項目毎に効果を詳細に説明したが、纏めると、表示板と窓枠の固定構造に強固な固定強度が得られ、また、接着剤のはみ出しなども発生せずに良好な外観品質が得られる。また、製造方法も簡単であり、一般的な加工装置で製作できるので製作コストも安くできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明を実施するための最良の形態(以降、実施形態と云う)について図を用いながら説明する。なお、実施形態においては、表示板として時計用の表示板を取り上げ、植え物として窓枠を取り上げて説明するが、時計以外の他の類似の表示板、例えば車載用のメータ表示板、電子機器装置(携帯用含む)などの表示板にも共通して適用できるものである。
【0036】
(第1実施形態)
最初に、本発明の第1実施形態に係る表示板、及び表示板の窓枠との固定構造を図1〜図4を用いて説明する。なお、図1は本発明の第1実施形態に係る表示板の平面図を示している。図2は図1におけるB−B拡大断面図、図3は図2における表示板と植え物の嵌入後の拡大断面図を示している。また、図4は図2における構造の製造方法を説明する工程図を示している。
【0037】
第1実施形態における表示板はソーラセル用の表示板で、表示板は透過性を要することから、材料は透過性を有するポリカーボネイト樹脂のプラスチック板から形成している。なお、材料はポリカーボネイト樹脂に限るものではなく、耐熱性、耐湿性、耐衝撃性、耐光性などに優れたアクリル樹脂やポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂なども使用可能である。また、表示板は0.3〜1.0mmの厚みからなり、金型を用いて射出成形方法によって形成している。
また、表示板に取付ける植え物は窓枠を用いている。この窓枠は穴を有して、穴から下方に配設する曜日板の曜日表示が視認できるようになっている。以降、植え物を窓枠、植え物取付穴を窓枠取付穴と表現して説明することにする。
【0038】
図1において、表示板31は中心部に長短針の指針取付け用の穴31dを有している。また、所要の位置に窓枠32を取付ける窓枠取付穴31cを有し、その穴に窓枠32を取付けている。また、時字などの指標39を設けている。
また、図2に示すように、表示板31の上面側(視認側)は表示面31aをなしており、裏面31e側では窓枠取付穴31cの内周面31bには角面取り31gを施している。
【0039】
窓枠32は黄銅材などの金属からなり、穴32cを有している。この穴32cは覗き窓の役目をなしており、下方に配設する曜日板の曜日表示が視認できるようになっている。
また、窓枠32は鍔32aと固定足32bを有している。また、鍔32aの裏面32dは一周に渡って傾斜面を設けてあり、固定足32bの外周面32eには角面取り32gを施してある。
この窓枠32は金型を用いてコイニング加工とプレス加工などによってブランクを形成し、その後、ダイヤカットなどで上面32fの表面仕上げを行い、最後にメッキなどの表面処理を行って完成する。
【0040】
次に、この窓枠32と表示板31の固定構造を図2、図3を用いて説明する。なお、図2、図3は分かり易くするために少し誇張して描いている。図2において、表示板31の窓枠取付穴31cに窓枠32の固定足32bを嵌入して表示板31と窓枠32を一次固定し、更に、接着剤35を介して表示板31と窓枠32を二次固定する構造をなしている。
なお、ここでの嵌入とは圧入による嵌合状態を表している。また、嵌合代は表示板31に反りなどの変形が生じない嵌合代を設定している。
【0041】
図3において、33は微小隙間を表している。ここでの微小隙間33とは、窓枠取付穴31cと固定足32bは圧入によって嵌合固定されるが、窓枠取付穴31cの内周面31bには面粗さがあり、また、固定足32bの外周面32eにも面粗さがある。このため、嵌合面には面粗さによる数μmの微小で不規則な隙間が発生する。この隙間を微小隙間33と表している。また、同様に、表示面31aと鍔32aの裏面32dの圧接面にも、面粗さによる微小隙間33が発生する。
なお、微小隙間を有している部分を、以降、係合部と称して説明する。
【0042】
また、34は楔状隙間層である。この楔状隙間層34は表示面31aと鍔32aの裏面32dとの係合部に設けられ、窓枠32の鍔32aの裏面32dを傾斜面にしたことにより楔状隙間層34が現れる。この楔状隙間層34は断面が楔状の形状をなしているので楔状隙間層34と表している。
楔状隙間層34は微小隙間33と接続し、窓枠取付穴31cから遠ざかるに従って隙間幅が大きくなり、鍔32aの縁32hに至って隙間幅wは最大になる。また、この楔状隙間層34は鍔32aの裏面32d側において一周に渡って設けられる。
【0043】
次に、係合部となるところの微小隙間33と楔状隙間層34には接着剤35が埋められており、表示板31と窓枠32は接着剤35によって接着固定される。
【0044】
接着剤35は2液性のエポキシ系樹脂接着剤を用いている。この接着剤35は精密部品には好適に利用できるもので、粘性が低く、低温で硬化して強い接合強度が得られる。後述することではあるが、60°C前後の低温加熱によって硬化するので、部品に生じる歪みなども小さく、反りなどの変形も起こり難い。
【0045】
この接着剤35は表示板31の裏面31e側で、表示板31と固定足32bの係合部の回り、つまり、窓枠取付穴31cの角面取り31gと固定足32bの角面取り32gの回りに塗布する。また、接着剤35は微小隙間33の隅々まで浸透させるために塗布量を少し多目に塗布している。そして、この塗布した接着剤35が微小隙間33に毛細管現象によって浸透していき、最後に楔状隙間層34に浸透して流し込んで楔状隙間層34に接着剤が充填される。
【0046】
つまり、塗布した接着剤35は毛細管現象によって係合部の微小隙間33に浸透し、やがて楔状隙間層34に進む。楔状隙間層34は微小隙間33と接続し、窓枠取付穴31cから遠ざかるにつれて隙間幅が徐々に大きくなっているので、楔状隙間層34内に進入した接着剤35は楔状隙間層34内での毛細管現象が働く隙間幅までは進入する。
しかし、隙間幅が大きくなって表面張力が起きると接着剤は表面丸味を帯びて接着剤の流れは止まる。
【0047】
本実施形態においては、図3に示すように、楔状隙間層34の最大隙間は丁度鍔32aの縁32hの部位で最大となり、隙間幅wが最大隙間になっている。
この最大の隙間幅wの部位で表面張力が生じて接着剤35の流れが止まれば、接着剤35は鍔32aの縁32hから外に流出することは起きず、接着剤35の流出を防止することができる。つまり、図2の矢印Aで示したように、鍔32aの縁32hの部位で接着剤が止まる。
本実施形態においては、この最大の隙間幅wを20〜50μmに規制する。これは、隙間が20μm以上になると表面張力が働いて接着剤の流れが止まり、20μmより小さいと表面張力が働かずに毛細管現象によって縁32hの外に接着剤が流出することによる。また、50μmより大きくなってくると目で隙間が視認できるようになり外観的品質が悪化する。
また、楔状隙間層34で接着剤35の流れが止まることによって微小隙間33の隅々まで接着剤35が更に浸透する効果も現れる。
以上述べたように、楔状隙間層34は接着剤の流出防止手段としての役割を果たしている。本発明においては、楔状隙間層34は表示面31a側に設けた隙間層であるので第1の流出防止手段の楔状隙間層と呼ぶ。
【0048】
また、楔状隙間層34は接着剤35の溜まり場としての働きもなしている。接着剤35の塗布量は微小隙間33に流入する量や楔状隙間層34に流入する量などを加味して設定する。
【0049】
以上の固定構造を取ることにより、接着剤35は微小隙間33の隅々まで行き届き、また、鍔32aの縁32hの部位で止まる。これにより、接着剤35が鍔32aの縁32hから外へ流出するのを防止することができ、接着面積を広く取ることで接着強度の強い固定構造が得られる。
従って、上記の固定構造を有する表示板においては、外観品質面では窓枠のない領域の表示面上に接着剤の付着がなくなり、また、機能品質面では表示板の変形が発生せず、衝撃に対しても窓枠が表示板から容易に外れることのない強い固定構造が得られる。
【0050】
(製造方法)次に、上記の固定構造をなす表示板の製造方法を図4を用いて説明する。
最初に、表示板31の部品、窓枠32の部品を形成する。本実施形態においては、表示板31はプラスチック材から形成しているので金型を用いて所要の形状に射出成形方法で形成する。ここでの所要の形状とは、図1、図2に示す形状で、中心部の穴31dと窓枠取付穴31cを有し、窓枠取付穴31cに角面取り31gを設けた形状である。また、場合によっては表示面31aなどに印刷などの表面装飾を施したものである。
窓枠32の部品形成は黄銅板を用い、図2に示す形状で鍔32a、鍔32aの裏面32dの傾斜面、固定足32b、穴32cなどをコイニング加工、プレス加工などでブランクを形成し、その後に、ダイヤカット加工で上面32fの仕上げ加工を行い、メッキなどの表面処理を施して完成にする。
鍔32aの裏面32dに形成する傾斜面は固定足32bから遠ざかるに従って鍔32aの厚みが小さくなる傾斜面に形成する。
【0051】
次に、図4の(a)に示すように、窓枠32の固定足32bを表示板31の窓枠取付穴31cに嵌入する。嵌入は加圧装置(圧入装置)などを用いて圧入方法で行う。
なお、嵌入によって表示板が反りなどの変形が起きないように、予め変形が起きない好適な嵌合代を設定し、その嵌合代を読み込んで部品寸法を決める。
この嵌入によって表示板31と窓枠32の一次固定が行われる。そして、この時点で前述した微小隙間33及び楔状隙間層34が形成される。
【0052】
次に、図4の(b)に示すように、表示板31及び窓枠32を裏返しにし、つまり、表示板31の裏面31eと窓枠32の固定足32bを表側に向け、スクリーン印刷装置などを用いて、表示板31の角面取り31gと固定足32bの角面取り32gに囲まれた回りにスクリーン印刷方法などで接着剤35を塗布する。
係合部33を挟んで両方に角面取りされた谷状の凹部回りに接着剤35を塗布することで接着剤35の塗布面の落ち着きが良くなり、周辺部に流れ出す危険が少なくなる。また、微小隙間33への接着剤35の浸透性も向上する。
なお、接着剤35の塗布方法はスクリーン印刷法に限るものではなく、例えば、ポッティング方法などであっても構わない。
【0053】
次に、図示はしていないが、加熱装置などを用いて、55°C〜65°Cの範囲の温度で加熱処理を行う。加熱温度は55°C〜65°Cの範囲が好ましく、この範囲の温度より低いと接着剤の硬化が十分に行われなく、接着強度上の問題が発生する。また、この範囲の温度より高いと気泡が発生して接着力低下などの機能上の問題生じる。
この加熱処理を施すことで、接着剤の粘性が一次的に低下してより流動性が良くなり、毛細管現象で微小隙間33の隅々まで早く浸透して行く。また、楔状隙間層34に接着剤35が流れ込んでいき、楔状隙間層34にも接着剤35が溜まる。楔状隙間層34の最大隙間幅を接着剤に表面張力が起きて流れが止まる隙間幅に設定しているので、接着剤35に表面張力が起きる隙間の部位に至ると表面張力を起こして接着剤35の流れは止まる。つまり、楔状隙間層34の鍔32aの縁34h近傍の部位が表面張力を起こす隙間幅になっているので、鍔32aの縁34hの近傍で接着剤35の流れが止まり、接着剤35が微小隙間33と楔状隙間層34の中に充填して硬化する。
また、加熱温度が低いことにより、表示板31と窓枠32に発生する歪みも小さく、表示板に反りなどの変形が発生しない。
【0054】
このような製造方法を取ることによって図4の(c)に示した固定構造が得られる。
表示板31と窓枠32の部品形状がシンプルな形状であり、その形成装置も従来の装置で形成することができる。また、表示板31と窓枠32の嵌入する工程、接着剤の塗布工程、加熱工程などにおいても一般に用いられている装置で十分対応できるので設備コストも安くできる。また、量産性も有り、製作コストも安くできる。
また、接着剤35が表示板31と窓枠32との係合部の隅々まで行き届いて強い接着強度が得られると共に、接着剤35が窓枠32の鍔32aの外へ流出するのが防止できる。
従って、上記の製造方法で形成した表示板は、表示板の表示面上への接着剤の流出がなくなり、表示板の変形が発生せずに窓枠が表示板から容易に外れることのない強い固定強度が得られる。また、製作コスト面では金型によって全て形状が決められるので追加加工は必要とせず、むしろ、歩留まり向上によるコストダウン効果ももたらされる。
【0055】
なお、第1実施形態においては、表示板をプラスチックで形成し、窓枠を金属で形成し、プラスチックと金属の組合せでの固定構造をなしているが、本発明の表示板の固定構造はこの組合せの構造に限るものではなく、表示板がプラスチックで窓枠がプラスチックの組合せ、表示板が金属で窓枠が金属の組合せ、表示板が金属で窓枠がプラスチックの組合せなどの組合せでも適用できるものである。
その場合には、嵌入の嵌合代を組合せの材料に合わせて適切な嵌合代を設定するようにすれば、表示板の反りなどの変形は防止するこができる。
また、第1実施形態においては、表示板31の下面31eで窓枠取付穴31cに角面取り31gを施したが、塗布した接着剤の落ち着きに多少の不安定さは現れるが角面取りの無い形状でも適用できるものである。
【0056】
(応用例)次に、第1実施形態における固定構造の応用例を図5を用いて説明する。なお、図5は表示板に傾斜面を設けた場合の表示板と窓枠の固定構造を示す要部拡大断面図を示している。この応用例の固定構造は表示板に傾斜面を設けて楔状隙間層を形成した構造のものである。図5において、表示板41の表示面41aに傾斜面41fを形成し、窓枠42の鍔42aの裏面42dは平坦面に形成し、傾斜面41fと裏面42dとの間に楔状隙間層44を形成し、係合部なる微小隙間43と楔状隙間層44に接着剤45を浸透させて流し込んだ構造をなす。
【0057】
傾斜面41fは窓枠取付穴41cから遠ざかるに従って表示板41の厚みが徐々に小さくなるように形成している。そして、窓枠42の鍔42aの縁42hの部位に対応する位置にまで傾斜面を付けている。
