説明

表示素子

【目的】 20〜50インチのフラットCRTを歩留まり良く製造する。
【構成】 プリント配線8を形成した大型ベース基板1に、微細加工により電子放出素子が形成された基板4を複数個貼り付けて大型の面電子源を形成する。この基板1とフロントパネル2を側壁3を介して貼り合わせることによりCRTとする。基板4の張り付けの際に基板4と基板4のあいだに隙間ができるが、電子放出素子の周囲に電子軌道の偏向のための電極10を形成することにより、基板から発生した電子の軌道を広げ、貼り合わせの隙間がフロントパネルにつなぎ目として見えないようにする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は民生用TV、コンピュータ用ディスプレイおよび会議用ディスプレイなどに適用されるフラットCRTなどの表示素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】図8は国際真空マイクロエレクトロニクス会議第4回に発表された電界放出素子を電子放出素子とするフラットディスプレイの一例である。図において1はガラスなどからなるベース基板、2はフロントガラスパネルで、蛍光体5と透明なアノード電極7で形成されている。ベース基板1、フロントパネル2、側壁3は真空外囲器を構成し、内部は10-3〜10-5Torrの真空に保たれている。ここに真空外囲器とは、内部を真空状態にした容器を意味するものである。基板1上には電界放射型の電子放出素子が形成されている。31は微細加工によりつくられた電界放射エミッタ、34はエミッタから電子を引き出すゲート電極である。電界放射型の電子放出素子は、アノード電極7とカソード電極6とのあいだ、およびゲート電極34とカソード電極6とのあいだに電圧をかけると電界放射エミッタ31の先端から電子が放出される。本フラットディスプレイでは、ゲート電極32とカソード電極6が縦横方向にマトリックス状に配列されている。発光画素の選択は画素に対応するゲート電極32とカソード電極6のあいだに電圧をかけて電子を放出させることによって行う。放出された電子は、垂直方向に対向するアノード電極に加速されながら向かい蛍光体5に衝突し発光する。本表示素子に関しては、国際真空マイクロエレクトロニクス会議論文集に詳しく述べられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】この表示素子では、画面のサイズを大きくすることが難しい。この表示素子では画面のサイズと同じサイズの電子放出素子を面状に形成したガラス基板が必要なためである。電子放出素子は、写真製版や蒸着、エッチングなどの微細加工プロセスにより形成される。また、形成される素子のサイズは、ミクロンサイズである。このため微小な付着異物などのため不良が発生しやすい。とくに基板のサイズが大きくなると、基板の一部が不良になる確率は指数関数的に増大する。表示素子ではこの電子放出素子の一部でも不良が生じると明確に画面に現われるため、素子としては使用できなくなる。このため大きい基板、たとえば20〜50インチの画面を製造することは極めて難しいという問題がある。
【0004】本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、高い歩留まりで大画面の表示素子を作ることを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明に係る表示素子は、電子放出素子が形成された基板が複数個配列されることにより、大きい基板が形成されている。
【0006】この電子放出素子が形成された基板には、この基板間の隙間においても発光せしめるように、電子軌道を広げる手段が設けられることが好ましい。
【0007】たとえば、基板上に形成された電子放出素子の周囲に金属膜が形成され、該金属膜は基板上で中心程膜厚が厚くなるように数個の同心円状の段差が形成されるように設けられることが好ましい。
【0008】また、前記電子放出素子が形成された基板の表面、および前記ベース基板上で前記電子放出素子が形成される基板の間隙部に偏光電極が複数個形成され、それぞれの偏向電極に異なる電圧が印加されることが好ましい。
【0009】
【作用】本発明における表示素子は、歩留まりのよい小さい基板の組み合わせで大画面の表示素子がつくられ、高い歩留まりで大画面の表示素子が形成される。
【0010】また、電子放出素子が形成された基板の表面に、金属膜が中心部ほど膜厚が厚くなるように、数個同心状に形成され、負の電圧が印加されることにより、基板の中心から周辺部に広がる電界を形成し、発生した電子の軌道が等方的に広がる。その結果基板の真上だけでなく配列された基板のあいだにできる隙間に対向する面上でも発光させることが可能となり、複数個の基板が配列されるにもかかわらず、継ぎ目のない画面を形成することが可能となる。
