説明

表示装置および時計

【課題】半円形または扇形の表示領域を持つ指針表示では、復針時の指針移動に時間がかかってしまうとともに、単位目盛あたりの角度が小さくなるため、目盛が読みとりづらく、また指針の動きが小さくなってしまう
【解決手段】表示領域の往路方向および復路方向の両方に目盛を刻むと共に、往路の目盛と復路の目盛をずらして配置し、単一の指針で指針の往路方向の移動だけでなく復路方向の移動でも目盛を指し示す。急速な復針動作が不要で、かつ単位目盛あたりの移動量が大きく見やすい情報表示装置を提供することができる

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステップモータ等の駆動手段によって駆動される指針等を備え、表示部に記されたシンボル等を指し示すことにより情報を表示する、表示装置および時計に関する。
【0002】
特に、桁上がりを伴う連続量を表示する表示装置に関する。
【背景技術】
【0003】
従来より、アナログ式の時計やメータ計器などのように、稼働する指針、あるいはシンボル図形等を表記した表示板などと、表示部に記された目盛やシンボル等によって、時刻などの情報を表示する表示装置があることは知られている。
【0004】
これらには、一般的なアナログ式時計で見られるような円形の表示領域を指し示すもののほかに、メータ計器などで見られるような半円形または扇形の表示領域を指し示す所謂「レトログラード」式表示がある。
【0005】
近年では、時刻や日付、曜日、クロノグラフの計時情報等を所謂「レトログラード」式表示で表示するアナログ式時計が流行している。
【0006】
所謂「レトログラード」式表示で、時刻や日付等の時間量を示す場合、表示領域の一端(始点)から他端(終点)に向かって徐々にその指針が移動し、指針が終点まで到達し表示値の桁上がり(60秒,60分,24時間,31日など)が発生した場合は、指針が速やかに始点まで戻る表示が一般的である。
【0007】
このような「レトログラード」式表示を、クロノグラフの1/10秒、1/20、1/100秒表示に適用した時計も、特許文献1〜3に示すように公知である。
【0008】
たとえば特許文献1には、扇型のクロノグラフ1/10秒表示領域を持ち、クロノグラフ計時中、クロノグラフ1/10秒カウンタの値に従い、クロノグラフ1/10秒針を0/10秒から9/10秒までは1/10秒毎に1目盛分正転で駆動し、9/10秒から10/10秒、すなわち0/10秒までの間に9目盛分逆転で駆動することで、クロノグラフ1/10秒を扇型の表示領域でリアルタイムに表示する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許2542939号公報(第3図)
【特許文献2】特開2007−256066号公報(図5)
【特許文献3】特表2007−522478号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、時間などの桁上がりを伴う連続量を表示する場合、単位時間当たりの移動量は通常は僅かであるため、即座に新たな指示位置へと指針またはシンボル等を移動することができるが、桁上がりの発生時には移動量が非常に大きくなり、移動に時間がかかるという問題がある。
【0011】
上記問題を、図面を用いて説明する。図4は、特許文献1に記載のクロノグラフ時計のクロノグラフ1/10秒表示をモディファイしたものである。
【0012】
図4(A)の0/10秒の状態から図4(B)左に示す9/10秒の状態の状態までは、1/10秒毎に1目盛分(1ステップ)進めるだけでよく、特に問題は無い。しかし、図4(B)に示すクロノグラフ1/10秒が9/10秒から10/10秒に桁上げ、すなわち表示としては0/10秒となるときに、クロノグラフ1/10秒を示す指針を1/10秒の間に9目盛分、つまり90Hzの速度で逆転させねばならず、32Hz程度の逆転速度が限界である一般的な通常の時計用電磁変換手段では実現が困難である。
【0013】
このため、特許文献2においては、クロノグラフ計時中のクロノグラフ1/20秒指針駆動を、所謂「デモ運針」としてクロノグラフ計時値と指針の指示値を同期させず、計時停止時にクロノグラフ計時値と指針の指示値を同期させる技術が開示されている。
【0014】
しかし、特許文献2の技術では、クロノグラフ計時中はクロノグラフ計時値と指針の指示値が同期していないため、計時中の経過時間の読み取りが困難であるという課題がある。
【0015】
特許文献3に記載のクロノグラフ時計は、クロノグラフ1/10秒、1/100秒の「レトログラード」式表示にあたり、ストップ操作時以外は停止していて、ストップ操作時にクロノグラフ1/10秒、1/100秒を表示することで上記問題を回避している。
しかし、特許文献3の技術では、普段クロノグラフ1/10秒、1/100秒の指針が停止しているため、時計としての演出性や面白みにかける欠点があった。