また、この傾斜面41fによって形成された楔状隙間層44の一番大きいところの隙間幅は第1実施形態における隙間幅と同じ、20〜50μmの隙間にしている。従って、楔状隙間層44の隙間幅の大きい部位、即ち、窓枠42の鍔42aの縁42hの近くの部位で接着剤45が表面張力を起こして流れが止まる。
【0058】
以上の構造をなした固定構造も前述の第1実施形態の構造と同じ効果を得る。また、表示板41に形成する傾斜面41fは表示板41がプラスチック材であれば射出成形方法で容易に形成でき、表示板41が金属板であればプレス加工方法で容易に形成できる。
なお、図5に示した構造は表示板41の表示面41aにのみ傾斜面41fを設けた構造であるが、表示面41aと鍔42aの裏面42dの両方の面にそれぞれ傾斜面を設けて楔状隙間層を形成したものであっても何ら支障はない。
【0059】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る表示板の窓枠との固定構造について図6を用いて説明する。なお、図6は本発明の第2実施形態に係る表示板と窓枠の固定構造を示す要部拡大断面図を示している。
【0060】
第2実施形態の表示板51は、図6に示すように、窓枠取付穴51cを有し、この窓枠取付穴51cの周辺の表示面51aに一周に渡って溝なる凹部51fを設けている。また、表示板51の裏面51eにおいて窓枠取付穴51cの内周面51bには角面取り51gを形成している。なお、表示板51は透過性を有するポリカーボネイト樹脂からなるプラスチック板からなっている。
【0061】
窓枠52は黄銅材などの金属からなり、穴52c、鍔52a、固定足52bを有した形状をなしている。また、固定足52bの外周面52eには角面取り52gを形成している。メッキなどの表面処理を施し、上面52fはダイヤカット面に仕上げている。
【0062】
表示板51に窓枠52を嵌入することで一次固定が行われる。嵌入後は、表示板51と窓枠52の係合部には前述の第1実施形態で説明した微小隙間53と表示板51に設けた凹部51fによって形成された凹部隙間層54が形成される。
凹部隙間層54は接着剤55の流出防止手段として設けるもので、凹部隙間層54の隙間幅を接着剤55が表面張力を起こして接着剤55の流れが止まる隙間幅の大きさに形成し、この凹部隙間層54で接着剤55の流れを止めている。この凹部隙間層54は表示面51a側に設けた隙間層であるので第1の流出防止手段の凹部隙間層と呼ぶ。
【0063】
この凹部隙間層54は接着剤55の表面張力が起きる隙間幅にし、出来るだけ窓枠52の鍔52aの縁52hの近傍に設けるのが好ましい。
第2実施形態においては、凹部隙間層54の一番大きい部位における隙間幅を20μm以上に設定している。こうすることで凹部隙間層54の中で表面張力が起きて接着剤55の流れは止まる。また、凹部隙間層54は鍔52aの縁52hの内側で縁52hの近傍の部位に設けている。このようにすると、凹部隙間層54が見えず、接着剤55が縁52hのすぐ近くまで充填されて接着強度も強くなる。また、鍔52aの縁52hから外に接着剤55が流出することが起きない。
【0064】
接着剤55の塗布は前述の第1実施形態での製造方法で説明した方法と同じ方法で行う。つまり、表示板51の裏面51eで微小隙間53を挟んで対向した角面取り51g、52gの谷状の凹部の回りに接着剤55を塗布する。
そして、低温加熱などを施す中で毛細管現象を利用して微小隙間53、凹部隙間層54に接着剤55を浸透させて充填する。
凹部隙間層54の層内においては、表面張力が起きる隙間幅の部位で表面張力が起きて接着剤55の流れは止まる。また、凹部隙間層54で接着剤55の流れが止まることで微小隙間53の隅々まで更に接着剤55が浸透することになる。
【0065】
接着剤55は微小隙間53や凹部隙間層54に十分充填されるようにそれらの容積なども加味して塗布量を設定するようにする。
【0066】
凹部隙間層54は窓枠取付穴51cの回り一周に渡って設けている。こうすることで、
窓枠52の回り一周で接着剤55の流出は生じない。
この凹部隙間層54は断面形状が四角形状、V字形状、U字形状など様々な形状を取ることは可能であるが、製作の容易性などを考えると四角形状、V字形状、U字形状などが好ましい。
また、凹部隙間層54は、本実施形態においては、表示板51に凹部51fを設けることで形成している。表示板51がプラスチック板の場合は射出成形方法で金型からの転写で形成でき、金属板の場合はプレス加工などで容易に形成できる。
また、この凹部隙間層54は窓枠52の鍔52aの裏面52dに凹部を設けることでも形成することができる。金属からなる窓枠52は型打型を用いたプレス加工で容易に形成できる。
【0067】
また、この凹部隙間層54は接着剤の溜まり場としての働きもなす。係合部の微小隙間隅々まで接着剤が浸透するように接着剤は多少多目に塗布するが、その多目の余った分の接着剤を凹部隙間層54に溜めて表面張力を起こさせている。
【0068】
なお、第2実施形態における表示板の製造方法は前述の第1実施形態での製造方法と同じであるので、ここでの説明は省略する。また、使用する接着剤55も第1実施形態での接着剤と同じ仕様のものを用いている。
【0069】
以上のような構造をなすことにより、前述の第1実施形態での効果と同じ効果を得ることができる。つまり、鍔52aの縁52dから接着剤55の流出(はみ出し)が抑えられ、表示面51aの接着剤汚れを防止することができる。また、表示板51と窓枠52との隙間の隅々まで毛細管現象で接着剤が行き届くので、接着固定力は強くなり、固定強度の強い固定構造が得られる。
また、嵌入による一次固定と接着剤による二次固定方法を取っているが、反りの発生しない嵌合代を設定して嵌入を図り、接着剤の硬化は低温加熱にて行っているので歪みの発生も小さいので、表示板の反りなどの変形も殆ど起きない。
また、製作も容易であることから製作コストも安くできる。
【0070】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る表示板の窓枠との固定構造について図7を用いて説明する。なお、図7は本発明の第3実施形態に係る表示板と窓枠の固定構造を示す要部拡大断面図を示している。
【0071】
第3実施形態の表示板61は透過性を有するポリカーボネイト樹脂からなるプラスチック板からなっていて、図7に示すように、窓枠取付穴61cを有し、表示面61a側で窓枠取付穴61cの内周面61bに角面取り61hを一周に渡って形成している。また、表示板61の裏面61eにおいて窓枠取付穴61cの内周面61bには角面取り61gを形成している。
第3実施形態の表示板61の形状は第2実施形態の表示板の形状と比較すると、第3実施形態の表示板61は、表示面61aに凹部がなくて、窓枠取付穴61cに角面取り61hが有るところのみが異なる。
【0072】
窓枠62は黄銅材などの金属からなり、穴62c、鍔62a、固定足62bを有した形状をなしている。また、固定足62bの外周面62eには角面取り62gを形成している。また、メッキなどの表面処理を施してあり、上面62fはダイヤカット面に仕上げている。
第3実施形態の窓枠62は前述の第2実施形態での窓枠の仕様と同じ仕様をなしている。
【0073】
表示板61に窓枠62を嵌入することで一次固定が行われる。嵌入後は、表示板61と窓枠62の係合部には前述の第1実施形態で説明した微小隙間63と、窓枠取付穴61cに設けた角面取り61hによって形成されたコーナ部隙間層64が形成される。
コーナ部隙間層64は接着剤65の流出防止手段として設けるもので、コーナ部隙間層64に余った接着剤を溜めることで窓枠62の鍔62aの縁62hの方に浸透して流れる接着剤の量を制限し、縁62hから接着剤65の流出を防止している。
このコーナ部隙間層64は表示面61a側に設けていることから第1の流出防止手段のコーナ部隙間層64と呼ぶ。
【0074】
コーナ部隙間層64は隙間幅が大きいと、このコーナ部隙間層64に浸透してきて溜まった接着剤65に表面張力が起こり、接着剤65の流れは止まってしまう。このため、鍔62aの裏面62dと表示板61の表示面61aとの圧接面なる係合部の微小隙間63に接着剤65が浸透して行かなくなる。
このことを避けるために、コーナ部隙間層64の隙間幅は接着剤65に表面張力が起きない程度の隙間幅にし、このコーナ部隙間層64の中でも毛細管現象が働いて接着剤65が圧接面の微小隙間63に浸透して行くようにする。
【0075】
接着剤65の塗布は前述の第1実施形態での製造方法で説明した方法と同じ方法で行う。つまり、表示板61の裏面61eで微小隙間63を挟んで対向した角面取り61g、62gの谷状の凹部に接着剤65を塗布する。
そして、低温加熱などを施す中で毛細管現象を利用して微小隙間63とコーナ部隙間層64に接着剤65を浸透させて充填する。
【0076】
コーナ部隙間層64に接着剤65が溜まることにより、鍔62aの裏面62dと表示板61の表示面61aとの係合部の微小隙間63に浸透していく接着剤65の量が少なくなり、鍔62aの縁62hに至らぬ状態になって縁62hからの接着剤65の流出は無くなる。
ただ、接着剤65が浸透して届く部位が縁62hから遠くの位置にあると接着剤65の付着面積が小さくなって接着強度が低下する危険が生じる。従って、この危険を避けるために、接着剤65が縁62hの近くまで届くように塗布する接着剤の量を適宜な量に設定することが必要とされる。
【0077】
接着剤65の塗布量は微小隙間63に浸透する量とコーナ部隙間層64に溜まる量を含めてかなり厳しく制限する必要は出てくるが、それでも微小隙間63の隅々までかなり浸透して強い接着固定が行える。
【0078】
なお、本実施形態においては、コーナ部隙間層64は角面取り61hをR面取りして形成したが、R面取りに限るものではなくC面取り(45°の傾斜面取り)でも良いが、R面取りは接着剤の付着面積も大きくなることから接着強度を高める面では好ましいと云える。
【0079】
また、角面取り61hを設けることで表示板61に窓枠62を嵌入する工程での圧入作業はよりやり易くなると云う効果も得る。
【0080】
上記の固定構造をなす表示板の製造方法は、上記で述べた形状の表示板61、窓枠62を形成する工程と、表示板61に窓枠62を嵌入する工程と、接着剤65を塗布する工程と、低温加熱工程を経て形成する。嵌入する工程以降の工程は前述の第1実施形態での工程と同じであるのでここでの説明は省略する。
また、表示板61の角面取り61hの形状は金型からの転写によって形成できるので容易に製作することができる。
【0081】
以上述べたように、このような構造をなすことにより、接着剤65の鍔部62aからのはみ出しが抑えられ、接着強度も高めることができる。また、製作コストも安くできる。
【0082】
なお、本実施形態では接着剤の流出防止手段としてコーナ部隙間層を形成し、そのコーナ部隙間層を接着剤の溜まり場としての働きをさせてその目的を達成した。接着剤の溜まり場としてはコーナ部隙間層以外に表面張力が起きない隙間幅を有した凹部隙間層などを選択しても良い。また、コーナ部隙間層と凹部隙間層の両方を設けても何ら支障はない。
【0083】
また、接着剤の溜まり場として、窓枠取付穴61cの内周面61bと固定足62bの外周面62eとの係合部に第2の流出防止手段となる楔状隙間層を設けても良い。この楔状隙間層は表示板61の角面取り61g、固定足62bの角面取り62gに行くに従って隙間幅が大きくなる、つまり、窓枠62の鍔62aの元から遠ざかるに従って隙間が大きくなる楔状隙間層である。
この楔状隙間層はコーナ部隙間層64と同じ接着剤の溜まり場としての働きをなすものであるが、層内でも毛細管現象が起きる程度に隙間の最大隙間幅を極力小さく抑えるのが好ましい。接着剤65を角面取り61g、62gの部位に塗布すると毛細管現象で楔状隙間層に入り、更に係合部に毛細管現象で接着剤が浸透して行く。この楔状隙間層は先細になっていることから接着剤が浸透し易くなると云う効果も生む。
この楔状隙間層で余分な接着剤を溜め、窓枠62の鍔62aの縁62hから流れ出す接着剤の量を抑える働きをなす。なお、この楔状隙間層は固定足62bの外周面62eを、あるいは、窓枠取付穴61の内周面61bを傾斜面にすることによって形成することができる。また、傾斜面によって形成した接着剤の溜まり場としての楔状隙間層は傾斜になった分だけ接着剤の付着面積が大きくなるので接着強度が増すと云う効果も生む。
また、接着剤の溜まり場としてコーナ部隙間層64とこの楔状隙間層の両方を設けても良く、単に第2の流出防止手段であるこの楔状隙間層だけを設けても良いものである。
【0084】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態に係る表示板の窓枠との固定構造について図8を用いて説明する。なお、図8は本発明の第4実施形態に係る表示板と窓枠の固定構造を示す要部拡大断面図を示している。
【0085】
第4実施形態の表示板71は黄銅や洋白などの金属板からなっている。表示板71はプレス加工などによってブランクが形成され、メッキなどの表面処理が行われて表面装飾が施されている。
また、この表示板71は、図8に示すように、窓枠取付穴71cを有し、表示面71a側で窓枠取付穴71cの内周面71bに角面取り71hを一周に渡って形成している。この角面取り71hはブランク形成時にプレス加工で形成している。
【0086】
次に、窓枠72は黄銅材などの金属からなり、穴72c、鍔72a、固定足72bを有した形状をなしている。また、鍔72aの裏面72dには一周に渡って傾斜面が設けられており、固定足72bの外周面72eには角面取り72gが設けられている。これらの形状はコイニング加工とプレス加工によって形成している。また、メッキなどの表面処理を施してあり、上面72fはダイヤカット面に仕上げられている。
【0087】
表示板71に窓枠72を嵌入することで一次固定が行われる。嵌入後は、表示板71と窓枠72の係合部には前述の第1実施形態で説明した微小隙間73と、鍔72aの裏面72dに傾斜面を設けたことによって形成された楔状隙間層74Aと、窓枠取付穴71cに設けた角面取り71hによって形成されたコーナ部隙間層74Bが形成される。
