説明

表示装置、表示方法、プログラム、及び集積回路

【課題】複数のコンテンツを1つの画面に同時に表示する際、各コンテンツを高画質に維持したまま、利用されるリソースの量を利用可能な限度以下に確実に維持できる表示装置を提供する。
【解決手段】操作部は複数のコンテンツの表示要求をユーザから受け付ける。その表示要求に応じて、供給部はそれら複数のコンテンツを供給し、制御部は、それら複数のコンテンツのそれぞれに割り当てられるべき画面内の表示領域を設定する。描画部は、複数のコンテンツに割り当てられた表示領域に合わせて、それら複数のコンテンツをフレームメモリに描画する。表示部は、フレームメモリのデータに従って映像を画面に表示する。特に制御部は、複数のコンテンツの少なくとも1つについて、そのコンテンツの属性に合わせて、表示領域のサイズを縮小し、又は表示の更新間隔を延長する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンテンツの表示技術に関し、特に複数のコンテンツを1つの画面に同時に表示する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、テレビ受像器等の表示装置はコンピュータ・グラフィックス(CG)処理機能を搭載している。それにより、表示装置は、放送番組等の動画コンテンツだけでなく、電子番組表等のグラフィックス・コンテンツを表示することができる。表示装置は更に、インターネット等のネットワークに接続されることにより、ウェブ・コンテンツや、ゲーム等のインタラクティブなコンテンツをも表示可能である。
【0003】
近年の表示装置には、1つの画面に複数のコンテンツを同時に表示できるものがある。そのような表示装置としては、次の2種類が一般的である。1つめは、画面を複数の領域に分割して、各領域に1つのコンテンツを表示するという表示装置である。2つめは、異なるウィンドウに異なるコンテンツを表示するという表示装置である。各ウィンドウの位置とサイズは自由に変更可能である。近年、大画面化や高解像度化が進むにつれ、より多くのコンテンツが同時に表示可能になっている。
【0004】
1つの画面に同時に表示されるコンテンツの数が増えるほど、それらの表示に必要なリソースの量も増大する。ここで、リソースには、CPUによる演算量、フレームメモリの帯域、及びグラフィックス・コアによる描画量が含まれる。テレビ受像器等、民生用の表示装置が備えるシステム・リソースの量は比較的少ないので、1つの画面に同時に表示可能なコンテンツの数には限度がある。従って、ユーザの望む数のコンテンツを1つの画面に同時に表示することを、常に実現させることは難しい。
【0005】
その問題を解決するための手段としては、例えば特許文献1に開示された技術が知られている。その技術によれば、表示装置は、複数のコンテンツを同時に画面表示する際に、利用されるリソースの量が利用可能な限度を超えているか否かを監視する。利用されるリソースの量がその限度を超えた場合、表示装置は、いずれかのコンテンツを表示するウィンドウのサイズを縮小する。一般的には、コンテンツを表示する領域が小さいほど、そのコンテンツを表示するのに必要なリソースの量は少ない。従って、ウィンドウのサイズを縮小することによって、利用されるリソースの量を削減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4212775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、グラフィックス・コンテンツについては、表示領域を縮小しても、表示に必要なリソースの量を十分に削減できるとは限らない。それは以下の理由による。グラフィックス・コンテンツの表示に必要な処理は主に、頂点処理と画素処理とから成る。頂点処理は、グラフィックス・コンテンツを構成する各オブジェクトについて、画面上の表示位置を示す座標を計算する処理である。画素処理は、各オブジェクトの座標に基づいて各画素の色情報、すなわち画素データを決定し、その画素データをフレームメモリに書き込む処理である。具体的には、自動車レースゲームを例に挙げると、自動車を表すオブジェクトが、複数の頂点と、それらの頂点を結ぶ辺で区切られる領域内の画素データとで構成される。それらの頂点の画面上での配置により、そのオブジェクトの位置と姿勢とが表現される。各頂点の座標を計算する処理が頂点処理である。オブジェクトの位置と姿勢とが決まれば、各画素データで自動車の各部の色が表現される。各画素データを決定してフレームメモリに書き込む処理が画素処理である。画素処理では、色情報を決定すべき画素の数がグラフィックス・コンテンツの表示領域のサイズに依存するので、必要なリソースの量もその表示領域のサイズに依存する。一方、頂点処理では、頂点の数がグラフィックス・コンテンツの表示領域のサイズには依存しないので、必要なリソースの量もその表示領域のサイズには依存しない。従って、頂点処理に必要なリソースの量が、画素処理に必要なリソースの量よりも多い場合、グラフィックス・コンテンツの表示領域のサイズを小さくしても、その表示に必要なリソースの総量の削減には効果的ではない。
【0008】
また、コンテンツが文字情報を多く含む場合、そのコンテンツの表示領域を縮小することによって、そのコンテンツに含まれる文字情報が読めなくなるおそれがある。更に、天気予報や時刻等、画面に定常的に表示されるコンテンツについては、表示領域の縮小に伴う表示位置の変動が、視聴者に違和感を与えるおそれがある。このように、コンテンツの属性によっては、そのコンテンツの画質が表示領域の縮小によって損なわれる危険性がある。
【0009】
本発明の目的は、上記の課題を解決することであって、特に、複数のコンテンツを1つの画面に同時に表示する際、各コンテンツの画質を高く維持したまま、利用されるリソースの量を利用可能な限度以下に更に確実に維持することができる表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による表示装置は、複数のコンテンツを1つの画面に同時に表示するものであって、操作部、供給部、制御部、描画部、及び、表示部を備えている。操作部は、複数のコンテンツの表示要求をユーザから受け付ける。供給部は、その表示要求に応じて、それら複数のコンテンツを供給する。制御部は、その表示要求に応じて、それら複数のコンテンツのそれぞれに割り当てられるべき画面内の表示領域を設定する。描画部は、フレームメモリを含み、複数のコンテンツに割り当てられた表示領域に合わせて、それら複数のコンテンツをフレームメモリに描画する。表示部は、フレームメモリのデータに従って映像を画面に表示する。特に制御部は、複数のコンテンツの少なくとも1つについて、そのコンテンツの属性に合わせて、表示領域のサイズの縮小と表示の更新間隔の延長との少なくともいずれかを行う。
【発明の効果】
【0011】
本発明による表示装置は、複数のコンテンツを1つの画面に同時に表示するとき、それらのコンテンツの少なくとも1つについて、そのコンテンツの属性に合わせて、表示領域のサイズの縮小と表示の更新間隔の延長との少なくともいずれかを行う。それにより、各コンテンツの画質を高く維持したまま、それらのコンテンツの表示に利用されるリソースの量を利用可能な限度以下に更に確実に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態による表示装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図2】(a)は、頂点処理を示す模式図である。(b)は、画素処理を示す模式図である。
