説明

表示素子

【課題】電極耐久性を向上させるとともに、表示速度を向上させた表示素子を提供する。
【解決手段】対向電極間に電解質を有する表示素子において、該対向電極のいずれか一方の電極が、少なくともカーボンナノファイバーを含む電極であることを特徴とする表示素子。電解質が、金属または金属塩を含有することを特徴とし、金属または金属塩が、銀または銀を化学構造中に含む化合物であることを特徴とし、カーボンナノファイバーが、酸化還元活性物質で修飾されていることを特徴とする表示素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学的な表示素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピューターの動作速度の向上、ネットワークインフラの普及、データストレージの大容量化と低価格化に伴い、従来紙への印刷物で提供されたドキュメントや画像等の情報を、より簡便な電子情報として入手、電子情報を閲覧する機会が益々増大している。
【0003】
この様な電子情報の閲覧手段として、従来の液晶ディスプレイやCRT、また近年では、有機ELディスプレイ等の発光型が主として用いられているが、特に、電子情報がドキュメント情報の場合、比較的長時間にわたってこの閲覧手段を注視する必要があり、これらの行為は必ずしも人間に優しい手段とは言い難く、一般に発光型のディスプレイの欠点として、フリッカーで目が疲労する、持ち運びに不便、読む姿勢が制限され、静止画面に視線を合わせる必要が生じる、長時間読むと消費電力が嵩む等が知られている。
【0004】
これらの欠点を補う表示手段として、外光を利用し、像保持の為に電力を消費しない(メモリー性)反射型ディスプレイが知られているが、下記の理由で十分な性能を有しているとは言い難い。
【0005】
すなわち、反射型液晶等の偏光板を用いる方式は、反射率が約40%と低く白表示に難があり、また構成部材の作製に用いる製法の多くは簡便とは言い難い。また、ポリマー分散型液晶は高い電圧を必要とし、また有機物同士の屈折率差を利用しているため、得られる画像のコントラストが十分でない。また、ポリマーネットワーク型液晶は電圧高いことと、メモリー性を向上させるために複雑なTFT回路が必要である等の課題を抱えている。また、電気泳動法による表示素子は、10V以上の高い電圧が必要となり、電気泳動性粒子凝集による耐久性に懸念がある。
【0006】
これら上述の各方式の欠点を解消する表示方式として、金属または金属塩の溶解析出を利用するエレクトロデポジション(以下、EDと略す)方式が知られている。ED方式は、3V以下の低電圧で駆動が可能で、簡便なセル構成、黒と白のコントラストや黒品質に優れる等の利点があり、米国特許第4,240,716号明細書、特許第3428603号公報、特開2003−241227号公報等で、様々な方法が開示されている。また電気化学的に色が変化するエレクトロクロミック(EC)方式の素子が、コントラストが高く、明瞭な表示を得ることができるとして提案されている。
【0007】
本発明者は、上記各特許文献に開示されている技術を詳細に検討した結果、従来技術では、いずれもハロゲン化銀、ハロゲン化アルカリを含む電解質の構成であり、この構成で繰り返し駆動を行うと、ハロゲン化合物が酸化還元しない低電圧駆動では、駆動速度が十分でなく、駆動電圧を上げると、電解液が着色したり、ハロゲン酸化体が対向電極の金属電極を腐食させる局部電池反応等により電極耐久性が十分でないという課題があることがわかった。
【0008】
電極の耐久性を向上する方法の1つとして、炭素材料を利用した電極が、特許文献等で知られている。例えば、銀塩溶液からITO透明電極上への銀の析出を利用して光の透過率を制御する光学フィルターの対向電極の材料コストを低減する光学装置として、対向電極の一方の表面を、少なくとも1種の導電性粒子と少なくとも1種のバインダーとを含有し、該導電性粒子として一般的な炭素材料を用いる光学装置が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。また、作用電極と、対極と、これらの電極に接して配された電解液とを有し、この電解液への印加電界により電気化学的に調光される光学装置において、その明細中に一般的な炭素材料をバインダーと混合して対向電極とする旨が記載されている(例えば、特許文献2参照)。また、グラファイト、カーボンブラック、易黒鉛化炭素、難黒鉛化炭素、活性炭やイオン化傾向の低い金属からなる電極を有する電気光学素子、及びその製造方法及び撮像装置(特許文献3)が開示されている。
【0009】
しかしながら、上記の一般的な炭素材料電極は、一般に用いられるITO(スズドープ酸化インジウム)電極や金属電極に比べ電気供給能力に欠けるため、表示速度が遅くなるなどの問題点があった。
【特許文献1】特開平10−274790号公報
【特許文献2】特開2001−59980号公報
【特許文献3】特開2001−51308号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、電極耐久性を向上させるとともに、表示速度を向上させた表示素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0012】
1.対向電極間に電解質を有する表示素子において、該対向電極のいずれか一方の電極が、少なくともカーボンナノファイバーを含む電極であることを特徴とする表示素子。
【0013】
2.前記電解質が、金属または金属塩を含有することを特徴とする前記1に記載の表示素子。
【0014】
3.前記金属または金属塩が、銀または銀を化学構造中に含む化合物であることを特徴とする前記2に記載の表示素子。
【0015】
4.前記電解質に含まれるハロゲンイオンまたはハロゲン原子のモル濃度を[X](モル/kg)とし、前記電解質に含まれる金属または金属化合物の金属の総モル濃度を[A](モル/kg)としたとき、下記式〔I〕で規定する条件を満たすことを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の表示素子。
【0016】
式〔I〕
0≦[X]/[A]≦0.01
5.前記カーボンナノファイバーを含む電極が、金属粒子を含有することを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載の表示素子。
【0017】
6.前記金属粒子が、金、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム及びオスミウムから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする前記5に記載の表示素子。
【0018】
7.前記電解質が、下記一般式(A)または一般式(B)で表される化合物を含むことを特徴とする前記1〜6のいずれか1項に記載の表示素子。
【0019】
一般式(A)
7−S−R8
〔式中、R7、R8は各々置換または無置換の炭化水素基を表す。但し、S原子を含む環を形成する場合には、芳香族基をとることはない。〕
【0020】
【化1】

【0021】
〔式中、Mは水素原子、金属原子または4級アンモニウムを表す。Zは含窒素複素環を表す。nは0〜5の整数を表し、R9は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルキルカルボンアミド基、アリールカルボンアミド基、アルキルスルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルカルバモイル基、アリールカルバモイル基、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アリールスルファモイル基、スルファモイル基、シアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アシルオキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、スルホニル基、アミノ基、ヒドロキシ基または複素環基を表し、nが2以上の場合、それぞれのR9は同一でも異なっていてもよく、お互いに連結して縮合環を形成してもよい。〕
8.前記対向電極間に、下記一般式(C)で表される化合物と前記電解質とを含有し、かつ前記対向電極の駆動操作により、黒表示、白表示、黒以外の着色表示の3色以上の多色表示を行うことを特徴とする前記1、2、5または6に記載の表示素子。
【0022】
【化2】

【0023】
〔式中、R1は置換もしくは無置換のアリール基を表し、R2、R3は各々水素原子または置換基を表す。Xは>N−R4、酸素原子または硫黄原子を表し、R4は水素原子、または置換基を表す。〕
9.前記金属または金属化合物が、銀または銀を化学構造中に含む化合物であることを特徴とする前記8に記載の表示素子。
【0024】
10.前記カーボンナノファイバーが、酸化還元活性物質で修飾されていることを特徴とする前記1〜9のいずれか1項に記載の表示素子。
【0025】
11.前記酸化還元活性物質が、下記一般式(1)〜(3)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする前記10に記載の表示素子。
【0026】
【化3】