【0016】
また、上記特許文献の技術に共通するが、通常円形の表示領域で示す情報を半円形または扇形の表示領域で指し示す場合、円形の表示領域に比べ単位目盛あたりの角度が小さくなるため、目盛が読みとりづらく、また指針の動きが小さくなってしまうため、演出性や面白みにかける表示となってしまう。
【0017】
本発明の目的は、上記問題点を解決し、稼働する指針、あるいは表示板などに表記されたシンボル図形等と、表示部に記された目盛やシンボル等によって、時刻などの情報を表示する情報表示装置、とくに時間などの桁上がりを伴う連続量を表示する表示装置において、単位目盛あたりの指針等の移動量が大きく変化しないようすることで、リアルタイムな表示を可能とすると共に、単位目盛あたりの移動量が大きく演出性の高い表示を実現する表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するために、本発明の表示装置は下記のような構成を有する。
【0019】
本発明の表示装置は、複数の単位区間で形成される所定区間を1周期とし、該1周期が、さらに少なくとも2つ以上の小周期に分割され、各小周期単位で直線状、もしくは円弧状に表示される表示装置であって、前記単位区間を示すための指標と、該指標を指示する指示手段を有し、前記各小周期に対応する指標は、前記指示手段の進行方向において、前記単位区間の非自然数倍のオフセットを持って配置されていることを特徴としている。
【0020】
また本発明の表示装置は、前記指標が、前記複数の小周期のうちの第1の小周期に対応し、直線状、もしくは円弧状に配置される第1の指標群と、前記複数の小周期のうちの第2の小周期に対応し、直線状、もしくは円弧状に配置される第2の指標群と、を含み、さらに、前記指示手段が、該第1の指標群と該第2の指標群を指示する単一の指示手段であり、該指示手段は、前記第1の小周期では前記第1の指標群を指示し、前記第2の小周期では前記第2の指標群を指示することを特徴としている。
【0021】
また、前記オフセット(ズレ量)は、前記単位区間の半分であることを特徴としている。
【0022】
以上より本発明の表示装置は、1周期の表示を2つまたはそれ以上に分割して表示することで、単位区間を示すための指標を、分割しない従来のものよりも大きく表示できると共に、指標間の間隔を大きく取ることができ、指標から指標へと移動する際の指示手段の移動量を大きくすることができるため、演出性の高い表示を実現することが出来る。
【0023】
また、本発明の表示装置は、前記第1の指標群と前記第2の指標群とが、交互にずれた形で配置されることとなり、指示手段が第1の指標群を指しているのか、第2の指標群を指しているのかを、明確に判断できるようになっている。
【0024】
また本発明の表示装置は、前記第1の指標群と前記第2の指標群は、外観上の差異を有することを特徴とする。
【0025】
これにより本発明の表示装置は、前記第1の指標群と前記第2の指標群を、さらに明確に判断できるようになっている。
【0026】
また本発明の表示装置は、前記指示手段に、前記第1の指標群を指示する第1指示部と、前記第2の指標群を指示する第2指示部を有することを特徴としている。
【0027】
これにより本発明の表示装置は、前記指示手段が前記第1の指標群と前記第2の指標群のどちらを指示しているかを、さらに明確に判断できるようになっている。
【0028】
また本発明の表示装置は、前記第1の小周期と前記第2の小周期の区切りとなる区間に対応する指標が、前記第1の指標群と前記第2の指標群の、前記指示手段の進行方向における両端に配置されることを特徴としている。
【0029】
また本発明の表示装置は、前記区切り指標が、前記第1の指標群や前記第2の指標群に対して、外観上の差異を有することを特徴としている。
【0030】
これにより本発明の表示装置は、1周期の始点または終点、および1周期の半分が区切り指標に割り当てられ、それらを指示する場合に指示領域の端部を表示することとなり、利用者が1周期の経過をよりわかりやすく判断することができるようになっている。また、区切り指標はフォントや色、指標の大きさなどが他の指標とは異なっているため、よりわかりやすい表示を行うことが可能となる。
【0031】
また本発明の表示装置は、前記第1の指標群や前記第2の指標群に付随して配置され、前記第1の小周期や前記第2の小周期における前記指示手段の進行方向を示す図形を有することを特徴としている。
【0032】
これにより本発明の表示装置は、指示手段の指す指標を読み取る際に、指示手段の進行方向に応じた図形に付随した指標を読み取ればよく、指示手段の指す指標をよりわかりやすく読み取ることができるようになっている。
【0033】
また本発明の表示装置は、前記小周期を折り返し表示することで前記1周期を表示することを特徴としている。
【0034】