【図3】図1に示されている制御部によって構成される機能部のブロック図である。
【図4】(a)は、代表的なコンテンツについて特徴量を示す表である。(b)は、画面SCRに同時に表示される4つのコンテンツGCT、SLS、STR、WPGを示す模式図である。
【図5】図1に示されている表示装置100によるコンテンツの表示処理のフローチャートである。
【図6】図5に示されているステップS504の詳細なフローチャートである。
【図7】図5に示されているステップS509の詳細なフローチャートである。
【図8】図7に示されているステップS701の詳細なフローチャートの左半分である。
【図9】図7に示されているステップS701の詳細なフローチャートの右半分である。
【図10】図7に示されているステップS702の詳細なフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0014】
[表示装置のハードウェア構成]
【0015】
図1は、本発明の実施形態による表示装置のハードウェア構成を示すブロック図である。この表示装置100はデジタルテレビ受像器である。図1を参照するに、表示装置100は、供給部110、操作部120、システムバス130、制御部140、描画部150、表示部160、及び左右信号送信部170を備えている。
【0016】
供給部110は、様々な映像コンテンツ(以下、単にコンテンツという。)を外部から入力するインタフェースの全体であり、受信部101、光ディスクドライブ102、カードリーダ103、及びハードディスクドライブ(HDD)104を含む。受信部101は、アンテナ190又はケーブルテレビ等の外部ネットワーク191を通して放送波を受信する。受信部101は更に、その放送波から所望のチャネルのコンテンツを抽出してシステムバス130へ送出する。受信部101はその他に、外部ネットワーク191を通してインターネットから様々なコンテンツをダウンロードする。光ディスクドライブ102は表示装置100に内蔵され、DVD又はBD(Blu−ray Disc、ブルーレイ・ディスク(登録商標))等の光ディスク192からコンテンツを読み出してシステムバス130へ送出する。光ディスクドライブ102はその他に、表示装置100に外付けされた単体のもの、又は光ディスク再生装置に内蔵されたものであってもよい。カードリーダ103は、SDカード等の半導体メモリカード193からコンテンツを読み出してシステムバス130へ送出する。HDD104は表示装置100に内蔵され、受信部101、光ディスクドライブ102、又はカードリーダ103から送出されるコンテンツを保存する。また、HDD104は、保存されたコンテンツをシステムバス130へ送出する。供給部110によって供給可能なコンテンツには、放送番組等の動画と電子番組表、ニュースや天気予報等のウェブページ、メモリカードに保存された写真等の静止画像、及び、インターネットからダウンロードされるゲーム・プログラムが含まれる。供給部110は、ユーザによって表示が要求されたコンテンツを適切な供給元から供給する。特にユーザが複数のコンテンツの表示を要求した場合、供給部110はそれら複数のコンテンツを同時に供給する。
【0017】
操作部120は、リモコン194又は表示装置100のフロントパネルを通してユーザの操作を検出し、その操作の種類に対応する処理を制御部140へ依頼する。リモコン194は複数のボタンを含む。それらのボタンは、表示装置100の電源のオンオフ、供給部110に対するコンテンツの表示要求、表示部160から出力される音量の調節等、表示装置100の様々な機能に対応付けられている。コンテンツの表示要求には、受信部101による選局、表示部160による電子番組表や日時の表示、インターネットへの接続とブラウザの起動、光ディスクドライブ102によるコンテンツの再生開始、メモリカード193からのコンテンツの読み出し等が含まれる。リモコン194はユーザによるボタンの押下を検出し、そのボタンの識別情報を赤外線又は無線による信号IRで操作部120へ伝える。操作部120はその信号IRから、識別情報の示すボタンに対応付けられた機能を特定して制御部140へ通知する。
【0018】
システムバス130は、供給部110、操作部120、制御部140、及び描画部150を、互いにデータ交換可能に接続する。図1には示されていないが、システムバス130はチップセットを含む。そのチップセットは特に、供給部110から送出されるコンテンツを、制御部140と描画部150とが処理可能な形式へ変換する。
【0019】
制御部140と描画部150とはそれぞれ、一つの集積回路に実装されている。各集積回路は専用回路として構成されていても、汎用のプロセッサを利用して構成されていてもよい。その他に、制御部140と描画部150とが一つのLSIに集約されていてもよい。
【0020】
制御部140は、ファームウェア等のプログラムに従って、表示装置100の各機能部を制御する。制御部140は特に操作部120を通してコンテンツの表示要求をユーザから受け付け、その表示要求の示すコンテンツの供給元を供給部110の中から選択する。制御部140は更に描画部150を制御して、その供給元から供給されるコンテンツをフレームメモリ153へ描画させる。
【0021】
図1を参照するに、制御部140はCPU141とメインメモリ142とを含む。CPU141は、メインメモリ142に記憶されているファームウェア等のプログラムを実行する。CPU141はそのプログラムに従って、供給部110から直接、又はメインメモリ142を介して、描画部150へ処理対象のコンテンツを送り、かつ、描画部150の動作を制御する。メインメモリ142は、制御部140に内蔵のメモリ素子である。メインメモリ142は、ファームウェア等のプログラムを保存し、かつ、作業用メモリ領域として利用される。
【0022】
描画部150は制御部140の指示に従って供給部110からコンテンツの供給を受けて、フレームメモリ153に描画する。描画部150は、一般には複数のコンテンツから1フレームを構成して、表示部160へ送出する。図1を参照するに、描画部150は、グラフィックス処理専用プロセッサ(GPU:Graphic Processor Unit)151、ハードウェア・デコーダ152、フレームメモリ153、及び出力部154を含む。GPU151は、グラフィックス表示に必要な演算処理に特化した論理回路である。GPU151は、電子番組表やゲーム・コンテンツ等のグラフィックス・コンテンツをフレームメモリ153に描画する。その描画処理の詳細については後述する。ハードウェア・デコーダ152は、ストリーム・データの復号処理に特化した論理回路である。ハードウェア・デコーダ152は、放送番組等の動画コンテンツを構成するフレーム列をストリーム・データから復号して、1フレームずつフレームメモリ153へ書き込む。フレームメモリ153は、描画部150に内蔵のメモリ素子であり、コンテンツ別に1つずつ用意されている。1つのフレームメモリ153を構成するメモリセルがそれぞれ、表示パネル162の1つの画素に対応付けられ、その画素の色情報、すなわち画素データを記憶する。出力部154は、フレームメモリ153から各コンテンツの1フレームを読み出して、それらを1フレームに合成する。そのとき、出力部154は制御部140の指示に従って、表示パネル162の画面における各コンテンツの表示領域の位置とサイズとを設定する。出力部154は更に、合成されたフレームを、NTSC、PAL、又はSECAMの出力形式に変換して表示部160へ送出する。