窓枠取付穴71cに設ける角面取り71hは、この角部に隙間層を形成する目的と窓枠72の固定足72bの圧入作業を容易にするために設けるもので、コーナ部隙間層74Bは接着剤75をこの隙間層に溜める役割をなす。
また、鍔72aの裏面72dに設ける傾斜面はこの場に楔状隙間層74Aを形成するために設けるもので、楔状隙間層74Aは接着剤75が鍔72aの縁72hから外へ流出するのを防止する役割を果たす。
【0088】
ここで、コーナ部隙間層74Bは余分に塗布した接着剤を単に溜める役割をなすものであるが、コーナ部隙間層74Bの隙間幅が大きいと、このコーナ部隙間層74Bの中で接着剤に表面張力が起き、接着剤の流れが止まってしまう現象が現れる。そこで、接着剤の流れが止まる現象を避けるためにコーナ部隙間層74Bの隙間幅は接着剤75の流れが止まらない程度に小さく抑え、毛細管現象が現れるようにしている。このコーナ部隙間層74Bは窓枠取付穴71cの回り一周に渡って形成される。
【0089】
楔状隙間層74Aは接着剤75の流れを完全に止め、鍔72aの縁72hから外に接着剤75が流出するのを防止するために形成する。楔状隙間層74Aの一番大きい隙間幅を接着剤75に表面張力が起きる隙間幅に設定し、接着剤75が表面張力を起こして流れが止まるようにしている。また、この楔状隙間層74Aは外観的に殆ど視認されないような隙間にしなければならない。そこで、本実施形態では隙間幅が一番大きい部位における隙間幅を20〜50μmの範囲に規定している。
また、この楔状隙間層74Aは接着剤75の流れを止める働きをなすと共に、接着剤75の溜まる量も多くなるので接着剤75の溜まり場としての働きもなしている。
【0090】
接着剤75は前述の第1実施形態で用いた接着剤と同じ仕様のものを用いている。接着剤75は表示板71の裏面71e側で、固定足72bの角面取り72gを形成した部位の回りに塗布する。塗布量は微小隙間73の隅々まで接着剤75が浸透するように、そして、コーナ部隙間層74Bや楔状隙間層74Aの体積なども加味して少し多目に決める。
【0091】
次に、上記構造の作用について説明する。塗布した接着剤75は係合部の微小隙間73に毛細管現象で浸透して流れて行き、コーナ部隙間層74Bに流れ込む。コーナ部隙間層74Bの層内でも毛細管現象が起きるのでコーナ部隙間層74Bから鍔72aの裏面72dと表示面71aとの間の微小隙間73に浸透して流れ、やがて楔状隙間層74Aに流れ込む。そして、楔状隙間層74A内で表面張力を起こして接着剤75の流れはその部位で止まる。
【0092】
コーナ部隙間層74Bは鍔72aの裏面72dと表示面71aの係合部への接着剤75の流れ量を制限し、楔状隙間層74Aで接着剤75の外への流出を防止している。つまり、流出防止手段としての働きをなしている。本発明においては、コーナ部隙間層74B、楔状隙間層74Aは表示面71a側にあるので第1の流出防止手段と呼ぶ。
【0093】
以上の構造を取ることにより、少し多目に接着剤を塗布しても隙間層に吸収され、また、微小隙間の隅々に接着剤が行き届き強固な接着強度が得られる。また、接着剤が窓枠の鍔から外に流出することがなくなる。
【0094】
なお、接着剤の溜まり場としての働きをなすものとしてコーナ部隙間層74Bに限らず、例えば、窓枠取付穴71cの内周面71bと固定足72bの外周面72eとの係合部に第2の流出防止手段となる楔状隙間層を設けても良い。この第2の楔状隙間層は窓枠72の鍔72aの元から遠ざかるに従って隙間が大きくなる楔状隙間層である。この楔状隙間層はコーナ部隙間層74Bと同じ接着剤の溜まり場としての働きをなすものであるが、この楔状隙間層に入った接着剤は毛細管現象を起こして楔状隙間層の奥の方に浸透して行き、更に係合部へと浸透する。なお、接着剤の溜まり場として、コーナ部隙間層74Bとこの楔状隙間層の両方を設けても良く、また単に、この楔状隙間層だけを設けても良いものである。
【0095】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態に係る表示板の窓枠との固定構造について図9、図10を用いて説明する。なお、図9は本発明の第5実施形態に係る表示板と窓枠の固定構造を示す要部拡大断面図、図10は図9における固定構造の製造方法の主要工程を説明する模式的に示した工程図で、図10の(a)は接着剤の塗布工程における塗布後の状態図、図10の(b)は窓枠の嵌入工程における鍔が接着剤に接触した時点の状態の図、図10の(c)は図10の(b)から更に窓枠を押圧した時点の状態図、図10の(d)は窓枠の嵌入が終えた時点の状態図を示している。
【0096】
第5実施形態に係る表示板は時計用のソーラセル用の表示板である。表示板に窓枠を設けているが、その固定構造は、図9に示すように、表示板81の窓枠取付穴81cに窓枠82を嵌入して一次固定し、表示板81と窓枠82との係合部に接着剤85によって接着の二次固定した構造をなしている。
【0097】
表示板81はポリカーボネイト樹脂などのプラスチック板からなり、窓枠取付穴81cを有する。また、表示板81の表示面81a側には窓枠取付穴81cの回りで一周に渡って断面三角形状に沈んで傾斜した傾斜面81fを有し、窓枠取付穴81cの下面81e側に近い内周面81bに一周に渡って傾斜した傾斜面81iを有している。これら表示面81a側の傾斜面81f及び内周面81b側の傾斜面81iは金型からの転写で射出成型時に形成する。
断面三角形状に沈んで傾斜した傾斜面81fは、後述する窓枠82の鍔82aの縁82hに対応する表示面81aの縁82より内側の近傍部位に設けており、表示板81に窓枠82が取付けられた時には殆ど視認することができない。
【0098】
窓枠82は黄銅材などの金属からなり、穴82c、鍔82a、固定足82bを有した形状をなしている。また、固定足82bの外周面82eには角面取り82gが設けられている。これらの形状はコイニング加工とプレス加工によって形成している。また、メッキなどの表面処理を施しており、上面72fはダイヤカット面に仕上げられている。
【0099】
上記の形状をなす窓枠82が表示板81の窓枠取付穴81cに嵌入すると、表示面81aと鍔82aの裏面82dとの間に微小隙間83と、傾斜面81fと鍔82aの裏面82dとの間に断面楔状の形状をなした楔状隙間層84Aが形成される。
また、同様に、窓枠取付穴81cの内周面81bと固定足82bの外周面82eとの間に微小隙間83と、内周面81bの傾斜面81iと固定足82bの外周面82eとの間に楔状隙間層84Bが形成される。
ここで、楔状隙間層84Aは窓枠82の鍔82aの縁82hに近い部位に形成するのが良く、また、楔状隙間層84Bは黒点で示した鍔元82jから遠ざかるに従って隙間幅が大きくなる隙間にし、出来るだけ表示板81の下面81eに近づけて形成するようにする。
なお、微小隙間83は前述の第1実施形態で説明した微小隙間と同じ仕様のものである。
【0100】
楔状隙間層84Aは、後述するが、鍔82aの縁82hから外に接着剤85が流れ出すことを防止するために設けるもので、接着剤85の流出防止手段としての働きをなしている。
また、楔状隙間層84Bも窓枠82の固定足82bの先端側や表示板81の裏面81e側に接着剤85が流れ出すことを防止するために設けるもので、接着剤85の流出防止手段としての働きをなしている。
本実施形態においては、楔状隙間層84Aは表示面81a側にあることから第1の流出防止手段の楔状隙間層84Aと呼び、楔状隙間層84Bは裏面81e側の近いところにあることから第2の流出防止手段の楔状隙間層84Bと呼んで区別することにする。
【0101】
接着剤85は前述の第1実施形態の接着剤と同じ仕様のものを用いている。図9において、接着剤85は微小隙間83と楔状隙間層84A、楔状隙間層84Bに流れ込んでおり、楔状隙間層84A、楔状隙間層84Bに流れ込んだ接着剤85は表面張力を起こして層内に止まっている。
楔状隙間層84Aと楔状隙間層84Bは傾斜面によって形成しているので、隙間幅は徐々に大きくなる。そして、接着剤85が表面張力を起こす隙間幅に至ると接着剤85が表面張力を起こして流れはそこで止まる。
【0102】
次に、上記の構造を形成する製造方法について主要工程のみを図10を用いて説明する。図10の(a)は接着剤の塗布工程での塗布状態を示している。接着剤85は表示板81の表示面81a上の傾斜面81fと窓枠取付穴81cの間に印刷方法などの方法で塗布する。
次に、接着剤85を塗布した表示面81a側から、表示板81の窓枠取付穴81cに窓枠82の固定足82bを圧入方法で嵌入する。
【0103】
図10の(b)は接着剤85の表面が窓枠82の鍔82aの裏面82dに接触した状態を示している。この状態にあっては、固定足82bの一部分は窓枠取付穴81cの一部分に嵌合しており、窓枠取付穴81cの内周面81bと固定足82bの外周面82eとの間の一部分に微小隙間83が形成される。
次に、図10の(c)は窓枠82を更に押し込んで接着剤85をかなり潰した状態を示している。鍔82aの裏面82dで押し潰された接着剤85は楔状隙間層84Aに流れ込んで行くと共に、窓枠取付穴81cの内周面81bと固定足82bの外周面82eとの間の微小隙間83に浸透して流れ進んでいく。
次に、図10の(d)は窓枠82を更に押し込んで窓枠82が表示面81aに当接して止まった状態を示している。図10の(c)から(d)に至ると、接着剤85は、窓枠取付穴81cの内周面81bと固定足82bの外周面82eとの係合部においては、微小隙間83に浸透して進み、更に、微小隙間83と接続した楔状隙間層84Bに流れ込んで進む。そして、表面張力が起きる隙間幅に至ったときに表面張力の作用で接着剤85の流れは止まる。
また、表示面81aと鍔82aの裏面82dとの係合部83においては、接着剤85は楔状隙間層84Aに流れ込んで行き、そして、表面張力が起きる隙間幅に至ったときに表面張力の作用で接着剤85の流れは止まる。
【0104】
接着剤85の硬化処理は前述の第1実施形態と同じ工程によって行う。即ち、55°C〜65°Cの低温加熱の下で、1時間の加熱処理を行う。この低温加熱処理によって接着剤85は更に微小隙間83の隅々まで行き届くようになる。そして、硬化するので強い接着強度が得られる。
【0105】
また、楔状隙間層84A、楔状隙間層84Bの層内で表面張力を起こして流れが止まった接着剤85はそのまま硬化する。
以上のような働きによって接着剤85は鍔82aの外に流出することはなくなり、また、固定足82bの先端面や表示板81の裏面81eに流出することもなくなる。
【0106】
以上の構造を取ることにより、接着剤が窓枠82から外に流出することを防止できる。
なお、楔状隙間層84A及び楔状隙間層84Bは目に視認されない部位にあるので、その隙間幅は接着剤85が表面張力を起こす隙間幅であれば良いので、多少隙間幅が大きくても支障はない。また、楔状隙間層84Bは窓枠取付穴81cの内周面を傾斜面にして形成したが、これは部品成形がし易いことによる。しかしながら、窓枠取付穴81cの内周面に限定するものではなく、固定足82bの外周面82e側に傾斜面を設けて楔状隙間層84Bを形成しても良い。
また、表示面81a側で、窓枠取付穴81cに角面取りを設けてコーナ部隙間層を形成し、そのコーナ部隙間層に鍔82aで押し潰された接着剤85を流し込み、コーナ部隙間層に溜まった接着剤85を窓枠取付穴81cと固定足82bとの係合部の隙間層83に浸透させる構造を取っても良い。
【0107】
以上、第1実施形態から第5実施形態まで時計用表示板を取り上げて説明したが、時計用表示板に限るものではなく時計以外の表示板でも適用できるものである。また、植え物として窓枠以外のものでも適用でき、鍔と固定足を有する植え物であればその形状に拘り無く適用できるのである。
また、窓枠を表示板により強固に取付けるために、窓枠の固定足にカシメ(ピンカシメ、楔カシメ、研削カシメなど)を併用しても良いことは云うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本発明の第1実施形態に係る表示板の平面図である。
【図2】図1におけるB−B拡大断面図である。
【図3】図2における表示板と植え物の嵌入後の拡大断面図である。
【図4】図2における固定構造の製造方法を説明する工程図である。
【図5】図5は表示板に傾斜面を設けた場合の表示板と窓枠の固定構造を示す要部拡大断面図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る表示板と窓枠の固定構造を示す要部拡大断面図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係る表示板と窓枠の固定構造を示す要部拡大断面図である。
【図8】本発明の第4実施形態に係る表示板と窓枠の固定構造を示す要部拡大断面図である。
【図9】本発明の第5実施形態に係る表示板と窓枠の固定構造を示す要部拡大断面図である。
【図10】図9における固定構造の製造方法の主要工程を説明する模式的に示した工程図で、図10の(a)は接着剤の塗布工程における塗布後の状態図、図10の(b)は窓枠の嵌入工程における鍔が接着剤に接触した時点の状態の図、図10の(c)は図10の(b)から更に窓枠を押圧した時点の状態図、図10の(d)は窓枠の嵌入が終えた時点の状態図である。
【図11】特許文献1に従来技術として示された窓枠を上板に取付けた状態を示す要部断面図である。
【図12】特許文献2に示された時計用表示板に窓枠を固定した状態を示す要部斜視図である。
【図13】特許文献2に示された時計用窓枠の固定構造を示す部分拡大断面図である。
【符号の説明】
【0109】
31、41、51、61、71、81 表示板
31a、41a、51a、61a、71a、81a 表示面
31b、41b、51b、61b、71b、81b 内周面
31c、41c、51c、61c、71c、81c、 窓枠取付穴
31d 穴
31e、32d、41e、42d、51e、52d、61e、62d、71e、72d、81e、82d 裏面
41f、81f、81i 傾斜面
51f 凹部
31g、51g、61g、61h、71h、32g、52g、62g、72g、82g 角面取り
32、42、52、62、72、82 窓枠
32a、42a、52a、62a、72a、82a 鍔
32b、42b、52b、62b、72b、82b 固定足