これにより本発明の表示装置は、1周期を示す場合に表示領域を広げることなくその1周期を2つの小周期に分割することができ、よりわかりやすい表示が可能となるとともに
、指示手段の単位区間あたりの駆動量を少なくすることができるため、指示手段の駆動に特殊な手段を使わずに表示することが可能となる。
【0035】
また本発明の表示装置を備えたクロノグラフ時計は、前記単位が、1/(10^n)秒(n:自然数)であり、前記1周期が前記単位の10倍であり、前記小周期が、前記第1の小周期や前記第2の小周期の2個であることを特徴としている。
【0036】
これにより本発明の表示装置を備えたクロノグラフ時計は、1/10秒などの表示を行うための指標を、従来のものよりも大きく表示できると共に、指標間の間隔を大きく取ることができるため、クロノグラフの計測時間経過に伴う指示手段の移動量を大きくすることができるため、演出性の高いクロノグラフ表示を実現することが出来るとともに、利用者がクロノグラフ時間の経過をよりわかりやすく、視覚的に判断することができるようになっている。
【0037】
また本発明の表示装置を備えた日付表示付時計は、前記単位が1日であり、前記1周期が31日であることを特徴としている。
【0038】
これにより本発明の表示装置を備えた日付表示付時計は、日付を表すための指標を従来のものよりも大きく表示できると共に、指標間の間隔を大きく取ることができるため、演出性の高い日付表示を実現することが出来るとともに、利用者が現在の日付をよりわかりやすく、視覚的に判断することができるようになっている。
【0039】
また本発明の表示装置を備えた月齢表示付時計は、前記1周期が月齢周期であり、前記指標が、月齢周期中の月の形状であることを特徴としている。
【0040】
これにより本発明の表示装置を備えた月齢表示付時計は、月齢を表すための指標を従来のものよりも大きく表示できると共に、指標間の間隔を大きく取ることができるため、演出性の高い月齢表示を実現することが出来るとともに、利用者が月齢をよりわかりやすく、視覚的に判断することができるようになっている。
【発明の効果】
【0041】
上記のように、本発明によれば、稼働する指針、あるいは表示板などに表記されたシンボル図形等と、表示部に期された目盛やシンボル等によって、時刻などの情報を表示する表示装置、とくに時間などの桁上がりを伴う連続量を表示する表示装置において、単位指標あたりの移動量が大きく取れて演出性の高い表示を実現する表示装置を提供することが可能となるとともに、単位指標当たりの移動量が変化せず、リアルタイムな表示を可能とする表示装置を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第1の実施の形態における電子時計1の形態を示す概略図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態における電子時計1の、1/10秒表示部5の形態及び動作を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態における電子時計1の、1/10秒表示目盛51の配置を示した図である。
【図4】従来の電子時計の1/10秒表示の形態及び動作を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態の第1の変形例における電子時計1の、1/10秒表示部5の形態を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態の第2の変形例における電子時計1の、1/10秒表示部5の形態を示す図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態における電子時計1の形態を示す概略図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態における電子時計1の、日付表示部7の形態及び動作を示す図である。
【図9】本発明の第3の実施の形態における電子時計1の形態を示す概略図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態における電子時計1の、月齢表示部8の形態及び動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
〔第1の実施の形態〕
以下に、本発明の第1の実施の形態に係わる電子時計1を図1から図1から3に基づいて説明する。
第1の実施形態は本発明をクロノグラフ機能付き時計に適用したものである。
【0044】
なお、本第1の実施の形態は、本発明の基本実施形態を示すものである。
図1は、本発明の第1の実施の形態における電子時計1の形態を示す概略図であり、
図2は、本発明の第1の実施の形態における電子時計1の、1/10秒表示部5の形態及び動作を示す図であり、