【0023】
表示部160は、描画部150によって合成されたフレームを表示パネル162に表示させる。図1を参照するに、表示部160は表示駆動部161と表示パネル162とを含む。表示駆動部161は出力部154からの信号に従って表示パネル162を駆動する。表示パネル162は液晶表示パネル(LCD)である。表示パネル162はその他に、プラズマ表示パネル、有機EL表示パネル等、他方式のものであってもよい。
【0024】
左右信号送信部170は、表示パネル162の画面に立体視映像が表示される際、左右信号LRを赤外線又は無線でシャッター眼鏡195へ送出する。左右信号LRは、現時点で画面に表示される映像が左目用と右目用とのいずれのフレームであるかを示す。制御部161は、立体視映像のコンテンツに付随する同期信号等の制御信号や補助データから左目用のフレームと右目用のフレームとを識別することによって、フレームの切り換えを検知する。制御部161は更に左右信号送信部170に、検知されたフレームの切り換えに同期して左右信号LRを変化させる。シャッター眼鏡195は二枚の液晶表示パネル195L、195Rと左右信号受信部とを含む。各液晶表示パネル195L、195Rは左右の各レンズ部分を構成している。左右信号受信部は左右信号LRを受信し、その変化に応じて左右の液晶表示パネル195L、195Rに、光をその全体で一様に透過させ、又は遮断させる。特に、左右信号LRが左目用フレームの表示を示すとき、左目側の液晶表示パネル195Lは光を透過させ、右目側の液晶表示パネル195Rは光を遮断する。左右信号LRが右目用フレームの表示を示すときはその逆である。このように、二枚の液晶表示パネル195L、195Rはフレームの切り換えと同期して交互に光を透過させる。その結果、視聴者がシャッター眼鏡195をかけて表示パネル162の画面を見たとき、左目用フレームはその視聴者の左目だけに映り、右目用フレームはその右目だけに映る。そのとき、その視聴者には、各目に映る映像間の違いが同じ立体的物体に対する両眼視差として知覚されるので、その映像が立体的に見える。
【0025】
[GPUによる描画処理]
【0026】
GPU151による描画処理には、頂点処理(ジオメトリ処理ともいう。)と画素処理(レンダリング処理ともいう。)とがある。頂点処理では、幾何学的演算、特に座標変換により、3次元仮想空間の中に配置された各オブジェクトを2次元画面に投影したときの配置が決定される。画素処理では、頂点処理で決定された2次元画面上での各オブジェクトの配置に基づき、表示パネル162の画面に実際に表示されるべき映像を表す画素データが作成される。画素処理には、隠面消去、シェーディング、シャドウイング、テクチャ・マッピング等が含まれる。
【0027】
図2の(a)は、頂点処理を示す模式図である。頂点処理では、GPU151はまず、制御部161から、グラフィックス・コンテンツの表す各オブジェクトの頂点の座標、視聴者の視点の座標、及び視聴者の視方向を取得する。「オブジェクトの頂点」とは、オブジェクトを構成するポリゴンの頂点をいう。図2の(a)では、三角柱形状のオブジェクトOBJが4つの頂点V1、V2、V3、V4を含む。各頂点V1−V4と視点VPTとの座標はグローバル座標系(x,y,z)で表現されている。「グローバル座標系」とは、3次元仮想空間内に定義された直交座標系をいう。GPU151は次に、視聴者の視方向を利用して、グローバル座標系で表現された各座標を、視野座標系で表現された座標に変換する。「視野座標系」とは、視方向に垂直な2次元画面上で直交する2つの軸(u,v)と、その画面に垂直な軸(n)とで構成される直交座標系(u,v,n)をいう。図2の(a)では、グローバル座標系(x,y,z)から視野座標系(u,v,n)への変換によって、オブジェクトOBJが2次元画面SCN上の画像POBに投影される。u座標とv座標とは、その画面SCNにおける画像POBの各頂点の位置を定める。n軸は、その画面SCNに対する視点VPTの方向を指す。
【0028】
図2の(b)は、画素処理を示す模式図である。画素処理では、頂点処理で得られた2次元画面内でのオブジェクトの頂点V11、V12、V13、V14、及びそれらを結ぶ辺L1、L2、L3、L4、L5で区切られた範囲について、画素データが作成される。図2の(b)では、2次元画面SCN上でのオブジェクトの画像POBを構成する画素のそれぞれに対し、画素データが作成される。それらの画素データは、グラフィックス・コンテンツに対して用意されたフレームメモリ153に書き込まれる。こうして、その画像POBの各部の色が決定される。
【0029】
オブジェクトの描画処理に要するGPU151の演算量のうち、頂点処理に要する部分はオブジェクトの頂点の総数で決まり、画素処理に要する部分は、2次元画面上に投影されたオブジェクトの画像を構成する画素の総数で決まる。従って、その画像が大きいほど、画素処理に要する演算量は増大する。しかし、頂点処理に要する演算量はその画像のサイズには依存しない。
【0030】
[制御部の機能]
【0031】
図3は、制御部140によって構成される機能部のブロック図である。図3を参照するに、それらの機能部には、描画命令生成部301、特徴量決定部302、表示領域設定部303、及び負荷計測部304が含まれる。図3には示されていないが、制御部140はその他に、供給部110や左右信号送信部170を制御する機能部を含む。制御部140は、メインメモリ142に格納されたプログラムを実行することによって、各機能部を構成する。
【0032】
描画命令生成部301は、操作部120からの信号に応じて描画命令を生成し、描画部150へ送出する。描画命令生成部301は、OpenMAX、OpenGL等、標準化されたAPI(Application Program Interface)を利用して描画命令を生成する。描画命令には、コンテンツごとに異なる描画命令と、全てのコンテンツに共通の描画命令とがある。例えばユーザがリモコン194を操作して放送チャネルを選択した場合、操作部120は、その選択された放送チャネルを示す信号を描画命令生成部301へ送る。描画命令生成部301はその信号に応じて、その放送チャネルで配信される動画コンテンツの復号を指示する描画命令を生成して描画部150へ送る。その他に、ユーザがリモコン194を操作して電子番組表の表示を要求した場合、操作部120は、その表示要求を示す信号を描画命令生成部301へ送る。描画命令生成部301はその信号に応じて、電子番組表を表すグラフィックス・コンテンツのうち、現在の時刻から所定時間が経過するまでの範囲を選択し、その範囲の描画を指示する描画命令を生成して描画部150へ送る。ユーザがリモコン194を通して複数のコンテンツを選択し、それらを画面に同時に表示することを指示した場合、操作部120は、その指示を表す信号を描画命令生成部301へ送る。描画命令生成部301はその信号に応じて、表示領域設定部303から、各コンテンツの表示領域と表示の更新間隔とに関する情報を読み出す。描画命令生成部301は更に、その情報を含む描画命令を生成して描画部150へ送る。
【0033】
