説明

表示素子の製造方法

【課題】優れた駆動安定性、応答速度及び電荷効率を有する表示素子の製造方法を提供する。
【解決手段】対向する電極間に、白色散乱粒子及び、電気化学的な酸化または還元によって色の変化が可逆的に行える材料を含有する電解質組成物を有する表示素子の製造方法であって、水分量が100ppm以下である前記白色散乱粒子を用いて製造されることを特徴とする表示素子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表示素子の製造方法、特に反射型表示素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピューターの動作速度の向上、ネットワークインフラの普及、データストレージの大容量化と低価格化に伴い、従来紙への印刷物で提供されたドキュメントや画像等の情報を、より簡便な電子情報として入手、電子情報を閲覧する機会が益々増大している。
【0003】
この様な電子情報の閲覧手段として、従来の液晶ディスプレイやCRTディスプレイ、また近年では、有機ELディスプレイ等の発光型が主として用いられている。電子情報が文章の場合、比較的長時間にわたってこの閲覧手段を注視する必要があるが、発光型ディスプレイはフリッカーにより目が疲労するため、文章を長時間閲覧する手段として好適とはいえない。また発光型ディスプレイはその性質上、ある程度の厚みが必要であるため、持ち運びに不便、読む姿勢が制限される、長時間使用すると消費電力が嵩むといった欠点も知られている。
【0004】
これらの欠点を補う表示手段として、外光を利用し、像保持の為に電力を消費しない(メモリー性)反射型ディスプレイが知られており、偏光板を用いる方式、ポリマー分散型液晶を用いる方式、電気化学的な酸化還元による着色及び消色によって画像を形成する方式が知られている。
【0005】
特に、電気化学的な酸化還元による着色及び消色によって画像を形成する方式は、比較的入手しやすい金属塩化合物やエレクトロクロミック材料を用いることができること、低電圧で駆動が可能であること、素子の構成が簡便であること、コントラストに優れる等の利点があることから、盛んに研究開発が進められている。また、上記方式は電解質組成物中に酸化チタンのような白色散乱粒子を分散することにより、高いコントラストを得ることも可能である。
【0006】
しかしながら、いずれの方式の反射型ディスプレイにおいても、解決すべき課題として電解質組成物中の水分の問題が挙げられる。電解質組成物中に水分が存在している場合、各種材料を劣化させたり気泡が発生したりすることで、表示性能に不具合が発生する現象が存在する。
【0007】
特許文献1及び特許文献2には、白色散乱粒子を事前に熱処理を行ったり、調整後の電解質組成物を熱処理したりすることで電解質組成物中の水分量を抑制する方法が開示されている。しかしながら白色散乱粒子は電解質組成物中に分散するように有機物で被覆されているものが多く、事前の熱処理等では十分な水分除去ができなかった。
【0008】
また、白色散乱粒子が高濃度で添加された電解質組成物中の脱水を脱水剤により行うと、脱水剤の濾過分離が十分に行えないため、不具合の原因となる。
【0009】
この様に従来の脱水方法では電解質組成物中の水分を十分に取り除けないため、各種材料の劣化や気泡の発生を防げず、優れた駆動安定性、応答速度及び電荷効率を有する反射型ディスプレイは実現できていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−49539号公報
【特許文献2】特開2005−283986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上述したような従来の課題を解決するためのものであり、その目的は、優れた駆動安定性、応答速度及び電荷効率を有する表示素子の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、水分が100ppm以下の白色散乱粒子を用いて、表示素子を作製することを特徴としている。
【0013】
即ち、
1.対向する電極間に、白色散乱粒子及び、電気化学的な酸化または還元によって色の変化が可逆的に行える材料を含有する電解質組成物を有する表示素子の製造方法であって、水分量が100ppm以下である前記白色散乱粒子を用いて製造されることを特徴とする表示素子の製造方法。
2.前記白色散乱粒子を含有する前記電解質組成物の水分量が100ppm以下であることを特徴とする前記1に記載の表示素子の製造方法。
3.白色散乱粒子及び電解質組成物の水分量の測定は、水分気化法及びカールフィッシャー法より測定されることを特徴とする前記1または2に記載の表示素子の製造方法。
4.前記白色散乱粒子の水分量をモレキュラーシーブを用いて100ppm以下にすることを特徴とする前記1〜3のいずれか1つに記載の表示素子の製造方法。
5.前記白色散乱粒子の少なくとも一部が有機物により被覆されていることを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載の表示素子の製造方法。
【0014】
である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の製造方法により製造された表示素子は、優れた駆動安定性と改善された応答速度及び電荷効率を有することができた。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る白色散乱粒子の脱水方法の1形態を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
《表示素子の基本構成》
本発明に係る表示素子は、基板上に対向する対向電極及び透明電極を有し、対向する電極間に酸化または還元によって色の変化が可逆的に行える材料と、白色散乱粒子を含有する電解質組成物が封止された1つ以上の表示セルを有する表示素子のことであり、外光の反射によって表示を行う反射型ディスプレイであることが好ましい。
【0018】
また、本発明に係る電解質組成物は、少なくとも水分量が100ppm以下の白色散乱粒子及び、酸化または還元によって色の変化が可逆的に行える材料を含有しており、そのほかの材料として支持電解質、イオン液体、増粘剤、その他添加剤等を含有していても良い。
【0019】
《白色散乱粒子》
本発明に係る白色散乱粒子は、目視で白色を呈している粒子のことであり、粒子径分布が0.1μm以上、1.5μm未満の範囲に極大値を有することが好ましい。
【0020】
具体的な測定方法は、表面処理を行った白色散乱粒子を溶媒中に分散させた後、レーザー散乱式粒子径分布測定器等(例えば、SALD2200((株)島津製作所製)やゼータサイザー1000(マルバーン社製))により測定する方法、白色散乱粒子を直接透過型電子顕微鏡または走査型電子顕微鏡で観察し、得られた粒子画像により測定する方法を用いることができる。この時、球換算の体積粒子径を、その白色散乱粒子の粒子径とみなす。
【0021】
本発明に用いられる白色散乱粒子は、無機化合物としては、二酸化チタン(アナターゼ型あるいはルチル型)、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、リン酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、アルカリ土類金属塩、タルク、カオリン、ゼオライト、酸性白土、ガラス、等が挙げられ、有機化合物としてポリエチレン、ポリスチレン、アクリル樹脂、アイオノマー、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素−ホルマリン樹脂、メラミン−ホルマリン樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
【0022】
本発明に係る白色散乱粒子は単一の材料でも、複数の材料を混合して形成されていてもよい。また、本発明の白色散乱粒子はボイド等を有していてもよい。
【0023】
これらの白色散乱粒子のうち、高温時の着色防止、屈折率に起因する素子の反射率の観点から、二酸化チタンまたは酸化亜鉛を用いることがより好ましい。
【0024】
また、本発明に係る白色散乱粒子は、有機物または無機物によって表面処理されていることが好ましく、より好ましくは表面処理が有機物により行われていることである。
【0025】
白色散乱粒子を作製する方法としては、熱分解法、噴霧乾燥法、火炎噴霧法、プラズマ法、気相反応法、凍結乾燥法、加熱ケロシン法、加熱石油法、沈殿法(共沈法)、加水分解法(塩水溶液法、アルコキシド法、ゾルゲル法)、水熱法(沈殿法、結晶化法、水熱分解法、水熱酸化法)等が挙げられる。
【0026】
これらの方法のうち、小粒径で均一組成の粒子形成が可能であるという点で加水分解法、水熱合成法及び気相中での熱分解法が好ましい。
【0027】
更に、本発明に係る白色散乱粒子は十分な遮蔽性を有することが好ましく、そのためには白色散乱粒子の粒子径が適切な範囲にあり且つ、粒子径の分布が狭いことが好ましい。
【0028】
そのような白色散乱粒子を製造するには上記に挙げた原料を、生産性を落とさない程度でなるべく希薄にして製造することが好ましい。
【0029】
また、製造条件によりやむを得ず大粒子が混入してしまう場合には、粒子の製造時や回収後に概知の分級装置を用いて大粒子を除去することもできる。
【0030】
大粒子の除去方法としては、電気的に大粒子を除去する方法や、溶媒中に分散した粒子を濾過して大粒子を取り除く方法等があるが、特にエアロゾルを微分型電気移動度分級器(DMA:Differential Mobility Analyzer)で処理する方法が好ましく用いることができる。
【0031】
《無機物による表面処理》
白色散乱粒子表面に無機物や有機物を表面処理し分散させる溶媒への親和性を持たせる、または、表面活性サイトを被覆することにより耐久性の向上を図ることができる。
【0032】
一般的な無機物として、シリコン、アルミニウム、ジルコニウム、チタニウム、亜鉛等を含有する酸化物及び水酸化物が用いられており、アルミナまたはシリカによって表面処理を行うことが耐候性の観点より特に好ましい。
【0033】
特に高密度シリカ層で表面処理することにより、結晶水の乖離が少なく安定性に優れた白色散乱粒子を得ることができる。
【0034】
《有機物による表面処理》
有機物による表面処理は、比較的容易に均一な表面処理を行うことができ、優れた分散性を有する白色散乱粒子を得ることができる。ここで、有機物とは少なくとも一部に有機物を含む有機金属化合物も含む。
【0035】
表面処理の材料・方法は、特に限定されるものではなく、公知のいずれの方法も用いることができる。例えば、リン酸、硫酸、カルボン酸等の有機酸類を用いる方法や、カップリング剤等の表面処理剤による表面処理、ポリマーグラフト、メカノケミカルによる表面処理等が挙げられる。
【0036】
酸化チタンの表面処理に用いられる表面処理剤としては、トリメチロールプロパン、トリエチロールプロパン、(ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、エチレングリコール、トリエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール)等の多価アルコール類等が挙げられる。
【0037】
また、有機金属含有化合物としてシラン系カップリング剤をはじめとして、チタネート系、アルミネート系、ジルコネート系カップリング剤及びシリコーンオイル系表面処理剤を用いることができる。
【0038】
シラン系カップリング剤としては、ビニルシラザン、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、トリメチルアルコキシシラン、ジメチルジアルコキシシラン、メチルトリアルコキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等が挙げられる。
【0039】
シリコーンオイル系表面処理剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイルといったストレートシリコーンオイルやアミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、メタクリル変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、フェノール変性シリコーンオイル、片末端反応性変性シリコーンオイル、異種官能基変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、メチルスチリル変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸エステル変性シリコーンオイル、親水性特殊変性シリコーンオイル、高級アルコキシ変性シリコーンオイル、高級脂肪酸含有変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル等の変性シリコーンオイルを用いることができる。
【0040】
またこれらの表面処理剤はヘキサン、トルエン、メタノール、エタノール、アセトン、水等で適宜希釈して用いても良い。
【0041】
表面処理剤による表面処理の方法としては、湿式加熱法、湿式濾過法、乾式攪拌法、インテグルブレンド法、造粒法等が挙げられる。1000nm以下の粒子を表面処理する場合、乾式攪拌法が粒子凝集抑制の観点から好ましく用いられるが、これに限定されるものではない。
【0042】
これらの表面処理剤は1種類のみを用いても、複数種類を併用しても良い。更に、用いる表面処理剤によって得られる表面処理を施した白色散乱粒子の性状は異なるので、本発明の電解質組成物を得るにあたって、用いる増粘剤等他材料との親和性を考慮して適切な表面処理剤を選択することが好ましい。
【0043】
表面処理剤の割合は特に限定されるものではないが、表面処理後の白色散乱粒子に対して、表面処理剤の割合が0.05質量%〜3質量%であることが好ましく、0.1質量%〜1質量%であることがより好ましい。
【0044】
表面処理剤の量が上記の範囲にあるときは、白色散乱粒子の凝集が起こりにくく、かつ高い遮蔽性を保つことができる。
【0045】
本発明に係る白色散乱粒子は、有機物により表面処理された白色散乱粒子を用いることが好ましい。
【0046】
《白色散乱粒子の脱水》
本発明に用いられる白色散乱粒子は、含まれる水分を100ppm以下にしておくことで最終的に電解質組成物の水分量を抑制し、本発明の目的を達成することができる。例えば、銀塩化合物の酸化還元により画像形成を行う表示素子を駆動させる際に電解質組成物内の水分量が多いと、望ましくない反応により酸化銀や水酸化銀等が生成して電極表面を汚し、電極を劣化させることがある。
【0047】
本発明の製造方法により作製した表示素子は、従来方法により作製した表示素子に比較して水分量を大幅に減少させることができるため、このような電極劣化を極力抑えることができる。
【0048】
十分な駆動安定性を得るには電解液組成物中の水分量を100ppm以下、好ましくは50ppm以下にすることが好ましい。脱水に費やされる工数と、脱水による性能の向上のバランスを考慮した場合、電解液組成物の水分量は10ppm〜50ppmの範囲内にあることがより好ましい。
【0049】
白色散乱粒子を脱水する方法としては、加熱乾燥や減圧乾燥により脱水を行っても良いが、脱水剤を用いる方法がより好ましい。
【0050】
《脱水剤》
本発明に用いられる白色散乱粒子は脱水剤を用いて脱水することがより好ましい。脱水剤としてモレキュラーシーブ、塩化カルシウム、酸化アルミニウム、水素化カルシウム、酸化カルシウム、無水硫酸ナトリウム、無水硫酸マグネシウム、塩化アセチル、無水酢酸、無水トリフルオロ酢酸、五酸化二リン、シリカゲル等が挙げられる。
【0051】
モレキュラーシーブ及び五酸化二リンが好ましく用いられ、より好ましくはモレキュラーシーブである。適切な脱水剤の量は使用する脱水剤によって適宜調整されるが、モレキュラーシーブを用いて水分量が10000ppmの白色散乱粒子を脱水する場合には、白色散乱粒子に対して5質量%〜50質量%、好ましくは20質量%〜40質量%程度のモレキュラーシーブを用いて脱水することが望ましい。
【0052】
また、白色散乱粒子を脱水剤と共に溶媒に分散させて脱水する場合は、必要に応じて攪拌操作を伴っても良い。脱水時間は特に制限はされないが、1〜2週間程度静置することで30ppm以下まで脱水することが可能である。
【0053】
白色散乱粒子を脱水剤と共に溶媒に分散させて脱水する一例としては、図1に示す様に白色散乱粒子1及び脱水剤4を、フィルター3を介して溶媒2に分散させる。このような方法で脱水することで、脱水剤の電解質組成物中へのコンタミネーションを防止することができる。この時、使用される溶媒には特に制限はない。
【0054】
使用されるフィルターとしては、耐溶媒があれば特に限定はなくポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエーテルスルフォン、メンブレン、金属メッシュ等が使用できるが、中でも安定性からPTFEが好ましく用いられる。
【0055】
使用するフィルター径は白色散乱粒子が透過せず、溶媒分子が透過できるものであれば特に制限はないが、濾過速度の観点より0.25μm以上が好ましく、白色散乱粒子の粒子径以下のフィルターを用いることが好ましい。
【0056】
《水分量の測定方法》
水分量の測定方法としては、カールフィッシャー法、加熱減量法、ガスクロマトグラフィ法等により測定できるが、本発明では微量水分を精度よく測定できるカールフィッシャー法が好ましく用いられる。
【0057】
液体の電解質組成物の水分量を測定する方法としては、電量滴定法または容量滴定法のいずれも好ましく用いることができる。例えば、電量滴定法で測定する場合、液体の電解質組成物を資料として陰極液内に注入することにより測定することができる。
【0058】
白色散乱粒子などの固体の水分量を測定する方法としては、乾燥した窒素ガス気流中に試料を加熱して水分を気化させ、脱水溶剤や電解液に捕集して測定する水分気化方式や、遠心分離機を用いて液相部分を測定する方法の他に、白色散乱粒子を混合する前の電解質組成物の水分量と、白色散乱粒子の混合された電解質組成物の水分量とを測定し、その差を求めることで、白色散乱粒子の水分量を求める方法等も用いることができる。
【0059】
本発明では、白色散乱粒子及び電解質組成物の水分測定は、水分気化法により測定することが好ましい。
【0060】
本発明でいう水分気化法とは、白色散乱粒子を水分気化装置内に入れ、白色散乱粒子を加熱しながら乾燥窒素ガスをフローし、白色散乱粒子内の水分を気化させる。フローさせた水分を含む窒素ガスを電解液または乾燥溶媒にバブリングすることで窒素ガス内の水分を電解液または乾燥溶媒に補足させる。
【0061】
その電解液または乾燥溶媒をカールフィッシャー法により測定し、測定した水分量を白色散乱粒子の水分量(ppm)としてみなす測定法である。
【0062】
ここで、カールフィッシャー法により測定された、水分量の単位である、ppmは、質量百万分率を表す。
【0063】
本発明で白色散乱粒子及び電解質組成物を水分気化法により測定する場合は、白色散乱粒子が120度になるように加熱することが好ましい。
【0064】
《色の変化が可逆的に行える材料》
本発明に係る「色の変化が可逆的に行える材料」とは、電気化学的な酸化反応または還元反応による色の変化が可逆的に行うことのできる機能(作用)を有する化合物、またはそれを含む材料のことであり、化合物の着色と消色による色の変化を行う化合物も含む。好ましくはエレクトロデポジション方式により色の変化を可逆的に行うことのできる化合物、及びエレクトロクロミック化合物のことを指す。
【0065】
《エレクトロデポジション方式により色の変化を可逆的に行うことのできる化合物》
本発明に係るエレクトロデポジション方式により色の変化を可逆的に行うことのできる化合物(以下、エレクトロデポジション化合物とも記す)とは、酸化還元に伴って溶解、析出を可逆的に行うことで色の変化を可逆的に行う化合物のことであり、より好ましくは着色と消色を可逆的に行うことのできる金属塩化合物のことである。
【0066】
ここで、金属塩化合物とは、対向電極どちらかで溶解・析出を行うことができる金属種を含む塩化合物であればよく、対イオンに特に制限は無い。金属塩化合物に用いられる好ましい金属種は、銀、ビスマス、銅、ニッケル、鉄、クロム、亜鉛等であり、好ましいのは銀、ビスマスであり、銀塩化合物が特に好ましい。
【0067】
本発明に係る銀塩化合物とは、銀または、銀を化学構造中に含む化合物、例えば、酸化銀、硫化銀、金属銀、銀コロイド粒子、ハロゲン化銀、銀錯体化合物、銀イオン等の化合物の総称である。
【0068】
本発明に係る電解質組成物に含まれる金属イオン濃度は、0.2モル/kg〜2.0モル/kgが好ましい。金属イオン濃度が0.2モル/kg以上であれば、十分な濃度の銀溶液となり所望の駆動速度を得ることができ、2モル/kg以下であれば析出を防止し、低温保存時での電解質組成物の安定性が向上する。
【0069】
《エレクトロクロミック化合物》
本発明に係るエレクトロクロミック化合物(以下、EC化合物とも記す)とは、電気化学的な酸化反応及び還元反応により、色の変化を可逆的に行うことのできる化合物のことを指す。
【0070】
EC化合物としては、酸化タングステン、酸化イリジウム、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化チタン、酸化インジウム、酸化クロム、酸化マンガン、プルシアンブルー、窒化インジウム、窒化錫、窒化塩化ジルコニウム等の無機化合物に加え、有機金属錯体、導電性高分子化合物及び有機化合物が知られている。
【0071】
エレクトロクロミック特性を示す有機金属錯体としては、金属−ビピリジル錯体、金属フェナントロリン錯体、金属−フタロシアニン錯体、希土類ジフタロシアニン錯体、フェロセン等が挙げられる。
【0072】
エレクトロクロミック特性を示す導電性高分子化合物としては、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリイソチアナフテン、ポリアニリン、ポリフェニレンジアミン、ポリベンジジン、ポリアミノフェノール、ポリビニルカルバゾール、ポリカルバゾール及びこれらの誘導体等が挙げられる。
【0073】
また例えば、特開2007−112957号公報に記載されているような、(ビス)ターピリジン誘導体と金属イオンから成る高分子材料もエレクトロクロミック特性を示す。
【0074】
エレクトロクロミック特性を示す有機化合物としては、ビオロゲン等ピリジニウム系化合物、フェノチアジン等アジン系化合物、スチリル系化合物、アントラキノン系化合物、ピラゾリン系化合物、フルオラン系化合物、ドナー/アクセプター型化合物類(例えば、テトラシアノキノジメタン、テトラチアフルバレン)等が挙げられる。その他、酸化還元指示薬、pH指示薬として知られている化合物を用いることもできる。
【0075】
《色調によるEC化合物の分類》
EC化合物を、色調変化の点で分類すると、下記3つのクラスに分けられる。
【0076】
クラス1:酸化還元によりある特定の色から別の色に変化するEC化合物。
【0077】
クラス2:酸化状態で実質無色であり、還元状態である特定の着色状態を示すEC化合物。
【0078】
クラス3:還元状態で実質無色であり、酸化状態である特定の着色状態を示すEC化合物。
【0079】
本発明の表示素子においては、目的・用途により上記クラス1からクラス3のEC化合物を適宜選択することができる。
【0080】
《クラス1のEC化合物》
クラス1のEC化合物は酸化還元によりある特定の色から別の色に変化するEC化合物であり、その取り得る酸化状態に於いて、二色以上の表示が可能な化合物である。
【0081】
クラス1に分類される化合物としては、例えばVは酸化状態から還元状態へ変化することで橙色から緑色に変化し、同様にRhは黄色から暗緑色に変化する。
【0082】
有機金属錯体の多くはクラス1に分類され、ルテニウム(II)ビピリジン錯体、例えばトリス(5,5′−ジカルボキシルエチル−2,2′−ビピリジン)ルテニウム錯体は+2〜−4価の間で、順にオレンジ色から、紫、青、緑青色、褐色、赤錆色、赤へと変化する。希土類ジフタロシアニン類の多くも、このようなマルチカラー特性を示す。例えばルテチウムジフタロシアニンの場合、酸化に従い順次、紫色から青、緑、赤橙色へと変化する。
【0083】
また、導電性ポリマーもその多くはクラス1に分類される。例えばポリチオフェンは酸化状態から還元状態へ変化することで青から赤へと変化し、ポリピロールは褐色から黄色へと変化する。またポリアニリン等では、マルチカラー特性を示し酸化状態の紺色から順に青色、緑色、淡黄色へと変化する。
【0084】
クラス1に分類されるEC化合物は、単一の化合物で、多色表示が可能であるというメリットを有するが、反面実質無色といえる状態を作れないという欠点を有する。
【0085】
《クラス2のEC化合物》
クラス2のEC化合物は、酸化状態で無色乃至は極淡色であり、還元状態である特定の着色状態を示す化合物である。
【0086】
クラス2に分類される無機化合物としては、下記化合物が挙げられ、各々還元状態でカッコ内に示した色を示す。WO(青)、MnO(青)、Nb(青)、TiO(青)等。
【0087】
クラス2に分類される有機金属錯体としては、例えばトリス(バソフェナントロリン)鉄(II)錯体が挙げられ、還元状態で赤色を示す。
【0088】
クラス2に分類される有機化合物としては、特開昭62−71934号公報、特開2006−71765号公報等に記載されている化合物、例えばテレフタル酸ジメチル(赤)、4,4′−ビフェニルカルボン酸ジエチル(黄色)、1,4−ジアセチルベンゼン(シアン)、或いは特開平1−230026号公報、特表2000−504764号公報等に記載されているテトラゾリウム塩化合物等が挙げられる。
【0089】
クラス2に分類される化合物として、最も代表的なのはビオロゲン等ピリジニウム系化合物で有る。ビオロゲン系化合物は表示が鮮明であること、置換基を変えること等により色のバリエーションを持たせることが可能であること等の長所を有しているため、有機化合物の中では最も盛んに研究されている。ビオロゲン等ピリジニウム系化合物としては、例えば、特表2000−506629号公報等に記載されている化合物が挙げられる。
【0090】
以下に、本発明に用いることができるビオロゲン等ピリジニウム化合物を例示するが、これらに限定されない。
【0091】
【化1】