図3は、本発明の第1の実施の形態における電子時計1の、1/10秒表示目盛51と指針52が運針するステップ数との関係を示す図表である。
【0045】
図1に示す電子時計1において、21、22は時計を操作するための操作部材であり、クロノグラフ機能の操作に使用する。3は、クロノグラフ計時値を表示する指針表示部である。指針表示部3は、計測したクロノグラフ秒を表示する秒表示指針41と、計測した分を表示するクロノグラフ分表示指針42と、計測したクロノグラフ1/10秒を表示するクロノグラフ1/10秒表示部5により構成される。
【0046】
さらに、クロノグラフ1/10秒表示部5は、扇型の1/10秒表示目盛51と、扇型の表示領域を移動し計測した1/10秒を表示する1/10秒表示指針52とで構成される。
【0047】
なお、クロノグラフ1/10秒表示部5以外の構成要素は本発明を構成しないので、以下では説明を大幅に簡略化する。
【0048】
また、各指針の駆動には一般的な時計用ステップモータが使用され、その制御には一般的の時計用ICが使用されているため、システム構成の詳細記載も省略する。
【0049】
クロノグラフ1/10秒表示部5では、
表示単位区間を1/10秒、1周期を1秒とし、この1周期を2つの小周期にわけ、
0/10〜4/10秒を第1の小周期、5/10〜9/10秒を第2の小周期とし、
第1の小周期を往路、第2の小周期を復路とする扇形表示を実施する。
【0050】
なお、上記第1の小周期と第2の小周期の切り分けは一例であり、例えば、
1/10〜5/10秒を第1の小周期、6/10〜0/10秒を第2の小周期としても良い(図6参照)。
【0051】
上記表示を行うに当たり、1/10秒表示目盛51は、
上記第1の小周期を表示するための往路指標群511と、
上記第2の小周期を表示するための復路指標群512と、を有する。
また、往路と復路の切り替わりに相当する「0」と「5」については、往路指標群511、復路指標群512とは別に、「0」表示513、「5」表示514を個別表示している。
なお、「0」表示513を往路指標群511の一部、「5」表示514を復路指標群512の一部として表示しても良い。(図6参照)。
【0052】
図2(A)に示すように、往路指標群511と復路指標群512とは、1/10秒表示指針52の進行方向で、単位区間の半分ずれて交互に配置されている。例えば、往路指標群511の「1」と「2」の間に、復路指標群512の「9」が配置されている。これにより、1/10秒表示指針52は、往路指標群511と復路指標群512の指標を同時に指示することがないので、使用者が往路と復路を誤認することが無い。
【0053】
なお、両指標のズレ量は単位区間の半分でなくてもよく、往路と復路を誤認することが無いレベルで、単位区間の非自然数(小数点以下を有する正数)倍であればよい。ただし、単位区間の半分のズレ量が最も視認しやすく、配置も容易である。
【0054】
また、往路指標群511と復路指標群512はフォントや色などで外観上の差異をつけても良い。これにより、往路と復路の差がより明確になる。
【0055】
さらに、往路指標群511と復路指標群512には、1/10秒表示指針52の進行方向を示す図形を付与しても良い。図2(A)では、矢印の形状をした往路シンボル5111及び復路シンボル5121がそれにあたる。これにより、往路と復路の進行方向がより明確になる。
【0056】
さらに、始点に配置された「0」表示513と終点に配置された「5」表示514は他の目盛よりも大きなフォントとなっている。
【0057】
これにより、両指標が折り返し点であることが明確になっている。なお、大きさの他、色やフォントなどの外観上の差異をつけても良い。
【0058】
図3はクロノグラフ1/10秒表示目盛51の配置と1/10秒表示指針52の動作を、1/10秒表示指針52のステップ数によって表した図である。
ステップ数は始点を0として、時計回りに増加するように振られている。
【0059】
0/10〜9/10秒の表示に使用する総ステップ数は、図4に示す従来技術と同じ9ステップであるが、「0」と「1」、「5」と「6」の間は1ステップ、それ以外の区間は2ステップとなるように配置されていて、往路指標群511と復路指標群512のズレ量は、最小区間(2ステップ)の半分(1ステップ)となっている。
【0060】
また、往路と復路では、1/10秒表示指針52の運針形態は、進行方向を除き全く同じ運針形態である。
【0061】
上記の配置により、1/10秒で2ステップ運針させればよく、ステップモータは正逆とも20Hzで運針出来ればよいので、図4の従来技術と異なり、一般的な時計用ステップモータを使用しても、1/10秒表示をリアルタイムで扇表示可能となる。
【0062】
また、指標間の間隔も、図4に示す従来技術より広く出来るため、指標自体も大きくすることができ、視認性を向上させることが出来る。
【0063】