特徴量決定部302は、操作部120、描画部150、描画命令生成部301、及び表示領域設定部303の各状態を監視して、表示部160によって画面に表示される各コンテンツについて特徴量を決定する。「特徴量」とは、表示パネル162の画面に表示されるコンテンツの属性を表す量をいい、0から1までの数値で表される。
【0034】
図4の(a)は、代表的なコンテンツについて特徴量を示す表である。図4の(a)を参照するに、特徴量には、応答性特徴量、視認性特徴量、定常性特徴量、及び立体視可能性特徴量の4種類がある。
【0035】
(1)応答性特徴量:コンテンツの属性の一つに、表示の更新間隔がある。「表示の更新間隔」とは、制御部140がアプリケーション・プログラムに従って、描画部150にフレーム・データをリロードさせる時間間隔をいう。ゲーム・コンテンツ及びGUI用コンテンツでは、ユーザの操作に応じて表示を頻繁に変化させなければならないので、表示の更新間隔が比較的短い。一方、天気予報や日時情報を表すウェブ・コンテンツ、及びスライドショーでは、ユーザが操作しなくても、一定の時間間隔で表示が更新されるので、表示の更新間隔が比較的長い。応答性特徴量は、表示の更新間隔の長短を表す。具体的には、応答性特徴量は、画面に表示されている1つのコンテンツについて、その表示の変化を要求するユーザの操作が単位時間あたりに何回行われたかを表す。応答性特徴量が1に近いほど、表示の更新間隔が短く、表示に必要なリソースの量が多い。逆に、応答性特徴量が0に近いほど、表示の更新間隔が長く、表示に必要なリソースの量が少ない。ここで、「リソース」には、CPU141による演算量、フレームメモリ142の帯域、及びGPU151による描画量が含まれる。図4の(a)では、表示の更新間隔が比較的短いゲーム・コンテンツの応答性特徴量は0.9であり、表示の更新間隔が比較的長い天気予報のウェブ・コンテンツの応答性特徴量は0.5である。特徴量決定部302は、操作部120から送出される信号を監視して、単位時間あたりのユーザの操作回数を計測することにより、各コンテンツの応答性特徴量を決定する。
【0036】
(2)視認性特徴量:電子番組表やウェブ・コンテンツは文字情報を比較的多く含む一方、風景写真や動画コンテンツは文字情報が比較的少ない。表示が文字を含む場合、文字の視認性を高く維持するには、表示領域のサイズをある程度の大きさに確保しなければならない。その結果、表示に必要なリソースの量をある程度の大きさに確保しなければならない。視認性特徴量は、コンテンツの1フレームあたりに含まれる文字情報の割合を表す。視認性特徴量が1に近いほど文字情報が多いので、表示に必要なリソースの量が多い。逆に、視認性特徴量が0に近いほど文字情報が少ないので、表示に必要なリソースの量が少なくてもよい。図4の(a)では、天気予報のウェブ・コンテンツの視認性特徴量が0.9であり、放送番組等の動画コンテンツの視認性特徴量が0.6である。特徴量決定部302は、描画命令生成部301によって生成される描画命令のうち、文字の描画を指示する命令を数えることにより、各コンテンツの視認性特徴量を決定する。特徴量決定部302はその他に、描画部150によって描画された1フレームのデータから、文字を表す表示領域を検出して、その文字数を計測することにより、そのコンテンツの視認性特徴量を決定する。
【0037】
(3)定常性特徴量:天気予報や時刻等のコンテンツでは、同じ表示が、画面に一定時間、維持されていることが多い。そのような表示に対しては、必要なリソースの量が比較的長時間一定に維持されなければならない。定常性特徴量は、コンテンツの1つの表示が単位時間あたりに画面に維持されている時間の割合を表す。定常性特徴量が1に近いほど表示時間が長いので、所定量のリソースが長時間、その表示用に確保される。逆に、定常性特徴量が0に近いほど表示時間が短いので、所定量のリソースが短時間、その表示用に確保されればよい。図4の(a)では、天気予報のウェブ・コンテンツの定常性特徴量が1.0であり、立体視映像のコンテンツの定常性特徴量が0.1である。特徴量決定部302は、描画命令生成部301によって生成される描画命令を監視して、表示が更新される時間間隔を計測することにより、各コンテンツの定常性特徴量を決定する。
【0038】
(4)立体視可能性特徴量:立体視映像のコンテンツでは、1フレームが左目用と右目用との2枚のフレームで表現されるので、表示に必要なリソースの量が特に多い。立体視可能性特徴量は1と0とのいずれかであり、コンテンツが立体視映像のコンテンツであるか否かを表す。図4の(a)に示されているとおり、立体視可能性特徴量が1であるときは、コンテンツが立体視映像のコンテンツであることを意味し、立体視可能性特徴量が0であるときは、コンテンツが立体視映像のコンテンツではないことを意味する。特徴量決定部302は、立体視映像のコンテンツに付随する情報を供給部110から読み出して、その情報からそのコンテンツが立体視映像のコンテンツであることを識別する。それにより、特徴量決定部302は各コンテンツの立体視可能性特徴量を決定する。
【0039】
負荷計測部304は、描画部150が各コンテンツの1フレームをフレームメモリ142に描画する際の負荷を計測する。具体的には、負荷計測部304は、描画部150が各コンテンツの1フレームをフレームメモリ142に描画する度に、その描画処理に要した時間を計測し、その時間で負荷を評価する。その他に、負荷計測部304は、GPU151内の頂点処理を行うユニットのサイクル数と、画素処理を行うユニットのサイクル数とをそれぞれカウントし、それらのカウントで各処理の負荷を評価してもよい。
【0040】
負荷計測部304は更に、計測された描画部150の負荷を所定の閾値と比較する。この閾値は、表示に必要なリソースが不足し始める状態での値、特に滑らかな表示が困難になる状態での値として設定されている。描画部150が描画処理に要した時間で描画部150の負荷を評価する場合、この閾値は例えば1/30秒である。計測された負荷がその閾値に達した場合、負荷計測部304は「リソース不足」と判定する。また、計測された負荷がその閾値のある割合(例えば80%)以下である場合、負荷計測部304は「リソースに余裕がある」と判定する。それらの判定結果は表示領域設定部303に通知される。
【0041】
表示領域設定部303は、描画命令生成部301が操作部120から受けた信号に基づいて、画面に表示されるべきコンテンツを選択する。表示領域設定部303は更に、表示対象の各コンテンツについて、表示領域と表示の更新間隔とを設定する。その際、表示領域設定部303は、特徴量決定部302によって決定された各コンテンツの定常性特徴量と立体視可能性特徴量とを利用する。具体的には、表示領域設定部303は、定常性特徴量と立体視可能性特徴量とのいずれかが高いコンテンツの表示領域を優先的に設定する。設定された各コンテンツの表示領域と表示の更新間隔とに関する情報は、描画命令生成部301に伝達される。
【0042】
図4の(b)は、画面SCRに同時に表示される4つのコンテンツGCT、SLS、STR、WPGを示す模式図である。ユーザが操作部120を通して、ゲーム・コンテンツGCT、スライドショーSLS、立体視映像コンテンツSTR、及びウェブ・ページWPGの表示を要求する。ここで、立体視映像コンテンツSTRは立体視可能性特徴量が高く、ウェブ・ページWPGは定常性特徴量が高い。従って、表示領域設定部303は、まず、立体視映像コンテンツSTRの表示領域を画面SCRの左下に確保し、ウェブ・ページWPGの表示領域を画面の右下に確保する。表示領域設定部303は続いて、画面SCR内の残りの領域に、ゲーム・コンテンツGCTとスライドショーSLSとの各表示領域を配置する。