【0092】
【化2】

【0093】
《クラス3のEC化合物》
クラス3のEC化合物は、還元状態で無色または極淡色であり、酸化状態で着色状態を示す化合物である。
【0094】
クラス3に分類される無機化合物としては、例えば酸化イリジウム(暗青色)、プルシアンブルー(青)等が挙げられる(各々酸化状態でカッコ内に示した色を示す)。
【0095】
クラス3に分類される導電性ポリマーとしては、例は少ないが、例えば特開平6−263846号公報に記載のフェニルエーテル系化合物が上げられる。
【0096】
クラス3に分類される化合物としては多数の化合物が知られているが、スチリル系化合物、フェナジン、フェノチアジン、フェノキサジン、アクリジン等のアジン系化合物、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール等のアゾール系化合物等が好ましい。
【0097】
以下に、本発明に用いることができるスチリル系化合物、及びアジン系化合物、アゾール系化合物を例示するが、これらに限定されない。
【0098】
【化3】

【0099】
【化4】

【0100】
EC化合物としては、特に着色の多様性、低駆動電圧、メモリー性等の点でアゾール系化合物が好ましい。本発明に於いて、最も好ましい化合物は下記一般式(L)で表される化合物である。
【0101】
《一般式(L)で表されるエレクトロクロミック化合物》
以下、本発明に係る前記一般式(L)で表されるエレクトロクロミック化合物について説明する。
【0102】
【化5】

