説明

表示用走査方式を変換する信号処理装置及び方法

【課題】表示用走査方式を変換する信号処理装置及び方法を提供する。
【解決手段】本発明の信号処理装置1は、プログレッシブ方式の平面映像表示装置に立体映像表示を提供するために、フィールドスイッチング方式の立体映像信号を処理する装置であって、フィールドスイッチング方式の1フィールドごとに繰り返される右眼用及び左眼用の立体映像信号を入力して、或るフィールドの立体映像信号について、該フィールドの立体映像信号の走査線間に一定の信号値の擬似信号を挿入し、プログレッシブ方式の映像信号を生成するように制御する信号変換手段3を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示用走査方式を変換する信号処理装置及び方法に関し、特に、フィールドスイッチング方式の立体映像をプログレッシブ方式の平面映像表示装置上に鮮明に表示する信号処理装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年においては、3Dシアターシステムやプロジェクタに限らず、一般家庭においても汎用の表示装置(家庭用ディスプレイ装置)を用いて立体映像観賞のニーズが高まりつつある。
【0003】
特に、フィールドスイッチング方式(フィールド切り換え方式とも称される)の立体映像表示装置は、これまで飛び越し走査方式(以下、インターレース方式とも称する)である真空管式の表示装置(以下、CRT表示装置と称する)の残像効果を活用し、より簡便な立体映像表示装置として広く採用されてきた。近年では、CRT表示装置は、プラズマ表示装置や液晶表示装置など、いわゆる平面映像表示装置に取って代わるようになってきている。また、このCRT表示装置を用いた立体表示は、ちらつきなどが生じやすいという短所もあり、適用頻度として多くない。
【0004】
さらに、平面映像表示装置の表示面に走査線又は走査線に相当する水平に配列された一連の画素の組(即ち、走査線)ごとに異なる左眼用及び右眼用の偏光フィルタを塗布又は貼り付け、この平面映像表示装置の走査線の偏光に合わせて、左右に異なる偏光特性を持たせた偏光メガネを通して右眼と左眼に視差のある映像を見せるように構成した立体視システムも知られている。このような立体映像用の平面映像表示装置の出現と、この平面映像表示装置に特有のプログレッシブ方式の表示制御により、その鮮明さから、さらにCRT表示装置を用いた立体表示の適用頻度が減少している。
【0005】
しかし、CRT表示装置に用いられてきたフィールドスイッチング方式の立体映像は、制作が簡便なことと長く使用されてきたため、映像コンテンツが多く存在する。一方で、順次走査方式(以下、プログレッシブ方式と称する)による偏光メガネを用いた平面映像表示装置での視聴が期待されていた。
【0006】
一方、偏光メガネ方式による立体映像表示にあたり、インターレース方式で撮影した左眼用と右眼用の映像を、インターレース方式の信号伝送手段もしくは記録装置を用いて偶数及び奇数のフィールドに対応する右眼用及び左眼用の映像として、交互に挿入して、フレーム映像を切り換える平面映像表示装置を構成し、該平面映像表示装置の走査線の偏光に合わせて、左右に異なる偏光特性を持たせた偏光メガネを通して右眼と左眼に視差のある映像を提供するようにしたプログレッシブ方式の平面映像表示装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
【特許文献1】特開2006−254074号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の立体映像表示技法では、左眼用と右眼用の1フレームの映像を偶数フィールド及び奇数フィールドのフレームで交互に表示するため、プログレッシブ方式の平面映像表示装置に適用すると、左眼用映像を偶数フィールドのフレーム映像について、奇数のフィールドの領域で映像信号がない状況が発生し、同様に、右眼用映像を奇数フィールドのフレーム映像について、偶数のフィールドの領域で映像信号がない状況が発生する。この結果、視聴者の目にはちらつきとして違和感のある立体映像をもたらすか、又は視聴者に視聴疲労をもたらす。
【0009】
例えば、従来技術に基づいて構成される立体映像表示システムのブロック図を図1に示す。このような従来技術に基づく立体映像表示システム101は、フィールドスイッチング切替装置105と、立体映像表示装置として機能するシャッタメガネ駆動回路106と、インターレース方式のCRTディスプレイ107とを備える。フィールドスイッチング切替装置105は、偶数及び奇数のフィールドに対応する右眼用及び左眼用のフィールド信号からなるインターリーブ信号(このような信号を、特に、フィールドスイッチング切替信号と称する)を発生する信号発生手段として機能し、既知の立体カメラ装置102又は再生装置103のインターリーブ信号を選択可能なスイッチ104を備えることができる。
