説明

表示素子

【課題】簡易な方法で、十分な接着性を有する白色散乱層を形成することにより、良好な白色表示品質と繰り返し駆動への耐性を有し、駆動速度の向上と色ムラの低減が図られた表示素子を提供することにある。
【解決手段】対向電極間に電気化学的に反応して発色または消色を生じる表示媒体を有する表示素子において、対向電極の一方に、白色散乱層が設けられ、該白色散乱層が、白色散乱性微粒子と、チタン化合物またはジルコニウム化合物を含むことを特徴とする表示素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学的に反応して発色または消色を生じる表示媒体を有する表示素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピューターの動作速度の向上、ネットワークインフラの普及、データストレージの大容量化と低価格化に伴い、従来紙への印刷物で提供されたドキュメントや画像等の情報を、より簡便な電子情報として入手、電子情報を閲覧する機会がますます増大している。
【0003】
このような電子情報の閲覧手段として、従来の液晶ディスプレイやCRT、また近年では、有機ELディスプレイ等の発光型が主として用いられているが、特に、電子情報がドキュメント情報の場合、比較的長時間にわたってこの閲覧手段を注視する必要があり、これらの行為は必ずしも人間に優しい手段とは言い難く、一般に発光型のディスプレイの欠点として、フリッカーで目が疲労する、持ち運びに不便、読む姿勢が制限され、静止画面に視線を合わせる必要が生じる、長時間読むと消費電力が嵩む等が知られている。
【0004】
これらの欠点を補う表示手段として、外光を利用し、像保持のために電力を消費しない、いわゆるメモリー性を有する反射型ディスプレイが知られているが、下記の理由で十分な性能を有しているとは言い難い。
【0005】
即ち、反射型液晶等の偏光板を用いる方式は、反射率が約40%と低く白表示に難があり、また構成部材の作製に用いる製法の多くは簡便とは言い難い。また、ポリマー分散型液晶は高い電圧を必要とし、また有機物同士の屈折率差を利用しているため、得られる画像のコントラストが十分でない。また、ポリマーネットワーク型液晶は電圧高いことと、メモリー性を向上させるために複雑なTFT回路が必要である等の課題を抱えている。また、電気泳動法による表示素子は、10V以上の高い電圧が必要となり、電気泳動性粒子凝集による耐久性に懸念がある。
【0006】
一方、電気化学的な反応による発色及び消色を利用する表示方式として、エレクトロクロミック方式や、電解析出(エレクトロデポジション)方式が知られている。これら電気化学的な表示素子は、概ね3V以下の低電圧での駆動が可能であるという利点から、調光ガラス、防眩ミラー等の用途で知られている。
【0007】
反射型の表示素子では、白色表示のために、白色散乱板を背面基板として使用したり、白色散乱粒子を表示素子内に含ませる方法が用いられる。電気化学反応型表示素子において、白色粒子を表示素子内に含ませる方法としては、(1)電解質中に分散する、(2)白色散乱層として設ける、という方法を取ることができる。
【0008】
特許文献1には、電解析出型の表示素子において、多孔質白色散乱層と電子絶縁層を電極上に設ける方法が開示されている。特許文献1においては、多孔質白色散乱層は、電解質溶媒に実質的に溶解しない水系高分子と白色顔料との水混和物を塗布乾燥して形成している。形成工程は簡素で、均質な層が得られるが、白色散乱層と対向電極との接着性が十分ではなく、多数回の繰り返し駆動を行うと、白色散乱層が剥がれてくることが分かってきた。白色散乱層の剥がれは、表示ムラにつながることが分かってきた。
【特許文献1】特開2006−337457号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、簡易な方法で、十分な接着性を有する白色散乱層を形成することにより、良好な白色表示品質と繰り返し駆動への耐性を有し、駆動速度の向上と色ムラの低減が図られた表示素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は、以下の構成により解決することができた。
【0011】
1.対向電極間に電気化学的に反応して発色または消色を生じる表示媒体を有する表示素子において、対向電極の一方に、白色散乱層が設けられ、該白色散乱層が、白色散乱性微粒子と、チタン化合物またはジルコニウム化合物を含むことを特徴とする表示素子。
【0012】
2.前記チタン化合物または前記ジルコニウム化合物が、有機チタン化合物または有機ジルコニウム化合物であることを特徴とする前記1に記載の表示素子。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、簡易な方法で、十分な接着性を有する白色散乱層を形成することにより、良好な白色表示品質と繰り返し駆動への耐性を有し、駆動速度の向上と色ムラの低減が図られた表示素子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0015】
本発明者は、対向電極間に電気化学的に反応して発色または消色を生じる表示媒体を有する表示素子において、対向電極の一方に、白色散乱層が設けられ、該白色散乱層が、白色散乱性微粒子と、チタン化合物またはジルコニウム化合物を含むことを特徴とする表示素子により、良好な白色表示品質と繰り返し駆動への耐性を有し、駆動速度の向上と色ムラの低減が図られた表示素子を得ることができるということを見出した。
【0016】
以下、本発明の詳細について説明する。
【0017】
〔表示素子の基本構成〕
図1は、本発明の表示素子の基本的な構成を示す概略断面図である。
【0018】