【0103】
一般式(L)において、Rlは芳香族炭化水素基(アリール基ともいう)を表し、Rl、Rlは各々水素原子または置換基を表す。Xは、−N(Rl)−、酸素原子または硫黄原子を表し、Rlは水素原子、または置換基を表す。
【0104】
中でも、Rlとしては、フェニル基が好ましく、更に好ましくは置換または無置換の2−ヒドロキシフェニル基または4−ヒドロキシフェニル基である。
【0105】
Rlは、無置換でもよく、置換基を有していても良いが、置換基としては特に制限は無く、例えば、後述するRl、Rlで各々表される置換基を有していてもよい。
【0106】
一般式(L)において、Rl、Rlで各々表される置換基としては、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、2−ブテニル基、1,3−ブタジエニル基、2−ペンテニル基、イソプロペニル基等)、シクロアルケニル基(例えば、シクロヘキセニル基、シクロペンテニル基等)、アルキニル基(例えば、エチニル基、プロパルギル基等)、グリシジル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、芳香族炭化水素基(芳香族炭化水素環基、芳香族炭素環基、アリール基等ともいい、例えば、フェニル基、p−クロロフェニル基、メシチル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基、アズレニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、インデニル基、ピレニル基、ビフェニリル基等)、芳香族複素環基(ヘテロアリール基ともいい、例えば、ピリジル基、ピリミジニル基、フリル基、ピロリル基、チエニル基、イミダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ピラジニル基、トリアゾリル基(例えば、1,2,4−トリアゾール−1−イル基、1,2,3−トリアゾール−1−イル基等)、オキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアゾリル基、イソオキサゾリル基、イソチアゾリル基、フラザニル基、キノリル基、ベンゾフリル基、ジベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、ジアザカルバゾリル基(前記カルボリニル基のカルボリン環を構成する炭素原子の一つが窒素原子で置き換わったものを示す)、キノキサリニル基、ピリダジニル基、トリアジニル基、キナゾリニル基、フタラジニル基等)、非芳香族複素環基(例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロチオフェニル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等)、シクロアルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基等)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等)、アミド基(例えば、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、ジメチルカルボニルアミノ基、プロピルカルボニルアミノ基、ペンチルカルボニルアミノ基、シクロヘキシルカルボニルアミノ基、2−エチルヘキシルカルボニルアミノ基、オクチルカルボニルアミノ基、ドデシルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基、ナフチルカルボニルアミノ基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基ナフチルウレイド基、2−ピリジルアミノウレイド基等)、スルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基、2−エチルヘキシルスルフィニル基、ドデシルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2−ピリジルスルフィニル基等)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基等)、アリールスルホニル基またはヘテロアリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、フッ化炭化水素基(例えば、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基等)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、シリル基(例えば、トリメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリフェニルシリル基、フェニルジエチルシリル基等)、ホスホノ基等が挙げられる。
【0107】
これらの置換基は、上記の置換基によって更に置換されていてもよい。また、これらの置換基は複数が互いに結合して環を形成していてもよい。
【0108】
R1、Rlで表される置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基または非芳香族複素環基が好ましい。また、Rl、Rlは互いに連結して、環構造を形成しても良い。
【0109】
Rl、Rlの組み合わせとしては、双方共に置換基を有しても良いフェニル基、複素環基である場合、または、いずれか一方が置換基を有しても良いフェニル基、複素環基であり、他方が置換基を有しても良いアルキル基の組み合わせである。
【0110】
Xとして好ましく用いられるのは、−N(Rl)−である。
【0111】
Rlで表される置換基は、Rl、Rlで各々表される置換基と同義であるが、中でも、水素原子、アルキル基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、非芳香族複素環基、アシル基が好ましく、更に好ましくは、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基、アシル基である。
【0112】
本発明においては、本発明に係る一般式(L)で表される化合物が、電極表面と化学吸着または物理吸着する基を有していることが好ましい。
【0113】
ここで、本発明に係る化学吸着とは、電極表面との化学結合による比較的強い吸着状態であり、本発明に係る物理吸着とは、電極表面と吸着物質との間に働くファンデルワールス力による比較的弱い吸着状態である。
【0114】
また、本発明に係る吸着性基は、化学吸着性の基である方が好ましく、化学吸着する吸着性基としては、−COOH、−P=O(OH)、−OP=O(OH)及び−Si(OR)(Rは、アルキル基を表す)が好ましい。
【0115】
上記一般式(L)で表されるアゾール化合物の中でも、下記一般式(L2)で表されるイミダゾール系化合物が特に好ましく用いられる。
【0116】
《一般式(L2)で表されるイミダゾール系化合物》
本発明に係る一般式(L2)で表されるイミダゾール系化合物について説明する。
【0117】
【化6】

【0118】
一般式(L2)において、Rl21、Rl22は、各々アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルオキシ基、アルケニルオキシ基、アルキニルオキシ基、アシルアミノ基、カルバモイル基、アシル基、またはスルファモイル基を表し、各々の基は、一般式(L)において、Rl21、Rl22で表される置換基に記載の各基と同義である。
【0119】
中でも、Rl21、Rl22で表される基として好ましいのは、アルキル基(特に好ましくは、イソプロピル基、tert−ブチル基等の分岐アルキル基である。)、シクロアルキル基、アルキルオキシ基、シクロアルコキシ基が好ましい。
【0120】
一般式(L2)において、R123は、芳香族炭化水素基または芳香族複素環基を表し、各々の基は、一般式(L)において、Rl21、Rl22で表される置換基に記載の各基と同義である。
【0121】
中でも、Rl23で表される基として好ましいのは、フェニル基、5員または6員の芳香族複素環基(例えば、チエニル基、フリル基、ピロリル基、ピリジル基等)が好ましい。
【0122】
一般式(L2)において、Rl24は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基を表し、各々の基は、一般式(L)において、Rl21、Rl22で表される置換基に記載の各基と同義である。
【0123】
中でも、Rl24で表される基として好ましいのは、フェニル基、5員または6員の芳香族複素環基(例えば、チエニル基、フリル基、ピロリル基、ピリジル基等)または、アルキル基が好ましい。
【0124】
一般式(L2)において、Rl25は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基またはアシル基を表し、中でも、Rl25として特に好ましいのは、水素原子または芳香族炭化水素基である。
【0125】
ここで、各々の基は、一般式(L)において、Rl21、Rl22で表される置換基に記載の各基と同義である。
【0126】
これらRl21〜Rl25で表される基は、一般式(L)において、Rl、Rlで各々表される置換基を更に有していてもよい。
【0127】
但し、Rl21からRl25で表される基の少なくとも1つは、その部分構造として−COOH、−P=O(OH)、−OP=O(OH)及び−Si(OR)(Rは、アルキル基を表す)を有する。
【0128】
また、一般式(L2)を電極上に固定する際、Rl21からRl25で示される基の少なくとも一つが、部分構造として、−P=O(OH)、−Si(OR)(Rは、アルキル基を表す)を有することが好ましく、特にRl23若しくはRl24で示される基の部分構造として−Si(OR)(Rは、アルキル基を表す)を有することが好ましい。
【0129】
以下に、一般式(L)で表されるEC化合物または一般式(L2)で表されるEC化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0130】
【化7】

【0131】
【化8】

【0132】
【化9】

【0133】
【化10】

【0134】
【化11】

【0135】
【化12】

【0136】
【化13】

【0137】
【化14】

【0138】
【化15】

【0139】
【化16】

【0140】
【化17】

【0141】
《支持電解質》
本発明において用いられる支持電解質としては、電気化学の分野または電池の分野で通常使用される塩類、酸類、アルカリ類が使用できる。
【0142】
塩類としては、特に制限はなく、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等の無機イオン塩、4級アンモニウム塩、環状4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム塩等が使用できる。
【0143】
塩類の具体例としては、ハロゲンイオン、SCN、ClO、BF、CFSO、(CFSO、(CSO、PF、AsF、CHCOO、CH(C)SO、及び(CSOから選ばれる対アニオンを有するLi塩、Na塩、あるいはK塩が挙げられる。
【0144】
またハロゲンイオン、SCN、ClO、BF、CFSO、(CFSO、(CSO、PF、AsF、CHCOO、CH(C)SO、及び(CSOから選ばれる対アニオンを有する4級アンモニウム塩、具体的には、(CHNBF、(CNBF、(n−CNBF、(CNBr、(CNClO、(n−CNClO、CH(CNBF、(CH(CNBF、(CHNSOCF、(CNSOCF、(n−CNSOCF、更には、下記式で表される化合物が挙げられる。
【0145】
【化18】