【0043】
表示領域設定部303は、画面に表示されているコンテンツのいずれかについて、負荷計測部304からリソース不足が通知されたとき、そのコンテンツについて、表示領域と表示の更新間隔とを更新する。それにより、そのコンテンツの表示領域が縮小され、表示の更新間隔が延長される。その際、表示領域設定部303は、表示領域のサイズの縮小率と表示の更新間隔の延長率とを、特徴量決定部302によって決定された各コンテンツの特徴量を利用して設定する。ここで、「表示の更新間隔の延長率」とは、変更前の更新間隔に対する変更後の更新間隔の割合をいい、「表示領域のサイズの縮小率」とは、変更前のサイズに対する変更後のサイズの割合をいう。例えば、応答性特徴量が高いコンテンツについては他のコンテンツよりも、表示の更新間隔の延長率が低く設定され、視認性特徴量が高いコンテンツについては他のコンテンツよりも、表示領域のサイズの縮小率が高く設定される。また、表示領域設定部303は、定常性特徴量と立体視可能性特徴量とのいずれかが高いコンテンツの表示領域を優先的に、更新前の位置に設定する。それにより、表示領域の更新がユーザに与える違和感を抑えることができる。更新されたコンテンツの表示領域と表示の更新間隔とに関する情報は、描画命令生成部301に伝達される。
【0044】
図4の(a)、(b)に示されている例については、表示領域と表示の更新間隔とは、以下のように更新される。表示領域設定部303は4つのコンテンツGCT、SLS、STR、WPGについて、まず、表示領域のサイズの縮小率と表示の更新間隔の延長率とを一律のデフォルト値に設定する。表示領域設定部303は次に、各コンテンツの特徴量を利用して、表示領域のサイズの縮小率と表示の更新間隔の延長率とをコンテンツ別に調節する。
【0045】
天気予報等のウェブ・ページWPGは4つのコンテンツの中で視認性特徴量が最も高い。従って、ウェブ・ページWPGについては他のコンテンツよりも、表示領域のサイズの縮小率が高く設定される。例えば、一律に設定されたデフォルトの縮小率が90%である場合を想定する。そのとき、ウェブ・ページWPGの表示領域のサイズは、デフォルトの縮小率90%に視認性特徴量0.9を乗じた値90%×0.9=81%まで縮小される。一方、立体視映像コンテンツSTRの表示領域のサイズは、デフォルトの縮小率90%に視認性特徴量0.6を乗じた値90%×0.6=54%まで縮小される。このように、視認性特徴量の高いコンテンツについては縮小率を高く設定することにより、文字を読みやすく維持したまま、表示に必要なリソースの量を確保することができる。
【0046】
ゲーム・コンテンツGCTは4つのコンテンツの中で応答性特徴量が最も高い。従って、ゲーム・コンテンツGCTについては他のコンテンツよりも、表示の更新間隔の延長率が低く設定される。例えば、一律に設定されたデフォルトの延長率が180%である場合を想定する。そのとき、ゲーム・コンテンツGCTについては、表示の更新間隔の延長率が、デフォルトの延長率180%を応答性特徴量0.9で割った値180%/0.9=200%に低く調節される。一方、天気予報等のウェブ・ページWPGについては、表示の更新間隔が、デフォルトの延長率180%を応答性特徴量0.5で割った値180%/0.5=360%に高く調節される。このように、応答性特徴量の高いコンテンツについては延長率を低く設定することにより、表示の変化を自然な状態に維持したまま、表示に必要なリソースの量を確保することができる。
【0047】
表示領域設定部303は、負荷計測部304から表示対象のコンテンツ全てについて「リソースに余裕があること」が通知されたとき、一定時間(例えば1秒間)待機する。その一定時間が経過するまで負荷計測部304からリソース不足が通知されなかった場合、表示領域設定部303は、表示中のコンテンツについて、表示領域と表示の更新間隔とを更新する。それにより、各コンテンツの表示領域が拡大され、表示の更新間隔が短縮される。その際、表示領域の拡大率は上記の縮小率の逆数に設定され、表示の更新間隔の短縮率は上記の延長率の逆数に設定される。表示領域設定部303が上記のように一定時間待機することにより、表示に利用されるリソースの量が、負荷計測部304によってリソース不足と判定される閾値付近で変動しても、表示領域設定部303によって設定される表示領域と表示の更新間隔とは安定に維持される。
【0048】
[表示装置による表示処理]
【0049】
図5は、図1に示されている表示装置100によるコンテンツの表示処理のフローチャートである。この処理は、ユーザがリモコン194の電源ボタンを押下する等、操作部120を通して表示装置100に対して起動を指示することにより、開始される。その他に、アプリケーション・プログラム又はユーザが予め、所定の時刻に表示処理を自動的に開始するように設定していてもよい。
【0050】
図5を参照するに、表示処理は、ステップS501からステップS509までのループ処理である。このループ処理は、所定の周期Tで繰り返される。
【0051】
ステップS501では、制御部140は、操作部120からの信号を監視してユーザの操作を検知し、その操作に応じて表示対象のコンテンツを選択する。例えば、ユーザがリモコン194のボタンを押下したとき、そのボタンに関連付けられた電子番組表等のコンテンツが表示対象として選択される。その他に、表示可能なコンテンツの一覧が表示パネル162の画面に表示され、ユーザによるリモコン194の操作から、その一覧の中から選択されたコンテンツが特定されてもよい。その後、処理はステップS502へ進む。
【0052】
ステップS502では、制御部140は、表示対象のコンテンツが1個以上選択されたか否かを確認する。表示対象のコンテンツが1つも選択されない場合、処理は終了する。表示対象のコンテンツが1個以上選択された場合、処理はステップS503へ進む。
【0053】
ステップS503からステップS507までは、表示対象のコンテンツ全てについてのループ処理であり、表示対象の各コンテンツについて繰り返される。
【0054】
ステップS503では、制御部140は供給部110から表示対象のコンテンツのデータを読み込む。例えば、受信部101によって放送波が受信され、又はインターネットからコンテンツがダウンロードされる。その他に、光ディスクドライブ102が光ディスク192からコンテンツを読み出してもよく、カードリーダ103がメモリカード193からコンテンツを読み出してもよい。制御部140はHDD104からコンテンツを読み込んでもよい。その後、処理はステップS504へ進む。
【0055】
ステップS504では、描画命令生成部301が表示対象のコンテンツについて描画命令を生成する。そのとき、描画命令生成部301は、現時点がそのコンテンツの表示の更新時期に達しているか否かを判断する。現時点がその更新時期に達していれば、表示を更新するための描画命令が生成される。現時点がその更新時期に達していなければ、現在の表示を維持するための描画命令が生成される。尚、この描画処理の詳細については後述する。ステップS504の後、処理はステップS505へ進む。
【0056】
ステップS505では、特徴量決定部302が表示対象のコンテンツについて、応答性特徴量、視認性特徴量、定常性特徴量、及び立体視可能性特徴量を決定する。その後、処理はステップS506へ進む。
【0057】