図1において、本発明の表示素子は、対向電極2−2の上に白色散乱層3を設け、対向電極2−1との間に表示媒体4を保持し、電源から電極2−1、2−2に電圧または電流を印加することにより、表示媒体4中のエレクトロクロミック化合物(以下EC化合物とする)の酸化還元反応による発色/消色反応を生じさせ、表示状態を変更させる表示素子(エレクトロクロミック方式)、あるいは、金属塩化合物に含まれる金属、例えば、銀の溶解反応または析出反応を生じさせ、金属、例えば、銀を含む化合物の光の透過/吸収という光学的特性の違いを利用して表示状態を変更する表示素子(電解析出、エレクトロデポジション方式)である。対向電極2−1を実質的に透明な電極とすることで、透明電極側からの閲覧が可能となる。
【0019】
図2は、本発明の表示素子の別の一例の基本的な構成を示す概略断面図である。
【0020】
図2において、本発明の表示素子は、対向電極2−2の上に白色散乱層3を設け、対向電極2−1の表示媒体側にEC化合物吸着層5を設け、対向電極2−1との間に表示媒体4を保持している。電源から電極2−1、2−2に電圧または電流を印加することにより、EC化合物の酸化還元反応による発色/消色を生じるエレクトロクロミック方式表示素子である。また、表示媒体4中に金属塩化合物を含ませ、エレクトロクロミックと電解析出を併用することにより、カラーと白黒の表示を一素子で行うことができる併用型方式の表示素子とすることができる。対向電極2−1を実質的に透明な電極とすることで、透明電極側からの閲覧が可能となる。
【0021】
図3は、本発明の表示素子の白色散乱層部分の拡大模式図である。本発明は、白色散乱層3が、白色散乱性微粒子6と、チタン化合物またはジルコニウム化合物を含むことが特徴である。白色散乱性微粒子6と、チタン化合物またはジルコニウム化合物を含む塗布液を対向電極2−2の上に塗布、乾燥して白色散乱層3を設けると、図3に示すように白色散乱性微粒子6の表面がチタン化合物またはジルコニウム化合物による表面被膜7が形成され、白色散乱性微粒子6相互間、及び白色散乱性微粒子6と対向電極2−2との接着性が向上する。特に、前記チタン化合物またはジルコニウム化合物が、有機チタン化合物または有機ジルコニウム化合物の場合は、低温処理だけで効果が得られる。従来の、チタン化合物またはジルコニウム化合物による表面処理をしない白色散乱性微粒子では、白色散乱性微粒子6相互間、及び白色散乱性微粒子6と対向電極2−2との接着性が不十分であった。
【0022】
以下に本発明の表示素子に用いられる各材料について説明する。
【0023】
〔基板〕
本発明で用いることのできる基板としては、表示素子とするため少なくとも一方は透明基板が必要であり、もう一方の基板は透明であっても不透明であってもよい。少なくとも一つの透明基板には、透明な対向電極が設けられる。
【0024】
透明基板としては、例えば、ガラス基板や、ガラスを練りこんだエポキシ樹脂、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン類、ポリカーボネート類、セルロースアセテート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンジナフタレンジカルボキシラート、ポリエチレンナフタレート類、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリビニルアセタール類、ポリスチレン等の合成プラスチックフィルムが好ましく使用できる。また、シンジオタクチック構造ポリスチレン類も好ましい。これらは、例えば、特開昭62−117708号、特開平1−46912号、同1−178505号の各公報に記載されている方法により得ることができる。
【0025】
透明でない基板としては、ステンレス等の金属製基板や、バライタ紙、及びレジンコート紙等の紙支持体ならびに上記プラスチックフィルムに反射層を設けた支持体、特開昭62−253195号(29〜31頁)に支持体として記載されたものが挙げられる。RDNo.17643の28頁、同No.18716の647頁右欄から648頁左欄及び同No.307105の879頁に記載されたものも好ましく使用できる。これらの支持体には、米国特許第4,141,735号のようにTg以下の熱処理を施すことで、巻き癖をつきにくくしたものを用いることができる。また、これらの支持体表面を支持体と他の構成層との接着の向上を目的に表面処理を行ってもよい。本発明では、グロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理を表面処理として用いることができる。さらに公知技術第5号(1991年3月22日アズテック有限会社発行)の44〜149頁に記載の支持体を用いることもできる。さらにRDNo.308119の1009頁やプロダクト・ライセシング・インデックス、第92巻P108の「Supports」の項に記載されているものが挙げられる。
【0026】
〔対向電極〕
本発明で用いることのできる対向電極としては、表示素子とするため少なくとも一方は透明電極が必要であり、もう一方の電極は透明であっても不透明であってもよい。
【0027】
(透明電極)
本発明に係る透明電極としては、透明で電気を通じるものであれば特に制限はない。例えば、Indium Tin Oxide(ITO:インジウム錫酸化物)、Indium Zinc Oxide(IZO:インジウム亜鉛酸化物)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化インジウム、酸化亜鉛、白金、金、銀、ロジウム、銅、クロム、炭素、アルミニウム、シリコン、アモルファスシリコン、BSO(Bismuth Silicon Oxide)等が挙げられる。電極をこのように形成するには、例えば、基板上にITO膜をスパッタリング法等でマスク蒸着するか、ITO膜を全面形成した後、フォトリソグラフィ法でパターニングすればよい。表面抵抗値としては、100Ω/□以下が好ましく、10Ω/□以下がより好ましい。透明電極の厚みは特に制限はないが、0.1〜20μmであるのが一般的である。
