説明

表示素子

【課題】繰り返し駆動での色調変動が少ないエレクトロデポジション方式の表示素子を提供する。
【解決手段】対向電極間に、銀または銀を化学構造中に含む化合物を含有する電解質層を有し、銀の溶解析出を生じさせるように該対向電極の駆動操作を行う表示素子において、該電解質層が、少なくともClogPが0.45以上、4.4以下である含硫黄化合物A、及びClogPが−0.34以上、2.6以下である溶媒Aを含有することを特徴とする表示素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学的な表示素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピューターの動作速度の向上、ネットワークインフラの普及、データストレージの大容量化と低価格化に伴い、従来紙への印刷物で提供されたドキュメントや画像等の情報を、より簡便な電子情報として入手、電子情報を閲覧する機会が益々増大している。
【0003】
この様な電子情報の閲覧手段として、従来の液晶ディスプレイやCRT、また近年では、有機ELディスプレイ等の発光型が主として用いられているが、特に、電子情報がドキュメント情報の場合、比較的長時間にわたってこの閲覧手段を注視する必要があり、これらの行為は人間に優しい手段とは言い難く、一般に発光型のディスプレイの欠点として、フリッカーで目が疲労する、持ち運びに不便、読む姿勢が制限され、静止画面に視線を合わせる必要が生じる、長時間読むと消費電力が嵩む等が知られている。
【0004】
これらの欠点を補う表示手段として、外光を利用し、像保持の為に電力を消費しない(メモリー性)反射型ディスプレイが知られているが、下記の理由で十分な性能を有しているとは言い難い。
【0005】
すなわち、反射型液晶等の偏光板を用いる方式は、反射率が約40%と低く白表示に難があり、また構成部材の作製に用いる製法の多くは簡便とは言い難い。また、ポリマー分散型液晶は高い電圧を必要とし、また有機物同士の屈折率差を利用しているため、得られる画像のコントラストが十分でない。また、ポリマーネットワーク型液晶は電圧高いことと、メモリー性を向上させるために複雑なTFT回路が必要である等の課題を抱えている。また、電気泳動法による表示素子は、10V以上の高い電圧が必要となり、電気泳動性粒子凝集による耐久性に懸念がある。
【0006】
これら上述の各方式の欠点を解消する表示方式として、金属または金属塩の溶解析出を利用するエレクトロデポジション(以下、EDと略す)方式が知られている。ED方式は、3V以下の低電圧で駆動が可能で、簡便なセル構成、黒と白のコントラストや黒品質に優れる等の利点があり、米国特許第4,240,716号明細書、特許第3428603号公報、特開2003−241227号公報等で、様々な方法が開示されている。また電気化学的に色が変化するエレクトロクロミック(EC)方式の素子が、コントラストが高く、明瞭な表示を得ることができるとして提案されている。
【0007】
また、特許文献1には、電解質層中に比較的親水性の銀錯化剤と比較的親水性の溶媒を含むED方式の表示素子で繰り返し駆動時の黒の色調変動が少ない旨の記載がある。
【0008】
一般的に、2つの化合物の親水性・疎水性の度合いは近いほうが、それらは混合しやすく、銀塩の錯化剤と溶媒それぞれの親水性・疎水性の度合いが近い場合、錯化剤の溶解性が向上して好ましい。
【0009】
溶媒の親水性、疎水性を表す指標としては「logP」や「ClogP」値がある。いずれも有機化合物の水と1−オクタノールに対する親和性を示す係数であり、「ClogP」は、cambridgesoft社の分子構造解析、物性計算ツールであるChemBioDraw Ultra等により計算される。「ClogP」の数値が大であるほど疎水性になり、小であるほど親水性になる。前記特許文献1に記載の銀塩の錯化剤と溶媒の「ClogP」の数値はどちらも比較的小さく、親水性である。しかし、それぞれが親水性である場合、銀析出溶解反応がやや不安定になる傾向があり、繰り返し駆動時の色調の変動がやや大きくなるという課題があった。
【特許文献1】特開2007−193082号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、繰り返し駆動での色調変動が少ないエレクトロデポジション方式の表示素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0012】
1.対向電極間に、銀または銀を化学構造中に含む化合物を含有する電解質層を有し、銀の溶解析出を生じさせるように該対向電極の駆動操作を行う表示素子において、該電解質層が、少なくともClogPが0.45以上、4.4以下である含硫黄化合物A、及びClogPが−0.34以上、2.6以下である溶媒Aを含有することを特徴とする表示素子。
【0013】
2.前記電解質層が、更にClogPが−0.9以上、−0.39以下である溶媒Bを含有することを特徴とする前記1に記載の表示素子。
【0014】
3.前記電解質層が、更にClogPが−9.0以上、0.44以下である含硫黄化合物Bを含有することを特徴とする前記2に記載の表示素子。
【0015】
4.含硫黄化合物の総質量Mに対する溶媒の総質量Sの質量比(S/M)が、2.0以上、30以下であることを特徴とする前記1から3のいずれか1項に記載の表示素子。
【0016】
5.前記ClogPが0.45以上、4.4以下である含硫黄化合物Aに対する前記ClogPが−9.0以上、0.44以下である含硫黄化合物Bの質量比(B/A)が、0.1以上、4.0以下であることを特徴とする前記3に記載の表示素子。
【0017】
6.前記ClogPが−0.34以上、2.6以下である溶媒Aに対する前記ClogPが−0.9以上、−0.39以下である溶媒Bの質量比(B/A)が、0.1以上、5.0以下であることを特徴とする前記2または3に記載の表示素子。
【0018】
7.前記含硫黄化合物AのClogPと、前記溶媒AのClogPとの差の絶対値Δ|ClogP|が、2.0以内であることを特徴とする前記1に記載の表示素子。
【0019】
8.前記ClogPが0.45以上、4.4以下である含硫黄化合物Aが、下記一般式(1)で表される含硫黄化合物であることを特徴とする前記1から7のいずれか1項に記載の表示素子。
【0020】
【化1】

【0021】
〔式中、A1〜A4は、各々水素原子、ハロゲン原子、複素環基、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリール基またはアミノ基を表す。Bは酸素原子、硫黄原子またはNHを表す。〕
9.前記ClogPが−0.34以上、2.6以下である溶媒Aが、下記一般式(I)または(II)で表されるポリアルキレンオキシド化合物であることを特徴とする前記1から8のいずれか1項に記載の表示素子。
【0022】
一般式(I)
X−(L−〔(CH−O〕−〔(CH−O〕−〔(CH−O〕−(L−Y
一般式(II)
X−(L−〔CH−CH(R)−O〕−〔(CH−O〕−〔(CH−O〕−(L−Y
〔式中、Rは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヒドロキシル基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、カルボキシル基またはスルホ基を表す。l、lは各々二価の連結基を表し、A、Bはそれぞれ0または1を表す。x、yは、各々置換基を表す。j、k、m、rは各々1以上の整数を表す。n、p、qは各々0以上の整数を表すが、n、p及びqの少なくとも1つは1以上の整数を表す。s、tは各々0以上の整数を表す。〕
10.前記一般式(I)におけるj、k及びmの少なくとも1つが、2であることを特徴とする前記9に記載の表示素子。
【0023】
11.前記一般式(II)におけるRが、メチル基であることを特徴とする前記9に記載の表示素子。
【0024】
12.前記ClogPが−0.9以上、−0.39以下である溶媒Bが、N−メチルピロリドンまたはγ−ブチロラクトンであることを特徴とする前記2から11のいずれか1項に記載の表示素子。