図2(A)は、本実施形態の1/10秒表示部5が2/10秒を示しているときの図である。図2(B)は、本実施形態の1/10秒表示部5が7/10秒を示しているときの図である。
【0064】
図2(A)および図2(B)および図3から明らかなように、1/10秒表示指針52が1/10秒表示目盛51のどの目盛を表示している場合でも、他の目盛との誤認を起こさないようになっている。
【0065】
また、指針の移動方向に応じて往路シンボル5111または復路シンボル5121に付随する指標を読み取ることによって、さらに目盛を読み取りやすくなっている。
【0066】
[第1の実施の形態における電子時計1の動作]
次に、本実施形態における電子時計1の動作を、図2および図3を用いて説明する。
【0067】
操作部材22の操作によって、電子時計1の計時動作が開始されると、1/10秒表示目盛51の“0”を指し示していた1/10秒表示指針52は、時計回り(往路方向)に回転する。
【0068】
その回転は、1/10秒で1目盛分となっており、1/10秒表示指針52の差し示す1/10秒表示目盛51の値は、電子時計1の計時している1/10秒と常に同期している。
【0069】
図2(C)および図3に示すように、1/10秒表示目盛51の“5”を指し示した1/10秒表示指針52は、今度は半時計回り(復路方向)に回転を始める。
【0070】
その回転も往路方向と同じく、1/10秒で1目盛分となっており、1/10秒表示指針52の差し示す1/10秒表示目盛51の値は、電子時計1の計時している1/10秒と常に同期する。
【0071】
そして、図2(D)および図3に示すように、1/10秒表示目盛51の“0”を指し示した1/10秒表示指針52は、再度時計回り(往路方向)に回転を始める。
【0072】
このとき桁上がりが発生し、秒表示指針41が約6°回転することによって、計時された秒を表示する。秒表示指針41が1回転した場合は、分への桁上がりが発生し、分表示指針42が約6°回転することによって、計時された分を表示する。
【0073】
[第1の実施の形態の効果]
上記のような構成とすることで、図4(A)に示したような従来の1/10秒表示に対し、表示領域における目盛の間隔を広く取ることができ、視認性の向上が図れるとともに、単位目盛あたりの移動量を大きく取ることが出来るため、演出性の高い表示を実現することができる。
【0074】
また、目盛の配置を交互配置とすることで、往路と復路で指示する指標(目盛)を誤認することがなく、正確な目盛の読み取りが可能である。かつ、目盛を構成する数字のフォント等を大きく配置することができるため、より意匠性の高い電子時計1を提供することが出来る。
【0075】
また、図4(B)に示したような、目盛“9”から目盛“0”に移動する際に短時間かつ大きな指針移動を必要とする従来の1/10秒表示の桁上がり時の動作に対し、図3でも示すように短時間での高速な指針動作を行うことなく、1/10秒のリアルタイムな表示を可能とする電子時計1を提供することができる。
【0076】
〔第1の実施の形態の第1の変形例〕
本実施の形態における電子時計1の1/10秒表示部5では、1/10秒表示指針52
は一般的な棒状の指針形状をしているが、図5に示すように、1/10秒表示指針52の形状を、往路方向および復路方向で差し示す1/10秒表示目盛51が明確となるようにすることで、より視認性を向上させた電子時計1を提供することが出来る。
【0077】
図5では、1/10秒表示指針52が、行き方向の目盛“1”から“4”を示すための往路指示部521と、帰り方向の目盛“6”から“9”を示すための復路表示部522によって構成されている。
【0078】
なお、本変形例では目盛“0”および“5”は、他の目盛よりも大きく配置されているため、1/10秒表示指針52全体で指示することとする。
【0079】
なお、本変形例における電子時計1の動作は、第1の実施の形態における電子時計1の動作と同一であるため、ここでは説明を省略する。
【0080】
図5(A)は、本変形例の1/10秒表示指針52が2/10秒を示しているときの図である。図5(B)は、本変形例の1/10秒表示指針52が7/10秒を示しているときの図である。
【0081】
このような構成とすることで、1/10秒表示指針52が指し示す1/10秒表示目盛51が明確となり、より視認性を向上させた電子時計1を提供することが出来る。
【0082】
もちろん、この第1の変形例は図5に示す実施形態には限定されない。例えば、往路指示部521を復路表示部522と同様に指標(目盛)を囲む形状とし、往路指示部521を四角や三角形状としても良い。こうすれば指示しているのが、往路か復路かがよりいっそう理解しやすい。但し、1/10秒表示指針52のモーメント負荷を考慮した場合は、図5の形状のほうが好ましい。
【0083】
〔第1の実施の形態の第2の変形例〕