【0028】
(もう一方の電極)
本発明に係るもう一方の電極としては、透明でない金属電極または前記透明電極を用いることができる。金属電極としては、例えば、白金、金、銀、銅、アルミニウム、亜鉛、ニッケル、チタン、ビスマス、及びそれらの合金等の公知の金属種を用いることができる。電極の作製方法は、蒸着法、印刷法、インクジェット法、スピンコート法、CVD法等の既存の方法を用いることができる。
【0029】
〔白色散乱層〕
本発明に係る白色散乱層は、表示素子に白色を与えるために設けられるが、多孔質の白色散乱層を形成してもよい。多孔質の白色散乱層は、その内部に無数の微細な孔が空いている層である。
【0030】
本発明に適用可能な多孔質の白色散乱層は、白色散乱性微粒子を塗布、液噴霧、気相を介する噴霧等により形成することができる。
【0031】
本発明において、白色散乱層は、対向電極の少なくとも1方の電極面上に付与することが好ましい。付与の方法としては、例えば、塗布方式、液噴霧方式、気相を介する噴霧方式として、圧電素子の振動を利用して液滴を飛翔させる方式、例えば、ピエゾ方式のインクジェットヘッドや、突沸を利用したサーマルヘッドを用いて液滴を飛翔させるバブルジェット(登録商標)方式のインクジェットヘッド、また空気圧や液圧により液を噴霧するスプレー方式等が挙げられる。
【0032】
塗布方式としては、公知の塗布方式より適宜選択することができ、例えば、エアードクターコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、含浸コーター、リバースローラーコーター、トランスファーローラーコーター、カーテンコーター、ダブルローラーコーター、スライドホッパーコーター、グラビアコーター、キスロールコーター、ビードコーター、キャストコーター、スプレイコーター、カレンダーコーター、押し出しコーター等が挙げられる。
【0033】
(白色散乱性微粒子)
本発明で適用可能な白色散乱性微粒子としては、例えば、二酸化チタン(アナターゼ型あるいはルチル型)、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム及び水酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、リン酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、アルカリ土類金属塩、タルク、カオリン、ゼオライト、酸性白土、ガラス、有機化合物としてポリエチレン、ポリスチレン、アクリル樹脂、アイオノマー、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素−ホルマリン樹脂、メラミン−ホルマリン樹脂、ポリアミド樹脂等が単体または複合混合で、または粒子中に屈折率を変化させるボイドを有する状態で使用されてもよい。
【0034】
本発明では、上記白色粒子の中でも、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛が好ましく用いられる。また、無機酸化物(Al23、AlO(OH)、SiO2等)で表面処理した二酸化チタン、これらの表面処理に加えて、トリメチロールエタン、トリエタノールアミン酢酸塩、トリメチルシクロシラン等の有機物処理を施した二酸化チタンを用いることができる。
【0035】
これらの白色散乱物のうち、高温時の着色防止、屈折率に起因する表示素子の反射率の観点から、酸化チタンまたは酸化亜鉛を用いることがより好ましい。
【0036】
これら白色散乱物粒子の形状は特に規定されない。例えば酸化チタンでは、最近、星型のものも提案されており、その形状から、入射角の均質な散乱が起こり、白色散乱が増加するという効果があるため、このような酸化チタンを使うことも可能である。
【0037】
白色散乱性微粒子の平均一次粒子は5〜100nmが好ましく、より好ましくは20〜80nmである。微粒子の形状は、不定形、針状、球形等任意の形状のものが用いられる。白色散乱性微粒子の測定は、例えば、「酸化チタン 物性と応用技術」(清野学著、技報堂出版発行、1991年)の5.5.1章(p82−86)に記載の方法に準じて求めることができる。具体的には、測定対象の微粒子を、微粒子不溶性の溶媒中に分散させた後、例えば、レーザー散乱式粒径分布測定器(例えば、SALD2200(島津製作所製)やマルバーン社製ゼータサイザー1000等)を用いて測定してもよいし、あるいは微粒子を直接、透過型電子顕微鏡あるいは走査型電子顕微鏡で観察し、得られた粒子画像から、プラネトロン社製Image−Pro等の画像ソフトを用い、粒子画像を処理して粒径を求め統計処理を行って求める方法等もある。
【0038】
本発明においては、透過型電子顕微鏡写真を元に、画像回折装置(ルーゼックスIIIU)にて測定して求めた粒子径を示している。
【0039】
(チタン化合物またはジルコニウム化合物)
本発明で用いられるチタン化合物としては、酸化チタン(IV)、硝酸チタン、硫酸チタン(III)、硫酸チタン(IV)、硫酸チタニル、フッ化チタン(III)、フッ化チタン(IV)、ヘキサフルオロチタン酸、ヘキサフルオロチタン酸アンモニウム、チタンラウレート、ジイソプロポキシチタニウムビスアセチルアセトン、チタニウムアセチルアセトネート、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、ポリヒドロキシチタンステアレート、チタンアセチルアセトナート、チタンテトラアセチルアセトナート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテート、チタンラクテートアンモニウム塩等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0040】