【0027】
〔式中、CAはカーボンナノファイバー骨格を表し、X1〜X9は各々NQ1、硫黄原子または酸素原子を表す。ここで、Q1は水素原子、隣接原子と二重結合を形成するための結合手またはアルキル基を表す。Y1、Y2は各々CQ2または窒素原子を表す。ここで、Q2は水素原子または隣接原子と二重結合を形成するための結合手を表す。Z1はX1、Y1と共に、Z2はX2、Y2と共に、Z3はX5、X6と共に、Z4はX9と共に、それぞれ複素環を形成するための原子群を表す。Z1〜Z4で形成される各々の複素環は、置換基を有していてもよく、また縮合環を形成してもよい。R1〜R5は各々水素原子、ハロゲン原子、複素環、アルキル基、アルコキシ基、アリール基またはアミノ基を表す。L1〜L3は各々2価の連結基を表す。〕
12.前記対向電極間に、白色散乱層を有することを特徴とする前記1〜11のいずれか1項に記載の表示素子。
【発明の効果】
【0028】
本発明により、低電圧(1.5V)駆動での電解質の反応性が向上に伴い表示速度が向上し、かつ電極耐久性が向上した表示素子を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0030】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、対向電極間に電解質を有する表示素子において、該対向電極のいずれか一方の電極が、少なくともカーボンナノファイバーを含む電極であることを特徴とする表示素子により、電極耐久性を向上させるとともに、表示速度を向上させた表示素子を実現できることを見出し、本発明に至った次第である。
【0031】
以下、本発明の表示素子の詳細について説明する。
【0032】
《カーボンナノファイバーを含む電極》
〔カーボンナノファイバー〕
本発明の表示素子においては、対向電極のいずれか一方の電極が、少なくともカーボンナノファイバーを含む電極であることを特徴とする。
【0033】
本発明に係る電極に含まれるカーボンナノファイバーとは、通常、直径5nm〜900nm、繊維長1μm以上程度で、極めて高いアスペクト比を有しているものを指す。単繊維比抵抗としては、1×10-5〜1×10-3Ωcm程度ものが好ましく、一般的なカーボンブラック等に比べて導電性が高いのが特徴である。
【0034】
本発明に係るカーボンナノファイバー(以下、CNFともいう)は、従来公知の製造方法に従って製造することができ、例えば、気相成長法あるいは溶融紡糸法等を挙げることができる。
【0035】
以下、一例として気相成長法によるCNFの製造方法について説明する。
【0036】
気相成長法により得られるCNFは、比較的容易に大きいアスペクト比を有することができる。例えば、気相成長法によってCNFを連続的に製造する反応装置の一例としては、CNFの原料となる炭素源として、CO、メタン、アセチレン、エチレン、ベンゼン、トルエン等を用いる。炭素源が常温で気体である場合には、ガス状でキャリアーガスと混合して供給する。また炭素源が液体である場合には、気化器で気化させてからキャリアーガスと混合して供給するか、または液状で加熱帯域に噴霧する。キャリアーガスとしては不活性ガスである窒素ガスや還元性の水素ガス等が用いられる。真空に減圧した系内に炭素源を供給する場合もある。
【0037】
この様な気相法によるCNF製造法における触媒としては、アルミナ等の担体に金属を担持した担持型触媒やフェロセン等の有機金属化合物が使用される。担持型触媒を用いる場合は、担持型触媒を予め加熱帯域に設置して加熱し、必要な前処理を行った後で、炭素源を供給して反応させる方法、あるいは、前処理した担持型触媒を系外から連続、またはパルス的に供給して反応を行う方法が挙げられる。また、炭素源に容易に溶解するフェロセン等の有機金属化合物を触媒前駆体として採用し、炭素源とともに加熱帯域に連続的、あるいはパルス的にフィードして、触媒前駆体化合物の熱分解で発生した金属粒子を触媒として炭素繊維を生成させることもできる。
【0038】
CNFを製造する際に用いる炭素源としては、炭素原子を含有しているものであれば特に制限は無い。有用性の高い炭素化合物の一例を挙げると、一酸化炭素、二酸化炭素等の無機ガス類、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等のアルカン類;エチレン、プロピレン、ブテン、ブタジエン等のアルケン類;アセチレン等のアルキン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、スチレン等の単環式芳香族炭化水素;インデン、ナフタリン、アントラセン、フェナントレン等の縮合環を有する多環式化合物;シクロプロパン、シクロペンタン、シクロヘキサン等のシクロパラフィン類;シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン等のシクロオレフィン類;ステロイド等の縮合環を有する脂環式炭化水素化合物などが挙げられる。これらは条件を満たすものであれば、酸素含有炭素源化合物としても使用することが可能である。
【0039】
また、触媒としては、CNFの成長を促進する物質である限り、特に制限されない。この触媒としては、例えば、IUPACが1990年に勧告した18族型元素周期表でいう3〜12族からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属、特にそれらの微粒子が挙げられる。更には3、5、6、8、9、10族からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属が好ましく、鉄、ニッケル、コバルト、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、白金および希土類元素が特に好ましい。
【0040】
また、CNFの製造に際しては、CNFの径制御に効果があるとされているイオウ化合物を併用してもよい。本発明において用いることができるイオウ化合物としては、イオウ;チオフェン;硫化水素;硫化炭素;メチルメルカプタン、ターシャリーブチルメルカプタン等のメルカプタン類;ジメチルスルフィド等のスルフィド類;およびジメチルジスルフィド等のジスルフィド類等の化合物が挙げられる。またこのイオウ化合物は好ましくは、チオフェン、二硫化炭素、ジメチルスルフィドおよびジメチルジスルフィドを挙げることができ、さらに好ましくは、ジメチルスルフィドまたはジメチルジスルフィドを挙げることができる。
【0041】
〔酸化還元活性物質〕
本発明においては、以上のような方法等で得られるカーボンナノファイバーの構造末端部が、酸化還元活性物質で修飾されていることが好ましい。更には、酸化還元活性物質が、前記一般式(1)〜(3)で表される化合物であることが好ましい。特に、本発明に係るカーボンナノファイバーは、一般的なカーボンブラック等より修飾量を多くすることができるため好適である。
【0042】
本発明の電気化学的な表示素子において、対向電極の少なくとも一つに、カーボンナノファイバーを含む電極を用いることで、電極自体の耐性が向上すると共に、一般的な炭素電極では達成し得なかった表示速度の向上を見ることができた。更に、上記効果は、カーボンナノファイバーの構造末端部を、酸化還元活性物質で修飾することで、飛躍的な向上を果たしたものである。
【0043】
上記特性の達成理由に関しては、全てが明確にはなっていないが、表示素子に適用した場合、以下の様に推測している。
【0044】
図1は、本発明の表示素子の原理を説明する概念図である。
【0045】
図1の(a)は、本発明の表示素子1において、可視化の駆動を行った時に起こる反応を示している。可視化の駆動を行った場合、閲覧側の透明電極2では、電解質5中に溶解している例えば、銀イオン(Ag+)に透明電極2から電子(e-)が与えられて、銀(Ag)が透明電極2上に析出し、通常、黒色画像4を生じさせる。この時、対向電極3上では、銀(この銀は、表示素子作製当初には存在しないが、可視化→無色化を一度行った時点で少なからず生じるものである)から電子が対向電極3に移動し、銀イオン(Ag+)となって電解質5中に放出される。
【0046】
図1の(b)は、無色化の反応を示している。閲覧側の透明電極2では、銀から電子を受け取り、銀は銀イオンとなって電解質5中に放出される。対向電極3上では、銀イオンに電子が与えられ、銀となって析出する。このため、対向電極3上での電子交換の反応速度が遅いことが、表示速度の律速となる。電極の耐久性を目的として、対向電極3に炭素電極を使用した場合、透明電極2に対してこの電子交換の反応速度が遅くなるため、表示速度が低下する。
【0047】
ところが、上記カーボンナノファイバーを含む電極を有する表示素子においては、表示速度が向上する。その理由に関しては、次のように推測している。カーボンナノファイバーを含む電極は、カーボンナノファイバー自体が導電性が高いのに加え、カーボンナノファイバー末端部に酸化還元活性物質が修飾されていることで電解質層中の金属イオンの還元、または析出した金属の酸化が速やかに行われ、酸化還元活性物質がないものと比べて表示速度が更に向上すると考えられる。
【0048】
また、本発明に係るカーボンナノファイバーを含む電極、あるいは末端部に酸化還元活性物質を有するカーボンナノファイバーを含む電気化学素子用電極は、本発明の表示素子だけでなく、キャパシタ、電池等の電気化学素子用の電極としても用いることが可能であり、キャパシタ、リチウムイオン電池等の電池の電極に使用すると、電解液との反応性が高まり、特性が向上する。
【0049】
以下、本発明に係る一般式(1)〜(3)で表される酸化還元活性物質について説明する。
【0050】
前記一般式(1)〜(3)において、CAはカーボンナノファイバー骨格を表し、X1〜X9は各々NQ1、硫黄原子または酸素原子を表す。ここで、Q1は水素原子、隣接原子と二重結合を形成するための結合手またはアルキル基を表す。Y1、Y2は各々CQ2または窒素原子を表す。ここで、Q2は水素原子または隣接原子と二重結合を形成するための結合手を表す。Z1はX1、Y1と共に、Z2はX2、Y2と共に、Z3はX5、X6と共に、Z4はX9と共に、それぞれ複素環を形成するための原子群を表す。Z1〜Z4で形成される各々の複素環は、置換基を有していてもよく、また縮合環を形成してもよい。R1〜R5は各々水素原子、ハロゲン原子、複素環、アルキル基、アルコキシ基、アリール基またはアミノ基を表す。L1〜L3は各々2価の連結基を表す。
【0051】
1はX1、Y1と共に、Z2はX2、Y2と共に、Z3はX5、X6と共に、Z4はX9と共に、それぞれ複素環を形成するための原子群を表すが、複素環を構成する原子群の個数に特に制限はないが、5員環または6員環であることが好ましい。
【0052】
複素環の中で好ましいものとして、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、トリアゾール環、インドール環、テトラゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、プリン環等が挙げられる。また、これらの複素環が有する置換基としては特に制限はないが、中でもヒドロキシル基、アミノ基、スルホ基、リン酸基、カルボキシル基、スルファモイル基、ヒドロキシアルキル基等の親水性の高い置換基が好ましい。
【0053】
1〜R5は各々水素原子、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、複素環(例えば、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、トリアゾール環、インドール環、テトラゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、プリン環等)、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等)またはアリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基等)である。
【0054】
1〜L3は各々2価の連結基を表すが、例えば、−COO−、−CONH−、−SO2NH、アルキレン基(例えば、エチレン基、ピロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等)等を挙げることができる。
【0055】
本発明に係る一般式(1)〜(3)で表される化合物は、市販品として購入することもでき、またバイルシュタイン・ハンドブーフ・デア・オーガニッシェン・ヘミー(Beilsteins Handbuch der Organischen Chemie)、アンナーレン・デア・ヘミー(Ann.Chem.)、ケミカル・アブストラクツ(Chem.Abstracts)、ジャーナル・オブ・ザ・アメリカン・ケミカル・ソサイアティ(J.Am.Chem.Soc.)、モナッシェフテ・ヒュール・ヘミー(Monatsch.Chem.)、ジュルナール・デア・ルッシシュン・フィジカリッシュ−ヘミッシェン・ゲゼルシャフト(Journal der Russischen Physikalish−Chemischen Gescllschaft)等の抄録誌、報文献に数多く報告されておりこれらに記載された方法を用いて合成することができる。
【0056】
本発明に係る一般式(1)〜(3)で表される化合物において、カーボンナノファイバー骨格CAに酸化還元活性物質を連結する方法としては、カーボンナノファイバー骨格と、連結部を持つ酸化還元活性物質をともに溶媒中に分散し、一般的な脱水縮合反応等で容易に連結することが可能である。
【0057】
以下、一般式(1)〜(3)で表される化合物のCA及びL1〜L3を除く具体例を以下に示すが、本発明ではこれら例示する化合物に限定されるものではない。
【0058】
(1−1)1−n−オクチル−4,4′−ビピリジニウム ジブロマイド
(1−2)1−n−オクチル−4,4′−ビピリジニウム ビス−ヘキサフルオロフォスフェート
(1−3)1−メチル−4,4′−ビピリジニウム ジクロライド
(1−4)1−(4−メチルフェニル)−4,4′−ビピリジニウム ジクロライド
(1−5)1−(4−シアノフェニル)−4,4′−ビピリジニウム ジクロライド
(1−6)1−(4−フルオロフェニル)−4,4′−ビピリジニウム ジクロライド
(1−7)1−(3−プロピルフェニル)−4,4′−ビピリジニウム ジクロライド
(1−8)1−(3−プロピルフェニル)−4,4′−ビピリジニウム ビス−ヘキサフルオロフォスフェート
(1−9)1−(2,4,6−トリメチルフェニル)−4,4′−ビピリジニウム ジクロライド
(1−10)1−(2,4,6−トリメチルフェニル)−4,4′−ビピリジニウム ビス−ヘキサフルオロフォスフェート
(1−11)1−(ナフチル)−4,4′−ビピリジニウム ジクロライド