ステップS506では、描画部150が、ステップS504で生成された描画命令に従い、ステップS503で読み込まれた表示対象のコンテンツから1フレームを抽出して、フレームメモリ142に描画する。描画命令が、表示を更新するためのものである場合、新たなフレームがフレームメモリ142に描画される。描画命令が現在の表示を維持するためのものである場合、既にフレームメモリ142に描画されているフレームがそのまま維持される。その後、処理はステップS507へ進む。
【0058】
ステップS507では、負荷計測部304が、ステップS506における描画部150の負荷を計測する。その後、ステップS503からステップS507までのループ処理が、表示対象のコンテンツ全てについて繰り返されていれば、処理はステップS508へ進む。
【0059】
ステップS508では、表示対象のコンテンツが全て、フレームメモリ142に描画されている。表示領域設定部303は、定常性特徴量と立体視可能性特徴量とを利用して、表示対象のコンテンツの表示領域を表示パネル162の画面内に配置し、各表示領域に関する情報を描画命令生成部301に伝達する。描画命令生成部301はその情報に基づいて、表示対象のコンテンツを1フレームに合成するための描画命令を生成して描画部150へ送る。描画部150はその描画命令に応じて、フレームメモリ142に描画されている各コンテンツのフレームを1フレームに合成して、表示部160へ送る。表示部160は、そのフレームの表す画像を表示パネル162の画面に、所定のフレームレートで表示する。その後、処理はステップS509へ進む。
【0060】
ステップS509では、表示領域設定部303が、負荷計測部304からの通知に応じて、表示対象のコンテンツの表示領域のサイズと位置、及び表示の更新間隔を更新するか否かを判断する。負荷計測部304によっていずれかのコンテンツについてリソース不足が通知された場合、表示領域設定部303は、特徴量決定部302によって決定されたそのコンテンツの特徴量を利用して、そのコンテンツの表示領域のサイズを縮小し、表示の更新間隔を延長する。一方、負荷計測部304によっていずれのコンテンツについてもリソースに余裕があることが通知された場合、表示領域設定部303は、まず一定時間待機する。その一定時間が経過するまでリソース不足が通知されなければ、表示領域設定部303は、各コンテンツの表示領域のサイズを拡大し、表示の更新間隔を短縮する。尚、ステップS509の詳細については後述する。その後、ステップS501の開始から所定の周期Tが経過したとき、処理はステップS501から繰り返される。
【0061】
[描画命令の生成処理]
【0062】
図6は、図5に示されているステップS504の詳細なフローチャートである。描画命令生成部301は、表示対象のコンテンツを1つ指定される度に、以下のステップS601からステップS606までを実行する。
【0063】
ステップS601では、描画命令生成部301は、表示領域設定部303にアクセスして、表示対象のコンテンツの表示領域と表示の更新間隔とが既に設定されているか否かを確認する。それらがまだ設定されていなければ、処理はステップS602へ進み、既に設定されていれば、処理はステップS603へ進む。表示対象のコンテンツを最初に描画するとき、そのコンテンツの表示領域と表示の更新間隔とはまだ設定されていないので、処理は常にステップS602へ進む。
【0064】
ステップS602では、表示対象のコンテンツの表示領域と表示の更新間隔とはまだ設定されていない。従って、描画命令生成部301は、そのコンテンツの表示領域と表示の更新間隔とを仮設定する。例えば、そのコンテンツ自身が規定する表示領域と表示の更新間隔とがそのまま設定される。その他に、描画命令生成部301に設定された固定値が、そのコンテンツの表示領域と表示の更新間隔として設定されてもよい。また、描画命令生成部301は、表示パネル162の画面を表示対象のコンテンツの総数で等分配して、各領域を1つのコンテンツの表示領域として仮設定してもよい。尚、その場合、仮設定された表示領域が他のコンテンツの表示領域と重なる場合があり得る。しかし、図5に示されているステップS508で表示領域設定部303が表示対象のコンテンツの表示領域を再配置するので、コンテンツ間での表示領域の重なりは解消される。ステップS602の後、処理はステップS603へ進む。
【0065】
ステップS603では、描画命令生成部301は現在の時刻を取得して、表示対象のコンテンツの表示を前回更新した時刻(以下、表示更新時刻という。)と現在の時刻との間の差を計算する。その差は、前回の表示更新時刻から現在の時刻までの経過時間を表す。尚、表示対象のコンテンツを最初に表示する場合、前回の表示更新時刻は存在しないので、経過時間は無限大に設定される。その後、処理はステップS604へ進む。
【0066】
ステップS604では、描画命令生成部301は、ステップS603で計算された差を、表示対象のコンテンツの表示の更新間隔と比較する。その差がその更新間隔以上であれば、処理はステップS605へ進み、その差がその更新間隔未満であれば、処理はステップS606へ進む。
【0067】
ステップS605では、ステップS603で計算された差が表示の更新間隔以上であるので、現時点が既に表示の更新時期に達している。従って、描画命令生成部301は、表示を更新するための描画命令を生成する。その後、処理は、図5に示されているステップS505へ進む。
【0068】
ステップS606では、ステップS603で計算された差が表示の更新間隔未満であるので、現時点がまだ表示の更新時期に達していない。従って、描画命令生成部301は、前回の表示を維持するための描画命令を生成する。その後、処理は、図5に示されているステップS505へ進む。
【0069】
[表示領域と表示の更新間隔との更新処理]
【0070】
図7は、図5に示されているステップS509の詳細なフローチャートである。図7を参照するに、ステップS509はステップS701とステップS702とから成る。ステップS701では、表示領域設定部303は、表示対象の各コンテンツについて、表示に利用されるリソースの量を確認する。表示領域設定部303は更に、いずれかのコンテンツについてリソースに不足が生じている場合、そのコンテンツについて、表示領域のサイズと表示の更新間隔とを更新する。その後、ステップS702では、表示領域設定部303は、表示対象の各コンテンツの表示領域の位置を更新する。その後、処理は、図5に示されているステップS501から繰り返される。
【0071】
図8、9は、図7に示されているステップS701の詳細なフローチャートである。
【0072】
ステップS801では、表示領域設定部303は、表示対象の各コンテンツについて、負荷計測部304からリソース不足が通知されているか否かを確認する。いずれかのコンテンツについてリソース不足が通知されている場合、処理はステップS802へ進む。いずれのコンテンツについてもリソース不足が通知されていない場合、処理はステップS807へ進む。
【0073】
ステップS802では、表示領域設定部303が、まず、特徴量決定部302から表示対象のコンテンツの視認性特徴量を読み出す。表示領域設定部303は次に、その視認性特徴量をデフォルトの縮小率に乗じることによって、表示対象のコンテンツについて、表示領域のサイズの縮小率を計算する。その後、処理はステップS803へ進む。
【0074】