また、本実施の形態における電子時計1の1/10秒表示部5では、1/10秒表示指針52は一般的な棒状の指針形状をしているが、図6に示すように表示窓の下を、指示シンボルを備えた表示円盤が回転することで示しても良い。
【0084】
図6では、扇型の1/10秒表示窓31の周囲に1/10秒表示目盛51が配置され、1/10秒表示窓31の下部には1/10秒指示シンボル531を備えた1/10秒表示円盤53がステップモータ等の駆動手段(不図示)により回動可能に配置されている。
【0085】
図6では、図2や図5と異なり、1/10〜5/10秒が第1の小周期、6/10〜0/10秒が第2の小周期とされ、両端を示す「5」と「0」がそれぞれ、往路指標群511と復路指標群512を構成している。
【0086】
なお、図2や図5と形態は異なるが、対応をわかりやすくするため、符番511、512をそのまま使用している。
【0087】
また、本変形例における電子時計1の動作は、指針が表示円盤となっている以外は第1の実施の形態における電子時計1の動作と同一であるため、ここでは説明を省略する。
【0088】
1/10秒指示シンボル531は、往路指標群511である目盛“1”から“5”を示すための下向きの往路指示シンボル5311と、復路指標群512目盛“6”から“0”を示すための上向きの復路指示シンボル5312とで構成されている。
【0089】
図6(A)は、本変形例の1/10秒表示指針52が2/10秒を示しているときの図である。図6(B)は、本変形例の1/10秒表示指針52が7/10秒を示しているときの図である。
【0090】
なお、図6の下向きの往路指示シンボル5311と上向きの復路指示シンボル5312は、向き以外同一形状となっているが、図5の1/10秒表示指針52同様、色・大きさ・形状などの外観に差異を与えても良い。
【0091】
このような構成とすることで、1/10秒計時値を表示窓の下を回転する指示シンボルを備えた表示円盤によって視認性よく表示する、意匠性を向上させた電子時計1を提供することができる。
【0092】
〔第2の実施の形態〕
次に、本発明の第2の実施の形態に係わる電子時計1を図7および図8に基づいて説明する。
第2の実施の形態は、本発明を日表示に適用したものである。従って、単位区間は1日であり、1周期は31日である。また、表示形態が扇表示ではなく、直進表示となっている。
【0093】
第2の実施の形態における電子時計1は、図7の概略図に示すように、時刻を修正するための操作部材2と、時刻を表示する指針表示部3とを備え、指針表示部3は、指針表示部3の円形の表示領域内で回転し、現在の時分を表示する時刻表示指針6と、日付を表示する長方形の表示領域をもつ日付表示部7によって構成される。
日付表示部7は、日付表示目盛71と、日付表示指針72によって構成される。
【0094】
また、本実施形態における電子時計1の備える日付表示目盛71は、図8に示すように、表示領域の方端(始点)から他端(終点)に向かって“1”から“16”の目盛が振られており、さらに終点から始点に向かって“17”から“31”の目盛が振られている。すなわち、1日から16日が第1の小周期、17日から31日が第2の小周期に相当する。
【0095】
また、往路方向の目盛は往路方向の向きを示すシンボルである往路指標群711と一体となって配置されており、また帰り方向の目盛りは帰り方向の向きを示すシンボルである復路指標群712と一体となって配置されている。
【0096】
さらに、日付表示目盛71はその配置が行き方向(上方向)の目盛と、帰り方向(下方向)の目盛とが交互となるように配置されている。
【0097】
図8(A)は、本実施形態の日付表示部7が10日を示しているときの図である。
図8(A)から明らかなように、日付表示指針72が日付表示目盛71のどの目盛を表示している場合でも、他の目盛との誤認を起こさないようになっている。
【0098】
また、指針の移動方向に応じて往路指標711または復路指標712に付随する目盛を読み取ることによって、さらに目盛を読み取りやすくなっている。
【0099】
[第2の実施の形態における電子時計1の動作]
次に、本実施形態における電子時計1の動作を、図8を用いて説明する。
【0100】
計時されている時刻の経過、あるいは操作部材2の操作によって、電子時計1の表示する日付が更新される場合、日付表示指針72は一目盛分だけ動作する。
【0101】
このとき、更新前の日付が1日から15日の間であった場合、図8(A)のように日付表示指針72は上方向(行き方向)に動作する。
【0102】
更新前の日付が16日から31日の間であった場合、図8(B)のように日付表示指針72は下方向(戻り方向)に動作する。
【0103】
なお、時刻表示指針6の動作は、長短針によって時刻を表示する一般的なアナログ時計と同一であるため、ここでは説明を省略する。
【0104】
[第2の実施の形態の効果]