【0146】
またハロゲンイオン、SCN、ClO、BF、CFSO、(CFSO、(CSO、PF、AsF、CHCOO、CH(C)SO、及び(CSOから選ばれる対アニオンを有するホスホニウム塩、具体的には、(CHPBF、(CPBF、(CPBF、(CPBF等が挙げられる。また、これらの混合物も好適に用いることができる。
【0147】
本発明に用いられる支持電解質としては4級アンモニウム塩が好ましく、特に4級スピロアンモニウム塩が好ましい。また対アニオンとしてはClO、BF、CFSO、(CSO、PFが好ましく、特にBFが好ましい。
【0148】
電解質塩の使用量は任意であるが、一般的には、電解質塩は溶媒中に上限としては20M以下、好ましくは10M以下、更に好ましくは5M以下存在していることが望ましく、下限としては通常0.01M以上、好ましくは0.05M以上、更に好ましくは0.1M以上存在していることが望ましい。
【0149】
固体電解質の場合には、電子伝導性やイオン伝導性を示す以下の化合物を電解質中に含むことができる。
【0150】
パーフルオロスルフォン酸を含むフッ化ビニル系高分子、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、トリフェニルアミン類、ポリビニルカルバゾール類、ポリメチルフェニルシラン類、CuS、AgS、CuSe、AgCrSe等のカルコゲニド、CaF、PbF、SrF、LaF、TlSn、CeF等の含フッ素化合物、LiSO、LiSiO、LiPO等のLi塩、ZrO、CaO、Cd、HfO、Y、Nb、WO、Bi、AgBr、AgI、CuCl、CuBr、CuI、LiI、LiBr、LiCl、LiAlCl、LiAlF、AgSBr、CNHAg、RbCu16Cl13、RbCuCl10、LiN、LiNI、LiNBr等の化合物が挙げられる。
【0151】
《イオン液体》
また、本発明の電解質組成物にはイオン液体を含んでもよい。
【0152】
イオン液体は常温溶融塩ともいわれ、融点が100℃以下の塩である。イオン液体は、強い静電的な相互作用をもっているため蒸気圧がほとんどなく、高温でも蒸発や揮発をしない。
【0153】
本発明で用いるイオン液体とは、式Qで表され、20℃〜100℃、好ましくは20℃〜80℃、より好ましくは20℃〜60℃、更に好ましくは20℃〜40℃、特に20℃で液体として存在する塩のことを指し、粘度(25℃)は、常温で融体である限り特に制限されないが、好ましくは1mPa・s〜200mPa・sである。
【0154】
更に、式中Qで表されるカチオン成分はオニウムカチオンが好ましく、更に好ましくはアンモニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、スルホニウムカチオン及びホスホニウムカチオンである。
【0155】
上述のイオン液体について具体的に詳述すると、上式中のQとしては、R、R、R+P、R=CR、R=CR[ここで、RからRは、互いに独立して、水素、飽和または不飽和の炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数7〜11のアラルキル基、R−X−(R−Y−)−(式中、Rは炭素数4以下のアルキル基、Rは炭素数4以下のアルキレン基、X及びYは酸素原子または硫黄原子、nは0〜10の整数を示す)を表し、これらの基は置換基を有していても良い]から成る群から選択されるアンモニウム及び/またはホスホニウムイオン、R=CR−R−RC=N、R−R−S、R=CR−R−RC=P(ここで、R、R及びRは、前記で定義したものと同じであり、そして、Rは、炭素数1〜6のアルキレンまたはフェニレン基を表し、これらの基は置換基を有していても良い)から成る群から選択される第四級アンモニウムまたはホスホニウムイオン、更には下記一般式で表される窒素、硫黄及び燐原子から選ばれる原子を1、2または3個含む窒素、硫黄及び燐原子含有複素環から誘導されるアンモニウムイオン、スルホニウムイオンまたはホスホニウムイオン等を挙げることができる。
【0156】
【化19】