ステップS803では、表示領域設定部303が、まず、特徴量決定部302から表示対象のコンテンツの応答性特徴量を読み出す。表示領域設定部303は次に、その応答性特徴量でデフォルトの延長率を割ることによって、表示対象のコンテンツについて、表示の更新間隔の延長率を計算する。その後、処理はステップS804へ進む。
【0075】
ステップS804では、表示領域設定部303は、表示対象のコンテンツの中から、表示に利用されるリソースの量が最も多いコンテンツを選択する。具体的には、表示領域設定部303は、表示対象のコンテンツの中から、負荷計測部304によって計測された描画部150による描画処理の負荷が最も大きいコンテンツを選択する。その後、処理はステップS805へ進む。
【0076】
ステップS805では、表示領域設定部303は、ステップS804で選択されたコンテンツについて、ステップS802で計算された縮小率を利用して、表示領域のサイズを縮小する。その後、処理はステップS806へ進む。
【0077】
ステップS806では、表示領域設定部303は、ステップS804で選択されたコンテンツについて、ステップS803で計算された延長率を利用して、表示の更新間隔を延長する。その後、処理は、図7に示されているステップS702へ進む。
【0078】
ステップS807では、表示領域設定部303は、表示対象の各コンテンツについて、負荷計測部304から「リソースに余裕があること」が通知されているか否かを確認する。いずれのコンテンツについても「リソースに余裕があること」が通知されている場合、処理はステップS808へ進む。いずれかのコンテンツについて「リソースに余裕があること」が通知されていない場合、処理は、図7に示されているステップS702へ進む。
【0079】
ステップS808では、表示領域設定部303は、表示対象のコンテンツ全てについてリソースに余裕がある状態が一定時間継続しているか否かを判断する。その状態が一定時間継続している場合、処理はステップS809へ進む。一定時間が経過するまでに、いずれかのコンテンツについて、負荷計測部304から「リソースに余裕があること」が通知されなくなった場合、処理は、図7に示されているステップS702へ進む。
【0080】
ステップS809では、表示領域設定部303は、過去にステップS804で選択されたコンテンツについて、ステップS802で計算された縮小率の逆数を利用して、表示領域のサイズを拡大する。尚、過去にステップS804が一度も実行されていない場合、いずれのコンテンツについても表示領域のサイズは元のままで維持される。その後、処理はステップS810へ進む。
【0081】
ステップS810では、表示領域設定部303は、過去にステップS804で選択されたコンテンツについて、ステップS803で計算された延長率の逆数を利用して、表示の更新間隔を短縮する。尚、過去にステップS804が一度も実行されていない場合、いずれのコンテンツについても表示の更新間隔は元のままで維持される。その後、処理は、図7に示されているステップS702へ進む。
【0082】
図5に示されているステップS501からステップS509までのループ処理が周期Tで繰り返されることにより、ステップS801が周期Tで繰り返される。従って、いずれかのコンテンツについてリソースの量が一旦不足した場合、その不足が解消されるまで、ステップS802からステップS806までの処理が周期Tで繰り返される。それにより、画面に同時に表示される各コンテンツの表示領域のサイズと表示の更新間隔とが、各コンテンツの属性に合わせて最適化される。その結果、各コンテンツの表示を高画質に維持したまま、表示に利用されるリソースの量を利用可能な限度以下に確実に維持することができる。
【0083】
図10は、図7に示されているステップS702の詳細なフローチャートである。
【0084】
ステップS901では、表示領域設定部303は、表示対象の各コンテンツについて、表示の優先度を初期化する。「表示の優先度」とは、コンテンツの表示領域を画面に配置する際の優先順位をいう。その初期化後、処理はステップS902へ進む。
【0085】
ステップS902からステップS905までのループ処理は、表示対象のコンテンツ全てについて繰り返される。
【0086】
ステップS902では、表示領域設定部303は特徴量決定部302から、表示対象の1つのコンテンツの立体視可能性特徴量を読み出す。その立体視可能性特徴量が1である場合、処理はステップS903へ進み、0である場合、処理はステップS904へ進む。
【0087】
ステップS903では、表示領域設定部303は、立体視可能性特徴量が1であるコンテンツについて、表示の優先度を最高値に設定する。その後、処理はステップS902から繰り返される。
【0088】
ステップS904では、表示領域設定部303は特徴量決定部302から、表示対象のコンテンツのうち、その立体視可能性特徴量が0であるものの定常性特徴量を読み出す。表示領域設定部303は更に、その定常性特徴量を所定値(例えば0.5)と比較する。その定常性特徴量がその所定値以上である場合、処理はステップS905へ進み、その所定値未満である場合、処理はステップS902から繰り返される。
【0089】
ステップS905では、表示領域設定部303は、定常性特徴量が上記の所定値以上であるコンテンツについて、表示の優先度を初期値よりも高い値に設定する。その優先度は、立体視可能性特徴量が1であるコンテンツの優先度に次ぐ値に設定される。その後、処理はステップS902から繰り返される。
【0090】
ステップS902からステップS905までのループ処理を繰り返すことにより、表示対象のコンテンツ全てについて表示の優先度が設定される。
【0091】
ステップS906では、表示領域設定部303は、表示の優先度の高いコンテンツから順に、表示領域を画面の中に配置する。具体的には、まず、立体視可能性特徴量が1であるコンテンツの表示領域が画面の中に配置される。特に、その表示領域の一端が画面の周辺部に位置付けられる。次に、定常性特徴量の高いコンテンツの表示領域が画面の中に配置される。特に、その表示領域は、初期の表示領域と同じ位置に配置される。その後、画面の残りの領域に他のコンテンツの表示領域が、互いに重ならないように配置される。表示の優先度が同じコンテンツが複数ある場合、表示領域のサイズが大きいものから順に配置される。その後、処理は、図5に示されているステップS501から繰り返される。
【0092】
ステップS702により、画面における各コンテンツの表示領域の配置が自動的に調節される。それにより、ステップS701において、表示対象のコンテンツのいずれかについて表示領域のサイズが変更された場合でも、ユーザに煩雑な操作をさせることなく、コンテンツの表示領域の配置をユーザに違和感を与えないものにすることができる。特に、立体視映像が、他のコンテンツの表示領域から離れた位置に表示されるので、他のコンテンツを裸眼で視聴する者がその立体視映像から受ける不快感を軽減することができる。また、定常性特徴量の高いコンテンツの表示領域が画面内の一定の位置に維持されるので、そのコンテンツの表示が見やすく維持される。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は表示装置に関し、上記のとおり、複数のコンテンツの各属性に合わせて表示領域が設定される。このように、本発明は明らかに産業上利用可能である。
【符号の説明】
【0094】
110 供給部
120 操作部
140 制御部
150 描画部
301 描画命令生成部
302 特徴量決定部
303 表示領域設定部