32c、42c、52c、62c、72c、82c 穴
32e、52e、62e、72e、82e 外周面
32f、52f、62f、72f、82f 上面
32h、42h、52h、62h、72h、82h 縁
33、43、53、63、73、83 微小隙間
34、44、74A、84A、84B 楔状隙間層
54 凹部隙間層
64、74B コーナ部隙間層
35、45、55、65、75、85 接着剤
【技術分野】
【0001】
本発明は、植え物を有する表示板に関し、特に、固定力が強く、変形が生じない表示板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、表示板に植え物を設けた構造のものとして、時計用の表示板においては、表示板に窓枠なる植え物を設け、窓枠の穴から曜日などが視認できる構造を取っているものがある。例えば、下記の特許文献1には文字板(表示板)に窓枠を圧入し、更に接着剤にて固定した構造が記載されている。特許文献1に示された文字板と窓枠の固定構造は、図11に示されるように、鍔aを設けた窓枠2を文字板1に圧入し、圧入嵌合部を接着剤3で接着固定した構造をなしている。
【0003】
また、接着剤を使った他の固定構造としては、例えば、下記の特許文献2に示された固定構造などがある。特許文献2に示された固定構造は、図12、図13に示されるように、固定足11bの下面に突出した折返し部11cを設けた金属からなる窓枠11を樹脂からなる上板12の貫通穴(窓枠取付穴)12aに上面側から挿入し、上板12の裏面側で折返し部11cが上板12の裏面に接するように折り曲げ、折り曲げた折返し部11c及び上板12の裏面に接着剤15を介して透光部材からなる下板13を貼付けた構造を取っているものである。
【0004】
【特許文献1】実開昭52−81163号公報
【特許文献2】特開平11−183648号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記で述べた固定構造は次のような問題を有する。最初に、特許文献1に示した固定構造は、用いられる接着剤の粘度や量などによって接着品質は変わってくる。例えば、粘度が低く量が多いと、鍔aの裏面と文字板1の上面の圧接面に接着剤3が毛細管現象などで浸透していき、矢印Aで示したように鍔aの外側に接着剤3がはみ出してきて文字板1の表示面を汚し外観品質を損なうと云う問題を起こす。この場合、接着剤のはみ出し部分の除去は困難で、文字板は不良となり製品にならない。また、接着剤の量が少なかったりすると嵌合面や圧接面への付着量が少なくなり、十分な接着強度が得られないと云う問題を起こす。
【0006】
次に、特許文献2に示された固定構造は、窓枠11の窓から下板13を通してその下方に設けられる曜日などの表示を見ることになる。このため、下板13を介するために光の透過率も低下して視認性も低下する。また、折返し部11cの折り曲げた部分では下板13に凹凸が生じ易くなり、この凹凸によって反射光が乱れ、表示品質が更に悪くなると云う問題も生じる。また、カシメ工程や下板13と云う使用部材も増えるので製作コストもアップする。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたもので、窓枠などの植え物と表示板とに強固な固定力が得られると共に、接着剤が窓枠からはみ出さない固定構造を見出すこと、また、製造コストが安い製造方法を見出すことを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するための手段として、本発明の特徴は、鍔と外周角面取りを設けた固定足を有する植え物を表示板の植え物取付穴に固定する表示板において、
前記表示板の表示面と前記植え物の前記鍔の裏面との係合部に接着剤の流出を防止する第1の流出防止手段、又は前記表示板の前記植え物取付穴の内周面と前記植え物の前記固定足の外周面の係合部に接着剤の流出を防止する第2の流出防止手段の少なくともいずれか1つの流出防止手段を設けたことを特徴とする。
【0009】
本発明においては、表示板と植え物を嵌入して一次固定を行い、その後に、接着剤によって二次固定を行う固定構造を取る。一次固定の表示板と植え物の嵌入は表示板に反りなどの変形が生じないように好適な嵌合代を設定して行う。
また、嵌入した植え物の固定足と表示板の植え物取付穴との嵌合した係合部は、植え物取付穴の内周面の面粗さと固定足の外周面の面粗さなどにより数μmの極めて微小な微小隙間が発生する。また、表示板の表示面と植え物の鍔の裏面との圧接面の係合部も同様に微小隙間が発生する。
そして、表示板の裏面側にある固定足の外周角面取り周辺部に接着剤を塗布すると、毛細管現象の作用でこの係合部の微小隙間に接着剤が浸透して流れて行き、最後に植え物の鍔の縁の方に到達する。接着剤の量が少ないと係合部の微小隙間の隅々まで行き届かず、また、接着剤の量が多いと植え物の鍔の縁から外に、即ち、表示板の表示面上に流れ出してしまう。
本発明においては、表示板の表示面と植え物の鍔の裏面との係合部に接着剤の流出を防止する第1の流出防止手段を設けて、接着剤が鍔の縁から表示面への流出を防止する。また、場合によって、接着剤の塗布する部位が異なるときには、第1の流出防止手段と第2の流出防止手段を設けて窓枠から外に流出するのを防止する。
【0010】
また、本発明の特徴は、前記第1の流出防止手段は、前記植え物と前記表示板の嵌入後に前記植え物取付穴の回り一周に渡って形成される断面楔状の形状をなした楔状隙間層、又は凹部形状をなした凹部隙間層、又はコーナ部隙間層の少なくとも一つからなることを特徴とする。
【0011】
本発明においては、断面楔状の形状をなした楔状隙間層とは、断面の形状が楔型形状をした隙間を表しており、楔状隙間層と表現する。この楔状隙間層は隙間が傾斜を持った隙間層で、大きい隙間幅は徐々に隙間幅が小さくなる。逆の言い方をすると、小さい隙間幅は徐々に隙間幅が大きくなる。そして、楔状隙間層を植え物取付穴から遠ざかるに従って隙間幅を大きくすることによって、係合部の微小隙間と繋がった隙間は徐々に隙間幅が大きくなっていく。
楔状隙間層においては、微小隙間の係合部を浸透して流れてきた接着剤は楔状隙間層に流れ、毛細管現象によって隙間幅の大きい方へと進んでいく。そして、ある隙間幅に至ったときに表面張力が起き、そこで接着剤は表面張力の作用を受けて、表面が丸味を帯びて流れは止まる。
また、凹部隙間層もある隙間幅をなしたときに接着剤に表面張力が起き、接着剤の表面が丸味を帯びで接着剤の流れがそこで止まる。
そこで、楔状隙間層を植え物取付穴から遠ざかるに従って隙間幅が大きくなるようにし、鍔の縁の部位で表面張力が起きる隙間幅にすると鍔の縁の部位で接着剤の流れが止まる。
また、凹部隙間層を植え物の鍔の縁に近い部位に設けることによって鍔の縁の部位で接着剤の流れが止まる。
【0012】
ここで、第1の流出防止手段としての楔状隙間層は、隙間幅が一番大きい部位における隙間幅を20〜50μmに規制する。楔状隙間層は表面張力が起きて接着剤の流れが止まる大きさであると共に、外観的に目に見えない隙間であることが求められる。隙間幅を20μm以上にすることで接着剤の流れが止まり、50μm以下にすることで隙間が視認できないようになる。
【0013】
また、楔状隙間層や凹部隙間層は、係合部の微小隙間層の隅々まで接着剤を浸透させて余った接着剤を溜める溜まり場としての働きもなす。
コーナ部隙間層は接着剤の溜まり場としての働きをなす。溜まり場を設けることで溜まり場に残り余った接着剤を溜め、鍔の縁にまで流れる接着剤を少なくし、縁から接着剤が流れ出すのを防止する。従って、コーナ部隙間層は流出防止手段としての役割を果たしている。
【0014】
つぎに、楔状隙間層は、植え物の鍔の裏面又は表示板の表示面の少なくともいずれか一方の面を傾斜面にすることによって形成する。また、凹部隙間層は、植え物の鍔の裏面又は表示板の表示面の少なくともいずれか一方の面に凹部を設けることによって形成する。また、コーナ部隙間層は、表示板の植え物取付穴の角面取りによって形成する。
【0015】
上記の傾斜面、凹部、角面取りの形状は非常にシンプルな形状である。そのため、表示板、植え物を金属で形成した場合は、何れもプレス加工方法で形成することができるので、量産性があって製作コストは安くできる。また、表示板をプラスチック材料で形成した場合は、射出成形方法で金型からの転写方法で形成することができるので製作コストは安くできる。
【0016】
また、コーナ部隙間層を植え物取付穴の角面取りによって形成するようにすれば、コーナ部隙間層が形成できると共に、植え物を嵌入する際の圧入作業がやり易くなる効果も生む。
【0017】
また、本発明の特徴は、前記表示板の裏面側で前記植え物取付穴の回り一周に渡って角面取りを設けたことを特徴とする。
【0018】
表示板の裏面側で、植え物取付穴の回り一周に渡って角面取りを設けることで植え物の固定足の角面取りと対向し、係合部を挟んで谷状の凹部が形成される。従って、この凹部の回りに塗布した接着剤の塗布面は安定し、塗布面から接着剤が流れ出す危険も減少する。また、係合部の微小隙間に接着剤が浸透し易くなると云う効果も生む。
【0019】
次に、本発明の特徴は、前記第2の流出防止手段は、前記植え物と前記表示板の嵌入後に前記植え物の固定足の外周面一周に渡って形成される断面楔状の形状をなした楔状隙間層であることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の特徴は、前記第2の流出防止手段の前記楔状隙間層は、前記植え物の鍔元から遠ざかるに従って隙間幅が大きくなることを特徴とする。
【0021】
第2の流出防止手段は接着剤の塗布後に植え物を表示板に嵌入する工程を設定した場合に設ける。接着剤を表示面上の植え物取付穴の回りに塗布し、その後に植え物を表示板に嵌入すると、植え物の鍔で押し潰された接着剤は固定足側においては第2の流出防止手段である楔状隙間層に浸透して流れる。そして、楔状隙間層を鍔元から遠ざかるに従って隙間幅を大きくすると、隙間幅の大きくなる方向へと流れていき、そして、表面張力が起きる隙間幅に至ると接着剤は丸味を帯びて流れは止まる。従って、植え物取付穴の内周面と固定足の外周面との間に形成された楔状隙間層に浸透して流れた接着剤は楔状隙間層内で流れが止まり、固定足の先端面や表示板の裏面などに流れ出ない。
【0022】
次に、本発明の特徴は、鍔と外周角面取りを設けた固定足を有する植え物を表示板の植え物取付穴に固定する表示板の製造方法において、
前記植え物の前記鍔の裏面又は前記表示板の前記植え物取付穴周辺の表示面の少なくともいずれか一方の面に一周に渡る傾斜面を有する部品を形成する工程と、
前記表示板の植え物取付穴に前記植え物の固定足を嵌入する工程と、
前記固定足を嵌入した前記表示板の裏面側で前記固定足の前記外周角面取り周辺部に接着剤を塗布する工程と、
前記塗布した接着剤を前記表示板と前記植え物の係合部に浸透させて硬化させる工程と、
を有することを特徴とする。
【0023】
植え物と表示板の部品を形成するに当たり、植え物は鍔の裏面または表示板は表示面の少なくともいずれか一方に傾斜面を形成する。植え物は、金属の場合は、コイニング加工やプレス加工などで形成することができる。金型にテーパを付与することで容易に形成でき、量産も可能になって製作コストは安くできる。また、表示板についても同様で、金属で形成する場合はプレス加工で容易に形成できる。
また、表示板をプラスチック材で形成する場合は射出成形加工で容易に形成することができる。いずれも金型にテーパを付与することで製作できるので製作コストを安くすることができる。
この傾斜面を形成することで、次の嵌入工程を経ることによって前述した楔状隙間層が形成される。
【0024】
次に、表示板の植え物取付穴に植え物の固定足を嵌入する工程では圧入装置を使って圧入方法で嵌入する。ここでは、嵌入によって表示板に反りなどの変形が起きないように適正な嵌合代を設定し、部品段階で植え物取付穴の内径寸法と固定足の外形寸法の寸法決めをしておく。
表示板の植え物取付穴と植え物の固定足を嵌入によって固定した場合でも、植え物取付穴の内周面の面粗さ、固定足の外周面の面粗さによって嵌合した係合面は数μmの非常に微小な隙間が不規則的に現れる。つまり、微小隙間が現れる。また、表示板の表示面と鍔の下面との圧接した係合面面にも同様に微小隙間が現れる。従って、表示板と植え物との係合部はこれらの微小隙間と傾斜面を設けたことによる楔状隙間層が形成されることになる。
次に、接着剤の塗布はスクリーン印刷などの印刷方法で表示面の裏面側に塗布する。表示板の裏面側で植え物取付穴に角面取りを設けてあると、植え物取付穴と固定足の両方の角面取りが対向して向き合うことになり係合部を挟んで谷状の凹部が形成される。そして、この凹部回りに接着剤を印刷などの方法で塗布するので、接着剤の落ち着きは良くなり、角面取り部分に接着剤が多く溜まるようになる。
従って、接着剤が塗布部分から流れ出す危険性はなくなると共に、係合部を挟んで凹部に塗布した接着剤は係合部の微小隙間に毛細管現象によって浸透し易くなり、その浸透性も良くなる。
【0025】
そして、表示板に設ける傾斜面を植え物取付穴から遠ざかるに従って表示板の厚みが小さくなるような傾斜面に、或いは、植え物の鍔の裏面に設ける傾斜面を植え物の固定足から遠ざかるに従って鍔の厚みが小さくなるような傾斜面にすると、微小隙間に浸透して流れた接着剤は傾斜面によって形成された楔状隙間層に流れ込んでいく。
そして、楔状隙間層の一番大きい隙間幅を表面張力が起きる隙間幅にすることにより、楔状隙間層の中で表面張力が起きて接着剤の表面が丸味を帯びて流れが止まる。つまり、
植え物の鍔の縁の近傍で表面張力が起きるように楔状隙間層の隙間幅を設定すると、接着剤は表面張力を起こして植え物の鍔の縁で止まるようになる。
従って、鍔の縁から外に接着剤が流出することが防止できると共に、接着剤が微小隙間の隅々に浸透するようになる。また、楔状隙間層に充填されるので接着強度を高める効果を得る。
【0026】
次に、塗布した接着剤を前記表示板と前記植え物の係合部に浸透させて硬化させるにあたり、加熱装置を用いて低温加熱する。低温加熱することで接着剤の粘性は一次的に低下して流動性はより良くなる。このため、係合部への毛細管現象での浸透スピードも速められ、微小隙間の隅々まで浸透すると共に楔状隙間層に流れ込むスピードも速められる。そして、最後に硬化が行われる。