本発明で用いられるジルコニウム化合物としては、塩化ジルコニル化合物アミノカルボン酸、塩基性炭酸ジルコニウム、オキシ炭酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウムアンモニウム、酸化ジルコニウム(IV)、硝酸ジルコニウム、硝酸ジルコニル、硫酸ジルコニウム(IV)、硫酸ジルコニル、オキシリン酸ジルコニウム、ピロリン酸ジルコニウム、リン酸二水素ジルコニル、フッ化ジルコニウム、ヘキサフルオロジルコニウム酸、ヘキサフルオロジルコニウム酸アンモニウム、酢酸ジルコニル、ジルコニウムノルマルプロピレート、ジルコニウムノルマルブチレート、ジルコニウムモノステアレート、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムアセチルアセトネート、ジルコニウムモノブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムジブトキシビス(エチルアセトネート)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
これらの化合物は単独で使用してもよいし、2種以上組み合わせて使用してもよい。特に有機チタン化合物あるいは有機ジルコニウム化合物を使用すると、比較的低温で処理できる。
【0042】
〔表示媒体〕
本発明の表示素子に含まれる表示媒体は、電気化学的に反応して発色または消色を生じる表示媒体である。このような表示媒体には、酸化還元反応により発色状態が変わるエレクトロクロミック化合物を利用したエレクトロクロミック型表示媒体と、金属の可逆的な酸化還元反応よって発生する析出・溶解現象により表示する電解析出型表示媒体がある。
【0043】
(エレクトロクロミック型表示媒体)
本発明に係る表示媒体として好適なエレクトロクロミック型表示媒体には、エレクトロクロミック化合物(以下、EC化合物と略す)が含まれる。EC化合物は、電気化学的な酸化還元によって、物質の光学吸収の性質(色や光透過度)が可逆的に変化する現象(エレクトクロミズム)を示す化合物であればいかなる化合物を用いてもよい。具体的な化合物としては、「エレクトロクロミックディスプレイ」(平成3年6月28日刊、産業図書株式会社)pp27−124、「クロミック材料の開発」(2000年11月15日刊、株式会社シーエムシー)pp81−95等に記載の化合物等を挙げることができる。
【0044】
(電解析出型表示媒体)
本発明に係る表示媒体として好適な電解析出型表示媒体は、金属塩化合物を含み、対向電極上の少なくとも1方の電極上で、該対向電極の駆動操作で、還元析出・酸化溶解を行うことにより発色・消色を示す。本発明に係る金属塩化合物は、このような作用を示す金属種を含む塩であれば、如何なる化合物であってもよい。好ましい金属種は、銀、ビスマス、銅、ニッケル、鉄、クロム、亜鉛等であり、特に好ましいのは銀、ビスマスである。
【0045】
特に好ましく用いられる金属塩化合物は、銀化合物であり、銀または、銀を化学構造中に含む化合物、例えば、酸化銀、硫化銀、金属銀、銀コロイド粒子、ハロゲン化銀、銀錯体化合物、銀イオン等の化合物の総称であり、固体状態や液体への可溶化状態や気体状態等の相の状態種、中性、アニオン性、カチオン性等の荷電状態種は、特に問わない。
【0046】
(併用型表示媒体)
EC化合物の酸化還元と金属塩化合物の析出・溶解を同じ表示媒体内で行う方法も、好適に用いられる。この併用型表示媒体は、EC化合物によるカラー発色表示と金属析出による白黒表示を同時に行うことができるため、カラーの色調が良好で、かつコントラストの高いカラー表示を行うことができる。
【0047】
〔電解質〕
本発明の表示素子に含まれる表示媒体は、電気化学的に反応して発色または消色を生じる表示媒体である。電気化学方式の表示媒体においては、電気化学反応を助けるために、電解質を利用することができる。
【0048】
「電解質」とは、一般に、溶媒中に溶解した際に、陽イオンと陰イオンに電離する物質のことである。本発明では、このような電解質を溶媒中に溶解した電解質層以外に、溶融塩や、内部をイオンが移動する性質を有する固体状の電解質(固体電解質)も、電解質層として利用することが可能である。
【0049】
本発明の表示素子において、用いることができる電解質の例としては、以下の化合物が挙げられる。カリウム化合物としてKCl、KI、KBr等、リチウム化合物としてLiBF4、LiClO4、LiPF6、LiCF3SO3等、テトラアルキルアンモニウム化合物として過塩素酸テトラエチルアンモニウム、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、ホウフッ化テトラエチルアンモニウム、ホウフッ化テトラブチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムハライド等が挙げられる。また、特開2003−187881号公報の段落番号〔0062〕〜〔0081〕に記載の溶融塩電解質組成物も好ましく用いることができる。さらに、I-/I3-、Br-/Br3-、キノン/ハイドロキノン等の酸化還元対になる化合物を用いることができる。
【0050】
〔溶媒〕