(1−12)1−(4−シアノナフチル)−4,4′−ビピリジニウム ジクロライド
(1−13)1−(4−フェノキシフェニル)−4,4′−ビピリジニウム ジクロライド
(1−14)1−(4−t−ブチルフェニル)−4,4′−ビピリジニウム ジクロライド
(1−16)1−(2,6−ジメチルフェニル)−4,4′−ビピリジニウム ジクロライド
(1−17)1−(3,5−ジメチルフェニル)−4,4′−ビピリジニウム ジクロライド
(1−18)1−(4−ベンゾフェノン)−4,4′−ビピリジニウム ジクロライド
(1−19)1−(2,4−ジニトロフェニル)−4,4′−ビピリジニウム ジクロライド
(1−20)1−ベンジル−4,4′−ビピリジニウム ジクロライド
(1−21)1−ホスホノプロピル−4,4′−ビピリジニウム ジブロマイド
(1−22)1−ホスホノエチル−4,4′−ビピリジニウム ビス−ヘキサフルオロフォスフェート
(1−23)1−ホスホノベンジル−4,4′−ビピリジニウム ジクロライド
〔金属粒子〕
本発明の表示素子においては、カーボンナノファイバーを含む電極が、金属粒子を含有することが好ましく、更には該金属粒子が、金、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム及びオスミウムから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0059】
本発明に係るカーボンナノファイバーを含む電極に含有せしめる金属粒子の形状や大きさは、特に限定されないが、導電性を向上させるために、カーボンナノファイバーの繊維間に金属粒子(導電性粒子ともいう)が埋まるような状態にできる形状、大きさであることが好ましい。金属粒子は、場合によっては、カーボンブラックのようなカーボン粒子であっても良い。この場合は、金属粒子を含む電極より耐久性をより向上させることが可能である。また、金属粒子とカーボン粒子の両方を含んでもよい。また金属粒子の一部にカーボン材料や金属材料が付与された構造であってもよい。
【0060】
カーボンナノファイバーと金属粒子の体積比(カーボンナノファイバー/金属粒子)としては、30/70以上、95/5以下が最も導電性が向上し、好ましい。
【0061】
〔バインダー〕
また、本発明に係るカーボンナノファイバーを含む電極中には、バインダーが含まれることが好ましく、バインダーはカーボンナノファイバーと金属粒子(導電性粒子)とを混合、均一に分散した際に、分散液の構造を保持し、カーボンナノファイバーの繊維間に均一に導電性粒子が存在する状態にするために必要である。また電極基材(基板)との接着性を向上する役目も果たす。バインダーの例としては、特に限定されないが、ポリ(ビニルアルコール)、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(アルキレングリコール)、カゼイン、デンプン、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メチルメタクリル酸)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(メタクリル酸)、コポリ(スチレン−無水マレイン酸)、コポリ(スチレン−アクリロニトリル)、コポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(ビニルアセタール)類(例えば、ポリ(ビニルホルマール)及びポリ(ビニルブチラール))、ポリ(エステル)類、ポリ(ウレタン)類、フェノキシ樹脂、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(エポキシド)類、ポリ(カーボネート)類、ポリ(ビニルアセテート)、セルロースエステル類、ポリ(アミド)類、疎水性透明バインダーとして、ポリビニルブチラール、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリル酸、ポリウレタン等が挙げられる。
【0062】
〔カーボンナノファイバーを含む電極の形成方法〕
本発明に係るカーボンナノファイバーを含む電極の形成方法としては、基材上にカーボンナノファイバーと導電性粒子とをCVDやスパッタで形成する方法やカーボンナノファイバーと導電性粒子、バインダー、溶剤を混合分散し、ガラス等の基材上に塗布乾燥して作製する等、公知の方法を挙げることができるが、基材との接着性の観点からは後者の方法が好ましい。
【0063】
カーボンナノファイバーと導電性粒子を含む層の厚みは、50nm以上、10000nm以下であることが好ましい。50nmより薄い場合、所望の導電性が得られにくく、10000nmより厚い場合は、コストが高くなり好ましくない。
【0064】
画素電極等で電極のパターン化が必要な場合には、所望のパターンとなるようにマスクを用いてCVDやスパッタで形成する方法や、所望のパターンを有するスクリーンで印刷する方法、インクジェットでパターンを形成する方法等をとることができる。
【0065】
次いで、本発明の表示素子を構成するその他の各要素について説明する。
【0066】
《電解質》
〔金属または金属化合物〕
本発明の電気化学素子の電解質は、表示素子であれば、金属または金属化合物を含むことが好ましい。
【0067】
本発明に係る金属化合物とは、金属原子を含む化合物であればよく、金属イオン、金属コロイド、金属塩、金属錯体、金属錯体イオン等の如何なる形態であってもよい。また、金属化合物を付与する際、金属化合物を溶媒に溶解させたり、分散させた形態であってもよい。
【0068】
本発明に用いられる金属イオンとしては、例えば、Al、Ni、Cu、Ag、Pd、Fe、Co、Bi等の各イオン種が挙げられる。また、これらの金属イオンの対塩としては、硝酸イオン、塩化物イオン、硫酸イオン、リン酸イオン等が挙げられる。また、Ag、Au、Cu等の金属コロイドを用いることができる。
【0069】
本発明に係る電解質に適用可能な金属化合物として、銀、ビスマス、銅等のハロゲン化物、硫化物、硝酸塩、過ハロゲン酸塩等の金属化合物を電解液中に溶解させることにより得られる金属イオンを適用することが可能である。これらの金属は、標準酸化還元電位が標準水素電極に対して0.3V〜0.8V付近に位置し、且つ、消発色特性が良好である特徴を有する。例えば、ビスマス化合物を溶解させた電解液を用いた場合には、電極に駆動電圧を印加すると、Bi3++3e-→Biの還元反応が陰極側で生じて、このBi析出物により陰極電極が黒色に変化する。また、本発明では、ビスマスと銅の両方の金属イオンを併用し、共析出させても良い。
【0070】
具体的な金属化合物としては、ビスマス化合物としては塩化ビスマス、臭化ビスマス、ヨウ化ビスマス等のハロゲン化ビスマスの他、硝酸ビスマス、硫酸ビスマス、炭酸ビスマス、水酸化ビスマス、酸化ビスマス、オキシ過塩素酸ビスマス、オキシ硫酸ビスマス、オキシ塩化ビスマス、オキシ酢酸ビスマス等が例示できる。
【0071】
また銅化合物としては塩化銅(II)、臭化銅(II)等のハロゲン化銅の他、硝酸銅(II)、硫酸銅(II)、炭酸銅(II)、水酸化銅(II)、酸化銅(II)、過塩素酸銅(II)等が例示できる。これらは2種以上を用いてもよい。
【0072】
本発明の表示素子においては、電解質に含まれるハロゲンイオンまたはハロゲン原子のモル濃度を[X](モル/kg)とし、前記電解質に含まれる金属または金属化合物の金属の総モル濃度を[A](モル/kg)としたとき、下式(1)で規定する条件を満たすことが好ましい。
【0073】
式(1)
0≦[X]/[A]≦0.01
本発明でいうハロゲン原子とは、ヨウ素原子、塩素原子、臭素原子、フッ素原子のことをいう。
【0074】
[X]/[A]が0.01よりも大きい場合は、金属の酸化還元反応時に、X-→X2が生じ、X2は還元金属と容易にクロス酸化して還元金属を溶解させ、メモリー性を低下させる要因の1つになるので、ハロゲン原子のモル濃度は金属のモル濃度に対してできるだけ低い方が好ましい。本発明においては、0≦[X]/[A]≦0.001がより好ましい。ハロゲンイオンを添加する場合、ハロゲン種については、メモリー性向上の観点から、各ハロゲン種モル濃度総和が[I]<[Br]<[Cl]<[F]であることが好ましい。
【0075】
本発明に係る電解質においては、金属または金属化合物の中でも、特に、銀または銀を化学構造中に含む化合物であることが好ましい。
【0076】
銀を化学構造中に含む化合物としては、ヨウ化銀、塩化銀、臭化銀、酸化銀、硫化銀、クエン酸銀、酢酸銀、ベヘン酸銀、p−トルエンスルホン酸銀、メルカプト類との銀塩、イミノジ酢酸類との銀錯体、等の公知の銀塩化合物を用いることができるが、これらの中でハロゲンやカルボン酸や銀との配位性を有する窒素原子を有しない化合物を銀塩として用いるのが好ましく、例えば、p−トルエンスルホン酸銀が好ましい。
【0077】
本発明に係る電解質層に含まれる銀イオン濃度は、0.2モル/kg≦[Ag]≦2.0モル/kgが好ましい。銀イオン濃度が0.2モル/kgより少ないと希薄な銀溶液となり駆動速度が遅延し、2モル/kgよりも大きいと溶解性が劣化し、低温保存時に析出が起きやすくなる傾向にあり不利である。
【0078】
〔チオエーテル化合物、メルカプト化合物〕
本発明に係る電解質には、前記一般式(A)で表されるチオエーテル化合物、前記一般式(B)で表されるメルカプト化合物を含有することが好ましい。
【0079】
前記一般式(A)において、R7、R8は各々置換または無置換の炭化水素基を表し、これらには芳香族の直鎖基または分岐基が含まれる。また、これらの炭化水素基では、1個以上の窒素原子、酸素原子、リン原子、硫黄原子、ハロゲン原子を含んでも良い。ただし、S原子を含む環を形成する場合には、芳香族基をとることはない。
【0080】
炭化水素基に置換可能な基としては、例えば、アミノ基、グアニジノ基、4級アンモニウム基、ヒドロキシル基、ハロゲン化合物、カルボン酸基、カルボキシレート基、アミド基、スルフィン酸基、スルホン酸基、スルフェート基、ホスホン酸基、ホスフェート基、ニトロ基、シアノ基等を挙げることができる。
【0081】
一般に、銀の溶解析出を生じさせるためには、電解質中で銀を可溶化することが必要である。例えば、銀と配位結合を生じさせたり、銀と弱い共有結合を生じさせるような、銀と相互作用を示す化学構造種を含む化合物等と共存させて、銀または銀を含む化合物を可溶化物に変換する手段を用いるのが一般的である。前記化学構造種として、ハロゲン原子、メルカプト基、カルボキシル基、イミノ基等が知られているが、本発明においては、チオエーテル基も銀溶剤として、有用に作用し、共存化合物への影響が少なく、溶媒への溶解度が高い特徴がある。
【0082】
以下、本発明に係る一般式(A)で表される化合物の具体例を示すが、本発明ではこれら例示する化合物にのみ限定されるものではない。
【0083】
A−1:CH3SCH2CH2OH
A−2:HOCH2CH2SCH2CH2OH
A−3:HOCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2OH
A−4:HOCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2OH
A−5:HOCH2CH2SCH2CH2OCH2CH2OCH2CH2SCH2CH2OH
A−6:HOCH2CH2OCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2OCH2CH2OH
A−7:H3CSCH2CH2COOH
A−8:HOOCCH2SCH2COOH
A−9:HOOCCH2CH2SCH2CH2COOH
A−10:HOOCCH2SCH2CH2SCH2COOH
A−11:HOOCCH2SCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2SCH2COOH
A−12:HOOCCH2CH2SCH2CH2SCH2CH(OH)CH2SCH2CH2SCH2CH2COOH
A−13:HOOCCH2CH2SCH2CH2SCH2CH(OH)CH(OH)CH2SCH2CH2SCH2CH2COOH
A−14:H3CSCH2CH2CH2NH2
A−15:H2NCH2CH2SCH2CH2NH2
A−16:H2NCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2NH2
A−17:H3CSCH2CH2CH(NH2)COOH
A−18:H2NCH2CH2OCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2OCH2CH2NH2
A−19:H2NCH2CH2SCH2CH2OCH2CH2OCH2CH2SCH2CH2NH2
A−20:H2NCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2NH2
A−21:HOOC(NH2)CHCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2CH(NH2)COOH
A−22:HOOC(NH2)CHCH2SCH2CH2OCH2CH2OCH2CH2SCH2CH(NH2)COOH
A−23:HOOC(NH2)CHCH2OCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2OCH2CH(NH2)COOH
A−24:H2N(O=)CCH2SCH2CH2OCH2CH2OCH2CH2SCH2C(=O)NH2
A−25:H2N(O=)CCH2SCH2CH2SCH2C(=O)NH2
A−26:H2NHN(O=)CCH2SCH2CH2SCH2C(=O)NHNH2
A−27:H3C(O=)NHCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2NHC(=O)CH3
A−28:H2NO2SCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2SO2NH2
A−29:NaO3SCH2CH2CH2SCH2CH2SCH2CH2CH2SO3Na
A−30:H3CSO2NHCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2NHO2SCH3
A−31:H2N(NH=)CSCH2CH2SC(=NH)NH2・2HBr
A−32:H2N(NH=)CSCH2CH2OCH2CH2OCH2CH2SC(=NH)NH2・2HCl
A−33:H2N(NH=)CNHCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2NHC(=NH)NH2・2HBr
A−34:〔(CH33NCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2N(CH332+・2Cl-
【0084】
【化4】