また、加熱は低温で行うため、表示板や植え物に生じる歪みなども小さく、表示板の反りなどの変形が生じない。
【0027】
以上述べた如く、製造方法も簡単であり、特別に高価な装置は使わないので、安いコストで製作することができる。また、楔状隙間層で接着剤の流れが止まり、植え物の外に接着剤が流出しない。また、微小隙間の隅々まで接着剤が浸透し強固な接着強度が得られる。
【0028】
また、本発明の特徴は、鍔と外周角面取りを設けた固定足を有する植え物を表示板の植え物取付穴に固定する表示板の製造方法において、
前記植え物の鍔の裏面又は前記表示板の前記植え物取付穴周辺の表示面の少なくともいずれか一方の面に一周に渡る凹部からなる溝を有する部品を形成する工程と、
前記表示板の植え物取付穴に前記植え物の固定足を嵌入する工程と、
前記固定足を圧入した前記表示板の裏面側で前記固定足の前記外周角面取り周辺部に接着剤を塗布する工程と、
前記塗布した接着剤を前記表示板と前記植え物の係合部に浸透させて硬化させる工程と、
を有することを特徴とする。
【0029】
ここでの植え物と表示板の部品は、植え物の鍔の裏面又は表示板の表示面の少なくともいずれか一方の面に一周に渡る凹部からなる溝を有する部品を形成する。凹部の形成は、表示板や植え物が金属の場合、型打型を用いてプレス加工で形成することができ、表示板がプラスチック材の場合、金型を用いての射出成形方法で金型からの転写で形成することができる。いずれも形成方法が容易である。
この凹部を形成することで、次の嵌入工程を経ることによって前述した凹部隙間層が形成される。
【0030】
また、凹部からなる溝を植え物の鍔の縁に近い部位、或いは、その部位に対応する表示板に設けることによって、形成される凹部隙間層が鍔の縁の近い部位に形成できる。そして、前述の固定構造の説明で述べたように、その凹部隙間層の隙間幅を接着剤に表面張力が起きて流れが止まるような隙間幅にすることによって接着剤の流れを止めることができる。
なお、嵌入工程、接着剤の塗布工程、接着剤の浸透と硬化工程は前述に記載の工程と同じであるのでその説明は省略する。
【0031】
また、本発明の特徴は、鍔と外周角面取りを設けた固定足を有する植え物を表示板の植え物取付穴に固定する表示板の製造方法において、
前記植え物部品と、前記植え物取付穴の表示面側に角面取りを有する表示板部品を形成する工程と、
前記表示板の植え物取付穴に前記植え物の固定足を嵌入する工程と、
前記固定足を圧入した前記表示板の裏面側で前記固定足の前記外周角面取り周辺部に接着剤を塗布する工程と、
前記塗布した接着剤を前記表示板と前記植え物の係合部に浸透させて硬化させる工程と、
を有することを特徴とする。
【0032】
ここでは、表示面側の植え物取付穴に角面取りを有する表示板部品を形成する。表示板が金属の場合は型打型を用いたプレス加工で形成でき、プラスチックの場合は金型を用いて射出成形加工で形成することができる。いずれも形成方法が容易である。
また、植え物取付穴に角面取りを有すると次の嵌入工程での圧入作業もやり易い。
植え物取付穴に角面取りを有する表示板部品を用いることで、嵌入工程後にコーナ部隙間層が形成される。このコーナ部隙間層の作用・効果は前述の固定構造の所で説明したのでここでの説明は省略する。
なお、次の嵌入工程、接着剤の塗布工程、接着剤の浸透と硬化工程は前述に記載の工程と同じであるのでその説明は省略する。
【0033】
前述したように、本発明の表示板にあっては、接着剤が植え物の鍔から外に流出しないので表示板が接着剤で汚れない。また、接着強度の強い表示板が得られる。また、本発明の製造方法を取った表示板にあっては、安いコストで製作できる。
【発明の効果】
【0034】
以上、発明の項目毎に効果を詳細に説明したが、纏めると、表示板と窓枠の固定構造に強固な固定強度が得られ、また、接着剤のはみ出しなども発生せずに良好な外観品質が得られる。また、製造方法も簡単であり、一般的な加工装置で製作できるので製作コストも安くできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明を実施するための最良の形態(以降、実施形態と云う)について図を用いながら説明する。なお、実施形態においては、表示板として時計用の表示板を取り上げ、植え物として窓枠を取り上げて説明するが、時計以外の他の類似の表示板、例えば車載用のメータ表示板、電子機器装置(携帯用含む)などの表示板にも共通して適用できるものである。
【0036】
(第1実施形態)
最初に、本発明の第1実施形態に係る表示板、及び表示板の窓枠との固定構造を図1〜図4を用いて説明する。なお、図1は本発明の第1実施形態に係る表示板の平面図を示している。図2は図1におけるB−B拡大断面図、図3は図2における表示板と植え物の嵌入後の拡大断面図を示している。また、図4は図2における構造の製造方法を説明する工程図を示している。
【0037】
第1実施形態における表示板はソーラセル用の表示板で、表示板は透過性を要することから、材料は透過性を有するポリカーボネイト樹脂のプラスチック板から形成している。なお、材料はポリカーボネイト樹脂に限るものではなく、耐熱性、耐湿性、耐衝撃性、耐光性などに優れたアクリル樹脂やポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂なども使用可能である。また、表示板は0.3〜1.0mmの厚みからなり、金型を用いて射出成形方法によって形成している。
また、表示板に取付ける植え物は窓枠を用いている。この窓枠は穴を有して、穴から下方に配設する曜日板の曜日表示が視認できるようになっている。以降、植え物を窓枠、植え物取付穴を窓枠取付穴と表現して説明することにする。
【0038】
図1において、表示板31は中心部に長短針の指針取付け用の穴31dを有している。また、所要の位置に窓枠32を取付ける窓枠取付穴31cを有し、その穴に窓枠32を取付けている。また、時字などの指標39を設けている。
また、図2に示すように、表示板31の上面側(視認側)は表示面31aをなしており、裏面31e側では窓枠取付穴31cの内周面31bには角面取り31gを施している。
【0039】
窓枠32は黄銅材などの金属からなり、穴32cを有している。この穴32cは覗き窓の役目をなしており、下方に配設する曜日板の曜日表示が視認できるようになっている。
また、窓枠32は鍔32aと固定足32bを有している。また、鍔32aの裏面32dは一周に渡って傾斜面を設けてあり、固定足32bの外周面32eには角面取り32gを施してある。
この窓枠32は金型を用いてコイニング加工とプレス加工などによってブランクを形成し、その後、ダイヤカットなどで上面32fの表面仕上げを行い、最後にメッキなどの表面処理を行って完成する。
【0040】
次に、この窓枠32と表示板31の固定構造を図2、図3を用いて説明する。なお、図2、図3は分かり易くするために少し誇張して描いている。図2において、表示板31の窓枠取付穴31cに窓枠32の固定足32bを嵌入して表示板31と窓枠32を一次固定し、更に、接着剤35を介して表示板31と窓枠32を二次固定する構造をなしている。
なお、ここでの嵌入とは圧入による嵌合状態を表している。また、嵌合代は表示板31に反りなどの変形が生じない嵌合代を設定している。
【0041】
図3において、33は微小隙間を表している。ここでの微小隙間33とは、窓枠取付穴31cと固定足32bは圧入によって嵌合固定されるが、窓枠取付穴31cの内周面31bには面粗さがあり、また、固定足32bの外周面32eにも面粗さがある。このため、嵌合面には面粗さによる数μmの微小で不規則な隙間が発生する。この隙間を微小隙間33と表している。また、同様に、表示面31aと鍔32aの裏面32dの圧接面にも、面粗さによる微小隙間33が発生する。
なお、微小隙間を有している部分を、以降、係合部と称して説明する。
【0042】
また、34は楔状隙間層である。この楔状隙間層34は表示面31aと鍔32aの裏面32dとの係合部に設けられ、窓枠32の鍔32aの裏面32dを傾斜面にしたことにより楔状隙間層34が現れる。この楔状隙間層34は断面が楔状の形状をなしているので楔状隙間層34と表している。
楔状隙間層34は微小隙間33と接続し、窓枠取付穴31cから遠ざかるに従って隙間幅が大きくなり、鍔32aの縁32hに至って隙間幅wは最大になる。また、この楔状隙間層34は鍔32aの裏面32d側において一周に渡って設けられる。
【0043】
次に、係合部となるところの微小隙間33と楔状隙間層34には接着剤35が埋められており、表示板31と窓枠32は接着剤35によって接着固定される。
【0044】
接着剤35は2液性のエポキシ系樹脂接着剤を用いている。この接着剤35は精密部品には好適に利用できるもので、粘性が低く、低温で硬化して強い接合強度が得られる。後述することではあるが、60°C前後の低温加熱によって硬化するので、部品に生じる歪みなども小さく、反りなどの変形も起こり難い。
【0045】
この接着剤35は表示板31の裏面31e側で、表示板31と固定足32bの係合部の回り、つまり、窓枠取付穴31cの角面取り31gと固定足32bの角面取り32gの回りに塗布する。また、接着剤35は微小隙間33の隅々まで浸透させるために塗布量を少し多目に塗布している。そして、この塗布した接着剤35が微小隙間33に毛細管現象によって浸透していき、最後に楔状隙間層34に浸透して流し込んで楔状隙間層34に接着剤が充填される。
【0046】
つまり、塗布した接着剤35は毛細管現象によって係合部の微小隙間33に浸透し、やがて楔状隙間層34に進む。楔状隙間層34は微小隙間33と接続し、窓枠取付穴31cから遠ざかるにつれて隙間幅が徐々に大きくなっているので、楔状隙間層34内に進入した接着剤35は楔状隙間層34内での毛細管現象が働く隙間幅までは進入する。
しかし、隙間幅が大きくなって表面張力が起きると接着剤は表面丸味を帯びて接着剤の流れは止まる。
【0047】
本実施形態においては、図3に示すように、楔状隙間層34の最大隙間は丁度鍔32aの縁32hの部位で最大となり、隙間幅wが最大隙間になっている。
この最大の隙間幅wの部位で表面張力が生じて接着剤35の流れが止まれば、接着剤35は鍔32aの縁32hから外に流出することは起きず、接着剤35の流出を防止することができる。つまり、図2の矢印Aで示したように、鍔32aの縁32hの部位で接着剤が止まる。
本実施形態においては、この最大の隙間幅wを20〜50μmに規制する。これは、隙間が20μm以上になると表面張力が働いて接着剤の流れが止まり、20μmより小さいと表面張力が働かずに毛細管現象によって縁32hの外に接着剤が流出することによる。また、50μmより大きくなってくると目で隙間が視認できるようになり外観的品質が悪化する。
また、楔状隙間層34で接着剤35の流れが止まることによって微小隙間33の隅々まで接着剤35が更に浸透する効果も現れる。
以上述べたように、楔状隙間層34は接着剤の流出防止手段としての役割を果たしている。本発明においては、楔状隙間層34は表示面31a側に設けた隙間層であるので第1の流出防止手段の楔状隙間層と呼ぶ。
【0048】
また、楔状隙間層34は接着剤35の溜まり場としての働きもなしている。接着剤35の塗布量は微小隙間33に流入する量や楔状隙間層34に流入する量などを加味して設定する。
【0049】
以上の固定構造を取ることにより、接着剤35は微小隙間33の隅々まで行き届き、また、鍔32aの縁32hの部位で止まる。これにより、接着剤35が鍔32aの縁32hから外へ流出するのを防止することができ、接着面積を広く取ることで接着強度の強い固定構造が得られる。
従って、上記の固定構造を有する表示板においては、外観品質面では窓枠のない領域の表示面上に接着剤の付着がなくなり、また、機能品質面では表示板の変形が発生せず、衝撃に対しても窓枠が表示板から容易に外れることのない強い固定構造が得られる。
【0050】
(製造方法)次に、上記の固定構造をなす表示板の製造方法を図4を用いて説明する。
最初に、表示板31の部品、窓枠32の部品を形成する。本実施形態においては、表示板31はプラスチック材から形成しているので金型を用いて所要の形状に射出成形方法で形成する。ここでの所要の形状とは、図1、図2に示す形状で、中心部の穴31dと窓枠取付穴31cを有し、窓枠取付穴31cに角面取り31gを設けた形状である。また、場合によっては表示面31aなどに印刷などの表面装飾を施したものである。
窓枠32の部品形成は黄銅板を用い、図2に示す形状で鍔32a、鍔32aの裏面32dの傾斜面、固定足32b、穴32cなどをコイニング加工、プレス加工などでブランクを形成し、その後に、ダイヤカット加工で上面32fの仕上げ加工を行い、メッキなどの表面処理を施して完成にする。
鍔32aの裏面32dに形成する傾斜面は固定足32bから遠ざかるに従って鍔32aの厚みが小さくなる傾斜面に形成する。
【0051】
次に、図4の(a)に示すように、窓枠32の固定足32bを表示板31の窓枠取付穴31cに嵌入する。嵌入は加圧装置(圧入装置)などを用いて圧入方法で行う。
なお、嵌入によって表示板が反りなどの変形が起きないように、予め変形が起きない好適な嵌合代を設定し、その嵌合代を読み込んで部品寸法を決める。
この嵌入によって表示板31と窓枠32の一次固定が行われる。そして、この時点で前述した微小隙間33及び楔状隙間層34が形成される。
【0052】
次に、図4の(b)に示すように、表示板31及び窓枠32を裏返しにし、つまり、表示板31の裏面31eと窓枠32の固定足32bを表側に向け、スクリーン印刷装置などを用いて、表示板31の角面取り31gと固定足32bの角面取り32gに囲まれた回りにスクリーン印刷方法などで接着剤35を塗布する。
係合部33を挟んで両方に角面取りされた谷状の凹部回りに接着剤35を塗布することで接着剤35の塗布面の落ち着きが良くなり、周辺部に流れ出す危険が少なくなる。また、微小隙間33への接着剤35の浸透性も向上する。
なお、接着剤35の塗布方法はスクリーン印刷法に限るものではなく、例えば、ポッティング方法などであっても構わない。