上記のような構成とすることで、従来の日付表示に対し、表示領域における目盛の間隔を広く取ることができ、視認性の向上が図れるとともに、単位目盛あたりの移動量を大きく取ることが出来るため、演出性の高い表示を実現することができる。
【0105】
また、目盛の配置を交互配置とすることで、目盛を構成する数字のフォント等を大きく配置することができるため、より意匠性の高い電子時計1を提供することが出来る。
【0106】
〔第3の実施の形態〕
次に、本発明の第3の実施の形態に係わる電子時計1を図9および図10に基づいて説明する。
第3の実施の形態は、本発明を月齢表示に適用したものである。従って、1周期は29.5日である。
【0107】
第3の実施の形態における電子時計1は、図9の概略図に示すように、時刻を修正するための操作部材2と、時刻を表示する指針表示部3とを備え、指針表示部3は、指針表示部3の円形の表示領域内で回転し、現在の時分を表示する時刻表示指針6と、扇型の月齢表示部8によって構成される。
月齢表示部8は、月齢シンボル表示81と、月齢表示指針82によって構成される。
【0108】
また、本実施形態における電子時計1の備える月齢シンボル表示81は、図10に示すように表示領域の方端(始点)を新月(月齢0)、他端(終点)を満月(月齢15)として、始点から終点に向かって上弦の月を含む月齢1〜14に相当する月齢シンボルを、終点から始点に向かって下弦の月を含む月齢16〜29に相当する月齢シンボルを配置している。
【0109】
また、往路方向の月齢シンボルは往路方向の向きを示すシンボルである往路指標群811と一体となって配置されており、また復路方向の月齢シンボルは復路方向の向きを示すシンボルである復路指標群812と一体となって配置されている。
さらに、新月と満月を除く月齢シンボルはその配置が行き方向(時計回り)のシンボルと、帰り方向(反時計回り)のシンボルとが交互となるように配置されている。
【0110】
図10(A)は、本実施形態の月齢表示部が満月(月齢15)を示しているときの図である。図10(B)は、同じく上弦の月(月齢7.5)を示しているときの図である。図10(C)は、同じく下弦の月(月齢22.5)を示しているときの図である。
【0111】
図10の(A)から(C)によって明らかなように、月齢表示指針82が月齢シンボル表示81のどのシンボルを表示している場合でも、他のシンボルとの誤認を起こさないようになっている。
【0112】
また、指針の移動方向に応じて往路指標811または復路指標812に付随する目盛を読み取ることによって、さらに目盛を読み取りやすくなっている。
【0113】
[第3の実施の形態における電子時計1の動作]
次に、本実施形態における電子時計1の動作を、図10を用いて説明する。
【0114】
計時されている時刻の経過、あるいは操作部材2の操作によって、電子時計1の表示する月齢が更新される場合、月齢表示指針82は1シンボル分だけ動作する。
【0115】
このとき、更新前の月齢が0から14の間であった場合、月齢表示指針82は時計回り(往路方向)に回転する。更新前の月齢が16から29の間であった場合、月齢表示指針82は反時計回り(復路方向)に回転する。
【0116】
なお、時刻表示指針6の動作は、長短針によって時刻を表示する一般的なアナログ時計と同一であるため、ここでは説明を省略する。
【0117】
[第3の実施の形態の効果]
上記のような構成とすることで、従来の指針式の月齢表示に対し、表示領域における月齢表示シンボル81の間隔を広く取ることができ、視認性の向上が図れるとともに、単位目盛あたりの移動量を大きく取ることが出来るため、演出性の高い表示を実現することができる。
【0118】
また、新月(月齢0)と満月(月齢15)の場合、表示領域の端部を月齢表示指針82が指示するため、よりわかりやすい月齢表示を行うことが可能となる。
【0119】
[そのほかの実施形態]
第1および第2および第3の実施の形態、およびその変形例では、1/10秒表示、日付表示及び月齢表示を行う電子時計の例を示したが、本発明はこれに限らず、秒、分、時、月や月齢、曜日などあらゆる計時情報の表示に適用することが可能である。
【0120】
小周期の数は2個として説明してきたが、指示する指標(目盛)が多い場合は、もちろんそれ以上細かく分けても良い。
【0121】
例えば、第1の実施例では1/10秒表示を説明したが、1/20秒表示とした場合、4個の小周期としても良い。また、日表示では、3個の小周期としても良い。要するに、指標が配置可能な面積や指標の数を考慮し、適宜設定が可能である。
【0122】
また、第1、第2および第3の実施の形態、およびその変形例では、情報表示装置として、時刻情報および計時情報を表示する時計の例を示したが、本発明はこれに限らず、これ以外の情報表示装置に適用することも可能である。
【0123】
例えば、自動車等の速度等を示す計器類、スチルカメラ等の撮影情報(絞り、シャッタースピード)等を表示する表示装置、各種計測装置の表示など、所定範囲で往復動作を行う表示などに適用可能である。