【0085】
【化5】

【0086】
上記例示した各化合物の中でも、本発明の目的効果をいかんなく発揮できる観点から、特に例示化合物A−2が好ましい。
【0087】
次いで、本発明に係る一般式(B)で表される化合物について説明する。
【0088】
前記一般式(B)において、Mは水素原子、金属原子または4級アンモニウムを表す。Zはイミダゾール環類を除く含窒素複素環を表す。nは0〜5の整数を表し、R4は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルキルカルボンアミド基、アリールカルボンアミド基、アルキルスルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルカルバモイル基、アリールカルバモイル基、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アリールスルファモイル基、スルファモイル基、シアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アシルオキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、スルホニル基、アミノ基、ヒドロキシ基または複素環基を表し、nが2以上の場合、それぞれのR4は同じであってもよく、異なってもよく、お互いに連結して縮合環を形成してもよい。
【0089】
一般式(B)のMで表される金属原子としては、例えば、Li、Na、K、Mg、Ca、Zn、Ag等が挙げられ、4級アンモニウムとしては、例えば、NH4、N(CH34、N(C494、N(CH331225、N(CH331633、N(CH33CH265等が挙げられる。
【0090】
一般式(B)のZで表される含窒素複素環としては、例えば、テトラゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、インドール環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンズイミダゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾセレナゾール環、ナフトオキサゾール環等が挙げられる。
【0091】
一般式(B)のR4で表されるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、t−ブチル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、ドデシル、ヒドロキシエチル、メトキシエチル、トリフルオロメチル、ベンジル等の各基が挙げられ、アリール基としては、例えば、フェニル、ナフチル等の各基が挙げられ、アルキルカルボンアミド基としては、例えば、アセチルアミノ、プロピオニルアミノ、ブチロイルアミノ等の各基が挙げられ、アリールカルボンアミド基としては、例えば、ベンゾイルアミノ等が挙げられ、アルキルスルホンアミド基としては、例えば、メタンスルホニルアミノ基、エタンスルホニルアミノ基等が挙げられ、アリールスルホンアミド基としては、例えば、ベンゼンスルホニルアミノ基、トルエンスルホニルアミノ基等が挙げられ、アリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ等が挙げられ、アルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ、エチルチオ、ブチルチオ等の各基が挙げられ、アリールチオ基としては、例えば、フェニルチオ基、トリルチオ基等が挙げられ、アルキルカルバモイル基としては、例えば、メチルカルバモイル、ジメチルカルバモイル、エチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、ジブチルカルバモイル、ピペリジルカルバモイル、モルホリルカルバモイル等の各基が挙げられ、アリールカルバモイル基としては、例えば、フェニルカルバモイル、メチルフェニルカルバモイル、エチルフェニルカルバモイル、ベンジルフェニルカルバモイル等の各基が挙げられ、アルキルスルファモイル基としては、例えば、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、エチルスルファモイル、ジエチルスルファモイル、ジブチルスルファモイル、ピペリジルスルファモイル、モルホリルスルファモイル等の各基が挙げられ、アリールスルファモイル基としては、例えば、フェニルスルファモイル、メチルフェニルスルファモイル、エチルフェニルスルファモイル、ベンジルフェニルスルファモイル等の各基が挙げられ、アルキルスルホニル基としては、例えば、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基等が挙げられ、アリールスルホニル基としては、例えば、フェニルスルホニル、4−クロロフェニルスルホニル、p−トルエンスルホニル等の各基が挙げられ、アルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ブトキシカルボニル等の各基が挙げられ、アリールオキシカルボニル基としては、例えばフェノキシカルボニル等が挙げられ、アルキルカルボニル基としては、例えば、アセチル、プロピオニル、ブチロイル等の各基が挙げられ、アリールカルボニル基としては、例えば、ベンゾイル基、アルキルベンゾイル基等が挙げられ、アシルオキシ基としては、例えば、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ブチロイルオキシ等の各基が挙げられ、複素環基としては、例えば、オキサゾール環、チアゾール環、トリアゾール環、セレナゾール環、テトラゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、チアジン環、トリアジン環、ベンズオキサゾール環、ベンズチアゾール環、インドレニン環、ベンズセレナゾール環、ナフトチアゾール環、トリアザインドリジン環、ジアザインドリジン環、テトラアザインドリジン環基等が挙げられる。これらの置換基はさらに置換基を有するものを含む。
【0092】
次に、一般式(B)で表される化合物の好ましい具体例を示すが、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
【0093】
【化6】

【0094】
【化7】

【0095】
上記例示した各化合物の中でも、本発明の目的効果をいかんなく発揮できる観点から、特に、例示化合物B−12、B−18が好ましい。
【0096】
〔有機溶媒〕
本発明の表示素子においては、有機溶媒中に電解質を含有することが好ましい。有機溶媒は、好ましい電解質を有効に溶解することができ、電気分解などの危険性が少ないため好適である。
【0097】
本発明に適用可能な有機溶媒としては、電解質を溶解できれば各種用いることができるが、より好ましくは、下記一般式(4)または(5)で表される化合物である。
【0098】
はじめに、本発明に係る一般式(4)で表される化合物について説明する。
【0099】
【化8】

【0100】
上記一般式(4)において、Lは酸素原子またはCH2を表し、R1〜R4は各々水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、アルコキシアルキル基またはアルコキシ基を表す。
【0101】
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等、アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等、シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等、アルコキシアルキル基として、例えば、β−メトキシエチル基、γ−メトキシプロピル基等、アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等を挙げることができる。
【0102】
以下、本発明に係る一般式(4)で表される化合物の具体例を示すが、本発明ではこれら例示する化合物にのみ限定されるものではない。
【0103】
【化9】

【0104】
次いで、本発明に係る一般式(5)で表される化合物について説明する。
【0105】
【化10】

【0106】
上記一般式(5)において、R5、R6は各々水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、アルコキシアルキル基またはアルコキシ基を表す。
【0107】
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等、アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等、シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等、アルコキシアルキル基として、例えば、β−メトキシエチル基、γ−メトキシプロピル基等、アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等を挙げることができる。
【0108】
以下、本発明に係る一般式(5)で表される化合物の具体例を示すが、本発明ではこれら例示する化合物にのみ限定されるものではない。
【0109】
【化11】

【0110】
上記例示した一般式(4)及び一般式(5)で表される化合物の中でも、特に、例示化合物(4−1)、(4−2)、(5−3)が好ましい。
【0111】
本発明に係る一般式(4)、(5)で表される化合物は電解質溶媒の1種であるが、本発明の表示素子においては、本発明の目的効果を損なわない範囲でさらに別の溶媒を併せて用いることができる。具体的には、テトラメチル尿素、スルホラン、ジメチルスルホキシド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、2−(N−メチル)−2−ピロリジノン、ヘキサメチルホスホルトリアミド、N−メチルプロピオンアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,Nジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、ブチロニトリル、プロピオニトリル、アセトニトリル、アセチルアセトン、4−メチル−2−ペンタノン、2−ブタノール、1−ブタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、エタノール、メタノール、無水酢酸、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、ジメトキシエタン、ジエトキシフラン、テトラヒドロフラン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、水等が挙げられる。これらの溶媒の内、凝固点が−20℃以下、かつ沸点が120℃以上の溶媒を少なくとも1種含むことが好ましい。
【0112】
さらに本発明で用いることのできる溶媒としては、J.A.Riddick,W.B.Bunger,T.K.Sakano,“Organic Solvents”,4th ed.,John Wiley & Sons(1986)、Y.Marcus,“Ion Solvation”,John Wiley & Sons(1985)、C.Reichardt,“Solvents and Solvent Effects in Chemistry”,2nd ed.,VCH(1988)、G.J.Janz,R.P.T.Tomkins,“Nonaqueous Electorlytes Handbook”,Vol.1,Academic Press(1972)に記載の化合物を挙げることができる。
【0113】
本発明において、電解質溶媒は単一種であっても、溶媒の混合物であってもよいが、エチレンカーボネートを含む混合溶媒が好ましい。エチレンカーボネートの添加量は、全電解質溶媒質量の10質量%以上、90質量%以下が好ましい。特に好ましい電解質溶媒は、プロピレンカーボネート/エチレンカーボネートの質量比が7/3〜3/7の混合溶媒である。プロピレンカーボネート比が7/3より大きいとイオン伝導性が劣り応答速度が低下し、3/7より小さいと低温時に電解質が析出しやすくなる。
【0114】
本発明において、電解質が液体である場合には、以下の化合物を電解質中に含むことができる。カリウム化合物としてKCl、KI、KBr等、リチウム化合物としてLiBF4、LiClO4、LiPF6、LiCF3SO3等、テトラアルキルアンモニウム化合物として過塩素酸テトラエチルアンモニウム、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、ホウフッ化テトラエチルアンモニウム、ホウフッ化テトラブチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムハライド等が挙げられる。また、特開2003−187881号公報の段落番号〔0062〕〜〔0081〕に記載の溶融塩電解質組成物も好ましく用いることができる。さらに、I-/I3-、Br-/Br3-、キノン/ハイドロキノン等の酸化還元対になる化合物を用いることができる。
【0115】
また、支持電解質が固体である場合には、電子伝導性やイオン伝導性を示す以下の化合物を電解質中に含むことができる。
【0116】
パーフルオロスルフォン酸を含むフッ化ビニル系高分子、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、トリフェニルアミン類、ポリビニルカルバゾール類、ポリメチルフェニルシラン類、Cu2S、Ag2S、Cu2Se、AgCrSe2等のカルコゲニド、CaF2、PbF2、SrF2、LaF3、TlSn25、CeF3等の含F化合物、Li2SO4、Li4SiO4、Li3PO4等のLi塩、ZrO2、CaO、Cd23、HfO2、Y23、Nb25、WO3、Bi23、AgBr、AgI、CuCl、CuBr、CuBr、CuI、LiI、LiBr、LiCl、LiAlCl4、LiAlF4、AgSBr、C55NHAg56、Rb4Cu167Cl13、Rb3Cu7Cl10、LiN、Li5NI2、Li6NBr3等の化合物が挙げられる。
【0117】
また、支持電解質としてゲル状電解質を用いることもできる。電解質が非水系の場合、特開平11−185836号公報の段落番号〔0057〕〜〔0059〕に記載のオイルゲル化剤を用いことができる。
【0118】
〔一般式(D)で表されるスピロアンモニウム化合物〕
更に、電解質が下記一般式(D)で表される化合物を含有することが、本発明の目的効果をより奏することができる観点から好ましい。
【0119】
【化12】