本発明の表示素子に含まれる表示媒体においては、本発明の目的効果を損なわない範囲で溶媒を用いることができる。具体的には、テトラメチル尿素、スルホラン、ジメチルスルホキシド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、2−(N−メチル)−2−ピロリジノン、ヘキサメチルホスホルトリアミド、N−メチルプロピオンアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,Nジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、ブチロニトリル、プロピオニトリル、アセトニトリル、アセチルアセトン、4−メチル−2−ペンタノン、2−ブタノール、1−ブタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、エタノール、メタノール、無水酢酸、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、ジメトキシエタン、ジエトキシフラン、テトラヒドロフラン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、水等が挙げられる。これらの溶媒の内、凝固点が−20℃以下、かつ沸点が120℃以上の溶媒を少なくとも1種含むことが好ましい。
【0051】
さらに本発明で用いることのできる溶媒としては、J.A.Riddick,W.B.Bunger,T.K.Sakano,“Organic Solvents”,4th ed.,John Wiley&Sons(1986)、Y.Marcus,“Ion Solvation”,John Wiley&Sons(1985)、C.Reichardt,“Solvents and Solvent Effects in Chemistry”,2nd ed.,VCH(1988)、G.J.Janz,R.P.T.Tomkins,“Nonaqueous Electorlytes Handbook”,Vol.1,Academic Press(1972)に記載の化合物を挙げることができる。
【0052】
〔増粘剤〕
本発明の表示素子に含まれる表示媒体においては、電解質に増粘剤を使用することができ、例えば、ゼラチン、アラビアゴム、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(アルキレングリコール)、カゼイン、デンプン、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メチルメタクリル酸)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(メタクリル酸)、コポリ(スチレン−無水マレイン酸)、コポリ(スチレン−アクリロニトリル)、コポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(ビニルアセタール)類(例えば、ポリ(ビニルホルマール)及びポリ(ビニルブチラール))、ポリ(エステル)類、ポリ(ウレタン)類、フェノキシ樹脂、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(エポキシド)類、ポリ(カーボネート)類、ポリ(ビニルアセテート)、セルロースエステル類、ポリ(アミド)類、疎水性透明バインダーとして、ポリビニルブチラール、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリル酸、ポリウレタン等が挙げられる。
【0053】
これらの増粘剤は2種以上を併用して用いてもよい。また、特開昭64−13546号公報の71〜75頁に記載の化合物を挙げることができる。これらの中で好ましく用いられる化合物は、各種添加剤との相溶性の観点から、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ヒドロキシプロピルセルロース類、ポリアルキレングリコール類である。
【0054】
(EC化合物吸着層)
本発明の表示素子に用いる表示媒体として、EC化合物を用いる場合、EC化合物を吸着させるEC化合物吸着層を、対向電極間に設けることが有効である。
【0055】
EC化合物吸着層は、EC化合物が吸着できる表面積を得るために、内部に無数の微細な孔が開いている多孔質層であることが好ましい。
【0056】
このような多孔質層は、種々の方法で形成することができるが、最も好ましいのは、エレクトロクロミック化合物を吸着できる微粒子を用いる方法である。
【0057】
好ましい微粒子は、半導体金属酸化物であり、層自体が固有の色を示さず、透明〜微白色であるものが特に好ましい。このような半導体金属酸化物としては、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化スズ、それらのドープ物等を挙げることができる。
【0058】
EC化合物の吸着性及び、多孔質層自身の着色性から、酸化チタン、酸化スズ、酸化ケイ素が好適に用いられる。
【0059】
微粒子の平均一次粒子は5〜100nmが好ましく、より好ましくは20〜80nmである。微粒子の形状は、不定形、針状、球形等任意の形状のものが用いられる。
【0060】
このような微粒子を利用した多孔質層を得る一つの方法としては、焼結法が知られているが、微粒子同士を数百℃という高温で溶着させるもので、微粒子同士及び多孔質層を形成する基板に対する接着性は得られるものの、基板の選択性が狭い、生産ラインへの焼成工程の組み込みが難しい等の問題があり、好ましくない。
【0061】
200℃以下の比較的低温で多孔質層を得る方法としては、ゾルゲル法、バインダー等の結着剤を利用した塗布法等が知られている。
【0062】
層の厚みとしては、必要な量のEC化合物を吸着することができる厚みであることが必要だが、厚すぎると透明性が損なわれ、コントラストや解像度の低下を招く。多孔質層の透明性の確保を考慮すると、多孔質層の厚みは1〜5μmが好ましい。
【0063】
EC化合物吸着層は、対向電極のうち、透明電極側に設けることが、EC化合物の発色を効果的に用いるためにも好ましい。
【0064】
EC化合物吸着層と透明電極との接着性を確保するために、本発明では、下記のような下引き層を、EC化合物吸着層と透明電極との間に設ける。
【0065】
本発明における下引き層は、非多孔質性であり、透明電極とEC化合物吸着層との間に設けられ、EC化合物吸着層を形成する物質を少なくとも一部含有する。
【0066】