【0157】
式中R及びRはこの上で定義した通りであり、Zは、N、N=C、S、PあるいはP=Cを含む4〜10員環を構成しうる原子を指し、この構成する原子には置換基を有していても良い。
【0158】
上述の中でR〜Rの具体的な例はとしては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等の直鎖または分枝を有するアルキル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等のシクロアルキル基、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシ基、低級アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等)、カルボキシ基、アセチル基、プロパノイル基、チオール基、低級アルキルチオ基(メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基等)、アミノ基、低級アルキルアミノ基、ジ低級アルキルアミノ基等の置換基を1〜3個有するフェニル基、ナフチル基、トルイル基、キシリル基等のアリール基、ベンジル等のアラルキル基等を挙げることができる。
【0159】
また、Rの具体的な例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等のアルキル基等が挙げられ、Rとしては、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、プロピレン基、エチルエチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等のアルキレン基を挙げることができる。
【0160】
更にRの具体的な例はとしては、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、プロピレン基、エチルエチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等のアルキレン基、o−フェニレン基、m−フェニレン基、p−フェニレン基等のフェニレン基等を挙げることができる。
【0161】
また、式中のAで表される対アニオンとしては、ヘキサフルオロ燐酸塩、ヘキサフルオロアンチモン酸塩、ヘキサフルオロヒ酸塩、フルオロスルホン酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、硝酸塩、アルキルスルホン酸塩、フッ化アルキルスルホン酸塩または水素硫酸塩を表す。
【0162】
更に、国際公開95/18456号パンフレット、特開平8−259543号公報、特開2001−243995号公報、電気化学第65巻11号923頁(1997年)、欧州特許第718288号明細書、J.Electrochem.Soc.,Vol.143,No.10,3099(1996)、Inorg.Chem.1996,35,1168〜1178等に記載されているピリジニウム塩、イミダゾリウム塩、トリアゾリウム塩等も本発明に応じては適時選択して用いることができる。
【0163】
《電解質組成物の固定化》
本発明に係る電解質組成物は、安定性の確保や外部への流出を抑制する為に、化学架橋剤による硬化(特開2007−163865号公報)や、組成物の光重合(特開2007−141658号公報)を用いて電解質組成物の固定化を行うことができる。
【0164】
《増粘剤》
本発明の電解質組成物には増粘剤を使用することができ、例えば、ゼラチン、アラビアゴム、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(アルキレングリコール)、カゼイン、デンプン、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メチルメタクリル酸)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(メタクリル酸)、コポリ(スチレン−無水マレイン酸)、コポリ(スチレン−アクリロニトリル)、コポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(ビニルアセタール)類(例えば、ポリ(ビニルホルマール)及びポリ(ビニルブチラール))、ポリ(エステル)類、ポリ(ウレタン)類、フェノキシ樹脂、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(エポキシド)類、ポリ(カーボネート)類、ポリ(ビニルアセテート)、セルロースエステル類、ポリ(アミド)類、疎水性透明バインダーとして、ポリビニルブチラール、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリル酸、ポリウレタン等が挙げられる。
【0165】
これらの増粘剤は2種以上を併用して用いてもよい。
【0166】
また、特開昭64−13546号公報の71〜75頁に記載の化合物を挙げることができる。これらの中で好ましく用いられる化合物は、各種添加剤との相溶性と白色散乱粒子の分散安定性向上の観点から、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ヒドロキシプロピルセルロース類、ポリアルキレングリコール類、ポリビニルアセタール類である。
【0167】
《脱気工程》
本発明において電解質組成物の溶存気体を脱気・除去し、不活性ガスに置換することで安定性の向上を図れるのでより好ましい。具体的な脱気操作として、減圧法、凍結脱気法、膜脱気法等が挙げられ、電解質組成物の物性によって適宜選択できるが、減圧法がより好ましく用いられる。使用される不活性ガスとしては、窒素ガス、アルゴンガス等が好適に用いられる。
【0168】
電解質組成物中の溶存酸素濃度は市販のDO計等を用いることにより測定ができ、好ましくは溶存酸素濃度が1.0ml/L以下、より好ましくは0.5ml/L以下にすることで安定性に優れた電解質組成物を得ることができる。
【0169】
《基板》
本発明の表示素子に用いることのできる基板としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン類、ポリカーボネート類、セルロースアセテート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンジナフタレンジカルボキシラート、ポリエチレンナフタレート類、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリビニルアセタール類、ポリスチレン等の合成プラスチックフィルムも好ましく使用できる。また、シンジオタクチック構造ポリスチレン類も好ましい。
【0170】
これらは、例えば、特開昭62−117708号公報、特開平1−46912号公報、同1−178505号公報に記載されている方法等により得ることができる。更に、ステンレス等の金属製基盤や、バライタ紙、及びレジンコート紙等の紙支持体ならびに上記プラスチックフィルムに反射層を設けた支持体、特開昭62−253195号公報(29〜31頁)に支持体として記載されたものが挙げられる。
【0171】
リサーチ・ディスクロージャー(以下、RDと略する)第176巻Item/17643(1978年12月)の28頁、同187巻Item/18716(1979年11月)の647頁右欄から648頁左欄及び、同307巻Item/307105の879頁に記載されたものも好ましく使用できる。
【0172】
これらの支持体には、米国特許第4,141,735号公報のようにTg以下の熱処理を施すことで、巻き癖をつきにくくしたものを用いることができる。また、これらの支持体表面を支持体と他の構成層との接着の向上を目的に表面処理を行っても良い。
【0173】
本発明では、グロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理を表面処理として用いることができる。更に公知技術第5号(1991年3月22日アズテック有限会社発行)の44〜149頁に記載の支持体を用いることもできる。
【0174】
更にRD308巻Item/308119(1989年12月)の1009頁やプロダクト・ライセシング・インデックス、第92巻P108の「Supports」の項に記載されているものが挙げられる。その他に、ガラス基板や、ガラスを練りこんだエポキシ樹脂を用いることができる。
【0175】
《透明電極》
本発明の表示素子に用いることのできる透明電極としては、透明で電気を通じるものであれば特に制限はない。例えば、Indium Tin Oxide(ITO:インジウム錫酸化物)、Indium Zinc Oxide(IZO:インジウム亜鉛酸化物)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化インジウム、酸化亜鉛、白金、金、銀、ロジウム、銅、クロム、炭素、アルミニウム、シリコン、アモルファスシリコン、BSO(Bismuth Silicon Oxide)等が挙げられる。
【0176】
電極をこのように形成するには、例えば、基板上にITO膜をスパッタリング法等でマスク蒸着するか、ITO膜を全面形成した後、フォトリソグラフィ法でパターニングすればよい。
【0177】
表面抵抗値としては、10Ω/□以下が好ましく、1Ω/□以下がより好ましい。透明電極の厚みは特に制限はないが、0.1μm〜20μmの範囲であることが好ましい。
【0178】
上記抵抗値を達成する為に、低抵抗な金属部材からなるバスバーや集電グリッド等を透明導電性基板上に形成させ、透明導電膜の抵抗を補う構成も好適に使用できる。
【0179】
集電グリッドの形成法としては、例えば、銀粒子ペーストをスクリーン印刷で基板上に塗布し焼成して集電グリッドとする方法が最も一般的ではあるが、もう少し精巧なグリッドを形成させる技術として、銅箔をエッチングして集電グリッドとする技術等も本発明に適用できる。
【0180】
集電グリッドは、細線からなるパターン上に、電解メッキまたは無電解メッキによって導電性金属をメッキした構成で作製することでパターンが形成することもできる。導電性の高い金属でメッキ被覆することで、集電グリッドの低抵抗化と高開口率を両立することができる。パターンを形成する方法としては、特に限定されず、例えば、印刷法、エッチング法等を挙げることができる。
【0181】
銀細線を印刷方式で形成する場合には、印刷用インクに含まれる金属成分の種類、量、サイズ、形状等を調整することにより、細線部の形状や導電性を調整することが可能となる。細線を印刷で行う場合、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷等の印刷方式を用いることができる。
【0182】
中でも、グラビア印刷及びインクジェット印刷は、細かいパターンを連続的に形成しやすいという観点で特に好ましく用いることができる。
【0183】
集電グリッドは公知種々の金属や金属酸化物等からなる無機系導電性材料、ポリマー系導電性材料、無機有機複合型の導電性材料、カーボン系材料、またはこれらを任意に混合した導電性材料等で被覆されていてもよい。被覆層を形成することで電解質からの腐食を抑制できる。
【0184】
《対向電極》
本発明の表示素子に用いることのできる対向電極は、電気を通じるものであれば、特に制限されず用いることができる。
【0185】
前記透明電極と同じ材料に加え、白金、金、銀、銅、アルミニウム、亜鉛、ニッケル、チタン、ビスマス等の金属及びそれらの合金、カーボン等、透明性を有しない材料でも好ましく用いることができる。
【0186】
《表示素子のその他の構成要素》
本発明に係る表示素子には、必要に応じて、シール剤、柱状構造物、スペーサー粒子を用いることができる。
【0187】
シール剤は外に漏れないように封入するためのものであり、封止剤とも呼ばれ、エポキシ樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、エン−チオール系樹脂、シリコン系樹脂、変性ポリマー樹脂等の、熱硬化型、光硬化型、湿気硬化型、嫌気硬化型等の硬化タイプを用いることができる。
【0188】
柱状構造物は、基板間の強い自己保持性(強度)を付与し、例えば、格子配列等の所定のパターンに一定の間隔で配列された、円柱状体、四角柱状体、楕円柱状体、台形柱状体等の柱状構造物を挙げることができる。
【0189】
また、所定間隔で配置されたストライプ状のものでもよい。この柱状構造物はランダムな配列ではなく、等間隔な配列、間隔が徐々に変化する配列、所定の配置パターンが一定の周期で繰り返される配列等、基板の間隔を適切に保持でき、且つ、画像表示を妨げないように考慮された配列であることが好ましい。
【0190】
柱状構造物は表示素子の表示領域に占める面積の割合が1〜40%であれば、表示素子として実用上十分な強度が得られる。
【0191】
一対の基板間には、該基板間のギャップを均一に保持するためのスペーサーが設けられていてもよい。このスペーサーとしては、樹脂製または無機酸化物製の球体を挙げることができる。
【0192】
また、表面に熱可塑性の樹脂がコーティングしてある固着スペーサーも好適に用いられる。基板間のギャップを均一に保持するために柱状構造物のみを設けてもよいが、スペーサー及び柱状構造物をいずれも設けてもよいし、柱状構造物に代えて、スペーサーのみをスペース保持部材として使用してもよい。
【0193】
スペーサーの直径は柱状構造物を形成する場合はその高さ以下、好ましくは当該高さに等しい。柱状構造物を形成しない場合はスペーサーの直径がセルギャップの厚みに相当する。
【0194】
また、本発明に係る表示素子には、保護層、フィルター層、ハレーション防止層、クロスオーバー光カット層、バッキング層等の補助層を設けても良い。これらの補助層中には、各種の化学増感剤、貴金属増感剤、感光化合物、強色増感剤、カプラー、高沸点溶剤、カブリ防止剤、安定剤、現像抑制剤、漂白促進剤、定着促進剤、混色防止剤、ホルマリンスカベンジャー、色調剤、硬膜剤、界面活性剤、増粘剤、可塑剤、スベリ剤、紫外線吸収剤、イラジエーション防止染料、フィルター光吸収染料、防ばい剤、ポリマーラテックス、重金属、帯電防止剤、マット剤等の添加剤を、必要に応じて含有させることができる。
【0195】
上述したこれらの添加剤は、より詳しくは、RD第176巻Item/17643、同184巻Item/18431(1979年8月)、同187巻Item/18716及び、同308巻Item/308119に記載されている。