【0120】
上記一般式(D)において、X及びYは、各々炭素数1〜4のアルキル基を表し、同一であっても異なっていてもよい。k及びiは、各々0または1〜4の正整数を、n及びmは、各々3〜7の正整数を表し、Aは酸成分を表す。
【0121】
一般式(D)において、X及びYの炭素数が5以上、k及びiが5以上、または、n及びmが8以上の場合には、スピロアンモニウム化合物塩のイオン導電性が低下し好ましくない。
【0122】
一般式(D)において、スピロアンモニウム化合物塩のカチオンとしては、例えば、スピロ−(1,1′)−ビアザシクロブチルイオン、アザシクロペンタン−1−スピロ−1′−アザシクロブチルイオン、アザシクロヘキサン−1−スピロ−1′−アザシクロブチルイオン、アザシクロヘプタン−1−スピロ−1′−アザシクロブチルイオン、アザシクロオクタン−1−スピロ−1′−アザシクロブチルイオン、スピロ−(1,1′)−ビアザシクロペンチルイオン、アザシクロヘキサン−1−スピロ−1′−アザシクロペンチルイオン、アザシクロヘプタン−1−スピロ−1′−アザシクロペンチルイオン、アザシクロオクタン−1−スピロ−1′−アザシクロペンチルイオン、スピロ−(1,1′)−ビアザシクロヘキシルイオン、アザシクロヘプタン−1−スピロ−1′−アザシクロヘキシルイオン、アザシクロオクタン−1−スピロ−1′−アザシクロヘキシルイオン、スピロ−(1,1′)−ビアザシクロヘプチルイオン、アザシクロオクタン−1−スピロ−1′−アザシクロヘプチルイオン、スピロ−(1,1′)−ビアザシクロオクチルイオンが挙げられる。
【0123】
一般式(D)において、Aは酸成分を表し、例えば、過塩素酸イオン(ClO4-)、フッ素イオン(F-)、塩素イオン(Cl-)、臭素イオン(Br-)、ヨウ素イオン(I-)、ヘキサフルオロリン酸イオン(PF6-)、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン(SbF6-)、テトラフルオロホウ酸イオン(BF4-)、トリフルオロメタンスルホン酸イオン(CF3SO3-)、トリフルオロ酢酸イオン(CF3CO2-)、ビストリフルオロメタンスルフォニルイミドイオン((CF3SO22-)、ペルフルオロブタンスルホン酸イオン(C49SO3-)、トリストリフルオロメタンスルフォニルメチドイオン((CF3SO23-)、ジシアナミドイオン((CN)2-)等が挙げられる。
【0124】
本発明において、一般式(D)で表されるスピロアンモニウム化合物塩は、以下の製造方法により得られる。
【0125】
まず、イソプロピルアルコール溶媒中、炭酸カリウム存在下でアザシクロアルカンに両末端を臭素化させたジブロモアルカンを作用させてスピロアンモニウムブロマイドを得、次に該ブロマイドを水またはアルコール中で電気透析により脱塩させて水酸化スピロアンモニウム溶液を得る。次いで、得られた水酸化スピロアンモニウム溶液に、一般式(D)中のAに対応する酸成分を、等モル量添加して、中和反応させた後、減圧下で脱水させて、目的とするスピロアンモニウム化合物塩を得ることができる。
【0126】
一般式(D)で表される化合物の電解液への好ましい添加量は、0.1質量%以上、10質量%以下である。0.1質量%以上であれば、本発明の向上効果を発揮し、また10質量%以下であれば、電解液での低温析出を生じることが無く、安定した状態で電解質中に存在させることができる。
【0127】
〔増粘剤〕
本発明の表示素子においては、電解質層に増粘剤を用いることができ、例えば、ゼラチン、アラビアゴム、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(アルキレングリコール)、カゼイン、デンプン、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メチルメタクリル酸)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(メタクリル酸)、コポリ(スチレン−無水マレイン酸)、コポリ(スチレン−アクリロニトリル)、コポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(ビニルアセタール)類(例えば、ポリ(ビニルホルマール)及びポリ(ビニルブチラール))、ポリ(エステル)類、ポリ(ウレタン)類、フェノキシ樹脂、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(エポキシド)類、ポリ(カーボネート)類、ポリ(ビニルアセテート)、セルロースエステル類、ポリ(アミド)類、疎水性透明バインダーとして、ポリビニルブチラール、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリル酸、ポリウレタン等が挙げられる。
【0128】
これらの増粘剤は2種以上を併用して用いてもよい。また、特開昭64−13546号公報の71〜75頁に記載の化合物を挙げることができる。これらの中で好ましく用いられる化合物は、各種添加剤との相溶性と白色粒子の分散安定性向上の観点から、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ヒドロキシプロピルセルロース類、ポリアルキレングリコール類である。
【0129】
《構成層及び添加剤》
本発明が表示素子である場合、構成層には、保護層、フィルター層、ハレーション防止層、クロスオーバー光カット層、バッキング層等の補助層を挙げることができ、これらの補助層中には、各種の化学増感剤、貴金属増感剤、感光色素、強色増感剤、カプラー、高沸点溶剤、カブリ防止剤、安定剤、現像抑制剤、漂白促進剤、定着促進剤、混色防止剤、ホルマリンスカベンジャー、色調剤、硬膜剤、界面活性剤、増粘剤、可塑剤、スベリ剤、紫外線吸収剤、イラジエーション防止染料、フィルター光吸収染料、防ばい剤、ポリマーラテックス、重金属、帯電防止剤、マット剤等を、必要に応じて含有させることができる。
【0130】
上述したこれらの添加剤は、より詳しくは、リサーチディスクロージャー(以下、RDと略す)第176巻Item/17643(1978年12月)、同184巻Item/18431(1979年8月)、同187巻Item/18716(1979年11月)及び同308巻Item/308119(1989年12月)に記載されている。
【0131】
これら三つのリサーチ・ディスクロージャーに示されている化合物種類と記載箇所を以下に掲載した。
【0132】
添加剤 RD17643 RD18716 RD308119
頁 分類 頁 分類 頁 分類
化学増感剤 23 III 648右上 96 III
増感色素 23 IV 648〜649 996〜8 IV
減感色素 23 IV 998 IV
染料 25〜26 VIII 649〜650 1003 VIII
現像促進剤 29 XXI 648右上
カブリ抑制剤・安定剤
24 IV 649右上 1006〜7 VI
増白剤 24 V 998 V
硬膜剤 26 X 651左 1004〜5 X
界面活性剤 26〜7 XI 650右 1005〜6 XI
帯電防止剤 27 XII 650右 1006〜7 XIII
可塑剤 27 XII 650右 1006 XII
スベリ剤 27 XII
マット剤 28 XVI 650右 1008〜9 XVI
バインダー 26 XXII 1003〜4 IX
支持体 28 XVII 1009 XVII
本発明の表示素子の対向電極間の構成層について、更に説明する。
【0133】
本発明の表示素子に係る構成層として、正孔輸送材料を含む構成層を設けることができる。正孔輸送材料として、例えば、芳香族アミン類、トリフェニレン誘導体類、オリゴチオフェン化合物、ポリピロール類、ポリアセチレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリチエニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリアニリン誘導体、ポリトルイジン誘導体、CuI、CuSCN、CuInSe2、Cu(In,Ga)Se、CuGaSe2、Cu2O、CuS、CuGaS2、CuInS2、CuAlSe2、GaP、NiO、CoO、FeO、Bi23、MoO2、Cr23等を挙げることができる。
【0134】
《エレクトロクロミック化合物》
本発明の表示素子に用いられるエレクトロクロミック化合物は、電気化学的な酸化還元によって、物質の光学吸収の性質(色や光透過度)が可逆的に変化する現象(エレクトクロミズム)を示す化合物であればいかなる化合物を用いてもよい。具体的な化合物としては、「エレクトロクロミックディスプレイ」(平成3年6月28日刊、産業図書株式会社)pp27−124、「クロミック材料の開発」(2000年11月15日刊、株式会社シーエムシー)pp81−95等に記載の化合物を挙げることができる。
【0135】
(一般式(C)で表される化合物)
本発明の表示素子において、エレクトロクロミック化合物として好適に用いられる一般式(C)で表される化合物について説明する。
【0136】
前記一般式(C)において、R1は置換もしくは無置換のアリール基を表し、R2、R3は各々水素原子または置換基を表す。Xは>N−R4、酸素原子または硫黄原子を表し、R4は水素原子、または置換基を表す。
【0137】
一般式(C)において、R1、R2、R3で表される置換基の具体例としては、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等)、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基(例えば、プロパルギル基等)、グリシジル基、アクリレート基、メタクリレート基、芳香族基(例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等)、複素環基(例えば、ピリジル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、イミダゾリル基、フリル基、ピロリル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、セレナゾリル基、スリホラニル基、ピペリジニル基、ピラゾリル基、テトラゾリル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基等)、スルホンアミド基(例えば、メタンスルホンアミド基、エタンスルホンアミド基、ブタンスルホンアミド基、ヘキサンスルホンアミド基、シクロヘキサンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、ウレタン基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、フェニルウレイド基、2−ピリジルウレイド基等)、アシル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ヘキサノイル基、シクロヘキサノイル基、ベンゾイル基、ピリジノイル基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、アシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、メチルウレイド基等)、アミド基(例えば、アセトアミド基、プロピオンアミド基、ブタンアミド基、ヘキサンアミド基、ベンズアミド基等)、スルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、フェニルスルフォニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、スルホンアミド基(例えば、メチルスルホンアミド基、オクチルスルホンアミド基、フェニルスルホンアミド基、ナフチルスルホンアミド基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、アニリノ基、2−ピリジルアミノ基等)、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、沃素原子等)、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、ホスホノ基(例えば、ホスホノエチル基、ホスホノプロピル基、ホスホノオキシエチル基)、オキザモイル基等を挙げることができる。また、これらの基はさらにこれらの基で置換されていてもよい。
【0138】
1は、置換もしくは無置換のアリール基であり、好ましくは置換もしくは無置換のフェニル基、更に好ましくは置換もしくは無置換の2−ヒドロキシフェニル基または4−ヒドロキシフェニル基である。
【0139】
2及びR3として好ましくは、アルキル基、シクロアルキル基、芳香族基、複素環基であり、より好ましくは、R2及びR3のいずれか一方がフェニル基、他方がアルキル基、更に好ましくはR2及びR3の両方がフェニル基である。
【0140】
Xとして好ましくは>N−R4である。R4として好ましくは、水素原子、アルキル基、芳香族基、複素環基、アシル基であり、より好ましくは水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数5〜10のアリール基、アシル基である。
【0141】
以下に、一般式(C)で表されるエレクトロクロミック化合物の具体的化合物例を示すが、本発明ではこれら例示する化合物にのみ限定されるものではない。
【0142】
【化13】