【0053】
次に、図示はしていないが、加熱装置などを用いて、55°C〜65°Cの範囲の温度で加熱処理を行う。加熱温度は55°C〜65°Cの範囲が好ましく、この範囲の温度より低いと接着剤の硬化が十分に行われなく、接着強度上の問題が発生する。また、この範囲の温度より高いと気泡が発生して接着力低下などの機能上の問題生じる。
この加熱処理を施すことで、接着剤の粘性が一次的に低下してより流動性が良くなり、毛細管現象で微小隙間33の隅々まで早く浸透して行く。また、楔状隙間層34に接着剤35が流れ込んでいき、楔状隙間層34にも接着剤35が溜まる。楔状隙間層34の最大隙間幅を接着剤に表面張力が起きて流れが止まる隙間幅に設定しているので、接着剤35に表面張力が起きる隙間の部位に至ると表面張力を起こして接着剤35の流れは止まる。つまり、楔状隙間層34の鍔32aの縁34h近傍の部位が表面張力を起こす隙間幅になっているので、鍔32aの縁34hの近傍で接着剤35の流れが止まり、接着剤35が微小隙間33と楔状隙間層34の中に充填して硬化する。
また、加熱温度が低いことにより、表示板31と窓枠32に発生する歪みも小さく、表示板に反りなどの変形が発生しない。
【0054】
このような製造方法を取ることによって図4の(c)に示した固定構造が得られる。
表示板31と窓枠32の部品形状がシンプルな形状であり、その形成装置も従来の装置で形成することができる。また、表示板31と窓枠32の嵌入する工程、接着剤の塗布工程、加熱工程などにおいても一般に用いられている装置で十分対応できるので設備コストも安くできる。また、量産性も有り、製作コストも安くできる。
また、接着剤35が表示板31と窓枠32との係合部の隅々まで行き届いて強い接着強度が得られると共に、接着剤35が窓枠32の鍔32aの外へ流出するのが防止できる。
従って、上記の製造方法で形成した表示板は、表示板の表示面上への接着剤の流出がなくなり、表示板の変形が発生せずに窓枠が表示板から容易に外れることのない強い固定強度が得られる。また、製作コスト面では金型によって全て形状が決められるので追加加工は必要とせず、むしろ、歩留まり向上によるコストダウン効果ももたらされる。
【0055】
なお、第1実施形態においては、表示板をプラスチックで形成し、窓枠を金属で形成し、プラスチックと金属の組合せでの固定構造をなしているが、本発明の表示板の固定構造はこの組合せの構造に限るものではなく、表示板がプラスチックで窓枠がプラスチックの組合せ、表示板が金属で窓枠が金属の組合せ、表示板が金属で窓枠がプラスチックの組合せなどの組合せでも適用できるものである。
その場合には、嵌入の嵌合代を組合せの材料に合わせて適切な嵌合代を設定するようにすれば、表示板の反りなどの変形は防止するこができる。
また、第1実施形態においては、表示板31の下面31eで窓枠取付穴31cに角面取り31gを施したが、塗布した接着剤の落ち着きに多少の不安定さは現れるが角面取りの無い形状でも適用できるものである。
【0056】
(応用例)次に、第1実施形態における固定構造の応用例を図5を用いて説明する。なお、図5は表示板に傾斜面を設けた場合の表示板と窓枠の固定構造を示す要部拡大断面図を示している。この応用例の固定構造は表示板に傾斜面を設けて楔状隙間層を形成した構造のものである。図5において、表示板41の表示面41aに傾斜面41fを形成し、窓枠42の鍔42aの裏面42dは平坦面に形成し、傾斜面41fと裏面42dとの間に楔状隙間層44を形成し、係合部なる微小隙間43と楔状隙間層44に接着剤45を浸透させて流し込んだ構造をなす。
【0057】
傾斜面41fは窓枠取付穴41cから遠ざかるに従って表示板41の厚みが徐々に小さくなるように形成している。そして、窓枠42の鍔42aの縁42hの部位に対応する位置にまで傾斜面を付けている。
また、この傾斜面41fによって形成された楔状隙間層44の一番大きいところの隙間幅は第1実施形態における隙間幅と同じ、20〜50μmの隙間にしている。従って、楔状隙間層44の隙間幅の大きい部位、即ち、窓枠42の鍔42aの縁42hの近くの部位で接着剤45が表面張力を起こして流れが止まる。
【0058】
以上の構造をなした固定構造も前述の第1実施形態の構造と同じ効果を得る。また、表示板41に形成する傾斜面41fは表示板41がプラスチック材であれば射出成形方法で容易に形成でき、表示板41が金属板であればプレス加工方法で容易に形成できる。
なお、図5に示した構造は表示板41の表示面41aにのみ傾斜面41fを設けた構造であるが、表示面41aと鍔42aの裏面42dの両方の面にそれぞれ傾斜面を設けて楔状隙間層を形成したものであっても何ら支障はない。
【0059】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る表示板の窓枠との固定構造について図6を用いて説明する。なお、図6は本発明の第2実施形態に係る表示板と窓枠の固定構造を示す要部拡大断面図を示している。
【0060】
第2実施形態の表示板51は、図6に示すように、窓枠取付穴51cを有し、この窓枠取付穴51cの周辺の表示面51aに一周に渡って溝なる凹部51fを設けている。また、表示板51の裏面51eにおいて窓枠取付穴51cの内周面51bには角面取り51gを形成している。なお、表示板51は透過性を有するポリカーボネイト樹脂からなるプラスチック板からなっている。
【0061】
窓枠52は黄銅材などの金属からなり、穴52c、鍔52a、固定足52bを有した形状をなしている。また、固定足52bの外周面52eには角面取り52gを形成している。メッキなどの表面処理を施し、上面52fはダイヤカット面に仕上げている。
【0062】
表示板51に窓枠52を嵌入することで一次固定が行われる。嵌入後は、表示板51と窓枠52の係合部には前述の第1実施形態で説明した微小隙間53と表示板51に設けた凹部51fによって形成された凹部隙間層54が形成される。
凹部隙間層54は接着剤55の流出防止手段として設けるもので、凹部隙間層54の隙間幅を接着剤55が表面張力を起こして接着剤55の流れが止まる隙間幅の大きさに形成し、この凹部隙間層54で接着剤55の流れを止めている。この凹部隙間層54は表示面51a側に設けた隙間層であるので第1の流出防止手段の凹部隙間層と呼ぶ。
【0063】
この凹部隙間層54は接着剤55の表面張力が起きる隙間幅にし、出来るだけ窓枠52の鍔52aの縁52hの近傍に設けるのが好ましい。
第2実施形態においては、凹部隙間層54の一番大きい部位における隙間幅を20μm以上に設定している。こうすることで凹部隙間層54の中で表面張力が起きて接着剤55の流れは止まる。また、凹部隙間層54は鍔52aの縁52hの内側で縁52hの近傍の部位に設けている。このようにすると、凹部隙間層54が見えず、接着剤55が縁52hのすぐ近くまで充填されて接着強度も強くなる。また、鍔52aの縁52hから外に接着剤55が流出することが起きない。
【0064】
接着剤55の塗布は前述の第1実施形態での製造方法で説明した方法と同じ方法で行う。つまり、表示板51の裏面51eで微小隙間53を挟んで対向した角面取り51g、52gの谷状の凹部の回りに接着剤55を塗布する。
そして、低温加熱などを施す中で毛細管現象を利用して微小隙間53、凹部隙間層54に接着剤55を浸透させて充填する。
凹部隙間層54の層内においては、表面張力が起きる隙間幅の部位で表面張力が起きて接着剤55の流れは止まる。また、凹部隙間層54で接着剤55の流れが止まることで微小隙間53の隅々まで更に接着剤55が浸透することになる。
【0065】
接着剤55は微小隙間53や凹部隙間層54に十分充填されるようにそれらの容積なども加味して塗布量を設定するようにする。
【0066】
凹部隙間層54は窓枠取付穴51cの回り一周に渡って設けている。こうすることで、
窓枠52の回り一周で接着剤55の流出は生じない。
この凹部隙間層54は断面形状が四角形状、V字形状、U字形状など様々な形状を取ることは可能であるが、製作の容易性などを考えると四角形状、V字形状、U字形状などが好ましい。
また、凹部隙間層54は、本実施形態においては、表示板51に凹部51fを設けることで形成している。表示板51がプラスチック板の場合は射出成形方法で金型からの転写で形成でき、金属板の場合はプレス加工などで容易に形成できる。
また、この凹部隙間層54は窓枠52の鍔52aの裏面52dに凹部を設けることでも形成することができる。金属からなる窓枠52は型打型を用いたプレス加工で容易に形成できる。
【0067】
また、この凹部隙間層54は接着剤の溜まり場としての働きもなす。係合部の微小隙間隅々まで接着剤が浸透するように接着剤は多少多目に塗布するが、その多目の余った分の接着剤を凹部隙間層54に溜めて表面張力を起こさせている。
【0068】
なお、第2実施形態における表示板の製造方法は前述の第1実施形態での製造方法と同じであるので、ここでの説明は省略する。また、使用する接着剤55も第1実施形態での接着剤と同じ仕様のものを用いている。
【0069】
以上のような構造をなすことにより、前述の第1実施形態での効果と同じ効果を得ることができる。つまり、鍔52aの縁52dから接着剤55の流出(はみ出し)が抑えられ、表示面51aの接着剤汚れを防止することができる。また、表示板51と窓枠52との隙間の隅々まで毛細管現象で接着剤が行き届くので、接着固定力は強くなり、固定強度の強い固定構造が得られる。
また、嵌入による一次固定と接着剤による二次固定方法を取っているが、反りの発生しない嵌合代を設定して嵌入を図り、接着剤の硬化は低温加熱にて行っているので歪みの発生も小さいので、表示板の反りなどの変形も殆ど起きない。
また、製作も容易であることから製作コストも安くできる。
【0070】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る表示板の窓枠との固定構造について図7を用いて説明する。なお、図7は本発明の第3実施形態に係る表示板と窓枠の固定構造を示す要部拡大断面図を示している。
【0071】
第3実施形態の表示板61は透過性を有するポリカーボネイト樹脂からなるプラスチック板からなっていて、図7に示すように、窓枠取付穴61cを有し、表示面61a側で窓枠取付穴61cの内周面61bに角面取り61hを一周に渡って形成している。また、表示板61の裏面61eにおいて窓枠取付穴61cの内周面61bには角面取り61gを形成している。
第3実施形態の表示板61の形状は第2実施形態の表示板の形状と比較すると、第3実施形態の表示板61は、表示面61aに凹部がなくて、窓枠取付穴61cに角面取り61hが有るところのみが異なる。
【0072】
窓枠62は黄銅材などの金属からなり、穴62c、鍔62a、固定足62bを有した形状をなしている。また、固定足62bの外周面62eには角面取り62gを形成している。また、メッキなどの表面処理を施してあり、上面62fはダイヤカット面に仕上げている。
第3実施形態の窓枠62は前述の第2実施形態での窓枠の仕様と同じ仕様をなしている。
【0073】
表示板61に窓枠62を嵌入することで一次固定が行われる。嵌入後は、表示板61と窓枠62の係合部には前述の第1実施形態で説明した微小隙間63と、窓枠取付穴61cに設けた角面取り61hによって形成されたコーナ部隙間層64が形成される。
コーナ部隙間層64は接着剤65の流出防止手段として設けるもので、コーナ部隙間層64に余った接着剤を溜めることで窓枠62の鍔62aの縁62hの方に浸透して流れる接着剤の量を制限し、縁62hから接着剤65の流出を防止している。
このコーナ部隙間層64は表示面61a側に設けていることから第1の流出防止手段のコーナ部隙間層64と呼ぶ。
【0074】
コーナ部隙間層64は隙間幅が大きいと、このコーナ部隙間層64に浸透してきて溜まった接着剤65に表面張力が起こり、接着剤65の流れは止まってしまう。このため、鍔62aの裏面62dと表示板61の表示面61aとの圧接面なる係合部の微小隙間63に接着剤65が浸透して行かなくなる。
このことを避けるために、コーナ部隙間層64の隙間幅は接着剤65に表面張力が起きない程度の隙間幅にし、このコーナ部隙間層64の中でも毛細管現象が働いて接着剤65が圧接面の微小隙間63に浸透して行くようにする。
【0075】
接着剤65の塗布は前述の第1実施形態での製造方法で説明した方法と同じ方法で行う。つまり、表示板61の裏面61eで微小隙間63を挟んで対向した角面取り61g、62gの谷状の凹部に接着剤65を塗布する。
そして、低温加熱などを施す中で毛細管現象を利用して微小隙間63とコーナ部隙間層64に接着剤65を浸透させて充填する。
【0076】
コーナ部隙間層64に接着剤65が溜まることにより、鍔62aの裏面62dと表示板61の表示面61aとの係合部の微小隙間63に浸透していく接着剤65の量が少なくなり、鍔62aの縁62hに至らぬ状態になって縁62hからの接着剤65の流出は無くなる。
ただ、接着剤65が浸透して届く部位が縁62hから遠くの位置にあると接着剤65の付着面積が小さくなって接着強度が低下する危険が生じる。従って、この危険を避けるために、接着剤65が縁62hの近くまで届くように塗布する接着剤の量を適宜な量に設定することが必要とされる。
【0077】
接着剤65の塗布量は微小隙間63に浸透する量とコーナ部隙間層64に溜まる量を含めてかなり厳しく制限する必要は出てくるが、それでも微小隙間63の隅々までかなり浸透して強い接着固定が行える。
【0078】
なお、本実施形態においては、コーナ部隙間層64は角面取り61hをR面取りして形成したが、R面取りに限るものではなくC面取り(45°の傾斜面取り)でも良いが、R面取りは接着剤の付着面積も大きくなることから接着強度を高める面では好ましいと云える。
【0079】
また、角面取り61hを設けることで表示板61に窓枠62を嵌入する工程での圧入作業はよりやり易くなると云う効果も得る。
【0080】
上記の固定構造をなす表示板の製造方法は、上記で述べた形状の表示板61、窓枠62を形成する工程と、表示板61に窓枠62を嵌入する工程と、接着剤65を塗布する工程と、低温加熱工程を経て形成する。嵌入する工程以降の工程は前述の第1実施形態での工程と同じであるのでここでの説明は省略する。