【発明の効果】
【0025】
本発明により、繰り返し駆動での色調変動が少ないエレクトロデポジション方式の表示素子を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0027】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、対向電極間に、銀または銀を化学構造中に含む化合物を含有する電解質層を有し、銀の溶解析出を生じさせるように該対向電極の駆動操作を行う表示素子において、該電解質層が、少なくともClogPが0.45以上、4.4以下である含硫黄化合物A、及びClogPが−0.34以上、2.6以下である溶媒Aを含有することを特徴とする表示素子により、繰り返し駆動での色調変動が少ないエレクトロデポジション方式の表示素子を実現できることを見出し、本発明に至った次第である。
【0028】
以下、本発明の表示素子の詳細について説明する。
【0029】
〔特定のClogPを有する含硫黄化合物、溶媒〕
本発明の表示素子においては、電解質層が、少なくともClogPが0.45以上、4.4以下である比較的疎水性の含硫黄化合物Aと、ClogPが−0.34以上、2.6以下である比較的疎水性の溶媒Aとを含有することを特徴とする。
【0030】
本発明でいうClogPとは、化合物の水/オクタノール分配係数の計算値である。ClogPあるいはlogPは、フラグメント法、原子アプローチ法などにより計算により算出することができる。ClogPを計算する代表的なソフトウエアとしては、Cambridge Soft Corporation社製のChem Bio Draw Ultra等が挙げられる。本発明に係るClogPの計算においては、ハードウエアとしてパーソナルコンピューターを用いることで、十分な計算速度で、計算することができる。本発明におけるClogP値は、Cambridge Soft Corporation社製のChem Bio Draw Ultra7.0を用いて計算して求めた。
【0031】
前述の特許文献1に記載された構成である、電解質中に比較的親水性の銀錯化剤と比較的親水性の溶媒を含有して構成させた場合、錯化剤の溶解性は向上するが、それぞれが親水性である場合には、表示素子としての銀析出溶解反応が不安定になり、繰り返し駆動時の色調変動が大きくなるという課題を有していた。
【0032】
本発明に係る電解質層においては、ClogPが0.45以上、4.4以下である比較的疎水性の含硫黄化合物Aと、ClogPが−0.34以上、2.6以下である比較的疎水性の溶媒Aとを含有する。すなわち、比較的疎水性で、かつClogPの値が近い含硫黄化合物と溶媒とを電解質層中に含有することにより、2つの化合物が混合しやすくなり、溶解性が向上し、表示素子駆動時における銀の析出反応、溶解反応が安定化し、繰り返し駆動における色調変動を低減させることができた。
【0033】
本発明においては、含硫黄化合物AのClogPと、溶媒AのClogPとの差の絶対値Δ|ClogP|が、2.0以内であることが、本発明の目的効果をより発現できる観点から好ましい。
【0034】
本発明に係るClogPが0.45以上、4.4以下である比較的疎水性の含硫黄化合物A、あるいはClogPが−0.34以上、2.6以下である比較的疎水性の溶媒Aにおいて、所望のClogPの値に制御する方法としては、それぞれの化合物の部分構造や官能基を適宜変更することにより、得ることができる。
【0035】
また、本発明においては、本発明に係るClogPが0.45以上、4.4以下である比較的疎水性の含硫黄化合物A及びClogPが−0.34以上、2.6以下である比較的疎水性の溶媒Aと共に、ClogPが−0.9以上、−0.39以下である溶媒Bを含有することが好ましく、更にはClogPが0.45以上、4.4以下である比較的疎水性の含硫黄化合物A、ClogPが−0.34以上、2.6以下である比較的疎水性の溶媒A、ClogPが−0.9以上、−0.39以下である溶媒Bと共に、ClogPが−9.0以上、0.44以下である含硫黄化合物Bを含有することが好ましい。
【0036】
本発明においては、上記組み合わせからなる含硫黄化合物群と、溶媒群において、含硫黄化合物の総質量Mに対する溶媒の総質量Sの質量比(S/M)として、2.0以上、30以下の範囲にすることが好ましい。質量比(S/M)が2.0以上であれば、含硫黄化合物の十分な溶解性を得ることができ、30以下であれば、安定した銀の析出反応、溶解反応を得ることができる。
【0037】
本発明においては、ClogPが0.45以上、4.4以下である含硫黄化合物Aに対するClogPが−9.0以上、0.44以下である含硫黄化合物Bの質量比(B/A)が、0.1以上、4.0以下であることが好ましい。
【0038】
また、ClogPが−0.34以上、2.6以下である溶媒Aに対するlogPが−0.9以上、−0.39以下である溶媒Bの質量比(B/A)が、0.1以上、5.0以下であることが好ましい。
【0039】
ClogP値の異なる含硫黄化合物の比率、あるいはClogP値の異なる溶媒の比率を、上記で規定することにとすることにより、疎水性化合物を、銀の析出反応、溶解反応の安定性に寄与する効果を維持できる範囲に維持することができる点で好ましい。
【0040】
本発明に係るClogPが0.45以上、4.4以下である含硫黄化合物Aが、前記一般式(1)で表されるメルカプト系化合物であることが好ましい。
【0041】
前記一般式(1)において、A1〜A4は、各々水素原子、ハロゲン原子、複素環基、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリール基またはアミノ基を表す。Bは酸素原子、硫黄原子またはNHを表す。
【0042】
A1〜A4が表すハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等、複素環基としては、例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジル基、ピリミジル基、ピラジル基、トリアジル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、キナゾリル基、フタラジル基等、アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、オクチル基、ドデシル基、ペンタデシル基等、アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基等、アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ヘキシルオキシ基、ドデシルオキシ基等、アリール基としては、例えば、フェニル基、p−クロロフェニル基、トリル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基、ビフェニリル基等、アミノ基としては、例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、アニリノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基等が挙げられ、これらの各基は、更に置換基を有していてもよい。
【0043】
また、本発明においては、ClogPが−0.34以上、2.6以下である溶媒Aが、前記一般式(I)または(II)で表されるポリアルキレンオキシド化合物であることが好ましい。
【0044】
以下、本発明に係る一般式(I)、(II)で表されるポリアルキレンオキシド化合物について説明する。
【0045】
本発明に係る一般式(I)、(II)で表されるポリアルキレンオキシド化合物は、具体的には、例えば、Int.J.Pept.Res.,30(6),740−83(1987)等に記載されている化合物、あるいは、Polymer Preprints,32(1),154(1991)等に記載されている化合物等が挙げられる。
【0046】