【0010】
立体カメラ装置102は、右眼用フィールド信号を発生するカメラ121R及び左眼用フィールド信号を発生するカメラ121Lと、カメラ121R,121Lからのフィールド信号を交互に切り替えて、インターリーブ信号として知られるフィールドスイッチング切替信号を送出するフィールドスイッチングデバイス122とを備える。再生装置103は、このようなフィールドスイッチングデバイス122から(又は外部から)、フィールドスイッチング切替信号を入力して記録する録画デバイス113を備え、この録画デバイス113からフィールドスイッチング切替信号を再生して出力することもできる。
【0011】
図1に示す従来の立体映像表示システム101は、右眼用及び左眼用のフィールド信号からなるフィールドスイッチング切替信号をCRTディスプレイ107に入力し、CRTディスプレイ107は、右眼用及び左眼用のRGBのデジタル映像信号をインターリーブ方式に従って表示する。一方で、シャッタメガネ駆動回路106は、CRTディスプレイ107の映像と同期させるために、フィールドスイッチング切替信号を入力して、シャッタメガネ108の右眼用及び左眼用の透過及び遮蔽の切り替えを制御する制御信号をシャッタメガネ108に送出する。
【0012】
このような従来技術に基づいて構成される立体映像表示システム101は、例えば図2に示すように、左眼用のフレーム画像101(奇数フィールドのフレーム画像101O及び偶数フィールドのフレーム画像101E)及び右眼用のフレーム画像102(奇数フィールドのフレーム画像102O及び偶数フィールドのフレーム画像102E)に対して、例えばフレーム画像101O及びフレーム画像102Eを廃棄するなどして、左眼用の偶数フィールドのフレーム画像101E及び右眼用の奇数フィールドのフレーム画像102Oを交互に切り換えて右眼と左眼で視差のある映像をCRTディスプレイ107で表示する。
【0013】
CRTディスプレイ107に入力されるフィールドスイッチング切替信号は、例えば、図3(a)に示すように、1フレームの映像を左眼用の奇数フィールド及び右眼用の偶数フィールドで交互に繰り返すインターレース方式の信号であり、通常、Nを1以上の自然数として、1フレーム期間にそれぞれ左眼用の奇数フィールド(例えば、立体映像信号用走査線LO1〜LON)及び偶数フィールド(例えば、立体映像信号用走査線RE1〜REN)からなる。CRTディスプレイ107にて、このようなフィールドスイッチング切替信号を実現する際には、シャッタメガネ108の右眼用及び左眼用の透過及び遮蔽の切り替えによって、平面映像表示装置の視聴者に投射される映像信号は、図3(b)に示すように、奇数フィールド(例えば、立体映像信号用走査線LO1〜LON)及び黒信号と、黒信号及び偶数フィールド(例えば、立体映像信号用走査線RE1〜REN)との繰り返しとなる(図4参照)。
【0014】
そこで、CRTディスプレイ107の代わりに、液晶ディスプレイなどの平面映像表示装置にて、このようなフィールドスイッチング切替信号を用いて立体映像表示を実現する際にプログレッシブ方式に単に変換すると、奇数フィールド(又は偶数フィールド)の映像信号の走査線(例えば、立体映像信号用走査線LO1〜LON)の間は無信号として表示することになる。
【0015】
従って、このような従来技術に基づいて構成される立体映像表示システム101を平面映像表示装置に適用しても、例えば偶数フィールドのフレーム映像について、映像信号の走査線の間は無信号の走査線が発生し(映像信号がないフィールド部分は、黒信号となる)、視聴者の目には、ちらつきとして違和感のある立体映像になるか、又は視聴者に視聴疲労をもたらす。
【0016】
本発明の目的は、プログレッシブ方式の平面映像表示装置を用いながら、視聴者の目にはちらつきとして違和感を低減させた立体映像であって視聴者の視聴疲労を低減させるための、表示用走査方式を変換する信号処理装置及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の第1の態様の信号処理装置は、プログレッシブ方式の平面映像表示装置に立体映像表示を提供するために、フィールドスイッチング方式の立体映像信号を処理する信号処理装置であって、フィールドスイッチング方式の1フィールドごとに繰り返される右眼用及び左眼用の立体映像信号を入力して、或るフィールドの立体映像信号について、該フィールドの立体映像信号の走査線間に一定の信号値の擬似信号を挿入し、プログレッシブ方式の映像信号を生成するように制御する信号変換手段を有することを特徴とする。
【0018】
また、本発明の第1の態様の信号処理装置において、前記擬似信号は、予め定められたゼロレベルを除く一定の信号値を有することを特徴とする。