【0196】
これら三つのリサーチ・ディスクロージャーに示されている化合物種類と記載箇所を以下に掲載した。
【0197】
添加剤 RD17643 RD18716 RD308119
頁 分類 頁 分類 頁 分類
化学増感剤 23 III 648右上 96 III
増感化合物 23 IV 648〜649 996〜8 IV
減感化合物 23 IV 998 IV
染料 25〜26VIII 649〜650 1003 VIII
現像促進剤 29 XXI 648右上
カブリ抑制剤・安定剤
24 IV 649右上 1006〜7 VI
増白剤 24 V 998 V
硬膜剤 26 X 651左 1004〜5 X
界面活性剤 26〜7 XI 650右 1005〜6 XI
帯電防止剤 27 XII 650右 1006〜7 XIII
可塑剤 27 XII 650右 1006 XII
スベリ剤 27 XII
マット剤 28 XVI 650右 1008〜9 XVI
バインダー 26 XXII 1003〜4 IX
支持体 28 XVII 1009 XVII
《電解質組成物作製工程の雰囲気》
電解質組成物中の水分量を低減するために、電解質組成物の作製は脱水雰囲気下で行われることが好ましい。
【0198】
具体的な雰囲気として露点−40℃以下が好ましく、より好ましくは露点−60℃以下である。このような乾燥気体として窒素ガス、アルゴンガス等の市販の高純度ガスを用いることで達成できる。
【0199】
《表示素子駆動方法》
本発明の表示素子が1種類の色の変化が可逆的に行える材料により表示素子を作製した場合には、その色の変化が可逆的に行える材料の酸化還元電位のみを考慮すれば良いが、2種類以上の色の変化が可逆的に行える材料を一つのセルに封入した表示素子を作製する場合には、それぞれの材料の色が変化する酸化還元電位が重ならないように、材料を選択することで多色表示を行うことが容易になるので好ましい。
【0200】
特に、エレクトロデポジション化合物とEC化合物を併用して、多色表示を行うことが好ましい。エレクトロデポジション化合物、特に好ましい化合物の一つである金属塩化合物は還元により黒色を呈するため、EC化合物は酸化により着色する上記クラス3のEC化合物を用いることが好ましい。これにより、酸化還元の制御によって、エレクトロデポジション化合物による呈色(黒色)、EC化合物による呈色、どちらも消色していて無色(または電解質組成物に含有させている白色散乱物質による白色)の3つの状態を可逆にとりうることができる。
【0201】
例えば、クラス3のEC化合物と銀塩化合物を対向電極間に有する表示素子の場合、表示素子のセルは酸化側でEC化合物が呈色し、還元側で銀塩化合物が呈色する。この場合の制御方法の一例としては、EC化合物を呈色させる場合は、EC化合物の酸化還元電位より貴な電圧を印加することでEC化合物を酸化し、呈色させる。
【0202】
また、銀塩化合物の析出過電圧より卑な電圧を印加することで、銀を電極上に析出させ呈色する。消色する場合には、銀塩化合物の析出過電圧とEC化合物の酸化還元電位の間の電圧を印加する。これらの電圧の制御を表示素子の各セルに対して行うことで表示素子に画像を表示させることができる。
【0203】
本発明の表示素子の駆動操作は、単純マトリックス駆動であっても、アクティブマトリック駆動であってもよい。本発明でいう単純マトリックス駆動とは、複数の正極を含む正極ラインと複数の負極を含む負極ラインとが対向する形で互いのラインが垂直方向に交差した回路に、順次電流を印加する駆動方法のことをいう。単純マトリックス駆動を用いることにより、回路構成や駆動ICを簡略化でき安価に製造できるメリットがある。アクティブマトリックス駆動は、走査線、データライン、電流供給ラインが碁盤目状に形成され、各碁盤目に設けられたTFT回路により駆動させる方式である。画素毎にスイッチングが行えるので、階調やメモリー機能等のメリットがあり、例えば、特開2004−29327号公報の図5に記載されている回路を用いることができる。
【0204】
《商品適用》
本発明の表示素子は、電子書籍分野、IDカード関連分野、公共関連分野、交通関連分野、放送関連分野、決済関連分野、流通物流関連分野等に用いることができる。具体的には、ドア用のキー、学生証、社員証、各種会員カード、コンビニストアー用カード、デパート用カード、自動販売機用カード、ガソリンステーション用カード、地下鉄や鉄道用のカード、バスカード、キャッシュカード、クレジットカード、ハイウェイカード、運転免許証、病院の診察カード、電子カルテ、健康保険証、住民基本台帳、パスポート、電子ブック等が挙げられる。
【実施例】
【0205】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0206】
なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0207】
実施例1
《表示素子EP−101の作製》
《透明電極の作製》
ガラス基板上にスパッタ装置を用いて厚さ1000nm、ピッチ140μm、電極幅130μmのITO層を形成し透明電極とした。
【0208】
《対向電極の作製》
ガラス基板上にXE109−7(ナミックス(株)製)をスクリーン印刷装置用いて塗布後、150℃で10分乾燥させた後に、250℃で1時間焼成し、ピッチ140μm、電極幅130μmの多孔質銀電極を作製した。
【0209】
《表面処理した二酸化チタンの作製》
(有機物により表面処理した二酸化チタン粒子の作製)
二酸化チタン粒子CR95(石原産業(株)製)を水と混合し、水酸化ナトリウムでpHを10に調整し、二酸化チタンの体積あたりの質量が300g/Lとなるように水性スラリーを調整した。
【0210】
この水性スラリーを80℃に保持し、二酸化チタン粒子の質量に対して2質量%のケイ酸ナトリウムを含む水生スラリーを攪拌しながら添加し、次いで1時間かけて硫酸でpHを5近辺に中和した。
【0211】
中和した水性スラリーから二酸化チタン粒子を濾別・洗浄した後、120℃で16時間乾燥し、ジェットミルで粉砕しながら、二酸化チタン粒子に対してポリオールを0.5質量%を添加して混合し、有機物により表面処理した二酸化チタン粒子(以下、二酸化チタン粒子Aと記す)を得た。
【0212】
(有機物により表面処理した二酸化チタン粒子の作製)
二酸化チタン粒子CR90(石原産業(株)製)を水と混合し、水酸化ナトリウムでpHを10に調整し、二酸化チタンの体積あたりの質量が300g/Lとなるように水性スラリーを調整した。
【0213】
この水性スラリーを80℃に保持し、二酸化チタン粒子の質量に対して2質量%のケイ酸ナトリウムを含む水生スラリーを攪拌しながら添加し、次いで1時間かけて硫酸でpHを5近辺に中和した。
【0214】
中和した水性スラリーから二酸化チタン粒子を濾別・洗浄し、120℃で16時間乾燥した後、ジェットミルで粉砕し、無機物により表面処理した二酸化チタン粒子(以下、二酸化チタン粒子Bと記す)を得た。
【0215】
《電解質組成物S−101の作製》
二酸化チタン粒子A(30部)とモレキュラーシーブ4A(和光純薬工業(株)製)30部を0.1μmPTFEフィルター(アドバンテック東洋(株)製)を介してγ−ブチロラクトン(関東化学(株)製)75部に分散させ、2週間静置することで酸化チタンCR95の脱水を行い、濾過することで白色散乱粒子101を作製した(図1参照)。
【0216】
このようにして作製した白色散乱粒子101に脱水したγ−ブチロラクトン30部及びポリビニルブチラール#3000−1(電気化学工業(株)製)10部を加えた混合物と、モレキュラーシーブ4A(和光純薬工業(株)製)30部を、0.1μmPTFEフィルターを介して分散させ、2週間静置し、濾過した。
【0217】
このようにしてできた混合物に、フィルターで不純物を濾過したγ−ブチロラクトン35部、1.33Pa、120℃の条件下で72時間乾燥させたヨウ化カリウム16部及びヨウ化銀24部を加え、室温で3時間攪拌することで電解質組成物S−101を作製した。
【0218】
《分散・脱気操作》
得られた電解質組成物S−101を不活性ガスである窒素ガス(純度99.99%)存在下において、真空乳化機TKアジホモミクサー(プライミクス(株)製)を用いて分散/脱気操作を行った。攪拌翼の回転数6000rpmで攪拌・分散操作を行いながら、ダイヤフラムポンプV710(日本ビュッヒ(株)製)を用いて2.66kPaで60分間真空脱気操作を行った。操作時のジャケット温度は50℃であった。
【0219】
《表示素子の作製》
透明電極及び対向電極をスペーサー粒子Sp−220(積水化学工業(株)製)とオレフィン系封止材シール材で封止した後、電解質液S−101を真空注入方式で封入し、表示素子EP−101を作製した。
【0220】
《表示素子EP−102の作製》
二酸化チタン粒子A(30部)とγ−ブチロラクトン(75部)の混合物をモレキュラーシーブ4Aにより脱水処理しない以外は、白色散乱粒子101の作製と同様の方法で、白色散乱粒子102を作製した。
【0221】
作製した白色散乱粒子102を用いた以外は電解質組成物S−101の作製方法と同様の方法で電解質組成物S−102を作製し、電解質組成物S−102を用いた以外は表示素子EP−101の作製方法と同様の方法で、表示素子EP−102を作製した。
【0222】
《表示素子EP−103〜106の作製》
白色散乱粒子101の作製において、脱水時間を適宜変更した以外は同様の方法で、白色散乱粒子103〜106を作製し、作製した白色散乱粒子103〜106を用いた以外は電解質組成物S−101の作製方法と同様の方法で電解質組成物S−103〜106を作製し、電解質組成物S−103〜106を用いた以外は表示素子EP−101の作製方法と同様の方法で、表示素子EP−103〜106を作製した。
【0223】
《表示素子EP−107の作製》
二酸化チタン粒子A(30部)をナスフラスコに封入し、133Pa、270℃の条件下で4時間真空乾燥し、その後γ−ブチロラクトン35部と混合して白色散乱粒子103を作製した。
【0224】
作製した白色散乱粒子107用いた以外は電解質組成物S−101の作製方法と同様の方法で電解質組成物S−107を作製し、電解質組成物S−107を用いた以外は表示素子EP−101の作製方法と同様の方法で、表示素子EP−107を作製した。
【0225】
《表示素子EP−108の作製》
二酸化チタン粒子B(30部)をナスフラスコに封入し、133Pa、380℃の条件下で4時間真空乾燥し、その後γ−ブチロラクトン35部と混合して白色散乱粒子108を作製した。
【0226】
作製した白色散乱粒子108用いた以外は電解質組成物S−101の作製方法と同様の方法で電解質組成物S−108を作製し、電解質組成物S−108を用いた以外は表示素子EP−101の作製方法と同様の方法で、表示素子EP−108を作製した。
【0227】
《表示素子EP−109の作製》
二酸化チタン粒子A(30部)とモレキュラーシーブ4A(30部)を、0.1μmPTFEフィルターを介してγ−ブチロラクトン35部分散させ、2週間静置した後、濾過することで白色散乱粒子109を作製した。
【0228】
このようにして白色散乱粒子109に、フィルターで不純物を濾過したγ−ブチロラクトン35部、ポリビニルブチラール#3000−1(10部)、1.33Pa、120℃の条件下で72時間乾燥させたヨウ化カリウム16部及び、ヨウ化銀24部を加えた後室温で3h攪拌したものをナスフラスコに封入し、133Pa、120℃の条件化で72時間減圧乾燥を行い、電解質組成物S−109を作製した。
【0229】
このようにして作製した電解質組成物S−109を用いた以外は表示素子EP−101の作製と同様の方法で表示素子EP−109を作製した。
【0230】
《表示素子EP−110の作製》
二酸化チタン粒子A(30部)をナスフラスコに封入し、133Pa、380℃の条件下で4時間減圧乾燥し、白色散乱粒子110を作製した。作製した白色散乱粒子110用いた以外は電解質組成物S−101の作製方法と同様の方法で電解質組成物S−110を作製し、電解質組成物S−110を用いた以外は表示素子EP−101の作製方法と同様の方法で、表示素子EP−110を作製した。
【0231】
《表示素子EP−111の作製》
二酸化チタン粒子A(30部)をシリカゲルOPP A型(中央化成(株)製)と共にデシケーター内に封入し72時間静置した後、シリカゲルを取り除き、代わりに過塩素酸マグネシウムを封入した後、更に2週間静置させて脱水処理を行い、白色散乱粒子111を作製した。
【0232】
作製した白色散乱粒子111用いた以外は電解質組成物S−101の作製方法と同様の方法で電解質組成物S−111を作製し、電解質組成物S−111を用いた以外は表示素子EP−101の作製方法と同様の方法で、表示素子EP−111を作製した。
【0233】
《表示素子EP−112の作製》
二酸化チタン粒子Aの代わりに二酸化チタン粒子B(30部)を用いた以外は、白色散乱粒子101の作製方法と同様の方法で、白色散乱粒子108を作製した。
【0234】
作製した白色散乱粒子112用いた以外は電解質組成物S−101の作製方法と同様の方法で電解質組成物S−112を作製し、電解質組成物S−112を用いた以外は表示素子EP−101の作製方法と同様の方法で、表示素子EP−112を作製した。
【0235】
《表示素子EP−113の作製》
《電解質組成物S−113の作製》
二酸化チタン粒子A(30部)とモレキュラーシーブ4A(和光純薬工業(株)製)30部を0.1μmPTFEフィルター(アドバンテック東洋(株)製)を介してγ−ブチロラクトン(関東化学(株)製)95部に分散させ、2週間静置することで酸化チタンCR95の脱水を行い、濾過することで白色散乱粒子113を作製した。
【0236】
このようにして作製した白色散乱粒子113に対し、モレキュラーシーブ4Aで2週間脱水処理を行った平均分子量50万のポリエチレングリコール(関東化学(株)製)4部、モレキュラーシーブ4Aで2週間脱水処理を行ったγ−ブチロラクトン95部、0.2molの例示化合物110及び1.33Pa、120℃の条件下で72時間減圧乾燥させた5mmolの過塩素酸リチウムを混合し、電解質組成物S113を調製した。
【0237】
作製した電解質組成物S113用いた以外は、EP−101の作製方法と同様の方法で、表示素子EP−113を作製した。
【0238】
【化20】