本発明に係る一般式(I)、(II)で表されるポリアルキレンオキシド化合物は、例えば、特開平7−48449号公報、特開平7−48450号公報、特開平7−316285号公報、特開2006−177914号公報等に例示され、これらに記載の方法に準じて合成することできる。
【0047】
はじめに、一般式(I)で表される化合物について説明する。
【0048】
一般式(I)
X−(L−〔(CH−O〕−〔(CH−O〕−〔(CH−O〕−(L−Y
上記一般式(I)においてL、Lは各々二価の連結基を表し、a、bはそれぞれ0または1を表す。X、Yは、各々置換基を表す。j、k、mは各々1以上の整数を表し、n、p、qは各々0以上の整数を表すが、n、p及びqの少なくとも1つは1以上の整数を表す。
【0049】
、Lで表される連結基としては、二価の飽和炭化水素基を有する基、二価の不飽和炭化水素基を有する基、二価の芳香族基を有する基、二価の複素環を有する基等が挙げられる。
【0050】
一般式(I)において、L、Lで表される二価の飽和炭化水素基を有する基としては、例えば、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、プロピレン基、エチルエチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、2,2,4−トリメチルヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ウンデカメチレン基、ドデカメチレン基、シクロヘキシレン基(例えば、1,6−シクロヘキサンジイル基等)、シクロペンチレン基(例えば、1,5−シクロペンタンジイル基など)等が挙げられる。
【0051】
一般式(I)において、L、Lで表される二価の不飽和炭化水素基を有する基としては、上記の二価の飽和炭化水素基を有する基を構成する少なくとも二つの炭素原子を結びつける結合の一つが、2重結合、3重結合等の不飽和結合で置き換えられることにより形成される基を表す。例えば、プロペニレン基、ビニレン基(エチニレン基ともいう)、4−プロピル−2−ペンテニレン基等が挙げられる。
【0052】
一般式(I)において、L、Lで表される二価の芳香族基を有する基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、ピリジンジイル基、ピロールジイル基、チオフェンジイル基、フランジイル基等が挙げられる。
【0053】
一般式(I)において、L、Lで表される二価の複素環基を有する基としては、例えば、オキサゾールジイル基、ピリミジンジイル基、ピリダジンジイル基、ピランジイル基、ピロリンジイル基、イミダゾリンジイル基、イミダゾリジンジイル基、ピラゾリジンジイル基、ピラゾリンジイル基、ピペリジンジイル基、ピペラジンジイル基、モルホリンジイル基、キヌクリジンジイル基等が挙げられる。
【0054】
また、上記の二価の連結基は、更に置換基を有していても良い。
【0055】
X、Yで表される置換基としては、水素原子、メルカプト基、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等)、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、クロロメチル基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、トリブロモメチル基、ペンタフルオロエチル基、メトキシエチル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)、アルキニル基(例えば、エチニル基、プロパルギル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基、p−ニトロフェニル基、p−フルオロフェニル基、p−メトキシフェニル基等)、複素環基(例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジル基、ピリミジル基、ピラジル基、トリアジル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、キナゾリル基、フタラジル基、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等)、ヒドロキシル基、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピオキシ基、イソプロピオキシ基、ブトキシ基、tert−ブトキシ基、sec−ブトキシ基等)アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、スルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基、2−エチルヘキシルスルフィニル基、ドデシルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2−ピリジルスルフィニル基等)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基等)、アリールスルホニル基(フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、シアノ基、アミノ基(例えば、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ブチルアミノ基、ジブチルアミノ基等)、アシルアミノ基(例えば、アセトアミド基、プロピオアミド基、イソプロピオアミド基、ブタンアミド基、ピバロイルアミド基等)などが挙げられるが、本発明においては、X、Yの少なくとも一方が、水素原子、ヒドロキシルキ基、アルキル基、カルボキシル基、メルカプト基及びアミノ基から選ばれる基であることが好ましい。
【0056】
一般式(I)におけるj、k、mは1以上の整数を表すが、好ましくは2〜4の整数である。
【0057】
次いで、一般式(II)で表される化合物について説明する。
【0058】
一般式(II)
X−(L−〔CH−CH(R)−O〕−〔(CH−O〕−〔(CH−O〕−(L−Y
上記一般式(II)において、Rは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヒドロキシル基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、カルボキシル基またはスルホ基を表す。L、Lは各々二価の連結基を表し、a、bはそれぞれ0または1を表す。X、Yは、各々置換基を表す。j、k、rは各々1以上の整数を表し、s、tは各々0以上の整数を表す。
【0059】
上記一般式(II)におけるL、L、X、Yは上記一般式(I)におけるL、L、X、Yと同義である。
【0060】
は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヒドロキシル基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、カルボキシル基またはスルホ基を表すが、好ましくはアルキル基であり、さらい好ましくはメチル基である。
【0061】
本発明に係る一般式(I)、(II)で表されるポリオキシアルキレン化合物においては、各々重量平均分子量が100以上、10000以下であることが好ましい。重量平均分子量が上記で規定する範囲であれば、十分な色調変動の抑制効果を得ることができる。
【0062】
本発明に係る一般式(I)、(II)で表されるポリオキシアルキレン化合物は、市販品として入手することができ、例えば、日油株式会社より市販されているサンブライト SHシリーズを挙げることができる。具体的には、SUNBRIGHT ME−020SH(2,000)、同ME−050SH(5,000)、同ME−100SH(10,000)、同ME−200SH(20,000)、同ME−300SH(30,000)、同ME−400SH(40,000)、SUNBRIGHT DE−034SH(3,400)、同DE−100SH(10,000)、同DE−200SH(20,000)等を挙げることができる。また、分岐構造を有するペンタエリスリトール化合物として、SUNBRIGHT PTE−100SH(10,000)、同PTE−200SH(20,000)等を挙げることができる。なお、各化合物の括弧内の数値は、平均分子量を表す。