【0019】
また、本発明の第1の態様の信号処理装置において、前記信号変換手段は、或るフィールドの立体映像信号について、該フィールドの立体映像信号の当該走査線の少なくとも一部の映像信号を抽出する一部信号抽出手段と、前記少なくとも一部の映像信号を前記一定の信号値の擬似信号として発生する擬似信号発生手段とを有することを特徴とする。
【0020】
また、本発明の第1の態様の信号処理装置において、前記少なくとも一部の映像信号は、或るフィールドの立体映像信号用走査線の先頭の映像信号の信号値からなることを特徴とする。
【0021】
また、本発明の第1の態様の信号処理装置において、前記少なくとも一部の映像信号は、或るフィールドの立体映像信号用走査線の先頭の映像信号から所定時間分の映像信号までの平均値からなることを特徴とする。
【0022】
また、本発明の第1の態様の信号処理装置において、前記少なくとも一部の映像信号は、或るフィールドの立体映像信号用走査線の全体の平均値からなることを特徴とする。
【0023】
また、本発明の第2の態様の信号処理装置において、前記信号変換手段は、当該入力するフィールドスイッチング方式の立体映像信号における或るフィールドについて、該立体映像信号の立体映像信号用走査線の信号のうち1走査線分を記憶する記憶手段と、前記記憶した1走査線分の映像信号から少なくとも一部の映像信号を抽出する一部信号抽出手段と、前記少なくとも一部の映像信号に基づく信号値を前記一定の信号値の擬似信号として発生する擬似信号発生手段とを有することを特徴とする。
【0024】
また、本発明の第3の態様の信号処理装置において、前記信号変換手段は、当該入力するフィールドスイッチング方式の立体映像信号における或るフィールドについて、該立体映像信号の立体映像信号用走査線の信号のうち2走査線分を記憶する記憶手段と、前記記憶した2走査線分の各映像信号から少なくとも一部の映像信号を抽出する一部信号抽出手段と、前記少なくとも一部の映像信号に基づく信号値を前記一定の信号値の擬似信号として発生する擬似信号発生手段とを有することを特徴とする。
【0025】
また、本発明の第4の態様の信号処理装置において、前記信号変換手段は、当該入力するフィールドスイッチング方式の立体映像信号における或るフィールドについて、該立体映像信号の1フィールド分を記憶する記憶手段と、前記記憶した1フィールド分の映像信号に基づく平均値を前記一定の信号値の擬似信号として発生する擬似信号発生手段とを有することを特徴とする。
【0026】
また、本発明の信号処理方法は、本発明の第1の態様の信号処理装置によって、プログレッシブ方式の平面映像表示装置に立体映像表示を提供するために、フィールドスイッチング方式の立体映像信号を処理する信号処理方法であって、フィールドスイッチング方式の1フィールドごとに繰り返される右眼用及び左眼用の立体映像信号を入力して、或るフィールドの立体映像信号を表示するステップと、該フィールドの立体映像信号の走査線間に一定の信号値の擬似信号を挿入するステップとを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、フィールドスイッチング方式の立体映像信号からちらつきの少ない鮮明な立体映像をプログレッシブ方式の平面映像表示装置に表示することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
まず、本発明による実施例1の信号処理装置を説明する。
【0029】
(実施例1)
本発明による実施例1の信号処理装置1は、前述したフィールドスイッチング方式のフィールドスイッチング切替信号を入力し、信号処理を施してプログレッシブ信号を生成し、該プログレッシブ信号を液晶ディスプレイなどのプログレッシブ方式の平面映像表示装置7に供給して右眼と左眼に視差のある立体映像を表示させるための装置である。視聴者は、左右に異なる偏光特性を持たせた外部からの制御不要な偏光メガネを通して、右眼と左眼に視差のある立体映像を視聴可能である。
【0030】
図5に、本発明による実施例1の信号処理装置1を備える立体映像表示システムのブロック図を示す。実施例1の信号処理装置1は、前述したフィールドスイッチング方式のフィールドスイッチング切替信号を入力して、それぞれ右眼用及び左眼用のフィールド信号を抽出して送出する左眼用フィールド信号処理回路2L及び右眼用フィールド信号処理回路2Rと、左眼用フィールド信号処理回路2L及び右眼用フィールド信号処理回路2Rからの各出力信号を入力して平面映像表示装置7に供給するためのプログレッシブ方式の映像信号ORLを生成し、平面映像表示装置7に供給する信号変換回路3とを備える。
【0031】