下引き層には、透明電極に対する密着性とともに、表示素子の発色性能を阻害しないように透明性が求められる。この目的を達成するものであれば、厚みは特に限定されるものではない。
【0067】
そのような薄膜を形成するために適した薄膜形成方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法等が挙げられるが、生産性等の点では、スパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法が好適である。
【0068】
また、特開2003−306769号公報には、大気圧下で原料ガスにプラズマエネルギーを与えることで基板上に薄膜を形成する方法が開示されているが、このような方法も好適に用いることができる。
【0069】
〔その他の添加剤〕
本発明の表示素子の構成層には、保護層、フィルター層、ハレーション防止層、クロスオーバー光カット層、バッキング層等の補助層を挙げることができ、これらの補助層中には、各種の添加剤、例えば、以下のリサーチディスクロージャーにおいて、化学増感剤、貴金属増感剤、感光色素、強色増感剤、カプラー、高沸点溶剤、カブリ防止剤、安定剤、現像抑制剤、漂白促進剤、定着促進剤、混色防止剤、ホルマリンスカベンジャー、色調剤、硬膜剤、界面活性剤、増粘剤、可塑剤、スベリ剤、紫外線吸収剤、イラジエーション防止染料、フィルター光吸収染料、防ばい剤、ポリマーラテックス、重金属、帯電防止剤、マット剤等として挙げられている添加剤を、必要に応じて含有させることができる。
【0070】
上述したこれらの添加剤は、より詳しくは、リサーチディスクロージャー(以下、RDと略す)第176巻Item/17643(1978年12月)、同184巻Item/18431(1979年8月)、同187巻Item/18716(1979年11月)及び同308巻Item/308119(1989年12月)に記載されている。
【0071】
これら三つのリサーチ・ディスクロージャーに示されている化合物種類と記載箇所を以下に掲載した。
【0072】
添加剤 RD17643 RD18716 RD308119
頁 分類 頁 分類 頁 分類
化学増感剤 23 III 648右上 96 III
増感色素 23 IV 648〜649 996〜8 IV
減感色素 23 IV 998 IV
染料 25〜26 VIII 649〜650 1003 VIII
現像促進剤 29 XXI 648右上
カブリ抑制剤・安定剤
24 IV 649右上 1006〜7 VI
増白剤 24 V 998 V
硬膜剤 26 X 651左 1004〜5 X
界面活性剤 26〜7 XI 650右 1005〜6 XI
帯電防止剤 27 XII 650右 1006〜7 XIII
可塑剤 27 XII 650右 1006 XII
スベリ剤 27 XII
マット剤 28 XVI 650右 1008〜9 XVI
バインダー 26 XXII 1003〜4 IX
支持体 28 XVII 1009 XVII
〔表示素子のその他の構成要素〕
本発明の表示素子には、必要に応じて、シール剤、柱状構造物、スペーサー粒子を用いることができる。
【0073】
シール剤は表示媒体が外に漏れないように封入するためのものであり封止剤とも呼ばれ、エポキシ樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、エン−チオール系樹脂、シリコーン系樹脂、変性ポリマー樹脂等の、熱硬化型、光硬化型、湿気硬化型、嫌気硬化型等の硬化タイプを用いることができる。
【0074】
柱状構造物は、基板間の強い自己保持性(強度)を付与し、例えば、格子配列等の所定のパターンに一定の間隔で配列された、円柱状体、四角柱状体、楕円柱状体、台形柱状体等の柱状構造物を挙げることができる。また、所定間隔で配置されたストライプ状のものでもよい。この柱状構造物はランダムな配列ではなく、等間隔な配列、間隔が徐々に変化する配列、所定の配置パターンが一定の周期で繰り返される配列等、基板の間隔を適切に保持でき、かつ、画像表示を妨げないように考慮された配列であることが好ましい。柱状構造物は表示素子の表示領域に占める面積の割合が1〜40%であれば、表示素子として実用上十分な強度が得られる。
【0075】
一対の基板間には、該基板間のギャップを均一に保持するためのスペーサーが設けられていてもよい。このスペーサーとしては、樹脂製または無機酸化物製の球体を例示できる。また、表面に熱可塑性の樹脂がコーティングしてある固着スペーサーも好適に用いられる。基板間のギャップを均一に保持するために柱状構造物のみを設けてもよいが、スペーサー及び柱状構造物をいずれも設けてもよいし、柱状構造物に代えて、スペーサーのみをスペース保持部材として使用してもよい。スペーサーの直径は柱状構造物を形成する場合はその高さ以下、好ましくは当該高さに等しい。柱状構造物を形成しない場合はスペーサーの直径がセルギャップの厚みに相当する。
【0076】
〔スクリーン印刷〕
本発明においては、シール剤、柱状構造物、電極パターン等をスクリーン印刷法で形成することもできる。スクリーン印刷法は、所定のパターンが形成されたスクリーンを基板の電極面上に被せ、スクリーン上に印刷材料(柱状構造物形成のための組成物、例えば、光硬化性樹脂等)を載せる。そして、スキージを所定の圧力、角度、速度で移動させる。これによって、印刷材料がスクリーンのパターンを介して該基板上に転写される。次に、転写された材料を加熱硬化、乾燥させる。スクリーン印刷法で柱状構造物を形成する場合、樹脂材料は光硬化性樹脂に限られず、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等の熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂も使用できる。熱可塑性樹脂としては、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリビニルエーテル樹脂、ポリビニルケトン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩素化ポリエーテル樹脂等が挙げられる。樹脂材料は樹脂を適当な溶剤に溶解する等してペースト状にして用いることが望ましい。