【0063】
以下に、本発明に係る含硫黄化合物及び溶媒の具体的化合物を例示するが、本発明においては、これら例示する化合物にのみ限定されるものではない。
【0064】
〈ClogPが0.45以上、4.4以下である含硫黄化合物A〉
以下に、ClogPが0.45以上、4.4以下である含硫黄化合物Aの化合物例として、1A−1〜1A−16を示す。
【0065】
【化2】

【0066】
【化3】

【0067】
上記例示した1A−1〜1A−16のなかでも、本発明に係る一般式(1)で表される化合物である例示化合物1A−9〜1A−14が、特に好ましい。
【0068】
〈ClogPが−9.0以上、0.44以下である含硫黄化合物B〉
以下に、ClogPが−9.0以上、0.44以下である含硫黄化合物Bの化合物例として、1B−1〜1B−14を示す。
【0069】
【化4】

【0070】
1B−6:HOCHCHSCHCHOH(ClogP=−0.81)
1B−7:HOCHCHSCHCHSCHCHSCHCHOH(ClogP=0.31)
1B−8:HCSCHCHCOOH(ClogP=0.44)
1B−9:HOOCCHSCHCOOH(ClogP=−0.43)
1B−10:HCSCHCHCH(NH)COOH(ClogP=−1.73)
1B−11:HNCHCHOCHCHSCHCHSCHCHOCHCHNH(ClogP=−0.03)
1B−12:HNOSCHCHSCHCHSCHCHSONH(ClogP=−1.33)
1B−13:OSCHCHCHSCHCHSCHCHCHSO2−(ClogP=−8.18)
1B−14:HN(NH=)CSCHCH(−NH)NH・2H(ClogP=−8.94)
〈ClogPが−0.34以上、2.6以下である溶媒A〉
以下に、ClogPが−0.34以上、2.6以下である溶媒Aの化合物例として、2A−1〜2A−7を示す。
【0071】
2A−1:HO(CHCH(CHCH)O)H(ClogP=0.37)
2A−2:HC(CHCH(CHCH)O)H(ClogP=1.99)
2A−3:HCCH(CHCH(CHCH)O)H(ClogP=2.52)
2A−4:HS(CHCHO)CHNH(ClogP=−0.04)
2A−5:HC(CHCHO)H(ClogP=0.18)
2A−6:HO(CHCH(CH)O)H(ClogP=−0.34)
2A−7:HO(CHCHCHCHO)H(ClogP=−0.29)
〈ClogPが−0.9以上、−3.9以下である溶媒B〉
以下に、ClogPが−0.9以上、−0.39以下である溶媒Bの化合物例として、2B−1、2B−2を示す。
【0072】
2B−1:N−メチルピロリドン(ClogP=−0.40)
2B−2:γ−ブチロラクトン(ClogP=−0.80)
また、上記以外には、親水性である溶媒Bと疎水性である溶媒Aとしては、例えば、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン(γ−BL)、テトラメチル尿素、スルホラン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチル−2−ピロリジノン(NMP)、ヘキサメチルホスホルトリアミド、N−メチルプロピオンアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、ブチロニトリル、プロピオニトリル、アセトニトリル、アセチルアセトン、4−メチル−2−ペンタノン、2−ブタノール、1−ブタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、無水酢酸、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、ジメトキシエタン、ジエトキシフラン、テトラヒドロフラン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリクレジルホスフェート、2エチルヘキシルホスフェート、ジオクチルフタレート、ジオクチルセバケート、ポリエチレンオキシド構造やポリプロピレンオキシド構造、ポリブチレン構造を有するアルキレンオキシド等を挙げることができる。
【0073】
次いで、本発明の表示素子を構成する各要素について説明する。
【0074】
〔表示素子の基本構成〕
図1は、本発明の表示素子の原理を説明する概念図である。
【0075】
図1の(a)は、本発明の表示素子1において、可視化の駆動を行った時に起こる反応を示している。可視化の駆動を行った場合、閲覧側の透明電極2では、電解質5中に溶解している、例えば、銀イオン(Ag)に透明電極2から電子(e)が与えられて、銀(Ag)が透明電極2上に析出し、通常、黒色画像4を生じさせる。この時、対向電極3上では、銀(この銀は、表示素子作製当初には存在しないが、可視化→無色化を一度行った時点で少なからず生じるものである)から電子が対向電極3に移動し、銀イオン(Ag)となって電解質5中に放出される。
【0076】
図1の(b)は、無色化の反応を示している。閲覧側の透明電極2では、銀から電子を受け取り、銀は銀イオンとなって電解質5中に放出される。対向電極3上では、銀イオンに電子が与えられ、銀となって析出する。
【0077】
〔電解質材料〕
本発明の表示素子の電解質層は、上記各構成要素の他に、銀または銀を化学構造中に含む化合物(以下、銀塩化合物ともいう)を含有することを特徴とする。
【0078】
(銀塩化合物)
本発明に係る銀塩化合物とは、銀または、銀を化学構造中に含む化合物、例えば、酸化銀、硫化銀、金属銀、銀コロイド粒子、ハロゲン化銀、銀錯体化合物、銀イオン等の化合物の総称であり、固体状態や液体への可溶化状態や気体状態等の相の状態種、中性、アニオン性、カチオン性等の荷電状態種は、特に問わない。
【0079】
本発明の表示素子においては、ヨウ化銀、塩化銀、臭化銀、酸化銀、硫化銀、クエン酸銀、酢酸銀、ベヘン酸銀、p−トルエンスルホン酸銀、トリフルオロメタンスルホン酸銀、メルカプト類との銀塩、イミノジ酢酸類との銀錯体、等の公知の銀塩化合物を用いることができる。これらの中でハロゲンやカルボン酸や銀との配位性を有する窒素原子を有しない化合物を銀塩として用いるのが好ましく、例えば、p−トルエンスルホン酸銀が好ましい。
【0080】
本発明に係る電解質層に含まれる金属イオン濃度は、0.2モル/kg≦[Metal]≦2.0モル/kgが好ましい。金属イオン濃度が0.2モル/kg以上であれば、十分な濃度の銀溶液となり所望の駆動速度を得ることができ、2モル/kg以下であれば析出を防止し、低温保存時での電解質層の安定性が向上する。
【0081】
(ハロゲンイオン、銀イオン濃度比)
本発明の表示素子においては、電解質層に含まれるハロゲンイオンまたはハロゲン原子のモル濃度を[X](モル/kg)とし、前記電解質層に含まれる銀または銀を化学構造中に含む化合物の銀の総モル濃度を[Metal](モル/kg)としたとき、下式(1)で規定する条件を満たすことが好ましい。
【0082】
式(1):0≦[X]/[Metal]≦0.1
本発明でいうハロゲン原子とは、ヨウ素原子、塩素原子、臭素原子、フッ素原子のことをいう。[X]/[Metal]が0.1よりも大きい場合は、銀の酸化還元反応時に、X→Xが生じ、Xは析出した金属と容易にクロス酸化して析出した銀を溶解させ、メモリー性を低下させる要因の1つになるので、ハロゲン原子のモル濃度は金属銀のモル濃度に対してできるだけ低い方が好ましい。本発明においては、0≦[X]/[Metal]≦0.001がより好ましい。ハロゲンイオンを添加する場合、ハロゲン種については、メモリー性向上の観点から、各ハロゲン種モル濃度総和が[I]<[Br]<[Cl]<[F]であることが好ましい。
【0083】
〔増粘剤〕