信号変換回路3は、一定の信号値(例えば、輝度値)の擬似信号を発生する擬似信号発生手段31と、左眼用フィールド信号処理回路2L及び右眼用フィールド信号処理回路2Rからのフィールドスイッチング切替信号から抽出した1フィールドごとに繰り返される右眼用及び左眼用のフィールド信号I,Iをそれぞれ入力して、或るフィールドの立体映像信号について、該フィールドの立体映像信号の走査線(立体映像信号用走査線と称することにする)間に一定の信号値(黒レベルを除く)の擬似信号Dを挿入し、プログレッシブ方式の映像信号ORLを生成するように制御するフィールド選択手段32とを有する。
【0032】
実施例1の信号処理装置1は、例えば図6(a)に示すように、従来と同様のフィールドスイッチング切替信号を入力する。即ち、入力するフィールドスイッチング切替信号は、左眼用の奇数フィールド及び右眼用の偶数フィールドで交互に繰り返すインターレース方式の信号であり、代表的に、Nを1以上の自然数として、1フレーム期間にそれぞれ左眼用の奇数フィールドの立体映像信号(例えば、立体映像信号用走査線LO1〜LON)及び偶数フィールドの立体映像信号(例えば、立体映像信号用走査線RE1〜REN)からなる。更に、実施例1の信号変換回路3は、例えば図6(b)に示すように、1フィールドごとに繰り返される右眼用及び左眼用のフィールド信号I,Iのそれぞれにおける或るフィールドの立体映像信号について、該フィールドの立体映像信号の走査線(例えば、立体映像信号用走査線LO1〜LON又はRE1〜REN)の間の走査線に一定の信号値の擬似信号Dを挿入し、プログレッシブ方式の映像信号ORLを生成するように制御する。
【0033】
例えば、一定の信号値の擬似信号Dは、後述にて詳細に説明するが、予め定められたゼロレベルを除く一定の信号値のグレーの映像信号とするか、立体映像信号用走査線の1走査線前の信号の少なくとも一部を抽出してこれを基に決定した映像信号(例えば、立体映像信号を表示する際の立体映像信号の走査線の先頭の映像信号の信号値か、又は或るフィールドの立体映像信号用走査線の先頭の映像信号から所定時間分の映像信号までの平均値の信号か、又は或るフィールドの立体映像信号用走査線の全体の平均値の信号)とすることができる。或いは又、一定の信号値の擬似信号Dは、立体映像信号用走査線の2走査線分の立体映像信号を基に抽出した平均値とすることができる。更に、一定の信号値の擬似信号Dは、表示用フィールドの直前の1フィールド分の立体映像信号を基に抽出した平均値とすることができる。ここで云う平均値とは、抽出した少なくとも一部の立体映像信号の全体の平均値、2乗平均値、又は1走査線分の立体映像信号を所定間隔でサンプリングした値の平均値を含むものとする。
【0034】
従って、前述したように、フィールドスイッチング切替信号に基づく立体映像を従来のCRTディスプレイ107によって視聴する視聴者は、図7(a)に示すように、フィールド毎に切り換えるために映像信号と黒信号が繰り返された映像を各眼で視聴することになる。一方、実施例1の信号処理装置1を介してプログレッシブ方式の平面映像表示装置7を視聴する視聴者は、図7(b)に示すように、左右に異なる偏光特性を持たせた外部からの制御不要な偏光メガネを通して、擬似信号Dが挿入された右眼と左眼に視差のある立体映像を視聴する。
【0035】
例えば、図8に示すように、実施例1の信号処理装置1は、立体視撮像カメラ2によって送出される左眼用のフレーム画像101(奇数フィールドのフレーム画像101O及び偶数フィールドのフレーム画像101E)及び右眼用のフレーム画像102(奇数フィールドのフレーム画像102O及び偶数フィールドのフレーム画像102E)に対して、例えばフレーム画像101O及びフレーム画像102Eを廃棄するなどして、左眼用に一定の信号値の擬似信号103a及び偶数フィールドのフレーム画像101Eからなる映像信号105と、右眼用に一定の信号値の擬似信号104a及び奇数フィールドのフレーム画像102Oからなる映像信号106とを交互に切り換えてプログレッシブ方式の平面映像表示装置7に送出する。
【0036】
実施例1の信号処理装置1によれば、フィールドスイッチング方式の立体映像信号からちらつきの少ない鮮明な立体映像をプログレッシブ方式の平面映像表示装置に表示することができるようになる。
【0037】
次に、本発明による実施例2の信号処理装置を説明する。
【0038】
(実施例2)