【0011】さらに、前述の膜厚を変えた金属膜の形成に代えて、前記電子放出素子が形成された基板表面上、およびベース基板上で前記基板の間隙部に、それぞれ形成された偏向電極に異なる負の電圧が印加されることによっても電子の軌道が等方的に広げられ、前記基板の隙間に対向する面上でも発光させることができる。
【0012】
【実施例】
[実施例1]本発明の実施例を図1〜3を用いて説明する。図1は本発明による表示素子の断面側面図である。ガラスなどからなるベース基板1、ガラスフロントパネル2、ガラス側壁3は真空外囲器を構成する。図2は図1R>1のガラス基板1を上から見た図である。ベース基板1上には図2に示すように、電子放出素子13がマトリックス状に配列された正方形の基板4が貼りつけられている。正方形の基板4上には画素に対して複数個の電界放射エミッタからなる電子放出素子13が形成されている。フロントパネルの内側の面には、蛍光体膜5、アルミニウム薄膜からなるアノード電極7が形成されている。アノード電極7は真空外囲器外に引き出されており、カソード電極6とのあいだに1〜5kVの正の電圧がかけられている。本表示素子はいわゆるCRTで以下のように動作する。アノード電極7および電子放出素子が形成された基板4に金属膜のプリント配線8を通じて真空外囲器の外部から電圧をかけることにより、基板4から電子が放出される。放出された電子はアノード電極7に向かい加速され、アルミニウム薄膜に衝突する。電子はアルミニウム薄膜を通過し蛍光体膜5を発光させる。発光画素の選択は画素に対応するゲート電極32(図3参照)とカソード電極6とのあいだに印加される電圧を制御することにより行われる。そのため、表示させる各画素のゲート電極32とカソード電極6とのあいだの電圧を順次制御することにより、画素に対応する電子放出素子から順次放出された電子がその画素を発光させる。そして画像が形成される。基板4と基板4とのあいだの隙間では電子放出がないが、基板4の上に形成された偏向電極10の作用で電子の軌道9は広がり、隙間に対向する部分でも発光させることが可能である。偏向電極10は図3に部分拡大図を示すように、電子放出素子13の周囲に形成された金属膜からなり、図2のように同心円状の段差11が形成され、中心部より周辺部が低くなるように形成されている。
【0013】図3は基板4上の段差が形成された偏向電極10と、電子放出素子13を拡大して示した図である。31は電界放射エミッタ、32は電子引き出しゲート電極、33、34は絶縁層である。9は発生した電子の軌道である。図3に段差による電子軌道の偏向を示す。電界放射エミッタ31から放出された電子は、高さの異なる偏向電極10にかけられた負の電圧によりその軌道は曲げられる。偏向角は偏向電極の段差および印加される負の電圧の大きさによって決まる。段差は中心部から周辺部に向うと低くなるように形成されているため、電子軌道は段差の低い方に曲げられて広がる。
【0014】それぞれの基板4は周辺部の裏面の周囲に図1の符号12に示す切り欠きが設けられている。これはベース基板1に設けられた凹みとはめ合いを形成し、基板4をベース基板1に張り合せるときの位置決めを容易にする。また、ベース基板1上には、金属膜のプリント配線8が設けられている。図3に示すように、基板4から電極接続端子35、36が裏面に出ている。プリント配線8上に、はんだのバンプをあらかじめ形成しておき、基板4をベース基板1上に位置合わせしたのちこれを加熱すると、プリント配線上の端子と基板4の裏面に露出した電極接続端子は、はんだにより接着される。このようにして基板4の貼り付けと、電極の接続を同時に行うことができる。
【0015】[実施例2]つぎに、本発明の他の実施例について、図4〜6を参照しながら説明する。実施例1と同じ部分は同じ符号で示す。本実施例では、前述のベース基板1上に電子放出素子が形成された基板4が複数個配列されたときの、基板4間の間隙部でも発光させるための電子軌道を広げる別の手段を示す。これは実施例1における偏向電極を基板4上と、ベース基板1であるガラス基板上の間隙部に複数個設け、それぞれに異なる電圧を印加することにより、電子軌道が基板4からフロントパネル2へ広がる電界を形成するものである。図4は、貼り合わされる1枚の正方形の電子放出素子が形成された基板4を示す。基板4の最表面に偏向電極15、16、17であるニッケルメッキ膜などからなる導体電極膜が同心状に、幅約50μm位で設けられている。それぞれの偏向電極15、16、17には内側より外側へ向う程、電位が高くなるように、電圧が印加される。この基板4の一部の断面を図5に示す。偏向電極15〜17の電極端子は基板4の裏面に引き出されており、基板4のベース基板1への貼り合わせ時にベース基板1上のプリント配線8と接続される。発生する電子は基板の上方に飛び出したのち、偏向電極15〜17の導体電極膜により形成される中心から水平放射状に外方に向かう電界の作用で軌道を曲げられて外側へ向かう。この基板の配列図を図6に示す。基板4間の間隙部にも偏向電極18が設けられている。