本発明の表示素子においては、電解質層に増粘剤を用いることができ、例えば、ゼラチン、アラビアゴム、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリ(ビニルピロリドン)、カゼイン、デンプン、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メチルメタクリル酸)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(メタクリル酸)、コポリ(スチレン−無水マレイン酸)、コポリ(スチレン−アクリロニトリル)、コポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(ビニルアセタール)類(例えば、ポリ(ビニルホルマール)及びポリ(ビニルブチラール))、ポリ(エステル)類、ポリ(ウレタン)類、フェノキシ樹脂、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(エポキシド)類、ポリ(カーボネート)類、ポリ(ビニルアセテート)、セルロースエステル類、ポリ(アミド)類、疎水性透明バインダーとして、ポリビニルブチラール、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリル酸、ポリウレタン等が挙げられる。本発明に用いられるPAOは増粘剤の役目も果たす。
【0084】
これらの増粘剤は2種以上を併用して用いてもよい。また、特開昭64−13546号公報の71〜75頁に記載の化合物を挙げることができる。
【0085】
〔その他の添加剤〕
本発明の製造方法で形成される表示素子の電解質層には、その他各種性能を向上させる目的の添加剤を使用することができる。それらは目的に応じて選択され、特に制限されるものではない。
【0086】
各種の化学増感剤、貴金属増感剤、感光色素、強色増感剤、カプラー、高沸点溶剤、カブリ防止剤、安定剤、現像抑制剤、漂白促進剤、定着促進剤、混色防止剤、ホルマリンスカベンジャー、色調剤、硬膜剤、界面活性剤、増粘剤、可塑剤、スベリ剤、紫外線吸収剤、イラジエーション防止染料、フィルター光吸収染料、防ばい剤、ポリマーラテックス、重金属、帯電防止剤、マット剤等を、必要に応じて含有させることができる。
【0087】
上述したこれらの添加剤は、より詳しくは、リサーチ・ディスクロージャー(以下、RDと略す)第176巻Item/17643(1978年12月)、同184巻Item/18431(1979年8月)、同187巻Item/18716(1979年11月)及び同308巻Item/308119(1989年12月)に記載されている。
【0088】
これら三つのリサーチ・ディスクロージャーに示されている化合物種類と記載箇所を以下に掲載した。
【0089】
添加剤 RD17643 RD18716 RD308119
頁 分類 頁 分類 頁 分類
化学増感剤 23 III 648右上 96 III
増感色素 23 IV 648〜649 996〜8 IV
減感色素 23 IV 998 IV
染料 25〜26 VIII 649〜650 1003 VIII
現像促進剤 29 XXI 648右上
カブリ抑制剤・安定剤
24 IV 649右上 1006〜7 VI
増白剤 24 V 998 V
硬膜剤 26 X 651左 1004〜5 X
界面活性剤 26〜7 XI 650右 1005〜6 XI
帯電防止剤 27 XII 650右 1006〜7XIII
可塑剤 27 XII 650右 1006 XII
スベリ剤 27 XII
マット剤 28 XVI 650右 1008〜9 XVI
バインダー 26 XXII 1003〜4 IX
支持体 28 XVII 1009 XVII
上記の添加剤は、保護層、フィルター層、ハレーション防止層、クロスオーバー光カット層、バッキング層等の補助層を設け、それら補助層中に含有させることも可能である。
【0090】
〔金属酸化物を含む多孔質層〕
本発明の表示素子においては、金属酸化物を含む多孔質層を設けることが好ましい。
【0091】
本発明に係る多孔質層を構成する金属酸化物としては、例えば、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化スズ、Snドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛等、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0092】
多孔質層は、上記金属酸化物の複数個の微粒子を結着または接触させることにより形成される。金属酸化物微粒子の平均粒子径は5nm〜10μmが好ましく、より好ましくは20nm〜1μmである。また、金属酸化物微粒子の比表面積は、簡易BET法で1×10−3〜1×10/gであることが好ましく、より好ましくは1×10−2〜10m/gである。また、金属酸化物微粒子の形状は、不定形、針状、球形など任意の形状のものが用いられる。
【0093】
金属酸化物微粒子の形成または結着法としては、公知のゾルゲル法や焼結法を採用することができ、例えば、1)Journal of the Ceramic Society of Japan,102,2,p200(1994)、2)窯業協会誌90,4,p157、3)J.of Non−Cryst.Solids,82,400(1986)等に記載の方法が挙げられる。また、気相法により作製した酸化チタンデンドリマー粒子を溶液上に分散して基体上に塗布し、120〜150℃程度の温度範囲で乾燥して溶媒を除去して多孔質層を得る方法を用いることもできる。金属酸化物微粒子は結着させた状態が好ましく、連続加重式表面性測定機(例えば、スクラッチ試験器)で0.1g以上、好ましくは1g以上の耐性を有する状態が好ましい。
【0094】
本発明でいう多孔質とは、多孔質層を配置し、対向電極間に電位差を与え、エレクトロクロミック化合物の酸化還元反応や金属の溶解析出反応を生じさせることが可能で、イオン種が多孔質電極内を移動可能な貫通状態を言う。
【0095】
〔白色散乱層〕
本発明においては、表示コントラスト及び白表示反射率をより高める観点から多孔質白色散乱層を有することができる。
【0096】
本発明に適用可能な多孔質白色散乱層は、電解質溶媒に実質的に溶解しない水系高分子と白色顔料との水混和物を塗布乾燥して形成することができる。
【0097】
本発明でいう電解質溶媒に実質的に溶解しないとは、−20℃から120℃の温度において、電解質溶媒1kgあたりの溶解量が0g以上、10g以下である状態と定義し、重量測定法、液体クロマトグラムやガスクロマトグラムによる成分定量法等の公知の方法により溶解量を求めることができる。
【0098】
本発明において、電解質溶媒に実質的に溶解しない水系高分子としては、水溶性高分子、水系溶媒に分散した高分子を挙げることができる。
【0099】
水溶性化合物としては、ゼラチン、ゼラチン誘導体等の蛋白質またはセルロース誘導体、澱粉、アラビアゴム、デキストラン、プルラン、カラギーナン等の多糖類のような天然化合物や、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド重合体やそれらの誘導体等の合成高分子化合物が挙げられる。ゼラチン誘導体としては、アセチル化ゼラチン、フタル化ゼラチン、ポリビニルアルコール誘導体としては、末端アルキル基変性ポリビニルアルコール、末端メルカプト基変性ポリビニルアルコール、セルロース誘導体としては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。更に、リサーチ・ディスクロージャー及び特開昭64−13546号の(71)頁〜(75)頁に記載されたもの、また、米国特許第4,960,681号、特開昭62−245260号等に記載の高吸水性ポリマー、すなわち−COOMまたは−SOM(Mは水素原子またはアルカリ金属)を有するビニルモノマーの単独重合体またはこのビニルモノマー同士もしくは他のビニルモノマー(例えばメタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸アンモニウム、アクリル酸カリウム等)との共重合体も使用される。これらのバインダーは2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0100】