本発明による実施例2の信号処理装置1は、実施例1と同様の構成要素を有し、同様に機能する。図9に示すように、実施例2の信号処理装置1における信号変換回路3は、黒レベルを除く一定の信号値の擬似信号Dを発生するための擬似信号発生回路31と、各フィールド用の立体映像信号と擬似信号とを走査線(ライン)単位で切り換えて各フィールド用の合成信号を出力するスイッチ32L,32Rと、各フィールド用の合成信号をフィールド単位で切り換えて出力するスイッチ32RLと、擬似信号発生回路31、及びスイッチ32L,32R,32RLの同期タイミングを調整制御するタイミング制御信号を発生するタイミング制御回路32CLとを備える。実施例2の信号変換回路3は、実施例1の信号変換回路3について、より具体な一例を示すものである。実施例1と同様に、1フィールドごとに繰り返される右眼用及び左眼用のフィールド信号I,Iをそれぞれ入力して、或るフィールドの立体映像信号について、該フィールドの立体映像信号の走査線(例えば、立体映像信号用走査線LO1〜LON又はRE1〜REN)の間の走査線に一定の信号値の擬似信号Dを挿入し、プログレッシブ方式の映像信号ORLを生成する。尚、前述した実施例と同様の構成要素には同一の参照番号を付しており、同様の構成要素の説明は省略する。
【0039】
図10に示すように、実施例2の信号処理装置1における擬似信号発生回路31は、予め定められた信号値のグレーの映像信号を出力する具体的な一例を示す。実施例3の擬似信号発生回路31は、白映像信号発生回路311と、配分回路312と、黒映像信号発生回路313とを備える。白映像信号発生回路311は、映像信号の極大値に対応する白色レベルの白映像信号を発生する回路である。黒映像信号発生回路313は、映像信号の極小値に対応する黒色レベルの黒映像信号を発生する回路である。配分回路312は、予め定めた配分比率で、白映像信号発生回路311及び黒映像信号発生回路313からの混成させた混成信号を擬似信号Dとして送出する。
【0040】
実施例2の信号処理装置1によれば、フィールドスイッチング方式の立体映像信号からちらつきの少ない鮮明な立体映像をプログレッシブ方式の平面映像表示装置に表示することができるようになる。
【0041】
次に、本発明による実施例3の信号処理装置を説明する。
【0042】
(実施例3)
本発明による実施例3の信号処理装置1は、実施例1と同様の構成要素を有し、同様に機能する。実施例3の信号処理装置1は、擬似信号Dとして、1走査線前の信号の一部を基に決定する映像信号とする具体的な一例を示す。図11に示すように、実施例3の信号処理装置1における信号変換回路3は、黒レベルを除く一定の信号値の擬似信号Dを発生するために、1走査線前の信号の一部をサンプルホールドする各フィールド用のサンプルホールド回路321,322と各フィールド単位でサンプルホールド回路321,322の出力を選択する擬似信号選択用スイッチ32SHと、各フィールド用の立体映像信号と擬似信号とを走査線(ライン)単位で切り換えて各フィールド用の合成信号を出力するスイッチ32L,32Rと、各フィールド用の合成信号をフィールド単位で切り換えて出力するスイッチ32RLと、サンプルホールド回路321,322、及びスイッチ32SH,32L,32R,32RLの同期タイミングを調整制御するためのタイミング制御信号を発生するタイミング制御回路32CLとを備える。尚、前述した実施例と同様の構成要素には同一の参照番号を付しており、同様の構成要素の説明は省略する。
【0043】
実施例3の信号変換回路3は、実施例1の信号変換回路3について、より具体な一例を示すものである。実施例1と同様に、1フィールドごとに繰り返される右眼用及び左眼用のフィールド信号I,Iをそれぞれ入力して、或るフィールドの立体映像信号について、該フィールドの立体映像信号の走査線(例えば、LO1〜LON又はRE1〜REN)の間の走査線に一定の信号値の擬似信号Dを挿入し、プログレッシブ方式の映像信号ORLを生成する。
【0044】
即ち、信号変換回路3が、或るフィールドの立体映像信号について、該フィールドの立体映像信号の当該走査線の少なくとも一部の映像信号を抽出する一部信号抽出手段と、前記少なくとも一部の映像信号を一定の信号値の擬似信号として発生する擬似信号発生手段とを有するように機能し、各該フィールドの立体映像信号の走査線の間の走査線に、この一定の信号値(黒レベルを除く)の擬似信号Dを挿入し、プログレッシブ方式の映像信号ORLを生成する。
【0045】
例えば、この擬似信号Dとしての少なくとも一部の映像信号は、或るフィールドの立体映像信号用走査線の先頭の映像信号の信号値からなるものとできる。
【0046】
或いは又、擬似信号Dとしての少なくとも一部の映像信号は、或るフィールドの立体映像信号用走査線の先頭の映像信号から所定時間分の映像信号までの平均値からなるものとできる。
【0047】
或いは又、擬似信号Dとしての少なくとも一部の映像信号は、或るフィールドの立体映像信号用走査線の全体をサンプルしてホールドしたものとすることができる。
【0048】
実施例3の信号処理装置1によれば、フィールドスイッチング方式の立体映像信号からちらつきの少ない鮮明な立体映像をプログレッシブ方式の平面映像表示装置に表示することができるようになる。
【0049】
次に、本発明による実施例4の信号処理装置を説明する。
【0050】