【0124】
また、第1および第2および第3の実施の形態、およびその変形例では、表示部材にステップモータ等の駆動手段によって駆動される指針または表示円盤を用いたが、本発明はそれに限らず液晶などの画面上に表示される指針、またはシンボル等によって表示される電子情報表示装置にも適用することが可能である。また、機械式時計への適用も可能である。
【符号の説明】
【0125】
1…電子時計
2…操作部材
21…操作部材
22…操作部材
3…指針表示部
31…1/10秒表示窓
41…秒表示指針
42…分表示指針
5…1/10秒表示部
51…1/10秒表示目盛
511…往路指標群
5111…往路シンボル
512…復路指標群
5121…復路シンボル
513…「0」表示
514…「5」表示
52…1/10秒表示指針
521…往路表示部
522…復路表示部
53…1/10秒表示円盤
531…1/10秒表示シンボル
5311…往路指示シンボル
5312…復路指示シンボル
6…時刻表示指針
7…日付表示部
71…日付表示目盛
711…往路指標群
712…復路指標群
72…日付表示指針
8…月齢表示部
81…月齢シンボル表示
811…往路指標
812…復路指標
82…月齢表示指針

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の単位区間で形成される所定区間を1周期とし、
該1周期が、さらに少なくとも2つ以上の小周期に分割され、
各小周期単位で直線状、もしくは円弧状に表示される表示装置であって、
各小周期に対応する前記単位区間を示すための指標と、
該指標を指示する指示手段を有し、
前記各小周期に対応する指標は、前記指示手段の進行方向において、
前記単位区間の非自然数倍のオフセットを持って配置されている
ことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記指標が、少なくとも、
前記複数の小周期のうちの第1の小周期に対応し、直線状、もしくは円弧状に配置される第1の指標群と、
前記複数の小周期のうちの第2の小周期に対応し、直線状、もしくは円弧状に配置される第2の指標群と、を含み、さらに、
前記指示手段が、該第1の指標群と該第2の指標群を指示する単一の指示手段であり、
該指示手段は、前記第1の小周期では前記第1の指標群を指示し、前記第2の小周期では前記第2の指標群を指示することを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記オフセット(ズレ量)が、前記単位区間の半分である
ことを特徴とする請求項1ないし2のいずれか1つに記載の表示装置。
【請求項4】
前記第1の指標群と前記第2の指標群は、外観上の差異を有することを特徴とする請求項2ないし3のいずれか1つに記載の表示装置。
【請求項5】
前記指示手段に、前記第1の指標群を指示する第1指示部と、前記第2の指標群を指示する第2指示部を有することを特徴とする請求項2ないし4のいずれか1つに記載の表示装置。
【請求項6】
前記第1の小周期と前記第2の小周期の区切りとなる区間に対応する指標が、前記第1の指標群と前記第2の指標群の、前記指示手段の進行方向における両端に配置されることを特徴とする請求項2ないし5のいずれか1つに記載の表示装置。
【請求項7】
前記区切り指標が、前記第1の指標群や前記第2の指標群に対して、外観上の差異を有することを特徴とする請求項6に記載の表示装置。
【請求項8】
前記第1の指標群や前記第2の指標群に付随して配置され、前記第1の小周期や前記第2の小周期における前記指示手段の進行方向を示す図形を有することを特徴とする請求項2ないし7のいずれか1つに記載の表示装置。
【請求項9】
前記小周期を折り返し表示することで前記1周期を表示することを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1つに記載の表示装置。
【請求項10】
請求項9に記載の表示装置をクロノグラフ表示に使用し、
前記単位が、1/(m^n)秒(m,n:自然数)であり、
前記1周期が前記単位のm倍であり、
前記小周期が、前記第1の小周期と前記第2の小周期の2個である
ことを特徴とするクロノグラフ機能付時計。
【請求項11】
請求項9に記載の表示装置を日表示に使用し、
前記単位が1日であり、前記1周期が31日であることを特徴とする日表示付き時計。
【請求項12】
請求項9に記載の表示装置を月齢表示に使用し、前記1周期が月齢周期であり、前記指標が、月齢周期中の月の形状であることを特徴とする月齢付時計。

【図6】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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