本発明においては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン系化合物を好ましく用いることができる。
【0101】
水系溶媒に分散した高分子としては、天然ゴムラテックス、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、イソプレンゴム等のラテックス類、ポリイソシアネート系、エポキシ系、アクリル系、シリコーン系、ポリウレタン系、尿素系、フェノール系、ホルムアルデヒド系、エポキシ−ポリアミド系、メラミン系、アルキド系樹脂、ビニル系樹脂等を水系溶媒に分散した熱硬化性樹脂を挙げることができる。これらの高分子のうち、特開平10−76621号に記載の水系ポリウレタン樹脂を用いることが好ましい。
【0102】
本発明の水系高分子の平均分子量は、重量平均で10,000〜2,000,000の範囲が好ましく、より好ましくは30,000〜500,000の範囲である。
【0103】
本発明に係る白色散乱層に適用可能な白色顔料としては、例えば、二酸化チタン(アナターゼ型あるいはルチル型)、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウムおよび水酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、リン酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、アルカリ土類金属塩、タルク、カオリン、ゼオライト、酸性白土、ガラス、有機化合物としてポリエチレン、ポリスチレン、アクリル樹脂、アイオノマー、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素−ホルマリン樹脂、メラミン−ホルマリン樹脂、ポリアミド樹脂などが単体または複合混合で、または粒子中に屈折率を変化させるボイドを有する状態で使用されてもよい。
【0104】
本発明では、上記白色粒子の中でも、二酸化チタンが好ましく用いられ、特に無機酸化物(Al、AlO(OH)、SiO等)で表面処理した二酸化チタン、これらの表面処理に加えてトリメチロールエタン、トリエタノールアミン酢酸塩、トリメチルシクロシラン等の有機物処理を施した二酸化チタンがより好ましく用いられる。
【0105】
これらの白色粒子のうち、高温時の着色防止、屈折率に起因する素子の反射率の観点から、二酸化チタンまたは酸化亜鉛を用いることがより好ましい。
【0106】
本発明において、水系化合物と白色顔料との水混和物は、公知の分散方法に従って白色顔料が水中分散された形態が好ましい。水系化合物/白色顔料の混合比は、容積比で1〜0.01が好ましく、より好ましくは、0.3〜0.05の範囲である。
【0107】
多孔質白色散乱層の膜厚は、5〜50μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは10〜30μmの範囲である。
【0108】
アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の水との溶解性が高い化合物が好ましく用いられ、水/アルコール系溶媒との混合比は、重量比で0.5〜20の範囲が好ましく、より好ましくは2〜10の範囲である。
【0109】
本発明において、水系化合物と白色顔料との水混和物を塗布する媒体は、表示素子の対向電極間の構成要素上であればいずれの位置でもよいが、対向電極の少なくとも1方の電極面上に付与することが好ましい。
【0110】
電極への付与の方法としては、例えば、塗布方式、液噴霧方式、気相を介する噴霧方式として、圧電素子の振動を利用して液滴を飛翔させる方式、例えば、ピエゾ方式のインクジェットヘッドや、突沸を利用したサーマルヘッドを用いて液滴を飛翔させるバブルジェット(登録商標)方式のインクジェットヘッド、また空気圧や液圧により液を噴霧するスプレー方式等が挙げられる。
【0111】
塗布方式としては、公知の塗布方式より適宜選択することができる。例えば、エアードクターコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、含浸コーター、リバースローラーコーター、トランスファーローラーコーター、カーテンコーター、ダブルローラーコーター、スライドホッパーコーター、グラビアコーター、キスロールコーター、ビードコーター、キャストコーター、スプレイコーター、カレンダーコーター、押し出しコーター等が挙げられる。
【0112】
電極等の基材上に付与した水系化合物と白色顔料との水混和物の乾燥は、水を蒸発できる方法であればいかなる方法であってもよい。例えば、熱源からの加熱、赤外光を用いた加熱法、電磁誘導による加熱法等が挙げられる。また、水蒸発は減圧下で行ってもよい。
【0113】
本発明でいう多孔質とは、前記水系化合物と白色顔料との水混和物を電極上に塗布乾燥して多孔質の白色散乱物を形成した後、該散乱物上に、電解質液を与えた後に対向電極で挟み込み、対向電極間に電位差を与え、銀の溶解析出反応を生じさせることが可能で、イオン種が電極間で移動可能な貫通状態のことを言う。
【0114】
また、白色散乱物と水系化合物との混和物を塗布乾燥して作製する白色散乱層の他に、電解質層中に白色散乱物を混和させてもよい。
【0115】
〔基板〕
本発明で用いることのできる基板としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン類、ポリカーボネート類、セルロースアセテート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンジナフタレンジカルボキシラート、ポリエチレンナフタレート類、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリビニルアセタール類、ポリスチレン等の合成プラスチックフィルムも好ましく使用できる。また、シンジオタクチック構造ポリスチレン類も好ましい。これらは、例えば、特開昭62−117708号、特開平1−46912、同1−178505号の各公報に記載されている方法により得ることができる。更に、ステンレス等の金属製基盤や、バライタ紙、及びレジンコート紙等の紙支持体ならびに上記プラスチックフィルムに反射層を設けた支持体、特開昭62−253195号(29〜31頁)に支持体として記載されたものが挙げられる。RDNo.17643の28頁、同No.18716の647頁右欄から648頁左欄及び同No.307105の879頁に記載されたものも好ましく使用できる。これらの支持体には、米国特許第4,141,735号のようにTg以下の熱処理を施すことで、巻き癖をつきにくくしたものを用いることができる。また、これらの支持体表面を支持体と他の構成層との接着の向上を目的に表面処理を行っても良い。本発明では、グロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理を表面処理として用いることができる。更に公知技術第5号(1991年3月22日アズテック有限会社発行)の44〜149頁に記載の支持体を用いることもできる。更にRDNo.308119の1009頁やプロダクト・ライセシング・インデックス、第92巻P108の「Supports」の項に記載されているものが挙げられる。その他に、ガラス基板や、ガラスを練りこんだエポキシ樹脂を用いることができる。
【0116】
〔透明電極〕
本発明の表示素子では、対向電極の少なくとも1種が透明電極であることが好ましい。透明電極としては、透明で電気を通じるものであれば特に制限はない。例えば、Indium Tin Oxide(ITO:インジウム錫酸化物)、Indium Zinc Oxide(IZO:インジウム亜鉛酸化物)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化インジウム、酸化亜鉛等が挙げられる。
【0117】
電極をこのように形成するには、例えば、基板上にITO膜をスパッタリング法等でマスク蒸着するか、ITO膜を全面形成した後、フォトリソグラフィ法でパターニングすればよい。表面抵抗値としては、100Ω/□以下が好ましく、10Ω/□以下がより好ましい。透明電極の厚みは特に制限はないが、0.1〜20μmであるのが一般的である。