【0239】
《表示素子EP−114の作製》
二酸化チタン粒子Aの脱水を行わなかった以外は白色散乱粒子113と同様の製造方法で、白色散乱粒子114を作製した。作製した白色散乱粒子110用いた以外は電解質組成物S−113の作製方法と同様の方法で電解質組成物S−114を作製し、電解質組成物S−114を用いた以外は表示素子EP−113の作製方法と同様の方法で、表示素子EP−114を作製した。
【0240】
《各特性値の測定及び評価》
(水分量の測定)
水分気化式カールフィッシャー水分計VA−200((株)三菱化学アナリテック製)を用いて測定した。白色散乱粒子101〜114の水分量は水分気化法により測定した。
【0241】
水分気化装置内に入れた白色散乱粒子が120℃になるように加熱しながら乾燥窒素をフローさせ、γ−ブチロラクトンにバブリングに白色散乱粒子の水分を補足させた。白色散乱粒子の水分を補足させたγ−ブチロラクトンの水分をVA−200により測定し、白色散乱粒子の水分量とみなした。
【0242】
また、電解質組成S−101〜S−114の水分量も白色散乱粒子の水分量測定と同様の方法にて測定した。
【0243】
(駆動安定性)
各表示素子について、公知のパッシブマトリックス回路を用いて、駆動実験を行った。はじめに、黒表示で550nmでの反射率が10%となる駆動条件を求め、この条件で白表示(白化)と黒表示(黒化)を1000回駆動させた後、再度白化させ、顕微鏡による目視評価を行った。(但し、EP−113及びEP−114についてはエレクトロクロミック化合物の最大吸収波長の反射率が30%になる条件とした)
○:1000回駆動で反射率が10%
△:1000回駆動で反射率が30%以下
×:1000回駆動で反射率が50%以下
(応答速度)
上記の方法により作製した各表示素子について、公知のパッシブマトリックス回路を用いて、駆動前の白地に対して550nmでの反射率が10%となる時間を計測し、応答時間を算出した。(但し、EP−113及びEP−114についてはエレクトロクロミック化合物の最大吸収波長の反射率が30%になる条件とした)
(電荷効率)
各表示素子について、公知のパッシブマトリックス回路を用いて、駆動実験を行った。はじめに、黒表示で550nmでの反射率が10%となる駆動条件を求め、この条件で流れた電流量より電荷効率を求めた。(但し、EP−113及びEP−114についてはエレクトロクロミック化合物の最大吸収波長の反射率が30%になる条件とした。)
以上より得られた結果を表1に示す。
【0244】
【表1】