【0077】
以上のようにして柱状構造物等を基板上に形成した後は、所望によりスペーサーを少なくとも一方の基板上に付与し、一対の基板を電極形成面を対向させて重ね合わせ、空セルを形成する。重ね合わせた一対の基板を両側から加圧しながら加熱することにより、貼り合わせて、表示セルが得られる。表示素子とするには、基板間に電解質組成物を真空注入法等によって注入すればよい。あるいは、基板を貼り合わせる際に、一方の基板に電解質組成物を滴下しておき、基板の貼り合わせと同時に液晶組成物を封入するようにしてもよい。
【0078】
〔表示素子駆動方法〕
本発明に係るアクティブマトリックス駆動は、走査線、データライン、電流供給ラインが碁盤目状に形成され、各碁盤目に設けられたTFT回路により駆動させる方式である。画素毎にスイッチングが行えるので、階調やメモリー機能等のメリットがあり、例えば、特開2004−29327号の図5に記載されている回路や、「エレクトロクロミックディスプレイ」(1991 産業図書株式会社刊)の77〜102ページに記載の方法を用いることができる。
【0079】
〔商品適用〕
本発明の表示素子は、電子書籍分野、IDカード関連分野、公共関連分野、交通関連分野、放送関連分野、決済関連分野、流通物流関連分野等の用いることができる。具体的には、ドア用のキー、学生証、社員証、各種会員カード、コンビニストアー用カード、デパート用カード、自動販売機用カード、ガソリンステーション用カード、地下鉄や鉄道用のカード、バスカード、キャッシュカード、クレジットカード、ハイウェイカード、運転免許証、病院の診察カード、電子カルテ、健康保険証、住民基本台帳、パスポート、電子ブック等が挙げられる。
【実施例】
【0080】
実施例
(EC化合物 EC−1の合成)
特開2006−309216号に記載のスキーム1に従って合成して得た化合物VIIIをEC−1とした。
【0081】
【化1】

【0082】
(対向電極1の作製)
厚さ1.5mmで2cm×4cmのガラス基板上に、ITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)膜を公知の方法に従ってピッチ145μm、電極間隔130μmに形成して、透明電極である対向電極1を得た。
【0083】
(対向電極2の作製)
厚さ1.5mmで2cm×4cmのガラス基板上に、公知の方法を用いて、電極厚み0.8μm、ピッチ145μm、電極間隔130μmの銀−パラジウム電極を形成し、これを対向電極2とした。
【0084】
(白色散乱層1の作製)
ゼラチンを2質量%含む水溶液中に、酸化チタン(平均粒径32nm)を20質量%相当加え、超音波分散機で分散させた白色散乱層塗布液1を、対向電極1上にワイヤーバーで膜厚約100μmとなるように塗布し、その後、15℃で30分間、45℃で1時間乾燥して、多孔質の白色散乱層1を作製した。
【0085】
(白色散乱層2の作製)
平均粒径25nmの二酸化チタン粒子を20質量%となるように水中に分散し、これに硫酸を加えてpHを約5に調整した。この懸濁液を約60℃に加温し、硫酸ジルコニウム水溶液を、酸化ジルコニウム換算で二酸化チタン粒子の1.1質量%となるように、水酸化ナトリウムでpHを4.8から5.2の間になるように制御しながら約10分に渡って徐々に添加し、さらに10分間攪拌した。このようにして得た懸濁液を、対向電極2上に、乾燥膜厚が約25μmとなるように塗布し、120℃で5分間乾燥し、多孔質の白色散乱層2を得た。
【0086】
(白色散乱層3の作製)
チタンラクテートを、チタン含有率が3質量%となるように、2−プロパノールに溶解し、これに酸化チタン(平均粒径32nm)を20質量%相当加え、超音波分散機で分散した白色散乱層塗布液3を、対向電極2上にワイヤーバーで膜厚約100μmとなるように塗布し、その後、150℃で1分間加熱し、乾燥して、多孔質の白色散乱層3を作製した。
【0087】
(白色散乱層4の作製)
ジルコニウムモノアセチルアセトネートを、ジルコニウム含有率が3質量%となるように、2−プロパノールに溶解し、これに酸化チタン(平均粒径32nm)を20質量%相当加え、超音波分散機で分散した白色散乱層塗布液4を、対向電極2上にワイヤーバーで膜厚約100μmとなるように塗布し、その後、150℃で1分間加熱し、乾燥して、多孔質の白色散乱層4を作製した。
【0088】
(EC化合物吸着層1の作製)
ポリビニルアルコール(平均分子量30000)を2質量%含む水溶液中に、平均粒径25nmの酸化チタン20質量%を添加し、超音波分散機で分散し、酸化チタン分散液1を得た。
【0089】
電極1上に、下記条件で、酸化チタンを含む下引き層を設けた。
【0090】
スパッタリング方式:RFマグネトロンスパッタ(デポアップ)
二酸化チタンターゲット径:φ2インチ(1インチは2.54cm)
基板−ターゲット距離:40mm
背圧:1.5×10-3Pa
スパッタ圧:1.3Pa Ar/O2=9/1
出力:150W
得られた下引き層の厚みは、約30nmであった。
【0091】
この下引き層の上に、酸化チタン分散液1を、乾燥膜厚5μmとなるように塗布し、120℃で30分間乾燥し、EC化合物吸着層1を得た。
【0092】
(表示媒体液1の調製)
プロピレンカーボネート中に、フェロセンを40ミリモルを加え、表示媒体液1を調製した。
【0093】
別途、EC−1をエタノールに10ミリモル/L溶解して、EC化合物溶液1を作製した。
【0094】
(表示媒体液2の調製)