【0118】
〔対極側画素電極〕
対極側画素電極は、電気が通じるものであれば、特に制限されず用いることができる。前記透明電極と同じ材料に加え、白金、金、銀、銅、アルミニウム、亜鉛、ニッケル、チタン、ビスマスなどの金属およびそれらの合金、カーボン等、透明性を有しない材料でも好ましく用いることができる。
【0119】
電極の作製方法は、電解メッキ法、無電解メッキ法、置換メッキ法、蒸着法、印刷法、インクジェット法、スピンコート法、CVD法等の既存の方法を用いることができる。
【0120】
〔表示素子のその他の構成要素〕
本発明の表示素子では、必要に応じて、シール剤、柱状構造物、スペーサー粒子を用いることができる。
【0121】
(シール剤)
シール剤は、外に漏れないように封入するためのものであり封止剤とも呼ばれ、エポキシ樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、エン−チオール系樹脂、シリコーン系樹脂、変性ポリマー樹脂等の、熱硬化型、光硬化型、湿気硬化型、嫌気硬化型等の硬化タイプを用いることができる。
【0122】
(柱状構造物)
柱状構造物は、基板間の強い自己保持性(強度)を付与し、例えば、格子配列等の所定のパターンに一定の間隔で配列された、円柱状体、四角柱状体、楕円柱状体、台形柱状体等の柱状構造物を挙げることができる。また、所定間隔で配置されたストライプ状のものでもよい。この柱状構造物はランダムな配列ではなく、等間隔な配列、間隔が徐々に変化する配列、所定の配置パターンが一定の周期で繰り返される配列等、基板の間隔を適切に保持でき、且つ、画像表示を妨げないように考慮された配列であることが好ましい。柱状構造物は表示素子の表示領域に占める面積の割合が1〜40%であれば、表示素子として実用上十分な強度が得られる。
【0123】
(スペーサー)
一対の基板間には、該基板間のギャップを均一に保持するためのスペーサーが設けられていてもよい。このスペーサーとしては、樹脂製または無機酸化物製の球体を例示できる。また、表面に熱可塑性の樹脂がコーティングしてある固着スペーサーも好適に用いられる。基板間のギャップを均一に保持するために柱状構造物のみを設けてもよいが、スペーサー及び柱状構造物をいずれも設けてもよいし、柱状構造物に代えて、スペーサーのみをスペース保持部材として使用してもよい。スペーサーの直径は柱状構造物を形成する場合はその高さ以下、好ましくは当該高さに等しい。柱状構造物を形成しない場合はスペーサーの直径がセルギャップの厚みに相当する。
【0124】
〔スクリーン印刷、表示素子作製方法〕
本発明においては、シール剤、柱状構造物、電極パターン等をスクリーン印刷法で形成することもできる。スクリーン印刷法は、所定のパターンが形成されたスクリーンを基板の電極面上に被せ、スクリーン上に印刷材料(柱状構造物形成のための組成物、例えば、光硬化性樹脂など)を載せる。そして、スキージを所定の圧力、角度、速度で移動させる。これによって、印刷材料がスクリーンのパターンを介して該基板上に転写される。次に、転写された材料を加熱硬化、乾燥させる。スクリーン印刷法で柱状構造物を形成する場合、樹脂材料は光硬化性樹脂に限られず、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等の熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂も使用できる。熱可塑性樹脂としては、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリビニルエーテル樹脂、ポリビニルケトン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩素化ポリエーテル樹脂等が挙げられる。樹脂材料は樹脂を適当な溶媒に溶解するなどしてペースト状にして用いることが望ましい。
【0125】
以上のようにして柱状構造物等を基板上に形成した後は、所望によりスペーサーを少なくとも一方の基板上に付与し、一対の基板を電極形成面を対向させて重ね合わせ、空セルを形成する。重ね合わせた一対の基板を両側から加圧しながら加熱することにより、貼り合わせて、表示セルが得られる。表示素子とするには、基板間に電解質組成物を真空注入法等によって注入すればよい。あるいは、基板を貼り合わせる際に、一方の基板に電解質組成物を滴下しておき、基板の貼り合わせと同時に液晶組成物を封入するようにしてもよい。
【0126】
〔表示素子駆動方法〕
本発明の表示素子において、析出過電圧以上の電圧印加で黒化銀等を析出させ、析出過電圧以下の電圧印加で黒化銀の析出を継続させる駆動操作を行うことが好ましい。この駆動操作を行うことにより、書き込みエネルギーの低下や、駆動回路負荷の低減や、画面としての書き込み速度を向上させることができる。一般に電気化学分野の電極反応において過電圧が存在することは公知である。例えば、過電圧については「電子移動の化学−電気化学入門」(1996年 朝倉書店刊)の121ページに詳しい解説がある。本発明の表示素子も電極と電解質中の銀等との電極反応と見なすことができるので、銀等の溶解析出においても過電圧が存在することは容易に理解できる。
【0127】
本発明の表示素子の駆動操作は、単純マトリックス駆動(パッシブ駆動)であっても、アクティブマトリック駆動であってもよい。本発明でいう単純マトリックス駆動とは、複数の正極を含む正極ラインと複数の負極を含む負極ラインとが対向する形で互いのラインが垂直方向に交差した回路に、順次電流を印加する駆動方法のことを言う。単純マトリックス駆動を用いることにより、回路構成や駆動ICを簡略化でき安価に製造できるメリットがある。アクティブマトリックス駆動は、走査線、データライン、電流供給ラインが碁盤目状に形成され、各碁盤目に設けられたTFT回路により駆動させる方式である。画素毎にスイッチングが行えるので、階調やメモリー機能等にメリットがあり、また、高精細化、大画面化に向くため、好ましい。例えば、特開2004−29327号の図5に記載されている回路を用いることができる。
【0128】
〔画素数〕
本発明の表示素子の画素数は、特に限定されないが、100dpi以上500dpi以下が好ましい。100dpiより少ないと表示画像が粗くなり、500dpiより多いと、画素と画素間でクロストークが発生しやすくなり、好ましくない。
【0129】
〔商品適用〕
本発明の表示素子の製造方法で作製される表示素子は、電子書籍分野、IDカード関連分野、公共関連分野、交通関連分野、放送関連分野、決済関連分野、流通物流関連分野等の用いることができる。具体的には、ドア用のキー、学生証、社員証、各種会員カード、コンビニストアー用カード、デパート用カード、自動販売機用カード、ガソリンステーション用カード、地下鉄や鉄道用のカード、バスカード、キャッシュカード、クレジットカード、ハイウェイカード、運転免許証、病院の診察カード、電子カルテ、健康保険証、住民基本台帳、パスポート、ワンタイムパスワード、電子ブック、携帯電話のカバー等各種機器の筐体装飾、キーボード表示、電子棚札、電子POP、電子広告等が挙げられる。特に大画面の表示が求められる電子ブック、電子広告、電子POP等の製造に有効である。
【実施例】
【0130】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0131】
《電極の作製》
〔非表示側(対極側画素)電極1の作製〕
4cm×5cmサイズの駆動回路基板表面に、公知の方法でITOをピッチ145μm、電極幅130μmのパターンで、厚み800nmになるように形成し、そのパターン化されたITO上に、厚み1000nmになるように、公知の方法で銀−パラジウム薄膜を形成した。必要電極開口部以外の部分は、アクリル樹脂系の絶縁膜を厚み500nmになるように形成して、非表示側電極1を得た。
【0132】
〔表示側電極1の作製〕
公知の方法で4cm×5cmサイズの無アルカリガラス(厚み1.5mm)表面に、ITO薄膜を厚み800nmとなるように形成して、表示側電極1を得た。
【0133】
《電解液の調製》