【0143】
【化14】

【0144】
【化15】

【0145】
【化16】

【0146】
【化17】

【0147】
【化18】

【0148】
【化19】

【0149】
【化20】

【0150】
【化21】

【0151】
【化22】

【0152】
【化23】

【0153】
【化24】

【0154】
【化25】

【0155】
【化26】

【0156】
本発明の表示素子で、対向電極の駆動操作により、黒表示、白表示、黒以外の着色表示の3色以上の多色表示を行うために、対向電極間に一般式(C)で表される化合物と電解質と白色散乱層を有する構成の場合は、対向電極間の表示側電極に近い部位に金属酸化物を含む多孔質層を形成し、一般式(C)の化合物が固定化されていることが好ましい。
【0157】
〔吸着性基〕
本発明の表示素子においては、本発明に係る一般式(A)で表される化合物が、電極表面と化学吸着または物理吸着する基を有していることが好ましい。
【0158】
本発明に係る化学吸着とは、電極表面との化学結合による比較的強い吸着状態であり、本発明に係る物理吸着とは、電極表面と吸着物質との間に働くファンデルワールス力による比較的弱い吸着状態である。
【0159】
本発明に係る吸着性基は、化学吸着性の基である方が好ましく、化学吸着する吸着性基としては、−COOH、−P−O(OH)2、−OP=O(OH)2及び−Si(OR)3(Rは、アルキル基を表す)が好ましい。
【0160】
《金属酸化物を含む多孔質層》
本発明の表示素子においては、金属酸化物を含む多孔質層を用いることが好ましい。
【0161】
本発明に係る多孔質層を構成する金属酸化物としては、例えば、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化スズ、Snドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛等、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0162】
多孔質層は、上記金属酸化物の複数個の微粒子を結着または接触させることにより形成される。金属酸化物微粒子の平均粒子径は5nm〜10μmが好ましく、より好ましくは20nm〜1μmである。また、金属酸化物微粒子の比表面積は、簡易BET法で1×10-3〜1×1022/gであることが好ましく、より好ましくは1×10-2〜10m2/gである。また、金属酸化物微粒子の形状は、不定形、針状、球形など任意の形状のものが用いられる。
【0163】
金属酸化物微粒子の形成または結着法としては、公知のゾルゲル法や焼結法を採用することができ、例えば、1)Journal of the Ceramic Society of Japan,102,2,p200(1994)、2)窯業協会誌90,4,p157、3)J.of Non−Cryst.Solids,82,400(1986)等に記載の方法が挙げられる。また、気相法により作製した酸化チタンデンドリマー粒子を溶液上に分散して基体上に塗布し、120〜150℃程度の温度範囲で乾燥して溶媒を除去して多孔質層を得る方法を用いることもできる。金属酸化物微粒子は結着させた状態が好ましく、連続加重式表面性測定機(例えば、スクラッチ試験器)で0.1g以上、好ましくは1g以上の耐性を有する状態が好ましい。
【0164】
本発明でいう多孔質とは、多孔質層を配置し、対向電極間に電位差を与え、エレクトロクロミック化合物の酸化還元反応や金属の溶解析出反応を生じさせることが可能で、イオン種が多孔質電極内を移動可能な貫通状態を言う。
【0165】
《白色散乱層》
本発明の表示素子は、対向電極(表示側電極と非表示側電極)の間に白色散乱物質を含む多孔質白色散乱層を形成することが好ましい。
【0166】
このような白色散乱物質として、例えば、二酸化チタン(アナターゼ型あるいはルチル型)、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウムおよび水酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、リン酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、アルカリ土類金属塩、タルク、カオリン、ゼオライト、酸性白土、ガラスなど、有機化合物としてポリエチレン、ポリスチレン、アクリル樹脂、アイオノマー、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素−ホルマリン樹脂、メラミン−ホルマリン樹脂、ポリアミド樹脂などが単体または複合混合で、または粒子中に屈折率を変化させるボイドを有する状態で使用されてもよい。
【0167】
本発明においては、上記白色粒子の中でも、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛が好ましく用いられる。また、無機酸化物(Al23、AlO(OH)、SiO2等)で表面処理した二酸化チタン、これらの表面処理に加えて、トリメチロールエタン、トリエタノールアミン酢酸塩、トリメチルシクロシラン等の有機物処理を施した二酸化チタンを用いることができる。
【0168】
これらの白色粒子のうち、高温時の着色防止、屈折率に起因する素子の反射率の観点から、酸化チタンまたは酸化亜鉛を用いることがより好ましい。
【0169】
また、多孔質白色散乱層を形成する場合、電解質中に実質的に溶解しない水溶性高分子と、上記白色散乱物質との水混和物を塗布、乾燥して形成することができる。
【0170】
本発明に係る電解質溶媒に実質的に溶解しない水溶性高分子としては、ゼラチン、ゼラチン誘導体等の蛋白質またはセルロース誘導体、澱粉、アラビアゴム、デキストラン、プルラン、カラギーナン等の多糖類のような天然化合物や、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド重合体やそれらの誘導体等の合成高分子化合物が挙げられる。ゼラチン誘導体としては、アセチル化ゼラチン、フタル化ゼラチン、ポリビニルアルコール誘導体としては、末端アルキル器変性ポリビニルアルコール、末端メルカプト基変性ポリビニルアルコール、セルロース誘導体としては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。更に、リサーチ・ディスクロージャー及び特開昭64−13546号の(71)頁〜(75)頁に記載されたもの、また、米国特許第4,960,681号、特開昭62−245260号等に記載の高吸水性ポリマー、すなわち−COOMまたは−SO3M(Mは水素原子またはアルカリ金属)を有するビニルモノマーの単独重合体またはこのビニルモノマー同士もしくは他のビニルモノマー(例えばメタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸アンモニウム、アクリル酸カリウム等)との共重合体も使用される。これらのバインダーは2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0171】
本発明においては、ゼラチン及びゼラチン誘導体、または、ポリビニルアルコールもしくはその誘導体を好ましく用いることができる。
【0172】
本発明でいう電解質溶媒に実質的に溶解しないとは、−20℃から120℃の温度において、電解質溶媒1kgあたりの溶解量が0g以上、10g以下である状態と定義し、重量測定法、液体クロマトグラムやガスクロマトグラムによる成分定量法等の公知の方法により溶解量を求めることができる。
【0173】
本発明に係る水溶性高分子と白色顔料との水混和物は、公知の分散方法に従って白色顔料が水中分散された形態が好ましい。水溶性高分子/白色顔料の混合比は、容積比で1〜0.01が好ましく、より好ましくは、0.3〜0.05の範囲である。
【0174】
白色散乱層の基材への形成方法としては、例えば、塗布方式、液噴霧方式、気相を介する噴霧方式として、圧電素子の振動を利用して液滴を飛翔させる方式、例えば、ピエゾ方式のインクジェットヘッドや、突沸を利用したサーマルヘッドを用いて液滴を飛翔させるバブルジェット(登録商標)方式のインクジェットヘッド、また空気圧や液圧により液を噴霧するスプレー方式等が挙げられる。
【0175】
塗布方式としては、公知の塗布方式より適宜選択することができ、例えば、エアードクターコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、含浸コーター、リバースローラーコーター、トランスファーローラーコーター、カーテンコーター、ダブルローラーコーター、スライドホッパーコーター、グラビアコーター、キスロールコーター、ビードコーター、キャストコーター、スプレイコーター、カレンダーコーター、押し出しコーター等が挙げられる。
【0176】
媒体上に付与した水溶性高分子と白色顔料との水混和物の乾燥は、水を蒸発できる方法であればいかなる方法であってもよい。例えば、熱源からの加熱、赤外光を用いた加熱法、電磁誘導による加熱法等が挙げられる。また、水蒸発は減圧下で行ってもよい。
【0177】
本発明の表示素子では、上記説明した水混和物を塗布乾燥中または乾燥後に、硬化剤により水溶性高分子の硬化反応を行うことが好ましい。
【0178】
本発明で用いられる硬膜剤の例としては、例えば、米国特許第4,678,739号の第41欄、同第4,791,042号、特開昭59−116655号、同62−245261号、同61−18942号、同61−249054号、同61−245153号、特開平4−218044号等に記載の硬膜剤が挙げられる。より具体的には、アルデヒド系硬膜剤(ホルムアルデヒド等)、アジリジン系硬膜剤、エポキシ系硬膜剤、ビニルスルホン系硬膜剤(N,N′−エチレン−ビス(ビニルスルホニルアセタミド)エタン等)、N−メチロール系硬膜剤(ジメチロール尿素等)、ほう酸、メタほう酸あるいは高分子硬膜剤(特開昭62−234157号等に記載の化合物)が挙げられる。水溶性高分子としてゼラチンを用いる場合は、硬膜剤の中で、ビニルスルホン型硬膜剤やクロロトリアジン型硬膜剤を単独または併用して使用することが好ましい。また、ポリビニルアルコールを用いる場合はホウ酸やメタホウ酸等の含ホウ素化合物の使用が好ましい。
【0179】
これらの硬膜剤は、水溶性高分子1g当たり0.001〜1g、好ましくは0.005〜0.5gが用いられる。
【0180】
《基板》
本発明で用いることのできる基板としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン類、ポリカーボネート類、セルロースアセテート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンジナフタレンジカルボキシラート、ポリエチレンナフタレート類、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリビニルアセタール類、ポリスチレン等の合成プラスチックフィルムも好ましく使用できる。また、シンジオタクチック構造ポリスチレン類も好ましい。これらは、例えば、特開昭62−117708号、特開平1−46912、同1−178505号の各公報に記載されている方法により得ることができる。更に、ステンレス等の金属製基盤や、バライタ紙、及びレジンコート紙等の紙支持体ならびに上記プラスチックフィルムに反射層を設けた支持体、特開昭62−253195号(29〜31頁)に支持体として記載されたものが挙げられる。RDNo.17643の28頁、同No.18716の647頁右欄から648頁左欄及び同No.307105の879頁に記載されたものも好ましく使用できる。これらの支持体には、米国特許第4,141,735号のようにTg以下の熱処理を施すことで、巻き癖をつきにくくしたものを用いることができる。また、これらの支持体表面を支持体と他の構成層との接着の向上を目的に表面処理を行っても良い。本発明では、グロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理を表面処理として用いることができる。更に公知技術第5号(1991年3月22日アズテック有限会社発行)の44〜149頁に記載の支持体を用いることもできる。更にRDNo.308119の1009頁やプロダクト・ライセシング・インデックス、第92巻P108の「Supports」の項に記載されているものが挙げられる。その他に、ガラス基板や、ガラスを練りこんだエポキシ樹脂を用いることができる。
【0181】
《透明電極》
本発明の表示素子では、対向電極の少なくとも1種が透明電極であることが好ましい。透明電極としては、透明で電気を通じるものであれば特に制限はない。例えば、Indium Tin Oxide(ITO:インジウム錫酸化物)、Indium Zinc Oxide(IZO:インジウム亜鉛酸化物)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化インジウム、酸化亜鉛等が挙げられる。電極をこのように形成するには、例えば、基板上にITO膜をスパッタリング法等でマスク蒸着するか、ITO膜を全面形成した後、フォトリソグラフィ法でパターニングすればよい。表面抵抗値としては、100Ω/□以下が好ましく、10Ω/□以下がより好ましい。透明電極の厚みは特に制限はないが、0.1〜20μmであるのが一般的である。
【0182】
《表示素子のその他の構成要素》
本発明の表示素子では、必要に応じて、シール剤、柱状構造物、スペーサー粒子を用いることができる。
【0183】
シール剤は電解質が外に漏れないように封入するためのものであり封止剤とも呼ばれ、エポキシ樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、エン−チオール系樹脂、シリコーン系樹脂、変性ポリマー樹脂等の、熱硬化型、光硬化型、湿気硬化型、嫌気硬化型等の硬化タイプを用いることができる。
【0184】
柱状構造物は、基板間の強い自己保持性(強度)を付与し、例えば、格子配列等の所定のパターンに一定の間隔で配列された、円柱状体、四角柱状体、楕円柱状体、台形柱状体等の柱状構造物を挙げることができる。また、所定間隔で配置されたストライプ状のものでもよい。この柱状構造物はランダムな配列ではなく、等間隔な配列、間隔が徐々に変化する配列、所定の配置パターンが一定の周期で繰り返される配列等、基板の間隔を適切に保持でき、且つ、画像表示を妨げないように考慮された配列であることが好ましい。柱状構造物は表示素子の表示領域に占める面積の割合が1〜40%であれば、表示素子として実用上十分な強度が得られる。
【0185】
一対の基板間には、該基板間のギャップを均一に保持するためのスペーサーが設けられていてもよい。このスペーサーとしては、樹脂製または無機酸化物製の球体を例示できる。また、表面に熱可塑性の樹脂がコーティングしてある固着スペーサーも好適に用いられる。基板間のギャップを均一に保持するために柱状構造物のみを設けてもよいが、スペーサー及び柱状構造物をいずれも設けてもよいし、柱状構造物に代えて、スペーサーのみをスペース保持部材として使用してもよい。スペーサーの直径は柱状構造物を形成する場合はその高さ以下、好ましくは当該高さに等しい。柱状構造物を形成しない場合はスペーサーの直径がセルギャップの厚みに相当する。
【0186】
《スクリーン印刷》
本発明においては、シール剤、柱状構造物、電極パターン等をスクリーン印刷法で形成することもできる。スクリーン印刷法は、所定のパターンが形成されたスクリーンを基板の電極面上に被せ、スクリーン上に印刷材料(柱状構造物形成のための組成物、例えば、光硬化性樹脂など)を載せる。そして、スキージを所定の圧力、角度、速度で移動させる。これによって、印刷材料がスクリーンのパターンを介して該基板上に転写される。次に、転写された材料を加熱硬化、乾燥させる。スクリーン印刷法で柱状構造物を形成する場合、樹脂材料は光硬化性樹脂に限られず、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等の熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂も使用できる。熱可塑性樹脂としては、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリビニルエーテル樹脂、ポリビニルケトン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩素化ポリエーテル樹脂等が挙げられる。樹脂材料は樹脂を適当な溶剤に溶解するなどしてペースト状にして用いることが望ましい。
【0187】
以上のようにして柱状構造物等を基板上に形成した後は、所望によりスペーサーを少なくとも一方の基板上に付与し、一対の基板を電極形成面を対向させて重ね合わせ、空セルを形成する。重ね合わせた一対の基板を両側から加圧しながら加熱することにより、貼り合わせて、表示セルが得られる。表示素子とするには、基板間に電解質組成物を真空注入法等によって注入すればよい。あるいは、基板を貼り合わせる際に、一方の基板に電解質組成物を滴下しておき、基板の貼り合わせと同時に液晶組成物を封入するようにしてもよい。
【0188】
《表示素子駆動方法》
本発明の表示素子において、一般式(C)の化合物がない場合は、析出過電圧以上の電圧印加で黒化銀を析出させ、析出過電圧以下の電圧印加で黒化銀の析出を継続させる駆動操作を行うことが好ましい。この駆動操作を行うことにより、書き込みエネルギーの低下や、駆動回路負荷の低減や、画面としての書き込み速度を向上させることができる。一般に電気化学分野の電極反応において過電圧が存在することは公知である。例えば、過電圧については「電子移動の化学−電気化学入門」(1996年 朝倉書店刊)の121ページに詳しい解説がある。本発明の表示素子も電極と電解質中の銀との電極反応と見なすことができるので、銀溶解析出においても過電圧が存在することは容易に理解できる。過電圧の大きさは交換電流密度が支配するので、本発明のように黒化銀が生成した後に析出過電圧以下の電圧印加で黒化銀の析出を継続できるということは、黒化銀表面の方が余分な電気エネルギーが少なく容易に電子注入が行えると推定される。
【0189】
また、一般式(C)の化合物がある場合、本発明の表示素子の透明状態及び着色状態の制御方法は、一般式(C)で表される化合物の酸化還元電位や銀イオンの析出過電圧を基に決められることが好ましい。
【0190】
例えば、一般式(C)で表される化合物と銀化合物を対向電極間に有する表示素子の場合、酸化側で黒以外の着色状態を示し、還元側で黒色状態を示す。この場合の制御方法の一例としては、一般式(C)で表される化合物の酸化還元電位より貴な電圧を印加することで一般式(C)で表される化合物を酸化し黒以外の着色状態を示し、一般式(C)で表される化合物の酸化還元電位と銀化合物の析出過電圧の間の電圧を印加することで一般式(C)で表される化合物を還元し白色状態に戻し、銀化合物の析出過電圧より卑な電圧を印加することで銀を電極上に析出させ黒色状態を示し、析出した銀の酸化電位と一般式(C)で表される化合物の酸化還元電位の間の電圧を印加することで析出した銀を溶解して消色する方法が挙げられる。
【0191】
本発明の表示素子の駆動操作は、単純マトリックス駆動であっても、アクティブマトリック駆動であってもよい。本発明でいう単純マトリックス駆動とは、複数の正極を含む正極ラインと複数の負極を含む負極ラインとが対向する形で互いのラインが垂直方向に交差した回路に、順次電流を印加する駆動方法のことを言う。単純マトリックス駆動を用いることにより、回路構成や駆動ICを簡略化でき安価に製造できるメリットがある。アクティブマトリックス駆動は、走査線、データライン、電流供給ラインが碁盤目状に形成され、各碁盤目に設けられたTFT回路により駆動させる方式である。画素毎にスイッチングが行えるので、階調やメモリー機能などのメリットがあり、例えば、特開2004−29327号の図5に記載されている回路を用いることができる。
【0192】
《商品適用分野》
本発明の表示素子は、電子書籍分野、IDカード関連分野、公共関連分野、交通関連分野、放送関連分野、決済関連分野、流通物流関連分野等の用いることができる。具体的には、ドア用のキー、学生証、社員証、各種会員カード、コンビニストアー用カード、デパート用カード、自動販売機用カード、ガソリンステーション用カード、地下鉄や鉄道用のカード、バスカード、キャッシュカード、クレジットカード、ハイウェイカード、運転免許証、病院の診察カード、電子カルテ、健康保険証、住民基本台帳、パスポート、電子ブック等が挙げられる。
【実施例】
【0193】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0194】
《表示素子の作製》
〔表示素子1の作製:本発明〕
(電極の作製)
〈非表示側(対向側)電極1の作製〉
昭和電工製のカーボンナノファイバーVGCF(繊維系150nm)と呉羽化学製のポリビニリデンフルオライド(PVDFと略記、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶解品)を混合、分散機で分散し、カーボンナノファイバーを含んだ溶液1を用意した。
【0195】
次いで、2cm×4cmサイズのガラス(ガラス厚み1.5mm)表面に公知の方法でITO(Indium Tin Oxide、インジウム錫酸化物)をピッチ145μm、電極幅130μmのパターンで、厚み800nmになるように形成し、そのパターン化されたITO上に上記溶液1を厚み10μmになるように塗布し、必要電極開口部以外の部分はアクリル樹脂系の絶縁膜を厚み500nmになるように形成して、カーボンナノファイバーを含む非表示側電極1を作製した。
【0196】
〈表示側電極1の作製〉
公知の方法で、2cm×4cmサイズのアルカリガラス(厚み1.5mm)表面に、公知の方法を用いて、ITO膜を厚さ800nmとなるように形成した。
【0197】
(電解液1の調製)
ジメチルスルホキシド2.5g中に、トルエンスルホン酸銀を0.1g添加し、更に臭化リチウム0.1g、テトラブチルアンモニウムパークロレートを0.025g加えて完全に溶解、混合し、電解液1を得た。
【0198】
(白色分散液1の調製)
ポリビニルアルコール(重量平均分子量3,000)を2質量%含む水溶液中に、酸化チタン20質量%を超音波分散機で分散させて白色分散液1を得た。
【0199】
(表示素子の作製)
上記作製した非表示側電極1のカーボンナノファイバーを設けた側に、上記白色分散液1をブレードコーターで塗布して、80℃で3分間乾燥、膜厚30μmの白色散乱層を形成した。
【0200】
次いで、上記非表示側電極1の周辺部上に、平均粒径が40μmのガラス製球形ビーズ状スペーサーを体積分率として10%含むオレフィン系封止剤を印刷し、上記表示側電極1(ITOガラス)のITO側を白色散乱層側にして、非表示側電極1と重ねて、端部をシール材で貼り合わせた後、加熱加圧して空セルを作製した。この空セルに上記電解液1を真空注入し、注入口をエポキシ系の紫外線硬化樹脂にて封止し、表示素子1を作製した。
【0201】
〔表示素子2の作製:本発明〕
(電解液2の調製)
ジメチルスルホキシド2.5g中に、トルエンスルホン酸銀を0.1g添加し、更に例示化合物B−12を0.1g、加えて完全に溶解、混合し、電解液2を得た。
【0202】
(表示素子の作製)
上記表示素子1の作製において、電解質1に代えて、上記調製した電解液2を用いた以外は同様にして、表示素子2を作製した。
【0203】
〔表示素子3の作製:本発明〕
(非表示側(対向側)電極3の作製)
昭和電工製のカーボンナノファイバーVGCF(繊維系150nm)と銅ナノ粒子と呉羽化学製のポリビニリデンフルオライド(PVDF、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶解品)を混合した後、分散機で分散してカーボンナノファイバーを含んだ溶液2を調製した。
【0204】
次いで、2cm×4cmサイズのガラス(ガラス厚み1.5mm)表面に公知の方法でITOをピッチ145μm、電極幅130μmのパターンで、厚み800nmになるように形成し、そのパターン化されたITO上に上記溶液2を厚さ10μmになるように塗布し、必要電極開口部以外の部分はアクリル樹脂系の絶縁膜を厚み500nmになるように形成して、カーボンナノファイバーを含む非表示側電極3を作製した。
【0205】
(表示素子の作製)
上記表示素子2の作製において、非表示側電極1に代えて、上記作製した非表示側電極3を用いた以外は同様にして、表示素子3を作製した。
【0206】
〔表示素子4〜12の作製:本発明〕
上記表示素子3の作製において、非表示側電極の構成及び電解質の組成を、表1に記載のように変更した以外は同様にして、表示素子4〜12を作製した。
【0207】
〔表示素子13の作製:本発明〕
(電解液13の調製)
ジメチルスルホキシド2.5g中に、硫酸ビスマスを0.1g添加し、更に臭化リチウム0.1g、テトラブチルアンモニウムパークロレートを0.025g加えて完全に溶解、混合して、電解液13を調製した。
【0208】
(表示素子の作製)
前記表示素子1の作製において、電解液1に代えて、上記調製した電解液13を用いた以外は同様にして、表示素子13を作製した。
【0209】
〔表示素子14の作製:本発明〕
(非表示側(対向側)電極14の作製)
下記化合物1と昭和電工製カーボンナノファイバーVGCF(繊維系150nm)を脱水縮合して合成した化合物1で修飾したカーボンナノファイバーと呉羽化学製のポリビニリデンフルオライド(PVDF、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶解品)を混合、分散機で分散し、カーボンナノファイバーを含んだ溶液14を調製した。
【0210】
次いで、2cm×4cmサイズのガラス(ガラス厚み1.5mm)表面に、公知の方法でITOをピッチ145μm、電極幅130μmのパターンで、厚み800nmになるように形成し、そのパターン化されたITO上に上記溶液14を厚さが10μmになるように塗布し、必要電極開口部以外の部分はアクリル樹脂系の絶縁膜を厚み500nmになるように形成して、カーボンナノファイバーを含む非表示側電極14を作製した。
【0211】
【化27】