ジメチルスルホキシド2.5g中に、ヨウ化ナトリウム90mg、ヨウ化銀75mgを加えて完全に溶解させた後に、ポリビニルピロリドン(平均分子量15000)を150mg加えて120℃に加熱しながら1時間攪拌し、表示媒体液2を得た。
【0095】
(表示媒体液3の調製)
ジメチルスルホキシド中に、塩化ビスマス4質量%、ヨウ化ナトリウム6質量%、ポリエチレングリコール(平均分子量50万)2質量%、下記化合物A−1の4質量%を溶解して、表示媒体液3を得た。
【0096】
【化2】

【0097】
(表示素子1の作製)
EC化合物吸着層1をEC化合物溶液1に4時間浸漬し、その後エタノールを蒸発させて、EC−1をEC化合物吸着層1に吸着させた。
【0098】
白色散乱層1の周辺部を、平均粒子径40μmのガラス製球形ビーズを体積分率10%含むオレフィン系封止剤で縁取りし、内部を表示媒体液1で充填して、この上にEC−1を吸着させたEC化合物吸着層1が内側になるように、かつ、電極同士が直交するようにかぶせて加熱押圧して、表示素子1を作製した。
【0099】
(表示素子2〜4の作製)
白色散乱層1を白色散乱層2〜4に代えた以外は表示素子1と同様にして、表示素子2〜4を作製した。
【0100】
(表示素子5の作製)
白色散乱層1の周辺部を、平均粒子径40μmのガラス製球形ビーズを体積分率10%含むオレフィン系封止剤で縁取りし、内部を表示媒体液2で充填して、この上に対向電極1を、透明電極が内側になるように、かつ、電極同士が直交するようにかぶせて加熱押圧して、表示素子5を作製した。
【0101】
(表示素子6〜8の作製)
白色散乱層1を白色散乱層2〜4に代えた以外は表示素子5と同様にして、表示素子6〜8を作製した。
【0102】
(表示素子9の作製)
EC化合物吸着層1をEC化合物溶液1に4時間浸漬し、その後エタノールを蒸発させて、EC−1をEC化合物吸着層1に吸着させた。
【0103】
白色散乱層1の周辺部を、平均粒子径40μmのガラス製球形ビーズを体積分率10%含むオレフィン系封止剤で縁取りし、内部を表示媒体液3で充填して、この上にEC−1を吸着させたEC化合物吸着層1が内側になるように、かつ、電極同士が直交するようにかぶせて加熱押圧して、表示素子9を作製した。
【0104】
(表示素子10〜12の作製)
白色散乱層1を白色散乱層2〜4に代えた以外は表示素子9と同様にして、表示素子10〜12を作製した。
【0105】
(表示素子の評価)
表示素子1〜12について、下記の方法で繰り返し駆動を行い、表示品質の安定性を評価した。
【0106】
(表示速度)
定電圧電源の両端子に各表示素子の両電極を接続し、未駆動時の白色の550nmでの反射率を、コニカミノルタセンシング社製分光測色計CM−3700dで測定し、得られた反射率をRwとした。
【0107】
(カラー表示速度)
次に、−1.5Vの電圧を1.5秒間印加した後に、1.5Vの電圧を0.5秒間印加して、EC−1を中間調発色させ、この550nmでの反射率Reを得た。RwとReとの差をRseとし、表示速度の指標とした。Rseが高いほど表示速度が速いとする。
【0108】
(黒表示速度)
次に、1.5Vの電圧を1.5秒印加した後に、−1.5Vの電圧を0.5秒間印加させて、グレー表示させ、この550nmでの反射率Rgを得た。RwとRgとの差をRskとし、表示速度の指標とした。Rskが高いほど表示速度が速いとする。
【0109】
(ムラの評価)
定電圧電源の両端子に各表示素子の両電極を接続し、1.2V0.5秒間の印加と−1.2V0.5秒間の印加を1秒間隔で繰り返し、5000回での着色状態でのムラを目視で評価した。
【0110】
表示素子1〜4については、EC−1の発色状態での色ムラを、表示素子5〜8については、銀の析出による黒のムラを、表示素子9〜12については、EC−1の発色状態での色ムラとビスマスの析出による黒のムラを評価した。
【0111】
表示ムラのレベルを7段階で評価し、良好な方から、ムラなし(7)、僅かにムラあり(6)、ムラややあり(5)、ムラあり(4)、ムラ中(3)、ムラ劣(2)、ムラ劣悪(1)とし、繰り返し安定性の指標とした。実用的な観点からは、最低でも、(4)のレベルにあることが望ましい。
【0112】
評価の結果を表1に示す。
【0113】
【表1】

【0114】
表より、本発明の表示素子は比較例に比べ、カラー表示速度及び黒表示速度が速く、繰り返し駆動時の色ムラが少ないことが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】本発明の表示素子の基本的な構成を示す概略断面図である。
【図2】本発明の表示素子の別の一例の基本的な構成を示す概略断面図である。
【図3】本発明の表示素子の白色散乱層部分の拡大模式図である。
【符号の説明】
【0116】
1 基板
2−1、2−2 対向電極
3 白色散乱層
4 表示媒体
5 EC化合物吸着層
6 白色散乱性微粒子
7 チタン化合物またはジルコニウム化合物による表面皮膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向電極間に電気化学的に反応して発色または消色を生じる表示媒体を有する表示素子において、対向電極の一方に、白色散乱層が設けられ、該白色散乱層が、白色散乱性微粒子と、チタン化合物またはジルコニウム化合物を含むことを特徴とする表示素子。
【請求項2】
前記チタン化合物または前記ジルコニウム化合物が、有機チタン化合物または有機ジルコニウム化合物であることを特徴とする請求項1に記載の表示素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−69479(P2009−69479A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−237832(P2007−237832)
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】