〔電解液1の調製〕
溶媒として、例示化合物2A−6(ClogP:−0.34)の1.0gに、トリフルオロメタンスルホン酸銀を0.1g添加し、次いで、含硫黄化合物として、例示化合物1A−3(ClogP:0.46)を0.029g添加して、混合、溶解した後、二酸化チタンを1.5g添加、分散して、電解液1を調製した。
【0134】
〔電解液2〜34の調製〕
上記電解液1の調製において、含硫黄化合物A、含硫黄化合物B、溶媒A、溶媒Bのそれぞれの種類及び添加量を、表1〜表2に記載の様に変更した以外は同様にして、電解液2〜34を調製した。
【0135】
【化5】

【0136】
【表1】

【0137】
【表2】

【0138】
《表示素子の作製》
〔表示素子1の作製〕
上記作製した非表示側電極1の周辺部に、平均粒径が40μmのガラス製の球形ビーズ状スペーサーを体積分率として10%含むオレフィン系シール剤を印刷した後、上記調製した電解液1を、非表示側電極1の中央部に滴下して、非表示側電極1上に電解質層を形成した。次いで、真空貼り合わせ装置内を真空状態にして、上記作製した表示側電極1のITO形成面と非表示側電極1とを重ねて、端部をシール材で貼り合わせた後、10mW/cmのUV光を1分間照射してシール剤を硬化して、表示素子1を作製した。
【0139】
〔表示素子2〜34の作製〕
上記表示素子1の作製において、電解液1に代えて、それぞれ上記調製した電解液2〜34を用いた以外は同様にして、表示素子2〜34を作製した。
【0140】
《表示素子の評価》
上記作製した表示素子1〜34について、下記の方法に従って耐久性の評価を行った。
【0141】
(耐久性の評価)
上記作製した各表示素子について、+1.5Vの電圧を1.5秒間印加して白色を表示させた後に、コニカミノルタセンシング社製の分光測色計CM−3700dでL値、a値、b値を測定し、それぞれL、a、bとした。その後、−1.5Vの電圧を0.5秒間印加して黒色を表示させ、その条件で白化−黒化を1000回繰り返し、その後再度白化させたときのL値、a値、b値を測定し、それぞれL、a、bとした。
【0142】
得られた各測定値から色調変動の評価値として、ΔE=〔(L−L+(a−a+(b−b1/2を計算した。表示素子16のΔEの値を2.0とした時の各表示素子のΔEの相対値ΔEを求め、これを耐久性の指標とした。ΔEの値が小さいほど、繰り返し駆動において色調変動が小さく優れていることを示す。
【0143】
以上により得られた結果を、表3に示す。
【0144】
【表3】

【0145】
表1〜表2に記載の結果より明らかなように、ClogPが0.45以上、4.4以下である含硫黄化合物AとClogPが−0.34以上、2.6以下である溶媒Aを含有する電解液を用いた本発明の表示素子は、比較例に対し、繰り返し駆動後の色調変動が少ないことが分かる。
【0146】
また、上記効果は、ClogPが−0.9以上、−0.39以下である溶媒Bを含有する電解液を用いた表示素子、更にClogPが−9.0以上、0.44以下である含硫黄化合物Bを含有した電解液を用いた表示素子でより発揮されていることが分かる。
【0147】
更には、含硫黄化合物の総質量Mに対する前記溶媒の総質量Sの質量比(S/M)が、2.0以上、30以下である電解液を用いた表示素子、logPが0.45以上、4.4以下である含硫黄化合物Aに対するClogPが−9.0以上、0.44以下である含硫黄化合物Bの質量比(B/A)が、0.1以上、4.0以下の範囲とした電解液を用いた表示素子、ClogPが−0.34以上、2.6以下である溶媒Aに対するlogPが−0.9以上、−0.39以下である溶媒Bの質量比(B/A)が、0.1以上、5.0以下の範囲とした電解液を用いた表示素子において、繰り返し駆動後の色調変動がより縮小されていることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1】本発明の表示素子の原理を説明する概念図である。
【符号の説明】
【0149】
1 表示素子
2 透明電極
3 対向電極
4 黒色画像(銀画像)
5 電解質

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向電極間に、銀または銀を化学構造中に含む化合物を含有する電解質層を有し、銀の溶解析出を生じさせるように該対向電極の駆動操作を行う表示素子において、該電解質層が、少なくともClogPが0.45以上、4.4以下である含硫黄化合物A、及びClogPが−0.34以上、2.6以下である溶媒Aを含有することを特徴とする表示素子。
【請求項2】
前記電解質層が、更にClogPが−0.9以上、−0.39以下である溶媒Bを含有することを特徴とする請求項1に記載の表示素子。
【請求項3】
前記電解質層が、更にClogPが−9.0以上、0.44以下である含硫黄化合物Bを含有することを特徴とする請求項2に記載の表示素子。
【請求項4】
含硫黄化合物の総質量Mに対する溶媒の総質量Sの質量比(S/M)が、2.0以上、30以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の表示素子。
【請求項5】
前記ClogPが0.45以上、4.4以下である含硫黄化合物Aに対する前記ClogPが−9.0以上、0.44以下である含硫黄化合物Bの質量比(B/A)が、0.1以上、4.0以下であることを特徴とする請求項3に記載の表示素子。
【請求項6】
前記ClogPが−0.34以上、2.6以下である溶媒Aに対する前記ClogPが−0.9以上、−0.39以下である溶媒Bの質量比(B/A)が、0.1以上、5.0以下であることを特徴とする請求項2または3に記載の表示素子。
【請求項7】
前記含硫黄化合物AのClogPと、前記溶媒AのClogPとの差の絶対値Δ|ClogP|が、2.0以内であることを特徴とする請求項1に記載の表示素子。
【請求項8】
前記ClogPが0.45以上、4.4以下である含硫黄化合物Aが、下記一般式(1)で表される含硫黄化合物であることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の表示素子。
【化1】

〔式中、A1〜A4は、各々水素原子、ハロゲン原子、複素環基、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリール基またはアミノ基を表す。Bは酸素原子、硫黄原子またはNHを表す。〕
【請求項9】
前記ClogPが−0.34以上、2.6以下である溶媒Aが、下記一般式(I)または(II)で表されるポリアルキレンオキシド化合物であることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の表示素子。
一般式(I)
X−(L−〔(CH−O〕−〔(CH−O〕−〔(CH−O〕−(L−Y
一般式(II)
X−(L−〔CH−CH(R)−O〕−〔(CH−O〕−〔(CH−O〕−(L−Y
〔式中、Rは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヒドロキシル基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、カルボキシル基またはスルホ基を表す。L、Lは各々二価の連結基を表し、a、bはそれぞれ0または1を表す。X、Yは、各々置換基を表す。j、k、m、rは各々1以上の整数を表す。n、p、qは各々0以上の整数を表すが、n、p及びqの少なくとも1つは1以上の整数を表す。s、tは各々0以上の整数を表す。〕
【請求項10】
前記一般式(I)におけるj、k及びmの少なくとも1つが、2であることを特徴とする請求項9に記載の表示素子。
【請求項11】
前記一般式(II)におけるRが、メチル基であることを特徴とする請求項9に記載の表示素子。
【請求項12】
前記ClogPが−0.9以上、−0.39以下である溶媒Bが、N−メチルピロリドンまたはγ−ブチロラクトンであることを特徴とする請求項2から11のいずれか1項に記載の表示素子。

【図1】
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