また、表示板61の角面取り61hの形状は金型からの転写によって形成できるので容易に製作することができる。
【0081】
以上述べたように、このような構造をなすことにより、接着剤65の鍔部62aからのはみ出しが抑えられ、接着強度も高めることができる。また、製作コストも安くできる。
【0082】
なお、本実施形態では接着剤の流出防止手段としてコーナ部隙間層を形成し、そのコーナ部隙間層を接着剤の溜まり場としての働きをさせてその目的を達成した。接着剤の溜まり場としてはコーナ部隙間層以外に表面張力が起きない隙間幅を有した凹部隙間層などを選択しても良い。また、コーナ部隙間層と凹部隙間層の両方を設けても何ら支障はない。
【0083】
また、接着剤の溜まり場として、窓枠取付穴61cの内周面61bと固定足62bの外周面62eとの係合部に第2の流出防止手段となる楔状隙間層を設けても良い。この楔状隙間層は表示板61の角面取り61g、固定足62bの角面取り62gに行くに従って隙間幅が大きくなる、つまり、窓枠62の鍔62aの元から遠ざかるに従って隙間が大きくなる楔状隙間層である。
この楔状隙間層はコーナ部隙間層64と同じ接着剤の溜まり場としての働きをなすものであるが、層内でも毛細管現象が起きる程度に隙間の最大隙間幅を極力小さく抑えるのが好ましい。接着剤65を角面取り61g、62gの部位に塗布すると毛細管現象で楔状隙間層に入り、更に係合部に毛細管現象で接着剤が浸透して行く。この楔状隙間層は先細になっていることから接着剤が浸透し易くなると云う効果も生む。
この楔状隙間層で余分な接着剤を溜め、窓枠62の鍔62aの縁62hから流れ出す接着剤の量を抑える働きをなす。なお、この楔状隙間層は固定足62bの外周面62eを、あるいは、窓枠取付穴61の内周面61bを傾斜面にすることによって形成することができる。また、傾斜面によって形成した接着剤の溜まり場としての楔状隙間層は傾斜になった分だけ接着剤の付着面積が大きくなるので接着強度が増すと云う効果も生む。
また、接着剤の溜まり場としてコーナ部隙間層64とこの楔状隙間層の両方を設けても良く、単に第2の流出防止手段であるこの楔状隙間層だけを設けても良いものである。
【0084】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態に係る表示板の窓枠との固定構造について図8を用いて説明する。なお、図8は本発明の第4実施形態に係る表示板と窓枠の固定構造を示す要部拡大断面図を示している。
【0085】
第4実施形態の表示板71は黄銅や洋白などの金属板からなっている。表示板71はプレス加工などによってブランクが形成され、メッキなどの表面処理が行われて表面装飾が施されている。
また、この表示板71は、図8に示すように、窓枠取付穴71cを有し、表示面71a側で窓枠取付穴71cの内周面71bに角面取り71hを一周に渡って形成している。この角面取り71hはブランク形成時にプレス加工で形成している。
【0086】
次に、窓枠72は黄銅材などの金属からなり、穴72c、鍔72a、固定足72bを有した形状をなしている。また、鍔72aの裏面72dには一周に渡って傾斜面が設けられており、固定足72bの外周面72eには角面取り72gが設けられている。これらの形状はコイニング加工とプレス加工によって形成している。また、メッキなどの表面処理を施してあり、上面72fはダイヤカット面に仕上げられている。
【0087】
表示板71に窓枠72を嵌入することで一次固定が行われる。嵌入後は、表示板71と窓枠72の係合部には前述の第1実施形態で説明した微小隙間73と、鍔72aの裏面72dに傾斜面を設けたことによって形成された楔状隙間層74Aと、窓枠取付穴71cに設けた角面取り71hによって形成されたコーナ部隙間層74Bが形成される。
窓枠取付穴71cに設ける角面取り71hは、この角部に隙間層を形成する目的と窓枠72の固定足72bの圧入作業を容易にするために設けるもので、コーナ部隙間層74Bは接着剤75をこの隙間層に溜める役割をなす。
また、鍔72aの裏面72dに設ける傾斜面はこの場に楔状隙間層74Aを形成するために設けるもので、楔状隙間層74Aは接着剤75が鍔72aの縁72hから外へ流出するのを防止する役割を果たす。
【0088】
ここで、コーナ部隙間層74Bは余分に塗布した接着剤を単に溜める役割をなすものであるが、コーナ部隙間層74Bの隙間幅が大きいと、このコーナ部隙間層74Bの中で接着剤に表面張力が起き、接着剤の流れが止まってしまう現象が現れる。そこで、接着剤の流れが止まる現象を避けるためにコーナ部隙間層74Bの隙間幅は接着剤75の流れが止まらない程度に小さく抑え、毛細管現象が現れるようにしている。このコーナ部隙間層74Bは窓枠取付穴71cの回り一周に渡って形成される。
【0089】
楔状隙間層74Aは接着剤75の流れを完全に止め、鍔72aの縁72hから外に接着剤75が流出するのを防止するために形成する。楔状隙間層74Aの一番大きい隙間幅を接着剤75に表面張力が起きる隙間幅に設定し、接着剤75が表面張力を起こして流れが止まるようにしている。また、この楔状隙間層74Aは外観的に殆ど視認されないような隙間にしなければならない。そこで、本実施形態では隙間幅が一番大きい部位における隙間幅を20〜50μmの範囲に規定している。
また、この楔状隙間層74Aは接着剤75の流れを止める働きをなすと共に、接着剤75の溜まる量も多くなるので接着剤75の溜まり場としての働きもなしている。
【0090】
接着剤75は前述の第1実施形態で用いた接着剤と同じ仕様のものを用いている。接着剤75は表示板71の裏面71e側で、固定足72bの角面取り72gを形成した部位の回りに塗布する。塗布量は微小隙間73の隅々まで接着剤75が浸透するように、そして、コーナ部隙間層74Bや楔状隙間層74Aの体積なども加味して少し多目に決める。
【0091】
次に、上記構造の作用について説明する。塗布した接着剤75は係合部の微小隙間73に毛細管現象で浸透して流れて行き、コーナ部隙間層74Bに流れ込む。コーナ部隙間層74Bの層内でも毛細管現象が起きるのでコーナ部隙間層74Bから鍔72aの裏面72dと表示面71aとの間の微小隙間73に浸透して流れ、やがて楔状隙間層74Aに流れ込む。そして、楔状隙間層74A内で表面張力を起こして接着剤75の流れはその部位で止まる。
【0092】
コーナ部隙間層74Bは鍔72aの裏面72dと表示面71aの係合部への接着剤75の流れ量を制限し、楔状隙間層74Aで接着剤75の外への流出を防止している。つまり、流出防止手段としての働きをなしている。本発明においては、コーナ部隙間層74B、楔状隙間層74Aは表示面71a側にあるので第1の流出防止手段と呼ぶ。
【0093】
以上の構造を取ることにより、少し多目に接着剤を塗布しても隙間層に吸収され、また、微小隙間の隅々に接着剤が行き届き強固な接着強度が得られる。また、接着剤が窓枠の鍔から外に流出することがなくなる。
【0094】
なお、接着剤の溜まり場としての働きをなすものとしてコーナ部隙間層74Bに限らず、例えば、窓枠取付穴71cの内周面71bと固定足72bの外周面72eとの係合部に第2の流出防止手段となる楔状隙間層を設けても良い。この第2の楔状隙間層は窓枠72の鍔72aの元から遠ざかるに従って隙間が大きくなる楔状隙間層である。この楔状隙間層はコーナ部隙間層74Bと同じ接着剤の溜まり場としての働きをなすものであるが、この楔状隙間層に入った接着剤は毛細管現象を起こして楔状隙間層の奥の方に浸透して行き、更に係合部へと浸透する。なお、接着剤の溜まり場として、コーナ部隙間層74Bとこの楔状隙間層の両方を設けても良く、また単に、この楔状隙間層だけを設けても良いものである。
【0095】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態に係る表示板の窓枠との固定構造について図9、図10を用いて説明する。なお、図9は本発明の第5実施形態に係る表示板と窓枠の固定構造を示す要部拡大断面図、図10は図9における固定構造の製造方法の主要工程を説明する模式的に示した工程図で、図10の(a)は接着剤の塗布工程における塗布後の状態図、図10の(b)は窓枠の嵌入工程における鍔が接着剤に接触した時点の状態の図、図10の(c)は図10の(b)から更に窓枠を押圧した時点の状態図、図10の(d)は窓枠の嵌入が終えた時点の状態図を示している。
【0096】
第5実施形態に係る表示板は時計用のソーラセル用の表示板である。表示板に窓枠を設けているが、その固定構造は、図9に示すように、表示板81の窓枠取付穴81cに窓枠82を嵌入して一次固定し、表示板81と窓枠82との係合部に接着剤85によって接着の二次固定した構造をなしている。
【0097】
表示板81はポリカーボネイト樹脂などのプラスチック板からなり、窓枠取付穴81cを有する。また、表示板81の表示面81a側には窓枠取付穴81cの回りで一周に渡って断面三角形状に沈んで傾斜した傾斜面81fを有し、窓枠取付穴81cの下面81e側に近い内周面81bに一周に渡って傾斜した傾斜面81iを有している。これら表示面81a側の傾斜面81f及び内周面81b側の傾斜面81iは金型からの転写で射出成型時に形成する。
断面三角形状に沈んで傾斜した傾斜面81fは、後述する窓枠82の鍔82aの縁82hに対応する表示面81aの縁82より内側の近傍部位に設けており、表示板81に窓枠82が取付けられた時には殆ど視認することができない。
【0098】
窓枠82は黄銅材などの金属からなり、穴82c、鍔82a、固定足82bを有した形状をなしている。また、固定足82bの外周面82eには角面取り82gが設けられている。これらの形状はコイニング加工とプレス加工によって形成している。また、メッキなどの表面処理を施しており、上面72fはダイヤカット面に仕上げられている。
【0099】
上記の形状をなす窓枠82が表示板81の窓枠取付穴81cに嵌入すると、表示面81aと鍔82aの裏面82dとの間に微小隙間83と、傾斜面81fと鍔82aの裏面82dとの間に断面楔状の形状をなした楔状隙間層84Aが形成される。
また、同様に、窓枠取付穴81cの内周面81bと固定足82bの外周面82eとの間に微小隙間83と、内周面81bの傾斜面81iと固定足82bの外周面82eとの間に楔状隙間層84Bが形成される。
ここで、楔状隙間層84Aは窓枠82の鍔82aの縁82hに近い部位に形成するのが良く、また、楔状隙間層84Bは黒点で示した鍔元82jから遠ざかるに従って隙間幅が大きくなる隙間にし、出来るだけ表示板81の下面81eに近づけて形成するようにする。
なお、微小隙間83は前述の第1実施形態で説明した微小隙間と同じ仕様のものである。
【0100】
楔状隙間層84Aは、後述するが、鍔82aの縁82hから外に接着剤85が流れ出すことを防止するために設けるもので、接着剤85の流出防止手段としての働きをなしている。
また、楔状隙間層84Bも窓枠82の固定足82bの先端側や表示板81の裏面81e側に接着剤85が流れ出すことを防止するために設けるもので、接着剤85の流出防止手段としての働きをなしている。
本実施形態においては、楔状隙間層84Aは表示面81a側にあることから第1の流出防止手段の楔状隙間層84Aと呼び、楔状隙間層84Bは裏面81e側の近いところにあることから第2の流出防止手段の楔状隙間層84Bと呼んで区別することにする。
【0101】
接着剤85は前述の第1実施形態の接着剤と同じ仕様のものを用いている。図9において、接着剤85は微小隙間83と楔状隙間層84A、楔状隙間層84Bに流れ込んでおり、楔状隙間層84A、楔状隙間層84Bに流れ込んだ接着剤85は表面張力を起こして層内に止まっている。
楔状隙間層84Aと楔状隙間層84Bは傾斜面によって形成しているので、隙間幅は徐々に大きくなる。そして、接着剤85が表面張力を起こす隙間幅に至ると接着剤85が表面張力を起こして流れはそこで止まる。
【0102】
次に、上記の構造を形成する製造方法について主要工程のみを図10を用いて説明する。図10の(a)は接着剤の塗布工程での塗布状態を示している。接着剤85は表示板81の表示面81a上の傾斜面81fと窓枠取付穴81cの間に印刷方法などの方法で塗布する。
次に、接着剤85を塗布した表示面81a側から、表示板81の窓枠取付穴81cに窓枠82の固定足82bを圧入方法で嵌入する。
【0103】
図10の(b)は接着剤85の表面が窓枠82の鍔82aの裏面82dに接触した状態を示している。この状態にあっては、固定足82bの一部分は窓枠取付穴81cの一部分に嵌合しており、窓枠取付穴81cの内周面81bと固定足82bの外周面82eとの間の一部分に微小隙間83が形成される。
次に、図10の(c)は窓枠82を更に押し込んで接着剤85をかなり潰した状態を示している。鍔82aの裏面82dで押し潰された接着剤85は楔状隙間層84Aに流れ込んで行くと共に、窓枠取付穴81cの内周面81bと固定足82bの外周面82eとの間の微小隙間83に浸透して流れ進んでいく。
次に、図10の(d)は窓枠82を更に押し込んで窓枠82が表示面81aに当接して止まった状態を示している。図10の(c)から(d)に至ると、接着剤85は、窓枠取付穴81cの内周面81bと固定足82bの外周面82eとの係合部においては、微小隙間83に浸透して進み、更に、微小隙間83と接続した楔状隙間層84Bに流れ込んで進む。そして、表面張力が起きる隙間幅に至ったときに表面張力の作用で接着剤85の流れは止まる。
また、表示面81aと鍔82aの裏面82dとの係合部83においては、接着剤85は楔状隙間層84Aに流れ込んで行き、そして、表面張力が起きる隙間幅に至ったときに表面張力の作用で接着剤85の流れは止まる。
【0104】
接着剤85の硬化処理は前述の第1実施形態と同じ工程によって行う。即ち、55°C〜65°Cの低温加熱の下で、1時間の加熱処理を行う。この低温加熱処理によって接着剤85は更に微小隙間83の隅々まで行き届くようになる。そして、硬化するので強い接着強度が得られる。
【0105】
また、楔状隙間層84A、楔状隙間層84Bの層内で表面張力を起こして流れが止まった接着剤85はそのまま硬化する。
以上のような働きによって接着剤85は鍔82aの外に流出することはなくなり、また、固定足82bの先端面や表示板81の裏面81eに流出することもなくなる。