(実施例4)
本発明による実施例4の信号処理装置1は、実施例1と同様の構成要素を有し、同様に機能する。実施例4の信号処理装置1は、擬似信号Dを、立体映像信号用走査線の1走査線前の信号の1走査線分を考慮した映像信号(平均、2乗平均、各フィールドの最大値の平均など)とするか、1走査線前の信号と1走査線後の信号とを考慮した映像信号(平均、2乗平均、各フィールドの最大値の平均など)とする具体的な一例を示す。
【0051】
図12に示すように、実施例4の信号処理装置1における信号変換回路3は、各フィールドの走査線毎の映像信号を格納し1ライン分遅延させることが可能なラインメモリ351,352と、黒レベルを除く一定の信号値の擬似信号Dを発生するために、立体映像信号用走査線の1走査線前の信号又は1走査線後の信号、或いはその双方を考慮した映像信号を平均処理(平均、2乗平均、各フィールドの最大値の平均など)する各フィールド用の平均値取得回路361,362と、ラインメモリ351,352からの出力と平均値取得回路361,362の出力とを走査線(ライン)単位で切り換えて各フィールド用の合成信号を出力するスイッチ32L2,32R2と、各フィールド用の合成信号をフィールド単位で切り換えて出力するスイッチ32RLと、ラインメモリ351,352、平均値取得回路361,362、及びスイッチ32L2,32R2,32RLの同期タイミングを調整制御するためのタイミング制御信号を発生するタイミング制御回路32CLとを備える。尚、前述した実施例と同様の構成要素には同一の参照番号を付しており、同様の構成要素の説明は省略する。
【0052】
本発明による実施例4の信号処理装置1は、実施例1と同様の効果を得るが、特に、擬似信号Dとして、立体映像信号用走査線の1走査線前の信号の1走査線分の映像信号を用いるだけでなく、例えばラインメモリを複数用意して、一定の信号値の擬似信号Dは、立体映像信号用走査線の2走査線分の立体映像信号を基に抽出した平均値とすることができる。この場合、立体映像信号用走査線の1走査線前の信号と1走査線後の信号の各の1走査線分の映像信号とを考慮した映像信号(平均、2乗平均、各フィールドの最大値の平均など)を擬似信号として発生するができる。
【0053】
即ち、信号変換回路3が、或るフィールドの立体映像信号用走査線の1走査線前の立体映像信号を記憶するラインメモリ351,352と、1走査線前の立体映像信号の平均処理を施す平均値取得回路361,362とを有し、平均処理を施した信号を擬似信号として発生させて、各該フィールドの立体映像信号の走査線の間の走査線に一定の信号値(黒レベルを除く)の擬似信号Dを挿入し、プログレッシブ方式の映像信号ORLを生成する。
【0054】
実施例4の信号処理装置1によれば、フィールドスイッチング方式の立体映像信号からちらつきの少ない鮮明な立体映像を、より効果的にプログレッシブ方式の平面映像表示装置に表示することができるようになる。
【0055】
次に、本発明による実施例5の信号処理装置を説明する。
【0056】
(実施例5)
本発明による実施例5の信号処理装置1は、実施例1と同様の構成要素を有し、同様に機能する。実施例5の信号処理装置1は、擬似信号Dを、表示用フィールドの直前のフィールドの全体の信号を考慮した信号(平均、2乗平均、各フィールドの最大値の平均など)とする具体的な一例を示す。
【0057】
図13に示すように、実施例5の信号処理装置1における信号変換回路3は、各フィールドの映像信号を格納し1フィールド分遅延させることが可能なフィールドメモリ331,332と、黒レベルを除く一定の信号値の擬似信号Dを発生するために、1フィールド分の映像信号を平均処理(平均、2乗平均、各フィールドの最大値の平均など)する各フィールド用の平均値取得回路341,342と、フィールドメモリ331,332からの出力と平均値取得回路341,342の出力とを走査線(ライン)単位で切り換えて各フィールド用の合成信号を出力するスイッチ32L,32Rと、各フィールド用の合成信号をフィールド単位で切り換えて出力するスイッチ32RLと、フィールドメモリ331,332、平均値取得回路341,342、及びスイッチ32L,32R,32RLの同期タイミングを調整制御するためのタイミング制御信号を発生するタイミング制御回路32CLとを備える。尚、前述した実施例と同様の構成要素には同一の参照番号を付しており、同様の構成要素の説明は省略する。
【0058】
本発明による実施例5の信号処理装置1は、実施例1と同様の効果を得るが、特に、擬似信号Dとして、1フィールド分の映像信号を平均処理したものを擬似信号として発生する。
【0059】