【0245】
EP−101〜109の比較から明らかなように、予め白色散乱粒子の水分量を100ppm以下にすることで、電解質組成物中の水分量を抑制することができる。即ち、表面処理された白色散乱粒子が分解しないように減圧乾燥することは調整が困難であるので、モレキュラーシーブによる乾燥がより好ましいことが分かった。また作製した電解質組成物からの脱水は比較的困難であり、白色散乱粒子を事前に脱水することが好ましいことも分かった。
【0246】
EP−110、111及び112より、脱水剤にモレキュラーシーブを用いることにより、より水分量を低くできることが分かった。
【符号の説明】
【0247】
1 白色散乱粒子
2 溶媒
3 フィルター
4 脱水剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する電極間に、白色散乱粒子及び、電気化学的な酸化または還元によって色の変化が可逆的に行える材料を含有する電解質組成物を有する表示素子の製造方法であって、水分量が100ppm以下である前記白色散乱粒子を用いて製造されることを特徴とする表示素子の製造方法。
【請求項2】
前記白色散乱粒子を含有する前記電解質組成物の水分量が100ppm以下であることを特徴とする請求項1に記載の表示素子の製造方法。
【請求項3】
白色散乱粒子及び電解質組成物の水分量の測定は、水分気化法及びカールフィッシャー法より測定されることを特徴とする請求項1または2に記載の表示素子の製造方法。
【請求項4】
前記白色散乱粒子の水分量をモレキュラーシーブを用いて100ppm以下にすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の表示素子の製造方法。
【請求項5】
前記白色散乱粒子の少なくとも一部が有機物により被覆されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の表示素子の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−224356(P2010−224356A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−73511(P2009−73511)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】