【0212】
(表示素子の作製)
上記表示素子2の作製において、非表示側電極1に代えて、上記作製した非表示側電極14を用いた以外は同様にして、表示素子14を作製した。
【0213】
〔表示素子15の作製:本発明〕
上記表示素子14の作製において、非表示側電極14の作製に用いた化合物1を、1−(2,6−ジメチルフェニル)−4,4′−ビピリジニウム ジクロライド(例示化合物1−16)を用いた以外は同様にして、表示素子15を作製した。
【0214】
〔表示素子16の作製:本発明〕
上記表示素子14の作製において、非表示側電極14の作製に用いた化合物1を、1−ホスホノエチル−4,4′−ビピリジニウム ビス−ヘキサフルオロフォスフェート(例示化合物1−22)を用いた以外は同様にして、表示素子16を作製した。
【0215】
〔表示素子17の作製:本発明〕
(電極17の作製)
〈非表示側(対向側)電極17の作製〉
前記非表示側電極1の作製において、表1に記載のように変更した以外は同様にして、非表示側(対向側)電極17を作製した。なお、カーボンブラックは、東海カーボン製カーボンブラック(グラッシーカーボン微小球8μm径)を使用した。
【0216】
〈表示側電極17の作製〉
公知の方法で、2cm×4cmサイズのアルカリガラス(厚み1.5mm)表面に、ITOを厚み800nmとなるように形成した。ITO膜上に、厚み5μmの二酸化チタン(平均粒子径17nmの粒子)膜を形成した。次に、例示化合物D−42を3mmol/Lとなるようにアセトニトリル/エタノールに溶解させたインク1を調製し、ピエゾヘッドを有するインクジェット装置にて、200dpiで、電極1上にインク1を付与し、表示側電極17を作製した。なお、本発明でいうdpiとは、2.54cmあたりのドット数を表す。
【0217】
(表示素子の作製)
前記表示素子2の作製において、非表示側電極1に代えて上記作製した非表示側電極17を用い、また表示側電極1に代えて上記作製した表示側電極17を用いた以外は同様にして表示素子17を作製した。
【0218】
〔表示素子18の作製:本発明〕
前記表示素子2の作製において、表示側電極及び非表示側電極の構成を表1に記載の様に変更した以外は同様にして、表示素子18を作製した。
【0219】
〔表示素子19〜22の作製:比較例〕
前記表示素子2の作製において、非表示側電極の構成を表1に記載の様に変更した以外は同様にして、表示素子19〜22を作製した。
【0220】
〔表示素子23の作製:比較例〕
前記表示素子17の作製において、非表示側電極の構成を表1に記載の様に変更した以外は同様にして、表示素子23を作製した。
【0221】
【表1】