即ち、信号変換回路3が、或るフィールドの立体映像信号の直前の1フィールド分の立体映像信号を記憶するフィールドメモリ331,332と、1フィールド前の立体映像信号の平均処理を施す平均値取得回路341,342とを有し、平均処理を施した信号を擬似信号Dとして発生させ、各該フィールドの立体映像信号の走査線の間の走査線に一定の信号値(黒レベルを除く)の擬似信号Dを挿入し、プログレッシブ方式の映像信号ORLを生成する。
【0060】
実施例5の信号処理装置1によれば、フィールドスイッチング方式の立体映像信号からちらつきの少ない鮮明な立体映像を、より効果的にプログレッシブ方式の平面映像表示装置に表示することができるようになる。
【0061】
このように構成しても、実施例5の信号処理装置1によれば、フィールドスイッチング方式の立体映像信号からちらつきの少ない鮮明な立体映像を、より効果的にプログレッシブ方式の平面映像表示装置に表示することができるようになる。
【0062】
上述した実施例で説明したように、偏光メガネ方式による立体映像表示にあたり、インターレース方式のフィールドスイッチング方式の立体映像を左眼用は奇数(偶数)フィールドに、右眼用は偶数(奇数)フィールドの映像を、インターレース方式の信号をプログレッシブ方式に変換する時点で左眼用は奇数(偶数)走査線に、右眼用は偶数(奇数)走査線にちらつき抑制用の疑似映像データを挿入し、平面映像表示装置等の表示画面上で鮮明さを損なわずに表示できるようになる。
【0063】
上述した実施例において、代表的な例として本発明を説明したが、本発明の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換することができることは当業者に明らかである。例えば、本発明は、信号処理方法としても特徴づけることができるし、信号処理装置として構成するコンピュータに各手段及び機能を実行又は実現するためのプログラムとしても特徴付けられる。さらに、各実施例の信号処理装置を組み合わせて別の態様の信号処理装置を実現することもできる。従って、本発明は、上述の説明によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲によってのみ制限される。
【産業上の利用可能性】
【0064】
現在、CRT表示装置が市場から消え、一方それに代わって平面映像表示装置等が市場を独占している。その中において通常用いる立体映像表示装置は、平面映像表示装置を使っていわゆる走査線ごとに右眼用及び左眼用の偏光フィルタを貼付した3D平面映像表示装置が市場の主流となりつつある。本発明によれば、このような3D平面映像表示装置で従来のコンテンツの再利用が可能となるととともに、簡便な立体映像を必要とする産業に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】従来技術に基づいて構成される信号処理装置を備える立体映像表示システムのブロック図である。
【図2】従来技術に基づいて構成される信号処理装置を備える立体映像表示システムの動作を示す図である。
【図3】従来技術に基づいて構成される信号処理装置を備える立体映像表示システムの動作を示す図である。
【図4】従来技術に基づいて構成される信号処理装置を備える立体映像表示システムの動作を示す図である。
【図5】本発明による実施例1の信号処理装置1を備える立体映像表示システムのブロック図である。
【図6】本発明による実施例1の信号処理装置1を備える立体映像表示システムの動作を示す図である。
【図7】本発明による実施例1の信号処理装置1を備える立体映像表示システムの動作を示す図である。
【図8】本発明による実施例1の信号処理装置1を備える立体映像表示システムの動作を示す図である。
【図9】本発明による実施例1の信号処理装置1における信号変換回路のブロック図である。
【図10】本発明による実施例2の信号処理装置1における信号変換回路のブロック図である。
【図11】本発明による実施例3の信号処理装置1における信号変換回路のブロック図である。
【図12】本発明による実施例4の信号処理装置1における信号変換回路のブロック図である。
【図13】本発明による実施例5の信号処理装置1における信号変換回路のブロック図である。
【符号の説明】
【0066】
1 信号処理装置
2L 左眼用フィールド信号処理回路
2R 右眼用フィールド信号処理回路
3 信号変換回路
7 平面映像表示装置
31 擬似信号発生回路
32CL タイミング制御回路
32L,32R, 32RL, 32L2,32R2 スイッチ
32SH 擬似信号選択用スイッチ
101 立体映像表示システム
102 立体カメラ装置
103 再生装置
104 スイッチ
105 フィールドスイッチング切替装置
106 シャッタメガネ駆動回路
107 CRTディスプレイ
121R 右眼用カメラ
121L 左眼用カメラ
122 フィールドスイッチングデバイス
113 録画デバイス
311 白映像信号発生回路
312 配分回路
313 黒映像信号発生回路