【0106】
以上の構造を取ることにより、接着剤が窓枠82から外に流出することを防止できる。
なお、楔状隙間層84A及び楔状隙間層84Bは目に視認されない部位にあるので、その隙間幅は接着剤85が表面張力を起こす隙間幅であれば良いので、多少隙間幅が大きくても支障はない。また、楔状隙間層84Bは窓枠取付穴81cの内周面を傾斜面にして形成したが、これは部品成形がし易いことによる。しかしながら、窓枠取付穴81cの内周面に限定するものではなく、固定足82bの外周面82e側に傾斜面を設けて楔状隙間層84Bを形成しても良い。
また、表示面81a側で、窓枠取付穴81cに角面取りを設けてコーナ部隙間層を形成し、そのコーナ部隙間層に鍔82aで押し潰された接着剤85を流し込み、コーナ部隙間層に溜まった接着剤85を窓枠取付穴81cと固定足82bとの係合部の隙間層83に浸透させる構造を取っても良い。
【0107】
以上、第1実施形態から第5実施形態まで時計用表示板を取り上げて説明したが、時計用表示板に限るものではなく時計以外の表示板でも適用できるものである。また、植え物として窓枠以外のものでも適用でき、鍔と固定足を有する植え物であればその形状に拘り無く適用できるのである。
また、窓枠を表示板により強固に取付けるために、窓枠の固定足にカシメ(ピンカシメ、楔カシメ、研削カシメなど)を併用しても良いことは云うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本発明の第1実施形態に係る表示板の平面図である。
【図2】図1におけるB−B拡大断面図である。
【図3】図2における表示板と植え物の嵌入後の拡大断面図である。
【図4】図2における固定構造の製造方法を説明する工程図である。
【図5】図5は表示板に傾斜面を設けた場合の表示板と窓枠の固定構造を示す要部拡大断面図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る表示板と窓枠の固定構造を示す要部拡大断面図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係る表示板と窓枠の固定構造を示す要部拡大断面図である。
【図8】本発明の第4実施形態に係る表示板と窓枠の固定構造を示す要部拡大断面図である。
【図9】本発明の第5実施形態に係る表示板と窓枠の固定構造を示す要部拡大断面図である。
【図10】図9における固定構造の製造方法の主要工程を説明する模式的に示した工程図で、図10の(a)は接着剤の塗布工程における塗布後の状態図、図10の(b)は窓枠の嵌入工程における鍔が接着剤に接触した時点の状態の図、図10の(c)は図10の(b)から更に窓枠を押圧した時点の状態図、図10の(d)は窓枠の嵌入が終えた時点の状態図である。
【図11】特許文献1に従来技術として示された窓枠を上板に取付けた状態を示す要部断面図である。
【図12】特許文献2に示された時計用表示板に窓枠を固定した状態を示す要部斜視図である。
【図13】特許文献2に示された時計用窓枠の固定構造を示す部分拡大断面図である。
【符号の説明】
【0109】
31、41、51、61、71、81 表示板
31a、41a、51a、61a、71a、81a 表示面
31b、41b、51b、61b、71b、81b 内周面
31c、41c、51c、61c、71c、81c、 窓枠取付穴
31d 穴
31e、32d、41e、42d、51e、52d、61e、62d、71e、72d、81e、82d 裏面
41f、81f、81i 傾斜面
51f 凹部
31g、51g、61g、61h、71h、32g、52g、62g、72g、82g 角面取り
32、42、52、62、72、82 窓枠
32a、42a、52a、62a、72a、82a 鍔
32b、42b、52b、62b、72b、82b 固定足
32c、42c、52c、62c、72c、82c 穴
32e、52e、62e、72e、82e 外周面
32f、52f、62f、72f、82f 上面
32h、42h、52h、62h、72h、82h 縁
33、43、53、63、73、83 微小隙間
34、44、74A、84A、84B 楔状隙間層
54 凹部隙間層
64、74B コーナ部隙間層
35、45、55、65、75、85 接着剤
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍔と外周角面取りを設けた固定足を有する植え物を表示板の植え物取付穴に固定する表示板において、
前記表示板の表示面と前記植え物の前記鍔の裏面との係合部に接着剤の流出を防止する第1の流出防止手段、又は前記表示板の前記植え物取付穴の内周面と前記植え物の前記固定足の外周面の係合部に接着剤の流出を防止する第2の流出防止手段の少なくともいずれか1つの流出防止手段を設けたことを特徴とする表示板。
【請求項2】
前記第1の流出防止手段は、前記植え物と前記表示板の嵌入後に前記植え物取付穴の周辺に一周に渡って形成される断面楔状の形状をなした楔状隙間層、又は凹部形状をなした凹部隙間層、又はコーナ部隙間層の少なくとも一つからなることを特徴とする請求項1に記載の表示板。
【請求項3】
前記第1の流出防止手段の前記楔状隙間層は、前記植え物取付穴から遠ざかるに従って隙間幅が大きくなることを特徴とする請求項2に記載の表示板。
【請求項4】
前記第1の流出防止手段の前記楔状隙間層は、前記植え物の鍔の裏面又は前記表示板の表示面の少なくともいずれか一方の面を傾斜面にすることによって形成することを特徴とする請求項2又は3に記載の表示板。
【請求項5】
前記第1の流出防止手段の前記楔状隙間層の隙間は、隙間が一番大きい部位で隙間幅が20〜50μmであることを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載の表示板。
【請求項6】
前記第1の流出防止手段の前記凹部隙間層は、前記植え物の鍔の縁に近い部位に設けていることを特徴とする請求項2に記載の表示板。
【請求項7】
前記第1の流出防止手段の前記凹部隙間層は、前記植え物の前記鍔の裏面又は前記表示板の表示面の少なくともいずれか一方の面に凹部を設けることによって形成することを特徴とする請求項2又は6に記載の表示板。
【請求項8】
前記第1の流出防止手段のコーナ部隙間層は、前記植え物取付穴の角面取りによって形成することを特徴とする請求項2に記載の表示板。
【請求項9】
前記第2の流出防止手段は、前記植え物と前記表示板の嵌入後に前記植え物の固定足の外周面一周に渡って形成される断面楔状の形状をなした楔状隙間層であることを特徴とする請求項1に記載の表示板。
【請求項10】
前記第2の流出防止手段の前記楔状隙間層は、前記植え物の鍔元から遠ざかるに従って隙間幅が大きくなることを特徴とする請求項9に記載の表示板。
【請求項11】
前記請求項1乃至8のいずれかに記載の表示板において、前記表示板の裏面側で前記植え物取付穴の回り一周に渡って角面取りを設けたことを特徴とする表示板。
【請求項12】
鍔と外周角面取りを設けた固定足を有する植え物を表示板の植え物取付穴に固定する表示板の製造方法において、
前記植え物の前記鍔の裏面又は前記表示板の前記植え物取付穴周辺の表示面の少なくともいずれか一方の面に一周に渡る傾斜面を有する部品を形成する工程と、
前記表示板の植え物取付穴に前記植え物の固定足を嵌入する工程と、
前記固定足を嵌入した前記表示板の裏面側で前記固定足の前記外周角面取り周辺部に接着剤を塗布する工程と、
前記塗布した接着剤を前記表示板と前記植え物の係合部に浸透させて硬化させる工程と、
を有することを特徴とする表示板の製造方法。
【請求項13】
鍔と外周角面取りを設けた固定足を有する植え物を表示板の植え物取付穴に固定する表示板の製造方法において、
前記植え物の鍔の裏面又は前記表示板の前記植え物取付穴周辺の表示面の少なくともいずれか一方の面に一周に渡る凹部からなる溝を有する部品を形成する工程と、
前記表示板の植え物取付穴に前記植え物の固定足を嵌入する工程と、
前記固定足を嵌入した前記表示板の裏面側で前記固定足の前記外周角面取り周辺部に接着剤を塗布する工程と、
前記塗布した接着剤を前記表示板と前記植え物の係合部に浸透させて硬化させる工程と、
を有することを特徴とする表示板の製造方法。
【請求項14】
鍔と外周角面取りを設けた固定足を有する植え物を表示板の植え物取付穴に固定する表示板の製造方法において、
前記植え物部品と、前記植え物取付穴の表示面側に角面取りを有する表示板部品を形成する工程と、
前記表示板の植え物取付穴に前記植え物の固定足を嵌入する工程と、
前記固定足を嵌入した前記表示板の裏面側で前記固定足の前記外周角面取り周辺部に接着剤を塗布する工程と、
前記塗布した接着剤を前記表示板と前記植え物の係合部に浸透させて硬化させる工程と、
を有することを特徴とする表示板の製造方法。
【請求項1】
鍔と外周角面取りを設けた固定足を有する植え物を表示板の植え物取付穴に固定する表示板において、
前記表示板の表示面と前記植え物の前記鍔の裏面との係合部に接着剤の流出を防止する第1の流出防止手段、又は前記表示板の前記植え物取付穴の内周面と前記植え物の前記固定足の外周面の係合部に接着剤の流出を防止する第2の流出防止手段の少なくともいずれか1つの流出防止手段を設けたことを特徴とする表示板。
【請求項2】
前記第1の流出防止手段は、前記植え物と前記表示板の嵌入後に前記植え物取付穴の周辺に一周に渡って形成される断面楔状の形状をなした楔状隙間層、又は凹部形状をなした凹部隙間層、又はコーナ部隙間層の少なくとも一つからなることを特徴とする請求項1に記載の表示板。
【請求項3】
前記第1の流出防止手段の前記楔状隙間層は、前記植え物取付穴から遠ざかるに従って隙間幅が大きくなることを特徴とする請求項2に記載の表示板。
【請求項4】
前記第1の流出防止手段の前記楔状隙間層は、前記植え物の鍔の裏面又は前記表示板の表示面の少なくともいずれか一方の面を傾斜面にすることによって形成することを特徴とする請求項2又は3に記載の表示板。
【請求項5】
前記第1の流出防止手段の前記楔状隙間層の隙間は、隙間が一番大きい部位で隙間幅が20〜50μmであることを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載の表示板。
【請求項6】
前記第1の流出防止手段の前記凹部隙間層は、前記植え物の鍔の縁に近い部位に設けていることを特徴とする請求項2に記載の表示板。
【請求項7】
前記第1の流出防止手段の前記凹部隙間層は、前記植え物の前記鍔の裏面又は前記表示板の表示面の少なくともいずれか一方の面に凹部を設けることによって形成することを特徴とする請求項2又は6に記載の表示板。
【請求項8】
前記第1の流出防止手段のコーナ部隙間層は、前記植え物取付穴の角面取りによって形成することを特徴とする請求項2に記載の表示板。
【請求項9】
前記第2の流出防止手段は、前記植え物と前記表示板の嵌入後に前記植え物の固定足の外周面一周に渡って形成される断面楔状の形状をなした楔状隙間層であることを特徴とする請求項1に記載の表示板。
【請求項10】
前記第2の流出防止手段の前記楔状隙間層は、前記植え物の鍔元から遠ざかるに従って隙間幅が大きくなることを特徴とする請求項9に記載の表示板。
【請求項11】
前記請求項1乃至8のいずれかに記載の表示板において、前記表示板の裏面側で前記植え物取付穴の回り一周に渡って角面取りを設けたことを特徴とする表示板。
【請求項12】
鍔と外周角面取りを設けた固定足を有する植え物を表示板の植え物取付穴に固定する表示板の製造方法において、
前記植え物の前記鍔の裏面又は前記表示板の前記植え物取付穴周辺の表示面の少なくともいずれか一方の面に一周に渡る傾斜面を有する部品を形成する工程と、
前記表示板の植え物取付穴に前記植え物の固定足を嵌入する工程と、
前記固定足を嵌入した前記表示板の裏面側で前記固定足の前記外周角面取り周辺部に接着剤を塗布する工程と、
前記塗布した接着剤を前記表示板と前記植え物の係合部に浸透させて硬化させる工程と、
を有することを特徴とする表示板の製造方法。
【請求項13】
鍔と外周角面取りを設けた固定足を有する植え物を表示板の植え物取付穴に固定する表示板の製造方法において、
前記植え物の鍔の裏面又は前記表示板の前記植え物取付穴周辺の表示面の少なくともいずれか一方の面に一周に渡る凹部からなる溝を有する部品を形成する工程と、
前記表示板の植え物取付穴に前記植え物の固定足を嵌入する工程と、
前記固定足を嵌入した前記表示板の裏面側で前記固定足の前記外周角面取り周辺部に接着剤を塗布する工程と、
前記塗布した接着剤を前記表示板と前記植え物の係合部に浸透させて硬化させる工程と、
を有することを特徴とする表示板の製造方法。
【請求項14】
鍔と外周角面取りを設けた固定足を有する植え物を表示板の植え物取付穴に固定する表示板の製造方法において、
前記植え物部品と、前記植え物取付穴の表示面側に角面取りを有する表示板部品を形成する工程と、
前記表示板の植え物取付穴に前記植え物の固定足を嵌入する工程と、
前記固定足を嵌入した前記表示板の裏面側で前記固定足の前記外周角面取り周辺部に接着剤を塗布する工程と、
前記塗布した接着剤を前記表示板と前記植え物の係合部に浸透させて硬化させる工程と、
を有することを特徴とする表示板の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−198312(P2009−198312A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−40220(P2008−40220)
【出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(000124362)シチズンセイミツ株式会社 (120)
【出願人】(307023373)シチズン時計株式会社 (227)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(000124362)シチズンセイミツ株式会社 (120)
【出願人】(307023373)シチズン時計株式会社 (227)
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