【0222】
なお、表1に略称で記載した項目の詳細は、以下の通りである。
【0223】
(電極構成)
〈電極材料〉
ITO:Indium Tin Oxide、インジウム錫酸化物
CNF:カーボンナノファイバー
*A:1−ホスホノエチル−4,4′−ビピリジニウム ビス−ヘキサフルオロフォスフェート(例示化合物1−22)で修飾したカーボンナノファイバー
*B:化合物1で修飾したカーボンナノファイバー
*C:1−(2,6−ジメチルフェニル)−4,4′−ビピリジニウム ジクロライド(例示化合物1−16)で修飾したカーボンナノファイバー
〈金属粒子〉
CB:カーボンブラック
〈バインダー〉
PVDF:ポリビニリデンフルオライド(呉羽化学製)
〈その他〉
*1:表示側電極におけるカーボンナノファイバーと金属粒子との体積比率
*2:非表示側電極におけるカーボンナノファイバーと金属粒子との体積比率
(電解質)
トシル酸銀:トルエンスルホン酸銀
《表示素子の評価》
上記作製した各表示素子について、下記の評価を行った。
【0224】
〔表示速度の評価〕
定電圧電源の両端子に作製した表示素子の両電極を接続し、−1.5Vの電圧を1.5秒間印加して白色を表示させた後に、+1.5Vの電圧を0.5秒間印加させてグレーを表示させ、550nmでの反射率をコニカミノルタセンシング社製の分光測色計CM−3700dで測定した。測定した反射率をRGrayとし、RGrayを表示速度の指標とした。サンプルのRGray値/表示素子20のRGray値を算出したものをRGray*とした。RGray*が低いほどサンプルの相対表示速度が速いことを表す。
【0225】
また、一般式(D)の化合物を有する表示素子17、23については、表示素子に、+2.0Vの電圧を3秒間印加した後に、コニカミノルタセンシング社製の分光測色計CM−3700dで着色状態の反射率(400nm〜700nmの間の極小値となる波長)を測定した。測定した反射率をRcolorとし、Rcolorを表示速度の指標とした。表示素子17のRcolor値/表示素子23のRcolor値を算出したものをRcolor*とした。Rcolor*が低いほどサンプルの相対表示速度が速い。
【0226】
(多色表示性の評価)
一般式(D)の化合物を有する表示素子17、23においては、−2.0V〜+2.0Vの範囲を0.1V間隔で0.5秒間ずつ印加し、着色と消色状態を確認した。ここでは、少なくとも黒以外の着色状態と白色状態と黒色状態の3つの状態を確認できた表示素子は多色表示出来たと判定し、○とした。
【0227】
(耐久性の評価)
上記作製した各表示素子について、+1.5Vの電圧を1.5秒間印加して白色を表示させた後に、コニカミノルタセンシング社製の分光測色計CM−3700dでL*値、a*値、b*値を測定し、それぞれL1、a1、b1とした。その後、−1.5Vの電圧を0.5秒間印加して黒色を表示させ、その条件で白化−黒化を1000回繰り返し、その後再度白化させたときのL*値、a*値、b*値を測定し、それぞれL2、a2、b2とした。
【0228】
得られた各測定値から色調変動の評価値として、ΔE=〔(L2−L12+(a2−a12+(b2−b121/2を計算した。表示素子1のΔEの値を5.9とした場合の各素子のΔEの相対値ΔE*を各表示素子について求めた結果を表1に示す。ΔE*の値が小さいほど、繰り返し駆動において色調変動が小さく優れていることを示す。
【0229】
また、一般式(D)の化合物を有する表示素子17、23の耐久性の評価としては、黒色表示に関わる電解質を抜いた電解質を有する表示素子で、−1.5Vの電圧を1.5秒間印加して白色を表示させた後に、コニカミノルタセンシング社製の分光測色計CM−3700dでL*値、a*値、b*値を測定し、それぞれL1、a1、b1とした。その後、+1.5Vの電圧を0.5秒間印加して着色表示させ、その条件で白化−着色を1000回繰り返し、その後再度白化させたときのL*値、a*値、b*値を測定し、それぞれL2、a2、b2とした。表示素子17のΔEの値を1とした場合の表示素子23のΔEの相対値ΔE*を、白黒表示の表示素子と同様に求めた。
【0230】
以上により得られた結果を、表2に示す。
【0231】
【表2】

【0232】
表2に記載の結果より明らかなように、本発明の表示素子は、比較例に対し、表示速度が速く、繰り返し駆動時の耐久性も良好で、一般式(D)化合物を含む表示素子においては、多色表示が可能な優れた表示素子であることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0233】
【図1】本発明の表示素子の原理を説明する概念図である。
【符号の説明】
【0234】
1 表示素子
2 透明電極
3 対向電極
4 黒色画像(銀画像)
5 電解質

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向電極間に電解質を有する表示素子において、該対向電極のいずれか一方の電極が、少なくともカーボンナノファイバーを含む電極であることを特徴とする表示素子。
【請求項2】
前記電解質が、金属または金属塩を含有することを特徴とする請求項1に記載の表示素子。
【請求項3】
前記金属または金属塩が、銀または銀を化学構造中に含む化合物であることを特徴とする請求項2に記載の表示素子。
【請求項4】
前記電解質に含まれるハロゲンイオンまたはハロゲン原子のモル濃度を[X](モル/kg)とし、前記電解質に含まれる金属または金属化合物の金属の総モル濃度を[A](モル/kg)としたとき、下記式〔I〕で規定する条件を満たすことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の表示素子。
式〔I〕
0≦[X]/[A]≦0.01
【請求項5】
前記カーボンナノファイバーを含む電極が、金属粒子を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の表示素子。
【請求項6】
前記金属粒子が、金、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム及びオスミウムから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項5に記載の表示素子。
【請求項7】
前記電解質が、下記一般式(A)または一般式(B)で表される化合物を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の表示素子。
一般式(A)
7−S−R8
〔式中、R7、R8は各々置換または無置換の炭化水素基を表す。但し、S原子を含む環を形成する場合には、芳香族基をとることはない。〕
【化1】

〔式中、Mは水素原子、金属原子または4級アンモニウムを表す。Zは含窒素複素環を表す。nは0〜5の整数を表し、R9は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルキルカルボンアミド基、アリールカルボンアミド基、アルキルスルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルカルバモイル基、アリールカルバモイル基、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アリールスルファモイル基、スルファモイル基、シアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アシルオキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、スルホニル基、アミノ基、ヒドロキシ基または複素環基を表し、nが2以上の場合、それぞれのR9は同一でも異なっていてもよく、お互いに連結して縮合環を形成してもよい。〕
【請求項8】
前記対向電極間に、下記一般式(C)で表される化合物と前記電解質とを含有し、かつ前記対向電極の駆動操作により、黒表示、白表示、黒以外の着色表示の3色以上の多色表示を行うことを特徴とする請求項1、2、5または6に記載の表示素子。
【化2】

〔式中、R1は置換もしくは無置換のアリール基を表し、R2、R3は各々水素原子または置換基を表す。Xは>N−R4、酸素原子または硫黄原子を表し、R4は水素原子、または置換基を表す。〕
【請求項9】
前記金属または金属化合物が、銀または銀を化学構造中に含む化合物であることを特徴とする請求項8に記載の表示素子。
【請求項10】
前記カーボンナノファイバーが、酸化還元活性物質で修飾されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の表示素子。
【請求項11】
前記酸化還元活性物質が、下記一般式(1)〜(3)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項10に記載の表示素子。
【化3】

〔式中、CAはカーボンナノファイバー骨格を表し、X1〜X9は各々NQ1、硫黄原子または酸素原子を表す。ここで、Q1は水素原子、隣接原子と二重結合を形成するための結合手またはアルキル基を表す。Y1、Y2は各々CQ2または窒素原子を表す。ここで、Q2は水素原子または隣接原子と二重結合を形成するための結合手を表す。Z1はX1、Y1と共に、Z2はX2、Y2と共に、Z3はX5、X6と共に、Z4はX9と共に、それぞれ複素環を形成するための原子群を表す。Z1〜Z4で形成される各々の複素環は、置換基を有していてもよく、また縮合環を形成してもよい。R1〜R5は各々水素原子、ハロゲン原子、複素環、アルキル基、アルコキシ基、アリール基またはアミノ基を表す。L1〜L3は各々2価の連結基を表す。〕
【請求項12】
前記対向電極間に、白色散乱層を有することを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の表示素子。

【図1】
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【公開番号】特開2009−163177(P2009−163177A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−3026(P2008−3026)
【出願日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】