【0016】なお、前記各実施例では電子放出素子が形成された基板形状を正方形としたが、平面を埋めることができれば長方形や正六角形などの他の形状としてもよい。また、基板4の間隙部にも偏向電極18を設ける例で説明したが、基板4上に設けるだけでも効果は生じる。また、基板に設ける偏向電極の数も実施例の3個に限られるものではない。
【0017】[実施例3]図7に本発明のさらに他の実施例を示す。本実施例では、フロントパネルの大基板化に伴い、基板間隔が変動して表示特性が劣化しないようにしたものである。他の構成は前述の実施例と同様で、図7においても実施例1、2と同じ部分は同じ符号で示してある。
【0018】図7において、基板4の周囲で、ベース基板1とフロントパネル2とのあいだに画素よりも、断面積の小さい支柱20が設けられている。この支柱20は感光性ガラスなどからなり、フリットガラスなどにより固着されるもので、このような支柱20が設けられることにより、フロントパネル2を支持し、表示素子の大画面化が容易になる。なぜなら、表示素子が大面積になるほど大気圧の荷重によるフロントパネル2の変形が大きくなるからである。
【0019】以上の実施例1および実施例2では基板4はベース基板1上に3×3個配列した例を示したが、さらに多数の基板を配列することも可能である。また、1つの基板4には、10×10本の電極が引き出されているが、さらに多数の電極が設けられてもよい。50×50mmの基板を間隔5mmで10×10配列すれば、30インチの表示素子を形成できる。
【0020】
【発明の効果】以上のように、本発明によればマトリックス状に電子放出素子が形成された小さい基板を複数個ベース基板上に配列することにより、大型の表示素子を形成できるため、高い歩留まりで製造できる。このため低価格で製造できる効果がある。また、電子軌道を広げる手段を設けることにより、基板間の隙間に対向する面上でも発光させることが可能となり、継ぎ目のない良好な画面がえられるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例による表示素子の断面図である。
【図2】本発明の第1の実施例による表示素子のベース基板平面図である。
【図3】本発明の第1の実施例による電子放出素子と偏向電極の断面の概念図である。
【図4】本発明の第2の実施例の電子放出素子が形成された基板の平面図である。
【図5】図4の部分断面図である。
【図6】本発明の第2の実施例の表示素子のベース基板の平面図である。
【図7】本発明の第3の実施例の表示素子の断面図である。
【図8】従来のフラットCRTの断面側面図である。
【符号の説明】
1 ベース基板
2 フロントパネル
3 側壁
4 電子放出素子が形成された基板
5 蛍光体膜
6 カソード電極
7 アノード電極
8 プリント配線
9 電子軌道
10 偏向電極
11 偏向電極の段差
12 基板の切り欠き
13 電子放出素子
15 偏向電極
16 偏向電極
17 偏向電極
18 偏向電極
20 支柱

【特許請求の範囲】
【請求項1】 電子放出素子が面状に配列され、画素に対応する素子から順次電子を放出することによって画像を形成させる表示素子であって、真空外囲器がフロントパネルとベース基板と側壁とから構成され、前記ベース基板上に電子放出素子が形成された基板が複数個配列されてなる表示素子。
【請求項2】 電子放出素子が形成された基板に電子軌道を広げる手段が設けられ、前記配列された基板間の隙間の対向面も発光せしめるようにされてなる請求項1記載の表示素子。
【請求項3】 電子放出素子の周囲に金属膜が設けられ、該金属膜の膜厚が前記基板の中心部と周辺部とで変えられることにより発生した電子軌道を偏向せしめることを特徴とする請求項2記載の表示素子。
【請求項4】 前記電子放出素子が形成された基板の表面と、前記ベース基板上で前記電子放出素子が形成された基板の間隙部に偏向電極が複数個形成され、それぞれの偏向電極に異なる電圧が印加されることにより、電子軌道を偏向せしめることを特徴とする請求項1記載の表示素子。

【図1】
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【図4】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図7】
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