304 負荷計測部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコンテンツを1つの画面に同時に表示する表示装置であって、
前記複数のコンテンツの表示要求をユーザから受け付ける操作部、
前記表示要求に応じて、前記複数のコンテンツを供給する供給部、
前記表示要求に応じて、前記複数のコンテンツのそれぞれに割り当てられるべき前記画面内の表示領域を設定する制御部、
フレームメモリを含み、前記複数のコンテンツに割り当てられた表示領域に合わせて、前記複数のコンテンツを前記フレームメモリに描画する描画部、及び、
前記フレームメモリのデータに従って映像を前記画面に表示する表示部、
を備え、
前記制御部は、前記複数のコンテンツの少なくとも1つについて、当該コンテンツの属性に合わせて、表示領域のサイズの縮小と表示の更新間隔の延長との少なくともいずれかを行う、
表示装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記複数のコンテンツのそれぞれについて、当該コンテンツの属性を表す特徴量を決定する特徴量決定部、及び、
前記複数のコンテンツのそれぞれについて、前記特徴量決定部によって決定された特徴量に基づいて、表示領域のサイズの縮小率と表示の更新間隔の延長率との少なくともいずれかを決定する表示領域設定部、
を含む、
請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記複数のコンテンツのそれぞれを前記フレームメモリに描画する際の前記描画部の負荷を計測する負荷計測部、
を更に含み、
前記表示領域設定部は、前記複数のコンテンツを前記画面へ表示するのに利用可能なリソースの量が必要な量よりも少ないか否かを前記描画部の負荷から判断し、前記利用可能なリソースの量が前記必要な量よりも少ない場合、前記描画部に、前記複数のコンテンツのうち、少なくともいずれかの表示領域のサイズを縮小させ、又は表示の更新間隔を延長させる、
請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記表示領域設定部は、所定期間、前記利用可能なリソースの量が前記必要な量よりも多く維持された場合、前記描画部に、前記複数のコンテンツのうち、少なくともいずれかの表示領域のサイズを拡大させ、又は表示の更新間隔を短縮させる、
請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
前記特徴量は、ユーザ操作に応じてコンテンツの表示を変化させる頻度を表す応答性特徴量を含み、
前記表示領域設定部は、前記応答性特徴量の高いコンテンツに対しては他のコンテンツよりも、表示の更新間隔の延長率を低く設定する、
請求項2に記載の表示装置。
【請求項6】
前記特徴量は、1つのコンテンツに含まれる文字情報の割合を表す視認性特徴量を含み、
前記表示領域設定部は、前記視認性特徴量の高いコンテンツについては他のコンテンツよりも、表示領域のサイズの縮小率を高く設定する、
請求項2に記載の表示装置。
【請求項7】
前記特徴量は、単位時間が経過する間に1つのコンテンツが前記画面に表示される時間を表す定常性特徴量を含み、
前記制御部は、前記定常性特徴量の高いコンテンツの表示領域を前記画面内の所定位置に設定する、
請求項2に記載の表示装置。
【請求項8】
前記特徴量は、コンテンツが立体視映像を表す場合に高く設定される立体視可能性特徴量を含み、
前記制御部は、前記立体視可能性特徴量の高いコンテンツの表示領域を前記画面内の所定位置に設定する、
請求項2に記載の表示装置。
【請求項9】
複数のコンテンツを1つの画面に同時に表示する方法であって、
前記複数のコンテンツの表示要求をユーザから受け付けるステップ、
前記表示要求に応じて、前記複数のコンテンツを供給するステップ、
前記表示要求に応じて、前記複数のコンテンツのそれぞれに割り当てられるべき前記画面内の表示領域を設定するステップ、
前記複数のコンテンツに割り当てられた表示領域に合わせて、前記複数のコンテンツをフレームメモリに描画するステップ、及び、
前記フレームメモリのデータに従って映像を前記画面に表示するステップ、
を備え、
前記表示領域を設定するステップでは、前記複数のコンテンツの少なくとも1つについて、当該コンテンツの属性に合わせて、表示領域のサイズの縮小と表示の更新間隔の延長との少なくともいずれかを行う、
表示方法。
【請求項10】
コンピュータにより、複数のコンテンツを1つの画面に同時に表示させるためのプログラムであって、
前記複数のコンテンツの表示要求をユーザから受け付けるステップ、
前記表示要求に応じて、前記複数のコンテンツを供給するステップ、
前記表示要求に応じて、前記複数のコンテンツのそれぞれに割り当てられるべき前記画面内の表示領域を設定するステップ、
前記複数のコンテンツに割り当てられた表示領域に合わせて、前記複数のコンテンツをフレームメモリに描画するステップ、及び、
前記フレームメモリのデータに従って映像を前記画面に表示するステップ、
を前記コンピュータに実行させ、
前記表示領域を設定するステップでは、前記複数のコンテンツの少なくとも1つについて、当該コンテンツの属性に合わせて、表示領域のサイズの縮小と表示の更新間隔の延長との少なくともいずれかを行う、
プログラム。
【請求項11】
コンピュータにより、複数のコンテンツを1つの画面に同時に表示させるためのプログラムであって、
前記複数のコンテンツの表示要求をユーザから受け付けるステップ、
前記表示要求に応じて、前記複数のコンテンツを供給するステップ、
前記表示要求に応じて、前記複数のコンテンツのそれぞれに割り当てられるべき前記画面内の表示領域を設定するステップ、
前記複数のコンテンツに割り当てられた表示領域に合わせて、前記複数のコンテンツをフレームメモリに描画するステップ、及び、
前記フレームメモリのデータに従って映像を前記画面に表示するステップ、
を前記コンピュータに実行させ、
前記表示領域を設定するステップでは、前記複数のコンテンツの少なくとも1つについて、当該コンテンツの属性に合わせて、表示領域のサイズの縮小と表示の更新間隔の延長との少なくともいずれかを行う、
プログラムを記録した、コンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項12】
複数のコンテンツを1つの画面に同時に表示する表示装置に搭載される集積回路であって、
前記複数のコンテンツの表示要求をユーザから受け付ける操作部、
前記表示要求に応じて、前記複数のコンテンツのそれぞれに割り当てられるべき前記画面内の表示領域を設定する制御部、及び、
前記複数のコンテンツに割り当てられた表示領域に合わせて、前記表示装置内のフレームメモリに前記複数のコンテンツを描画する描画部、
を備え、
前記制御部は、前記複数のコンテンツの少なくとも1つについて、当該コンテンツの属性に合わせて、表示領域のサイズの縮小と表示の更新間隔の延長との少なくともいずれかを行う、
集積回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−3593(P2013−3593A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130468(P2011−130468)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】