321,322 サンプルホールド回路
331,332 フィールドメモリ
341,342 平均値取得回路
351,352 ラインメモリ
361,362 平均値取得回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プログレッシブ方式の平面映像表示装置に立体映像表示を提供するために、フィールドスイッチング方式の立体映像信号を処理する信号処理装置であって、
フィールドスイッチング方式の1フィールドごとに繰り返される右眼用及び左眼用の立体映像信号を入力して、或るフィールドの立体映像信号について、該フィールドの立体映像信号の走査線間に一定の信号値の擬似信号を挿入し、プログレッシブ方式の映像信号を生成するように制御する信号変換手段を有することを特徴とする信号処理装置。
【請求項2】
前記擬似信号は、予め定められたゼロレベルを除く一定の信号値を有することを特徴とする、請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項3】
前記信号変換手段は、
或るフィールドの立体映像信号について、該フィールドの立体映像信号の当該走査線の少なくとも一部の映像信号を抽出する一部信号抽出手段と、
前記少なくとも一部の映像信号を前記一定の信号値の擬似信号として発生する擬似信号発生手段とを有することを特徴とする、請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項4】
前記少なくとも一部の映像信号は、或るフィールドの立体映像信号用走査線の先頭の映像信号の信号値からなることを特徴とする、請求項3に記載の信号処理装置。
【請求項5】
前記少なくとも一部の映像信号は、或るフィールドの立体映像信号用走査線の先頭の映像信号から所定時間分の映像信号までの平均値からなることを特徴とする、請求項3に記載の信号処理装置。
【請求項6】
前記少なくとも一部の映像信号は、或るフィールドの立体映像信号用走査線の全体の平均値からなることを特徴とする、請求項3に記載の信号処理装置。
【請求項7】
前記信号変換手段は、
当該入力するフィールドスイッチング方式の立体映像信号における或るフィールドについて、該立体映像信号の立体映像信号用走査線の信号のうち1走査線分を記憶する記憶手段と、
前記記憶した1走査線分の映像信号から少なくとも一部の映像信号を抽出する一部信号抽出手段と、
前記少なくとも一部の映像信号に基づく信号値を前記一定の信号値の擬似信号として発生する擬似信号発生手段とを有することを特徴とする、請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項8】
前記信号変換手段は、
当該入力するフィールドスイッチング方式の立体映像信号における或るフィールドについて、該立体映像信号の立体映像信号用走査線の信号のうち2走査線分を記憶する記憶手段と、
前記記憶した2走査線分の各映像信号から少なくとも一部の映像信号を抽出する一部信号抽出手段と、
前記少なくとも一部の映像信号に基づく信号値を前記一定の信号値の擬似信号として発生する擬似信号発生手段とを有することを特徴とする、請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項9】
前記信号変換手段は、
当該入力するフィールドスイッチング方式の立体映像信号における或るフィールドについて、該立体映像信号の1フィールド分を記憶する記憶手段と、
前記記憶した1フィールド分の映像信号に基づく平均値を前記一定の信号値の擬似信号として発生する擬似信号発生手段とを有することを特徴とする、請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項10】
請求項1に記載の信号処理装置によって、プログレッシブ方式の平面映像表示装置に立体映像表示を提供するために、フィールドスイッチング方式の立体映像信号を処理する信号処理方法であって、
フィールドスイッチング方式の1フィールドごとに繰り返される右眼用及び左眼用の立体映像信号を入力して、或るフィールドの立体映像信号を表示するステップと、該フィールドの立体映像信号の走査線間に一定の信号値の擬似信号を挿入するステップとを含むことを特徴とする信号処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−87720(P2010−87720A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−252875(P2008−252875)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(594044646)株式会社エヌエイチケイメディアテクノロジー (20)
【Fターム(参考)】